プーアール茶.com

茶教室・京都

大益甲級沱熟茶99年 その1.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南省西双版納州布朗山
茶廠 : 勐海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶 100gサイズ
保存 : 台湾台中市
甲級

お茶の感想:
このお茶について解説する。
臨時販売中 2024年2月時点)
2023年12月末の上海の旅にて仕入れた茶葉。インスタグラムにも投稿している。
このお茶は珍しいタイプで、大手メーカーの有名ブランド”大益”ではあるが、国営時代の1999年製ということで、仕入れることにした。
近年の大益の評価は低い。2004年の完全民営化後は過去の国営時代の高級茶づくりの面影はない。茶葉の質を重視するお茶ファンはすでに離れている。

国営時代の1998年と1999年の熟茶には、当店で紹介したものがあった。
これらは現在高価になっている。
+【大益甲級沱茶98年】
+【大益貢餅熟茶98年】
+【7592七子餅茶】
1999年にこのお茶『大益甲級沱熟茶』が出荷された当時は、おそらく1個20元くらいだったはず。現在のレートで換算すると1個400円くらい。
それから25年後の2024年に当店が設定した価格は1個13,700円。
34倍になっている。
もちろんすべてがこのような高価にはならない。
この銘柄は”常規茶”と呼ばれるお茶で毎年つくられる。一年に何度か出荷される。
茶葉は自然のもので質も産量も毎年異なる。微生物発酵は自然に任せる”渥堆発酵”なので仕上がりは毎回異なる。ブレンドによりある程度調整されるものの、まだこの時代はアタリハズレが大きかった。
では、この1999年のどこが特別なのか。


原料の茶葉に特別なところはない。
春・秋のブレンド。おそらく勐海県の布朗山・巴達山・孟宗山の自社農園の茶葉畑の小さく若い樹。
甲級にしてはやや小さめの若葉が主体で構成されているが、口感の滑らかさはあまりなく、旬のタイミングを外した茶葉であると思われる。しかしこれは甲級の標準的なもの。
特別なところは渥堆発酵の発酵度にある。
とても浅い発酵度で、生茶の老茶すら連想させる風味もある。
飲めばすぐに分かる。

写真の茶湯の色は赤黒くしっかり熟した色をしているが、これは25年の熟成効果であって、おそらく出来立て当初はもっと明るいオレンジ色だったにちがいない。
茶湯の色ほどお茶の味は熟しておらず、まだ若い感じがする。
スッキリ柑橘系の爽やかさがあり、現代の熟茶のような重い甘い濃い感じはまったくしない。
このような浅い発酵度の熟茶は1990年代にはまだいくつもあったが、2000年代になるとほとんどなくなる。
大きく育った茶葉が主体の昆明茶廠の”7581”。
若葉主体の下関茶廠の”下関銷法沱茶”。
同じく若葉主体の勐海茶廠のこのお茶”甲級沱茶”。
この3つの銘柄が1990年代を代表する熟茶の味だった。
このお茶『大益甲級沱熟茶99年』にはその特徴が過剰なほどに色濃く現れており、コレクション的価値があると思える。
しかし、この味であることが特定できる包紙の印刷などが無い(この味ではなく一般的な味の熟茶にも同じ包紙が使われている)ことから、老茶としての市場での評価はそれほど上がらない。
葉底
茶柱
葉底の色は比較的均一。浅い発酵+深い発酵のブレンドではなく、全体的に浅く発酵させた茶葉で構成されている。
なぜか茎の部分がたくさん配合されている。

この茶葉を所有していたのは個人のコレクターである。
上のようなことから、この個人のお茶選びにはセンスを感じる。
今回放出されたのは約50キロ分。
おそらくもっと多く所有しているはずなので、あとは個人で楽しむか、さらに長期熟成してから転売するか、そんな楽しみ方だと思う。
個人といっても住宅に保存しているような小規模ではない。
茶葉専用の倉庫があり除湿機などの設備があることが、25年間も乾燥を保った茶葉の状態と、他のニオイをまったく吸収していない清潔感から想像できる。
コレクター本人には会っていないが、人づてに聞いたところでは、台湾台中市の山間部の別荘を茶葉専用倉庫にして、倉庫の管理は使用人がしているらしい。
このくらいの規模であるから、個人で消費するよりも転売する茶葉のほうが多い。職業ではないらしいが、素人でもない。このような個人が中国本土のみならず中華圏には多い。

この茶葉を所有してからのこと。
浅い発酵度の涼しい風味で暑い季節でも美味しく飲める。(現代の熟茶は暑苦しくて夏には向かない。)
いますぐに飲むのもよいが、できたら少しは手元に残しておいて、これから数年間の熟成を楽しむのをおすすめする。
これまでの25年間は乾燥ぎみに保存されていた。
環境が変わってややしっとりした空気に触れると(日本の家庭の一般的な空気がそう)、はじめの数カ月間の変化はとくに大きい。
空気中の水分が茶葉のミクロの繊維の内部にまで入り込んで、まだ効力を発揮していない酵素による変化を促すからである。
わざわざ湿気たところに置く必要はない。むしろ乾燥に気をつけて密封保存するくらいがよい。袋を開け閉めするだけで水を含んだ空気が入り込むので、それで十分。
たまに試飲するとこれまでにはなかった味や香りが発見できて、熟成変化を楽しめるだろう。
保存
写真は二条10個分を包み紙のままジップロックに密封して、押入れの棚に茶壺といっしょに並べている。
紙袋のまま通気を許してもよいが、他の匂いが移る心配があるのならプラスチックバッグや容器に密封するとよい。
置き場所は乾燥した日の当たらない場所を選ぶこと。
もしも、しっとり熟成させた場合は、お茶を淹れる前に茶葉を80度以下で15分ほど温めて水抜きしたほうがよい。

7592七子餅茶1999年 その4.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ崩し
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶+炭火

お茶の感想:
浄化の味。
餅面
餅面拡大
注ぎ
泡茶
熟茶の長期熟成の変化は、ほんとうの意味で浄化している。比喩ではない。
+【Instagram】

7592七子餅茶1999年 その3.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ崩し
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
苔
水落ちる
疎水

お茶の感想:
水が薫る。
土が薫る。
苔が薫る。
石が薫る。
雨の日にこのお茶。
+【7592七子餅茶1999年】
餅茶
餅面
鉄瓶
茶器
葉底
茶湯
湿地
雨の日は土の味。
健康な土は甘い。

7592七子餅茶1999年 その2.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ崩し
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
90年代熟茶

茶の感想:
熟茶は微生物発酵の黒茶に分類されるが、黒茶は大きく育ったやや繊維の硬い茶葉(老葉)でつくるのが基本だが、近年の熟茶はそうでもない。けっこう若くて繊維の柔らかい茶葉でつくられる。
その理由は、新芽・若葉の柔らかい若い茶葉でつくる生茶が市場でよく売れているから、農家はその需要に向けて、とりあえず若い茶葉で晒青毛茶(天日干しの緑茶)をつくってしまい、売れなくて困ったのをメーカーが安く買い叩いて、熟茶の原料となるからだろう。
わざわざ大きく育つのを待ってから摘んで伝統的な黒茶のための原料をつくっている農家を現地では見たことがない。
葉底
写真:刮風寨の早春の若い茶葉。柔らかくて粘着力もある。
また、新芽・若葉が上棟という認識が蔓延している。
上質なお茶を求めて産地のお茶づくりにまで手を出している人達も、「春の旬の若葉で熟茶をつくったら良いに違いない」みたいなことを言う。
葉底
写真:沈香黄片老茶磚80年代 硬い老葉
若葉と老葉とでは内容成分が異なるので、その違いが微生物発酵にも影響して、ちょっと違った味の熟茶ができるかもしれないが、実際のところみんなできていない。
美味しい不味いの違いはあるけれど、味の方向というか系統というか、みんな同じほうを向いている気がする。
新芽・若葉の成分構成が同じだから。
成分構成だけでなく、茶葉の大きさやカタチ、繊維の形状や性質など、物理的なものも微生物発酵に影響がある。
今日のお茶は、黒茶らしさのある老葉の熟茶。
+【7592七子餅茶1999年】
近年の熟茶にこういう茶葉は少ない。
温め
一煎め
熟茶の新製法を探るために渥堆発酵を試して、最近問題にしている微生物発酵中の通気のこと。
竹籠を利用した渥堆発酵では、空気が竹籠の内側にこもりやすくて、水蒸気が逃げにくくて、茶葉同士が密集しやすくて、老茶頭(水を多く含んだために茶葉同士がくっついて石ころみたいになった部分)とよく似た味になる。パラパラの散茶のはずなのに老茶頭に似た味になる。
微生物がやや呼吸困難になった状態でつくる成分が老茶頭の味を形成するのだが、しかし、この味は近年のメーカーのどの熟茶にも見られる。
メーカーは竹籠を利用しないで、地面に茶葉を堆積した昔ながらの渥堆発酵のはずなのに、なぜか老茶頭っぽい味の熟茶が市場に流通している。
茶湯の色
90年代のこのお茶『7592七子餅茶1999年』のようなサラッとした口感の茶湯とは違って、ちょっとヌルんとしていて、味も暑苦しいような濃さを感じる。
2010年のオリジナルの『版納古樹熟餅2010年』もどちらかというと暑苦しい。近年の熟茶の系統の味である。
葉底
あくまで推測だが昔の熟茶づくりに大きく育った老葉が使われていたのは、通気の問題が考慮されていたからだ。
堆積した茶葉に水を撒いても茶葉同士が密着しないで隙間をつくりやすい老葉の大きさ・形状・繊維の弾力。
茶葉の内側に水が入り込んでも外に逃がしやすい老葉のミクロの繊維の水道管の排水力。通気力。
若葉ではどうやっても無理。水を吸ったら、黒麹菌など主役の微生物を呼吸困難にさせる。
微生物が呼吸しやすいかどうかが味の系統を分ける。
現在の市場において、老葉をつかった熟茶の復活は難しい。
原材料の老葉を採取する農家がいないこともあるが、消費者が若葉の味の熟茶に慣れていることもある。

7592七子餅茶1999年 その1.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : お菓子の缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興白泥の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
お菓子の缶の熟成茶
お菓子の缶

お茶の感想:
お菓子の缶に入れたまま押入れに仕舞って忘れていたお茶。
上海から西双版納に引っ越すときに入れたから、8年間は忘れていた。
4種あるが、このお茶から飲んでみる。
+【7592七子餅茶1999年】
7592七子餅茶
7592七子餅茶
1999年の熟茶で、9級をメインに構成した粗茶葉が使われている。
微生物は粗い茶葉や茎のでんぷん質を好む。また、粗茶葉は水はけが良いので好気性の微生物が支配する発酵状態になりやすく、サラッとした味わいになって現れる。
まさにそういう風味に仕上がっている。
泡茶
喉にイガっとくる刺激が少しあるのは、茶葉の質や製茶や発酵工程の仕事荒さが影響していると思う。
1999年あたりは産地のお茶づくりが荒れていた時期なので、こんなものだろう。刺激はやがてスースーとクールミントに変わって爽快感があるので、茶葉の不健康が原因ではないと思う。
8年熟成で気品がある。バラの花やお香のような香りがほんのり薫る。
熟茶はもともと大衆茶だが、熟成で高級感が備わってくることがある。
体感は穏やかでゆったり。
粗茶葉の栄養で手足の先の指先の毛細血管までもが開いて血が巡って身体のチカラが抜けてゆく。
旬の茶葉ではないため茶気が弱く、脳を揺らすような茶酔いの快楽はないが、これはこれで癒やし感がある。
茶湯の色
いい具合にチカラの抜けたお茶。
普段飲みにして疲れないお茶。
ちなみに、中国のネットショップを検索すると、同じ1999年の7592は一枚1980元(現在レート32500円くらい)で出品されていた。
お菓子の缶はしっかり密封できるので、茶葉が湿っていないかぎり乾燥気味に保存できる。失敗はまずない。入手しやすいので長期保存の容器としておすすめ。気温の変化の影響を受けやすいので、押し入れなど気温が安定しているところが良い。
建物によっては陽の当たる側の壁だったり、湿気の溜まりやすい位置だったりすることもあるので、その点は考慮しなければならない。
熟成のコツは、忘れてしまうこと。
飲み比べでこの熟茶を飲んだ。
+【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
泡茶
『7592七子餅茶』の後に飲むと迫力に欠ける。熟成10年の差がある。
茶葉の素質の良さや茶気の充実ぶりは『版納古樹熟餅2010年』が圧勝かもしれないが、雰囲気というか、熟成にしか出せない枯れた風味の魅力に負ける。

8582七子餅茶99年 その2.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海茶区大葉種晒青茶古樹
茶廠 : 西双版納孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 香港乾倉ー広州ー上海ー京都
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水
茶器 : 大きめの蓋碗

お茶の感想:
リンゴのような甘い香りのお茶。
【8582七子餅茶99年プーアル茶】
1990年代のお茶だから、1980年代の老茶に比べると劣る。
ほんの10年の間に、メーカーは大きな変化があって、いろいろと失った。
ひとつだけましな点は、この茶葉が晒青毛茶のときに若干微生物発酵したかもしれないこと。
風味にそんな痕跡がある。
また、上海に保存していた数年前に、温度・湿度を香港の気候のように調節した箱の中に数日入れてみた。そのときうっすら白い綿のようなものが現れた。良性のカビと思われる。
晒青毛茶のときに微生物発酵していない茶葉は、このようにはならない。
広州倉庫熟成のプーアール茶
この写真は広州の茶商の倉庫のもの。(銘柄は不明)
見るからに白カビ系。カマンベールチーズのようになっている。
8582七子餅茶99年
この写真は当店の箱の中で熟成を試したもの。
割った餅茶の断面に同じく白い綿っぽいものが見える。
7542七子餅茶90年代初期プーアル茶
この写真は『7542七子餅茶90年代初期』香港で熟成されたもの。
表面に「白露」と呼ぶ白い粉をふいたような色が残っているが、”白露”の出るのも、晒青毛茶のときに麹由来の微生物発酵があったものと見ている。
8582七子餅茶99年プーアル茶
8582七子餅茶99年プーアル茶
8582七子餅茶99年プーアル茶
リンゴのような甘い香りもまた、微生物発酵のときにつくられた酵素と茶葉の成分がどうにかなって発生しているものと思う。
8582七子餅茶99年プーアル茶
8582七子餅茶99年プーアル茶
8582七子餅茶99年プーアル茶
京都に置いている茶缶のお茶。
京都は京都の熟成風味。

下関銷法沱茶90年代 その4.

下関銷法沱茶90年代プーアル茶
下関銷法沱茶90年代プーアル茶
製造 : 1998年頃
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 下関茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 香港ー広州ー上海 紙包みのまま
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
茶葉を思いやるお茶淹れで、このお茶。
【下関銷法沱茶90年代プーアル茶】
崩した茶葉に見える肥えた新芽と若葉。立体的でまるみがある。
茶器を温め、
湯を捨てた蓋碗で茶葉を蒸らし、
茶海で冷ましたぬるめの湯で洗い、
沸きたての熱い湯で淹れる。
呼吸を整えて、脳が静まるのを待ってから手を動かすこと。
気持ちの良い音を立てること。聞くこと。
なぜ音のことを言うのか今わかる。
ミクロの世界の水や茶葉の粒子にとって、音のショックは大きいのだ。人間の耳に痛いような音は破壊的な影響を与えている。
下関銷法沱茶90年代プーアル茶
下関銷法沱茶90年代プーアル茶
くちにスッと入る。
のどをスッと通る。
もうちょっとゆっくりと思いつつもう一杯、
くちにスッと入る。
のどをスッと通る。
この繰り返し。延々と。
『版納古樹熟餅2010年 その15.』で見つけたのとおなじ系統の薔薇の香り。
やがて喉がスースーと爽やかになり、腹の底が温まって胃腸がリラックスし、手先足先の毛細血管に熱い血が流れ、脳がゆるんで眠たくなる。

ひとりごと:
丁寧なお茶淹れ。
丁寧な食事。
丁寧な生活。
気持ちの良い音を立てること。聞くこと。

下関銷法沱茶90年代 その3.

下関銷法沱茶90年代プーアル茶下関銷法沱茶90年代プーアル茶
製造 : 1998年頃
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 下関茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 香港ー広州ー上海 紙包みのまま
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
小さめの蓋碗できっちり。

お茶の感想:
昨日『大益甲級沱茶98年』だったので、今日はこのお茶。
「小さめの蓋碗」+「ぬるめの湯」で淹れる。
【下関銷法沱茶90年代プーアル茶】
しっかり固まった欠片をほぐすためにも、
洗茶はサラッと一瞬で終えてから、つぎの1煎めの抽出時間をじっくりとる。20秒ほど。
しかし、濃くし過ぎてはいけない。明るい透明な色のうちに蓋碗から茶海に注ぐと、底のほうの欠片に浸透していたわずかな湯が赤い血のように染まっている。その濃い何滴かのを混ぜて味を調整する。
2煎めは茶葉がすでに開いているので、抽出時間は10秒にも満たない。
下関銷法沱茶90年代プーアル茶下関銷法沱茶90年代プーアル茶
美味しい。
喉を通ってすぐに鼻へと抜ける香りに、熟茶にはめずらしい蘭香がある。甘味は強いながらもサラッと透明で、気高い印象を与える。
下関銷法沱茶90年代プーアル茶
このお茶のほうが『大益甲級沱茶98年』よりも人気が高かったのだが、熟成がさらにすすんだここに来ては甲乙つけがたい。個人的には『大益甲級沱茶98年』のほうがこの先は楽しめるかもしれないと思った。
プーアール茶の仕入れをはじめてまだ間もない頃に、産地もタイプも異なる美味しい熟茶に出会えたことが、今になって良い経験だったと思える。

ひとりごと:
巴達山賀松寨
過去に調査研究の人とお茶の調査方法について意見を交わしたことがある。
それは「緑茶」と「熟茶」の2つの成分を比べるというものだった。
「発酵していないもの」と「発酵させたもの」の違いをみる。しかし、とある調査結果では「緑茶」と「熟茶」の産地が違っていたのだ。それはおかしい。
山が違えば気候も生態環境も土質も違う。それに伴って品種も違うだろうし、茶摘みのタイミングも違うだろう。原料の成分が違っていたら、分析で得た結果が発酵による違いなのか、元からの違いなのかを特定できない。調査をするのなら、同じ山の同じ農地の同じタイミングで茶摘みした茶葉で、緑茶と熟茶をつくり分けるか、鮮葉(摘みたての茶葉)のうちに成分分析をしておいて、製茶後と比べるという手続きが必要だろう。というような内容だったと思う。
複雑な自然環境において、条件を特定するのは難しい。新しい発見やなんかは、動かざる証拠を求めるアプローチに重要なカギがあるのだろう。
美味しいお茶を求めるアプローチにもこの問題がある。
よくあるのが、美味しいお茶のできる産地の山の標高や気候や土質が、良い産地の条件とすること。

大益甲級沱茶98年 その2.

大益甲級沱茶98年プーアル茶
大益甲級沱茶98年プーアル茶
製造 : 1998年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本 紙包
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
小さめの蓋碗できっちり

お茶の感想:
1998年の熟茶。
「小さめの蓋碗」+「ぬるめの湯」を試す。
【大益甲級沱茶98年プーアル茶】
1煎めが肝心。
1煎めにあっさり淹れると2煎め3煎めが上昇気流に乗る。
かといって薄すぎても立ちあがりの香りが飛ばないことになる。
熟茶は初心者向けのようでいて、あんがい泡茶技術の見せ所がある。
大益甲級沱茶98年プーアル茶
今回はうまくいったと思う。
こうして丁寧に淹れてみると、孟海県の旬の茶葉でつくられた熟茶に共通する濃厚風味から濁りが消える。そうなると、ぼんやりした風味の魅力が出てくる。
大益甲級沱茶98年プーアル茶
荷香(ハス)
棗香(ナツメ)
樟香(クスノキ)
参香(朝鮮人参のこと)
沈香(ジンコウという漢方に使われる植物)
熟茶の5大風味だけでなく、ぼんやりとした中に一瞬キラッと生茶のような鮮味が見えたような見えなかったような。

ひとりごと:
ちょっと遠足気分で外に出た。
水のあるところに魚の影を探してしまう習性がある。
水郷
若鮎の動きに見入っているうちに暑さを忘れて気が遠くなって、目的地まで行かずに帰ることにした。

大益甲級沱茶98年 その1.

大益甲級沱茶98年プーアル茶
製造 : 1998年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本 紙包
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
蓋碗できっちり。

お茶の感想:
1998年の熟茶。
【大益甲級沱茶98年プーアル茶】
先日売切れた。
出品していた5年間の間にも、じわじわと熟成変化していたようだった。
同じタイミングで仕入れた『下関銷法沱茶90年代』のほうが先に売切れて、このお茶は残っていた。
「残りわずか」と書いてからもポツポツ売れていたが、定期試飲をしなかったので、この変化に気付かなかった。そういえば、最後のほうは何度もリピートして買い増していた方が何人かいらっしゃった。
手に入りにくくなった老茶は、美味しいを見つけたら誰にも言っちゃいけない。店の人にも言っちゃいけない。誰も気付かないようじわじわ買い増すのだ。
説明文には、「煙味の効いた」と書いているが、煙草のようだった気がするその香りはこなれて、お香の気品が漂っている。「キリッと引き締まった印象」というのもすでに無く、あくまでも透明でやわらかい。味はあるのかないのか、影はあっても姿を現さないのは、やじろべいのバランスがまっすぐに立って死角にあるからだろう。どちらかに傾いてくれないと人の味覚は甘いとか苦いとかはっきりさせられない。
大益甲級沱茶98年プーアル茶
大益甲級沱茶98年プーアル茶
大益甲級沱茶98年プーアル茶
熟茶の味は歳月が経つにつれ浄化されてゆく。
常温と常湿でも繁殖する「金花」のような菌類によって、長期保存中に緩慢な変化がすすんでいるのではないか?と考えたこともある。しかし、このお茶に「金花」がついたのを見つけたことはこの数年なかった。あるとしても広州の倉庫で最初に見た時のみ。
それでも熟成はすすむ。1年も放っておけば味の変化は明らかになっている。
雨の日に湿気を吸ったり、晴れの日に吐いたり、ミクロの世界での茶葉の内部の水分の移動が、製造工程の発酵時に残された酵素の作用を刺激して、分解がすすんだのだと思う。

ひとりごと:
雨。
雨
ワインの人が、季節やその日の天気によって「開く」とか「閉じる」とか話していた。月の満ち欠けも関係しているらしい。
熟茶は、風味はともかく、なぜか雨の日に飲みたくなる。個人差があるのかもしれないからみんながそうだとは言わないが、飲みたくなるときが美味しいとき。たとえ晴れた日のほうが香りが立っても、気持をそっちに合わせることはしない。
しかし、ワインの「開く」とか「閉じる」という感覚も、人間の側の変化でそう感じているところがあるのかもしれない。瓶に詰まったちょっとの液体よりも、成人の肉体の質量からみて、季節やその日の天気や月の満ち欠けによるブレはずっと大きいような気がする。


茶想

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