大益甲級沱熟茶99年 その1.
製造 : 1999年
茶葉 : 雲南省西双版納州布朗山
茶廠 : 勐海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶 100gサイズ
保存 : 台湾台中市
お茶の感想:
このお茶について解説する。
(臨時販売中 2024年2月時点)
2023年12月末の上海の旅にて仕入れた茶葉。インスタグラムにも投稿している。
このお茶は珍しいタイプで、大手メーカーの有名ブランド”大益”ではあるが、国営時代の1999年製ということで、仕入れることにした。
近年の大益の評価は低い。2004年の完全民営化後は過去の国営時代の高級茶づくりの面影はない。茶葉の質を重視するお茶ファンはすでに離れている。
国営時代の1998年と1999年の熟茶には、当店で紹介したものがあった。
これらは現在高価になっている。
+【大益甲級沱茶98年】
+【大益貢餅熟茶98年】
+【7592七子餅茶】
1999年にこのお茶『大益甲級沱熟茶』が出荷された当時は、おそらく1個20元くらいだったはず。現在のレートで換算すると1個400円くらい。
それから25年後の2024年に当店が設定した価格は1個13,700円。
34倍になっている。
もちろんすべてがこのような高価にはならない。
この銘柄は”常規茶”と呼ばれるお茶で毎年つくられる。一年に何度か出荷される。
茶葉は自然のもので質も産量も毎年異なる。微生物発酵は自然に任せる”渥堆発酵”なので仕上がりは毎回異なる。ブレンドによりある程度調整されるものの、まだこの時代はアタリハズレが大きかった。
では、この1999年のどこが特別なのか。
原料の茶葉に特別なところはない。
春・秋のブレンド。おそらく勐海県の布朗山・巴達山・孟宗山の自社農園の茶葉畑の小さく若い樹。
甲級にしてはやや小さめの若葉が主体で構成されているが、口感の滑らかさはあまりなく、旬のタイミングを外した茶葉であると思われる。しかしこれは甲級の標準的なもの。
特別なところは渥堆発酵の発酵度にある。
とても浅い発酵度で、生茶の老茶すら連想させる風味もある。
飲めばすぐに分かる。
写真の茶湯の色は赤黒くしっかり熟した色をしているが、これは25年の熟成効果であって、おそらく出来立て当初はもっと明るいオレンジ色だったにちがいない。
茶湯の色ほどお茶の味は熟しておらず、まだ若い感じがする。
スッキリ柑橘系の爽やかさがあり、現代の熟茶のような重い甘い濃い感じはまったくしない。
このような浅い発酵度の熟茶は1990年代にはまだいくつもあったが、2000年代になるとほとんどなくなる。
大きく育った茶葉が主体の昆明茶廠の”7581”。
若葉主体の下関茶廠の”下関銷法沱茶”。
同じく若葉主体の勐海茶廠のこのお茶”甲級沱茶”。
この3つの銘柄が1990年代を代表する熟茶の味だった。
このお茶『大益甲級沱熟茶99年』にはその特徴が過剰なほどに色濃く現れており、コレクション的価値があると思える。
しかし、この味であることが特定できる包紙の印刷などが無い(この味ではなく一般的な味の熟茶にも同じ包紙が使われている)ことから、老茶としての市場での評価はそれほど上がらない。
葉底の色は比較的均一。浅い発酵+深い発酵のブレンドではなく、全体的に浅く発酵させた茶葉で構成されている。
なぜか茎の部分がたくさん配合されている。
この茶葉を所有していたのは個人のコレクターである。
上のようなことから、この個人のお茶選びにはセンスを感じる。
今回放出されたのは約50キロ分。
おそらくもっと多く所有しているはずなので、あとは個人で楽しむか、さらに長期熟成してから転売するか、そんな楽しみ方だと思う。
個人といっても住宅に保存しているような小規模ではない。
茶葉専用の倉庫があり除湿機などの設備があることが、25年間も乾燥を保った茶葉の状態と、他のニオイをまったく吸収していない清潔感から想像できる。
コレクター本人には会っていないが、人づてに聞いたところでは、台湾台中市の山間部の別荘を茶葉専用倉庫にして、倉庫の管理は使用人がしているらしい。
このくらいの規模であるから、個人で消費するよりも転売する茶葉のほうが多い。職業ではないらしいが、素人でもない。このような個人が中国本土のみならず中華圏には多い。
この茶葉を所有してからのこと。
浅い発酵度の涼しい風味で暑い季節でも美味しく飲める。(現代の熟茶は暑苦しくて夏には向かない。)
いますぐに飲むのもよいが、できたら少しは手元に残しておいて、これから数年間の熟成を楽しむのをおすすめする。
これまでの25年間は乾燥ぎみに保存されていた。
環境が変わってややしっとりした空気に触れると(日本の家庭の一般的な空気がそう)、はじめの数カ月間の変化はとくに大きい。
空気中の水分が茶葉のミクロの繊維の内部にまで入り込んで、まだ効力を発揮していない酵素による変化を促すからである。
わざわざ湿気たところに置く必要はない。むしろ乾燥に気をつけて密封保存するくらいがよい。袋を開け閉めするだけで水を含んだ空気が入り込むので、それで十分。
たまに試飲するとこれまでにはなかった味や香りが発見できて、熟成変化を楽しめるだろう。
写真は二条10個分を包み紙のままジップロックに密封して、押入れの棚に茶壺といっしょに並べている。
紙袋のまま通気を許してもよいが、他の匂いが移る心配があるのならプラスチックバッグや容器に密封するとよい。
置き場所は乾燥した日の当たらない場所を選ぶこと。
もしも、しっとり熟成させた場合は、お茶を淹れる前に茶葉を80度以下で15分ほど温めて水抜きしたほうがよい。
茶葉 : 雲南省西双版納州布朗山
茶廠 : 勐海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶 100gサイズ
保存 : 台湾台中市
お茶の感想:
このお茶について解説する。
(臨時販売中 2024年2月時点)
2023年12月末の上海の旅にて仕入れた茶葉。インスタグラムにも投稿している。
このお茶は珍しいタイプで、大手メーカーの有名ブランド”大益”ではあるが、国営時代の1999年製ということで、仕入れることにした。
近年の大益の評価は低い。2004年の完全民営化後は過去の国営時代の高級茶づくりの面影はない。茶葉の質を重視するお茶ファンはすでに離れている。
国営時代の1998年と1999年の熟茶には、当店で紹介したものがあった。
これらは現在高価になっている。
+【大益甲級沱茶98年】
+【大益貢餅熟茶98年】
+【7592七子餅茶】
1999年にこのお茶『大益甲級沱熟茶』が出荷された当時は、おそらく1個20元くらいだったはず。現在のレートで換算すると1個400円くらい。
それから25年後の2024年に当店が設定した価格は1個13,700円。
34倍になっている。
もちろんすべてがこのような高価にはならない。
この銘柄は”常規茶”と呼ばれるお茶で毎年つくられる。一年に何度か出荷される。
茶葉は自然のもので質も産量も毎年異なる。微生物発酵は自然に任せる”渥堆発酵”なので仕上がりは毎回異なる。ブレンドによりある程度調整されるものの、まだこの時代はアタリハズレが大きかった。
では、この1999年のどこが特別なのか。
原料の茶葉に特別なところはない。
春・秋のブレンド。おそらく勐海県の布朗山・巴達山・孟宗山の自社農園の茶葉畑の小さく若い樹。
甲級にしてはやや小さめの若葉が主体で構成されているが、口感の滑らかさはあまりなく、旬のタイミングを外した茶葉であると思われる。しかしこれは甲級の標準的なもの。
特別なところは渥堆発酵の発酵度にある。
とても浅い発酵度で、生茶の老茶すら連想させる風味もある。
飲めばすぐに分かる。
写真の茶湯の色は赤黒くしっかり熟した色をしているが、これは25年の熟成効果であって、おそらく出来立て当初はもっと明るいオレンジ色だったにちがいない。
茶湯の色ほどお茶の味は熟しておらず、まだ若い感じがする。
スッキリ柑橘系の爽やかさがあり、現代の熟茶のような重い甘い濃い感じはまったくしない。
このような浅い発酵度の熟茶は1990年代にはまだいくつもあったが、2000年代になるとほとんどなくなる。
大きく育った茶葉が主体の昆明茶廠の”7581”。
若葉主体の下関茶廠の”下関銷法沱茶”。
同じく若葉主体の勐海茶廠のこのお茶”甲級沱茶”。
この3つの銘柄が1990年代を代表する熟茶の味だった。
このお茶『大益甲級沱熟茶99年』にはその特徴が過剰なほどに色濃く現れており、コレクション的価値があると思える。
しかし、この味であることが特定できる包紙の印刷などが無い(この味ではなく一般的な味の熟茶にも同じ包紙が使われている)ことから、老茶としての市場での評価はそれほど上がらない。
葉底の色は比較的均一。浅い発酵+深い発酵のブレンドではなく、全体的に浅く発酵させた茶葉で構成されている。
なぜか茎の部分がたくさん配合されている。
この茶葉を所有していたのは個人のコレクターである。
上のようなことから、この個人のお茶選びにはセンスを感じる。
今回放出されたのは約50キロ分。
おそらくもっと多く所有しているはずなので、あとは個人で楽しむか、さらに長期熟成してから転売するか、そんな楽しみ方だと思う。
個人といっても住宅に保存しているような小規模ではない。
茶葉専用の倉庫があり除湿機などの設備があることが、25年間も乾燥を保った茶葉の状態と、他のニオイをまったく吸収していない清潔感から想像できる。
コレクター本人には会っていないが、人づてに聞いたところでは、台湾台中市の山間部の別荘を茶葉専用倉庫にして、倉庫の管理は使用人がしているらしい。
このくらいの規模であるから、個人で消費するよりも転売する茶葉のほうが多い。職業ではないらしいが、素人でもない。このような個人が中国本土のみならず中華圏には多い。
この茶葉を所有してからのこと。
浅い発酵度の涼しい風味で暑い季節でも美味しく飲める。(現代の熟茶は暑苦しくて夏には向かない。)
いますぐに飲むのもよいが、できたら少しは手元に残しておいて、これから数年間の熟成を楽しむのをおすすめする。
これまでの25年間は乾燥ぎみに保存されていた。
環境が変わってややしっとりした空気に触れると(日本の家庭の一般的な空気がそう)、はじめの数カ月間の変化はとくに大きい。
空気中の水分が茶葉のミクロの繊維の内部にまで入り込んで、まだ効力を発揮していない酵素による変化を促すからである。
わざわざ湿気たところに置く必要はない。むしろ乾燥に気をつけて密封保存するくらいがよい。袋を開け閉めするだけで水を含んだ空気が入り込むので、それで十分。
たまに試飲するとこれまでにはなかった味や香りが発見できて、熟成変化を楽しめるだろう。
写真は二条10個分を包み紙のままジップロックに密封して、押入れの棚に茶壺といっしょに並べている。
紙袋のまま通気を許してもよいが、他の匂いが移る心配があるのならプラスチックバッグや容器に密封するとよい。
置き場所は乾燥した日の当たらない場所を選ぶこと。
もしも、しっとり熟成させた場合は、お茶を淹れる前に茶葉を80度以下で15分ほど温めて水抜きしたほうがよい。
- 2024.02.22 Thursday
- プーアール茶1999年
- 00:25
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- by ふじもと