プーアール茶.com

大益沱茶05年 その1.

製造 : 2005年9月
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド
茶廠 : 孟海茶廠民営化後
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 沱茶100g
保存 : お菓子の缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯・鉄瓶+炭火
お菓子の缶で熟成した茶葉
生産日付
大益沱茶05年プーアル茶

お茶の感想:
前回につづいてお菓子の缶に8年間眠っていたお茶。
+【大益沱茶05年プーアル茶】
生茶のプーアール茶。
ひとことで言うと安モノのお茶だけれど、美味しければよいだろ。
国営の孟海茶廠が民営化されるときに準備されたのが”大益”ブランドで、これまでは開放されていなかった中国大陸の市場に向けて大衆化した製品を供給することになったから、当然それまでの産地では足りないので新興産地の茶葉が使われている。
茶湯の色
正直に言って不味い。
雑味やアク味が邪魔するためにゴクッと強制的に飲み込まないと口から消えない。舌にはシワシワ渋味が残って消えない。
8年間も忘れたまま熟成していて、もうちょっとなんとかなっているかと思ったけれど・・・。
葉底
原料の茶葉の質は悪くない。
製茶が悪い。圧延加工が悪い。
製茶は焦がしているし、圧延の蒸しすぎた煮え味もある。
しかし、2005年ならこれでも標準的な大手メーカーの品質。
製茶はダメでも茶葉の質が良いから煎はつづく。
5煎めくらいから甘味と蜂蜜のような香りが出てくる。焦げの煙たさがスパイスになって、煙草吸う人がこの味を好む傾向がある。
西双版納の南糯山とか布朗山とか巴達山とかそのあたりのお茶に似ている。
ふと思いついてこのお茶。
+【南糯古樹青餅2010年】
原料の茶葉は似ているはず。
南糯山古樹青餅2010年
南糯山古樹青餅2010年
残念ながらこれも不味い。
製法の問題はそれほど見つからない。でも同じような不味さがある。やはり品種特性が生茶に向いていないのだろう。
西双版納の実生(花が咲いて実が成るところから苗が育つ)の古茶樹は、人間の兄弟がそれぞれ異なる外見や性格になるようにバラエティー豊かになって、クローン栽培のような単一化はできないが、茶山を選ぶことでざっくりと同じグループを選べる。
生茶に向いている茶山。向かない茶山。
2013年くらいにそのことに気付いて、軽発酵をすすめた製法を『南糯蜜蘭青餅2013年』で試したけれど、結局それが最後のあがきだった。

ひとりごと:
南糯山が生茶をつくりだしたのは1980年代のこと。それ以前の数十年は緑茶と紅茶。もっと昔は微生物発酵させる黒茶の原料を提供していたはずだ。
大陸での需要に求められて、現在は生茶づくりの歴史がない茶山の茶葉で大量に生茶がつくられているけれど、いずれ淘汰される。はず。
南糯山の茶葉は紅茶や熟茶にしたほうがだんぜん美味しいから。

丁家老寨青磚2005年 その1.

製造 : 2005年4月・5月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+景洪の茶商
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興紅泥壺・鉄瓶・炭
丁家老寨

お茶の感想:
2018年の春は丁家老寨に行くことにした。
天気予報を見て山に入るタイミングを図っているところ。
他の有名茶山と同じく丁家老寨の古茶樹も乱獲がたたって、ここ3年くらいのお茶の味はパッとしない。
しかし今自分の勉強したいところは慣れた茶山にある。
スレていない茶地を求めてあちこち車を走らせている現地の茶商たちが見つけてくる茶葉には魅力があるけれど、これを一から理解するのには年数がかかる。晒青毛茶をサンプルとして分けてもらって、手元で熟成させながら定期的に試飲して変化を見て、はたして生茶のプーアール茶として適切な品種なのか?製茶ができているのか?熟成変化に魅力があるのか?
手元のいくつかの生茶だけでもこれらの観察は手間と時間がかかっているので、これ以上手を広げると仕事の質を落としそうだ。
2012年のこのお茶でさえ6年経っている現在でもまだ謎が多い。
【丁家老寨青餅2012年 】
丁家老寨青餅2012年
丁家老寨青餅2012年
熟成変化はおおむね良好。
西双版納に在庫しているのは、はじめの1年間の保存でちょっと湿気ているが、質が落ちたと言えるほど明確に悪いこともない。香りの立ち方がやや鈍かったり、味に酸味が加わったりするが、一年中気温の高い地域なので、もしかしたら乾燥に気を付けていてもこのくらいの変化はあったかもしれない。
漫撒山(旧易武山)の古い品種の茶葉は先人がしてきた1950年代以前からの長期熟成の実績があるので、この点でカタイ。過去の銘茶のサンプルさえあれば熟成具合を比較できる。
茶摘みと製茶がまだよくわからない。茶樹の栽培にもなにか関連しているだろう。
易武山一帯のお茶を専門にしている茶商なら、過去に一度は丁家老寨のお茶を手がけてサンプルを手元に残している。サンプルというよりは売れ残りで、西双版納の気候と不注意な倉庫管理が災いして湿気させて品質を下げているが、そこは差し引いて茶葉の性質に注目してみる。
丁家老寨青磚2005年
『丁家老寨青磚2005年』(仮名)とする。
2005年のはちょっと珍しい。
2006年・2007年にプーアール茶バブルと呼ばれる相場の高騰があったが、価格の高騰は乱獲につながる。
一般的な農作物は豊作貧乏で、沢山収穫されすぎると価格を下げるのが普通だが、茶葉は長期保存ができるせいかそうならない。価格が上るほどに品質が下がるという矛盾が生じる。
2005年はまだプーアール茶ブームが中国大陸全土に広がっていない時代。昔から飲んでいた南方の人たちが主に消費していたので、生産量は今ほど多くなく、新しく森を切り開いて茶地をつくったり、年に3度も4度も茶摘みをするような乱獲は必要なかった。易武山なら「麻黒」や「落水洞」くらいが有名で、「丁家老寨」となるとお茶ファンでも知らない人が多くて、農家は茶商のオーダーがないと茶摘みをしないこともあったくらいだから、茶樹は健康だったはず。
丁家老寨青磚2005年
丁家老寨青磚2005年
剪定や台刈りによって枝や幹が詰められると枝の分岐が増えて一本の樹から採取できる茶葉の量は増える。しかし古茶樹特有の滋味深さは失われる。
2005年のこれはまさに滋味深い。茶湯が口に溶けるようになじんで、すっと喉を滑り落ちて、お腹の底を温める。舌に残る苦味・渋味の消えの速さがよくて清潔感がある。心配していたほどに湿気た影響が悪く現れていない。
そうなのだが、お茶のお茶たる風味が弱い。なんだか眠い。
この眠さは丁家老寨のお茶の特徴かもしれない。
この2005年のはあきらかに茶摘みのタイミングが悪い。「春のお茶だ」と茶商は言うが、おそらく夏の雨季に入った5月の2番摘みだろう。
丁家老寨青磚2005年
丁家老寨青磚2005年
香りが無いし、茶気も充実していない。
ただ、それが眠さの原因じゃない。
2012年の早春に采茶した『丁家老寨青餅2012年』にもこの眠さがあるから。
丁家老寨青餅2012年
味比べ
左:丁家老寨青餅2012年
右:丁家老寨青磚2005年
比べてみると香りも茶気も2012年のが圧倒的に強い。でもやはりなんとなく眠い。
こういう品種特性かと思う。これでいいのかもしれない。
茶葉にしっかり熱が入る3煎めくらいになると香りがキリッとしてくる。外から薫るのではなくて吐く息にほんのり薫る香り。この香りが出てくると嬉しい。はじめの1杯めからフルパワーで薫る小葉種の、例えば「倚邦山」のお茶よりも心理的な作用が働いて、香りにありがたみを感じる。ささやくような香りは聞くほうの意識を集中させるので、3煎め以降の変化にも敏感になる。また、この香りには連想させるものがない。花とか果物とかがすぐに浮かんでこないから、言葉がいらない。
お茶の味の審美眼が、昔の人と今の人とでかなり異なるのではないかと思う。
昔の人のほうが詩人だったので、お茶の味わいに心のゆらぎを任せて楽しめたにちがいない。
どのお茶の香りが強いとか、渋いとか苦いとか、煎が続くとか、なにかに似ているとか、そうではなくてどのお茶が美しいか。
美の鑑賞は感じる側の人の有り方が問われる。
千利休の時代の黄金の茶室に秀吉の貧しさをうっすら感じてしまうように、例えば曼松のお茶の派手な風味にはそれを好む人の未熟さをうっすら感じてしまう。(曼松は西双版納旧六大茶山のひとつで、清朝の時代に皇帝ブランドの冠が付けられて国内外の都市に売られていた。現在また人気が上がっている。わかりやすい強い香りが特徴。価格は高騰して毎年話題になる。ニセモノもあふれている。)
美にはこういう面もある。
人の心の卑しさみたいなところを美の学びから指摘できるのは、教育の成熟した社会があるからこそ。
もういちどこのへんから勉強しなおさないと、昔のような美しいお茶はできないよな。お茶の道具もそうだろ。
つくる側の問題ではなく、流通の人も、消費する人も。みんなの学びが必要になる。
葉底
左:丁家老寨青餅2012年
右:丁家老寨青磚2005年

ひとりごと:
コーヒーやワインの社会では、科学や経済の話に詳しい専門家ほど偉いように見えるが、お茶の社会でそうなっちゃダメだろな。

宮廷プーアル熟散茶05年 その2.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(民営化後)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 上海
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
宮廷プーアル熟散茶05年
宮廷プーアル熟散茶05年
宮廷プーアル熟散茶05年
うーん。
茶気も香気も水質も味の消えの早さも、合格点は満たしているが、美しさに欠けるか・・・。
2003年のほうが美しい。
素質は良いから、気長に熟成の変化に期待しようと思う。
上海のオシャレな雑貨屋さんのディスプレーになっている大きな錫の茶缶に入れてもらって、長期熟成するよう提案するつもりだ。

ひとりごと:
宮廷プーアール茶の良いのが見つからなくなる。年々使われる茶葉の質が落ちてゆくので、このお茶を慌てて仕入れたが、ちょっと遅かったかな・・・。
上海のプーアール茶専門店も、やはり宮廷の美味しいのを見つけられないと嘆いている。

漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その5.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶+微生物発酵
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶

お茶の感想:
無加水で自然発酵したお茶。
微生物発酵の関わる茶葉の変色にムラがある。
それが自然発酵。
お茶の味には一点の曇りもなく、薫り高く清らかで甘い。
口になじむ。喉に溶ける。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
この不思議なお茶が西双版納に存在するという事実。

ひとりごと:
それだけで、自分はやってゆける。
道を探る。
お茶づくりは可能性の追求。

老班章古樹青餅2005年 その1.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納孟海県老班章古茶樹
茶廠 : 不明
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納ー上海 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
西双版納

お茶の感想;
知り合いの茶荘で2005年の老班章を飲んだ。
老班章のお茶は「先苦後甜」。
苦い!と感じた瞬間にそれが消えてなくなり、甘味だけが舌に残る。だから苦いほど甘い。思い出しただけで唾液が湧いてくる。
このわかりやすい特徴があるから本物を知るのが簡単で、初心者にウケるのかもしれない。近くの山々の同品種の古茶樹モノは、同じ苦味はあれどなかなか消えなかったり、先に甘味で後から苦味が来たりして、老班章ほど美しくキマらない。
2005年のこのお茶は、過去に飲んだ老班章の中では最も優れていると思うが、やはりその個性の「先苦後甜」が際立っているのが高得点なのだと思う。
「先苦後甜」を邪魔する味や香りが無いから良いのだろう。
茶気が強くて透明感があるのは春一番の采茶にしかできない技。そして、殺青の炒りはしっかり。当店のお茶では卸売部の『漫撒生態青餅2014年』くらいしっかり火が通っていて、独特の芳ばしい深煎り香がある。それを証明するように、熟成9年目にしては茶湯に赤味が少ない。
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
また、深煎りすると孟海県の古茶樹に共通してある「煙草味」をかなり消せるようなのだ。「煙草味」を好むかどうかの問題ではなく、香りに個性の無い平凡なほうが「前苦後甜」が引き立つ。
洗練された感じなのだな。
茶気が強くて、はじめは苦くて後が甘い。お茶のいちばん高値をつける春において、季節の喜びを表現するにはぴったりの味わい。
お茶屋さんとしては広告宣伝料と考えて本物の老班章が欲しいわけだ。優れた老班章のお茶がひとつあれば店の信用度は上るだろう。
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
同じ茶荘の2013年の老班章に5600元の値札がついていたが、今回飲んだ2005年のほうがもちろん高いだろう。包み紙は白紙でメーカーは不明だが、2005年はおそらく個人の愛好家が自分で晒青毛茶を集めてメーカーの設備を借りて圧餅したのだろう。
1980年代以前の上質な老茶が入手困難になった今、店の看板になるお茶のポジションに老班章がぴったり納まる。専門店が老班章の上質を競うと、お茶ファンにとっては店のレベルを知る目安にもなる。
こういう喧嘩のためのお茶もひとつくらいあったほうが、華やかで良いのかもしれないな・・・。「ラオスの原生品種です。」なんてマイナーなお茶では店のチカラ比べができない。

ひとりごと:
店の主人が、
「良くないと思うけれど、どこが良くないのか?」
と評価を頼まれたお茶『易武落水洞古樹青餅2009年』。
易武落水洞古樹青餅2009年プーアル茶易武落水洞古樹青餅2009年プーアル茶
秋の茶葉ということだったが、秋になる前の雨の季節の茶葉だった。茶気が弱く水っぽい。落水洞特有の蜂蜜香がほとんど無い。

下関甲級鉄餅05年 その2.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶ブレンド
茶廠 : 雲南大理下関茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 昆明 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
下関甲級鉄餅05年プーアル茶
下関甲級鉄餅05年プーアル茶
下関甲級鉄餅05年プーアル茶
下関甲級鉄餅05年プーアル茶

お茶の感想;
たくさんのサンプルが試飲待ちになっているが、その中に「鉄餅」と呼ぶタイプの生茶が4種ある。今日はこれを一気に飲み比べた。
鉄餅は円盤型の餅茶だが、鉄の型で強く押し固めてカチカチにするのが特徴。
茶葉をしっかり密着させるために、まずは深く蒸される。そして強い圧延で潰れた茶葉からにじみ出る汁が接着剤となってカチカチに固まる。茶葉の隙間が少なく水分の抜けが悪いため、やや高温の乾燥室で乾かされる。この時点で、原料の晒青毛茶(天日干し緑茶)からかけ離れた風味になっている。
一般的な餅茶は、軽く蒸して、圧延も軽いので、晒青毛茶からそう大きく変わらない風味に仕上がるが、それに比べると鉄餅は別モノと言える。出来立ては渋味や酸味が強いが、長期熟成でまろやかになってゆくと独特の風味が醸しだされる。
個人的には好きじゃないのだ。
ほとんどの鉄餅にローソクの「蝋」のような匂いがあり、好みが分かれると思う。
鉄餅にも、美味しいのと美味しくないのとがある。
過去の2つの名作は美味しかったと思う。
【83鉄餅プーアル茶】
【早期藍印鉄餅50年代】
メーカー・銘柄・熟成年数を問わず鉄餅にはハズレが多いから、味で選ぶなら数をあたるしかない。上の写真の『下関甲級鉄餅05年』は、どちらかというとハズレだった。大きくハズしてはいないが、もっと美味しいのがあるはずなので、これをベースにして以下の4つを比べる。
下関美術字鉄餅03年プーアル茶
下関美術字鉄餅03年プーアル茶
『下関美術字鉄餅03年』
下関小紅鉄餅01年プーアル茶
下関小紅鉄餅01年プーアル茶
『下関小紅鉄餅01年』
下関黄印鉄餅99年
下関黄印鉄餅99年プーアル茶
下関黄印鉄餅99年プーアル茶
『下関黄印鉄餅99年』
下関美術字鉄餅95年
下関美術字鉄餅95年プーアル茶
下関美術字鉄餅95年プーアル茶
『下関美術字鉄餅95年』
この最後の1995年の『下関美術字鉄餅95年』だけが美味しいと思った。葉底の茶葉は大きく弾力もあり、そこが他を圧倒している。素材が良い。
はじめの2煎めくらいまでクスリっぽかった。こんな異様な風味は鉄餅ならでは。毎日のお茶という感じではないけれど、所有する楽しみはある。たまに味見してみたくなるだろう。
ただ、この同じ系統であればもっと甘味が強い『中茶牌3917沱茶93年』がある。
【中茶牌3917沱茶93年 その1.】
これなら毎日飲みたい感じがするし万人ウケすると思うが、鉄餅の味が万人ウケしちゃダメなのだな・・・。

ひとりごと:
明日の試飲は熟茶。

孟庫戎氏宮廷小熟餅05年 その3.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 小餅茶145g
保存 : 昆明−上海 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年プーアル茶
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年プーアル茶

お茶の感想:
いろんな熟茶の試飲がつづいて、
味の記憶が鮮明なうちにこのお茶。
『孟庫戎氏宮廷小熟餅05年』 (卸売部に出品)
近年の典型的な濃くて甘い熟茶だが、こうしてふりかえってみると、よく考えてつくってあるとつくづく思う。
濃くて甘い風味の熟茶は、味のボリューム感はあっても輪郭みたいなのがぼやけがちになる。冬の寒い時期や雨の日にはしっくりくるが、夏の暑い時期やカラッと晴れた日にはいまひとつパッとしない気がする。その中で比較的ハツラツとした味があるのは、新芽と小さな若葉を篩分けした「宮廷」クラスの熟茶。新芽と若葉に多く含まれる刺激成分が風味をシャキッとさせるのだ。
数年前まで「宮廷」の人気はそれほどでもなかったと思うけれど、ここにきて人気が上がっているのは、その背景に熟茶の風味の変化があると思う。
熟茶を代表する銘柄の孟海茶廠の「大益」シリーズや、下関茶廠の定番の「銷法沱茶」などは、近年明らかに風味の精彩に欠けてきていると思うが、こうなるのは、原料となる茶葉の発酵を濃くて甘い風味に仕上げるようになって、かつてのブレンドではバランスが取れなくなったのではないかと思うのだ。
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年プーアル茶
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年プーアル茶
その点で、このお茶は粉砕した茶葉と宮廷クラスの新芽・若葉を豊富にブレンドすることで、価格を抑えつつも味の輪郭を保ち、バランスよく仕上がっている。1枚145gというミニサイズも買いやすくてよい。

ひとりごと:
客観的だよな・・・。
他人の味覚や金銭感覚を意識してお茶の話をしている。実際にこのお茶は良いお茶だと思う。でも、それは他人にとってのこと。
ほんとうに自分が好きなお茶なら、こんなふうにならないのだ。
「このお茶最高!」
この一言で十分。自分の嗜好にピタッとくるものが、生まれ育ちの違う他人にピタッとくるとは思えない。生まれ育ちの同じ兄弟でもずいぶん嗜好が違うのだから。
「食べログ」みたいなのになじめないのはそこなのだ。評価している人は、顔も見えない誰でもない他人に向かって良かれと思う評価をしている。
例えば、当店をはじめて利用するにあたって、
「プーアール茶ドットコムのお茶ならどれが美味しい?」
と、SNSやなんかで誰かに聞いたとする。
「このお茶あたりがいいと思うよ。」
と、誰かが勧めてくれたとする。
でもそのお茶はたぶん、その誰かさんにとっての一番ではないのだ。良心的に、顔の見えない他人にとって美味しいだろう、この価格ならぜったい後悔もしないだろう、と思える今日のこのお茶みたいなのをすすめる可能性がある。

孟庫戎氏竹皮茶磚05年 その1.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 500g (95g×5枚+竹包み)
保存 : 昆明乾倉
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶

お茶の感想:
「生活のお茶」というなら、
もうちょっと安価なのを見つけておきたい。
ということでこのお茶『孟庫戎氏竹皮茶磚05年』。
2005年モノだから2014年今年で9年めの熟成になる。
老茶のような芳香は期待できないが、熟成でまろやかな風味ならこのくらいの年数でも熟茶なら十分。
竹皮包みというのも適度に空気中の水分を吸ったり吐いたりして、酵素分解による経年変化をうながしていそうで良いと思った。
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
95gのレンガ型の小さな磚茶が5枚。ちょっと特殊な形だけれど使いやすいと思う。
そして肝心の味は・・・
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
・・・ダメだった。
同じ価格帯の熟茶にはよくある風味なのだけれど、原料の晒青毛茶をしっかり天日干ししないで機会乾燥で仕上げたのが混じっていると思う。(ブレンドでつくっているからすべてがそうではないけれど。)天日干し出来ていない茶葉は、1ヶ月近くも水分を含む渥堆発酵でヘタってしまう。その香りと旨味が出ていた。
このメーカーのお茶は卸売部でこのお茶、
『孟庫戎氏宮廷小熟餅05年プーアル茶』
を紹介していて、同じ2005年のだから良いかと思ったのだけれど、ちょっと違う茶葉なのだろう。重量あたりの価格もこちら『孟庫戎氏竹皮茶磚05年』のほうがだいぶん安くなる。
粉砕した茶葉を使って金色の新芽のところをブレンドすることで、見た目も良く廉価な熟茶をつくる技術なのだと思うが、粉砕した茶葉はどうしても最初の煎でドッと濃く出すぎる。これが味を濁してしまう。サラッと早めに湯を切って出したらよいが、熟茶の味わいはグッと熱を通したほうが魅力が出やすいので、やはり茶葉の形が残っているタイプが良いと思う。
孟庫戎氏竹皮茶磚05年プーアル茶
同じ価格帯でまた別のを探してみる。
このメーカーは原料の茶葉は良いし、この美味しさでこの価格(500gで3900円を予定していた)なら十分満足というお客様もあるだろう。なのであえて選ぶ必要もないのかもしれない。
そんなことを考えながら、ちょっと昔のことを思い出した。
もう15年くらい前のことだけれど、東京都練馬区に住んでいたことがあった。
近所に大きなスーパーや生協の店があったが、おじちゃんおばちゃん二人でやっている八百屋が残っていた。八百屋の野菜は美味しかった。冬になると白菜や大根で自家製の漬物をつくっていた。「美味しいよ!」とおじちゃんがすすめるので買ってみたら、本当に美味しかった。スーパーでパックで売ってるのとぜんぜんちがう深い味わいがある。
ところがその漬物は3日目くらいにカビる。付け汁の表面に白い滓のようなものが浮かんでくる。
「おじちゃんあれカビたよ。」
と言うと、
「ああごめんね、こっちを持ってって!」
と、新しく漬けたのをタダで分けてくれた。ところが新しく漬けたのは以前のよりも美味しくないのだ。
そのことを話してみると、おじちゃんいわく、
「あのカビはね、腹壊すようなのじゃないの。よく漬かると出てくるものなの。うちは防腐剤入れてないから・・・。」
そんなことを言ったと思う。
それから数年後、上海に住んでコックさんに四川泡菜を自家製してもらうようになって、同じ現象が起こったときにこのことを思い出していた。
白い滓は白カビだと思うけれど、お腹を壊すようなものではないというのを経験で知った。さらに、もしかしたら天然の抗生物質ができていて、むしろ身体に良い可能性があると今は思う。
よく漬かった漬物にだけあの白カビが出るのは、野菜の成分をもとに乳酸菌が新しくつくった栄養(旨味の成分でもある)と、表面の空気があってはじめてあの白カビが発生できるからだ。つまり、美味しく漬かった漬物にしかあの白カビは出ない。白カビが出ないよう防腐剤や保存料を入れた漬物はもういらない。そう思った。
当店も、あの八百屋のおじちゃんのような仕事がしたい。
ほんとうの味わい。生活のお茶だから安くて美味しけりゃいいってもんじゃないのだ。

ひとりごと:
西双版納のカフェ
西双版納のカフェ
昨晩やたら腹が減って、アップルパイとチーズケーキと食べた。
老茶の試飲の後は血糖値が下がるから甘いものが欲しくなる。

漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その4.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶+微生物発酵
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
黒砂糖

お茶の感想:
黒砂糖。
西双版納の名物のひとつだが、1か月前までは表面はツルツルしたレンガ色だった。タッパーに入れておいたら知らないうちにこうなっていた。
この泡の吹いたような跡。
見覚えがある。酵母の仕業だと思う。単独ではないだろうから麹もいるかもしれない。
そのまま食べても美味しい。味が大きく変わったような気はしないが、どことなくまろやか。
そういえば易武山の人が漬物や味噌づくりのときに、この黒砂糖をちょっと入れると言っていたが、それは糖分を加える目的よりも、見えない微生物の種を撒くためにそうしていたのではないだろうか。
易武山の発酵食品づくり
易武山の発酵食品づくり
(そのときの写真)
砂糖は腐らない。腐らないということは、悪い成分をつくる微生物が活動できないということになる。人の身体に良い成分をつくる微生物だけが生きられるとしたら、それは良い微生物の天然の苗床(麹床)となる。
ちょと前に紹介した蜂蜜でつくる酒とおなじことができるだろう。
黒砂糖の酒
さっそくこれも水に浸けて発酵させてみる。
ちなみに、蜂蜜の酒は発酵の途中でちょくちょく味見して飲むものだから、だんだん水が少なくなって、ある時点で糖分濃度が高くなりすぎて酵母の活動が止まったと思う。
成功していた。
少し酒精の香りがして、どぶろくづくりのときの味にも似た炭酸系のシュワシュワした感じがでてきていた。
西双版納の空気中には大量に漂っているのだ。
彼らが好む栄養があり温度があり湿度があれば、いつでも沸くことができる。見えないだけで、ここに保存している茶葉の表面にもいっぱい取りついて出番を待っているかもしれない。あるいはミクロの世界ではすでに何かが起こっているかもしれない。
今日はこのお茶。
ミクロの世界で何かが起こったことがはっきりわかるお茶。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
「茶葉は息をしている。」
という昔の人の表現は、茶葉につく見えない微生物が生きていることを話していたのではないかな。
このような特殊なお茶は品質が不安定なので、良し悪しを見る眼が要る。危うくなったら天日干しするとか、回復させるための知識も要る。
10年前までは専門店だけがプーアール茶を売っていたから問題なかった。しかし、2005年頃からの流行で、あらゆる中国茶の店が扱うようになり、さらにスーパーや百貨店の量販店にも空港のお土産屋にも流通するようになった。そうなると説明いらずのお茶に需要が出てくる。
そういうお茶がつくられる。
お茶だけでない。あらゆる食品がそうなのだ。上に紹介したような放っておいたら泡を吹く黒砂糖はクレームになるから売れない。説明なしで売るためには、消毒して真空パックするなりして、微生物の存在を消さなければならない。しかし、微生物無しの黒砂糖では漬物づくりは失敗するだろう。
量観店向けの商品が流通する一方で、専門店は独自の品で独自の道を歩みつづけたらよいのだけれど、たいがい経営難となってひっそり店じまいする。
その原因の一つに、量販店向けの商品をつくるメーカーが、昔ながらの食品に悪いイメージを与える手法があると思う。昔の日本の藁の納豆が発泡スチロールの納豆に変わったとき、藁のはバイキンがいるみたいな話を流布したのではないだろうか。発酵スチロールのほうが近代的で賢いイメージがある。
しかし、藁の納豆は常温保存できたが、発泡スチロールの納豆は冷蔵庫で保存しなければならない。ということは、別モノなのだ。外見だけでなく栄養や効果・効能も別モノのはずだろう。それなのに良いところだけは昔ながらと同じようなアピールをする。
詐欺だそんなの。
孟海茶廠は2007年に七子餅茶の包装を竹皮からすべて厚紙に変えたことがあった。そのとき、竹皮は不衛生だとか、密封度が低いとか、虫が沸くとか、そんな言い方をしていたと思う。さすがにそれはまだ中国のお茶好き達には通用しなくて、一部の高級品には竹皮が戻っているが、メーカーのこのようなやり方が、昔のお茶のイメージを壊す。
メーカーが一方的に悪いのではなくて、昔のお茶の良さを理解しようとしなかった消費者にも原因があると思う。ファーストフードが普及する地域は、ファーストフードを食べる人たちが多い地域なのだ。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
今日のこのお茶は、黒くなるまで微生物発酵した茶葉の割合が少なかったので、色は生茶のような感じになった。それでもまろかやで甘い。微生物発酵無しで同じ年数保存された生茶の味とは別モノである。

ひとりごと:
天然の人参。
鶏とキノコで鍋にする。臭豆腐も入れる。
天然の人参
臭豆腐

漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その3.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶+微生物発酵
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
漫撒茶山黄金葉熟餅05年
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶

お茶の感想:
「お茶づくりが作意に目覚めちゃいけない。」
これが今年に学んだことのひとつ。
作意とは、
わかりやすく言えば、
どんなに美人でも整形ならガッカリということ。
お茶づくりには人の手が加わるから作意の入り込む余地がある。
その余地の少ないのが山の農家のつくる「晒青毛茶」。
プーアール茶の原料となる晒青毛茶には有名茶師など介在しない。メーカーや茶商が手を出して別モノに改良できない。製茶技術の良し悪しはほとんど価格の差にならない。
そこがよい。
価格の差の生じるのは、どの茶山のものか、山のどの辺りで採集したのか、古樹茶か台地茶か、古樹茶なら在来の品種か外来の品種か、摘んだときの季節や天候、摘み方、そして市場の需要と供給のバランス。これらはすべて自然条件に価値がついているのであって、人の創作への評価ではない。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
このお茶『漫撒茶山黄金葉熟餅05年』の「晒青毛茶」は、農家の家に袋のまま置いてあるうちに勝手に発酵したのであって、人工的に発酵させたものではない。圧延加工した工房が倉庫の湿度と温度を調整して醸してつくった熟成風味でもない。
漫撒茶山の気候と山の農家の暮らしがつくったのだ。
実に美しい。

ひとりごと:
作意のあるお茶をどう見分けたら良いか?
そこが課題になるが、
ひとつ思い当るのは、作意の無い良いお茶は飽きないということ。
試飲鑑定するみたいに味の微妙な良し悪しがわからなくてもよい。
ものすごくカンタンで、家にいくつかの茶葉が置いてあって、そのうち自然に手が伸びてよく飲んでいるお茶。
たぶんそれには作意が少ない。
と、いうことはだ。
飲む人に暮らしがなければ良いお茶は見つからないことになる。いや、暮らしの中に良いお茶が生まれるということか。


茶想

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