プーアール茶.com

易武春風青餅2011年 その11.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : マルちゃんの小さめの茶壺
西双版納の仕事場
易武春風青餅2011年

お茶の感想:
同じ茶樹から茶葉を採取してお茶をつくるにしても、農家が稼ぎたいがゆえにたくさんの収穫を求めると、できたお茶は荒れた味になる。味だけでなく体感や薬効まで荒れる。お茶だけでなく周辺の自然環境、つまり山までも荒れる。
すでに近代化された環境に生きるわれわれよりも西双版納の農家はまだ自然に近いので、とても単純な思考を持つから、今やっと始まった近代的な経済化の波をかぶって、稼ぎたい気持ちがいっぱいで焦るのは仕方がない。家を買いたい、クルマを買いたい、子供を都市の大学にゆかせたい。
産地全体が荒れてゆくのは、どうしても通らないといけない過程なのだ。
その流れに逆らって、例えば、茶樹の健康をいたわって収穫を焦らずに、ゆっくり丁寧にお茶をつくったがゆえに、生産量が3分の1になったとしたら、3倍の価格で茶葉を売ることで農家は人並みに生活してゆける。
茶を売る商売をするわれわれもそうで、3分の1しか売る品がなかったら、3倍の価格で売ってやっと人並みに生計が成り立つ。
ただし、買う人がいたらという前提である。
そんなことを考えた最初のお茶。
+【易武春風青餅2011年】
易武春風青餅2011年
易武春風青餅2011年
農家に迷惑をかけられないので、茶葉がまだ小さくて誰も摘まない早春の6日間だけでつくってある。
この後、ここの茶樹でお茶をつくることがなくなったのは乱獲によって荒れたからである。
(知らない人に自己紹介するときに「西双版納でお茶づくりしています。」と言うと、「農地を持っているのですか?」と必ず聞かれるけれど、山全体が荒れてゆくというのに農地を持つことに意味あるの?と思う。長い説明をするのは面倒なので、「山の中の自然に育っているお茶です。」と答えているが、実際には「春風」のように歴史的に古い農地のお茶もあるのだな。)
3倍の価格が付けられないまま販売終了したが、実はまだ西双版納に7枚1筒を残してある。
(試飲しているのはサンプル用の別の1枚。)
現在なら1枚6万円で販売したいのだが、まだその価値は認めにくいのでお蔵入りを続けている。
ただ、最近になってひとつわかったのは、このお茶の良さをがんばって伝えなくても、同じ産地の易武山のお茶はたくさん流通しているので、お茶ファンにはじわじわと相場観ができつつあるということ。
「この味でこの価格」という相場観。
相場観ができると、ひとくち飲む機会さえあれば「春風」の価値の判断はしやすくなる。どこにどれほどコストがかかったり、生産量が少ないために3倍になったとか2倍で済んだとか、そんな詳細な情報はあまり役に立たなくなるだろう。
易武春風青餅2011年
葉底
価格・味・体感。この3つのバランスに買う人が妥当性を見つけられるかどうかが重要になる。
中国での試飲会はその点で評価がキビシイ。
いつもの茶友と飲んでみて、「1枚6万円は高いな・・・」ということである。
もうちょっと待ってみる。
その間にみんなの相場観が変わるかもしれない。中国の景気の雲行きは怪しいけれど、お茶の価格はそれだけで動いているのではない。他にもっと良いのが見つかるかどうかという相対的な評価もある。
近頃値上げしたいくつかのお茶は(「値上げが多いですね」と常連のお客様にも言われるけれど、)わからない人向けの詐欺的なものではなくて、むしろ市場でこなれた価格であると見てほしい。

ひとりごと:
今年の春も天気が荒れる。
西双版納の空
ゴルフ場
良い天候に恵まれる春なんて6年に1度か2度あったらよいほうなのだ。
つくり手としての相場観もできつつある。

南糯山神青餅2011年 その6.

製造 : 2011年12月
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹2010年秋茶2011年春茶
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海 密封
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 宜興紫砂茶壺
南糯山神青餅2011年

お茶の感想:
プーアール茶の生茶は種類がたくさんあり、価格差があるので、その理由が気になるだろうけれど、ぜんぜん気にしないで自分の好きなお茶を見つけてほしい。
今日のお茶。
+【南糯山神青餅2011年】
当店のオリジナルでは比較的安い生茶。
この3年間ほとんど値上げしていない。
茶葉の市場価格の高騰や物価の上昇、さらに為替の変動をあわせてみたら、実質価値は半額以下になる。
南糯山のお茶の評価を個人的に下げたのだ。客観的評価ではない。2014年の南糯山のお茶の市場価格は2011年から2.5倍にまで上がっている。
うまく説明できないけれど、お茶の味に天然から人工へと傾いてゆく品種的な性質の変化が現れていると思う。
その味は濃い。残る。(消えが悪い)
自然栽培な上質の条件、古い地層・高い海抜・水質の良さ・無農薬・無肥料・農地の少ない手入れ・茶摘みの回数の制限・采茶の時期・・・・・・。そういうふうに説明できる範囲では、このお茶はすべて合格点。
そして美味しい。
上海のお客様も好む人が多い。
南糯山神青餅2011年
南糯山神青餅2011年
南糯山神青餅2011年
南糯山神青餅2011年
南糯山神青餅2011年
でも味は濃い。残る。
消えの早いのが上等。
最近このブログでもよく言う味の傾向は、周囲の広範囲にわたる環境が影響する。どうやらそうらしいというのが、自分の中ではっきりしてきている。
南糯山は単独の山頂があり連なる峰が少ない。周囲をダイ族の水田地帯の盆地が囲む。その盆地が今、水田を失いつつある。サトウキビ、バナナ、天然ゴム、漢方薬材のハウス栽培、別荘地の開発。
盆地が乾燥して、その乾いた風が南糯山の上へ届く。
南糯山は今でも緑いっぱい。見た目にはなにの問題もない。けれど、数キロから十数キロ離れた盆地の乾いた風はお茶の味に影響する。お茶の味は人の身体に影響する。
機会があれば南糯山のお茶を、西双版納以外の地域のお茶と比べてみてほしい。他の地域と比べたらそれでもまだ消えの早い清涼感のある味が確かめられると思う。
濃い味。残る味。これは地域全体における環境変化を表わす。

ひとりごと:
あくまで個人的な見解である。けれど、肌で感じている確かなこと。
言葉で説明できることなどほんの一部なのだ。
ひとりひとりが、言葉に洗脳されずにお茶の味を自分の身体で感じて理解してゆくのがよいと思う。

易武春風青餅2011年 その10.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年
易武春風青餅2011年
易武春風青餅2011年

お茶の感想:
春風をさらに値上げさせていただいて、
1,000円の崩したサンプルの出品を止めた。
日本円の価格は人民元のレートに合わせたから高く感じるだろう。
【易武春風青餅2011年】
残り14枚。
今後このお茶は自分がお客様に直接お茶を淹れて、試飲して頂いて、しっかり説明する。そういう機会をつくりたい。でないと申し訳ない。お客様にもお茶にも。説明する価値のあるお茶。そのコストもお茶の価格に含めたほうがよいと思う。
山の環境。茶樹の健康。栽培方法の利点と欠点。品種的な特性。茶摘みのタイミングと製茶の関係。などなど、すべてにおいて追い風の吹いたお茶だった。しかし、追い風が吹いていたと判ったのは、その後の4年間をほとんど逆風の中で過ごしてからのことだ。プーアール茶は保存熟成するので、現物が手元に何年も残る。試飲を繰り返して、お茶づくりの過程を後から何度も反芻して、理解を深めてゆくことができる。
易武春風青餅2011年
上海でいちばん難しいお客様の楊姐に1枚お求めて頂いた。最初の試飲からお求め頂くまで、ほぼ約1ヶ月、質問と回答のラリーが続いた。楊姐は慎重派だから、最初の1枚を自宅で何度か試飲したのだろう。その3日後にもう1枚追加でお求めいただいた。
そんな感じが理想。
ぜんぶのお茶と全員のお客様にそうしたいくらいだ。
誤解のないように補足すると、このお茶は完璧だから良いのではない。欠点もある。技術不足もある。そこがクリアーに解っているということ。そして解釈の角度を変えることで見える輝きを見つけているということ。
そこが良いのだな。
今になっていろいろ解ったとしても、次回はもっと上手につくれるか?というとそうはゆかない。気候とか、環境とか、市況とか、人の問題とか・・・。そのことを知るのに4年かかっているように、お客様の理解にもまた時間がかかる。時間をかけることに価値があると思っていただけたら、このお茶はまだ高くないのだ。
この文章を書きながらふと気付いたのだけれど、大漆樹のおじいは春風が最後だった。
易武春風青餅2011年
時計の時間は繰り返しだけれど、実際は繰り返さないで遠くへ流れるだけなのだ。

ひとりごと:
上海忙しすぎ。
すごいスピードでお茶が売れて、お金が流れ出てゆく。
いろんな人と交流してお茶を飲んで会食して、睡眠時間を削ってでも働いて消費して。
若い頃はこんなのに充実感があったけれど、今はそれはない。
お金と時間の追いかけっこに興奮しているだけ。
なにの創造もできない。
なにの思想もない。
サルと同じ。
冷たくそう見ている。
参加しないでおきたいけれど、ひとりだけそうさせてもらえないのが経済社会。
やはり付き合うしかないのだ。
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。
彼らは良いお茶を知っている。たぶんそれは世界でもトップレベルだ。
例えば、日本酒が日本人に認められないままいきなりフランス人に認められたら、それはたぶんちょっとちがうものなのだ。
上海のお客様にビシッと鍛えられよう。

易武春風青餅2011年 その9.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶

お茶の感想:
茶気について引き続き考えてみる。
漢方の「上薬」・「中薬」・「下薬」。
上薬は、毎日の健康維持。
中薬は、体力増進。
下薬は、治療。
上のランクほど病院や製薬会社の経済に協力的ではない・・・。
お茶は毎日飲めるから上ランクにあたるけれど、「茶気」のチカラに注目すると、毒にもなりクスリにもなるから、中ランクのクスリということだろうか。
強いクスリほど、強い毒にもなる。
飲む人がその性質を知った上でうまく利用すればよいのだ。
だから茶気を排除するようなお茶づくりをしなかったのだ。
面白いことに、
茶気は香気と共にある。
茶気の強いお茶ほど薫り高い。もしかしたら茶気と香気は、二重人格なのかもしれない。
ちなみに、昔は白檀や沈香などの香木を売る店は、香木を削った煎じ薬を売っていたらしい。(薬事法によりできなくなった。)香りの成分はなんらかの薬効を持つことが多いのだろう。「良薬口に苦し」と言うけれど、「良薬鼻に芳ばし」もあるということか。
お茶の高級品には、味の嗜好に隠れたクスリの魅力があったのかもしれない。
お茶は生活の中で食べたり飲んだりの習慣のひとつとして利用する。なんらかの成分を特定して抽出してそれだけを摂取するものではない。なので、お茶を飲んだ結果が大事になる。他人ではなく自分が大事になる。
茶葉それぞれの個性に注目して、個性ある自分の身体で理解する。
このアプローチを重視したい。
例えば、西双版納のお茶を見ていると、山によっても茶樹によっても製茶によってもそれぞれ異なる結果が得られるような気がする。昨年は、山の生態環境の良さ、カンタンに言えば森の深さとお茶の味との関係に注目したが、これもまた味や香りだけではなく、身体に何らかの影響があるのかもしれない。
いや、自分はあると感じたけれど、みなさんはどう感じましたか?
今日はこのお茶。
+【易武春風青餅2011年】
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
「採辧春尖」
「加重萌芽」
「精工燻揉」
春一番の茶気を求めた伝統技法。
「春風」と名付けたのは、春の風が印象的だったから。
春の山の風にあたると、気持ちが爽やかに晴れ、身体は喜びに沸く。
東洋医学では風ですらクスリになる。
易武春風青餅2011年プーアル茶

ひとりごと:
西双版納の山には春一番の風が吹きはじめている。

易武春風青餅2011年 その8.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶

お茶の感想:
今日はこのお茶と、
+【易武春風青餅2011年】
このお茶と飲み比べ。
+【祈享易武青餅2014年】
「春風」の一枚は西双版納の紫砂の壷で保存している。
熟成壺
宜興窯でつくられているが、安いものだから、土は伝統のものではなく外地からのとブレンドだろう。それでも西双版納のダイ族の壷に比べるとずっと良い具合に熟成がすすむ。
熟成壺にも土の相性というのがあるのだ。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
「春風」と「祈享」の違いは、まず山の環境。
「易武山」と「漫撒山」。
現在の行政区分ではすべて易武山という地名でくくられるが、清代までは2つの地区(茶山)に分かれていた。「春風」と「祈享」の茶樹のあるところは直線距離にして30キロほどしか離れていないと思うが、漫撒山のほうが森が深く水気が多く、気温が安定している。易武山の昔はどうか知らないが、この数年は農地開発(茶のできない山の低いところのバナナ園や天然ゴム園)がすすんで、森林を多く失い、山の上のほうの空気までもが乾燥してきて、日中の気温の変化が大きくなっている。と思う。体感しているレベルであり、計測したわけではないが、間違ってもいないだろう。
ただ、茶葉のカタチや色に見る特徴も「易武山」と「漫撒山」にはそれぞれの傾向があるので、気候の違いは昔からあって、それが品種的個性の違いにつながっているのかもしれない。
茶樹の栽培も異なる。
「春風」は古茶樹であっても、茶摘みの手がとどく高さに剪定されている。このために枝分かれが増えて、その分葉数が増えて、一枚一枚が小さく育つ。
1970年代から1980年代にかけての孟海茶廠の印級の「小葉青餅」のグループは、この剪定タイプの古茶樹か、それとも倚邦の小葉種の古茶樹か、意見の別れるところだが、風味の特徴は易武山の色が濃い。なので剪定タイプであると今のところは推測している。
+【七子紅帯青餅】
+【倚邦古樹青餅2014年】
茶樹の見た目の不自然さから(人工的であることから)、剪定タイプの栽培に否定的な見方があるが、それは違うと思う。その特徴を活かしたお茶づくりができるかどうかなのだ。
「祈享」は易武山の奥地の漫撒山の古茶樹。
この地位に伝統的な「熟した枝」づくり(熟した根を育てる技術でもある)のために老葉を落とす特殊な仕立てにより、枝を伸ばしたままにして、分岐が少ないので、一枚一枚の茶葉が大きく育つ。
茶摘みのタイミングの違いもある。
「春風」は早春の6日間のみで摘み取った。
「祈享」はたしか30日はかかっている。
圧餅の違いもある。
「春風」は「祈享」に比べるとしっかり固めている。標準的な圧延なのだが、そのためにしっかり蒸すことになる。
「祈享」はその変化を嫌って蒸し時間を短くしている。
圧延後の乾燥は両者とも低めの温度設定でゆっくり温風乾燥。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
洗茶なしに1煎めは、まるで年代違いの同じお茶かと思えるほどだった。透明感があり、茶気の強い語り口がよく似ている。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
茶湯の色には違いがあるが、味の差は見た目ほどにない。
2煎め3煎めも香り以外の差は少ない。
香りは、「春風」は薬味。「祈享」は緑茶っぽい新鮮な風味。しかし4煎を超える頃から香りも接近してくる。
3年前の記憶をたどると「春風」も緑茶っぽさがあったが、「祈享」ほど鮮明ではなかったと思う。また、杯の底に残る香りは、「春風」は田舎っぽい太陽の香りがあり、「祈享」はそこが少なく洗練されている。
圧餅の蒸し具合の違いが現れているのだろう。
「春風」以降、当店のオリジナルの餅茶の圧餅は晒干(天日干し)にしているが、そうすると余計に田舎っぽい香りが出てくる。しかし、そのほうが良いと思っている。将来に(いつになるかはまだわからないが)、餅茶を微生物発酵させて黒茶にしたいと考えている。そのためには、圧延の工程で蒸して水分をたくさん持った餅茶を、天日干しでゆっくり乾燥させるのが有効だと思っている。
なぜかという話は長くなるので、また別の機会にする。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
味については、ほんとうによく似ている。
煎を重ねるほどに接近する。
山が違い、栽培が違い、品種的な個性もまた違うはずなのに、なぜだろう?と思うくらい似ている。
なので、以下はほんの少しの差における感想となる。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
「春風」は軽い。「祈享」は重い。
舌触りの違いだろうか。
「春風」は、舌の当たりがやわらかく、まんべんなく全体を包み込む。水質の密度が細かく滑らかで、豊潤ながら消えが早く、喉へスッと落ちるスピードが早い。
それで軽い印象となるのだろう。
「祈享」は、舌の先にウェイトがあり、舌の奥にやや淡白である。「春風」に比べると水質の密度が舌の奥でやや粗く感じる。喉へスッと落ちるスピードはワンテンポ遅れる。
それで重い印象となるのだろう。
殺青の技術は接近しているらしい。
その差が現れていない。どちらも易武山伝統の水平鍋。高温炒り。鍋の中心に蒸気が集まってしっかり茶葉に熱が通る。このため炒る時間は比較的短い。
甘くて爽やかな易武山の味はここにも秘密があると思う。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
「春風」と名付けたのは、易武山の早春の風が山を縫ってどこまでもフワフワたなびくような感じがとても気持ちよかったからだが、お茶の余韻も同じように長くたなびく。その余韻は「祈享」も同じ。
ところで、
「春風」のほうが水質が良いと感じるのはなぜか?
上に説明したように、茶樹の育ちは漫撒山の「祈享」のほうが良いような気がする。
やはり、早春の6日間という純度の高い旬が有効なのだろうか?
茶樹の育ちの差を補って、茶葉の成分を充実させるのだろうか?
あるいは、もうひとつ思い当たりがある。
「春風」は一日一日の仕上がりの差を許して、均質化させるために混ぜる作業をしていない。
「祈享」はよく混ぜてある。
古茶樹は実生(種子から)で育つ。このため一本一本が、人間の顔がひとりひとり異なるように個性がある。単樹のお茶づくりが有効なのはそのためである。
人間の顔に地域的個性があるように、茶山ごとに品種的個性が少なからずある。「易武山」と「漫撒山」にはそれぞれに風味の傾向がある。
また、地域の中にもいろんな顔がある。
「春風」の茶摘みをしたときには気付かなかったが、同じ易武山のある農地にも、早生、中生、晩生、と品種的個性により一番摘みできる新芽の出てくるタイミングがやや異なるのだ。
そうすると、「春風」の6日間の茶摘みは、バラエティーが少なく、単樹とはいわないまでも個性が単一化している可能性がある。
それに対して「祈享」は、3月のはじめ、3月の終わり、あっちの斜面、こっちの斜面、とバラエティーが多くなり、それをしっかり混ぜ合わせるので、一枚の餅茶にいろんな個性が集約されている可能性がある。
均質化のために毛茶を混ぜる工程は、一枚一枚のムラをなくしたり、一枚の中で崩すところによって味が異なるのを防ぐことができる。しかし、ひとくちのお茶の味の中身までも均質化することはできない・・・ということか。混成のザワつきが、水質となって現れるのかもしれない。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
もうひとつ気になることがある。
この二つはどちらかというと易武山寄りのお茶の味だった。
やさしい甘みと軽快な爽やかさ。舌にピリピリ感じるほどの刺激。小気味良いキレの良さが魅力である。
そうすると「祈享」は、もっとボンヤリした魅力のある漫撒山の個性を活かしきれていないのかもしれない。
逆に、易武山のお茶はその個性を活かして、烏龍茶づくりのような方向へ、もっと栽培や製茶の精度を高めてもよいかもしれない。

ひとりごと:
「春風」と「祈享」の飲み比べは、あまりに繊細なところを見ることになるので、餅茶を崩した場所とか、ちょっとしたことが揺れにつながり、一度に正確な試飲にはならないと思う。
また別の機会に飲み比べたい。
いつも意見が別れる北京や広州の茶友にも参加してもらおうと思う。

大益五子登科小餅11年 その2.

製造 : 2011年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 小餅茶150g
保存 : 昆明ー上海 紙包み
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
茶器 : 小さめの蓋碗
大益五子登科小餅11年プーアル茶
大益五子登科小餅11年プーアル茶

お茶の感想:
熟茶づくりは原料となる茶葉の良し悪しに加えて、渥堆発酵(微生物発酵)の仕上がりがお茶の質に大きく関わるから、実績のある大手メーカーが強い。
2004年の雲南省のお茶づくりおよび販売が完全自由化された後、西双版納州孟海県の小さな町には新しいメーカーが乱立して、熟茶づくりを始めた茶廠も多い。比較的資本のある中堅メーカーの新しい設備はキレイだが、設備がキレイというのと、渥堆発酵がキレイにゆくというのと、ちょっと違うのだな。
自由化からすでに10年経ったけれど、1970年代から国営メーカーとして熟茶をつくり続けてきた孟海茶廠や、その下請けで1990年代から熟茶をつくっていた中堅メーカーに追いつくのは難しい。
渥堆発酵で働く微生物は古い倉庫で熟練職人へと進化しており、その条件下でないとうまく働かないから、人間の職人を大手から引き抜こうが、より上質な茶葉を使用しようが、新しい倉庫での微生物の活動は古い倉庫に追いつかない。
このお茶を飲んでそんなことを思う。
『大益五子登科小餅11年』(以前に卸売部に出品していた)
キレイに発酵している。完全発酵という言葉が思い浮かぶ。
大益五子登科小餅11年プーアル茶
「来自世界火山生態磁化帯・孟海古生茶園」
大益五子登科小餅11年プーアル茶
「大益制作技術入選国家重非物質文化遺産名録」
大きなことを書くのがいかにも中国の元国営企業。
孟海茶廠の熟茶は現在も良いと聞いているが、流通する価格から推測するに原料となる茶葉はいまひとつ。同じく熟茶づくりでは老舗の「老同志」ブランドの海湾茶廠が高価格な熟茶を2014年に出品していて、ちょっと気になる。
上海で試飲してみようかと思う。
大益五子登科小餅11年プーアル茶
大益五子登科小餅11年プーアル茶
大益五子登科小餅11年プーアル茶
茶葉の変色は均質。
コーヒーのような香りに干し柿のような熟れた果実風味が混じったのは、渥堆発酵の発熱を制御しきれず60度以上の高温で蒸れたためだと思う。茶葉の堆積は多いほど温度が保ちやすいが、多過ぎると熱が逃し難くなる。大量生産しすぎじゃないのかと思う。

ひとりごと:
大手メーカーの熟茶製品に明らかな差をつけられる見込みがなければ、わざわざオリジナルで熟茶をつくるのは馬鹿らしいと思う。コマーシャル食品にはぜったい負けたくない。

易武春風青餅2011年 その7.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : 京都御所周辺の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
袋に小分けしていた正体不明の茶葉。
残り一煎分ある。
どのお茶だったかな?
飲めばわかるだろう、ということで淹れてみた。
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
シュワシュワと炭酸水の刺激のように消えの早い辛味。
ある種の漢方のような軽快な薬味。
いっきに上昇して目の覚めるような茶気。
やわらかく包み込む甘い印象。
心臓の鼓動が少し早くなり、荒くなった鼻息を深呼吸で整える。5つ数えたら、舌にかすかなピリピリだけを残して、姿のある香りや味はもうどこかへ消えている。
このお茶にしかない表現。
+【易武春風青餅2011年】
プーアール茶の表現は、
どの山のどんな環境のどんな茶樹をどのタイミングで摘むかで決まる。人の手の企てをできるだけ減らして、自然の美やチカラを借りるのが上等。
薫らせようとか、味わいを出そうとか、人の気を引くための行為は美しくない。自然に対する謙虚な姿勢を忘れている。己に対する理解が足りない。
そういう美学が昔のお茶づくりにはあり、それを評価できる人が居たのだ。
久々にこのお茶を飲む機会があって、やはりそうだと思った。
+【七子紅帯青餅】
プーアール茶インペリアル
プーアール茶インペリアル
プーアール茶インペリアル。
40年近い熟成の歳月を経てもなお溌溂とした春の表現。水質はキレイで、透明で、淡々としていて、飲む人がそれを知ろうが知るまいがお構いなしの振る舞い。だからこそインペリアルなのだと思う。
最近、当店のお茶を他人に淹れてもらう機会が多くて、よく言う言葉がある。
「茶葉のチカラを信じて。」
実は自分も心の中でつぶやく。
茶葉のチカラを信じて淹れたお茶は、飲む人のチカラを信じるお茶でもある。
道教の相対性理論。

ひとりごと:
一扇磨の写真ページをアップした。
+【一扇磨古茶樹 写真】
森の古茶樹
森の中に茶樹が隠れている写真がいくつもあるけれど、どれが茶樹だがわかるだろうか?このような日陰の茶樹は小さくて、幹が細くて樹皮の質感がキメ細かくて白い。そして樹齢が数百年もあるのが多い。
ま、それを知られようが知られまいが、古茶樹はお構いなしなのだけれど。

南糯山神青餅2011年 その6.

製造 : 2011年12月
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹2010年秋茶2011年春茶
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都熟成壺(試作品)
茶水 : 京都御所周辺の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗
熟成壺
熟成壺
熟成壺

お茶の感想:
熟成壺の試飲会。
壺に入っていた5種のお茶。
『易武古樹青餅2010年』
『易武古樹青餅2010年・試作品』
『紫・むらさき秋天紅茶2011年』
『南糯山神青餅2011年』
『漫撒古樹青餅2013年・黄印』
いずれもこの壺の効果で薫り高くなっていた。
お客様には手元にあるのを持って来て頂いて、壺のお茶と飲み比べをした。
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
とくに印象に残ったのはこのお茶。
+【南糯山神青餅2011年】
美味しさでいうと、
熟してますます甘くなる易武山および漫撒山のお茶が強いが、苦い印象の南糯山のお茶も壺で香りが引き出されるとまた別の顔を出す。
田舎っぽさが抜けて洗練された都市の香り。

ひとりごと:
次の日、窯元へ。
細かい詰めをしてきた。
かれこれ2年かかっている。
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
南糯山神青餅2011年プーアル茶
出品は年明けかな・・・。
土器・磁器・陶器・Т錣硲桓錣吠類されると、この壺はТ錣砲覆襦
(陶器だと思っていたが・・・・)
Т錣魯泪哀優轡Ε狹の金属の含有率が高くなる。遠赤外線効果があって、そのため茶葉は焙煎されたように薫り高くなるらしい。

易武春風青餅2011年 その6.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 竹皮+紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武古樹青餅2010年と易武春風青餅2011年
易武古樹青餅2010年と易武春風青餅2011年
左: 易武春風青餅2011年(このお茶)
右: 易武古樹青餅2010年

お茶の感想:
なぜ春先の茶葉にこだわるのか?
なぜ火入が弱めのほうがよいのか?
なぜ揉捻がしっかりしたほうがよいのか?
なぜ軽発酵していたほうが魅力的に熟成するのか?
初心者のお茶ファンの素朴な質問に答えるためのこの飲み比べ。
易武古樹青餅2010年と易武春風青餅2011年
易武古樹青餅2010年と易武春風青餅2011年
易武古樹青餅2010年と易武春風青餅2011年
左: 易武春風青餅2011年(このお茶)
右: 易武古樹青餅2010年
ところが、初心者すぎて『易武古樹青餅2010年』のほうが甘くてよいらしい。
『易武春風青餅2011年」は辛味があって、香りもたしかに特別な感じだけれど、毎日ゴクゴク飲むには・・・。
そうなのだ。
なぜ昔は長期熟成した老茶がスタンダードだったのか?
なぜ老茶は体にやさしいのか?
なぜ生活のお茶「黒茶」は秋の茶葉や成長しきった老葉を使ったのか?
初心者のお茶ファンの素朴な質問に答えられたと思う。

ひとりごと:
孟海の老師を訪ねてきた。
西双版納孟海県
西双版納孟海県
西双版納孟海県
西双版納孟海県
西双版納孟海県
西双版納孟海県
西双版納孟海県
生茶の新しいのを飲み過ぎて気分が悪くなりかけたら、熟茶をちょっと飲むと楽になるような気がする。

易武春風青餅2011年 その5.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 竹皮+紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年プーアル茶

お茶の感想:
味にもいろんな魅力があって、
美味しいとひとことで言ってもいろいろあって、そのいろいろを上手に味わえるようになるのが面白いところでもあり難しいところでもあると、今日このお茶を飲んでつくづく思った。
【易武春風青餅2011年プーアル茶】
早春の6日間だけの新芽・若葉でつくったこのお茶は、まるでクスリのような強い成分を持つ。お茶の味の旨味・甘味、あるいは香りとなる成分についてはまだ育っていないうちに摘み取るせいか、あっさりしている。
茶器をしっかり温めて熱湯で淹れて早春の辛味を利かせる。小さな杯で3杯か4杯やると、心臓が鼓動を打つたびに体中に熱いものがしみわたり、ジンジンと上気して背中に汗がにじんでくる。
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
このようなお茶を日常の水分補給にガブガブ飲んだりしたら、酔ってしまうし、高くついて割に合わない。しかし、お茶好きが集まってじっくり味わいたいときや、ひとりで気分転換したい時には向いている。
1回3gもあれば十分で、餅茶一枚385gは128回分になる計算だから、現時点の39,000円は高すぎるとは言えないだろう。
お茶菓子もいらない。口を付けるところから後味の余韻まで、静かでゆったりした時間を味わうのだから、それを分断させる甘い菓子が邪魔になる。
味比べをするお茶もいらない。清淡な味のこのお茶と比べたら、もっと味の濃いお茶の喧騒がすべてをかき消してしまって、静かに楽しめなくなる。
過去のお客様とのメールのやりとりを見ていたら、1950年代以前の易武山の銘茶には仁丹のような薬味がありませんか?というような話がでてきた。それはまさに早春の辛味のことだろう。やはり昔にもこの魅力を味わうための高級茶があったのだと思う。
易武春風青餅2011年プーアル茶

ひとりごと:
次回このクラスの高級茶づくりを行うとすれば、準備に時間をかけることになる。茶摘み・殺青・揉捻を自分でしなければこれ以上良いのができないと思うから独自の製茶場の建設が必要だし、季節になったら繰り返しつくって体で覚えなければならないし、それを求めるお客様が一定人数いなければ継続はできないし・・・という具合だから来年は無理としても、何年かかけたら出来そうではある。
丁家老寨の空き地
空いている土地は丁家老寨にいくらでもある。


茶想

試飲の記録です。

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