プーアール茶.com

倚邦古樹青餅2014年・明後 その9.

製造 : 2014年05月15日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明倚邦山小葉種古樹
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+銅のヤカン
メコン川
川の舟
川の草
空
川の階段
川の社
窓からメコン川

お茶の感想:
火入れ実験のつづき。
西双版納から茶友に持ってきてもらったお茶。
『邦古樹青餅2014年・明後』(卸売部)
これを茶壺で火入れしてみる。
茶葉
茶壺をつかって茶葉の火入れ
今回は湯が沸騰してから40分の火入れ。ちょっと長め。
蒸気には蒸気ならではの熱の性質があるだろう。茶葉の火入れにしては低温だが、時間をかけて熱量を補う。
前回の勉強会で生茶の餅茶『易武古樹青餅2010年』を炭火で炙るのを試した。
お餅を焼くみたいに小さめの七輪に網を敷いて、餅茶の崩したカケラを置く。
お餅
(写真は実際にお餅を焼いているところ。)
炭は3つだけ。結果的には2つでも十分だった。
初回は加減がわからずに焦がしたが、2回めは手を近づけても耐えられるほどの遠火でじっくり1時間ほど炙った。
これがとても香りのよいお茶になった。焦げ臭さや煙臭さはない。新鮮な緑が蘇るような爽やかな香り。やや烏龍茶っぽくなる。味はシンプルになる。苦味とその反動の甘味と、お茶のお茶たる個性だけが際立つ。
遠赤外線の照射は茶葉の表面の複雑な形状にもまんべんなく熱がゆきわたるのがよい。また、弱い火を長時間維持するのはガスや電熱よりも経済的かもしれない。
茶壺の中
今回は、茶壺ごと蒸すようなカタチだが、茶壺の中は乾燥している。
実はこの茶壺はちょっと水漏れする。少量の蒸気が入るかもしれないが、空気中の水は冷たいほうへ逃げる性質があるため、蓋の裏が少し湿る程度で茶葉を蒸らすことはなかった。
茶葉に水分が少しでもあると酸化が早まる。
乾燥している茶葉でもごく少量の水分を含んでいる。その水分が熱をもつと茶葉の成分変化を早める。これを避けるために、茶壺と茶葉とを常温から時間をかけてゆっくり温度を上げてゆく。茶葉がさらに乾燥して、それから温度をもっと上げてゆく。こうして水分による影響をなるべく避ける。
茶壺の温度が上がってから茶葉を投入すると、低い温度の茶葉に水分が逃げ込むかもしれないので、茶壺と茶葉をいっしょに加熱するほうがよいと考えている。
ヤカンの蒸気の熱を利用するのは温度に上限があるので焦げる心配はない。そこがよい。時間だけを調整して火入れの感覚をつかめる。
泡茶
こうして火入れした茶葉は、湯を注いでから茶葉の成分が出るのにちょっと時間がかかる。まだ熟成3年モノなのに20年モノくらいの感じに似ている。
じっくり抽出するせいもあって、味もまた熟成されたものに近づく。
このお茶の場合、いつもは4煎めくらいから出てくる深い味わいが1煎めからいきなり出る。また、早春のお茶にありがちな辛味は消失している。味はシンプル。小葉種の軽い苦味が際立つ。複雑さや鮮やかさは消えて静かになる。
体感は落ち着いている。喉のとおりは涼しく腹の底のほうへすっと収まる。「寒」の性質は「温」の性質に近づいているせいか、飲んだ後のドキドキするような胸のあたりの詰まり感もなくなっている。
このブログでもたびたび指摘しているが、生茶のプーアール茶を若いうちに飲むのは難しい。汗をかく暑い季節はよいが、寒い季節には向かない。個人差もあるのでその加減を自分で探って見つけて、いちいち計るように注意して飲まなければならない。
お茶として完成していない。
未完成のまま流通していることになる。
しかし、昔の人は未完成なお茶を自分の手元で完成させていた。冷蔵庫もない時代に、長期保存できる乾物のひとつとして保存のケアをしたり、煎じ方に工夫したり、熟成による薬効の変化をそれぞれの家庭のやり方で見つけていただろう。
家庭に知恵があったのだよな。
知恵のない現代の家庭にどんなお茶を売ったら良いのかを考えてお茶メーカーはいろいろ工夫するけれど、その展開はあまりカシコくない結果になると見ている。

ひとりごと:
チェンコーンに通いだしてから6年経つが、今回はじめて見つけた豚の生の血のラープ。
ラープは肉を香草やスパイスをいっしょに叩いてミンチにして、塩や魚醤や辛子味噌などで味付けしたもの。
生のラープ
この写真のラープは血だけでなく肉も生である。数年前に西双版納のタイ族の村でご馳走になって以来だったが、チェンコーンのお惣菜屋さんにも売っていた。
味は、牛肉の生のユッケやタルタルステーキや魚のなめろうにも似ているが、血生臭さなど全くなく、脂っぽいこともなく、サラッと口に溶ける。火入れしていないので血の成分が生きているからだろう。
豚の生の血って細菌や寄生虫が怖いよな。
体調の良いときに食べる。ゆっくり食べる。付いている香草といっしょに食べる。主食のもち米といっしょに食べる。ラオスの50度の焼酎ストレートを飲みながら食べる。冷たい飲み物を飲まない。
お腹の中の消化の過程で発酵に似たようなことが起こっているが、良い発酵をしたら悪い菌などやっつけてくれる。はず。

巴達古樹紅餅2010年 その23.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・銅のヤカン
川を見ている
川を見ている
川の社
川と舟
川と朝日
川を見ている
夕焼けの空
川の夕焼け
川の月
川の月

お茶の感想:
また川を見ている。
+【ずっと川を見ている】
この1ヶ月間ブログの更新をしなかったが、毎日お茶淹れて飲んでずーっと考えている。
茶葉を炙ること。茶葉を煮出すこと。
前回の勉強会「煎じるお茶」に思いがけない成果があって、これからどんなアプローチで理解してゆこうか思案している。
火入れの火(熱)でお茶の味も変わるし体感も変わる。
思っていたようなちょっとの差ではない大きな差がある。火(熱)の性質にはいろんなタイプがあるから、味や体感もいろんなタイプになる。
お茶を淹れるときの火(熱)と同じように製茶のときの火(熱)もまたお茶の性質を左右する。
中国茶には様々なお茶があるが、そのつくり分ける技術は味や香りの個性を求めると同時に、薬効のタイプをつくり分けることを重視したとみている。個人的に勝手に。昔はお茶がもっと医食同源に近いところにあって、お茶を飲む目的が違ったはずだ。
茶葉を炙ったり煮出したりという行為は薬草を煎じる感覚に近い。
西双版納の山の農家では今でも薬草を採ってきては家庭の常備薬をつくっている。村にひとりは詳しい老人がいたりする。例えば三七(田七人参)は、生のまま・天日干し・炙り・煮出し、などの加工によって効能が異なり用途が異なる。
お茶もまた過去にはこのような違いがはっきり意識されていたと考える。
この観点からお茶づくりやお茶淹れを見直してゆきたい。
さて、タイのチェンコーンに滞在中にこのお茶に気付きがあったので記録する。
+【巴達古樹紅餅2010年】
雨の川
雨
タイの北部のチェンマイやチェンコーンに行くときはいつも崩しかけの餅茶を持ってゆく。ジップロックに密封しているけれど、お茶を淹れるたびに崩すので高い湿度の空気に触れてしまう。パリパリに乾燥していた茶葉が一週間後には湿ってほんのり柔らかくなるのが指先の触感でわかる。一煎分ずつ小さな袋に小分けして密封しておくとよいが面倒なのでしていない。
湿ったときは晒干(天日干し)でリカバリーできる。
餅茶を晒干
チェンコーンの太陽の光はとくべつ強く感じるのだが、おそらく広大なメコン川の水面や真っ白な雲に反射した光が飛び散っているからだ。
ちょっと思いついて、今回は晒干する前に崩した茶葉をちょっと残しおいて、晒干した後の茶葉と飲み比べてみた。差がわかりやすいように1時間で済むところを2時晒干した。晒干後は茶葉の粗熱がすぐには取れないので翌日までまってから淹れた。
巴達古樹紅餅2010年泡茶
巴達古樹紅餅2010年泡茶
思った通り。
晒干のは火入れのとよく似た風味になっている。
体感も火入れのと似ている。前回の上海の勉強会の参加者にお茶の「生」に敏感で悪酔いしやすい方がいらっしゃったが、その方ならこの違いがもっとわかりやすいだろうと思う。
調子に乗ってこんなこともしてみた。
茶壺で茶葉を炙る
茶葉を火入れする
茶壺を銅のヤカンの口に据えて、お湯を沸かす湯気で茶壺ごと茶葉を温める。
弱火で25分かけて水を沸かして、さらに15分温め続ける。
(※茶壺とヤカンに温度差があると茶壺が割れる心配があるので真似しないほうがよい。)
より火入れのすすんだ茶葉になる。
火入れ後
茶壺の中は水が入っていないのでカラカラ。
かすかに焙煎香が出ている。もちろん烏龍茶とまではゆかないが、その雰囲気はある。
泡茶焙煎後
味は紅茶そのもの。メイラード反応に似たココアっぽい風味が出て、やや糖質の焦げた甘い香りがある。
味は透明感が増して、ひとことで言うとサッパリしている。生の辛味のピリピリは感じなくて、喉の通りがスッと落ち着いている。腹の収まりも良い。
もちろん失うものもある。色彩豊かな風味、複雑な風味、一煎ごとの表情の変化。これらは生の特有の魅力だったことがわかる。
晒干の餅茶
生に仕上げた晒干の紅茶だから、後からお客様が手元でちょっと手を加える余地がある。
冷蔵庫もない時代の昔の家庭では手元でケアしなければならない食材がいろいろあって、それぞれの工夫がまた家庭の味になっていただろう。
そこに家庭の医学のような知恵も潜んでいたと思う。

ひとりごと:
上海の坊
前回の勉強会「煎じるお茶」を終えてすぐの8月中頃から上海の坊が京都に遊びに来てバタバタして、彼らが帰ってすぐの8月末にタイのチェンマイに移動してホッとするのもつかの間、今度は西双版納の茶友がラオス経由でタイに来てチェンコーンで合流してチェンライまでいっしょに行って、チェンコーンに戻ってやっとひとりで静かになったらもう9月中盤。
日本から飛行機を乗り継いでチェンマイの宿に着いて疲れて爆睡して目が覚めたときに、ほんの3秒くらいだと思うけれど、ココがどこかわからなくなっていた。もしかしたら1秒くらいは自分が誰かもわからなかった。
けっこう慌てた。こんなことはじめて。今度寝て起きたらどうなるのだろ。
ランテン村
アンティークの布
チェンコーンからチェンライ伸ばす
パパイヤビレッジ
チェンコーンに遊びにきている韓国人のジョンさんにこの話をしたら、「僕もときどきなります」とのことなので、ま、大丈夫だろ。ジョンさんは自由人であちこち気ままに旅して移動が多いから、体と気持ちの在るところにタイムラグが生じるのだ。
この件はそういうことで流しておこ。

茶学 整えない

西双版納の山の泉
子供がお茶を淹れると大人よりも美味しくなるのは偶然じゃない。
子供の注ぐ水は活き活しているから、お茶の味も活き活きする。
大人は水を注ぐのに、こぼしてはいけないとか、美しく見えたいとか、美味しく淹れたいとか、意識がお茶淹れの動作をカタくして水もカタまる。
子供の手はそこまで水をきっちりコントロールできないから、ヤカンから茶壺へ注ぐ湯がユルユルして外にこぼれたり、茶壺から杯にそそぐ水が勢い余って外に飛び出たり、水は乱れてありのままをさらけ出す。
大人でも油断するとそうなることはある。けれど、油断してそうなるのと、緊張してもそうなってしまう子供のと、水の振動は微妙に違うのだな。
水の入った茶器を動かすと、動きにあわせて水は揺れる。動きが早かったり動線が鋭角だったりすると水は暴れる。
そんな水の自然な状態を自分の思うように制しようとしないで、ちょっと許してやるくらいのほうがよいのかもしれない。

雅安の藏茶1970年代 その1.

製造 : 1970年代
茶葉 : 四川省雅安市
茶廠 : 四川省雅安市茶廠
工程 : 藏茶
形状 : 圧延貨幣型
保存 : 崑山市倉庫
茶水 : 京都地下水
茶器 : 鉄瓶・チェコ土の茶杯
藏茶1970年代

お茶の感想:
四川省雅安市の藏茶。
推定1970年代のもの。先日の上海の勉強会のときにスペースを借りた天山茶城のお店に売っていた。
いまどき藏茶の老茶も珍しいので経緯を聞くと、台湾人が上海近郊都市の崑山市に大きな倉庫を構えて大量の茶葉を保有していて、そこから出てきたらしい。たぶん老茶を小出しに売りはじめたのだろう。
崑山市は上海と蘇州の間に位置する。台湾系の大手企業が集まり工業団地をつくって、この20年くらいで急速に発展した。現在は地価が高騰しているが、昔なら倉庫にできる土地ならいくらでもあったはずだ。倉庫の土地と茶葉に投資してダブルで価格高騰するのを待つ。例えば20年待ったとして30倍に達しただろうか。今世紀中にはもう二度とないタイミングだったと思うが、珍しいことではない。長い歴史をみると物価や茶葉の価格変動を見込んで大量の茶葉を貯蔵してひと儲けした例はいくらでもある。
貨幣のカタチ
貨幣のカタチ
実際、このお茶は古代の貨幣のカタチをしている。
ある地域では茶葉がそのまま通貨として流通していたこともある。長い目で見たら、いつの時代も現金よりも茶葉を貯蓄しておいたほうが安定している。
この固まり390g。竹で編んだ直方体の籠に30キロ分で詰められ牛か羊の皮で包まれる。(上の写真)
藏茶は雅安市から西へ運ばれる。高原に住む遊牧民族やチベット仏教の坊さんのお茶。出荷する前に微生物発酵を促す工程があるので黒茶に分類される。
遊牧民族のバター茶はまさにこの茶葉でつくる。「煎じるお茶」の勉強会のテーマにピッタリ。勉強会での試飲にバターは用意しないが、塩は用意しておこうと思う。
煎じ方はカンタン。ヤカンに湯を沸かして茶葉を投入するだけ。
茶殻
ヤカンに茶葉
ここで注目するのは、煮出し時間によって味も体感も変わってゆくということ。
何分煮出すのがよいのだろう?
煮出し2分
煮出し2分め。
20分以内で十分とは思うが、それを飲んで確かめるのが今回の勉強会。
ちょうどよい煮出し時間は、茶葉の性質によっても、飲む人の体質によっても、その日のコンディションによっても異なる。自分で飲んで自分の身体に聞くのだ。
煮出し20分
煮出し20分茶湯
煮出し20分め。
茶葉に熱が通るほどに成分の変化がすすむ。鉄瓶なので鉄分との化合によるなにかもあるだろう。
煮出し2分と20分を飲み比べて体感の違いに気付く。20分のほうが身体へのアタリが柔らかくて涼しい。
茎も混ざる老葉を微生物発酵させたお茶には特有のピリピリ感があるが、煮出し時間を長くするとそれも和らぐ。
ここで疑問なのが、なぜあらかじめもっと火入れをしておかないのか?ということ。
メーカーから出荷する前に焙煎しておけば、もっと涼しくてピリピリもないので20分も煮出す必要はないだろう。
そう、このお茶もまた、火入れの余地を残した生な仕上げになっているのだ。生のまま長期熟成させることになにか意味があるのだろうか。後発酵の微生物との関係を考えてあるのだろうか。
謎がまた増えてしまった。
一生かかって、お茶のことがもっとわからなくなって終わりそう。
葉底
葉底の色からしたら1970年代っぽくない。プーアール茶だったらこの緑が残っていたらおかしいけれど、たしか藏茶づくりの乳酸発酵を経た茶葉は、長年熟成しても緑色が残りやすいのだよな。

ひとりごと:
業務連絡。
青島に住んでいたE本くん。
久しぶりにメールくれたけれど、そちらの携帯電話のメールがパソコンメールを受信拒否にしているせいなのか、こちらからのメールが不達になる。
設定解除してもういちどメールされたし。
業務連絡以上。

勉強会・京都 煎じるお茶 8月12日

炙る2
終了しましたが、資料のために残します。

テーマ:
煎じるお茶。
「煎じる」という言葉の残っているとおり、お茶は漢方薬のように煮出して飲まれていました。
土瓶で煮るお茶。いくつかタイプの異なる茶葉を煮出して飲んでみて、それぞれの体感を探ります。
陸羽の茶経にでてくる炙ってから煮出すお茶も試します。

場所:
京都 岡崎 好日居(地図)
会場にはエアコンがありません。扇風機のみです。汗をかきます。

予約:
募集終わりました。

試飲プログラム:
易武古樹青餅2010年
老班章古樹純料茶2010年
昆明老方磚92年
プーアル方茶80年代
雅安の藏茶1970年代
7582大葉青餅70年代

素食をご用意いたします。
豆腐、お揚げ、お粥、お漬物など。

巴達古樹紅餅2010年 その22.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶+火入れ
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶
チェコ土の茶壺
チェコ土
鉄瓶

お茶の感想:
晴れてはいるが、台風が近付いているせいで生暖かい風が吹いている。
空気中の水分が皮膚を圧迫してうまく汗が出ない状態。こんな日は発酵度の高いお茶で身体の芯を温める。いっきに汗がでるので着替えを用意してシャワーする。シャキッとしたいなら冷たいお茶ではダメなのだ。
この理屈だとやはり茶気の強めがよい。もっとも茶気が充実している早春の新芽・若葉のお茶がよい。茶気はアルコール度数の高い酒と似ていて、茶の成分を短時間で身体に巡らせるチカラがある。
茶葉
さて、このお茶。
【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
生と火入れの体感の違いを探る。
味や香りはすぐにわかるけれど、体感は経験の積み重ねなので時間がかかる。じっくり飲んでゆくしかない。その日の天候や体調も影響するから、夏から冬にかけて時々飲んで様子を見る。
昔の人が紅茶の製法を確立したときに、どのような薬効を求めていたのかを想像してみる。白茶・黄茶・緑茶・青茶・黒茶にはない紅茶ならではの薬効。
その上で、生と火入れはどちらが体感としてより紅茶的なのか。
それとも、こういうときは生、こういうときは火入れ、という具合に使い分けることができるのか。
今日は鉄瓶の熱い湯でじっくり抽出してみた。
火入れ
まず火入れバージョン。
一煎めから透明感のある味わい。
ひとことで言うとまとまっている。
濃い目にするとやや酸っぱい。生よりも酸味が立つ。この酸味は長期保存した烏龍茶にもよくある。味はバランスで、バランスが良いと酸っぱさに気付かされないけれど、意識してみたらあんがいあるものなのだ。
味が澄んでいると喉からお腹への通りもよい。すっと入って収まる。
血が体中に巡って上気して汗が出てくるが茶酔いは軽い。新芽・若葉の強い茶気で頭がゆらっとくるが、目が覚めてシャキッとするほうが勝っている。朝の一杯にピッタリな感じ。
生バージョン
つぎに生のバージョン。
香りは生がよい。熱湯を注ぐと春の野の花の香りがぱっと蘇る。香りの中に涼し気なメントールを感じる。
やや味が濁っている。渋味もある。良く言えばボリュームを感じるが、味が濁っていると喉から腹への収まりがスムーズではなくなり胸につかえる感じがする。濃い目に淹れると生の辛味のピリピリが喉を刺激して一瞬イガっとくるが、消散するのが早いので悪くはない。この刺激は後からメントールの涼しさとなる。
荒れた感じがするのは1煎めだけのことで、2煎・3煎とすすめると落ち着く。渋味は穏やかになる。味は透明感を増して収まりもよくなる。
茶酔いはやや強い。目にグルグルくる。生の酔いは揺れが大きい。身体にやや重く感じる。そして眠くなる。朝向けじゃないかも。
飲んだ順番もあるかと思うので、明日は逆の順番で飲んでみる。
汗をかく
生のほうは煎ごとの変化が大きくて、火入れのほうは小さい。
では、大きめの茶壺で一煎出し切りにしたらどうだろ。
これも次回に試そうと思う。
生バージョン

ひとりごと:
上海のお茶ファンに向けてのイベントをもっとやろうと思う。
お茶をよく飲むし、お金も使っているし、厳しい目をもっている人たち(悪く言えばスレている)に叩かれたほうが自分にも良い。
日本人は面と向かって批判的なことを言うのも聞くのも慣れていないが、上海人は慣れている。
自分の意見を言い出して止まらない人に「今日はわたしが老師を担当します!」と制することが何度もあるが、面白い意見が出て思わぬ方向に転がってゆくこともある。年配の参加者からは昔の古き良き時代の経験談が聞き出せることもある。
今回は日本語と中国語と分けて行ったが、中国語の聞き取りができる日本人は中国語のほうの勉強会に参加する手もあるよな。
そういうのも企画してみようかな。

巴達古樹紅餅2010年 その21.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶+火入れ
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・銅のヤカン・白磁の茶杯
銅のヤカン
白磁の茶杯

お茶の感想:
上海での勉強会があんがいよかった。
「体感を探る」テーマだと、お茶の良し悪しよりも自分の身体に合うかどうかで評価できる。お茶の良し悪しを話すと、参加者は間違っちゃ恥ずかしい・・・という遠慮があって本音を言いにくい。しかし、自分の身体のことなら正解も間違いもないから飾らないないままを口にできる。価格が高かろうが他人の評価が高かろうが、自分の体に合わないものは合わない!と言える。
お茶はけっして美味しいのをそろえたのではなかった。やや問題があるのもある。(もちろん健康を害する問題ではない。)
+『勉強会・上海 体感を探る 8月1日』
けれど実験としては最適。そう。参加者は知らないうちに人体実験されていたのだった。
そして成果があった。自分の身体ではわからないところに光を当てることができた。
7月31日の中国語と8月1日の日本語と合わせて13人ほど。参加者の中にはある種のお茶に身体が合わない人がいて、敏感に反応してくれた。
自分がよくわかっていなかった2つの問題。
早春に采茶したことによる茶気。
「生」な製茶の仕上げによる茶気。
どちらにも弱い人、どちらかに弱い人、この2つのパターンがあった。
そして今回のいちばんの発見は「生」な仕上げに弱い人は、たとえ冬片老葉のような季節外れの大葉を采茶しても酔い心地に気持ちよさがないということ。さらに1950年モノという長期熟成を経てもまだ「生」を感じるということ。
さて、今日のお茶『巴達古樹紅餅2010年紅茶』。
火入れバージョン
火入れバージョン
上海に置きっぱなしにしていた宝モノをいくつか持ち帰ってきた。
銅のヤカン。清代末期の景徳鎮の杯。そしてこのお茶の火入れバージョンのサンプル。
『巴達古樹紅餅2010年紅茶 その17.』(火入れの様子)
1枚モノが何枚かあったので久しぶりに試飲してみたら、その場に居合わせた上海人のお茶ファンに買い尽くされた。
手元には崩したサンプルのみ残っている。
火入れバージョン
当初、上の記事を読んでみても火入れバージョンの評価は低い。喉から胸にかけて「燥」な苦しさがあった。乾燥機の荒れた熱がそのまま茶葉に記憶されたような感じ。1年半ほど経った今は完全にそれが落ちて、静かな語り口になっている。
火入れしない「生」のほうは涼しい口当たりが特徴。火入れバージョンには今もこの口当たりの涼しさはないが、飲んだ後の余韻の涼しさはむしろ火入れのほうがよいかもしれない。口当たりの涼しさは「生」の成分のスパイスが関係しているらしい。舌にピリピリした刺激が「生」な仕上げのお茶には共通してある。勉強会で飲んだサンプルの茶葉にもそれが見つかる。
生か火入れか。
日本酒の生と火入れとの違いに似ているところもある。
生は味に複雑かつ多彩なところが全体のボリューム感につながるが、悪く言えば騒がしい。その点、火入れのはスッキリして静かである。ピリピリはほとんどない。静かなゆえに底力をストレートに感じることができる。まっすぐ筋の通った感じ。
うーん。
火入れバージョン
これなら火入れバージョンを追加でつくってみてもよいかな。餅茶そのまま火入れするのだからいつでもできる。
サンプルがなくなるまで試飲して、それからゆっくり考えるとしよう。
体感はどうかというと、今回のではわからないから次回に検証する。

ひとりごと:
鉄と銅。
鉄と銅
ぜんぜん違うよな。熱の伝わり方もぜんぜん違う。銅のヤカンは表面がキンキンに熱くてちょっとでも手が触れたら痛いくらい熱い。
銅のヤカン
音に例えると高音域がクリアー。
お茶の味もそういう感じに入る。
体感の違いもあるだろな。
これを実証する勉強会をしたい。

刮風寨古樹青餅2016年 その1.

製造 : 2016年4月23日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺
鉄瓶

お茶の感想:
ヨガを習い始めて3年経つ。
いまだに初心者だが、最近ようやく呼吸を利用して身体の変化を味わえるようになってきた。
頭でわかっていても身体ではわかっていない。口で言うのはカンタンでもやれるのとは違う。だから時間がかかる。
それでもまだ慣れていないせいか、かなり集中力がいる。油断するとただのストレッチ体操になる。
上海での「体感を探る」がテーマの勉強会は、ヨガと同じように身体の変化に注目する。お茶を飲むごとに身体のどこかに起こっている変化を見つけなければならない。
お茶のほうになにかを見つけるのではなくて、自分の身体のほうになにかを見つける。
そこが医食同源を理解するのに大事なところ。
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試飲する茶葉の一部
刮風寨古樹晒青茶 2017年4月 生茶 春 新葉
刮風寨古樹青餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨単樹小餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨冬片老葉茶 2016年12月 生茶 冬 老葉
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刮風寨は「茶王樹」と「茶坪」が古樹の二大群生地であるが、上の4つのサンプルはすべて茶坪のもの。茶坪の同じ斜面の半径20メートルくらいにある古茶樹から採取している茶葉。
条件が絞られていてサンプルとして優れていると思う。
以前に読んだなにかの本で、どこかの大学が緑茶とプーアール茶のミネラル分の違いを検査していたけれど、どうやら緑茶とプーアール茶のサンプルは違う産地の茶葉なのだ。同じ茶地の同じタイミングで摘んだ茶葉で緑茶とプーアール茶をつくりわけて検査しなければ意味がない。製法によるミネラル分の差は見つからないはずだが・・・。
どこかの大学が小遣いをもらって太鼓持ちしたのだろう。専門家にもニセモノはいる。
サンプルB
『刮風寨古樹青餅2016年』
今日はサンプル2番めのお茶を試す。
広東の茶友が刮風寨に泊まり込んでつくったもの。そのとき自分は現場にいなかったが、毎日のように茶友から報告を受けていたので手に取るようにわかっている。その後の圧餅の加工は参加している。
2016年4月23日采茶。春の旬をちょっと外した遅めのタイミング。それでも2016年の初摘みである。森の中の古茶樹は新芽の出る時期がやや遅いのが多い。
季節は雨季に入ったところ。雨を避けて晴れの3日間続く(続きそうな)タイミングを見計らって茶摘みを依頼して鮮葉を仕入れる。茶友はもちろん茶坪の森に入って茶樹の下で監視している。
天気が思わぬ方向に変化したら天日干しの製茶がうまくゆかないけれど、この日はうまくいった。
葉の色が薄い
新芽が大きく育って、黒く変色した若葉の色が薄い。
茶葉の水分量が多いため殺青の鉄鍋炒りで焦がすことも少ない。揉捻がしっかりかからないので茶葉がより大きく立派に見える。
サンプルB
サンプルB
早春の、ひとくちでパッと燃え上がるような茶気はないが、春っぽい陽気はまだある。
早春に比べると茶酔いのアタリは穏やかで飲みやすい。
呼吸。鼻の通り。息の温度。心臓の鼓動。舌や口の中の力のかかっているところ。喉から胸の通り。ゲップ。おなら。腹への収まり。耳鳴り。眼の光の感じ方。頭の血の巡り。手足の血の巡り。手足の筋肉。首の筋肉。肩の筋肉。背筋の筋肉。汗のかき方。眠気。覚醒。などなど気付くところはいろいろあるはず。
これを訓練してゆくと、ふだんの食べものや飲みものの良し悪しは、自分の身体が見つけてくれるようになる。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)は、茶葉の質を見ることもできるが、お茶淹れの良し悪しを見ることもできる。

ひとりごと;
酒は3日欠かせてもヨガは3日欠かせない。
いつのまにかヨガのほうが酒よりも気持ちのよいものになっている。
個人の体質だが、自分は上火しやすい。上火とは身体に熱がこもること。
上火するとまず眠りが浅くなる。全身がだるくなる。ものを食べるときに舌や唇の内側を噛んでしまったり、口内炎ができたりする。鼻水が出る。喉が乾いてガラガラ声になる。風邪の初期症状と勘違いしてカロリーの高いものを食べて体力をつけようとすると火に油を注いで長期化する。こうなるとお茶もダメで、どんなに身体に涼しいタイプのを選んでも症状が治まらない。
西瓜(スイカ)を食べるのが熱を取るのに早いが、ハウス栽培したものや肥料をやりすぎているものは「涼」の効果が薄れているので効かないこともある。
最近発見したのだが、ヨガは上火を鎮火させるのにも効果的である。
1時間半ほどかけてゆっくり基本動作を味わうようにする。呼吸をお腹に送り込むの動作が効くのだが、どういう仕組みで熱がとれるのかわからない。なにかに解放されるようにスーッと気持ち良くなる。その日の夜はぐっすり眠れる。
頭で知るより先に身体を動かすことからはじまるヨガは、頭が先になりがちなお茶よりも医食同源を知るのにも有効かもしれないな。

益木堂那カ古樹純料茶2010年 その5.

製造 : 2010年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宗山那カ寨古茶樹小葉種
茶廠 : 農家+益木堂
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
益木堂那カ古樹純料茶10年
那カ古樹純料茶10年
益木堂那カ古樹純料茶10年

お茶の感想:
上海の友人の店からもどってきたサンプルのひとつ。
以前にも紹介している。
+【益木堂那カ古樹純料茶2010年 その1.】
古茶樹小葉種。
小葉種の茶葉は長期保存してもあまり美味しくならない。
最近仲間うちでそんな意見が出ているが、どうだろ。
このお茶は2010年の出来たてのときは評価が高くて、毛茶(原料の茶葉)を仕入れたメーカーの担当者は会うたびそれを自慢していたけれど・・・。
泡茶
泡茶2
実際にそうかもしれない。それほど美味しいと思えない。
苦味が粘着質でスッキリしない。老班章を飲んだ後だから余計に比べてしまう。
まだ熟成3年めの2013年くらいまではよかったと思うが・・・。
飲んでひとくちでパッと花開く陽気な表現が小葉種のよいところだが、熟成でそれが落ち着くとつまらなくなってしまう。神童も二十歳過ぎればただの人って感じ。
この感じ、当店のオリジナルのお茶にもひとつある。
+【巴達古樹青餅2010年】
巴達山曼邁寨の古茶樹は中葉種。小葉種よりもちょっと大きく育つ茶葉だが、味の表現といい熟成のすすみ方といい、よく似ている。
葉底1
葉底2
茶葉が小さいのでじっくり蒸らすのはよくない。
白磁の蓋碗でサッと湯を切る淹れ方のほうが繊細な風味が引き出せたかもしれないが、それにしても小葉種は新しいうちが良いし、餅茶にしないで散茶のままのほうが良い。
体感はというと、やはり熟成させたほうが穏やかになっている。小葉種の茶酔いはパッとまわってサッと引く。軽やかで朝に飲みたいお茶。

ひとりごと:
蒸し暑い日がつづくせいか、冬の寒い寒いチェコのマルちゃんの工房で深夜に毎日見ていたお茶の番組シリーズ『一条 叶放訪茶』を思い出した。
見ていたら、そこから『茶有喝过才能说』につながった。
なかなかいい。
老茶の店の「03」「07」「12」「17」「20」がいい。薬膳の「13」もいい。かつて台湾にあった磚茶100モノを飲む「15」もなかなか。有機栽培のお茶を比べる「21」は希望の光。茯磚茶の「24」「25」はシブい。
山の中に竹の茶室をつくった「02」のだるまさんみたいな主人は一度お会いしたことがあって、そのときの印象そのまま。
それ以外のはちょっと苦手なのがあった。
なにが苦手なのか?と考えてみたら、「私キレイでしょ」を見せ合う女子趣味なお茶が苦手。女子が集まって「その服いいね!」をほめ合う必要性が、男子には理解できないのだ。女子趣味に意見はないが、男子までもが茶人服で襟巻きしているのはキモい。女性のチカラが強くなっている時代の現れとして歓迎するべきなのかな。
その点、老茶専門店の時代遅れな豹柄のシャツで我が道をゆくおっさん店主はカッコイイ。ますます希少で、もはやその人自身が老茶である。
うちは男子のお茶の店でありたいから、自分も老茶になるぞ。

老班章古樹純料茶10年 その2.

製造 : 2010年5月
茶葉 : 雲南省西双版納孟海県老班章古茶樹 老班章茶農協会認定
茶廠 : 孟海鴻福茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海 密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
上海の友人の店に預けていたサンプルの餅茶が数枚戻ってきた。
3種ほどあって、しばらく飲んでいないお茶ばかりなので確かめておく。
まずは老班章の2010年。
『老班章古樹純料茶10年』
老班章純料2010年
西双版納にいると試飲する機会の多い老班章のお茶。
この茶山の原料の茶葉価格が年々高騰してゆくのが春のニュースになって、中国全土にブランドが浸透している。
自分は好みではないから老班章の山には2008年から行っていないが、現地の茶友らはちょくちょく行っては「これはどうだろ?」と意見を求めてサンプルを持ってくる。1ヶ月に1つは老班章を試飲する機会がある。
ニセモノもホンモノも含めて美味しいと思えるのは1年に1つ出会えばよいほう。高騰した価格に見合う美味しさに出会うことはめったとない。
老班章にはひとつ気がかりなことがある。
茶葉の価格が高騰したため新老班章と称する茶地の開拓が周囲に広がった。2008年にはすでに周囲の山の広大な森林の開拓がはじまっていた。自然環境のバランスが変化しているはずだ。
老班章純料2010年
久しぶりにこれを飲んでみると、あんがい上質だった。
過去の記事には「舌にへばりつく苦味」と書いているが、今思うと適切じゃない。「余韻の長い苦味」と言うべきだろう。
とにかく苦味が美しい。枯れて清い感じがする。
透明感に深みがある。
余韻の広がりに風景が見える。
なんだか抽象的だが、美味しさが上にゆくほど抽象的な表現になるものなのだ。逆に、具体的な表現をさせるお茶はたいしたことなかったりする・・・かも。
体感はというと、暑い日に涼しい。
豊富なミネラルのせいなのか足の指に血がめぐる。毛細血管が開いて軽く汗をかくがのぼせるほどの上気はない。穏やかな茶酔いが眠りを誘ってウトウトする。
7年目になる熟成の風味はというと、密封して乾燥状態を保つように保存していたので大きな変化は無いが、無駄なところが落ちてより質素になった気がする。微かに蜜のような甘い香りが加わっている。煎がすすむと吐く息・吸う息にお香の煙のような香りが漂う。この地域の原種の品種特性が現れている。
様々なジャンルの音楽に様々な味わいがあるように、お茶にもそういう違いがある。もしかしたら、老班章の苦味の余韻はこれ独自のジャンルであって、他に代わりが見つからないのかもしれない。
もう一度味わってみたい苦味となって記憶に刻まれる。
老班章純料2010年
ひとつメモしておくと、この茶葉は5月の2番摘み。例年なら春の旬を外しているが、しかし2010年は80年ぶりの干ばつで雨が少なかったので、4月中旬の1番摘みの終わりくらいのコンディション。小さな新芽・若葉にそれが現れている。
茶樹の背が高いほど発芽の時期が遅くなりがちなので、もしかしたら大きな茶樹の1番摘みが混ざっているのかもしれない。
やや遅い春の茶葉は茶気が穏やかで、甘味が控えめになってちょっと痩せたような風味になるけれど、それが清潔感につながって好印象である。老班章だからといってフルパワーのチカラ比べが良いとも限らない。高いお茶だからチカラ自慢したくなるけれど。
早春の水分の少ない茶葉に比べたら水分を多く含む晩春の茶葉は殺青の鉄鍋炒りで焦がす失敗が少なくうまい具合に仕上がっている。熱伝導率のよい水が茶葉に均質な熱を伝えるからだ。このことが風味の透明感につながっている。
製茶の仕上がりを追求するなら、早春の茶葉を求めるのはリスクがあるなと思った。
葉底
葉底。雨の季節に入ったせいで茶葉の繊維がやや硬くなっている。

ひとりごと:
茶葉にはいろんなことが記録されている。
2010年5月の老班章の自然環境も茶樹の健康も。
お茶を淹れるとそのときその場所の環境がパッと蘇る。
この茶葉を手元に資料として残しておくと、これから出会う老班章のと比べられる。その違いから、自然環境と茶樹の健康についてもわかることがあると思う。


茶想

試飲の記録です。

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