プーアール茶.com

上海の冬の味わい

夕暮れ時を上海の坊と散歩した。
12月になった上海のピリッと冷たい空気の味わいを味わう。
8回目の冬を迎える坊もなんとなくわかっていて、言葉少なく散歩を楽しんでいる。
わざわざ海を見にゆかなくても、上海の夕暮れの一瞬にはなんとも言えない寂しさと温もりとを感じる。
プラタナスの街路樹の落ち葉の色に、坊はなにかを感じていた。
歳のせいか、こういうことに気付くのに子供の眼を借りずにいられない。
12月の雨の上海
でも、まだ感じられる。
この美しさを坊と共有するのが嬉しい。このためだけに上海に来てもよい、
お茶の味わは、本当はこういうところにある。
仕事柄、上質とか上等とか、まるで試験官や審査員のごとくお茶を評価するのが常になっているけれど、そんなものはお茶を味わうことの全体からしたら1ミリにも満たない。マジでそう思う。
最近は、どんなお茶を淹れるのにもチェコ土のマルちゃんの茶壺を使う。勉強会でも使う。
チェコ土の茶杯
お茶の種類によっては、香りを立てるために「白磁の蓋碗で淹れるべきです」という意見をいただくこともある。
でも、それは心理的な作用を無視した上での話だ。
白磁やガラスはたしかに香りへの影響が少ないだろう。けれど、白磁やガラスの持つ味わいを、見た目や手触りから伝わる冷たい味わいを、無視できるというのか?
夏のガラスの風鈴の音を、金属よりも涼しくないと言えるのか?
正しさを求めるために、自分の中の微かな心の動きに蓋をしてしまう。そんなこと自分にはできない。
できないというか、しないのだな。
こういうことをはっきり主張したほうがよいような気がして・・・。

勉強会・上海 生茶の加工 12月16日・17日

餅茶を炙る

中国語メインの講義です。日本語の補足もします。

内容:
生茶のプーアール茶は”寒”の強いお茶。
とくに寒い季節には気持ち良く飲めません。
生茶は産地から消費地に運ばれる間のどこかの時点で、自然な変化や二次加工を経て、”寒”から”温”へと性質を変えていました。
圧延加工、火入れ、微生物発酵。
2017年の春の晒青毛茶に手を加えて、変化のいくつかのパターンを実際に味わってみます。

参加費:
ひとり400元

場所:
上海 天山茶城 1階のお店
中山西路520号天山茶城1252 云元谷 
玉屏南路の天山茶城正門から入ってまっすぐ35メートルほど。右側の店。

日時:
12月16日 土曜 午前10時から 3時間半ほど
12月17日 日曜 午前10時から 3時間半ほど
どちらか。

予約:
募集終了
+【店長にメール】
1回の定員は5名様までです。
20分前から会場に入れます。

お茶を飲むとお腹が減ります。
事前にお腹を満たしておいてください。

曼晒古樹青餅2017年 その2.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマー曼晒
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
胡桃の炭
炭炉に五徳

お茶の感想:
炙るお茶を試す。
圧餅してから4日目のこのお茶。
+【曼晒古樹青餅2017年 その1.】
表面だけ炙る
表面の茶葉を剥がす
圧餅に失敗した形の悪いのを使う。
涼干4日めだが、まだ乾ききっていない。
外側の茶葉はパリパリに乾いているけれど、布で絞った凹の中心部はまだ水分があってちょっと柔らかい。
中心部の緑っぽい部分がまだ湿っている
室内の温度は25度。湿度は50度。洗濯物なら1日で乾く環境だが、茶葉はそうはゆかない。毛細血管のようなミクロの管が張り巡らされて、水を逃がさない。圧餅して固形になるともっと水は逃げない。環境によっては、自然に微生物発酵がはじまるだろう。
乾ききるまでの数日間で大増殖はしないが、種が宿ることはあるかもしれない。良性の菌類が天然の抗生物質をつくって残すかもしれない。
現在のメーカーの効率を追求した圧餅で、そんな余裕はあるだろうか。
餅茶を炙る
さて、炙るお茶。
前回は焙煎を試したが、炙るのは焙煎よりも短時間(10分以内)で、高温の熱で、微妙に茶葉を焦がした風味を求める。
唐代の「茶経」に出てくる団茶の煎じ方を意識してみる。
絵で見る団茶は、餅茶よりも小ぶりだが厚みはありそう。
紐を通して吊り下げて保存される。茶葉が空気に晒されても平気な感じなので、製茶は晒干で仕上げているだろうし、熱を通しすぎないよう”生”を残しているだろう。そうだとしたら生茶に似ている。
茶経に書かれているお茶の味の清涼感からすると、微生物発酵はほとんどないと思われる。
炙った茶葉を石の薬研(やげん)で細かく挽くのだったかな・・・。(はっきり覚えていないし、確かめもしないが・・・。)
現在の生茶のプーアール茶は、繊細な味と耐泡(煎の続く)を求めて、茶葉をできるだけ崩さないようにしている。1煎・2煎・3煎・・・と、だんだん熱が入ってお茶の味が変化してゆく”生”の魅力を嗜む。
薬研で茶葉を細かくする理由は、なんとなくわかる。
炙って焦げの芳ばしさが出てくると、焦げによる雑味も出る。茶葉を挽かずにそのまま淹れると、味と香りがバラバラでまとまらない。香りの良いのは1・2煎め。味の良いのは3・4煎め、という具合になる。
香りと味をひとつにまとめるのに、炙りたての茶葉を挽くのは有効な手だと思う。
手元に薬研がない。
ま、いずれ手に入れるとして、今回はいつもより抽出時間を長めにして対処する。
炙った茶葉を煮る
炙った茶葉を煮る
西双版納からちょっと北の思芽市の陶器をつかう。
炭火の弱い火で短時間煮る。1煎め3分、2煎め5分、3煎め7分。だいたいそのくらいで飲みきる。
それ以上煮ると重くなって爽やかさが失われる。3煎めにはすでに枯れてゆくような味が感じられる。日が沈んでゆくような終わりの予感の味。
こういう飲み方は、茶葉に熱が通ってゆく過程の一瞬を切り取るタイミングが大事。なので、お茶を淹れる人と飲む人との呼吸が合わないといけない。ピリッとした緊張感を共にする時間。
3煎め

ひとりごと:
お茶を仲間たちと飲むときは、上質な茶葉ほど何煎もダラダラと飲み続けてしまう。
心理的には、仲間たちとの時間がこのまま続いて欲しいという思いもある。
でも、いずれは終わりにしなければならない。
何年か前に、上海で、友人の誘いで年配の老茶ファンの家にお茶を飲みに行ったことがあった。たしか書道の老師だった。フランス租界の雰囲気を残した上海の老房子は、年末の夜の寒さが染みた。
極上の老六安1970年代を飲ませてくれたが、1煎・2煎と驚くほど濃く淹れて、漢方薬のような強烈な薬味を味わった。3煎めでちょっと穏やかになったと思ったら、「落ちたからこれでおしまい」と言われた。
いっしょに飲んでいた3人も、心の中では自分と同じように「まだ飲めるのに・・・」と思ったに違いない。10gで3000元はするかな・・・ということは、1煎で1000元。
でも、この切り方、だからこそ余韻をいつまでも味わった。
人生はいつまでも続く。少なくとも明日には終わらないし、明日になってもそう思っている。
まだ早いかと思いつつ煎を切ると、この一煎がもっと愛しくなる。

曼晒古樹青餅2017年 その1.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマー曼晒
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
圧餅の布袋

お茶の感想:
昔のプーアール茶は産地と消費地の距離が遠く離れていて、運搬や保存にも日数がかかっていたので、出荷されたときと消費者の手元に届いたときの状態には大きな差があった。まるで別のお茶になっていたはずだ。
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。茶葉の変化は誰かが泡茶する(淹れる)ところまで続いて、誰かが飲んでやっと完成する。
昔の生活は医食同源だから、お茶の効能についてもうるさかったので、”寒”が強い生茶をそのまま飲むことは少なかったはず。寒の性質が消えて温の性質になるのを見極めてから飲んでいたに違いない。
温の性質へと変化するチャンスは、製茶・運搬・保存・泡茶のいたるところにある。
その観点から圧餅(圧延加工)の工程を見直したい。
ということで、自分でやることにした。
圧餅の石型
いつもは工房の職人さんがパッパと手際よくやってくれる。
2010年から職人の仕事を観察しているので、設備・道具・技術のなぜこうなのか?は理解しているつもりだが、いくつか疑問がある。現在のやり方は効率を優先しすぎではないかと疑っている。
圧餅でもっとも茶葉の質を変えるのは”蒸し”の工程である。
蒸して茶葉を柔らかくして密着させて固める。蒸すことの高温と水分が茶葉を変化させるが、この変化をマイナスと捉えるかプラスと捉えるかで結果は異なる。しかし、現在のメーカーの関心はそこにはない。より早く・より数多く・より美しく、という経済価値を追求するために、どちらかというと変化をマイナスと捉えている。原料の晒青毛茶の味に近いほうがハズレのない風味になる。
なので、積極的に変化させたければ自分で試すしかない。
ミャンマーのお茶
茶葉は今年の20107年春のお茶。
西双版納から西へ国境を超えて100キロほど、ミャンマーの景棟地区の山岳地帯に住む布朗族の村から数キロ離れた森の中に数十本の古樹の群生が昨年見つかった。お茶の名前にしている「曼晒」は現地の地名に漢字を宛てたもの。外国人が入るのが難しい地域なので残念ながら茶地を見れないが、このお茶を飲んでみたところ、なかなか良い。珍しく良い。
曼晒古樹晒青茶2017年
曼晒古樹晒青茶2017年
お茶の深い味には台刈りされていない樹高の高い古樹の特徴があり、やさしい体感には森の中の陰涼に育った特徴があり、香りの強さと忍泡(煎がつづく)にはあまり茶葉が収穫されていない無垢な健康が現れていて、水質の清らかさには有名茶山に共通する土質の良さが現れている。
仕入れることにしたが、もともと20キロ弱しかないお茶。自分に回ってきたのは8キロほどで、このうち6キロを圧餅する。当店で唯一出品できる2017年の春のお茶となる・・・かも。
2017年の春は天候が悪くて、価格も高騰して、乱獲もつづいて、西双版納のお茶には手が出なかった。山続きのミャンマーやラオスの山岳地帯には清朝の貢献茶ブームのときに植えられた茶樹がひっそり森の中に生き続けて、樹齢200年を超える古樹も多い。越境のお茶の販売は年々増えているが、産地偽装のための大規模栽培・大量生産もはじまっているので、ミャンマーやラオスといえども茶葉の質はひとつひとつ吟味するしかない。その中で20キロ以下は、ちょうど農家が家族総出で5日ほどかかってつくる量。その生産量からしても森の古茶樹の可能性がある。
茶地を見ていないので無農薬・無肥料を確認できないが、西双版納の無農薬・無肥料と共通する、あるいはそれ以上の清らかな風味なので大丈夫と判断した。農薬や肥料の問題が出てくるお茶は、それ以前に茶樹が健康を崩したり、森林が荒れたりする風味が現れる。
現地に行った愛尼族の若者の話からすると、過去に(少なくとも20年間くらい)誰も摘んでいないので”野生茶”と呼べるかもしれないが、野生茶には品種に別の意味を持つので、そう呼ぶのを避けている。
お茶の味からすると人が飲んできた歴史のある品種。易武山の甘いお茶に似ている。おそらく清朝の時代に誰かが植えて育てていたはずだ。山岳少数民族は村ごと移住するので、栽培の歴史は忘れられやすい。
さて、圧餅。
石型を近所の茶友から借りてきた。
357gサイズの石型なので180gサイズにするにはちょっと大きくてカタチがキレイにキマらないだろうが、それは問題じゃない。問題は”蒸し”具合。
ミャンマー曼晒の古樹茶
茶葉を蒸す
茶葉を蒸すのは料理に使う鍋と蒸し籠。今回、専用の蒸し筒は使わない。
蒸しながら茶葉を何度かひっくり返して、手の感触で蒸し具合を探る。このため専用の蒸し筒は使えない。
このやり方では蒸気の温度が低い。90度くらいしかないだろう。
近年の茶廠は蒸気に圧力をかけているので余裕で100度を超えているはず。
コンプレッサーの蒸し機
鉄鍋の底に穴を空けたちょっと昔のやり方でも90度は超えるだろう。
鉄鍋を逆さにした蒸し機
蒸気の温度が低いと茶葉の柔らかくなるのに時間がかかる。蒸し時間が2倍くらい長くなる。
これだけでも茶葉の変化に違いができる。
蒸しているうちに茶葉の香りが変化してくる。
蒸して熱々の茶葉を手で袋に詰める
蒸して柔らかくなった茶葉を布袋に詰める。専用蒸し筒を使わないとここがちょっとスムーズじゃないので一時的に温度が下がるが、このあと円盤型に茶葉がなじむよう二度蒸しする。
この蒸し時間を3段階に分けてみた。

成形
成形
石型に乗って揺する
布を絞って石型で圧す。石型の上に乗って3分ほどユサユサするが、揉捻と同じような効果があると思う。
蒸しの時間が短いのは乾燥させると餅形が崩れる。
圧餅失敗
これは失敗。11枚ほど失敗した。
蒸し時間をちょっと長めにした10枚と、もっと長めにした9枚と、合わせて19枚だけがなんとか出品できるレベル。
ちょっと長めの10枚は、餅面の茶葉がゆるくてポロポロ崩れやすい。
蒸し具合ちょっと長め
このゆるい固まり具合は易武山の90年代の餅茶に似ている。このお茶がまさにそうだった。
+【真淳雅號圓茶96年】
もっと長めにした9枚は、茶葉がより柔らかくなって成形もうまくゆくので餅形はキレイである。餅面の茶葉がペタッとしている。現代の工房の鉄鍋の底に穴を空けた蒸し器によくある感じ。
蒸し時間長め
蒸し時間長め
蒸し時間が長くて茶葉が柔らかくなるほど揉捻効果も大きくなる。
蒸したことで茶葉が含む水分量は乾燥状態の180gにプラス20gほど。蒸し時間が長くなるとさらに3gほど増える。水分が多くなるほど乾燥に時間がかかり、茶葉の変化も長く続くが、晒干をスタートする時間によって乾燥までの時間はまちまちなので、水分量の多い少ないはそれほど大きな問題じゃないと思う。それよりも揉捻効果のほうが大きく影響する気がする。
涼干
涼干(陰干し)2時間。
晒干(天日干し)半日。
さらに涼干一週間。
ゆっくり涼干するのが大事。
乾燥するのを待てずに味見してみた。
圧餅後の試飲葉底
圧餅後の試飲茶湯
圧餅後のはあきらかに味も香りもぼやけて美味しくない。
ま、そんなものだ。この効果はこれから何年もかけて保存熟成がすすむことでやっとわかる・・・はず。

ひとりごと:
圧餅を易武山の私人茶荘がしていた1950年より以前は、農家が米を家庭で栽培してストックしていて、大豆を発酵させた醤油づくりも家庭でしていて、それに使用された竹籠や麻袋を使いまわしで茶葉を晒干したりストックして、良性の麹菌が茶葉に付着するチャンスが多かったはず。
現在、お茶が売れる農家では専業化がすすんで、家ごとに米をつくったり醤油をつくったりすることはなくなってきた。道具は茶葉専用に使われている。麻袋はなくなってプラスチック素材の袋になっている。
圧餅するメーカーでは、圧延の”蒸し”を高温・短時間で済ませるだけでなく、乾燥にも時間を掛けないよう室内で熱風乾燥して2日で済ませている。
こういう小さなことがひとつひとつ重なって、お茶の質を大きく変えてきたと思う。

易武古樹青餅2010年 その35.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の茶壺+炭火
茶葉を焙煎

お茶の感想:
このお茶を焙煎すると烏龍茶っぽくなる。
【易武古樹青餅2010年】
11月の上海の勉強会では、その場で焙煎して味と体感を確かめた。
焙煎といっても3時間半くらい。小さな炭炉の炭が燃え尽きるまでの3時間半。長時間を何度も繰り返す本格ではないが、それでも十分に茶葉の性質が変わるのを実感できる。
ほんの3煎分ほどの少ない茶葉で行うので、小売店用に販売されている竹籠と電熱を組み合わせた焙煎機では大きすぎる。
数日試行錯誤してこの方法を見つけた。
易武古樹青餅2010年12g
茶葉を紙で包む
炭炉と炭火
陶器の壺で焙煎する
焙煎の壺に蓋をする
紙に包んだ茶葉を壺の口に差し込んで底に付かないよう浮かせるのがコツ。
はじめの40分ほどは蓋を開けて水分を逃がす。茶葉の中にある水分と壺の中の空気中の水分とが冷たいところを求めて逃げるが、蓋をしたままだと茶葉の中に入り込むかもしれない。さらにその水分に熱が加わると茶葉に望ましくない変化をもたらす。水気があるのとないのとでは変化が異なる。
別の壺で焙煎テスト
蓋に水滴
丁寧に焙煎しようとしたら水抜きに時間をかけるしかない。
量産のお茶は時間をケチったのが多くて、それが濁った風味となって現れている。
今回の3時間半という短時間の焙煎では水がしっかり抜けない可能性もあるので、あらかじめ西双版納で1日かけて晒干・涼干して、茶葉をカラカラにしておいた。
晒干・涼干するだけでもお茶の香りが立って新鮮さが蘇る。天気のよいカラッとした日に餅茶を崩して、崩した分だけ晒干・涼干して密封して保存すると、毎日新鮮な風味でお茶が飲める。
火加減については何度も失敗した。
焦げて失敗
このタイプの炭炉は火加減がうまく調整できない。
炭炉の器の大きさと炭の量と炭の燃え方と通風口の開け閉めと、何度も試して慣れが必要になる。
かといって調整が容易な電気コンロは火の性質が異なるだろうし使いたくない。
炭炉についてもうちょっと研究して、ゆくゆくは自分専用のをつくることになりそうだ。
炭作りまで手を出さないで済むようにしたい。
焙煎前と焙煎後
焙煎前と焙煎後
焙煎前と焙煎後
左: 易武古樹青餅2010年 焙煎前
右: 易武古樹青餅2010年 焙煎後
ま、思っていたとおりになったと思う。
今後の勉強会でまた試飲できるようにしたい。
なぜ焙煎を試しているかというと、長い長い年月をかけてお茶づくりが成熟してゆく過程で、”焙煎”という工程がなぜ取り入れられたのか?そこが知りたいからだ。遠い昔に人が焙煎という技術と出会ったのと同じ道を歩んでみたい。
プーアール茶を専門にしている自分が焙煎に興味を持たのは、風味を引き立てるためじゃない。それ以外の効果にむしろ興味がある。とくに体感の変化。それをもたらす茶葉の質の変化に注目している。
現在の生茶のプーアール茶は、製品としての完成度の低いお茶だと感じている。歴史をみても、こんなに中途半端なお茶を人々は飲んでいなかったはずだ。
日本語で言うと漢方、中国語で言うと中医学の思想が昔のお茶にはもっと色濃くあって、その視点からするとお茶としての本領が発揮できていない。
カンタンに言えば、生茶のプーアール茶は長期熟成や焙煎の二次加工が必要な半完成品のお茶。
その二次加工を、いつ・どこで・誰がやるのか?どんな道具が必要なのか?現代の社会環境やお茶を飲む人の生活に合わせて、具体的な解決策を提案できるようにしたい。

ひとりごと:
日本酒もそうかもな。
百薬の長の酒なんて、今の日本酒では考えられない。

困鹿山単樹の散茶2016年 その1.

製造 : 2016年04月
茶葉 : 雲南省プーアール市困鹿山
茶廠 : 困鹿山の農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
上海の朝
上海の夕方

お茶の感想:
炭火で沸かす湯の効果は大きくて、ガスや電気コンロと比べたらその差は誰でもわかる。
けれど、実際に試して確かめる人は少ないだろう。
勉強会で実証して見せても、明日から炭火を使おうとする人は少ないだろう。
火が危険だとか、一酸化炭素中毒が怖いとか、面倒だとか、時間がかかるとか、マイナスイメージをふくらませて使わないで済まそうとするだろう。でも実際はコツを掴めばそれほど危険でもないし不便でもない。上質な炭さえ手に入れば室内でニオイが気になることもない。白い灰が飛び散って部屋を汚すかもしれないけれど、灰には洗剤みたいな効果があるので、掃除をしたらむしろキレイになる。
炭火
お茶の味と薬効はリンクしているから、炭火で淹れた味が違うということは身体への効果も異なるはず。同じ茶葉・同じ水・同じ茶器を用いても火の性質が違うだけで異なる結果を得ている。
そこまで言っても、炭火にする人は少ないだろう。
そんな現実を考えると、ちょっとガッカリする。
炭炉上海にて
上質なプーアール茶を求めて、山の生態環境に注目したり、茶樹の健康に注意したり、薪火の殺青や手もみの揉捻にこだわったり、星のめぐりや太陽や風に翻弄されたり、ひとつひとつの大事なことが、みんなにとってはそれほど大事じゃないらしい。現場で一喜一憂している自分がアホみたいだ。
さて、この市場環境の中で、トップクラスの上質なお茶は姿を隠すようになってきている。
もともと量が少ないから、ほんとうに好きな人といっしょに飲める時間を共有するときだけに茶葉を消費したい。
たぶん、ワインの世界でもそうなっているように、お茶もそうなっている。
そういうお茶は、山が深いとか、森の影に隠れた茶樹で新芽・若葉がちょっとしか出ないとか、この何年か一度も采茶(茶摘み)されていないとか、山に入って采茶のタイミングが合うことが奇跡だとか、出会うだけでも運がいるし、つくるのは苦労する。苦労しすぎると商品にできなくなる。
『困鹿山単樹の散茶2016年』はそんな茶葉。
西双版納の茶商友達がほんの一握り、20gほど分けてくれた。
困鹿山単樹の散茶2016年
上海で古い茶友らと飲む機会があった。
困鹿山は西双版納の北の清朝1800年代の貢献茶ブームのときに易武山の品種が持ち込まれて植えられたので、甘いお茶。茶文化のお茶で、生活のお茶ではない。
困鹿山には樹高3メートルほどの古茶樹はたくさんあって、そのクラスのは何度か飲んだことがあった。美味しいお茶だった。「単樹」は10メートルを超える茶樹が選ばれる。単樹のお茶づくりは、周囲の生態環境、茶樹の健康、品種の見極め、茶摘みのタイミング、そんな総合的な理想が求められる。少ない単樹からさらに理想の1本が選ばれるわけだから、価格もそれなりになる。安い価格の単樹も流通しているが、それはつまりいろいろ理想的ではないからだ。
最近ではこれがベスト。
『刮風寨単樹小餅2016年 その1.』
この『困鹿山単樹の散茶2016年』はそれに並ぶか、さらに超えるレベルだと思う。
困鹿山単樹の散茶2016年
単樹の上質なお茶には共通して、森の日陰に育った涼しさと透明な甘さがある。
いちばんわかりやすいお茶の味の特徴は、渋味に嫌な刺激が一切無いこと。
いちばんわかりやすい体感の特徴は、首から背中から腰のあたりまでの筋肉がゆるんでリラックスできること。
口が喜ぶ。身体が喜ぶ。いつまでも飲み続けていたくなる。10煎を超えて茶の色が出なくなっても離れがたい。
遠い昔に人間がお茶の葉を飲みものにしたときの、初対面の印象ってこんなのだったと想像する。
茶樹の栽培に人の手が入って、茶樹が人を嫌って性質を変えて、お茶の味や体感が悪くなるのをなんとかお茶づくりの技術でカバーしようとして、製茶が高度になってゆく。烏龍茶なんかは300年くらいそういう流れでお茶づくりが成熟してきたのだろうか。
ご苦労さんと思う。

ひとりごと:
この『困鹿山単樹の散茶2016年』は陶器の壺で熟成されていた。
プーアール土のヤカン
写真は同じ土で焼かれたヤカン。
粗い土で柔らかくて、水漏れするので、糯米を炊いて水漏れを止めてから使う。これをつくる村では昔からそうしてきたらしい。
水漏れするくらいだから湿気もとおす。西双版納の湿気のために、たった1年で中の茶葉の色は紅茶のように赤黒くなっているが、湿気た嫌な臭いや味はしない。うまい具合に熟成味が醸されている。老茶のように”温”の性質で、飲んでからしばらくして身体がポカポカ暖かい。ちょっと肌寒くなりかけた上海で飲むのにちょうどよかった。
生茶は熟成10年めくらいまではどうしても”寒”の性質が強いので、たった1年でトラブル無しに性質を変えられるならこの陶器はすばらしい。
茶葉の成分に独特のものがあってたまたまこうなっただけかもしれないので、もうちょっとこの陶器を使った熟成茶葉のサンプルを集めてみる。

勉強会・上海 炭火を使う 11月4日

炭炉

中国語メインの講義です。日本語の補足もします。

内容:
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。
お茶の性質(効能)を決めるのは製茶だけではありません。
「製茶」・「保存」・「泡茶」、この3つの段階で調整されます。
「製茶」・「保存」のタイプの異なるお茶を「泡茶」で調整しみて、飲んでみて、体感をもとにお茶の性質を探ります。
火入れ(熱)の効果がわかりやすい鉄瓶と炭火でお茶を淹れます。

参加費:
ひとり350元

場所:
上海 天山茶城 1階のお店
中山西路520号天山茶城1252 云元谷 
玉屏南路の天山茶城正門から入ってまっすぐ35メートルほど。右側の店。

日時:
11月4日 土曜 午前10時から 3時間半ほど

お茶を飲むとお腹が減ります。
事前にお腹を満たしておいてください。
お昼の時間にかかるので、お菓子や軽食などをご持参いただいてもよいです。当方ではご用意しません。

一扇磨単樹B春の散茶2015年 その4.

製造 : 2015年03月20日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 漫撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
龍眼の木の炭
炭の火

お茶の感想:
龍眼の木の炭をもらった。
前回使った核桃炭とはちょっと性質が異なる。火力がある。焼肉とか焼き魚に使うようなタイプで、カンタンに言えばちょっと安モノなのだな。ニオイもちょっとある。炭にまんべんなく熱がまわって白くなってくると火力が安定してニオイもなくなるが、室内には向いていない。
西双版納は気温26度なので、窓を全開にして炭を使う。
天気悪い
そろそろ雨季の終わる頃だが、まだ天気の悪い日が多い。
茶葉の整理をしていたらこのお茶が残りわずかだったので飲み切ることにした。
『一扇磨単樹B春の散茶2015年』(卸売部)
単樹Aのほうが上等だったが、今から見るとBのほうもなかなか。
炭で炙る
単樹B
茶葉の温度を少し上げて水分を逃がす。
焙煎ほどではない、ただの乾燥。
こうすると香りが立つ。茶壺の中に入れて茶葉を蒸らしてから湯を注ぐのだから茶葉はまた水分を取り込むのだが、香りは違う。
銅の溶けたもの
茶針の枕にしているのはタイの骨董屋さんで見つけた銅の溶けたもの。
骨董屋さんの言うには、仏像の台座の部分らしい。
お茶セット
チェコ土の茶壺
鉄瓶
お湯を注ぐ
茶を注ぐ
葉底
沸き立ての湯は96.5度くらい。景洪市は海抜560メートルくらいなので100度にはならない。
生茶は茶葉を煮やすと渋味・辛味など嫌な味が出やすいが、鉄瓶+炭火の組み合わせは煮え味が出にくい。
かといってちょっと冷ました90度以下の湯で淹れるとキリッとしない。
沸き立てのグツグツの湯なのに穏やかな熱の響き。
また耐泡がよい。7煎を超えたくらいの味がしっかりしている。
白い炭
炭炉の上蓋
鉄瓶1リットル弱の水でお茶を飲みきるのにちょうど良い炭の量がわかってきた。
炭炉には上蓋があるので、この予熱で鉄瓶を乾かして、茶器も乾かせる。

ひとりごと:
雲南の陶器に詳しい茶商友達がサンプルを持ってきた。プーアール市の土らしい。
茶壺
煮水
茶葉乾燥
雲南省は山ばかりでいろんな地層があって、茶器に適したのもたくさんある。
これから探ってゆこうと思う。

版納古樹熟餅2010年 その37.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 西双版納のミネラウォーター
茶器 : 鉄瓶+小さめの蓋碗
西双版納

お茶の感想:
西双版納に帰ってきた。
チェンマイから300キロほど北に移動するだけなのに気候は違う。西双版納の景洪市は空気がとても軽く感じる。
青い空を見ていたら縦に長い長方形の白い板みたいなものが雲の流れと反対の方向へ飛んでいったのだけれど、ま、そんな話はしないほうがよいか・・・。UFOは信じないけれど見たことはあると言うことにしよ。
今年の秋もお茶づくりは様子見になると思うが、それでもやりたいことはいっぱいある。
炭炉と鉄瓶
炭の火
通販サイトのタオバオで広東省潮州の炭炉を買ってみた。
日本の七輪に似ている。潮州には紅泥と呼ぶ土があって、これが茶壺にもよいし炭炉にもよいらしい。
炭の火を探ってみる。
火は、お茶を淹れるときも大事だし、お茶をつくるときも大事だし、いずれは勉強することになる。
前回の勉強会「煎じるお茶」で、茶葉を煮るのにアルコールランプをつかったが、炭の火だったらまた違う風味や体感が得られたかもしれないと考えている。熱には響き方の違いがあることを、お茶淹れの茶壺の素材や形状の違いについて注目していたけれど、熱の響きという表現をするならその震源となる火の違いにこそ注目するべきだろう。
炭炉
最近よく使っている鉄瓶で湯を沸かすのは、ガスの弱火や電気コンロの200Wで20分ちょっと時間をかけているが、たとえ同じ20分で沸騰させても炭の火にはまた違う響きがあり、湯の質は異なるはずだ。
炭は核桃炭。クルミの炭。この他にも龍眼やオリーブの炭がある。いずれもしっかり炭化していて穏やかに燃えるタイプ。
クルミの炭
炭は点火させるのが容易でない。
穴がいっぱい空いた鉄鍋に炭を入れてガスコンロにかけて火をつけるが、なかなか燃えない。ガスやアルコールは火花が散るだけでパッと燃え上がるのだから大違いだ。例えば乾燥した木材は炎が移るのは早いが、炭はそうじゃない。炎はほとんど出ない。試しにアルコールを少し含ませた炭に火をつけてみたら、アルコールの炎がメラメラ15秒ほどで燃え尽きた時点で炭はなにごともなかったのように元の黒い色に戻った。赤くならない。炭には熱量が要るらしいのだ。ひとつの炭では燃えられない。いくつも集まって熱がこもってあるところに達してやっと赤い色が見えてくる。時間がかかる。
アルコールランプ
炭の火
ガスやアルコールの火は熱の芯がどこにあるのか見てすぐにわかる。ところが炭の火の熱はどこに芯があるのかよくわからない。炭全体が熱くなって、炭炉も熱くなって、鉄瓶の全体が熱くなって、どこからともなく湯が沸くような感じ。その点、ガスやアルコールの火には芯があり、鉄瓶の底の中心あたりから湯が沸くのが見える。
炭は熱が一点に集中しないから、その効果で熱の流れがとても穏やかになる。
熱の流れ。この勢いを利用するケースもあるのだろう。
例えば、薪の火で茶葉を炒るのや陶器を焼くのは、熱の流れの効果を利用しているかもしれない。
チェコのマルちゃんの窯
薪の火
チェコ土の茶杯
いくつかのお茶を試したいと思うが、まずは熟茶。
【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
湯の熱が茶葉の内部にグッと入って成分を抽出するほどに甘くなる熟茶。
湯の温度が高いだけではダメで、響きの長いのが良い。長い波長の熱が伝わると水質がトロンとしてきて余計に甘く感じる。
鉄瓶
鉄瓶の同じカタチのが2つあるので同時に沸かして、ガスコンロ+アルコールランプのと炭炉のとを比べてみた。
炭の火は一定じゃない。点火してからだんだん火力が強くなる。対してガス+アルコールは一定。沸騰までの時間を合わせるためにアルコールの小さな火でじわじわ温めてからガスで仕上げることにした。
小さめの蓋碗。茶葉は3.6g。
蓋碗と熟茶
炭の火とアルコールランプの水
左: 炭火の湯
右: アルコールランプの湯
水の味にすでにその差が現れていた。
炭火はしっとり甘い。ガスコンロ+アルコールランプはピリピリ辛い。
炭火のお茶とガスコンロのお茶
左: 炭火のお茶
右: アルコールランプのお茶
お茶になってもそれは同じ。同じ茶葉だからお茶の味は同じではずだが口感が違うと味も違うように感じる。茶湯の色の差くらい違う。
炭火のはフワッと舌に触った瞬間にほどける。ふくらむ。ひろがる。喜んでいるような味。それに比べるとアルコールランプのは怒っているような味。
試しに4煎めから左右を入れ替えてみた。
アルコールランプと炭火のお茶の味比べ
左: アルコールランプのお茶
右: 炭火のお茶
左右を入れ替えてから1煎めで味も入れ替わった。2煎めで茶湯の色が近付いて3煎目には同じになった。煎がすすんでいるせいか色が逆点することはなかった。
炭火とアルコールランプ
沸騰する具合を見てなるべく同じ温度になるように調整するべく炭を足したり引いたりしたが、それでも炭火の湯のほうが高い温度を長く保つような性質になる。
やはり熱の響き方だろう。
念のため温度計で鉄瓶の湯の温度を測ったらアルコールランプのほうが1度高いことになった。この正確な計測は難しいから数値はあてにならない。
炭火のほうが美味しいお茶になる。はっきりしている。1回分の炭のコストは8元ほど。かなり割高になるけれど、良い茶葉と良い道具を揃えたら炭を使わなきゃ損だよな。
次は生茶で試してみようと思う。

ひとりごと:
鉄瓶を欲しがっていた西双版納の茶商友達が遊びに来て、パッと目があったチェコ土の茶壺。
チェコ土の茶壺
チェコ土の茶壺
売るのは惜しいが、こういうのは縁。愛せる人の手に渡るものなのだ。
雲南の陶器に詳しい人で土質が気になると言っていたから、いろんなお茶を試してくれるだろう。

倚邦古樹青餅2014年・明後 その9.

製造 : 2014年05月15日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明倚邦山小葉種古樹
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+銅のヤカン
メコン川
川の舟
川の草
空
川の階段
川の社
窓からメコン川

お茶の感想:
火入れ実験のつづき。
西双版納から茶友に持ってきてもらったお茶。
『邦古樹青餅2014年・明後』(卸売部)
これを茶壺で火入れしてみる。
茶葉
茶壺をつかって茶葉の火入れ
今回は湯が沸騰してから40分の火入れ。ちょっと長め。
蒸気には蒸気ならではの熱の性質があるだろう。茶葉の火入れにしては低温だが、時間をかけて熱量を補う。
前回の勉強会で生茶の餅茶『易武古樹青餅2010年』を炭火で炙るのを試した。
お餅を焼くみたいに小さめの七輪に網を敷いて、餅茶の崩したカケラを置く。
お餅
(写真は実際にお餅を焼いているところ。)
炭は3つだけ。結果的には2つでも十分だった。
初回は加減がわからずに焦がしたが、2回めは手を近づけても耐えられるほどの遠火でじっくり1時間ほど炙った。
これがとても香りのよいお茶になった。焦げ臭さや煙臭さはない。新鮮な緑が蘇るような爽やかな香り。やや烏龍茶っぽくなる。味はシンプルになる。苦味とその反動の甘味と、お茶のお茶たる個性だけが際立つ。
遠赤外線の照射は茶葉の表面の複雑な形状にもまんべんなく熱がゆきわたるのがよい。また、弱い火を長時間維持するのはガスや電熱よりも経済的かもしれない。
茶壺の中
今回は、茶壺ごと蒸すようなカタチだが、茶壺の中は乾燥している。
実はこの茶壺はちょっと水漏れする。少量の蒸気が入るかもしれないが、空気中の水は冷たいほうへ逃げる性質があるため、蓋の裏が少し湿る程度で茶葉を蒸らすことはなかった。
茶葉に水分が少しでもあると酸化が早まる。
乾燥している茶葉でもごく少量の水分を含んでいる。その水分が熱をもつと茶葉の成分変化を早める。これを避けるために、茶壺と茶葉とを常温から時間をかけてゆっくり温度を上げてゆく。茶葉がさらに乾燥して、それから温度をもっと上げてゆく。こうして水分による影響をなるべく避ける。
茶壺の温度が上がってから茶葉を投入すると、低い温度の茶葉に水分が逃げ込むかもしれないので、茶壺と茶葉をいっしょに加熱するほうがよいと考えている。
ヤカンの蒸気の熱を利用するのは温度に上限があるので焦げる心配はない。そこがよい。時間だけを調整して火入れの感覚をつかめる。
泡茶
こうして火入れした茶葉は、湯を注いでから茶葉の成分が出るのにちょっと時間がかかる。まだ熟成3年モノなのに20年モノくらいの感じに似ている。
じっくり抽出するせいもあって、味もまた熟成されたものに近づく。
このお茶の場合、いつもは4煎めくらいから出てくる深い味わいが1煎めからいきなり出る。また、早春のお茶にありがちな辛味は消失している。味はシンプル。小葉種の軽い苦味が際立つ。複雑さや鮮やかさは消えて静かになる。
体感は落ち着いている。喉のとおりは涼しく腹の底のほうへすっと収まる。「寒」の性質は「温」の性質に近づいているせいか、飲んだ後のドキドキするような胸のあたりの詰まり感もなくなっている。
このブログでもたびたび指摘しているが、生茶のプーアール茶を若いうちに飲むのは難しい。汗をかく暑い季節はよいが、寒い季節には向かない。個人差もあるのでその加減を自分で探って見つけて、いちいち計るように注意して飲まなければならない。
お茶として完成していない。
未完成のまま流通していることになる。
しかし、昔の人は未完成なお茶を自分の手元で完成させていた。冷蔵庫もない時代に、長期保存できる乾物のひとつとして保存のケアをしたり、煎じ方に工夫したり、熟成による薬効の変化をそれぞれの家庭のやり方で見つけていただろう。
家庭に知恵があったのだよな。
知恵のない現代の家庭にどんなお茶を売ったら良いのかを考えてお茶メーカーはいろいろ工夫するけれど、その展開はあまりカシコくない結果になると見ている。

ひとりごと:
チェンコーンに通いだしてから6年経つが、今回はじめて見つけた豚の生の血のラープ。
ラープは肉を香草やスパイスをいっしょに叩いてミンチにして、塩や魚醤や辛子味噌などで味付けしたもの。
生のラープ
この写真のラープは血だけでなく肉も生である。数年前に西双版納のタイ族の村でご馳走になって以来だったが、チェンコーンのお惣菜屋さんにも売っていた。
味は、牛肉の生のユッケやタルタルステーキや魚のなめろうにも似ているが、血生臭さなど全くなく、脂っぽいこともなく、サラッと口に溶ける。火入れしていないので血の成分が生きているからだろう。
豚の生の血って細菌や寄生虫が怖いよな。
体調の良いときに食べる。ゆっくり食べる。付いている香草といっしょに食べる。主食のもち米といっしょに食べる。ラオスの50度の焼酎ストレートを飲みながら食べる。冷たい飲み物を飲まない。
お腹の中の消化の過程で発酵に似たようなことが起こっているが、良い発酵をしたら悪い菌などやっつけてくれる。はず。


茶想

試飲の記録です。

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