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茶教室・京都

易武春風青餅2011年 その18.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶+炭火

お茶の感想:
ひきつづき火入れの二次加工について。
これすごく大事なことなので、同じようなことを何度も繰り返す。
二次加工の目的は、身体に優しいお茶をつくること。
これが一番大事。
味や香りを変えるのはその副作用みたいなもので、ちょっと湿気た茶葉を復活させることもできるが、今後は正常な生茶も火入れを試すつもり。
昔の人は”身体へのなじみ”を評価していた。
お茶だけでなく、あらゆる食べもの飲みものについて。
例えば、新酒(悪い例にして申し訳ないが)。
秋が深まって、早くも新米でつくった日本酒が出てくるが、こういうのはなるべく避けたい。
”生原酒”とか”しぼりたて”とかは新鮮な成分の刺激が強すぎる。
寒い。胸が焼ける。飲んだ後に身体が重くなる。
この症状に気付いていない人も多いと思う。
あるいは気付いているから、熟成酒がひそかに流行りだしているのかもしれない。
新鮮な味や香りは華やかでウケが良いから流通するけれど、ほんらい評価するべき身体へのなじみを無視している。
”生”な栄養は豊富で、成分表にしたら一見価値があるように見えてしまう。
しかし、どんな栄養があれど、身体になじまなければまったく意味がない。それどころか毒にさえなる。
茶葉
茶葉も新鮮はよくない。
新茶市!はウケがよくて売れる。
味や香りが華やかで説得力がある。
しかし、身体へのなじみの観点で評価したら、このようなお茶は避けるべき。
お茶会などでその時限りならよいけれど、家で毎日飲むお茶にはならない。
熟成が必要なのはプーアール茶の生茶だけではない。
ほんとうはどんな種類の茶葉でも一年以上寝かしたほうが身体にやさしい。
昔は日本の緑茶も一年以上寝かしてから販売していたらしい。だから日本には茶箱がある。家庭で一年分の茶葉を貯蔵しておくにはそこそこのサイズの入れ物が要る。
中国のおじいちゃんおばあちゃんは、まだこのことをやかましく言う人もいるが、若い人には伝わらない。
人づてよりもネット検索やSNSの評価。裏でお金のかかっている情報にチカラがある。
”新しい”ほうが売れる。
茶湯
生茶のプーアール茶の製法は火入れが浅い。
しかし、昔は産地で微生物発酵していたので、長期保存に強かった。
近年(1990年代から)の生茶は、微生物発酵しない緑茶のままで流通している。
詳しくはこちら。
+【通信講座#001 生茶はなぜ黒茶だったのか】
これが問題。
緑茶の生茶は保存が難しい。
微生物のつくった酵素成分は茶葉を劣化から守るが、緑茶の生茶はノーガード。
20年も30年も熟成させて美味しさを保つのは難しい。
中国には熟成茶専門の倉庫業者もいて、いろんな試みをしているが、いまのところこれといった成果は上がっていない。
風味を保つのが難しいだけでなく、身体へのなじみが良くなる”熟した”状態に変化するのも遅い。
例えば、うちのオリジナルの生茶は2010年からあるが、もうすでに熟成13年目になるのに、まだ”寒い”、”辛い”。
夏に飲むならよいが、冬には飲めない。
蒸して火入れする二次加工は、これを解決すると思う。
”寒”を”温”に変えるとまではゆかないが、10年分くらいの熟成変化とおなじ効果を得られている。
葉そこ
この成果は大きい。
生茶は蒸して乾かしてから飲む。
こういう二次加工がこれから普及してゆくはず。
身体になじみのよいお茶は毎日でも飲むようになるし、消費が早いし、リピート購入もするから、長い目で見たらみんなに良い結果となるはず。
1970年代に発明された熟茶が中国の茶葉市場で大ヒット商品になったように、生茶の二次加工がこれから流行る。
たぶん。
新しいお茶をつくることよりも二次加工で身体に優しいお茶をつくる手段を見つけることが今は大事。
この問題を解決できないままに、新しいお茶をどんどんつくっても・・・という感じ。

易武春風青餅2011年 その17.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶+炭火

お茶の感想:
長期熟成中に少し湿気た茶葉を回復させる火入れの”蒸し”。
この話のつづき。
+【易武春風青餅2011年 その16.】
これには可能性を感じている。
まだこれから試行錯誤するが、ここまでの経緯をまとめておく。
と、その前に。
これを忘れちゃいけない。
ということを書いておく。
これまでの結果が良好なのは、茶葉の素質が良いからという可能性。
旬の芯を捉えた茶葉のパワーは格が違う。普通のプロ野球選手と大谷選手くらい違う。この先うまくゆく展開になったとしても、すべての茶葉が同じ手法でうまくゆくとは限らない。
自戒しておく。
蒸し後の乾燥
蒸し後の乾燥
(写真は蒸した後の乾燥)
さて、まず”蒸し”の火入れは過去に試した”焙煎”よりもはるかに良い。
蒸すほうが水の熱伝導率を活かせる。
雲南大葉種の茶葉は、鉄鍋炒りの”殺青”ですら熱の通りが不均一になりがち。
乾いた茶葉に火入れする”焙煎”では、茶葉の中心部まで熱がとどく前に表面を焦がす。
焦げ味が個性になる烏龍茶ならそれでもよいが、生茶の焦げはどこか田舎っぽい。これは品種特性によるから仕方がない。
”蒸し”は焦げにくいので良い。
その効果はお茶の味に現れる。
安定している。
なんと言ってもお茶淹れがカンタンになる。
一煎めからじっくり待って湯の熱を伝えられる。
熱に敏感な新芽・若葉を熱すぎる湯で煮やした嫌な味が出にくい。新芽・若葉はとくに熱に敏感で、お茶淹れの難易度が高い。”蒸し”で火入れをしたことで熱に耐性ができた。
保存中に湿気た味を嫌って、一煎めは洗茶して茶湯を捨てるのが当たり前になってきている現代の生茶のプーアール茶。
湯で洗うことで熱が入って湿気た風味が消えるが、重症な場合は二煎くらい洗茶する。しかしこれは美味しいところも流してしまってもったいない。
この2つの相反した問題を”蒸し”で火入れした茶葉は解決できる。
一煎めから熱々の湯を注いでじっくり待つことができて、味がまとまる。
茶湯
(寒くなったのでダウンを着てお茶を飲んでいる。室内の空気を温めすぎないほうがお茶は美味しい。)

保存熟成はどうなるのか?
保存には”蒸し”の二次加工をしないまま、”生”を保ったほうが良いと考える。
茶葉の繊維にその違いがある。
火入れをするほどに繊維は劣化する。
餅茶を長年保存していると、ちょっとずつ重量が減ってゆく。例えば1年に1gくらい。ミクロの水道管のような繊維の管が劣化すると、水分を保てなくなって、その分軽くなる。常温でもゆっくりと繊維は劣化してゆく。火入れをしたら急速に繊維が衰える。
このお茶『易武春風青餅2011年』は、意図して弱い熱で圧餅加工している。
乾燥の温度は45度以下で2日間。
+【易武春風青餅2011年 その3】
それから3年ほどは湿度も温度も高めの西双版納で保存していたが、その時は湿気た味は感じたことがなかった。
繊維の新しいうちは、水を保つチカラもあるが、吐き出すチカラもある。
最近になって湿気た風味が気になりだしたのは、繊維が衰えたからではないか?
熟成12年めの繊維は、若かった時にくらべて水分が許容できない。
西双版納で保存していたときに湿気たと思っていたが、実は最近かもしれない。京都東山の茶箱の中は乾燥を保っているが、茶葉の繊維は以前ほど水に強くない。

”蒸し”の火入れによってさらに衰えた繊維は、水を保つチカラも吐き出すチカラも弱くなっている。
蒸してからは賞味期限が短くなったと考えたほうがよいだろう。烏龍茶はプーアール茶よりも保存の乾燥に気をつけているように。
海苔もそう。
板海苔は水分10%くらい。小さな袋に詰められたパリパリの焼海苔は水分2%くらい。
例えば、いったん焼海苔にしたものを水分10%に戻したら、おそらく味が急に悪くなる。繊維がその水分を許容できなくなっているから。

とりあえず今はこのように仮定して、ひきつづき熟成と二次加工のテーマを追いかけてみる。

易武春風青餅2011年 その16.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
餅茶
水抜き

お茶の感想:
このつづき。
【易武春風青餅2011年 その15.】
餅茶ごと蒸した後に炭火の遠火で二度乾燥させて、一日晒干して、それから一週間経った。
泡茶の前の”水抜き”をしてみると、通常の餅茶よりもまだ水が多い。
この水の臭いが悪いから水抜きはしっかりしたほうがよい。
水抜きの温度の違いを二通り試した。
高温短時間と低温長時間。
泡茶
茶湯
どちらも前回感じた酸味は消えていた。通常に戻った。
低温長時間のほうがまろやかで美味しい。
意外だったのは、どちらにも若干の焦げ味が残っていること。これは蒸したことによって発生したと考えられる。
今回は圧力鍋で蒸した。餅茶の表面と内側の熱のとおり具合を均一にするには、圧力鍋でなければ無理かと考えたからである。
餅茶を崩した内側の色も均一に黒く変色していたので、その目的は適ったが、新芽・若葉のタンパク質の中には熱に敏感なのがあって、それが焦げ味になる。
葉底
蒸してほぐす目的と熱を入れて味を整える目的をいっしょにしないほうがよいかもしれない。
次回は二度蒸しを試したい。軽く蒸してほぐす蒸しと熱を入れる蒸しを分ける。
保存
崩して茶缶に保存する分は水抜きをしていないまま。
保存中は少しは水分があったほうがよいという考え。

易武春風青餅2011年 その15.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
蒸し

お茶の感想:
先日試した茶葉を蒸して乾かしたのが美味しい。
昔のプーアール茶の本に、沱茶や磚茶のカチカチに固まったのを蒸してほぐして乾かしてから飲むという方法が紹介されていた。
茶葉をほぐす目的で紹介されていたが、もしかしたらお茶の味を整える目的もあったかもしれない。
明代や清代のプーアール茶は流通業者が二次加工するのはよくあることだった。
現在のような交通手段がなく、馬や人が長い日数をかけて運ぶ過程で湿気たりして風味を維持できない。
消費者の手に届くまでに一度や二度はなんらかの二次加工をしたはず。
記録が少ないのは、雲南の南の遠く離れた地域は王朝の支配力がなく、民間が流通を担っていたため。
王朝の税収となる普洱県の通関を通る約束の茶葉が、そこを通らない裏ルートで流出するのも多かった。
例えば、ベトナムやタイに広東系の華人が加工場を持っていた記録がある。ベトナムはフランス植民地時代もあったことから、フランスの東インド会社がその先の海路を運んだかもしれない。本来はイギリスに権利があったはずの茶葉だが、その指定貿易港である広州や福建の港へは運ばれないで流通している。雲南大葉種の産地の規模は大きく、その生産量と流通量の記録がまったく釣り合っていない。
明代から清代にかけては海を渡って西洋にまで運ばれる茶葉が多く、輸送期間は長くなる。
貿易港の広州の港には船に積み込むために加工をする工房がたくさんあって、そこでも二次加工がされていた。
船倉に隙間なくきっちり茶葉を積み込むために、圧延加工をやり直した場合もあっただろう。商社なので、包装紙を自社ブランドに包み変えることもしたはず。産地偽装で雲南の茶葉が福建の茶葉に化けたのもあるはず。
西双版納の丁家老寨の農家のおばあちゃんから聞いた話では、50年ほど前につくっていたお茶は晒青毛茶(一次加工のもの)を竹籠にぎゅうぎゅうに詰めたもので、ダイ族によってラオスへ運ばれた。その先で小売り用に二次加工したはずだが、どんな加工でどんなカタチになってどこへ行ったかは不明。そういうのがたくさんある。

蒸してお茶の味を整える効果を、このお茶で試す。
最初の3年ほど西双版納での保存中に湿気にヤラれて、そのダメージが今も残っている。
【易武春風青餅2011年 その14.】
餅茶のままで蒸してみた。
蒸し方や乾かし方はまだこれから試行錯誤が必要なので、今は公開しない。
蒸し
左: 蒸す前
右: 蒸した後
色が黒っぽく変色している。酸化をはじめいろんな変化が起こっている。
蒸して乾かした直後で、まだ茶葉から水分が抜けていないので若干生臭いニオイが残っているが、これは時間が経てば消える。
蒸して固める圧餅加工後と同じ。
熱風乾燥でパリパリに乾いているように見えても、ミクロの繊維の中に水が溜まっている。圧餅の乾燥後、陰干しで一ヶ月ほどかけて繊維が収縮することでじわじわ水が抜けるものと解釈しているが、近年は湿気るのを嫌って多くのメーカーがも餅茶を一枚一枚密封の袋に詰めて販売するカタチが増えている。まだ水が抜けきっていない状態で密封保存されてダメになるケースも多いと推測している。
とにかく、いつもよりしっかり水抜きをしたほうがよい。
水抜き
茶湯
一煎めからの味が整った。
湿気たことのダメージを感じない。
やや酸っぱい。
これは蒸すときに水を吸いすぎたせい。蒸しの技術に改善の余地がある。
味はどことなく大手メーカーの定番の生茶に共通する風味がある。
メーカーでは高圧の蒸気と熱風乾燥で圧延が仕上げられるが、そのときの強い熱の効果によってお茶の味が安定する。整うとも言える。その反面、活き活きとしたものが失われる。繊細な風味が消える。
山や森や茶樹を選んでつくったお茶にはもったいない気もする。
蒸したときの熱で熟した味に変わった茶葉は、お茶淹れがカンタンになる。
熱に反応しにくくなっているので、容量の大きめの茶壺に熱々の湯を注いでじっくり待つだけで美味しい。
このまま保存熟成するとどうなるのか?、今後の経過を追ってみる。
近年の生茶(微生物発酵していないタイプの生茶)の保存は間違いだらけで、かなり多くの茶葉の在庫が湿気て残念なことになっている。
蒸して乾かすリカバリー手法が有効であれば、業界にとって大きな救いになる。
個人の手元にも湿気てダメになった茶葉がたくさんあるから(売る人も買う人も湿気てダメになっていることを知らないで流通している)、家庭で一枚一枚を蒸して乾かせる専用の機械がほしいよな。
保存熟成の茶葉のメンテナンス方法についてはいずれ通信講座のテーマにしたいが、秘密にしたほうがメリットがあるような気もするし、悩ましい。

易武春風青餅2011年 その14.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
餅形
名

お茶の感想:
2011年の頭春の生茶。
頭春とは早い春の意味。
+【易武春風青餅2011年】
前回の”春風”の記事で、茶葉が湿気たことを報告していた。
小さな茶箱の蓋を、雨の日に閉め忘れたのが原因。
大きな茶箱にはまだ熟成中のが数枚ある。
これも同じように湿気ていないか心配になって、一枚出して確かめる。
茶箱の置き場所が異なる。
また、同じ茶箱に入っている別の生茶は湿気ていないから大丈夫と思うが・・・。
餅面
中
いつもより茶葉多めにした。
蒸らし時間を短めで出す。
一煎め・二煎めにやや湿気た風味があり、味を濁らせた。
三煎めからはキレイになって、その後は美味しかった。
湿気たことによる酸味は感じなかったので、軽症だと思う。
軽く焙煎したらおそらく味の濁りは消える。
保存熟成には”生”な状態のほうが良いと思うので、このまま茶箱に寝かせておく。焙煎はいつでもできるから。
一煎め・二煎めの湿気た味は、西双版納で保存した3年か4年の間に受けたダメージだと思う。
これには賛否両論ある。
西双版納の人はこの風味にマイナスイメージがなくて、むしろ熟成味とはこのようなものだと思っている。
昔の生茶のような微生物発酵はしていない。
黒麹菌由来の甘い風味はない。
しかし、まったく菌類が関わっていないとは言えない。
例えば、住宅の木材を腐食させる”腐朽菌”。
食用では椎茸もこの分類らしい。
この種の菌類が茶葉の湿気た一時期に少しだけ繁殖する可能性は十分にある。
その後に乾燥状態を保って菌類が死滅しても、菌類の残した酵素などの物質がお茶の風味を変える。
”腐朽菌”が”春風”の茶葉に一時的にでも居たかどうかはわからない。湿気た味が腐朽菌のものかどうかもわからない。
ただ、西双版納に保存した期間が長い茶葉と短い茶葉と、この2つの差はあきらか。
他に理由が見つからないので腐朽菌を疑ってみた。
大
四煎めから大きめの茶壺に交換した。
湯量=熱量。
茶葉にしっかり熱を入れたら、もっと甘くなった。
この煎からは新鮮味が戻って活き活きする。
高温の湯で煮えても濁らない。甘味が強くて、ベルギービールの甘濃いのに似ている。
ん?、お茶なのにビールの味?
腐朽菌の仕業なのだろうか?
熟成の味はほんとうに複雑で、謎が尽きない。
葉底
腐朽菌は茶葉の繊維を劣化させるはずだが、葉底はピンピンしていて、その影響はなさそう。
丸くてぽってりした形。茎の部分が短い。頭春の茶葉の証。

易武春風青餅2011年 その13.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 信楽土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
晴れ
餅面

お茶の感想:
雨のち晴れ。
春風。
サンプル用に1枚崩していたのを湿気させてしまった。
前回の記事参照。
+【易武春風青餅2011年 その12.】
回復させるために餅茶ごと天日干しした。
その後の経過を見る。
焦がさないよう低温で20分かけて温めて水を抜く。
茶器
水抜き
茶壷の蓋裏に結露する水を4回も拭きっとった。茶葉に入っている水は多い。
急がないでこのまま茶箱の中で自然に水が抜けるのを待つ。そう言っている間に梅雨の季節が来る。また新しい水が茶葉に入ってくる。これでよい。
湿気た茶葉は一煎めが酸っぱくなりやすいが、どうだろ。
一煎め
今回の一煎めは大丈夫だった。ギリギリな感じ。
これなら大丈夫ということで、三煎めはぐっと濃くして輪郭を立てた。
三煎
濃い・苦い・ほんのり甘い。はじめは重たい味に感じるが、エッジの効いたピリピリする辛味の後味が軽くて爽やか。
熟成で枯れた香りの中に、ほんのり新緑の香りが混ざるのもよい。
春の風を表現できたと思う。
お茶淹れの技術が問われる。
微生物発酵していない近年の生茶は、熟成したから必ず美味しくなるということはない。
昔の微生物発酵していた生茶は、熟成すると誰が飲んでも文句なしの美味しさになったし、お茶の淹れ方はだいたいひとつでよかった。
近年の生茶は難しい。
熟成の魅力を表現するには、もっとお茶淹れの技術を高める必要がある。
葉底
旬の濃い新芽・若葉の茶酔いは夏。
青空に高く昇る積乱雲のような上昇気流。

易武春風青餅2011年 その12.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 信楽土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶+炭火
餅面

お茶の感想:
先週くらいから生茶の調子が悪い。
季節の変わり目で、急に肌寒い日がつづいて、体質が変わって、生茶が体に合わないから味覚が求めていないというだけではなくて、どうやら茶葉の調子が悪い。
夏にあれだけ美味しかった生茶が、あれもこれもぜんぜんパッとしない。
湿気たときの臭いが強くて、苦い。
湿気たのだろうな。
+【易武春風青餅2011年】
・ しっかり水を抜くこと。
・ 注ぐ湯の熱で茶葉が煮えるくらいに熱を通すこと。
・ むしろ苦味を引き立てるつもりで濃いめにすること。
茶壺に対して茶葉の量は少なめにしたほうがよい。
熱量=湯量。ちょっと大きめの茶壺に少量の茶葉を入れて濃いめに抽出する。
茶葉
茶葉
茶葉は2gくらい。茶壺は170ccくらい。
これで3煎で出し切る。
そのつもりで1煎めから時間を掛けて抽出する。
茶湯
思っていたよりもうまくいった。
濃いめにしてもまろやか。苦くしても甘い。
湿気の臭いは霞のかかったスモーキーなスパイスに変わって奥行きのある印象をつくる。
3煎めは炭火の遠火で5分ほどかけて抽出した。
煮出す

南糯山神青餅2011年 その8.

采茶 : 2010年秋茶 2011年春茶
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹
圧餅 : 2011年12月
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 プラスチックバッグ密封・陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火
炭火

お茶の感想:
前回のつづき。
+【南糯山神青餅2011年 その7.】
それから4ヶ月経っている。
この4ヶ月間は2つとも陶器の壺に眠っていた。
南糯山神青餅2011年
左: 真空パック(4ヶ月前まで)
右: 熟成壺
餅面の色の差がなくなった気がする。前回は熟成壺のほうが明らかに黒っぽかった。
西双版納は冬が暖かい。冬を越したこの4ヶ月間の平均気温は22度くらいあった。
多くのお茶ファンはこのほうが熟成に向いていると考えているが、自分はその逆と考えている。四季がはっきりしていて、冬はしっかり寒いほうがよい。
北京の茶友が「北京で寝かせたのはダンボールの中であろうが陶器の壺であろうが、乾燥しすぎて変化しないどころか乾いた口感と喉ごしになって具合が悪い。」と言うのだが、それはマンションの一室で保存しているからだろう。北京の冬は温水管のセントラルヒーティングで建物ごと暖められるから乾燥が激しい。
冬のしっとりした空気に包まれつつも密封保存できるのが理想と考えているので、常温・常湿の保てる場所が欲しいが、北京の中心部に住んでいる一般人にそんな場所は少ない。
西双版納はというと、これもマンションの一室で部屋を密閉しているので乾燥している。冬の湿度は55度くらい。
ここではあまり良い熟成が期待できないと考えて、今後はここでの長期保存はしないつもりでいる。
飲み比べ
飲み比べ
飲み比べ
葉底
左: 4ヶ月前まで真空パック
右: 熟成壺
1-7煎くらいまで飲んだが、その差はほとんどなし。
あえて言うと熟成壺のほうが若干甘い。でも、葉底を見ると熟成壺のほうが茎の部分が大いので、そのせいだったのかもしれない。
前回の記事では煎を進めるほどに差がひらくと書いていたが、それもほとんどなし。あえて言うと熟成壺のほうが若干深みがある。
4ヶ月で差が縮まった結果となった。
生茶にしても熟茶にしても西双版納で長期熟成させるのがどうも思わしい結果にならないので、上海や日本に移しているわけだが、移してから一年も経つと風味が復活したような、精彩を取り戻したような、そんな気がしていたが、錯覚ではないのかもしれない。
このテスト結果にしても、最後の4ヶ月間の保存環境がなにかを上書きしたようなカタチになる。
熟成8年目のおよそ1年半くらいの期間だけ、真空パックしていたか、わずかな通気を許していたかだけの差しかないから、4ヶ月もあれば十分にその差が埋まるということだが、自分はむしろこの4ヶ月で埋まる変化の大きさが気になる。
多少の上書きで味の印象が変わってしまうのなら、完成した熟成味とは言えない。

南糯山神青餅2011年 その7.

采茶 : 2010年秋茶 2011年春茶
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹
圧餅 : 2011年12月
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 プラスチックバッグ密封・陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火

お茶の感想:
お茶の保存熟成の通気の差がどのくらい茶葉に影響するのか。
熟茶について良いサンプルが見つかったので、先日これを試飲した。
+【版納古樹熟餅2010年 その39.】
実はこのとき同時に生茶のサンプルも見つけていた。
真空パックと熟成壺
左: 真空パック
右: 熟成壺
このお茶。
+【南糯山神青餅2011年】
真空パックのは1年か1年半かあるいは2年くらい。忘れていたから期間がはっきりしない。
お茶を遠距離輸送するときに真空パックにしたりジップロックみたいなチャック付きのプラスチックバッグでなるべく空気を抜いておくのは有効で、最近は西双版納の小売店でもこうする店が出てきた。
お土産用のお茶を買って帰る人がスーツケースに入れると、通気のある紙包や紙箱だけでは他のモノの匂いが移りやすいし、湿気やすいし。それに空輸のときは温度差から結露する問題があるが、密封しておくと湿らせない。
熟成壺のは5年くらい通気のあるがまま。
熟成壺
西双版納にはこの1枚しか残していない。
2011年のお茶だが、はじめは6枚一組竹皮包のまま西双版納で保存熟成していた。
しかし、西双版納の環境がどうも生茶の熟成に向いていないような気がしてきて、ほとんどの生茶を移動させた。西双版納に残しているのは熟茶のみ。
真空パックと熟成壺
左: 真空パック
右: 熟成壺
オリジナルの生茶は一日一日采茶して、製茶したのをそのまま順に袋に詰めていって、圧餅のときにこれを混ぜない方針でいる。茶葉の成長や天気の変化で一日一日のお茶の味が変わってゆくので、一枚一枚のお茶の味も微妙に異なることになる。
しかし『南糯山神青餅2011年』は違う。
春茶と秋茶のブレンドを試したから、しっかり混ぜてある。一枚一枚に差が少ない。
なので、今回の試飲には適したサンプルである。
真空パックと熟成壺
一煎め
茶湯の色
左: 真空パック
右: 熟成壺
茶葉の色も茶湯の色も、熟成壺のがちょっとだけ赤く変色している。
1煎めは真空パックのに新鮮な香りが立ってよかったが、味はやや酸っぱい苦い。熟成壺のは甘い。
2煎めから香りの差はなくなって、味の差だけが広がってゆく。
味はバランスで、おそらく熟成壺のほうの甘味が強いから酸味や苦味を感じにくいのだろう。真空パックのは甘味が足りないから酸味や苦味を強く感じる。おそらく酸味や苦味が強くなるような変化があったのではない。
もしくは、熟成壺のほうの酸味や苦味が少なくなったということかもしれない。
いずれにしても、見た目の色の差よりは味の差のほうが大きくて、熟成壺のほうは美味しいと感じて、真空パックのほうは不味いと感じる。微妙な差だけれど、美味しさは微妙なバランスが保たれるもの。
真空パックと熟成壺
葉底
左: 真空パック
右: 熟成壺
しかし、煎を重ねるほどにこの差がはっきりしてくるのはいったいどういうことだろ。
しばらく考えてみる。

真空パックと通気熟成の熟茶。
+【版納古樹熟餅2010年 その39.】
袋を開けて通気を許して、今日で9日目。
実は2日前、通気を許して7日目に味比べしてみた。
密封チャック付きの袋に餅茶
両方とも今はチャック付きのプラスチックバッグで保存。
袋の中の空気はたっぷりある状態。
真空パックと通気熟成
一煎め
一煎め
三煎め
三煎め
左: 通気保存
右: 9日前まで真空パック
前回よりも味の差が縮んでいる気がする。
もう少し日数が経ってから試飲レポートを記事にしたい。
ちなみに、熟茶の場合は煎を重ねるほどに味の差はなくなってゆく。

易武春風青餅2011年 その11.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : マルちゃんの小さめの茶壺
西双版納の仕事場
易武春風青餅2011年

お茶の感想:
茶葉の乱獲がたたってお茶の味が落ちる。
農家は平均年齢が若くて稼ぎたい。
家を買いたい、クルマを買いたい、子供を都市の大学にゆかせたい。
乱獲するとお茶の味が落ちるかもしれないが、いつか市場価格も落ちるかもしれないから、稼げるときに稼げるだけ稼ぐ。
乱獲ではなく、少量の高品質で稼ぐ方法はあるのか?
そんなことを考えて試みたこのお茶。
+【易武春風青餅2011年】
易武春風青餅2011年
農家に迷惑をかけられないので、早春の6日間だけでこれを試した。
早春の、まだ誰も手を付けない小さな新芽・若葉だけを収穫する。
収穫量は3分の1なので、3倍以上の値段をつける。
この6日間だけはうまくいったけれど、その後、農家は乱獲に戻った。
やはり無理だった。
易武春風青餅2011年
葉底

今年の春も天気が荒れる。
西双版納の空
ゴルフ場
良い天候に恵まれる春なんて4年に1度。


茶想

試飲の記録です。
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