プーアール茶.com

茶学 脳に伝える

茶葉と銅の茶則
気が静まらない。眠れない。
そんなふうに脳が騒いでいるときに、静まれ!と命令しても静まらない。
脳を、脳自身が制することはできないから、ヨガは身体からアプローチする。呼吸を通して骨や肉や内蔵や血のメッセージを脳に伝える。
同じことのできる習い事はヨガ以外にもあるだろう。お茶もそう。
脳と身体は主従関係にあるのではない。
だからお茶は自分で淹れないと意味がない。
水や火や土や金属や木や茶葉のような元素のメッセージを身体から脳に伝える。
ただそれだけのことを毎日続ける。
お茶することの教養とか健康とか、思いつく程度のご利益は脳が自分で思っているほどたいしたものではないから、とにかく自分で淹れて飲む習慣を身につけるのみ。

漫撒陰涼紅餅2015年 その5.

製造 : 2015年03月22日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山丁家老寨古茶樹
茶廠 : プーアール茶ドットコム
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : ゆるい密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
漫撒陰涼紅餅2015年

お茶の感想:
陰の味のお茶。
+【漫撒陰涼紅餅2015年】
最後の2回分になった。
漫撒陰涼紅餅2015年
出品枚数9枚。上海と日本の勉強会にも出したから、飲んだことのある人は40人くらいだろう。
40人全員が陰の味に出会えるはずがない。たぶん10人くらいだろう。
10人はこのお茶に選ばれたとも言える。
陰の味の声は小さい。
茶摘みから製茶までの話を聞いて飲むからこそ、ささやきに気付くかもしれないけれど、まったくの予備知識無しにお茶の味だけから陰の味を見つけられる人はまずいないと思う。
心を開く準備がなければその美しさに出会えない。
品評会の審査員のように”評価”の心で点数をつけると、陰の美の扉はまず開かない。平等ではないのだ。
茶壺注ぎ
茶壺蒸らし
茶杯注ぎ
上海人のお客様が、友達らとこのお茶を飲んで後悔したという話を聞いた。
おなじく陰の味のお茶。
+【一扇磨単樹A春の散茶2015年 その4.】
中国でお茶好きが集まっていっしょに飲むと、お茶の良し悪しをズケズケ言う。
陰の味の美しさを感じ取れた人はよいけれど、感じ取れなかった人は腹いせに茶葉の悪口を言う。
それ以降、このお茶についてはみんなで飲むのを避けられるようになる。
ひとりで密かに飲むか、陰の美のわかる人とだけいっしょに飲むか。
上海人のお客様はひとりで飲むことにしたらしい。
交友関係の広い人ではあるけれど、ひとりで飲むお茶の味を知るキッカケになったお茶。
葉底
『漫撒陰涼紅餅2015年』に選ばれた10人もまた、他人にそのことを言わないだろう。言っても仕方がないから。
みんなでいっしょに飲んで美味しいお茶もあるし、そうじゃないお茶もある。有名になるお茶だけがすごいというわけじゃない。

ひとりごと:
陰の味の美しさはお茶やお酒に宿るけれど、料理には少ないよな。
ま、空腹に陰の味は響かないけれど。

92紅帯青餅プーアル茶 その6.

製造 : 1992年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村古茶樹
茶廠 : 西双版納孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 香港ー広州ー上海 その後密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
上から着火した炭
火が下に潜る
鉄瓶と瓶掛
温め

お茶の感想:
先日の『紅絲帯プーアル青餅96年』と『92紅帯青餅』を続けて飲んでみた。
+【紅絲帯プーアル青餅96年】
+【92紅帯青餅】
1996年のお茶と、1992年のお茶。
熟成は1996年の『紅絲帯プーアル青餅96年』のほうがすすんでいる。保存環境の違いもあるが、それよりも茶葉の性質の違いが大きく熟成のすすみ具合に影響していると思う。
”7542”の「紅絲帯プーアル青餅96年」と、”7532”の「92紅帯青餅」。
92紅帯青餅
茶葉の等級の違いが品番に現してあるが、これについて詳しく知りたければ過去のお茶のページからいくつかを参照してほしい。
+【過去に紹介したプーアル茶】
カンタンにういと4級と3級。7532のほうがより小さな新芽・若葉を多く配合してある。
どちらも国営時代の1970年代末頃から1990年代中頃までに出荷量の多いお茶だったが、もちろんその中にピンキリがあって、ある年のある出荷分だけ優れていて、それ以外のおそらく9割はたいしたことなかったはずだ。
その理由はカンタンで、産量の少ない早春の新芽・若葉が多く配合されるのは、そんなにたくさん作れないから。
餅面(餅茶の表面)から早春の新芽・若葉の上質を見分けるのはカンタン。
金芽と呼ぶ新芽が爪の先ほど細かいこと。若葉が黒々と深い色をしていること。
金芽と呼ぶ新芽が2センチ以上も大きく育っていて、若葉の色が薄く黒に深みが無いのは、早春のタイミングを外したものなのでたいしたものにはならない。春の産量の9割以上がそんな茶葉だから仕方がない。天候不順で美味しいお茶はできない年もあっただろう。
4級の”7542”は出荷量がとくに多いお茶だったが、その中で早春の新芽・若葉がたっぷり配合されたものは、ぱっと見て3級の”7532”との見分けがつかないくらい細かな茶葉だったから、4級の”7542”だから早春の純度が低いというわけではない。
金芽と呼ぶ新芽が爪の先ほど細かいこと。若葉が黒々と深い色をしていること。
茶葉
今、産地に入って茶摘みを経験してわかることは、これを採取するのは茶樹の手入れが必要であるということ。
このお茶で確認済み。
+【易武春風青餅2011年】
近年狙っている野生に近い状態で育つ茶樹では、このような茶葉を採取するのは難しい。野生に近くなるほど晩春に芽が出ることと、等級分けできるほどの産量が無いことで、まず不可能だろう。
茶樹に日当たりを良くして、台刈りや剪定で枝分かれを促して、新芽の数を増やさなければならない。しかも、乱獲して栄養が薄まると若葉の色は薄くなるから、せいぜい一年一采くらいに収穫を制限しなければならない。人為的な栽培となる。
このことから、昔と今とでは価値感というか、茶葉に求める理想が違うことに気がつく。
時代が違うのだな。
自然の恵みが無尽蔵だった時代。経済がまだ世界征服を果たしていなかった時代。お茶が男の嗜みだった時代。
時代背景をふまえて『紅絲帯プーアル青餅96年』と『92紅帯青餅』とを見ると、”7532”の『92紅帯青餅』のほうが男らしいお茶だと思う。
92紅帯青餅
92紅帯青餅
92紅帯青餅
茶気が強く、それに伴う苦味・渋味が効いていて辛口。ひとくちで目の前が別世界になる茶酔い。
その点で、”7542”の『紅絲帯プーアル青餅96年』は芳醇な甘さがあって美味しいが、その分だけパンチ力に欠ける。耐泡(煎が続く)が良いが、その分だけ未練が残って消えるはかなさに華がない。
お茶の茶気はお酒のアルコール度数と似ている。
強い酒を好まない女性が酒の嗜好を変えてゆくように、高級茶もまた強い茶気を好まない女性がお茶の嗜好を変えつつある。
高級茶をつくりたければ女性の意見を聞いちゃいけない。モテようという下心があってはいけない。
一般的に女性は茶葉にお金を使わない。道具や衣装など他人に見せるところにお金を使う。お茶の味わいと人の心の動きみたいな得体の知れない”美”に価値を認めないのだ。
「なぜもっと頑張らない?」「もっとこうしたら良いのに!」・・・と、当店の運営にアドバイスをくれる日本の友人たちに、ゴニャゴニャ言ってお茶を濁すばかりだけれど、たまにはスッキリ回答したい。

ひとりごと:
消えの美しさと余韻と、仕事もお茶の味のように美しくありたい。

勉強会・京都 味を知る その1.2月12日

味を見る

テーマ:
2007年頃からはじまった生茶の上等の観点「茶樹と茶葉の健康」を、お茶の味からどのように解釈するのかを学びます。
西双版納の高級茶を扱う一部の茶商が使う用語、例えば、凉・烈・软・燥・清・爽・滑・刮・寒・化掉・生津・回甜などをお茶の味を通して解説します。
舌に経験を積むために、当店では売り切れた品や非売品クラスの生茶をいくつか飲みます。

日時:
2月12日 月曜祝日 午後2時から6時頃まで

場所:
京都 岡崎 好日居(地図)

茶単:
弯弓古樹青餅2014年
弯弓単樹A春の散茶2015年
刮風寨単樹小餅2016年
困鹿山単樹の散茶2016年
など。当日まで変更することがあります。

注意:
お茶をたくさん飲むのでお腹に負担がかかります。お昼ごはんをしっかり食べてきてください。
試飲の邪魔になるのでお菓子を食べません。
味のついていないバケットパンのみご用意いたします。

紅絲帯プーアル青餅96年 その1.

製造 : 1996年
茶葉 : 雲南省西双版納孟臘県易武山
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 香港 広州乾倉 日本室内紙箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
南部鉄瓶
銅の瓶掛

お茶の感想:
古い友だちが東京から会いに来てくれた。
遠方より友来る。
美味しいご飯とお酒とお茶と、いい時間が流れた。
歳をとるほどこういう時間が輝きを増してくるよな。
忘れていた記憶が芋づる式に掘り起こされる。時が経てばこんなふうになにもかもが美しく宝物になるなら、今の我慢ならないことは熟成味のスパイスみたいなものだ。
ところで、上海でお茶の仕事を始めたばかりの2004年の頃に、友達が景気付けにたくさん買ってくれたお茶があった。
+【紅絲帯プーアル青餅96年】
ほとんどプレゼントにしたそうだが、手元に2枚残っているらしい。
・・・ん?
今なんて言った?
紅絲帯プーアル青餅96年
内票と餅茶
紅絲帯プーアル青餅96年
紅絲帯プーアル青餅96年
出たーーーーーーっ!。
うおーーーーーーーーーーー!。
生きていたらいいこともある。
14年前の売値は1枚19,000円だったと思うが、現在値をつけるなら1枚18万円かな。上海なら25万円はいけるだろ。
1996年のお茶だから22年熟成・・・という単純な価値ではない。原料の茶葉の産地や製法が微妙に違うのだが、その違いが再現できない。
もしもこのお茶をホンモノのプーアール茶とするなら、現在のプーアール茶はどんなに高価であっても似て非なるレプリカモノ。写真よりも明らかな事実であるお茶の味がそれを証明する。
友人にそのことを伝えると、価値の分からない者が飲んでも仕方ないと言い出して、それなら自分のオリジナルのお茶4万円相当と交換しようと提案した。なかなか悪くない条件だろ・・・お互いに。
たぶんお互いにそう思っているのだけれど、友人は美味しいものにツキがある。そういう星のめぐりなのだ。
餅面の茶葉
紅帯と内飛
内飛
14年前これを手放したときはもっと青かった。
紹介文章を振り返ってみると、蓋碗でサッと湯を切ってあっさり淹れたほうがよいと書いているけれど、今は違う。土モノの茶壺でじっくり淹れたほうがよい。
チェコのマルちゃんの出番。こういうお茶はお茶ファンのつくった茶器でないと許されない。
プーアール茶
緑茶っぽい新鮮味はほとんど残っていない。常温の焦げによるココアのような芳ばしい香り。渋味・苦味を丸め込んでしまう透明感のある甘味。柑橘系の酸味。
この味から考えて、文章の間違いを訂正した。この茶葉は易武山のもので孟海茶区のものではない。
さらに、広州の倉から出たところのを仕入れたが、その前に香港の倉に入っていたにちがいない。そういう味。身元がはっきりしている味。
プーアール茶
最近話題にしている保存熟成の茶葉の芯の水に注目してみる。
見て触ってすぐにわかるが、この茶葉のミクロの繊維の水道管はもう水をたっぷり含むことができなくなっている。茶葉は軽くてカサカサで弾力も失っている。
友人は14年間押入れの中に餅茶専用の紙箱ごと保存していたらしい。”常温の焦げ”メイラード反応がすすんで茶葉の繊維を劣化させるのだろうか?いや、やはりそれだけじゃない。微生物がなんらかの仕事をしているだろう。それが初期の段階だけなので発見しにくいというか、証明しにくいのだ。
内票
内票。
この説明にちゃんと”適度発酵”と書いてあるけど・・・。
酸化発酵のことなのか微生物発酵のことなのかもわからない。
ま、わかっていても再現できない。
葉底
葉底はあまり変色がすすんでいない。茶湯の色ほど赤くなっていない。
長期保存の茶葉が水分をたくさん含んで酸化がすすむと、葉底も赤く変色がすすむ。
乾燥状態が保たれると、わずかな酵素反応とメイラード反応で熟成してゆき、それは葉底の変色を急速にすすめたりはしない。
お茶の味は熟成がすすんでも、葉底の色は味ほどに変化しない。
ということかな。
およそ20年モノのプーアール茶は数あれど、たいがい、お茶の味の熟成のほとんどすすんでいないものか、葉底が赤く変色して湿気た味のするものか、どちらかである。「そんなのみんなニセモノだ!」と言ってしまったら僕らの商売は難しくなる・・・。

ひごりごと:籾殻
籾殻もちゃんとある。
茶農家は専業化しちゃダメ。
籾殻の麹菌が農家の家のそこらじゅうに着いていないと。
米もつくって半自給自足をしないと、山の生態バランスが崩れてしまう。山の環境とお茶の味と、僕らの身体のコンディションと、すべてに因果関係がある。
地球はひとつ。
銅のヤカン
煮出して飲む
葉底を銅のヤカンに移して煮出して飲む。
今日は一日中このお茶で過ごす幸せ。

巴達古樹紅餅2010年 その25.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
鉄瓶
炭火

お茶の感想:
茶葉の芯にひそむ水。
茶葉の繊維のミクロの水道管に残るわずかな水が保存熟成にとってマイナスである・・・とは言えない。
逆の可能性も考えてみる。
物理的には無理なはずだが、水を完全に抜くと茶葉の繊維が傷むだろう。繊維の緊密な状態を保つ水のあるほうが、保存熟成にとって有利な面があるかもしれない。そう考えると思い当たるところもある。
巴達古樹紅餅2010年
巴達古樹紅餅2010年
この紅茶には2015年の秋に熱風乾燥を試したサンプルがあった。
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶 その17.】
100度に近い熱風を与えているので焙煎とも言える。
このときの文章を振り返ってみると、茶葉が生まれながらに持つ酸化酵素の変化に注目している。70度で失活する酵素なので、熱風乾燥後はこれによる変化は少ないだろう。しかし、熱による茶葉の繊維の劣化については触れていない。
乾燥の「燥」と表現していたドライな風味は、酵素だけでなく茶葉の繊維の変化にも原因があるのではないのか?
それから2年経つ。
実はこのサンプルは上海の友人の店に残してあって、興味のありそうなお茶マニアに飲んでもらっている。
その評価はというと熱風乾燥をしていない”生”のほうが圧勝。
”生”のどこがよいのか。
熱風乾燥
生
上: 熱風乾燥
下: 生
この2つを飲み比べると、味の違いはわずか。
熱風乾燥のほうがやや酸味が強い。味の輪郭がハッキリしている。”生”のほうは全体的にぼんやりしている。
それよりも口当たりに大きな違いを感じる。
”生”のほうは口に溶ける。喉をすべる。腹になじむ。
「美味しいですか?」と誰かに聞いたら、その人は舌先や鼻先に意識を集中して、どちらも美味しいし個人の好みの問題ということになるだろう。
しかし、中国茶の上等は舌先や鼻先の味にはそれほど大きな価値はつかない。
口感。体感。これは味の好みほど個人差が現れない。
口感や体感を左右するものがどこから来るのかを知るのは、お茶づくりの大事なところ。
ところで、熟成のパターンはひとつではない。
生茶・紅茶・熟茶を長期熟成させているが、熟茶の茶葉は芯の水が溜まりにくくなっている。
微生物発酵の黒麹菌の菌糸が茶葉に潜り込んで、ミクロの水道管に穴をいっぱい開けるからだろう。多少湿度の高い環境に保存しても茶葉が水を吸収できないから、結果的に乾燥を保った状態となる。
20年めのこのお茶。
+【大益茶磚96年プーアル茶】
熟茶
今あらためて飲んでみると、おしるこ。
粉っぽいというか埃っぽいというか、小豆のようなきな粉のような風味がある。甘味・旨味は穀物レベルの豊かさを感じる。
常温の焦げと呼んでいるメイラード反応がさらにすすむと、豆っぽい風味はお香のような清らかさを得る。
2010年のオリジナルの熟茶『版納古樹熟餅2010年』はまだそこまで粉っぽくないが、この7年間の変化をふりかえると”常温の焦げ”はすすんでいる。このまま20年経つと同じように豆っぽくなり、さらに熟成がすすむとお香っぽくなるだろう。なってほしい。
熟茶は微生物発酵の時点で”生”な要素を失っている。
熟茶の熟成変化と、熱風乾燥の『巴達古樹紅餅2010年紅茶』のこの2年間の変化と、ちょっと似ているような気がするのだ。
葉底
左: 熱風乾燥の葉底
右: 生の葉底
”生”のほうがより赤く変色がすすんでいる。同じ環境に保存していても茶葉の繊維の水を含む量が”生”のほうが多いとしたら、この色の差は当然である。
すごく微妙だけれど、指で触った感じが”生”のほうがフワフワ柔らかい。
生茶のようにつくったこの紅茶もまた、涼しさと潤いとが求められる"陰”のお茶。
もっと熟成がすすんで、甘くしっとりした味わいになっても、身体を温める効果が強く出てきても、涼しさと潤いとを失ってはいけない。
保存熟成の茶葉の芯にわずかな水が保たれる効果が、ここにあるかもしれない。

ひとりごと:
そしてこの茶葉の水は、保存のときの通気を許すことによって少しずつ新しいものに入れ替わったほうが良いかもしれないと推測している。
なぜかというと、水は一箇所に溜まろうとするから。
完全に密封してまったく空気が動かないようでは、餅茶全体の茶葉にまんべんなく水がめぐるのは難しいだろう。それとも気圧の変化やわずかな温度の変化が水を動かしてくれるだろうか。
家庭で1枚ずつ密封保存している餅茶は、たまに崩すときに密封の袋の口を開けたり閉めたりしているだろう。それで十分だと思うけれど。

巴達古樹紅餅2010年 その24.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・銅のヤカン・炭火
醒茶器

お茶の感想:
このお茶を醒茶器にかける。
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
熟成8年目になり、茶葉の繊維の結束がゆるんできて、ミクロの水道管が水を溜めにくい状態になっているのだろうか?先日醒茶器を試した同じ種類の2016年のこの茶葉よりも出てくる水の量が少ない。
+【章朗古樹紅餅2016年 その3.】
同じ環境に保存していても茶葉のコンディションによって水の保有量は異なる。
一般的に熟成期間の短いうちは水を多く含みやすいから吐き出す量もそれなりに多くなるので、保存環境をどうするかは思案のしどころ。
醒茶器を鉄瓶の上
8年前にはそんなこともよくわかっていなかったけれど、このお茶はうまくいっている。
最初の3年目くらいまでは生茶のプーアール茶と同じように通気を許して、4年目くらいから乾燥気味に保存するようになり、5年目の2015年の秋に上海の事務所を閉めて西双版納や日本へ搬出するために1枚毎に密封したのを機会に、現在もそのまま密封保存している。
意図せずとも茶葉は水分の少ない状態で密封されることになった。
このまま密封しておくのか、それとも再び通気を許してみるのか。
今また別れ道に立ったところ。
というのも、醒茶器で加熱して出てきた水の臭いは古い土壁みたいな感じで、雑味につながりそうだから。
実際に醒茶器でこれを取り除いたお茶は華やかで新鮮味がある。
炭火
鉄瓶
チェコ土の茶壺
巴達古樹紅餅2010年
水分をもうちょっと茶葉から出して保存したい。
しかし、加熱して強制的に乾燥させるのはナシだ。
熱で茶葉の成分を変質させると、”生”に仕上げた魅力が失われる。その魅力とは、お茶を淹れる湯の熱が少しずつ茶葉の成分を変えて一煎一煎に多彩な表情を見せるところ。”生”のそんな魅力をいったん知ると、火入れで安定した風味は面白くなくなる。
オートマ車よりもマニュアル車がよい人は、操縦や走りの味わいを味わえる人。同じようにお茶淹れの味わいを味わえる人向けのお茶。自分でお茶を淹れる中国茶ならでは魅力がある。
高温の熱が成分を大きく変化させる。ならば、低温の熱の晒干(天日干し)という手がある。もしくは晒干と同じくらいの弱い熱を炭火の照射熱から得る手もある。
うーん。とりあえず1枚テストしてみるか。

ひとりごと:
鉄瓶の工房を見学してきた。
鉄瓶の工房
砂鉄
ガチホンモノの砂鉄で鉄瓶をつくったら、どうしても1つ40万円以上はするな・・・。

刮風寨冬片老葉2016年 その4.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の片口+炭火
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す

お茶の感想:
炙るお茶を試す。
もういちどこのお茶。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
茶葉を炙る
茶葉を炙る
漫撒山の原生林のまん中にある刮風寨茶坪。
写真のある記事。
+【刮風寨古樹紅茶2015年・秋天 その1.】
こんな老葉ぜいたくすぎるが、茶漬けにする。
炙り具合は、茶葉の香りが芳ばしくなってくるのでカンタンにわかる。
白いご飯と片口と
湯を注ぐ
茶葉アップ
火の通った茶葉は湯に浸かると黒く変色する。まだ緑の残っている部分はあまり火の通っていないところ。このムラのあったほうが風味がふくらむ。
片口から湯気
お茶漬け
茶葉のほんのり焦げた芳ばしさと、大葉の透き通った旨味と、米の甘味と。
これまで食べた中でいちばん美味しいお茶漬け。
勉強会・京都 炭火とプーアール茶 1月27日・28日にて試食予定。

ひごりごと:
乳酸発酵の製造工程があると思われるちょっと酸っぱいお茶。
+『昆明老方磚92年 その1.』
これもお茶漬けを試してみた。
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
銅のヤカンで炭火の低温90度くらいで30分間煮出した。
お茶の酸味と米の甘味の相性がよいかと思ったが、これはダメだった。
陳香(お香のような香り)のクセが強くて、米のほんのり甘い香りを消してしまう。

勉強会・京都 炭火とプーアール茶 1月27日・28日

炭火とプーアール茶
テーマ:
炭火とプーアール茶。
炭の”火”のチカラを活かしてプーアール茶を淹れます。
店長ふじもとが江戸前寿司職人になった気分で、
茹でたり、煮たり、炙ったり、お客様の目の前でお茶づくりを仕上げます。
プーアール茶漬けなど、素食もあります。
西双版納から茶商友達のゲストもあります。

日時:
1月27日 土曜 午後3時から7時頃まで 
1月28日 日曜 午後3時から7時頃まで 

場所:
京都 岡崎 好日居(地図)

予約:
1回の定員5名。締め切りました。

お品書き:
プーアール茶数種。
素食をご用意いたします。
豆腐料理・珍味・お茶漬け・お菓子・お酒など。

刮風寨冬片老葉2016年 その3.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 銅のヤカン+炭火
炭火

お茶の感想:
プーアール茶は沸き立ての熱い湯で淹れるのが基本とされている。
蓋碗なり茶壺なりに熱湯を注いでサッと湯を切る短時間の抽出により、茶葉を煮やさないようにして、お茶の新鮮な香りや涼しい味わいを求める。熱い湯で煮やしてしまうと重くなって涼しさを損なう。また、90度以下に温度を下げると煮える問題はないが、香りも味もぼやけて涼しさを欠く。新しい(熟成数年くらいの)生茶は生っぽさが鼻につく。
熱湯で淹れるプーアール茶
蓋碗なり茶壺なりに湯の熱が吸収される分も考えて、やはり熱湯がふさわしい。
西双版納で淹れていたお茶を上海に持ってきて淹れると、上海のほうが美味しくなる。
海抜600メートルくらいの西双版納の沸点は97度くらい。海抜0メートルくらいの上海の沸点は100度くらい。たった3度の差がお茶の味に影響する。
温度が低くても、持続させて熱量でカバーしてはどうだろ?
茶馬古道のチベットやネパールなどの山岳地帯の遊牧民がヤカンで煮たお茶にバターを混ぜて飲むのをテレビ番組などで見るが、海抜3000メートルを超えるところでグツグツ沸かしても90度に達しないはずだから、もしかしたら煮え味の問題はないかもしれない。
そこで、炭火の出番。
炭火
銅のヤカン
炭火の湯を観察していると、90度から80度くらいの”静かな温度”が長く続くことに気付く。
これは他の熱源の電気やガスでは難しい。
電熱ポットには温度調整できるものがあり、80度に設定すればよいと思うかもしれないが、その構造上センサーが80度から外れた温度を感知すると電熱のオン・オフを頻繁に繰り返し、ポットの中の湯は熱源に近いところは熱くて遠いところは冷たくて、暖流と寒流が混ざり合い湯は荒れている。こんなところに茶葉を放り込んだら味も荒れるだろう。
炭火の照射熱がヤカンを下からふんわり包み込んで生まれる”静かな温度”の湯。
温度計は見なくてもよい。
鉄瓶なり銅のヤカンなりで湯を沸かすのに慣れてくると、沸騰するまでのサインをいくつか見つける。湯気の出方とか、湯の動きとか、鉄や銅の微かな音鳴りとか。沸騰する前後の湯を飲んで、口の感覚で違いを覚える手もある。
そうすると、だいたい80度から90度くらいをキープする炭火の加減がわかるようになる。
まずこのお茶を試す。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
刮風寨冬片老葉2016年
刮風寨冬片老葉2016年
湯気
茶湯の色
30分ほど湯に浸かってこの透明な茶湯の色。
味も透明感ありながら生っぽさはない。もともと火入れの甘い製茶なので、白茶の寿眉に似た草っぽい生さがあったが、香りは新鮮味を残しつつ味わいはしっかり晒青緑茶。いわゆる生茶のプーアール茶。大きく育った茶葉なので、渋味・苦味がほとんど無く、ぼんやり輪郭の見えない味。
このくらいが飲み頃だと思うが、試しにさらに1時間浸してみた。
炭は燃え尽きるのを待つだけだが、途中隙間が空いて空気の通りが良くなると火力が上るので、たまに見て火箸で炭のポジションを調整する。
銅のヤカンの中
茶湯1時間後
香りは、草というより茶葉に近づき、漢方っぽいスパイスもある。
味は、柔らかい苦味とちょっとの渋味が加わりキリッとしてきた。
煮えたときに出てくる濁りや、舌にねっとりした感じは無い。爽やかさを保っている。
茶葉の性質上、このお茶はこの淹れ方が最も適しているだろう。
次回はこの淹れ方が適してなさそうな茶葉で試そうと思う。

ひとりごと:
炭火には、茶壺や蓋碗のように手の延長になってくるような感覚がある。
火箸で炭と炭の隙間を調整したり、角度を変えてみたり。灰匙で灰を寄せてみたり、灰を避けてみたり。
まだ思うようにはゆかないけれど、自転車に乗ってバランスをとるような身体の感覚。
電熱のダイヤルやガスのつまみを調整するのとは違うよな。
炭火使用後
炭火


茶想

試飲の記録です。

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