プーアール茶.com

プーアール茶ドットコムの日 6月18・22・23・24・25日

店長が勝手にお茶を淹れて飲みます。
ブログ茶想でしているように、あれこれ試したりします。
店長といっしょに飲みたいお茶や、使ってみたいお茶の道具などがあれば持ち込みもOKです。

好日居
プーアール茶ドットコムの日

日程:
6月18日 火曜
6月22日 土曜
6月23日 日曜
6月24日 月曜
6月25日 火曜

時間:
13時半から20時ごろまで。
この間で出入り自由。都合のよい時間におこしください。

場所:
京都 岡崎 好日居(地図)

お代:
ひとり5000円
お忙しくて1時間以内は2000円
現金をご用意ください。

予約:
予約なしでも大丈夫です。
席は5人くらいなので、参加者の多い場合はローテーションしていただくことがあります。
はじめての方も、お茶の先生も、業者様も、歓迎です。お子様も参加できます。
参加表明できる方はメールでお越しになる日時を教えてください。
+【店長にメール】

注意:
お菓子や軽食は用意しません。
持参されるのは自由です。差し入れ歓迎です。

お茶
マルちゃんの茶壺

刮風生態青餅2018年 その5.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・景徳鎮白磁の茶杯・鉄瓶+炭火
国有林の立入禁止

お茶の感想:
今年から、漫撒山の国有林の入り口で北京から来ている森林公安が検問することになった。
一扇磨・弯弓・刮風寨の森の入口3箇所に朝の8時から15時頃まで見張りを立てている。
農家以外の外地人は森への立入禁止。
地元の茶商でさえ許されない。
農家の話では、まだ見張りの立っていない朝の8時前に入ればよいらしくて、茶友らの一部は今年もそうして森に入って采茶現場を見ているが、違法になる。外国人の自分はこんなところで引っかかりたくない。麻薬地帯に近いから意地悪されると命にかかわる。
ちょっと様子見したい。
森に入らなくても村へは行ける。
村で農家の摘んできた鮮葉を待って自分で製茶するのもよいし、農家が晒青毛茶に仕上げたのを仕入れることもできる。
何度も通った漫撒山だから、鮮葉の質はわかる。
けれど、昨年のように采茶から圧餅までのすべての工程を見るお茶づくりはもうできないかもしれない。
残念ながら、ホンモノの森は国有林の中にしか残っていない。
その森のお茶の魅力にイカれちゃったので、もうそれ以外は考えたくないのだ。
鮮葉
今年の春、北京の茶友が刮風寨で茶葉の等級を分ける手法を試みた。
一日かけて采茶した鮮葉を、その日の夜にアルバイト3人が大きく育った葉や茎の部分を取り除いて、柔らかい小さな新芽・若葉だけにする。次の日の早朝に萎凋を終えて殺生する。
鮮葉のうちに小さな新芽・若葉だけを揃えてから萎凋・殺青するのがミソで、なぜかというとカタチや大きさが揃うほど茶葉の含水量が均一にできて、殺青の火の通り具合も、揉捻のよじれ具合も、均一にできるから。均一といっても大きく育った葉や長い茎が多いものと比べたらまだましという程度で、茶畑の茶葉のようには揃わない。
それでも、殺青のムラとなる焦げや生焼けを減らしたり、揉捻で葉に傷をつける原因になる硬くて捩れにくい葉や茎を減らしたり、製茶がキレイに仕上がる効果は容易に想像できる。
一度は試してみたかった手法で、自分はまだできていない。その効果に興味がある。
この実験の費用的な負担を少なくするために、樹齢の若い生態茶を使用している。よいアイデアだと思う。
昨年の秋に見学したところで、刮風寨の村から近いこの森のお茶。
生態茶と森
ほんとうは古茶樹でそれをしたいところだが、高価になるし、もし上手にできてもさらに高価になるのを追いかける消費者はほとんどいないし、需要はないだろう。つくり手のエゴや夢の空回りでできるお茶かもしれない。
刮風寨の生態茶の多くは、茶王樹や茶坪の古茶樹の種を採取しているので、漫撒山の大葉種の古い品種が維持できている。なので茶葉の大きさやカタチは似ているし、効果を確かめるには十分。
試飲したところ、味も口感も充実していた。透明感があって、生態環境の良さが素直に現れている。写真を撮り忘れた。
やや香りが弱い気がした。しかし、これは今年の春のお茶の特徴なので仕方がない。
昨年の刮風寨の生態茶を飲んでみた。
+【刮風生態青餅2018年】
餅面
今年の春の味を覚えているうちにすぐに飲み比べたかったけれど、西双版納にサンプルを残していなかった。
移動に日数がかかって10日間くらい空いてしまった。
けれど、飲んですぐにわかった。
昨年のほうがお茶の味は薄く口感は軽い。
今年のほうがお茶の味が濃く口感が重い。
もしも西双版納で飲み比べたら、今年の春のほうに軍配を上げたかもしれない。
茶壺
しかし、ここでちょっと考えた。
どこか心にひっかかるものがあった。
もしかしたら、この見方はあくまでも産地の価値観であって、遠く離れた消費地の価値観ではないような気がしたから。
お茶づくりは、産地が半分、消費地が半分。
自分自身が身を置く場所によって別人になっている。
味が薄くて口感が軽いことがマイナスポイントにはならない。独特の味わいが生じている。舌や鼻の味わいではなくて、心を動かす印象の味わい。春の陽気とちょっと冷たいような風を表現するなら昨年のお茶だろう。
味が濃くて口感が重いと、味そのものに気を取られて印象は薄れる。
こういう見方が現地ではできない。その審美眼はない。
都市生活に身を置いていろんな文化に触れているうちに、ちょっとずつ勘が戻ってきて、見え方が変わってきて、やっと気付く味わい。
茶湯
産地の農家や地元の茶商にわかるわけがない。お茶は飯のタネでしかない彼らが評価するのは味も口感も香気もすべてにおいてボリュームのある実質的に分かりやすい品質であり、印象の味わいについて語ることなどない。
おかしなことに、情報技術が進化した現在は都市も産地も同じ価値観が普及している。SNSなどで情報がリアルタイムで拾えて、現場のナマな情報がチカラを持って、みんなが田舎者の立場になってお茶を評価する。
ものごとを見たり考えたりするのに影響を与える社会環境は、産地と都市とでは大きく異なる。心理的な立ち位置は違うはずなのに、見る角度がそれぞれ違うはずなのに、同じものを見て同じ評価をしているかのように錯覚する。
産地と消費地が距離的にも心理的にも離れたギャップから生じたファンタジーは、もう過去の遺産。

ひとりごと:
中二(中学二年生)の甥っ子に、中二病だと診断された。
難しい理屈をこねたり、違いがわかると背伸びした自己主張をしてみたり、無駄なエネルギーを消費している。
たしかに症状が一致している。
みんなが中二病になったら面白いのにな。

天門山古樹青餅2019年 その1.

製造 : 2019年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山天門山
茶廠 : 易武山の茶商
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・白磁の杯・ステンレス電熱ポット
西双版納の茶店

お茶の感想:
今年の春のお茶はつくらなかったし、晒青毛茶を仕入れることもなかったし、浅い評価しかできないけれど、メモを残しておこうと思う。
50日間ほどかかりきりになった熟茶づくりの実験を終えてから、ほんの3日間だけ地元のお茶屋さんを巡ったり茶友を訪ねたりして、今年の春のお茶をいくつか飲んでみた。
あまり期待していなかった。
昨年の春が数年ぶりに良かったので、星の巡りからしてハズレるような気がしていたのと、3月のはじめに西双版納に到着して飛行場に迎えに来た茶友がひと言めに「冬に雨降りが続いた」と異常気象を嘆いていたから。
本来は、この地域の冬は乾季なので、雨は1ヶ月に1度か2度かほんのちょっと降るくらいが正常。毎日降るのはおかしい。
植物は地面を境に上と下とで交互に成長する。
地面の上の葉の成長が止まる期間に根が育つ。冬に雨が降って葉が育って、根が水を上げるのに忙しく働いたら根の育つ期間がない。
はたして、このことが影響したのかどうか、関連性があるのかないのか証明はできないが、結果から見たら今年の春のお茶は香りが弱い。
味は充実している。水質はきめ細かくて飲みごたえがある。
なのに香りが弱い。
このパターンははじめて出会う。
春の茶摘みがはじまってからの天気のコンディションは良かった。
毎日晴れて空気が乾燥していて製茶の天日干しがうまくいった。この数年はむしろ雨の日が多くて製茶に苦労したから、カラッと晴れた日がつづいたのはうらやましい。
製茶はスッキリ仕上がっているはずなのに香りは弱い。
旬に入った3月中頃から4月末頃まで、一滴も雨の降らない日が続いた。自分が数えただけでも33日間雨が降らなかった。空気は異常なほど乾燥した。34日目にほんのちょっと雨が降ったけれど地面はすぐにもとのカラカラに戻った。まとまった雨が降るようになったのは5月末から。春はもう終わっていた。
気温は異常に上がって連日40度を超えた。こんなこともはじめて。昨年まで35度を超えた日などなかったと思う。
農家が言うには、今年の春の茶葉の生産量は例年の半分だった。
雨が降らないので、そもそも新芽の数が少ないのと、若葉に育つまでに乾いて硬くなってお茶に加工できないのと。
乾いて硬くなる前に茶摘みをするから、新芽・若葉は小さく柔らかいうちに采茶される。茶商の立場からすると上質な茶葉が同じ価格で入手できて有利になった。農家の立場からすると小さい茶葉では重量が稼げないので不利になった。
茶摘みのタイミングも良いはずなのに香りが弱い。
お茶を売る人の立場からすると毎年「今年の春は良い」と言いたい。香りが弱いのはたいした問題ではないと言いたい。
けれど、何年か経ってから「あの年のお茶は良かった」という声が聞こえてくる。新茶の評価は甘くて、年月の経ったお茶の評価は辛い。当たり年は数年に一度しかないことが後になってからわかる。
長年熟成させた味をウリにしたい立場からは、数年に一度のお茶だけ扱うのも良いかと思っている。
さて、その観点からすると、香りの弱いのはお茶の個性の表現も弱い。
天門山古樹青餅2019年
このお茶『天門山古樹青餅2019年』は西双版納の易武山地区を専門にする茶商にサンプルとして分けてもらった。
自分は”天門山”という茶地の名前を知らなかった。
よく通っていた漫撒山の丁家老寨から山続きにある茶地なのに、無名だったから名前が聞こえてこなかった。
しかし、価格は3年ほど前から天門山のほうがずっと高いらしい。
それもそのはずで、古茶樹のお茶の生産量は20世帯くらいの村全部を合わせても200キロくらい。一本の茶樹から2キロできると計算して100本しかないわけで、それを茶商がひとりで買い占めるのだから、需要と供給のバランスで価格が上がる。商売商売。
近年の丁家老寨の古茶樹は収穫しすぎで、味が薄くなっているのに比べると天門山のほうはまだ味が濃い。2014年から摘み始めたそうなので、まだ摘み過ぎの悪影響が少ないのかもしれない。
飲んで気がついたのだが個性がない。
漫撒山は南北に18キロほどの峰の周辺に、張家湾・丁家老寨・一扇磨・香椿林・多依樹・薄荷塘・弯弓・・・・・白茶園・冷水河・白沙河・茶王樹・茶坪。と、大小さまざまな茶地があって、それぞれの味があって、だいたい飲んだら当てられる。漫撒山のお茶の味の中にそれぞれに個性がある。
その個性は香りがキーになっているらしい。
香りが弱いので、天門山のお茶の個性が現れていないのか、もともとこんなものなのか?
と疑問に思ったまま他の茶店で刮風寨の茶王樹と茶坪の今年の春のお茶を飲んだ。
茶王樹
茶王樹
瑶族の農家の知り合いのものなのでモノに間違いはない。刮風寨の中でも上質を競うお茶。価格もトップクラス。
ところが、これも昨年のに比べて香りが弱い。
味も口感も充実しているのに、香りだけが欠けている。
天門山のお茶の個性は来年以降に見つけることにする。

ひとりごと:
北京から西双版納に遊びに来ている中医学の先生と交流した。
内モンゴルに牧場を持って牛をある試みで育ててみたり、趣味の範囲が広すぎて、ふだんはどこで何をしているのかよくわからない人だった。
久しぶりにブッ飛んでいる中医学の不思議な話を聞いた。
山東省のある種の天然の樹木から切り出した棍棒で、関節痛の人の骨をゴリゴリして治す。その棍棒は一回きりで焼いて捨てなければならない。つまり、棍棒のほうに悪い”気”が乗り移るという仕組みらしい。そのある種の天然の樹木でないとダメとか、樹齢とか伐採のタイミングとか、細かなルールがあるらしい。
長年苦しんできた関節痛が一発で治る。
西双版納の茶友が半信半疑で北京に行って足を診てもらったら、ほんとうに一発で治って帰ってきた。
中医学の先生は高学歴の人で、スタンフォード大学で科学的なアプローチから解明を試みたらしいが、無理だったらしい。
積み重ねでたどり着けるところじゃない。雲の上を飛ぶような解決策で結果が出ている事実。こういうことに中国ではたまに出会うから面白い。
古代文明の優れた欠片が残っている。
人の文明は、すでに何度も滅びているのだろうな。
お茶づくりの文明も、実はもう滅びている。

熟茶づくり実験2019年 その8.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット

お茶の感想:
発酵スタートから18日目。
6回目の散水を終えてから2日目。
ここでダメになった。
残念だが、捨てるしかない。
今回の実験はこれですべての茶葉を使い果たして、滞在期間があるのでいったん終わりにする。
失敗に終わるが、ヒントを残した。
6回目の散水
5回目の散水の後まではうまくいっていた。
美味しい熟茶になりかけていた。
6回目の散水の後にトラブルが起こった。
トラブルの原因は4月中頃からはじまっていた異常気象。ある程度は予測できたが、天気予報すらだんだんひどくなるとは予測していなかった。気温は連日40度に達して、室内の気温も35度になって、湿度は30度のカラカラで、熱帯雨林の気候じゃない。砂漠のような感じ。
一袋3.5キロの少量ゆえに影響をうけやすい。
茶葉の発熱した温度を下げられなくなった。
4回目・5回目の散水まではなんとかいけた。撹拌するなどして数時間内に32度くらいまで下げられた。黒麹の活動のサインが消えなかった。
ところが、6回目の散水後から特別に暑い日がつづいて、3日間ほど茶葉の温度が40度以上になった。空気がカラカラに乾燥しているので撹拌は何度もできない。茶葉が潤いのあるうちは微生物のつくった酵素の作用があるが、乾燥すると効き目がなくなるので、抗菌効果のガードが下がる。
40度以上が24時間つづいた頃から変な匂いがしてきた。麦わらのような畳のような草っぽい匂い。
そして、黒麹の活動のサインが消えていった。
発酵失敗
メーカーの数百キロ以上の単位で行う渥堆発酵では、内側の茶葉の温度は50度以上になる。しかもその期間は長くて2日間以上続くこともある。
なぜこれほどの高温が長時間続いて大丈夫なのか?
どこが違うのかを考えてみた。
メーカーの発酵
おそらく、通気の状態が違う。
メーカーの渥堆発酵の内側の茶葉は、かなり酸素の少ない状態で発熱して50度に達する。
外側を覆っている茶葉の層は数十センチあって、そこは黒麹優勢になる条件がそろっている。通気が良くて温度は低め。例えば、室温が28度であれば表面の茶葉は28度から30度くらい。10センチほど掘っても35度以下だろう。
この数十センチの外側の層に活動する微生物が酸素を消費して二酸化炭素を吐き出して、内側を酸欠状態にしている。
実験の一袋3.5キロでは茶葉の層は上下6.5センチしかない。外側も内側も差がなくて、一袋すべてがひとつの環境になる。
発酵初期の黒麹菌を培養する目的のときはこれで都合がよかった。
一袋3.5キロの外側・内側のすべての茶葉に通気が良くて、32度くらいの低めに温度が保てて(そのときは室温も30度くらいだったので)、他の微生物の繁殖を抑えてキレイに黒麹の発酵がすすんだ。
しかし、発酵中盤からの”浄化”の目的になるとこれでは都合が悪い。
浄化に働くいくつかの優良菌には、通気の少ない環境で40度以上の高温を好むのもいるから。
こんなことも検討してみた。
例えば、浄化の発酵のために、布袋ごとプラスチックバッグで包んで通気を遮断して、酸素の少ない状態にする。
いいアイデアのように思えたが、これもよく考えるとダメ。
黒麹のサインが消えると必ず調子が悪くなる。
この法則にしたがうと、一袋まるごと酸素が少なくなったり高温になったりしてはいけない。黒麹が弱るから。
これは散水のときの技術にもあてはまる。
2回目以降の散水から茶葉に均一に水がかかってはいけない。黒麹の菌糸が窒息するから。不均一に散水することで、黒麹の活動が止まらないようにする。
手はなくはない。
一袋ごとの発酵を分ける。
一袋を浄化のための発酵。別の一袋を黒麹のための発酵。発酵を分けて行って、後にこの2つを混ぜ合わせる。
混ぜ合わせてからまた一袋ごとに分けて、浄化のための発酵と黒麹のための発酵とを分けて行う。
・・・・かなりややこしい。
言うは易しだが、布袋も蒸籠も毎日洗って天日干しして・・という作業もたいへんで、現実的ではない。
少量の渥堆発酵の難しい理由はここにある。
茶葉の量が少ないため相反するような2つの環境を一つの山(茶葉の集まり)でつくれないこと。
忘れないように、ダメになった茶葉の様子を記録しておく。
まず、茶葉の茎の部分が焦げる。
茎の焦げ
西双版納のお土産屋さんで売っているニセ年代モノの生茶にもよくある茎の部分の焦げ。湿気た跡であるが、焦げているだけではなくてカビている。
葉底
匂いが悪い。
それまで黒麹優勢のときは、栗や焼き芋のような甘い匂いがしていた。その甘い匂いだけしかなかった。
発酵がダメになると、麦わらや畳のような草っぽい匂いが混じるようになる。
茶湯
茶湯の色は6回目の散水でさらに赤く変色している。この色は正常。
しかし、味が悪い。
黒麹優勢のときの白ビールのような甘さはない。
クエン酸の酸味はかなり落ちているが、別の酸味、漬物っぽい酸味が出てきている。
なんとなく身体が受け付けない苦味があり、舌に残る。ほんのひとくちがすっと飲み込めない。
納豆菌が繁殖すると、ぬるんとした粘り気が茶湯にも出てきて、苦味が後味にあるが、この場合の苦味は健康的に感じる苦味。苦いのが悪いわけではない。
どこがどう悪いかと味の説明をするのは難しいが、誰にでも子供の頃からの経験の蓄積があって、これは飲むな!と身体が教えてくれるから、うまく文章にしておく必要はないだろ。
葉底
葉底に、死んだ魚っぽい匂いがかすかにある。茶葉に魚の匂いは危ない気がする。
葉底の色は、5回目の散水までは緑色や黄色がもっと鮮やかだったはずだが、6回目の散水後のはどこか全体に黒ずんで灰色っぽい。茶湯の色の暖色とは反対に、葉底の色が寒色になっている。この現象は茶友の熟茶にも見つけているが、どこかおかしい。
追記:5回目の散水後 軽く焙煎
まだダメになっていない5回目の散水後、そのときの試飲を記録しておく。
甘い香りがピークに達して、お茶を淹れると旨味が強く出て、クエン酸の酸味がちょっと落ちていて、もっとも熟茶らしい味。納豆菌の茶湯の粘りはほとんどなくキレイな口感。
これを軽く焙煎してみた。ステンレスの鍋を熱して、火から下ろして予熱だけで散茶に火入れした。
焙煎したときに焼いたパンの匂い。酵母発酵の匂い。味は火入れ前のよりもクエン酸の酸味が落ちて、透明感が増して、さっぱりとしていた。熟茶の年代モノにときどきあるちょっと埃っぽい感じの香り。アミノ酸の焦げからくる炭っぽい感じ。ここで発酵を止めて長期熟成させる手はあるかもしれない。と思った。
今回の実験の目的は、味も体感も涼しい昔の熟茶がどのような発酵によってつくられたかを探ること。
現物のお茶の味で証明することが叶わなかったが、現代の熟茶がなぜ味も体感も暑苦しいのか?、ひとつ思いつく理由がある。
おそらく浄化を意識しすぎているからだろう。
じゃんじゃん水をかけて、渥堆発酵の内側の発熱して高温になるところの時間を長めにして、つまり黒麹菌以外の良性の菌類による発酵をすすめて、”揺れ”の要素をなくしてゆくと、食品衛生的にはより安全になる。理論上はそうだ。このまま発酵をずーっとすすめて行きつくところは灰とか炭とか、枯れて毒にならない物質になる。
出荷してからすぐに飲めなければいけない現在の市場において、「発酵茶だから10年寝かせなければ毒が抜けない」なんて言い訳はできない。
しかし、それならなぜ昔の人も同じように考えなかったのか?
謎を残して、振り出しに戻ってしまった。

ひとりごと:
開発区
開発区
森を切って山を崩して川をせき止めて、人の住まない投資物件を増やしてゆく経済。
そんなんで儲けたヤツらが山ごと買い取って森を切って天然ゴムやバナナを植えて山が枯れてゆく。
罰当たるわな。
ビジネスは頭悪い。

熟茶づくり実験2019年 その7.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット
温度

お茶の感想:
四回目の散水を終えて2日目。
茶葉の温度は最高45度まで上がった。
さすがに撹拌しないとこの温度を下げられない。放っておけば50度を超えるので撹拌した。
かなり不安定な状態。
そういう段階。
三回目の散水からとても不安定になっている。
黒麹優勢の発酵はもうここで限界だと思う。
これまでにない匂いが出てきて、消えて、また出てきて、というふうに揺れる。
豆っぽい匂い・キュウリっぽい匂い・うどん出汁っぽい匂い・漬物っぽい匂い・卵の黄身っぽい匂い・カビっぽい匂い・焼いたパンっぽい甘い匂い・栗っぽい甘い匂い、など。
お茶の味も揺れる。
茶湯
クエン酸の酸味が落ちてきて、これまでになかった苦味が出てきたり、強い旨味や甘味が出てきたりする。数時間後に飲んでみるとまたクエン酸の酸味が戻っていたりする。
グラスの底に菌糸や胞子の死体?のようなのが増えてきた。
グラスの底
栄養が豊富になりすぎているのだと思う。
豊富な栄養は、腐りやすいカビやすい。
黒麹菌だけではもう安全を保てないから、納豆菌や酵母や乳酸菌の援護が必要。
こちらから援護を要請しなくても向こうから勝手に来てくれて、活発な発酵になって茶葉の温度がこれまで以上に上がる。自然にそうなる。
おそらく、良性な菌類だけはないだろう。
茶葉は複雑なカタチをしていて、ミクロの世界ではいろんな環境ができるから、悪いやつも侵入してくる。
カビ
カビ
茶葉が高温になると水蒸気が増えて蒸籠につくカビも増えてきた。黒麹っぽい黒いのがほとんどだが、そうでないのもいる。もうすぐそこまで迫って来ている。いや、すでに茶葉に侵入しているだろう。
でも大丈夫。
酵母・納豆菌・乳酸菌は、さらに発酵をすすめることで毒が毒のカタチを保てなくなるまで分解するから。
発酵により浄化する。
汚れた土や水が微生物によって浄化されるように、茶葉につくられた毒もまた浄化される。
浄化のプロセスが渥堆発酵には必要。だから、単独の微生物による支配では無理。いろんな微生物が複雑にからみあって共存してくれないといけない。
共存するには、もともとの茶葉の栄養では少なすぎるので、黒麹菌が栄養をつくってくれないといけない。
黒麹菌は栄養をつくりすぎる。だから余剰な栄養は酵母などが燃焼してくれないといけない。毒を分解してくれないといけない。
茶葉の水分や温度など、ほんの少しの環境差で微生物たちは棲み分けするから、茶葉の堆積の高低差によって層をつくる。茶葉の内側の水分が多いところから半乾きになるまでの含水量の変化する時間の幅をとる。
部分的に、もしくは一時的に、それぞれの微生物の繁殖をゆるす。
版納古樹熟餅2010年
写真: 版納古樹熟餅2010年メーカーの倉庫での渥堆発酵
渥堆発酵が、
なぜこれほど何度も散水するのか。
なぜこれほど高温を保つように発酵させるのか。
なぜこれほど長い期間発酵させるのか。
それは、熟茶づくりに”浄化”のプロセスが必要だから。
2袋それぞれの発酵
茶湯の色
葉底
ここにきて、一時的に45度になる高温を経て、ようやく茶湯の色に赤みが加わってきた。
左と右は同時に発酵をスタートした同じ茶葉の2袋だが、1袋ごとの具合がちょっと違ってきた。ほぼ同じ環境になるようにしてきたが、例えば蒸籠の上段と下段とか、散水の量の微妙な差とか、発酵に差がでてくる。お茶の味にも差がある。
一方は、カビっぽい苦味がちょっと出てきたが、香りが甘い。
もう一方は、カビっぽさはなくて漬物っぽい酸味があり甘味も強いが、香りが少ない。
これからの展開を観察する。
黒麹優勢の茶葉
高温になっても黒麹優勢のときの黒っぽい色のサインが消えなくなってきた。35度くらいに温度が下がってくると、栗の甘い匂いが戻ってくる。
はい。
今日の授業はここまで。

ひとりごと:
西双版納は異常気象で雨が降らない。まったく降らないので空気はカラカラ。熱帯雨林の気候じゃなくなっている。
連日、気温は39度まで上がる。
このままだと渥堆発酵の最終段階が危ない。
西双版納
渥堆発酵の最後は、茶葉を広げて温度を下げて微生物の活動を止めて、10日ほどかけて自然乾燥する。
高温のために微生物が活動してはいけないし、乾いた空気が茶葉を早く乾燥させてもいけない。
なにか別の手を打つしかなさそう。

熟茶づくり実験2019年 その6.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット
発酵の茶葉

お茶の感想:
さらに2袋分、調子が悪くなって捨てた。
これで手元の茶葉はいったんゼロになった。
原因はわかっている。
撹拌しすぎ。
乾燥しすぎ。
撹拌の目的は、水分の均等化と、上がりすぎた温度を下げること。
しかし、撹拌すると茶葉の表面が乾燥しやすい。どうやらそれがいけない。
茶葉の表面だけが乾燥して内部に水分が多くて茶葉の温度が34度以上あるようなときに、黒麹以外の微生物によるものと思わしき匂いが出てくる。イカの塩辛っぽい匂い。加湿して茶葉の表面に潤いが戻ると消えるし、たとえその匂いが出てもお茶の味にはほとんど影響しないが、いったん出ると後になるほど出やすくなる。メーカーの渥堆発酵中にもその匂いがあるので、問題ないのかもしれないが、今回の実験ではできるだけ黒麹優勢の発酵をすすめたい。得体の知れない変化はなるべく少なくしたい。
黒麹優勢の状態は色や匂いでわかるようになった。
種麹を仕込むことで黒麹による変化が特定できたのは今回の大きな成果。
布袋の発酵茶葉
黒麹発酵の茶葉
黒麹発酵の茶葉
しかし、黒麹優勢のバランスを保つのは難しい。
布袋に大きな餅のようなカタチに収まっている茶葉が、例えば部分的に、中央には黒麹で端っこだけはクモノスカビがちょっと出る、というふうに棲み分けするようにはなりにくい。黒麹が優勢になると布袋のひとかたまりが団体行動で同じほうを向いているような感じで、中央も端っこも同じ色に染まる。
このバランスが崩れると、ほんの数時間で優劣がひっくり返る。
ある一定の温度や湿度を保つくらいではバランスが保てない。今日一日の気温や湿度や気圧の変化、日々の変化、季節の移り変わり、など、揺れる要素はいろいろあるから目が離せない。
こんなに難しいとは思っていなかった。
撹拌は水分の均等化や温度を下げるのに有効だが、できるだけしないほうが茶葉の表面の潤いを保ちやすい。途中の散水は一滴も許されない。
手を使わずにご飯を食べるみたいな不自由さ。もどかしさ。
茶葉に触らないようにする。
そうすると、散水から24時間ほどで茶葉同士がゆるくくっついてくる。日本の麹造りで米の粒がゆるくくっついて固まるのと似ている。菌糸がつながっている様子。写真ではわかりにくいが、茶葉の表面にうっすら白く短い毛が生えてくる。
黒麹の菌糸と思われる。
黒麹の茶葉
菌糸が張り巡らされると、茶葉と茶葉の隙間の水分を逃がしにい構造になるらしい。布の内側の餅が全体的にしっとりしてくる。もしかしたらクエン酸による潮解の作用(空気中の水を捕まえる)も働いているのかもしれない。
しかし、撹拌すると乾いて菌糸が消える。1時間で消える。ものすごく繊細。
これを知らないうちは、加湿で調整できるだろうと考えていた。
撹拌して茶葉の表面が一時的に乾いても、加湿したらすぐに潤いがもどるだろう。
ところが、そうはゆかない。
茶葉の繊維は天気に反応している。
雨が降ったりして外気が湿れば茶葉も湿りやすい。カラカラに晴れて外気が乾けば茶葉も乾きやすい。その逆の方向へ調整するのが難しい。
また、加湿しすぎてもダメで、茶葉がどんどん水を吸って内部まで水浸しになって黒麹が呼吸できず、乳酸菌や納豆菌やケカビやクモノスカビが大繁殖する。酵母がアルコールをつくる。
毎日の天気を見ながら、一日の外気の変化を見ながら、加湿の加減も微妙に変わってくる。
ベストなバランス。内部には適度に空気と水がありながら表面が潤っているというバランスは、まずは散水の加減で決まるが、そこはなんとかコツを掴んだので、これからは保湿が課題である。
臭豆腐
写真は臭豆腐の一種の石屏豆腐。
綿のような菌糸の先に黒い粉が見えるが、これは黒麹ではなくてクモノスカビ。クモノスカビの発酵はクセがないので、これを見ないで豆腐料理になると発酵した豆腐であると気付かない。ただ、箸が止まらなくなる旨さと、ほんのちょっとチーズっぽい酸味がある。
撹拌しないで、発酵の温度が上がりすぎるのをどう対処するか?
冷やす設備がないので、気化熱で温度を下げるなど自然な現象を利用するしかない。
まず、発酵の部屋を変えた。
これまでの部屋は日当たりが良くて、遮光していても照射熱がこもって乾燥しやすい。3部屋あるので、隅々まで裸足で歩いて、床がいちばんヒンヤリしているところ、つまり水気がいちばんあるところに蒸籠を移動させた。
電気ポットの蒸気を利用するのをやめた。
水となじまない不自然な熱い空気が茶葉を乾燥させるから。
このところ一日の平均気温が30度はあるから、加熱する必要もない。
4時間に一度はチェックして、蒸籠の上段・下段を交換したり、上段・下段の間の中段に空の蒸籠をはさんで通気性を良くしたり、布袋ごと天地返したり、布袋の餅の中央にちょっとだけくぼみをつくったり、茶葉には直接触れない蒸籠や布に霧吹きをして熱を下げたり。
気化熱で内部の水を冷たくするダイ族の素焼きのヤカンの、外側の結露の水と冷気を利用したり。
ダイ族の陶器
土器
そのくらいしか手段がなくて、いずれも即効性はないが、ただ、試行錯誤しているうちにそれだけでもなんとかなりそうになってきた。
それで、現在は新しい茶葉で渥堆発酵をスタートさせている。すでに9日目。散水2回目から2日後。
今のところ安定している。
これまでのと比べてかなりキレイに発酵させている。
黒麹発酵の茶葉
3.5キロ(乾燥した茶葉)を1袋として2袋の7キロ分。
1袋の茶葉の量を2.5キロから3.5キロに増量したが、これも潤いを保つ効果が増すので有効と考えた。
茶葉を変えた。
孟海県の茶葉をやめて、孟臘県の旧六大茶山の蛮磚古山(現在名は曼庄)の生態茶にした。
旧六大茶山は山に水気が多くて、茶葉にも水気が多い。
生態茶は樹齢30年くらいの若い茶樹で、山の斜面に一本一本独立して植わっている。同じ山の古茶樹から種を採取して植えたものだから、古くからある原生の大葉種の品種特性が現れている。
あくまで推測だが、こちらのほうが茶葉がもともと持っている天然の微生物(黒麹菌を含む)の量が多いと見ている。
曼庄
晒青茶
黒麹の品種は、焼酎づくりにつかわれる日本には何百種もあるとどこかで聞いたことがあるが、おそらく熟茶づくりにおいても茶山や倉庫ごとに棲み着いている黒麹の品種特性がそれぞれあるにちがいない。
2016年の秋に熟茶づくりを試したときは種麹なしで、茶葉の持っている天然の黒麹を利用していた。そのとき、発酵に使う道具の布や笊を洗うと、黒い色素が水を染めるが、その黒にちょっと青味があったのを覚えている。万年筆のインクのような色。その色が今回の蛮磚の茶葉の発酵につかっている道具を洗うときにも出てきた。孟海県の孟宗山のは黒い色でもちょっと黄色っぽい感じだったので、もしかしたら黒麹の品種特性の違いが現れているのかもしれない。
発酵スタートのときに、茶葉を蒸して種麹を仕込んでいるが、ちょっと蒸したくらい(蒸し時間10分くらい)では天然の胞子が死なずに残っているのかもしれない。
発酵熱の茶葉
2回目の散水から24時間後、茶葉の温度がゆっくり上昇して40度を超えた。
さすがにこのときだけは撹拌して揉捻もした。
1回目の散水で40度に達すると、おそらくそれは茶葉が水浸しになっているから納豆菌らしきのが大繁殖するのだが、今回は40度になっても黒麹優勢の状態を維持している。栗のような甘い香りがしている。
茶湯の色
あいかわらず茶湯の色は変わらない。
黒麹が茶葉を酸化させないようにしている。
スタートから9日目、散水2回目。まだクエン酸の酸味が強いが、でんぷん質の糖化による甘味も強く出ている。
香りも味も透明感があって、怪しいところはまったくなし。
はい。
今日の授業はここまで。
葉底
葉底つぶす

ひとりごと:
今回の実験の最大の難関はまだこれから。
渥堆発酵を終えてからの、乾燥をどうするか。火入れをどうするか。
散水5回目までにいろんな可能性を考えておいて、これという方法を決めておきたい。

熟茶づくり実験2019年 その5.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの杯・鉄瓶+炭火
床置

お茶の感想:
第二回目の散水。
茶葉をしっかり撹拌して温度を下げて、散水後に扇風機の風を当てて24.5度にまで下げた。
1時間もしないうちに26.6度にまで上がった。室温が29.3度あるので発酵熱がなくても黒麹が活動しだす28度くらいまで数時間で上がる。
常温
いったいどのくらいの時間をかけて、30度から35度くらいまで、黒麹の活発な温度帯になるまで、待てばよいのか?、そこがわからないが、あまり急ぐと良くない気がする。茶葉の温度の上がるのが先で、黒麹菌が活発になるのよりも早いと、アンモニア臭とかカラスミ味の問題がまた出てくるだろう。
第一回目の散水のときは、発酵熱が上がってきて、室温よりも茶葉のほうが高い温度になるのに24時間はかかっていた。おそらくこのくらいで良いのではないかと考えた。
そして順調に、ゆっくり温度が上がって24時間後には33度にまでなった。
暑い日がつづいていて、加温する必要なしと考えて、上の写真のように床に置いている。蒸籠のいちばん底に厚紙をはさんで、蒸れないように通気させている。
栗のような黒糖のような甘い香りが戻ってきて、茶葉の色も黒くて、黒麹が育っている様子。
しかし、散水の量が少なすぎたせいか48時間経つまでに茶葉が乾燥した。重量を量ると、散水前に戻ってしまった。そうなるとやはり香りが弱くなって、色もまた黄色っぽくなって、黒麹が弱ってくる。
散水の量は第一回目の半分だった。少なすぎた。
そこで、もう一度散水をやり直した。
茶葉を撹拌して、散水して扇風機の風を当てて、温度を下げてからまたじわじわ24時間かけて33度くらいまで戻るのを待った。散水の量は多めに、第一回目と同じ量にした。
水が多いと、乳酸発酵っぽい酸っぱいような匂いが出るが、調子は良い。ただ、水の多いまま34度を超えると納豆菌っぽいのが現れるので、そこまで上がらないように温度管理に気をつけている。
3時間か4時間に一度は温度をチェックしている。
温度が高いときは、撹拌して冷ましたり、布袋ごと上下をひっくり返す天地返しをしたり。温度が低いと茶葉を寄せ集めて熱がこもりやすいようにしたり、それでもダメなら電気ポットの湯気で温めたり。
試飲してみた。
茶葉
温める
茶湯の色
葉底
潰す
香りや味には問題なし。
問題はないけれど、あまり変化していない。発酵がすすんでいない。
葉底の色も質感もあまり変わらない。潰してもヘンな匂いはしない。
散水から茶葉を観察して気付いたことがある。
茶葉の先のほうや根本のほう、茎の部分、それぞれに発酵度がかなり異なる。
それはそうで、茶葉の部位によって水を含む量とか茶葉の繊維の通気の良し悪しとか成分の構成とか、条件が大きく異なる。小さな微生物にとっては一枚の茶葉の中に異なるいくつかの生態環境があることになる。
微生物の活動は、つくりだす酵素の作用に頼るところが大きいので、水が不足すると発酵がすすまないし、かといって多すぎると住めないし。
茶葉一枚に乾燥しているところもあれば水浸しのところもある。ムラがある。
極端なケースでは、水が足りなくて発酵しなかったり、水が多すぎて雑菌が繁殖したり。
良性の黒麹やその他のいくつかの菌種だけに良い環境を提供したいけれど、それすら難しいほどのムラがあるかもしれない。
これは揉捻するべきだろ。
茶葉一枚の中の水をまんべんなくゆきわたらせる。
揉捻
布袋ごと茶葉を押して揉んだ。
はじめは手で圧して揉んでいたが、あまりに重労働なので、新しい靴下を履いて足で踏んで揉んだ。まるで圧餅の加工のときみたい。
揉んだ後は撹拌して、茶葉同士がくっつかないようにする。
散水から24時間経つと茶葉の表面が乾いているので、くっつきにくくなっている。茶葉の中心に水が溜まっていて柔らかいので、茶葉の繊維が千切れてバラバラになることはない。
そのくらいの水分量が、黒麹の繁殖にちょうど良い感じ。
そういえば『版納古樹熟餅2010年』をつくったときに、孟海の老師が言ってたような気がする。
「昔は手で揉んだ。」
孟海の茶廠
渥堆発酵の終盤になると茶葉同士がくっつきやすくて塊ができやすい。それを細かくほぐすとなると機械ではできないから手でやるしかない。
この作業は、水分をまんべんなくする目的もあったのではないだろうか。
今度会ったら聞いてみる。
さて、第二回目の散水がうまくゆくことがわかったら、一袋2.5キロの実験では足りない。
もっとつくりたい。
別の茶山、できたら孟臘県の旧六大茶山の茶葉でやりたい。
あくまで推測だが、旧六大茶山の茶葉は天然の黒麹や酵母をたくさん持っている。発酵したがっている。
なぜならこの地域の山に水気が多くて、茶葉の組織が水をたくさん含むように育っているから。昔のやり方なら製茶工程のあらゆるところで自然乾燥に時間がかかって、生茶もちょっと微生物発酵していた。・・・という仮設を立てている。
実は、これまでつくってきた生茶や紅茶の茶葉の質や味や香りにもそれっぽい特徴が現れている。
微生物発酵させてみたら、なにか見つかるかもしれない。
はい。今日の授業はここまで。

ひとりごと:
微生物発酵の管理のために毎日規則正しい生活。
夕方に大黒狗にビールを飲みにゆくのが唯一の娯楽。
大黒狗は北京の人が自家製醸造のビールをつくっている。
大黒狗にビール
大黒狗にビール
大麦でつくるビールと小麦でつくるビールとは酵母の菌種が違う。
なぜかというと、大麦はでんぷん質が少なめで小麦はでんぷん質が多め。成分構成が違うから。
ほんとうは、熟茶も菌種や茶葉の成分構成の違いが語られてもよいはずだが、まだそこまで研究がすすんでいないのかもしれないな。
昔の人は当然知っていたはずだが、みんなに共有できる情報にはしなかったらしい。

熟茶づくり実験2019年 その4.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・鉄瓶+炭火

お茶の感想:
第二回目の散水後に悪くなる問題を考え中。
たまたま茶葉を整理していたら、温州人の第六批の発酵初期のサンプルが出てきた。
第一回目の散水だけで発酵6日目から自然乾燥させてある。二回目の散水はしていない。
第六批熟茶散水一回
これを比べてみる。
茶葉は見るからに黄色っぽい。
この色は、自分のやつではダメとしているが、温州人のはそうでもなさそう。漬物を干した梅干菜みたいな健康的な香りで、つまり、乳酸発酵している。
乳酸発酵の茶葉は布朗族の竹筒茶やミャンマーのミエンのように、食べたりスープにしたりするのがある。茶葉を漬物にするときには塩を使わない。一般的に漬物は水と塩で漬けるが、茶葉は塩を使わなくてもうまく発酵できるらしい。西双版納の市場ではいろんな漬物が売られているが、葉っぱモノにいくつか水だけで漬けたのがあるから、おそらくある種の葉に含まれる成分が他の雑菌を繁殖させないなどして、塩の代わりになるのだろう。
黒麹と乳酸
左: 実験中の茶葉
右: 温州人の茶葉
2つ並べると色の違いがわかりやすい。
実験中のは黒糖と醤油のような匂いで、温州人の茶葉が漬物の匂い。黒麹発酵と乳酸発酵との違い。
黒麹と乳酸
黒麹と乳酸
黒麹と乳酸
左: 実験中の茶葉
右: 温州人の茶葉
煎じると、もっと大きく違いが現れる。
茶湯の濁りの違いもあるが、注目するべきは色の変化。
温州人のは赤く変色するのが早くて、1煎めと2煎めの赤味が違う。
黒麹のは酸化を防ぐ効果ができているらしく、煎をすすめても変色が少ない。
温州人のは第一回目の散水が多すぎて茶葉が水浸しになって、さらに竹籠と布で囲われていて通気が悪く、黒麹よりも乳酸菌や納豆菌を繁殖させている。
ただ、黒麹がゼロというわけではない。黒麹のつくるクエン酸由来の酸味もあるし、旨味も甘味もあるし。
葉底
左: 実験中の葉底
右: 温州人の葉底
問題としているアンモニア臭やカラスミ味はない。
茶葉を熱したり葉底を潰したりしても悪い臭いは出てこない。
この第六批の完成版、第四回目の散水までいったのにはアンモニア臭やカラスミ味の問題があったので、第二回目の散水以降になにかが起こっている。
そうするとだ。
菌の繁殖バランスの問題ではなかったのだ。
なぜなら黒麹が優勢でも乳酸が優勢でも、第二回目の散水以降に同じような問題が発生するから。
実はこのことをずっと疑問に思っていた。
もしかしたら黒麹優勢ではダメなのか?、最初に蒸して殺菌するのがダメなのか?、種麹は他の地域のもので茶葉の持つ天然麹じゃないからダメなのか?、・・・などなど考えを巡らせていた。
温州人のは、茶葉を蒸さないし、天然麹だし、麹よりも乳酸発酵だし、それでも同じ問題が起こるのだから菌の繁殖バランスじゃないらしい。
温度の問題か・・・。
第六批熟茶散水一回
このサンプルの袋には”2018年9月”と書いてあるから、この地域(雲南省臨滄市鎮康県からミャンマーに入ったすぐ)はまだ雨季。室内の気温20度から30度、湿度は60%から75%くらいだろうか。
ここで、渥堆発酵の場合を考えてみる。
西双版納のお茶づくりにかかわるようになって10年めだが、熟茶づくりの最初から最後まで見ることができたのはこのお茶だけ。
+【版納古樹熟餅2010年】
ただ、このときまはだ知らないことも多くて、渥堆発酵のどこを注意して見るべきかわからなくて、今から振り返ったらいろんなところを見落としている。
実際に見たことと、見ていないところは想像力を働かせて「こうなっているのじゃないかな・・・」と推測しながら、渥堆発酵の工程と温度の変化を考えてみる。
孟海鎮
まず、発酵の倉庫の環境。
メーカーの渥堆発酵の倉庫は西双版納州孟海県の孟海鎮に集中している。国営時代の孟海茶廠がここにあったからここで始まったわけだが、気候や水が適しているというのもあると思う。
孟海鎮は、現在実験中のアパートの部屋がある景洪市よりも海抜が高い(1200メートルくらい)ので涼しい。
4月中頃から5月初旬までの西双版納はいちばん暑いとき。
雨季に入る前で雨の降らない日に太陽が建物を灼くので、室温が上がる。雨季に入れば短時間の雨が必ず毎日降るので室温は下がって過ごしやすくなるが、そういえば『版納古樹熟餅2010年』の渥堆発酵はそういうタイミングの5月26日にスタートしている。
倉庫
倉庫
景洪市は昼の気温が35度にもなるが、そんな暑い日でも孟海鎮なら32度くらいだろう。山から冷たい空気が降りてくる深夜から早朝は18度くらいまで下がることもある。
倉庫は温度や湿度の調整をしない。
室温は23度から32度くらいだろう。湿度は50度から80度くらいだろう。
20トンもの茶葉が微生物発酵中の場合は、温度も湿度も外気よりは上がっているが、通気のための窓が常に開けてあって、麹室(こうじむろ)のような保温や加湿はしないので、ギリギリ人が住むこともできるような環境。
なので、渥堆発酵の茶葉の山だけで温度と湿度を保つようにしなければ、黒麹菌が繁殖できる環境を維持できない。
それゆえに、「最低200キロの茶葉が必要」とか言われることになる。
大量に茶葉がないことには安定しないから。
散水一回目
第一回目の散水。
井戸からポンプで組み上げた水を乾いた晒青毛茶に散水する。
地下数メートルの浅い井戸なので水はそんなに冷たくない。気温29度なら水温25度くらいだろうか。
手元で実験したところ、水をかけた直後の茶葉は室温から4度から5度は低くなる。”気化熱”と呼ぶ作用で、茶葉から水が蒸発して熱を奪う。なのではじめの数時間は室温よりも茶葉の温度のほうが低いままになる。
微生物発酵で発熱してきて、12時間後くらいから室温を超える。さらに温度が上がって24時間から48時間後には、最も熱くなる茶葉の山の中心部は60度を超えることもある。
茶葉の山はおおまかに言うと二層に分けられる。
山の底の中心部と、その上に覆いかぶさる表層部と。
その割合は、中心部3割:表層部7割というところだろうか。
渥堆発酵
保温
中心部には水気と熱がこもって微生物発酵が盛んになりやすい。
この中心部から熱と蒸気が放たれて、表層部の茶葉に黒麹菌にとってちょうど良い28度から34度くらいの温度と湿度が供給される。
黒麹菌にとっては中心部は熱すぎて蒸れすぎて息苦しくて元気がなくなり、納豆菌・酵母・乳酸菌などが元気になる。
日本の麹造りのようにキレイに麹菌だけを優遇して繁殖させることを目的としたら、表層部の7割だけが良くて、中心部の3割は不良発酵ということになる。捨て駒になる。しかし、実際には捨て駒にはしない。茶葉を撹拌して散水して、中心部にあった茶葉にもいずれ表層部になる番がめぐってきて、黒麹の発酵を経験する。
渥堆発酵
撹拌
撹拌
3回目の散水
第二回目の散水。
撹拌してからまた茶葉の山をつくって散水する。
・・・たぶんこれだ。
撹拌は徹底的にやる。
茶葉を床にひろげて、また集めて、またひろげて。
なにをしているのかというと、温度を下げているのだ。
気化の作用で、おそらく室温よりも下がる。しっかり撹拌したら26度くらいまで下がるだろうか。
散水によって更に下がって、25度くらいになるだろう。
このとき茶葉の山は中心部と表層部の差はなくなっている。
冷えているから雑菌が繁殖できない。26度くらいまで下がると雑菌の繁殖は遅い。
茶葉に水をかけた瞬間に黒麹菌は窒息死する。
残された胞子がまた成長して菌糸を伸ばして活発になるのに少なくとも8時間ほどかかる。
その間は、抗菌のガードが甘くなるのかもしれない。
なので、その間になるべく温度を低めに調整したほうがよい。
熟茶と生茶ともによく飲む人は気付いていると思うが、暑い時期に、お茶を飲んだ後に茶葉を入れたままの茶湯を残して数時間放っておくと、熟茶のほうが腐るのが早い。
熟茶は黒麹をはじめとした微生物が栄養をつくりだしているから、腐りやすい成分構成になっている。
渥堆発酵の茶葉も同じ。
黒麹が元気な状態でなければ30度もの高温では腐りやすい。
写真を探したら出てきた。
『版納古樹熟餅2010年』の第二回目の散水後、第三回目の散水直前の茶葉。
黒い茶葉
黒い。黒麹菌による美しい発酵。
早速、手元の実験中の茶葉を撹拌して温度を下げて散水してみた。
散水後に扇風機の風を当てて気化熱の作用でさらに温度を下げてみた。24.5度まで下がった。室温は29.3度。
撹拌後
散水後温度が下がる
はい。今日の授業はここまで。
この結果はつぎの記事に書くとする。
第二回目の散水ができてホッとした。
なぜなら黒麹があきらかに元気をなくしていたから。
散水から4日めくらいで元気がなくなるのは、成長の周期だから仕方がない。
保温したり湿度を上げたり、いろいろしてみたが元気がない。
第二回目の散水の1時間後からはやくも良い色が戻ってきた。匂いも良い。
黒麹が元気を取り戻した。

ひとりごと:
もうひとつ知恵を見つけた。
渥堆発酵で第二回目からの散水は、撹拌した後で茶葉の山をつくって最後に散水して終わる。
散水してからは茶葉には触らない。撹拌もしない。
これには2つの効果がある。
1つめは、茶葉の粘着を防ぐ。
散水後に撹拌すると、表面の濡れた茶葉と茶葉がくっつきやすい。くっついて団子になって通気が悪くなって不良発酵する。
しかし、散水してそのまま放っておくと、吸水性の良い茶葉の繊維が水分を拡散させて、下のほうの乾いた茶葉を湿らせる。茶葉を動かさなければ、茶葉同士がくっついて団子になることも少ない。
2つめは、水滴が直接かからなかった下のほうの黒麹菌は窒息死していないということ。
撹拌と散水でいったん下がった温度が徐々に上がってきて、28度くらいになったら黒麹はすぐに活動再開できる。28度なら室温くらいなので、なにもしなくても数時間で戻る。
黒麹が活発になれば雑菌の侵入は難しくなる・・・というのが正しければ、散水でわざと水をかけない部分、水滴のかからない茶葉を残しておくほうが賢い。

熟茶づくり実験2019年 その3.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 中国宜興の茶壺・グラスの杯・鉄瓶+炭火
散水

お茶の感想:
渥堆発酵をスタートさせる第一回目の”散水”。
茶葉にどのくらい水を含ませるかによって結果が大きく異なってくる。
水が多すぎて通気が悪いと、たいてい納豆菌の大増殖となり、黒麹菌がうまく育たない。
水が少なすぎて麹を弱らせると、雑菌の侵入をゆるしてしまう。
雑菌の侵入はまず茶葉の色でわかる。
黒麹菌がうまく育つと、なぜか茶葉の色が黒くなる。ツヤの無い黒。
雑菌の茶葉
左: 雑菌の繁殖したらしい茶葉
右: 黒麹菌の繁殖した茶葉
黒麹だから胞子の色も黒いのだが、散水から24時間くらいではまだ胞子のたくさん出る段階じゃない。なにか化学反応しているような感じ。
写真のように雑菌の育ったほうはちょっと黄色っぽい。黄色っぽいのはもともとの色なので、変色しないことが問題なのかもしれない。途中まで黒っぽかったのに、乾燥したり冷えたりして黄色っぽくなることもある。
そのまま数時間経つと匂いが出てくる。小豆みたいな匂いや、アンモニアみたいなツンとしたのや、香水のようなキリッとしたのもある。匂いが出たらもうアウトで、捨てるしかない。
茶湯が濁る
左: 雑菌の繁殖したらしい茶葉
右: 黒麹菌の繁殖した茶葉
お茶を淹れてみると、雑菌のほうはちょっとだけ水に濁りがある。
飲んでみると、そこそこ美味しい。まだこの段階では問題が大きくなっていないのかもしれないが、しかし、よーく香りに気をつけてみると、温州人の茶友の熟茶で問題視していた”からすみ味”が感じられる。
黒麹のうまく育ったのと比べて飲むと微妙な差がわかりやすくて、妙に酸っぱかったり、妙に渋かったりして、バランスが悪い。
第一回目の散水は、日本の麹造りを参考にするとうまくゆくようになった。
問題は、第二回目の散水から。
実は、この先がまだうまくゆかない。
熟茶づくりの渥堆発酵は1ヶ月ほどの期間に4回から5回の散水をする。
なぜ何度も水をかけるのか?
衛生的に発酵食品をつくる観点からしたら危険が多いし、技術の熟練を要するし、手間もかかるし、人件費もかかるし、スペースをとるし、あまり効率の良いお茶づくりとは思えない。
けれど、ちゃんとした理由がある。
いちばんの理由は、発酵食品として完成していないから。
例えば麹も、麹だけでは発酵食品として完成していない。麹を利用して味噌や醤油やお酒や加工食品をつくる。
麹がその効力を発揮するためには、水分を必要とする。
第一回目の散水から数日間で黒麹菌によってつくられた成分は、まだしっかり茶葉を変化させないまま乾燥している。効力が凍結された状態。
この先、水分が得られるのは圧餅加工の蒸しから乾燥までの24時間くらい。茶葉を変化させるには少ない。
20年も30年も保存して、空気中のわずかな水分に反応して熟成するのを待つのなら、そもそも熟茶の意味はない。
”速醸”が熟茶の開発目的だったから。
散水の茶葉
散水の茶葉
ここでちょっと話がそれるが、現在の熟茶と開発当時(1970年ごろ)の熟茶は別モノだと自分は考えている。
熟茶は大衆茶というのが現在のポジションで、高級熟茶なんてごくわずかだが(高級と謳っているものはあるが、誰もが文句なしに実力あるのはゼロかもしれない)、しかし、開発当時はそうでもなかった。
1970年頃は経済発展前の中国なので、現在とは事情が異なるはず。
茶業がまだ外貨を稼ぐ産業として重要な役割を果たしていた時代だから、現在の製造業やIT産業のようなもの。
1960年頃から10年間くらい、国営時代の”昆明茶廠”や”下関茶廠”や”孟海茶廠”が研究開発に携わって、1973年に第一批が出品されたが、当時の国営茶廠の技術者は全国から優秀な人たちが集められて、IQも給料も高かったにちがいない。そこで研究に10年かかったのは尋常ではない。
狙いは、華僑たちの間で流行っていた生茶の年代モノ。中国茶の中で高級を競っていたお茶。
例えば、中国人が日本のウィスキーを爆買いしはじめて、この数年で価格が高騰したが、20年モノの原酒を今から増産することなどできない。そこで、メーカーとしては今からでも大量生産できる新製法で新銘柄のウィスキーを出品したい・・・というのと似た展開が、1970年頃の雲南の茶業にもあっただろう。
熟茶づくりを知るほどに、技術も手間も労力もお金もかかるということがわかってきて、当時はあまり稼げない国内流通の大衆茶を大量につくるために新製法を研究開発したというのでは、どこか違和感がある。
すべての熟茶が高級茶を目指していたわけではないが、高級茶を目指していた形跡がいくつかの銘柄に残っている。
そのうちのひとつ。
7562第一批
7562第一批
これも生茶のような熟茶。
+【7562磚茶】
”7562”は、初代だけ高級で、現在の”7562”はも毎年つくられている普通の安い大衆茶である。
さて、第二回目の散水の話に戻る。
発酵食品として微生物発酵の黒茶として完成させるためには、一回の散水だけでは足りない。それどころか、麹造りの役割を果たすことすらできない。
茶葉は、米や大豆や麦とは違う。内容成分も組織構造も違う。
われわれ人間は、米を食べたらチカラが出るけれど、茶葉を食べてもチカラが出ない。米を食べたら肥るけれど、茶葉を食べても肥らない。黒麹菌もたぶん同じことで、一回めの散水から数日間では、しっかり発酵させられるはずがない。
また、茶葉の繊維の組織構造は、水の動きをつくる。
茶葉のミクロの繊維の水道管を行き来する水。
生茶や紅茶をつくる製茶では、茶葉の内部の水の抜き方がお茶の味を左右する。
熟茶づくりでは、茶葉の内部の水の動きが微生物の働きを左右する。
水の動きの見極めが難しくて、今回の実験ではすでに10回は失敗している。2.5キロ一袋が一回分で、その10回分だから25キロ。マンションの敷地の植物の肥料となった。
バナナ
パパイヤ
老人が勝手に植えているバナナとパパイヤ。
例えば、こんなややこしい現象がある。
第一回目の散水から4日経つ頃、茶葉が乾いてきて、黒麹の甘い香りも弱くなって、第二回目の散水のタイミングが来たと思った。
実験なので散水の量を少ないのや多いのを試した。
しかし、すべてダメになる。
茶葉の中心部が水浸しになって、そこにかすかに硫黄のような匂いが発生する。
葉底をつぶす
茶葉を熱して匂いを嗅いでも、お茶を淹れて飲んでもこのトラブルには気づかないが、水で濡らして茶葉を指でつぶすとわかる。
そこで、第一回目の散水から4日目の茶葉の重量を量ってみた。
すると、第一回目の散水直後から35g減っただけ。500ccから35ccしか減っていないことがわかった。
さらに24時間後の5日目になってもほとんど変わらず。
重量と水分量
乾燥しているようで乾燥していない。
茶葉の表面は手で触ってみた感じカサカサしているが、内側にある水の量は減っていない。
第一回目の散水の直後は、茶葉は縮まって布袋に小さくまとまっていたが、4日後にはふくれて大きくなっている。茶葉の繊維が弾力を持って空気をたくさん含んで体積が大きくなっている。そのため、水分計の数値は下がるが、水の量が減ったわけではない。
なぜ茶葉の中の水が減らないのか?
蒸籠の内側は湿度75%ほど。気温32度ほど。電気ポットから68度のお湯がずっと湯気を出して、空気中の水を補給しつづけている。それが黒麹に適した環境だから。
茶葉が湿るのはあたりまえ。湿度70%を超えるあたりから茶葉は空気中の水を吸い込む。
さらに、ネットを検索していたら”潮解”という用語を見つけた。
クエン酸が空気中の水を捕まえて固定する。衣装ケース用の乾燥剤(水を溜めるやつ)と同じ効果を持つ。黒麹菌がつくったクエン酸が茶葉の乾燥を防いでいるのかもしれない。
布袋と蒸籠
4日目の茶葉
茶葉の温度
第二回目の散水をしていない茶葉2.5キロ一袋が最後に残った。
失敗していないのはこれだけ。
今日は第一回目の散水から5日目になるが、まだ水の量は減らない。第二回目の散水のタイミングはいつ来るのだろ?
はい。
今日の授業はこれで終わり。
布テント

ひとりごと:
眠い。

熟茶づくり実験2019年 その2.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 中国宜興の茶壺・グラスの杯・鉄瓶+炭火
渥堆発酵
渥堆発酵

お茶の感想:
メーカーの熟茶の微生物発酵は、数百キロから数トンもの大量の茶葉を数十センチから1メートルの山にして水を掛ける。これを渥堆発酵と呼ぶ。
茶葉を床にひろげて不衛生に見えるかもしれないが、実はこのやり方がもっとも衛生的で経済的で生産効率も良くて、理に適っているかもしれないと思う。
他のやり方を模索していろんな可能性を考えてみたけれど、一巡してここに戻ってきた。昔の人の知恵がある。
それでも、自分はもうちょっと蒸籠を使ってやってみようと思う。
蒸籠
蒸籠
蒸籠は一段ごとに分けられる。種類の違う茶葉を試したり、発酵の具合を調整したり、発酵のスタートに時間差をつけたり。実験にはこれが向いている。
蒸籠の欠点はその複雑な形状にある。
格子
発酵食品づくりはどんなものでも清潔を保って、人間の身体に優良な微生物だけを育てるようにしなければならない。
したがって、設備や道具の掃除洗濯の仕事量が半端なく多い。
ザッと見積もっても仕事の半分は掃除洗濯。12時間働いたら6時間分は掃除洗濯している感じ。
例えば、茶葉を包む布袋を洗うのは、まず布目に挟まって落ちにくいクズ茶葉をひとつひとつ指で取り除くところからはじまって、手洗いして、洗濯機で洗って、干して。煮沸消毒することもある。10枚の布袋を洗うとそれだけで1時間以上費やしている。
洗浄には水をたくさん使うし、洗濯機も回すし、煮沸にはガスの火も使う。
蒸籠は複雑な形状ゆえに掃除が面倒で、格子状になった隙間のカビのような色を歯ブラシで擦ってキレイにするのがたいへん。どうりで、麹蓋は底板が一筋だけ割れた単純なカタチになっているわけだ。
道具が多いほど、構造が複雑なほど、労働が増えて資源を消費する。
だから道具なしで床に茶葉を広げる渥堆発酵はカシコイ。シンプルで省エネ。
丁寧でキメ細かな仕事がぜんぜんできない西双版納の人でも大丈夫。
布袋
さて、前回の記事で「麹造りがヒントになる」という話をした。
熟茶づくりでいちばん大事なのは黒麹菌。
微生物発酵茶を分類するなら、プーアール茶の”熟茶”は黒麹菌による発酵茶であると定義してもよいくらい。
黒麹菌がいなければ、この地域で水を掛けて行う渥堆発酵は腐敗するだろう。
微生物発酵
茶葉の色が黒くなる
今回は茶葉を蒸して殺菌してから種麹を使って培養してみた。
その目的は、黒麹菌による茶葉の変化に注目したいから。
一般的には蒸したりしない、種麹を撒くこともない。
しかし、いつものように常温で茶葉に水を撒くところから、茶葉に付いている天然の菌類の培養からはじめたら、黒麹菌以外の別の菌もいっしょに育てるかもしれない。
いや、かもしれないじゃなくて、育てていたのだ。
そいつは”納豆菌”だった。
そう、納豆をつくる菌。この地域では豆鼓づくりに活躍している。
豆鼓
黒麹菌を育てる過程で、水分を多くしたり保温の温度を調整したりするうちに、なにか別の菌が湧くような現象に気がついた。それがキッカケとなっていろいろ調べていたら、納豆菌の特徴にすべてがあてはまる。まちがいないだろ。
右が納豆菌の繁殖した茶葉
右: 黒麹菌の葉底
左: 黒麹菌と納豆菌の混生の葉底
納豆菌は悪いヤツじゃない。
枯草菌の一種で、枯草菌は熟茶の微生物発酵に有効に働く微生物のひとつで、文献にもはっきり書いてある。でも、納豆菌とは書いていなかったから、お茶の味には関わらないと考えてノーマークだった。
とんでもない。納豆菌と知ってからは、発酵中の茶葉にも、お茶を淹れて飲んでも、その匂いや味の特徴を見つけられる。黒麹や酵母の醸す風味と同等に主張している。
納豆菌の他にクモノスカビやケカビも関与しているが、今のところお茶の味との関係は不明。後にひとつひとつ解明してゆく。
温州人の熟茶
温州人の茶友のこの写真の白いのは、納豆菌か、もしくは納豆菌の繁殖した環境で茶葉の表面につくケカビだったのかもしれない。黒麹菌の優勢な環境下ではこういうふうにならないから。
納豆味の熟茶が市場にあふれている。
もちろん、納豆味オンリーではない。黒麹や酵母や乳酸など混生状態から生み出される複雑な味に納豆菌特有の風味が混ざっているだけ。納豆は大豆で熟茶は茶葉。しかも熟茶は乾燥していて熟成もすすんでいる。だからお茶を飲んでコレが納豆味とはすぐにわからないかもしれない。
1990年代後半からの熟茶に納豆味が増しているが、ずいぶん長い間みんながこの味に慣れ親しんでいる。
この状況を逆手に取って、「黒麹菌の単独発酵に成功しました」と言ってお茶を売る業者が出てきそうだが、そいつは嘘つきだ。言葉の印象を利用して無知な消費者を騙す手口である。
茶葉という複雑な組織形状と、成分構成と、地域の気候風土と、良性な菌類の混生状態にもってゆくしか熟茶をつくる手はないだろう。
それに、もしもだが、たとえ黒麹菌が単独で茶葉を発酵させても美味しくはならないだろう。
バランスが問題。
茶友らの試みている熟茶づくりに違和感を感じていた、アンモニア臭・糠味・からすみ味、これらは黒麹菌がしっかり繁殖する間もなく納豆菌が繁殖した結果である。
麹造りに「スベリ麹」という言葉があるが、それそのものである。
熟茶の発酵は納豆菌も混生状態だからいいのでは?と思うかもしれないが、そうじゃない。茶葉がスベリ麹になるということは、黒麹菌の菌糸がしっかり茶葉の内部まで潜り込んでないということ。表面にだけ繁殖しているということ。内部まで潜り込めないのは茶葉が含んだ水分が多すぎて黒麹菌が呼吸できないから。水の中にも強い菌類だけが茶葉の内部に繁殖する。例えば、納豆菌とか酵母とか、危ないケースでは他の雑菌とか。
発酵食品は、優良な微生物により成分を変えて栄養価を高めるよりも先に、まずは優良な菌類が悪い菌類を寄せ付けなくして、腐敗を防ぐ環境をつくるところからはじまる。
ここでの黒麹菌の仕事は2つある。
1つめは茶葉のミクロの繊維の組織構造を変えること。
ちじれた茶葉
写真のように茶葉がだんだん縮れてくる。菌糸が深く潜り込んで茶葉の繊維をほぐすから。
茶葉は米や大豆に比べてずっと給水力のある組織構造なので、加水の量をちょっとでも間違うと内部は水浸しである。
スポンジに例えるとちょうどわかりやすい。
スポンジ細かい
スポンジ粗い
キメの細かな面は水を吸うと内側に空気がなくなる。
キメの粗い面は水を吸ってもサッと切れて空気が通る。
渥堆発酵はおよそ1ヶ月間に4回から5回は水をかけて加水するが、基本的に好気性の細菌が活躍するから、茶葉の通気を良くて微生物が呼吸しやすい環境を作ってやらなければならない。
黒麹菌の菌糸が茶葉の繊維をほぐして、キメの粗いスポンジのようなスカスカの状態をつくって、良好な発酵となる。
2つめは成分構成を変えること。
いちばんわかりやすいのはクエン酸。
クエン酸
クエン酸
電熱ポットに付いていた洗浄剤のクエン酸。中国語で檸檬酸。
箱にはレモンの写真があるが、レモン果汁からつくられたのではなくて、芋かなにかを黒麹菌で発酵させてつくったはずだ。
クエン酸は水垢を取り除く効果もあるし、アンモニアを分解して消臭する効果もある。
そう。納豆菌がつくるアンモニア臭もクエン酸が分解するはずなので、アンモニア臭が残る茶友らの熟茶は黒麹菌がしっかりクエン酸をつくっていないとことになる。
レモンや梅干し。これらクエン酸由来のすっぱい味と同じように、渥堆発酵の中盤までの熟茶はむちゃくちゃ酸っぱい。ちょっと苦い。この味が黒麹菌がしっかり繁殖しているかどうかの指標のひとつになっている。
クエン酸の強い酸でもって他の雑菌を寄せ付けなくして衛生的な環境をつくる。
その他にも、麹菌は抗生物質をつくって抗菌することが知られているし、また、”塩基性”と呼ぶのかな?詳しくはないが、渥堆発酵中の湿った茶葉を酸化させずに新鮮を保つこともしている。
黄色く明るい茶湯
渥堆発酵中の茶湯の色は明るい黄色。長い期間湿ったままの茶葉なのになかなか赤く変色しない。
黒麹菌がまずは環境をつくる。
その第一歩というか、黒麹菌にちょうど良くて他の菌にあまり良くない環境を与える発酵のスタートでいちばん大事なのが、茶葉の浸水。というか茶葉への散水。
このちょうどの頃合いを見つけるのに、また数キロの茶葉を失敗した。わざと水を多くしたり少なくしたりして失敗する頃合いを探った。つもりだ。
茶葉へ散水
写真は散水してから茶葉に水がなじむのを待っているところ。数時間待ってから蒸す。
酒造りの米の浸水ほど微妙な水分調整は要らないけれど、その逆に茶葉の形状や大きさが整わないことによる吸水ムラを考慮しなければならない。
黄片と新芽若葉
左: 黄片
右: 若葉
同じ時期に採取された茶葉だが、カタチも質も異なる。
柔らかい若葉が育ちすぎて硬くなった”黄片”と呼ぶやつは水をたくさん吸う。そのかわり繊維が太くて大きく膨れて、茶葉と茶葉のスキマをつくりやすい。通気が良い。柔らかい若葉は水を吸う量が少ないかわり茶葉と茶葉のスキマをつくりにくい。通気が悪い。
黄片の通気が良いからと言って水を多く吸わせると、発酵により発熱してきたときに厄介。撹拌しようが広げようが、茶葉がたくさん水を含んでいるかぎりなかなか熱が散ってくれない。40度を超えて黒麹菌の活動できない時間が長くなる。
柔らかい若葉は水を吸う量が少なくても、上に紹介したスポンジのキメの細かな面のように、内部に空気が少なくなりがち。かといって水をもっと減らすと黒麹がうまく繁殖しない。
茶葉の内側までまんべんなく水分と空気が入りつつ、茶葉と茶葉のスキマも適度にできる。
そんな水の加減。
水分量計測
温度や水分を計るのに便利な機器があるが、もっとも頼りになるのは目とか鼻とか指とか。今回の黒麹菌を培養する過程ではとくに匂いの教えてくれることが多くあった。
日本の麹づくりに関するサイトや動画がたくさんあって、ネットで検索をしてずいぶん参考にした。(みなさまありがとうございます。)
それらが言うには、うまく麹が育つと栗のような甘い香りがするらしい。コレ、熟茶の発酵にも共通している。もちろん米じゃなくて茶葉なので茶葉特有の香りもあるが、栗の香りには麹がつくる成分に共通したものがあるということ。発酵の状態が現れているわけだ。
西双版納で多く作られている黒糖の匂いにも似ている。
「焼き栗のよう」と表現されているのもあったが、茶葉の場合は”焼き栗香”が出たらヤバイ。水が多すぎ。ということも失敗を重ねてわかってきた。
今回問題視している納豆菌についても匂いのサインがヒントになっている。
ちなみに、いくら黒麹菌がうまく増殖してクエン酸をたくさんつくっても、納豆菌は平気な様子。納豆菌だけじゃない。酵母菌も乳酸菌もぜんぜん気にしない様子。仲が良いのだなこの人達。
納豆菌の沸くサインは栗の匂いに醤油っぽい匂いが混ざるところから始まる。この時点ではまだバランスの良い共存。このバランスのままゆけば良い熟茶に仕上がる。
納豆菌の茶葉
納豆菌の繁殖がさらにすすんでしまうと、例えばナマコとかホヤのような潮の匂いがしてくる。
こうなるともう黒麹菌は劣勢になっている。熟茶づくり的にはアウトなので自分はマンションの敷地の庭の植物たちの肥やしにしているが、茶友たちはこの味が好きな熟茶を知らない人達を探して売っている・・・。
納豆菌の増殖までゆかなくても、通気が悪いと乳酸菌が騒ぎ出す。これにも匂いのサインがあって、いわゆる漬物のあの匂いがかすかに出てくる。
ほんのちょっとの環境の差。
カンタンに言うと黒麹菌はやや涼しくて通気が良いのを好む。温度30度くらいで、指で茶葉を丸めて固めてもくっつかないくらいの水分量。
蒸籠を使いはじめたときに一度、いや、二度失敗しているが、その原因は蒸籠の蓋にあった。
蒸籠は蒸すためにつくられているので、その蓋は竹編みの2重で油紙を挟んだ密封構造になっている。通気がない。
そのことに気付かなくて、いちばん上の段の蓋のすぐ下の茶葉が蒸れてしまった。発熱して39度まで上がってしまった。これに納豆菌と乳酸菌が湧いていた。
蓋
蓋
それで蓋を竹編みの笊に変えた。
ちょっとのバランスで優勢となる菌が変わる。
2度めの散水からは酵母の増殖が確かめられる。
酵母は、水の中では糖をアルコールに変えて、熟茶づくりにおいては香気成分に華を添える。水分が多いときに酵母がそのような反応をして、スイカとかマンゴーとかバナナとか甘いフルーツの香りを放つ。サイダーのような甘い香りは酵母の出した二酸化炭素によるもの。
当初はこれを喜んでいたけれど、渥堆発酵を知るほどにキケンなサインとなってきた。
この香りが出てくるということは茶葉の持つ水分が多すぎるということと、通気が悪いためで、まもなく納豆菌が湧いてくる。
茶葉が水分を短時間で吐き出して、適度な通気をつくって、栗のような黒糖のような大人しく甘い香りに戻ってほしい。
ところが、なぜかそうならないことがある。
茶葉が水分を持っていて、気温よりも4度から5度も温かい状態ならば、水は蒸発しやすいはず。天日干しの洗濯物のように水が逃げるはず。
ところがそうならないで茶葉はむしろ水分をどんどん吸収するかのような、一般常識が通じないヘンな現象が起こる。
はい。
今日の授業はこれで終わり。

ひとりごと:
長いな。でもまだ入り口。
つづく。


茶想

試飲の記録です。

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