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版納古樹熟餅2010年 その39.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 通気・密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火
竹皮の籠
内側布袋
宮廷プーアル熟散茶03年

お茶の感想:
熟茶は微生物発酵でつくられた大量の酵素による成分変化がすすむから、長期保存の味の変化は生茶よりも大きく現れるはず。
その変化は保存の環境に影響されるから、同じ茶葉でも2箇所の異なる環境に置けば2つの味になる。
もちろん常温保存だから、日本でも上海でも西双版納でも季節や天気の変化の影響は多少なりとも受ける。それぞれの環境でそれぞれの味になれば良いと思うので、そこは気にしない。
それよりも、今回注目するのは保存の入れ物をどうするか、通気をどのくらいに制限するかという問題。
遮光して保温性があって(温度をなるべく安定させて)乾燥を保つのは基本中の基本だが、ある程度の通気があったほうが良いのを経験していて、さらに、熟茶はしっとりした感じの空気が良いという例もいくつか見ている。というか味わっている。
”ある程度”の通気とはどの程度なのか?
曖昧だよな。
曖昧でも大丈夫。むしろ曖昧な解釈をしたほうが面白いというのが今日の話題。
上の写真の竹で編んだ籠に入っているのは、『宮廷プーアル熟散茶03年』(卸売部)の西双版納熟成。
最近密封保存をやめて通気の良いカタチにした。
密封保存は、食品用の大きなプラスチックバッグに7キロの散茶を入れてダンボール箱に入れて封をしていた。年に一度ほど開けて少しだけ茶葉を取って試飲しているので、完全な密封とは言えない。
そもそも、茶葉なんてミクロの繊維の毛細血管に空気も水分も持っているのだから、完全密封なんてできっこない。それを前提に話をする。
例えば、お菓子の缶に保存したのを紹介したことがあるが、年に一度でも開封したときに空気が入れ替わるだけで十分な通気を与えると考えている。酵素反応による茶葉の成分変化にとっては。
竹皮包
紙包+竹皮包+ダンボール箱、あるいは、紙包+麻布袋包+ダンボール箱、これがこのお茶の西双版納熟成。
+【版納古樹熟餅2010年】
茶葉倉庫にしているアパートの一室は窓を締めて遮光して、ドアの隙間を専用のテープで埋めて、湿度50%から65%くらいに保つようにしている。ダンボール箱ごと部屋という入れ物に入っている状態。
中国でプーアール茶を売る店にゆくと、店の棚に紙包みのままの餅茶や磚茶や沱茶が並べてあるけれど、これは通気がありすぎてダメ。外の匂いを吸ってしまうし、温度や湿度の大きな変化に晒される。間接的にも日光や照明が当たって表面を焦がしている。買うときは倉庫のダンボール箱の中にあるのを出してもらうとよいだろう。
真空パック
3日前に倉庫を整理していたら、食品用真空パック機でパックしたのが一枚見つかった。
茶葉の隙間や繊維の管の空気があるので真空とは言えないが、袋の内側の空気が少ないと空輸のときの温度や気圧の変化の影響を受けにくいから良いと考えている。到着してからなるべく早めにパックを開封して通気のある入れ物に移すのだが、この一枚はパックしたまま郵送するのを忘れて放置していた。たぶん1年から1年半ほど。はっきり覚えていない・・・。
版納古樹熟餅2010年
開封して、外の空気を吸わせて今日が3日目。
紙包+麻布袋包+ダンボール箱で通気を許していたのと比べる。
実は、開封した初日に飲み比べたときは味の差がはっきりしていたが、3日目の今日はそれほどでもなくなったので、慌てて記録する。
この違いが、”ある程度”の通気を”どの程度”と考えるかの参考になると思う。
同じ茶葉、同じ水、同じ茶器、同じ保存場所。なので通気の条件の違いが浮き彫りになるはず。茶葉の重量はきっちり計って4.2グラムずつ。餅茶の崩す部分もほぼ同じところ(円盤型の外側や内側で茶葉のコンディションがやや違うから)にした。
一煎め
二煎め
4煎め
6煎め
左: 通気
右: 密封
左: 葉底から立つ香りが強い。
右: 葉底から立つ香りが弱い。
左: ビールのキメ細かい泡のような軽やかな舌触り。
右: 泡のないビールのようなちょっと重たい舌触り。
左: 香りが麹っぽい(ビオフェルミンっぽい)。
右: 香りが花っぽい。後にお香っぽく変化。
カンタンに言えば通気のお茶は甘くてとろんとしていて、密封のお茶は甘くない分やや酸っぱくてサラッとしている。
煎を重ねるほどにこの差がなくなっていって、5煎めにもなるとかなり集中して味見しないとわからなくなった。
密封を解いた茶葉がたった3日間で微生物が増殖するような温度・湿気の高いところに置いていないから、やはりこの2つの差が縮んだのは酵素反応だろうなと思う。
密封を解いた茶葉が外の新しい空気に触れて、なんらかの反応をすすめたのだ。
葉底
左: 通気
右: 密封
葉底に差は無い。
よくある勘違いで、茶葉に微生物が生きていると解釈していて、それなら密封して放置すると窒息して、一方は生きた微生物が茶葉の分解・消化吸収をすすめて、この2つの差は1年の間にもっと大きくなるはずだ。

ひとりごと:
ただ、そうとも言い切れない結果がある。
重量の違い
西双版納の通気を許した熟成の一枚。
2010年に圧餅後1ヶ月ほどして計ったときには396g。
2018年の本日計ったら372.5g。
24gほど減っている。
熟成の変化で繊維質が変わって水分を含むチカラがなくなって軽くなるのだが、24gの差は大きすぎるだろ。
やっぱり喰われているのかな・・・。

易武古樹青餅2010年 その37.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・スペイン土の茶碗・鉄瓶+炭火
茶壺
パック熟成

お茶の感想:
大きめの茶壺で3煎くらいで出し切る淹れ方を生茶で試す。
+【易武古樹青餅2010年】
手軽な密封パックで熟成させているこのお茶。
室温の安定した棚にしまっているが、パックに保温力はないので布袋に入れている。ま、気持ち、おまじない。
試作バージョンで1キロサイズの餅にしていたやつ。
餅茶を崩して
茶葉3グラム
3gあるかないか。
10年熟成モノの生茶となると、蓋碗でサッと湯を切る淹れ方では1煎めのパンチ力に欠ける。4煎から伸びない。茶壺を使うのが良いが、普段は小さめの茶壺で煎を繰り返している。8煎くらいはいく。その煎ごとの変化も面白いけれど、今回は3煎で出し切る。
1煎めは茶壺に注ぐ湯の量を半分くらいにしてサッと出す。蒸らし時間20秒くらい。一番だしの感じ。
乾いた茶葉にいきなり熱い湯を浴びせると繊維が壊れて味が濁るから、湯を注いで茶壺を温めて、いったん湯を切ってから茶葉を入れて、蒸気で1分ほど蒸らしておくのが基本。
スペイン土の茶碗
南部鉄瓶と
後ろに見えるのは南部鉄瓶。1.5リットルほど入るのでガス火にかけて湯沸かしに使っている。一煎めはこの南部鉄瓶から直接湯を注いだ。
黒い茶碗はスペイン土の素材でチェコのマルちゃん作。
2煎めの湯は南部鉄瓶から小さな鉄瓶にバトンタッチして、炭火でじっくり熱を伝えた。
1煎めで茶葉がほぐれて、熱にも慣れているので、熱々のを茶壺いっぱいに注いでも大丈夫。
茶壺
注ぎ
蒸らし時間は計っていないが4分くらいだろう。
この2煎めでやっと気付いたのだけれど、スペイン土の茶碗は味の輪郭を奪ってしまう。
たしか以前に試したことがあったのだが、いつもはごはん茶碗として使っているので忘れていた。
ぼんやりした味の良さもあるけれど、このお茶の持ち味はシャキッと感。
白いチェコ土の茶杯
白いチェコ土の茶杯に移して飲んでみたら、香りがキリッとして味が引き締まって層が深くなった。飲んだ後の息に香りが立つ。ぜんぜん違う。
3煎めはもっとじっくり茶葉の成分を抽出する。
炭を消し壺にしまって、わずかな残り火に灰をかけて柔らかい熱にして、網の上で茶壺を保温する。
茶壺を残り火にかける
10分は待ったと思う。
ぜったいにグツグツ沸騰させないこと。湯が騒がない静かな状態の温度。煮えると生命感みたいなものが消えてなくなる。
3煎めの茶湯
これまででいちばん薫り高い『易武古樹青餅2010年』になったのではないかな。
湯の熱の性質。茶壺の土のチカラ。茶杯の土のチカラ。土と土の相性。土と鉄との相性。水の性質など、いろんなことがお茶の味をつくるから、これが!という絶対法則はわからない。
けれど、いろいろ試しているうちになんとなく勘が働くようになる。たぶん無意識が茶葉や土や水や鉄の言葉を聞いている。
葉底

ひとりごと:
生茶と熟茶を淹れる茶壺は分けたほうがよいという考え方がある。
そう思っている人には分けたほうが良い結果が得られるし、そう思わない人には分けなくても良い結果が得られる。そういうものだからどっちでもよいけれど、大事なのは、どっちが良いといったん決めたらその方向へまっすぐすすむこと。その過程に集中すること。
どっちが良いとか気になってネットを検索したり他人と議論する時点で暇すぎる。集中力が切れて、本当に見るべき対象に意識が向いていないから、たいした結果は得られないだろう。
趣味を追求するにしても、集中力のあるかないかは成果に違いが現れると思う。

版納古樹熟餅2010年 その38.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
熟成壺
熟成壺
版納古樹熟餅2010年

お茶の感想:
強い台風が去って空気が落ち着かないので熟茶。
こういうときの生茶はどんなに美味しいやつでも美味しくならない。
チェコ土の壺熟成1年目のもの。
入れている熟茶は10年モノ。
+【版納古樹熟餅2010年】
餅茶一枚を崩して壺にいっぱいに入れていたが、ちょくちょく飲むので減った。
新しい一枚を崩して足すかどうするか・・・。基本、器の中の茶葉が多いほど茶葉同士で水分などを調整しやすいはずだから。
台風の残した爪痕のせいで忙しくて手間がかけられないので、今日はサクッと2煎で出し切る。手数が少なくて短い時間で、それでもあんがい美味しくなる淹れ方。
道具がいつもとはちょっと違う。
大きめの茶壺と茶杯
茶壺
背が高くて腹のふくらんだ茶壺300cc。
茶壺の重さはこの大きさで169gとけっこう薄造りで軽い。
コツはたっぷりの湯で茶壺も杯も温めること。
湯で温める
温めるときにいっきに湯を注ぐと割れる可能性があるので、ちょっとずつ湯を注ぐ。
湯を捨てるのはもったいないので鉄瓶に戻して沸かしなおす。茶壺も茶杯もキレイに洗っているからいいだろ。
湯を注いで3分
茶葉を入れて湯を注いで4分。じっとがまん。
注ぐ1
注ぐ2
注ぐ3
最後の一滴まで注ぎ切る。
湯量が多いとなかなか冷めなくて熱くて飲めないので、先に次の煎の湯を注いで蒸らしておく。2煎めの蒸らし時間は7分くらい。
2煎め
この長時間蒸らしのうちに冷めるようではダメだから、湯量が多くて熱量の多い茶壺を使う。湯量の少ない小さな茶壺では7分間も待てば冷めてしまう。手元に大きめの茶壺が無いのならグラスのコーヒーサーバーで十分。
2煎めを蒸らしているうちに1煎めをゆっくり飲む。
注ぎ3
注ぎ4
茶湯の色
2煎め。こんなに黒い色になっても味は淡くて透明。
茶葉の健康と、製茶や微生物発酵を丁寧にした成果と、壺熟成の効果と、ひとつの方向を目指して歩いている感じ。
葉底
出し切った葉底。
指で潰しても色がつかないくらい成分は湯に出尽くしている。

ひとりごと:
この茶壺はバランスが悪いくらい口の位置が高いところにあるように見えたけれど、その設計の効果で注ぎの水を上手に制して静かに注げるから、お茶の味も大人しく丸くまとまる。
茶壺

越境野生青餅2010年 その4.

製造 : 2010年4月
茶葉 : ミャンマーJing dong 野生古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 通気のある常温
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
鉄瓶に鉄瓶の湯
餅茶崩し
茶葉

お茶の感想:
布朗山系のお茶は、ここにきて石鹸のような香りが出てきたという話を地元の茶商から聞いたので、このお茶を飲んでみた。
+【越境野生青餅2010年】
たしかに石鹸っぽい香りがある。
煙草と鰹節の混ざったような、もともとのスモーキーな香りに石鹸が交じる。
2010年当時につくった文章を読むと「お香のような香りがある」と書いているが、それが今言う石鹸の香りのことだが、たしかに以前よりも華やかに開いている。
布朗山系統のお茶はあまり好みではないけれど、この美味しさがわからないでもない。
ちょっと濃くすると舌にピリッとしたスパイスを残すワイルドな感じ。
製茶の殺青の鉄鍋炒りのほんのり焦げがもたらす煙たい風味。
何煎めかになるとお米っぽい「糯米香」のほっこりした雰囲気。
苦さを引き立てる甘味の絶妙なバランス。このお茶は苦味に重さがないので軽い。
最近注目する快楽のクスリ的な観点では、どちらかというと気分をパッと明るくさせる酒にも似た陽気さがあって、仲間とお喋りしながら飲むのも良いし、ひとりで仕事をしながら飲むのも集中力を高めるから良いだろう。
注ぎ
茶湯の色
今になって気付いたのだが、このお茶の産地はミャンマーのシャン州チャイントンである。チャイントンは中国語の漢字で景棟(Jing dong)。最近出品したこのお茶と同じ地域。
+【曼晒古樹青餅2017年 その1.】
清朝の貢茶が流行った時代にチャイントンは大規模に茶地を開拓されて、需要が減った時代が長く続いて野生化していたのが近年徐々に見つかっている。
ミャンマーのアクセサリー
チャイントンのあたりは布朗族が多くて、生活のお茶づくりの歴史はもっと長いはずだが、茶文化のお茶づくりは清朝の時代にはじまったと想像できる。
この2つのお茶は、自分の評価が分かれる。
チャイントンの地域には茶山がいくつもあると聞くので、2つのお茶の風味の違いは茶山の違いもあると思うが、そういう問題じゃない。
葉底
美人かどうかの問題。
このお茶『越境野生青餅2010年』は、上に書いたように美味しさの要素は満たしているけれど、美人じゃない。対して『曼晒古樹青餅2017年」は美人である。
その違いを尊重したいと思う。
お茶をつくる現場のどこからその違いが発生するのかも、いくらかわかってきたので、どちらを取るかという選択が迫られたときは迷わず美人を取る。

ひとりごと:
美人とそうでないのとをお茶の価格に反映してゆく。
公平になるように。

易武古樹青餅2010年 その36.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 銅のヤカン+チェコ土の茶壺+炭火
火鉢
菊炭

お茶の感想:
日本の炭をつかってみる。
京都は茶道の本拠地だけあって、炭・火鉢・火消し壺・火箸、などが近所にあって、半日のうちに揃った。
ところがここからが長い。
炭の火がなかなか起こらない。中国の胡桃の炭とは勝手が違う。
また、炭炉ではなく火鉢をつかう点でも違う。
火鉢の扱いが下手くそなので、部屋じゅう白い灰にまみれた。
たぶん、中国茶を淹れることに関しては炭炉のほうが機能的だが、もうちょっと勉強してみる。
安全第一にしないと。
さてこのお茶。
【易武古樹青餅2010年】
易武古樹青餅2010年京都壺熟成
易武古樹青餅2010年京都壺熟成
茶葉は保存環境によって熟成変化が異なるので、その違いをみる。
個人所有のこの一枚は陶器の梅干し壺のような蓋のある器に入れて書斎に保存している。
お茶淹れ
お茶淹れ
いつもの調子でサッと淹れたら、1煎め・2煎めがかなり薄くなった。
10日ほど前に飲んだ西双版納に置いているのは2煎めには濃い味が出たはずだ。
こういうことはよくある。
壺に入れて長い間放置していたのは茶葉が眠っているので、目を覚まさなければならない。
「醒茶」と呼ばれるのだが、いくつか手がある。
壺から出して、包み紙のまま乾燥した暗いところに1日置いて新鮮な空気を呼吸させる。
晒干(天日干し)でちょっと温度を上げて、空気との温度差をつけて内側の水分を吐き出させる。
もうちょっと急ぐなら茶葉を炙ってもよいし、それが面倒なら洗茶を念入りにしてもよいし。洗茶が嫌なら、茶器をしっかり温めて、高温の湯で1煎めの抽出時間を長くする。
茶湯の色
茶葉のコンディションによって手を使い分ける。
壺の中の淀んだ空気に慣れた茶葉は、ミクロの繊維に入り込んでいる空気と水分とを吐き出しにくい状態になっている・・・のかもしれない。いきなり熱い湯をかけても浸透しないのだ。
最近始めた醒茶の方法で、湯の温度で茶葉を温めるという手がある。
茶葉の目を覚ます
これをチェコの陶芸作家のマルちゃんに伝えたら、こんなものが届いた。
茶葉を温める器
茶葉を温める器
醒茶器とでも呼ぶかな。
器の表面の温度で茶葉を焦がしたくない。できるだけ内側の空気の温度で茶葉をふんわり温めたい。生茶の”生”の風味を活かしたい。
そうすると湯の沸く温度でじっくり温めるのがよいのだが、あいにく銅のヤカンの口にはサイズが合わないので、火鉢の縁に置いて、炭火の照射熱で温めた。
じっくり20分くらい。器の外側を手で触れてもギリギリ火傷しないくらいの温度で。
火鉢の縁に置く
茶葉を温める
蓋に水滴
蓋がドーム型になっているので、器を底から温めると蓋の裏側に水滴がつく。
空気中の水は暖かいほうから冷たいほうへ逃げる性質があるので、器の内側でいちばん冷たい蓋の裏に集まる。
たった8gほどの茶葉でもこれだけの水分が入っている。
茶壺にあらかじめ茶葉を入れて、茶壺ごと温める方法(上の写真でしている方法)にはひとつ問題がある。茶壺は普段からお茶を淹れるので、乾いても水分が完全に抜けないから、その水分で茶葉を蒸してしまうのだ。なので専用器があるほうがよい。
炭火の照射熱はけっこう熱くて温度調整が難しいので、やはり鉄瓶の蓋に据えたほうがよいだろうな。
もうひとつ鉄瓶買うことになるのかな。
目が覚めた易武古樹青餅2010年

ひとりごと:
天才と秀才。
日本人は秀才のほうが好き?
努力して勝ち得た成功が尊くて、ポン!と神が与えたものは不公平だから認めたくない?
はじめて出会う日本人に、「雲南でお茶つくる仕事しています。」と言うと、どうも努力とか経験のところを質問される。
「経験はありません。お茶の畑も持っていません。」
美味しいお茶が手に入るかどうかは運。自然と星のめぐりが勝手に決めることなのだけれど、ま、そうは言いにくい。
銘茶は美人。

易武古樹青餅2010年 その35.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の茶壺+炭火
茶葉を焙煎

お茶の感想:
このお茶を焙煎すると烏龍茶っぽくなる。
【易武古樹青餅2010年】
11月の上海の勉強会では、その場で焙煎して味と体感を確かめた。
焙煎といっても3時間半くらい。小さな炭炉の炭が燃え尽きるまでの3時間半。長時間を何度も繰り返す本格ではないが、それでも十分に茶葉の性質が変わるのを実感できる。
ほんの3煎分ほどの少ない茶葉で行うので、小売店用に販売されている竹籠と電熱を組み合わせた焙煎機では大きすぎる。
数日試行錯誤してこの方法を見つけた。
易武古樹青餅2010年12g
茶葉を紙で包む
炭炉と炭火
陶器の壺で焙煎する
焙煎の壺に蓋をする
紙に包んだ茶葉を壺の口に差し込んで底に付かないよう浮かせるのがコツ。
はじめの40分ほどは蓋を開けて水分を逃がす。茶葉の中にある水分と壺の中の空気中の水分とが冷たいところを求めて逃げるが、蓋をしたままだと茶葉の中に入り込むかもしれない。さらにその水分に熱が加わると茶葉に望ましくない変化をもたらす。水気があるのとないのとでは変化が異なる。
別の壺で焙煎テスト
蓋に水滴
丁寧に焙煎しようとしたら水抜きに時間をかけるしかない。
量産のお茶は時間をケチったのが多くて、それが濁った風味となって現れている。
今回の3時間半という短時間の焙煎では水がしっかり抜けない可能性もあるので、あらかじめ西双版納で1日かけて晒干・涼干して、茶葉をカラカラにしておいた。
晒干・涼干するだけでもお茶の香りが立って新鮮さが蘇る。天気のよいカラッとした日に餅茶を崩して、崩した分だけ晒干・涼干して密封して保存すると、毎日新鮮な風味でお茶が飲める。
火加減については何度も失敗した。
焦げて失敗
このタイプの炭炉は火加減がうまく調整できない。
炭炉の器の大きさと炭の量と炭の燃え方と通風口の開け閉めと、何度も試して慣れが必要になる。
かといって調整が容易な電気コンロは火の性質が異なるだろうし使いたくない。
炭炉についてもうちょっと研究して、ゆくゆくは自分専用のをつくることになりそうだ。
炭作りまで手を出さないで済むようにしたい。
焙煎前と焙煎後
焙煎前と焙煎後
焙煎前と焙煎後
左: 易武古樹青餅2010年 焙煎前
右: 易武古樹青餅2010年 焙煎後
ま、思っていたとおりになったと思う。
今後の勉強会でまた試飲できるようにしたい。
なぜ焙煎を試しているかというと、長い長い年月をかけてお茶づくりが成熟してゆく過程で、”焙煎”という工程がなぜ取り入れられたのか?そこが知りたいからだ。遠い昔に人が焙煎という技術と出会ったのと同じ道を歩んでみたい。
プーアール茶を専門にしている自分が焙煎に興味を持たのは、風味を引き立てるためじゃない。それ以外の効果にむしろ興味がある。とくに体感の変化。それをもたらす茶葉の質の変化に注目している。
現在の生茶のプーアール茶は、製品としての完成度の低いお茶だと感じている。歴史をみても、こんなに中途半端なお茶を人々は飲んでいなかったはずだ。
日本語で言うと漢方、中国語で言うと中医学の思想が昔のお茶にはもっと色濃くあって、その視点からするとお茶としての本領が発揮できていない。
カンタンに言えば、生茶のプーアール茶は長期熟成や焙煎の二次加工が必要な半完成品のお茶。
その二次加工を、いつ・どこで・誰がやるのか?どんな道具が必要なのか?現代の社会環境やお茶を飲む人の生活に合わせて、具体的な解決策を提案できるようにしたい。

ひとりごと:
日本酒もそうかもな。
百薬の長の酒なんて、今の日本酒では考えられない。

版納古樹熟餅2010年 その37.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 西双版納のミネラウォーター
茶器 : 鉄瓶+小さめの蓋碗
西双版納

お茶の感想:
西双版納に帰ってきた。
チェンマイから300キロほど北に移動するだけなのに気候は違う。西双版納の景洪市は空気がとても軽く感じる。
青い空を見ていたら縦に長い長方形の白い板みたいなものが雲の流れと反対の方向へ飛んでいったのだけれど、ま、そんな話はしないほうがよいか・・・。UFOは信じないけれど見たことはあると言うことにしよ。
今年の秋もお茶づくりは様子見になると思うが、それでもやりたいことはいっぱいある。
炭炉と鉄瓶
炭の火
通販サイトのタオバオで広東省潮州の炭炉を買ってみた。
日本の七輪に似ている。潮州には紅泥と呼ぶ土があって、これが茶壺にもよいし炭炉にもよいらしい。
炭の火を探ってみる。
火は、お茶を淹れるときも大事だし、お茶をつくるときも大事だし、いずれは勉強することになる。
前回の勉強会「煎じるお茶」で、茶葉を煮るのにアルコールランプをつかったが、炭の火だったらまた違う風味や体感が得られたかもしれないと考えている。熱には響き方の違いがあることを、お茶淹れの茶壺の素材や形状の違いについて注目していたけれど、熱の響きという表現をするならその震源となる火の違いにこそ注目するべきだろう。
炭炉
最近よく使っている鉄瓶で湯を沸かすのは、ガスの弱火や電気コンロの200Wで20分ちょっと時間をかけているが、たとえ同じ20分で沸騰させても炭の火にはまた違う響きがあり、湯の質は異なるはずだ。
炭は核桃炭。クルミの炭。この他にも龍眼やオリーブの炭がある。いずれもしっかり炭化していて穏やかに燃えるタイプ。
クルミの炭
炭は点火させるのが容易でない。
穴がいっぱい空いた鉄鍋に炭を入れてガスコンロにかけて火をつけるが、なかなか燃えない。ガスやアルコールは火花が散るだけでパッと燃え上がるのだから大違いだ。例えば乾燥した木材は炎が移るのは早いが、炭はそうじゃない。炎はほとんど出ない。試しにアルコールを少し含ませた炭に火をつけてみたら、アルコールの炎がメラメラ15秒ほどで燃え尽きた時点で炭はなにごともなかったのように元の黒い色に戻った。赤くならない。炭には熱量が要るらしいのだ。ひとつの炭では燃えられない。いくつも集まって熱がこもってあるところに達してやっと赤い色が見えてくる。時間がかかる。
アルコールランプ
炭の火
ガスやアルコールの火は熱の芯がどこにあるのか見てすぐにわかる。ところが炭の火の熱はどこに芯があるのかよくわからない。炭全体が熱くなって、炭炉も熱くなって、鉄瓶の全体が熱くなって、どこからともなく湯が沸くような感じ。その点、ガスやアルコールの火には芯があり、鉄瓶の底の中心あたりから湯が沸くのが見える。
炭は熱が一点に集中しないから、その効果で熱の流れがとても穏やかになる。
熱の流れ。この勢いを利用するケースもあるのだろう。
例えば、薪の火で茶葉を炒るのや陶器を焼くのは、熱の流れの効果を利用しているかもしれない。
チェコのマルちゃんの窯
薪の火
チェコ土の茶杯
いくつかのお茶を試したいと思うが、まずは熟茶。
【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
湯の熱が茶葉の内部にグッと入って成分を抽出するほどに甘くなる熟茶。
湯の温度が高いだけではダメで、響きの長いのが良い。長い波長の熱が伝わると水質がトロンとしてきて余計に甘く感じる。
鉄瓶
鉄瓶の同じカタチのが2つあるので同時に沸かして、ガスコンロ+アルコールランプのと炭炉のとを比べてみた。
炭の火は一定じゃない。点火してからだんだん火力が強くなる。対してガス+アルコールは一定。沸騰までの時間を合わせるためにアルコールの小さな火でじわじわ温めてからガスで仕上げることにした。
小さめの蓋碗。茶葉は3.6g。
蓋碗と熟茶
炭の火とアルコールランプの水
左: 炭火の湯
右: アルコールランプの湯
水の味にすでにその差が現れていた。
炭火はしっとり甘い。ガスコンロ+アルコールランプはピリピリ辛い。
炭火のお茶とガスコンロのお茶
左: 炭火のお茶
右: アルコールランプのお茶
お茶になってもそれは同じ。同じ茶葉だからお茶の味は同じではずだが口感が違うと味も違うように感じる。茶湯の色の差くらい違う。
炭火のはフワッと舌に触った瞬間にほどける。ふくらむ。ひろがる。喜んでいるような味。それに比べるとアルコールランプのは怒っているような味。
試しに4煎めから左右を入れ替えてみた。
アルコールランプと炭火のお茶の味比べ
左: アルコールランプのお茶
右: 炭火のお茶
左右を入れ替えてから1煎めで味も入れ替わった。2煎めで茶湯の色が近付いて3煎目には同じになった。煎がすすんでいるせいか色が逆点することはなかった。
炭火とアルコールランプ
沸騰する具合を見てなるべく同じ温度になるように調整するべく炭を足したり引いたりしたが、それでも炭火の湯のほうが高い温度を長く保つような性質になる。
やはり熱の響き方だろう。
念のため温度計で鉄瓶の湯の温度を測ったらアルコールランプのほうが1度高いことになった。この正確な計測は難しいから数値はあてにならない。
炭火のほうが美味しいお茶になる。はっきりしている。1回分の炭のコストは8元ほど。かなり割高になるけれど、良い茶葉と良い道具を揃えたら炭を使わなきゃ損だよな。
次は生茶で試してみようと思う。

ひとりごと:
鉄瓶を欲しがっていた西双版納の茶商友達が遊びに来て、パッと目があったチェコ土の茶壺。
チェコ土の茶壺
チェコ土の茶壺
売るのは惜しいが、こういうのは縁。愛せる人の手に渡るものなのだ。
雲南の陶器に詳しい人で土質が気になると言っていたから、いろんなお茶を試してくれるだろう。

益木堂那カ古樹純料茶2010年 その5.

製造 : 2010年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宗山那カ寨古茶樹小葉種
茶廠 : 農家+益木堂
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
益木堂那カ古樹純料茶10年
那カ古樹純料茶10年
益木堂那カ古樹純料茶10年

お茶の感想:
上海の友人の店からもどってきたサンプルのひとつ。
以前にも紹介している。
+【益木堂那カ古樹純料茶2010年 その1.】
古茶樹小葉種。
小葉種の茶葉は長期保存してもあまり美味しくならない。
最近仲間うちでそんな意見が出ているが、どうだろ。
このお茶は2010年の出来たてのときは評価が高くて、毛茶(原料の茶葉)を仕入れたメーカーの担当者は会うたびそれを自慢していたけれど・・・。
泡茶
泡茶2
実際にそうかもしれない。それほど美味しいと思えない。
苦味が粘着質でスッキリしない。老班章を飲んだ後だから余計に比べてしまう。
まだ熟成3年めの2013年くらいまではよかったと思うが・・・。
飲んでひとくちでパッと花開く陽気な表現が小葉種のよいところだが、熟成でそれが落ち着くとつまらなくなってしまう。神童も二十歳過ぎればただの人って感じ。
この感じ、当店のオリジナルのお茶にもひとつある。
+【巴達古樹青餅2010年】
巴達山曼邁寨の古茶樹は中葉種。小葉種よりもちょっと大きく育つ茶葉だが、味の表現といい熟成のすすみ方といい、よく似ている。
葉底1
葉底2
茶葉が小さいのでじっくり蒸らすのはよくない。
白磁の蓋碗でサッと湯を切る淹れ方のほうが繊細な風味が引き出せたかもしれないが、それにしても小葉種は新しいうちが良いし、餅茶にしないで散茶のままのほうが良い。
体感はというと、やはり熟成させたほうが穏やかになっている。小葉種の茶酔いはパッとまわってサッと引く。軽やかで朝に飲みたいお茶。

ひとりごと:
蒸し暑い日がつづくせいか、冬の寒い寒いチェコのマルちゃんの工房で深夜に毎日見ていたお茶の番組シリーズ『一条 叶放訪茶』を思い出した。
見ていたら、そこから『茶有喝过才能说』につながった。
なかなかいい。
老茶の店の「03」「07」「12」「17」「20」がいい。薬膳の「13」もいい。かつて台湾にあった磚茶100モノを飲む「15」もなかなか。有機栽培のお茶を比べる「21」は希望の光。茯磚茶の「24」「25」はシブい。
山の中に竹の茶室をつくった「02」のだるまさんみたいな主人は一度お会いしたことがあって、そのときの印象そのまま。
それ以外のはちょっと苦手なのがあった。
なにが苦手なのか?と考えてみたら、「私キレイでしょ」を見せ合う女子趣味なお茶が苦手。女子が集まって「その服いいね!」をほめ合う必要性が、男子には理解できないのだ。女子趣味に意見はないが、男子までもが茶人服で襟巻きしているのはキモい。女性のチカラが強くなっている時代の現れとして歓迎するべきなのかな。
その点、老茶専門店の時代遅れな豹柄のシャツで我が道をゆくおっさん店主はカッコイイ。ますます希少で、もはやその人自身が老茶である。
うちは男子のお茶の店でありたいから、自分も老茶になるぞ。

老班章古樹純料茶10年 その2.

製造 : 2010年5月
茶葉 : 雲南省西双版納孟海県老班章古茶樹 老班章茶農協会認定
茶廠 : 孟海鴻福茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海 密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
上海の友人の店に預けていたサンプルの餅茶が数枚戻ってきた。
3種ほどあって、しばらく飲んでいないお茶ばかりなので確かめておく。
まずは老班章の2010年。
『老班章古樹純料茶10年』
老班章純料2010年
西双版納にいると試飲する機会の多い老班章のお茶。
この茶山の原料の茶葉価格が年々高騰してゆくのが春のニュースになって、中国全土にブランドが浸透している。
自分は好みではないから老班章の山には2008年から行っていないが、現地の茶友らはちょくちょく行っては「これはどうだろ?」と意見を求めてサンプルを持ってくる。1ヶ月に1つは老班章を試飲する機会がある。
ニセモノもホンモノも含めて美味しいと思えるのは1年に1つ出会えばよいほう。高騰した価格に見合う美味しさに出会うことはめったとない。
老班章にはひとつ気がかりなことがある。
茶葉の価格が高騰したため新老班章と称する茶地の開拓が周囲に広がった。2008年にはすでに周囲の山の広大な森林の開拓がはじまっていた。自然環境のバランスが変化しているはずだ。
老班章純料2010年
久しぶりにこれを飲んでみると、あんがい上質だった。
過去の記事には「舌にへばりつく苦味」と書いているが、今思うと適切じゃない。「余韻の長い苦味」と言うべきだろう。
とにかく苦味が美しい。枯れて清い感じがする。
透明感に深みがある。
余韻の広がりに風景が見える。
なんだか抽象的だが、美味しさが上にゆくほど抽象的な表現になるものなのだ。逆に、具体的な表現をさせるお茶はたいしたことなかったりする・・・かも。
体感はというと、暑い日に涼しい。
豊富なミネラルのせいなのか足の指に血がめぐる。毛細血管が開いて軽く汗をかくがのぼせるほどの上気はない。穏やかな茶酔いが眠りを誘ってウトウトする。
7年目になる熟成の風味はというと、密封して乾燥状態を保つように保存していたので大きな変化は無いが、無駄なところが落ちてより質素になった気がする。微かに蜜のような甘い香りが加わっている。煎がすすむと吐く息・吸う息にお香の煙のような香りが漂う。この地域の原種の品種特性が現れている。
様々なジャンルの音楽に様々な味わいがあるように、お茶にもそういう違いがある。もしかしたら、老班章の苦味の余韻はこれ独自のジャンルであって、他に代わりが見つからないのかもしれない。
もう一度味わってみたい苦味となって記憶に刻まれる。
老班章純料2010年
ひとつメモしておくと、この茶葉は5月の2番摘み。例年なら春の旬を外しているが、しかし2010年は80年ぶりの干ばつで雨が少なかったので、4月中旬の1番摘みの終わりくらいのコンディション。小さな新芽・若葉にそれが現れている。
茶樹の背が高いほど発芽の時期が遅くなりがちなので、もしかしたら大きな茶樹の1番摘みが混ざっているのかもしれない。
やや遅い春の茶葉は茶気が穏やかで、甘味が控えめになってちょっと痩せたような風味になるけれど、それが清潔感につながって好印象である。老班章だからといってフルパワーのチカラ比べが良いとも限らない。高いお茶だからチカラ自慢したくなるけれど。
早春の水分の少ない茶葉に比べたら水分を多く含む晩春の茶葉は殺青の鉄鍋炒りで焦がす失敗が少なくうまい具合に仕上がっている。熱伝導率のよい水が茶葉に均質な熱を伝えるからだ。このことが風味の透明感につながっている。
製茶の仕上がりを追求するなら、早春の茶葉を求めるのはリスクがあるなと思った。
葉底
葉底。雨の季節に入ったせいで茶葉の繊維がやや硬くなっている。

ひとりごと:
茶葉にはいろんなことが記録されている。
2010年5月の老班章の自然環境も茶樹の健康も。
お茶を淹れるとそのときその場所の環境がパッと蘇る。
この茶葉を手元に資料として残しておくと、これから出会う老班章のと比べられる。その違いから、自然環境と茶樹の健康についてもわかることがあると思う。

版納古樹熟餅2010年 その36.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の茶壺
鉄瓶あられ

お茶の感想:
鉄瓶を探る。
濃く淹れても透明感のある味わい。
高温抽出でありがちなドライな刺激をしっとりと包み込む水質。
いろんなお茶を濃い目に淹れてみよう。
ということで、今日はこのお茶。
【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
思い切って真っ黒に出してみる。
いつもは7煎くらいまで続けるところを、前倒しにして3煎めで切るつもり。
鉄瓶なら1煎めからフルパワー。3煎で出し切る配分は無理なくできるはず。
鉄瓶独特の熱の響きをつくるには時間を掛けてじっくり湯を沸かしたほうがよい・・・と信じている。
まずガスコンロの弱火で25分ほどかけて水から湯を沸かす。途中からシューン!という音が鳴り出して、底から小さな気泡が湧いて上下に対流する。気泡がだんだん大きくなって蓋のそでから噴く蒸気にチカラがみなぎる。
ガス火
ガス火の熱はまっすぐ上がり鉄瓶の底を突き抜ける。
上への直進力が強すぎる。水に強い刺激を与えるから、写真のように小さくトロトロした火で鉄瓶まで1センチ以上の隙間を空けたほうがよい。コンロの高さ調整ができるよう薄い五徳を敷く手もある。
沸騰するまでの時間、水は鉄から伝わる熱の響きを聞いている。水の粒子がそれを記憶する。
アルコールランプ
アルコールランプの火も親指の先くらい小さめ。
鉄瓶から茶壺に湯を注いでからも水の記憶はすぐに消えない。茶葉にその熱が伝わり抽出される成分にもなにかが響いている。
たぶんそういうことじゃないかなというようなお茶の味。
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
味のように体感にも違いがでてくる。
これだけ真っ黒く抽出してもサッパリしている。熟茶にありがちな暑苦しさはなく、むしろ涼しい。手前味噌ながら茶葉が良いというのもある。
茶酔いはゆったりと長い波で寄せてくる。
静かで落ちついた体感。
お腹の底を温める熱がいつもより力強い。
水が記憶する熱の響きは、おそらく体内にもなんらかのカタチで伝わる。
鉄瓶を傷めたくないので試さないが、強火で短時間で沸騰させたらお茶の体感も変わってくるだろう。いつも使っているステンレスの電気ポットは3分で沸騰するが、その湯でこのお茶を濃く淹れたらもっと辛くて暑い味になるし、体感はもっと衝撃が突然くる感じ。そうすると、昔みたいに炭火で湯を沸かすともっとやさしくなるだろう。
この熱の響きはお茶の成分を身体に”伝えるカタチ”をもっているのではないかと思うが、冷たいお茶では酔えなくなるので、水の記憶と熱とはセットで響いているのだ。
お茶は熱いうちに飲むほうがよい。
冷たいお茶を飲む日本人の習慣は、茶酔いを評価していないことがわかる。飲みものが身体にどう響くかに関心がないのだな。
鉄瓶

ひとりごと:
もしかしたら酒でさえ酔い心地を評価していないかもしれない。
舌先・鼻先の味や香りだけで評価していたら、大事なところを見落としてしまう。
つくっている人が大事なところを見てほしいと思っているお酒が飲みたい。


茶想

試飲の記録です。

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