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南糯山神青餅2011年 その8.

采茶 : 2010年秋茶 2011年春茶
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹
圧餅 : 2011年12月
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 プラスチックバッグ密封・陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火
炭火

お茶の感想:
前回のつづき。
+【南糯山神青餅2011年 その7.】
それから4ヶ月経っている。
この4ヶ月間は2つとも陶器の壺に眠っていた。
南糯山神青餅2011年
左: 真空パック(4ヶ月前まで)
右: 熟成壺
餅面の色の差がなくなったような気がする。前回は熟成壺のほうが明らかに黒っぽかった。
西双版納は冬が暖かい。冬を越したこの4ヶ月間の平均気温は22度くらいあったのではないかな。
多くのお茶ファンはこのほうが熟成に向いていると考えているが、自分はその逆と考えている。四季がはっきりしていて、冬はしっかり寒いほうがよい。
北京の茶友が「北京で寝かせたのはダンボールの中であろうが陶器の壺であろうが、乾燥しすぎて変化しないどころか乾いた口感と喉ごしになって具合が悪い。」と言うのだが、それはマンションの一室で保存しているからだろう。北京の冬は北海道くらい寒いけれど、温水管のセントラルヒーティングで建物ごと暖められるから乾燥が激しい。
これでは冬が無いのと同じ。
冬のしっとりした空気に包まれつつも密封保存できるのが理想と考えているので、常温・常湿の保てる場所が欲しいが、北京の中心部に住んでいる一般人にそんな場所は少ない。
西双版納はというとこれもマンションの一室で部屋を密閉しているので乾燥している。湿度は55度くらい。
ここではあまり良い熟成が期待できないと考えて、今後はここでの長期保存はしないつもりでいる。
飲み比べ
飲み比べ
飲み比べ
葉底
左: 4ヶ月前まで真空パック
右: 熟成壺
1-7煎くらいまで飲んだが、その差はほとんどなし。
あえて言うと熟成壺のほうが若干甘い。でも、葉底を見ると熟成壺のほうが茎の部分が大いので、そのせいだったのかもしれない。
前回の記事では煎を進めるほどに差がひらくと書いていたが、それもほとんどなし。あえて言うと熟成壺のほうが若干深みがある。
4ヶ月で差が縮まった結果となった。
生茶にしても熟茶にしても西双版納で長期熟成させるのがどうも思わしい結果にならないということで、上海や日本に移しているわけだが、移してから一年も経つと風味が復活したような、精彩を取り戻したような、そんな気がしていたが、錯覚ではなくて実際になにかが上書きされているのかもしれない。
このテストの結果にしても、最後の4ヶ月間の保存環境がなにかを上書きしたようなカタチになっている。
熟成8年目のお茶で、この2つの違いは8年のうちのおよそ1年半くらいの期間だけで、しかも真空パックしていたか、わずかな通気を許していたかだけの差しかないから、4ヶ月もあれば十分にその差が埋まるということだろうが、自分はむしろこの4ヶ月で埋まる変化の大きさのほうが気になる。

ひとりごと:
多少の上書きで味の印象が変わってしまうのなら、熟成味が完成しているとは言えないよな。

下関銷法沱茶90年代 その7.

製造 : 1998年頃
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 下関茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶 240g
保存 : 香港ー広州ー上海 紙包みのまま
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 信楽土の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
鉄瓶
西双版納の茶机
信楽土の茶壺

お茶の感想:
このお茶の微生物発酵の具合が今はっきりとわかる。
+【下関銷法沱茶90年代】
下関銷法沱茶90年代
熟茶は、昔と現在とでは見た目の製法は同じようだが中身が違っている。
現在の製法のこのお茶と飲み比べた。
+【版納古樹熟餅2010年】
熟茶
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
おそらくメーカーの技術者たちはこの微生物発酵の違いに気付いていない。
同じようにしているし、美味しく飲めるようにできているし、よく売れているから。考えもしない。
しかし、プーアール茶の魅力の一つである20年・30年と熟成させることを前提とするなら、昔の製法が良い。
味の問題ではない。だから個人の趣味の問題ではない。
長期熟成で変化する成分の量と質の問題。栄養価値と言ってもいいし、薬効価値と言っていいし、ちゃんと計れるカタチで違いを証明できるはずの問題。
熟茶2種飲み比べ
6煎め
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
茶湯の色だけを見たらほとんど同じ。
1煎めから6煎めくらいまですすめても色の差はほとんどない。
しかし、『下関銷法沱茶90年代』は約20年の熟成を経てこの色にたどり着いたのであって、1998年頃のできたての時はもっと黄色かったはずで、味も熟茶になりきらない生茶のような要素が残っていたはず。
それでいて発酵度は十分であった。
20年後のお茶の味がそれを証明している。
微生物発酵の”発酵”は、微生物が生きて活動している間だけのものではない。微生物が活動を止めても、すでに大量の酵素を作り出して茶葉の表面や内部に残している。この酵素による成分変化が続く限り、”発酵”という現象は終わっていない。
製品が出荷されて乾燥を保った倉庫の中では微生物は活動しない。
それでも、空気中のほんのわずかな水分や気温や気圧の変化によって酵素は化学反応して発酵のつづきをしている。
酵素は生物ではないので、栄養を消費しない。排泄しない。
とても都合の良いカタチで茶葉の成分を変化させてくれる。
現代の製法は酵母の活動を過剰にさせてほんの3週間ほどで20年の結果に到達する。
しかし、酵母は生物なので消費する。排泄する。熟茶の渥堆発酵にかかわる主要な微生物の中で、とくに酵母はものすごい勢いで活動してカロリーを燃焼させる。それによって味には現れない栄養分を大量に失っている。これが、後の熟成に影響する。
この2つのお茶を飲み比べたら、味にその違いがはっきりと現れている。
葉底2種
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
『下関銷法沱茶90年代』の葉底には、成長して硬い繊維の茶葉が多く混ざっていて、そこは酵母が活動しにくい場であるせいか、あまり黒っぽく変色していない。生茶のような明るい色を残している。
葉底下関
また、指で葉底をつまんだときの感触に違いがある。
葉底下関
葉底くっつき
上: 下関銷法沱茶90年代
下: 版納古樹熟餅2010年
『下関銷法沱茶90年代』は圧延でカチカチになってはいるが、煎じた後の葉底を指でつまむとハラハラポロポロと散らばりやすい。それに対して『版納古樹熟餅2010年』は粘着しているところが多く散らばりにくい。老茶頭にはなっていなくても、そうなる要素が十分にあって、つまり酵母発酵過剰になりやすい状態である。
ワインとか日本酒の醸造で「完全発酵」という言葉を聞く。
自分はお酒に詳しくないが、比較的近年の言葉だと思う。
完全発酵を意識してつくられたワインや日本酒を飲んでみて、実は、あまり魅力的がないと感じていた。
酵母で糖からアルコールをつくるのがお酒なので、不完全発酵のものは残糖の味であったり濁った味であったりで、透明感に欠ける。しかし、なにか物足りなさを感じる。味が濃いとか薄いとかじゃなくて、生命感が無いというか、イキイキノビノビしていない感じ。
もしかしたらこれもそうで、微生物が生きて活動している期間だけがお酒づくりで言うところの発酵という考え方でつくられていて、微生物が死んでからの熟成期間の変化を計算に入れていないのかもしれないな。
「完全発酵」・・・聞こえがいい言葉だから、知識の罠にハマりやすい。

ひとりごと:
信楽土だがチェコのマルちゃん作。
マルティン・ハヌシュ
素朴に見えるが細部にまで計算がゆきとどいている。
熱の反射が良い。
薄造りで軽い。
水の流れが美しい。
土の性質を活かして、これにしかない良さが生まれている。

7572七子餅茶80年代 その1.

製造 : 1980年代末期・1988年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶350gサイズ崩し
保存 : 香港−広州ー上海
茶水 : 農夫山泉
茶器 : 宜興の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
良くない方
良い方
良くない方
良い方

お茶の感想:
上海の友人の店に立ち寄ったらこのお茶の飲み比べができた。
1980年代の国営時代の孟海茶廠の熟茶。
店主の言うには、片方が良くて片方は良くないらしい。
ほぼ同じ年代の、同じメーカーの、同じ茶号(7572)なのに。
参考までに、7572は初代だけは生茶。
+【早期7572青餅70年代】
その後の7572はすべて熟茶で、そのうちのひとつは紹介したことがある。
+【黄印7572七子餅茶99年】
何年か前の入手時ですでに6000元(10万円くらい)したらしいが、個人的にはそんなに偉いとは思わない。今になって言えることだが、現在流通してる熟茶のほとんどがこれに似せた発酵の仕上げ方になったので、よくあるタイプの味になったから。
炭火
ただ、「良いのと良くないの」は気になる。どこが違うのだろうか。
7572の後ろの「7」が茶葉の等級(成長具合)を現しているが、これは品質を判別する指標にはならない。自然な育ちの茶葉をあの山この山から収集するのでサイズが合うはずがないし、山が違えば品種特性もちょっとずつ異なるのだから、茶葉の内容成分や繊維の質も違って、微生物発酵の具合も違って、その結果味も異なる。
今回飲み比べた2つがまさにそうで、餅面の茶葉の質が違う。
7572七子餅茶80年代
7572七子餅茶80年代
上: 良くない方
下: 良い方
写真ではわかりにくいが、良くない方のは茶葉が比較的小さく柔らかいせいか餅身がカッチリ締まっている。良い方のは茶葉が大きく繊維が硬いせいか餅身の締りが悪くてゆるい感じ。
微生物発酵の黒麹と酵母の活動のバランスを知ってからは、柔らかい小さな新芽・若葉の多いのは嫌な予感がする。
現在の市場はそこを勘違いしていて、生茶の上等と同じように熟茶にも柔らかい新芽・若葉のほうがモテている。
しかし、微生物発酵は酵母が優勢となってしまってバランスが悪い。
良くない方
良い方
上: 良くない方
下: 良い方
水色にもその違いが現れている。
黒っぽくなる原因ははっきりとわからないが、微生物発酵時に酵母が優勢となりすぎて、高温になったり、糖などのカロリーを過剰に消費したり、代謝物がたくさんできたことで、そうなったのだろうなと想像する。
味にはもっと大きく違いが現れている。
良くない方のは、まず口感がネットリしている。甘ったるい。穀物っぽい暑苦しさがある。
良い方のは、口感がサッパリ。甘いけれど消えが早く、酸味や苦味とのバランスも絶妙。そして長年熟成によって醸された薬草のような浄化の香りがある。これが生茶の年代モノに共通している。
体感も違う。
良い方は、身体の芯が温まる。喉が潤う。
良くない方は、皮膚が熱くなって、喉が渇く。
葉底
左: 良い方
右: 良くない方
良くない方の葉底は柔らかい茶葉の粘着力で老茶頭のようにくっついてほぐれにくい。渥堆発酵時にこの性質が酵母発酵の過剰を引き起こす。
西双版納の熟茶づくりをしている茶友にこのことを伝えたら、こう言われた。
「良い方のは硬くて大きな茶葉が多くて、出来たてのときは不完全発酵なところがところどころ残っていて、甘さが足りないし、美味しくないのでは?」
そう。そのとおりと思う。
たぶんそのほううがいいのだ。
酵母発酵を完全にさせようとして栄養を消費されてしまって、長期熟成の変化に伸びしろがなくなるよりは、出来たてのときの美味しさがそこそこで結構。酵母が優勢になっていなくても、その前後で黒麹菌などがしっかり仕事をして酵素などの良い成分を茶葉にたくさん残しているから、じわじわ時間をかけて成分変化が進んだほうが栄養価を減らさないで済む。
昔の人はそういうことを経験的に知っていたに違いない。

ひとりごと:
昔の人は賢くて今の人はアホ。
アホが飲める良茶なし。

祈享易武青餅2018年 その2.

製造 : 2018年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
炭火
茶器

お茶の感想:
前回の記事の『刮風生態青餅2018年』と比べたくて、このお茶を飲んだ。
サンプル最後の1回分。
+【祈享易武青餅2018年 その1.】
茶葉
1・2煎めは旬のきめ細かな水質、味は透き通っていながら密度の濃い充実感があるが、3煎めからの水質が粗くなる。舌にザラッとして渋味を感じる。4煎めからは茎や育った葉の厚いところに隠れていた甘味やとろみが出てきてまろやかになるので、粗っぽさは緩和されるけれど・・・。
1煎め
2煎め
このお茶の感じに似ている。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
そう。
采茶のタイミングがちょっと遅めなのだ。
その観点で注意して見たら、茶葉の色やカタチの様子もちょっと似ている。
采茶のタイミングを遅くすると茶葉は成長する。生産量を増やすためにそうしているのか、なんらかの考え方があるのか、わからないけれど、このお茶のポジションとしてはどうかな。
3煎め
葉そこ
葉底の繊維も早春にしてはちょっと硬い。
収穫を減らして生産量を減らして価格を上げて、水質をキメ細かく舌触り良くしたところで、このお茶を買う人にその意向が伝わるだろうか?
伝わらないから質をそこそこにしてやさしい価格にして喜んでもらう。
伝わらなくても正当な価格と質の上等を主張する。
質を上げるために生産量を3分の1に減らして価格を3倍にしてバランスをとったとしたら、その結果は、買う人が少ない上に買ってその質を知ることのできる人も少ない・・・ということになる。
仕事にコストパフォーマンスとか社会的な存在価値とかを求めたらできなくなる。
そんなこと気にしない。社会性なんて屁とも思わないひとりぼっち向きの仕事だよな。

ひとりごと:
ぼっちで良かった・・・。

刮風生態青餅2018年 その4.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶
茶器

お茶の感想:
試作のお茶。
この2つと同じ原料の茶葉。
+【刮風生態青餅2018年】
+【刮風生態紅餅2018年】
包装紙
この一枚は、炒不熟(浅い炒り具合)・渥一晩(渥軽発酵一晩)・2天晒(天日干し2日間)・加蒸5分(圧餅加工の蒸し+5分)などと書いてある。
「黄印」という分類になるから、「黄」の印が押してある。
餅面
茶葉
揉捻はしっかりしてあるが、揉捻後に茶葉を叩き伸ばして縮みを防ぐ仕事をしていないから縮んだままになっている。ま、風味への影響は少ないだろうから試作品として問題はないだろ。
もう少しで1年熟成となるこの茶葉。
黄色い
出来たてのときは圧餅の蒸し味が強く残っていた。蒸し味は香りを曇らせて、味はペタンと平面的でややカタイ酸味とピリピリした刺激があった。体感は穏やかな気がするが単独で飲んで違いがわかるほどでもない。
ほぼ1年熟成になる今飲んでみると、蒸し味が気にならない。
茶湯の色
香りは甘くて、味は透明度が高くて酸味も総合的なバランスに吸収されて、ピリピリは少なくなっていて、体感はあきらかに穏やか。
蒸し時間5分増しの効果でしっとりした熱が入っているせいか、1煎ごとに注ぐ湯の熱による変化が少なくて安定している。濃くなると苦くて薄くなると甘いバランスがシビアなのは3煎めまで。その先はひたすらじっくり抽出するのみ。雑味なく透明度の高いことで見えてくる深い味わいがある。
熱い湯で長時間蒸らしても野暮ったい煮え味が出ないのが「黄印」の良いところ。
圧餅の蒸し時間の長いほうが味の透明度が増すが、長期熟成の濁りも減らすことになるかもしれない。そんな気がする。
これ、もしかしたら本作品として出品したほうがよかったのかもしれないな。
いずれ勉強会をしてこのお茶のいくつかのパターンを飲み比べてもよい。
葉底

ひとりごと:
菩提酛のどぶろく
このお酒が飲んでもしんどくならないのは米の健康が理由かと思う。つくりのどうこうとは別だろ。
でも、原料の良さがつくりに良い影響をもたらす。
お茶もそうだし。

巴達古樹紅餅2010年 その26.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶380gサイズ
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
紅茶2010年
380gサイズ

お茶の感想:
熟成の方針が固まってきた。
茶葉にあわせた保存方法を探ってきて、あっちへ向かったりこっちへ向かったりしてきたが、3年前の2016年くらいから目指すところが見えてきて、この先は微調整をすることはあっても大きな方向転換はしないだろう。
2016年までのお茶には、多かれ少なかれ保存環境を変えてきた熟成味がプリントされている。
わかりやすいのが2010年のこのお茶。
+【巴達古樹紅餅2010年】
カンタンに言うと、はじめの3年間ほどの保存環境は温度・湿度ともに高めだった。
紅茶はそのへん敏感だから。
今になってみたらこんなふうにはしないな・・・というくらい方向が違う。
2013年から後につくった紅茶は、産地の西双版納から半年以内に出して別の地域に置いている。
なので、手元のいくつかの紅茶の熟成味は大きく2つのタイプに分けられる。このお茶と2011年の『紫・むらさき秋天紅茶2011年』と、それ以降のお茶と。
+【紫・むらさき秋天紅茶2011年】
このお茶にプリントされた熟成味の特徴は、ドライフルーツのような熟れた甘い香り。酸化したやや酸っぱい味。
西双版納で保存されている生茶のプーアール茶にはよくあるタイプ。
この10年ほど、西双版納の現地で保存熟成したのが増えて、このタイプの風味に慣れてきたお茶ファンも増えて、市場ではそこそこ支持されている。
このタイプは茶気が穏やか。
ガブガブ飲むと身体が辛くなるお茶でも、熟成したら味も体感もまろやかになる。
このタイプを好む人を観察していると、おそらく味よりもこの体感のほうを好んでいるように見えるが、どうだろ。
熟成の味や体感の科学は不明。
温度や湿度だけで説明はできない。
外の環境と茶葉の内側の環境との関係。茶葉の内側のミクロの世界の水道管に溜まっている水が、気温や湿度や気圧の変化で動くから。でも、どういう時にどう動くのかがほとんどわからない。わかっているのは水は温かいところから冷たいところに逃げる性質があることだけ。
そもそも微量な水が茶葉の熟成にどう関わるかを証明した文献なんてないだろう。金にならない研究だし。
とにかく、西双版納の環境は生茶と紅茶の熟成には向いていない・・・・と自分は推測した。判断した。これに掛けてみる。
なので生茶と紅茶は西双版納で熟成させないことにしたのだ。
炭団
洪乾
このお茶をゆるい弱い火で長時間炙って出す。
炭団に火が着いてから灰で厚く覆って手をかざしても熱くない程度にする。
6時間ほどかけて390gあった重量が375gにまで軽くなる。減った15gは水。さらに陰干しに一日かけて粗熱をとると5g増えて380gになる。5gの水が戻っている。(1枚毎に10g前後の差はある。)
鉄瓶
マルティンハヌシュ
2煎め
こうすると風味が軽くなる。
ドライフルーツの熟れた香りはほぼ消えてドライフラワーくらいになる。酸っぱい味も全体のバランスに溶け込んでまるく納まる。
3煎めくらいから薬草っぽいスモーキーな香りが出てくる。バニラっぽい甘い香りもある。この香りに奥行きがあって景色がひろがる。
景色のある味は上等な味。
西双版納以外の環境で長期熟成させた紅茶にもこのような香りが出てくるのかどうかはまだわからない。
出てこなかったら、また西双版納の熟成をやり直したらいい。
葉底

ひとりごと:
保存熟成に完成度を求めると、そうなると、現在の出品方法では都合が悪くなる。
出品方法を変えることにする。
お客様にお取り寄せの案内メールはもうしない。
在庫から好きなお茶を選べるようにはもうできない。
コレでどうだ!という熟成の仕上がったひとつかふたつを、なんらかのカタチで発表して、何らかのカタチで取引する。
具体的にどうするかはゆっくり考えることにする。

大益貢餅熟茶98年 その1.

製造 : 1998年
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山
茶廠 : 孟海茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶崩し
保存 : 通気・密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶葉

お茶の感想:
茶葉の整理をしていたら30gほどサンプルが出てきた。
+【大益貢餅熟茶98年崩し】
旬の若い茶葉が主原料の、典型的な現代熟茶。
自分の知る現代熟茶の中では、最高峰のひとつと言える。
餅面裏
崩し
金花
写真: 2010年当時撮影。2.8キロの大餅。崩したら金花がびっしり。
熟茶の渥堆発酵について、昨年の秋からある問題に注目している。
発酵の過程で酵母が過剰に活性化すること。
問題の原因は、やわらかい若葉が原料になっているため、と推測している。
微生物発酵の黒茶はもともと大きく育った老葉が使われていた。1970年代から量産のはじまった熟茶づくりにも当初はそういう茶葉が使用されていたが、国営時代の孟海茶廠が新芽・若葉をふんだんに使った新しいタイプの熟茶を出品する。
1975年のこのお茶が最初だろうか。
+【7562磚茶プーアール茶】
やわらかい若葉のしなやかな繊維と含水量の多さとが、酵母だけに有利な環境を提供して、他の優良な菌類の活動を制限してしまう。とくに黒麹菌は、酵母の発熱による高温と息苦しさのために生きていられる期間が短くなる。
渥堆発酵の茶葉の山の上のほうと下のほうと2層をつくって、下のほうでは高温・多湿になっても上のほうでは適温・適湿が保たれるようにして黒麹をつなぎとめて、渥堆発酵の生態環境を維持するのだが、1ヶ月間のうちに何度か撹拌して上下を混ぜ合わせるから、最後には全体が酵母発酵臭い茶葉になってゆく。
黒麹と酵母の活動時間の割合が、例えば5:5が理想だとしたら、現実は3:7くらいだろうか。感覚的に。 
「酵母発酵臭い」と言ったが、味は悪くない。むしろ甘くて、発酵の良いのは”美味しそう”な香りがする。
味の問題じゃないのだ。
体感の問題。酵母優勢の熟茶は暑苦しい。冷えた身体でないと美味しく飲めない。
消費者の嗜好というか、現代の人々の生活に合わせてお茶を飲む目的が変化して、体感よりも味のほうが重視されている。
しかしこの傾向は好ましくないと自分は見ている。
お茶がクスリから離れて味の嗜好だけを求めると、コーヒとポジションの奪い合いをして価格競争になる。
とくに微生物発酵茶においては、味はあくまで薬効を確認するための指標というくらいの役割で良いと思う。
正しい味よりも、正しい体感。
お茶はクスリからポジションを奪い返すべきだ。
(ここで言うクスリとは、病気を治すよりも快楽を得るほうのクスリ。)
さて、このお茶『大益貢餅熟茶98年』はどうか。
一煎め
このタイプの熟茶は、煮やしてはいけない。
高温の湯がよいので蓋碗よりも茶壺だけれど、短時間の抽出でサッと湯を切りたい。
1煎め2煎めは、発酵度の浅いスッキリ爽やかな風味となる。
1998年の国営時代の孟海茶廠の職人が自分用にとっておいたお茶で、その職人から入手しているので、原料の茶葉の身元が特定できている。孟海茶廠の自社所有の巴達山の茶畑のもので、他の地域のブレンドは無い。
渋味がしっかりしているし、口感のとろみも少なめだし、この味がブレンドしない無調整なのだから、発酵度の浅い渥堆発酵だと推測できる。
そして、たぶんこのために暑苦しさが抑えられている。
現在の渥堆発酵の技術において発酵度が浅いということは、例えば涼しい季節に低めの温度で発酵させるとか、なんらかのカタチで酵母発酵が抑制されているのかもしれない。
三煎め
3煎めくらいに抽出に時間をかけてみたら、やはり煮え味の酸味が出てくる。
ただ、製茶工程の渥堆発酵後なのか圧餅後なのか、熱風乾燥の高温による焦げ味が効いているから、煮えた味になってもバランスは崩れない。美味しい。
1998年のもので現在2018年だから20年熟成モノ。
20年間の常温保存による焦げ(メイラード反応)も関与しているから、つくられた当時に意図されたバランスではないかもしれないけれど。
葉底
葉底の色が均一であるのがブレンド無しの単一発酵モノであることを裏付けている。
茶葉の大きさが均一なのは、渥堆発酵後に篩がけで選別されているから。
篩がけは、渥堆発酵の茶葉の山の上の層・下の層の2層のうちの上の層のやや乾燥した部分だけを抽出できる。なぜなら、下の層になった若葉は茶葉同士で粘着してくっついて茶頭と呼ぶ塊になりやすいから。
茶頭の大きさは様々で、豆粒くらいから小石くらいまで。しっかり固まったのもあれば、揺すればほどけるくらいゆるいのもある。これらはすべて酵母発酵臭い。
渥堆発酵の撹拌のときに、茶頭をほぐさないように残しておいて、つまり撹拌を適当に手抜きして、最後の篩がけで取り除くようにしたら、酵母発酵の抑制された茶葉だけを抽出できる。
ということじゃないかな。
手抜きするためには、篩がけを機械を使って厳密にしちゃいけない。鍬みたいなので人力でザックリやるほうがよい。
ということは、近代的な設備ほど酵母発酵臭いお茶ができやすいことになる。
鍬
酵母発酵臭い茶葉とそうでない茶葉を篩にかけて選別したらよいのだ。1つの原料から2つの熟茶をつくればよい。
ただし、半々ではない。
酵母発酵臭くない茶葉は、3:7の、3のほうだけを選ぶ贅沢なつくりとなる。

ひとりごと:
そうだよな。
もう結論が出ている。

孟宋新緑散茶2018年 その2.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶器
茶葉

お茶の感想:
2018年の春のお茶。
早春の緑の爽やかさをそのまま表したような生茶というよりは緑茶っぽいお茶。
昨年の春だからもうすこしで1年経つが、晒干で仕上げたお茶は少なくとも1年くらい熟成したほうが味がしっとりしてくる。
+【孟宋新緑散茶2018年 その1.】
一煎め
煮やさないようにサッと湯を切る。
サッと淹れても薄くならない程度に茶葉はちょっとだけ多めにする。
2煎めくらいまでは水質にとろみがあって、味がふくよかに感じる。ふんわり緑の甘い香り。
3煎めに、試しにじっくり時間をかけて抽出してみると、水質のとろみは失われて角が出て、苦味や酸味が際立って、茶湯の色は黄色っぽくなり、香りには果実っぽさが出てくる。
煮やしてはいけない茶葉。
3煎め
葉底
葉底の色にも緑が鮮やかに保たれている。
黄色や紅茶色の軽発酵した部分が少ない。
揉捻が弱く、圧餅もしていない散茶のままなので、3煎くらいで捻じれが解けて茶葉が開く。
現在はこういうつくりの生茶のほうが多いかもな。
茶葉を煮やさないように気を使って淹れてもらえたら高い評価を得られると思う。

ひとりごと:
製茶の具合に応じたお茶淹れ技術をテーマにした勉強会をしたい。

刮風生態青餅2018年 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
餅面表
餅面裏
一煎め

お茶の感想:
ひとりで淹れて飲むのには、楽しめるお茶になったと思う。
+【刮風生態青餅2018年】
毎回新しい味に出会う。
チェコ土の茶杯
茶湯の色
「あとちょっと甘味があったほうが良いよな。」
なんて味の良し悪しはたいした問題じゃなくなっている。
どういうふうに淹れてもそこそこ美味しいから、雑味を出さないように淹れる技術を誇れるわけでもない。
ちょっとの違いに味の美が宿る。
茶湯
歌を歌うのが天才的な人の歌声に似た、ちょっとの響きの違いが大きな違いになるような、お茶の味の出方。
そういう瞬間に出会えるお茶。
葉底
葉底

ひとりごと:
お客様の好みやお茶淹れ技術を知った上でお客様の要望を無視する。
「あなたはこのお茶を買いなさい。」
みたいに、押し売りができたらいいよな。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その4.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
炭団
鉄瓶

お茶の感想:
熟成具合を確かめるのと、
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
先日の『祈享易武青餅2018年』と比べるのと。
+【祈享易武青餅2018年 その1.】
美味しさを比べるのには無理がある。
黄印は一天一采の1日だけの采茶に対して、祈享は3週間で21日分の茶葉が混ぜてある。原料の質に差があるから、そこは今回考えないでおく。
熟成壺
餅面表
餅面裏
注目するのは、製茶の違い。
黄印の製茶は、揉捻をしっかりしている。一晩渥堆発酵させている。水分を多く含んだまま晒干している。圧餅の蒸し時間が長い。石型で圧す時間が長い。
祈享の製茶はその逆をゆく。
一見、軽発酵度の調整に違いがあるように見えるが、祈享もあんがいしっかり軽発酵させてあるから、たぶんそこが狙いじゃないのだな。
祈享の茶葉は軽い。
黄印の茶葉は重い。
茶葉の形状や繊維の状態の差が体積の差となって、指でつまんだときの重さの感覚に現れる。
そこにおのおのの理想がありそう。
あくまで推測だが、祈享は白茶づくりに良いイメージを持っている。
揉捻なしの萎凋だけで仕上げる白茶づくりには、人の手が加わる工程が少ないほうが良いというある種の美学が伺える。
祈享の老板がそう話していたわけではないけれど、いろんな話をする中でなんとなくそういう価値観を感じる。
人の手を加えないということ。その観点からしたら、黄印は揉捻や圧餅に手が加わり過ぎているように見えるかもしれない。
ところで、白茶は淹れる技術に風味が大きく揺れるお茶。
白茶の葉底
写真:白牡丹生態茶2014年
あんがい淹れるのが難しい。
【白牡丹生態茶2014年 その5.】
祈享の生茶を老板が淹れると、かなり多めの茶葉(体積が大きいので多く見えるが重量はそれほどでもないかもしれない)をちょっと大きめな茶壺か蓋碗に入れて、熱湯を注ぐけれどサッと湯を切るように淹れる。
黄印は、少なめの(少なめに見える)茶葉をやや小さめの茶壺でじっくり蒸らすように淹れる。
黄色印
黄印のこの淹れ方で祈享を淹れると難しい。
ちょうどよい濃さにしようとしたら、抽出時間のタイミングは秒単位で変わる。
ピタッと決まったな!と満足できる煎は、5煎に1煎あったら良いほう。つまり5煎か6煎の一回の泡茶で、「うぁー美味しい!」と思えるのは1煎だけである。あとの煎は苦かったり酸っぱかったり薄かったりでバランスが悪い。バランスが良いとスカッと抜けが良くて爽やかだけれど、バランスが悪いとトゲトゲしかったり濁ったり物足りなかったりする。
泡茶に夢中になっている腕自慢の人は楽しいけれど・・・。
ところが、茶葉を多くして湯をサッと切る淹れ方にしたら何煎も安定した美味しさになる。ただし10煎以上飲める濃さが続くので、そのくらいガブガブ飲む覚悟というか、そのくらい何煎も飲むシチュエーション向きだということになる。
黄印は味の出方がおっとりしていて、その点でおひとり様向けに、ひとり静かに少量を飲んで満足できるようにできている。
どちらも、漫撒山のお茶の魅力の「無い味」を求めているとしたら、味の隠し方に美意識の違いがある。
黄印
祈享はキリッとした味なので、口に含んでから喉に流し込む時間が短い。
キラッと光る一瞬に幻を見たような見なかったような気になる。
黄印はぼんやりした味なので、口に含んでから舌にゆらゆらさせたい時間が長い。
あるのかないのかわからない味を探しているうちに寝むってしまって夢が続きを見ている感じ。
葉底
お茶をつくっているときにここまで意識しているわけではない。
例えば、揉捻をするときになってなんとなくの直感が”適度”を決めているのだが、そのなんとなくの直感の背後では、無意識が自分の奥深くに潜んだ美意識を引っ張り出してくる作業があるのだろうと思う。
祈享の老板と会話をしても、こうした内容は一切出てこない。
自分のことが自分でもよくわからないままつくっているから。お互いに。
そして、つくったモノに知られざる自分が見えるカタチになって現れる。
モノづくりは面白いなあ。

ひとりごと:
わからないままつくるべし。


茶想

試飲の記録です。

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