プーアール茶.com

茶教室・京都

鳳凰蜜蘭香2021年 その1.

製造 : 2021年春
茶葉 : 広東省潮安県鳳凰鎮烏崠山
茶廠 : 
工程 : 烏龍茶 蜜蘭香
形状 : 散茶
保存 : 真空パック 3g
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶・炭火
蜜蘭香
蜜蘭香
茶葉

お茶の感想:
LEAFMANIAさんから2年前に頂いた烏龍茶を密封袋のまま手元で寝かせていた。
最近試みている生茶のプーアール茶を蒸して乾かす二次加工について、なにかヒントがあるかと思って飲んでみた。
メモしておきたいと思う。
”蜜蘭香”と”黄梔香”のふたつ。
黄梔香のほうがおそらく高級茶葉。
黄梔香
黄梔香
丁寧な仕事がお茶の味の清らかさに現れていてすばらしい。
これは蜜蘭香にも黄梔香にも共通するが、飲んだときの体感は、プーアール茶の生茶なら熟成10年以上に相当するほど落ち着いていた。
焙煎による火入れの効果は、飲んでいて疲れないこと。
黄梔香のほうは3gをひとりで飲んだ。さすがに3gは多いので何煎もつづけて飲むと身体に”寒”を感じたが、もしこれが生茶だったら10年熟成くらいでは3gも飲むともっと寒くて、途中でギブアップするだろう。
試しに、蒸して二次加工した後の”易武春風青餅2011年”を次の日に飲み比べてみたが、それでもまだこっちのほうが寒が強い。
寒いか温かいか、これとは別に、茶気のめぐり方の違いに気がついた。
烏龍茶のふたつは、上半身の胸から上にばかり茶気のめぐりが集中している。
生茶のプーアール茶(古樹のもの)は山にもよるが、もうちょっと全体的に茶気がめぐる感じになる。
これがちょっと不思議だったが、”蜜蘭香”のほうの葉底を見てみると納得できるところがある。
葉底
お茶の味から想像していたよりもずっと緑茶っぽい色。
茶気のめぐり方はこの軽発酵度のものかもしれない。
この蜜蘭香については生茶のプーアール茶よりももっと緑茶寄りに見える。
烏龍茶は中発酵と教科書に定義されているが発酵度の幅は大きい。
葉底のところどころ部分的に赤っぽく変色しているのは”揺青”による効果。
揺青は製茶工程の茶葉がまだ”生”の状態のときに行われる。
竹で編んだザルに茶葉をのせて揺すって揺すって茶葉の表面に微妙な傷をつける。これによって茶葉はある種の成分変化を起こす。
この成分変化は、茶葉が虫に齧られたときに防御のために虫にとって嫌な成分を生成することによる。傷ができたところから電気信号が茶葉全体にめぐり、何らかの反応で新しい成分がつくられる。虫にとっては毒であるが、人間にとっては毒にも薬にもなり、そして烏龍茶の独特の魅力的な香りをつくる。
揺青は、その傷口が赤っぽく変色するので軽発酵をすすめる技術かと思っていたが、これは間違い。
葉底の全体的な緑色からもわかるように、むしろ軽発酵をすすめないまま甘い香りをつくるための技術といえる。
烏龍茶はあくまでも香りが主役。お茶の味は主張しないほうがバランスがよい。
茶湯
生茶のような製茶をするとお茶の味が濃くなる。
殺青後の水分を残したまま翌日天日干ししたり、圧延加工に石型でユサユサ圧しながら揺すったり。意図して軽発酵をすすめると味が前面に出やすい。
烏龍茶の二次加工の火入れは”蒸し”ではなくて”焙煎”。乾いた茶葉のままで火入れする。
もしもこれが蒸して火入れをすると、茶葉に入った水と熱が軽発酵をすすめてしまう。もしかしたら魅力的な風味がそこで失われる。
乾いたままの茶葉を焙煎するほうが技術的に難しいし、また熱効率も悪いのだが、そういうことじゃないかと思う。

雅安の藏茶1970年代 その2.

製造 : 1970年代
茶葉 : 四川省雅安市
茶廠 : 四川省雅安市茶廠
工程 : 藏茶
形状 : 圧延貨幣型
保存 : 京都東山藏
茶水 : 京都地下水
茶器 : 鉄瓶・信楽土の茶壺・チェコ土の杯
明るい
藏茶

お茶の感想:
青海は西藏(チベット)からつづく高原地帯で、チベット仏教の聖地で、お寺がたくさんある。
岩山の洞窟には人知れず座禅したままミイラになった修行僧が、洞窟の数だけいるらしい。
壁にむかって座禅している姿は達磨を連想させるが、達磨は弟子たちによってその行為が世に知らされている。しかし、現在の修行僧は誰にも知られないままでいる。
チベット仏教のお茶。
藏茶
【雅安の藏茶1970年代 その1.】
今年の春から細々と茶教室をしているが、どういうわけか夏の終り頃から誰も来なくなって、そのまま冬を迎えた。
毎週末、掃除をして水を汲みに行って湯を沸かして、熟成の茶葉を壺や茶箱から取り出して茶葉を温めて茶器を温めて、ひとりでゆっくりお茶を飲んでいる。
そそぎ
お茶を飲んだ姿のままミイラになろうと思う。

武夷福大紅袍2019年 その1.

製造 : 2019年春
茶葉 : 福建省武夷山市度暇区九龍湾
茶廠 : 福建省武夷福茶業有限公司
工程 : 烏龍茶・大紅袍
形状 : 散茶
保存 : 真空パック
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
鉄瓶

お茶の感想:
古い鉄瓶。
友人に貸したら、2回使っただけなのになんとなくやつれている。
よく見たら、内側の底のところが若干焦げている。
すぐに返してもらった。
内側の漆
水のミネラルが内側に塗ってある漆や鉄と融合して、虹色の皮膜をつくっていた。
その虹色が消えてしまった。
この鉄瓶は、底を換えたような補修跡がある。高い技術で修理されている。
以前に所有していた人が大事にしていたのだ。
千鳥
波の上を飛ぶ千鳥の図がかすかに見える。ひかえめすぎる装飾がよい。
自分も死ぬまで大事にする。
大紅袍を飲む。
大紅袍
大紅袍
言わずとしれた福建省烏龍茶。岩茶の最高峰。
上海の大老板が茶山を数年間契約して、良いとこ取りをしたらしい。
中国はギフトの習慣があるので、お茶好きの老板が自慢をかねて高級茶を贈ることがある。
しかし、貰いものに良茶なし。
泡茶
2煎めから渋味が出てきて、3煎・4煎ともっと渋味が立つようになった。舌にヒリヒリが残る。体感はザワザワして落ち着かない。
葉底
ブレンドしてる?
ギフトの茶葉はこんなもの。

怖司小樹月光白2019年・秋天 その1.

製造 : 2019年10月26日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山怖司寨小茶樹
茶廠 : 農家・店長
工程 : 白茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の宝瓶・茶杯 鉄瓶・炭
月光白
白茶
白茶
泡茶

お茶の感想:
インフルエンザの流行のときは身内にひとりふたり発症者がいるものだが、新型コロナウィルスはまだそこまで来ていない。けれど、地元からちらほら出てきて、確実に近づいている。
桜
昨年の秋のお茶。
はじめてつくった白茶。
雲南省の茶葉でつくる月光白という白茶。
このお茶をつくった日にいっしょにつくった。
+【巴達一芽紅茶2019年・秋天 その1.】
茶湯
もちろん失敗作だけれど、原因がまだわからない。
お茶はクスリ。
白茶には白茶の体感があり薬効があるはず。
「身体がポカポカ暖まって良いお茶です」と言われたことがあるが、それはおかしい。白茶に求めている効果からちょっとズレている。もっと涼しい感じ。涼しくても生茶のような”寒”ではない感じ。
まず、茶葉の成長度がズレている。
あと1日か2日待ってから摘んだほうがよかったかもしれない。
白茶
萎凋
萎凋のときにもっとゆっくり乾燥させるべきだったと思う。
2日かけたけれど、それでも早すぎ。水の抜けるショックで新芽が少し湾曲している。技術の高い福建省の白毫銀針ならもっとピンとまっすぐである。
そして最大の欠点は熱に弱いこと。
3煎もしたら茶葉が紅茶っぽい色になってゆく。
茶葉
葉底
餅茶にしてから炭火の遠火で1時間ほどかけて炙った。
包み紙ごと炙ったので紙がちょっと焦げたり、餅面がほんのり黄色く色がついた。火を入れて成分の変化を止めようとしたが、その効果は感じられない。
炙り

安化方磚黒茶2017年 その1.

製造 : 2017年
茶葉 : 湖南省安化県有機栽培農園
茶廠 : 不明
工程 : 黒茶
形状 : 方磚茶1kgサイズ
保存 : 西双版納 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
安化方磚黒茶2017年

お茶の感想:
今回のお茶の名前は適当。
もともと名前は無い。
黒茶にはそういうのがたくさんある。
西双版納の不動産王の茶友が安化に行ったときに一枚買ってきて、それが美味しいので北京の土豪(文化や教養の無い成金)が12トンも爆買いして、北京郊外の倉庫に寝かせているらしい。
西双版納の手元には1枚しかない。
正方形の分厚いレンガ状の端のほうを崩してひとカケをもらってきた。
金花カビの培養を試みたかったので、「なにかサンプルは無いか?」と茶友を頼ったら、このお茶が出てきた。
安化方磚黒茶2017年
安化方磚黒茶2017年
このひとカケを崩すときにいつもの茶針で表面を剥ぎ取ろうとしたら、針先が弾き返された。
どうやら圧延するときの茶葉の層がプーアール茶の磚茶とは違う方向に積み重なっているのだが、おそらく金花カビの性質を考えてそうしてある。
黒茶にしては若葉の量が多くて、しっかり粘着していて、カッチリ固まっていた。
製法がはっきりしない。
あくまで推測だが、以下の2通りが考えられる。
1.鮮葉を蒸して殺青して、揉捻して、堆積して(微生物発酵)、揉捻して、蒸して圧延して、積み重ねて(微生物発酵)、出来上がり。
2.鮮葉を蒸して殺青して、揉捻して、乾燥させて、蒸して圧延して、積み重ねて(微生物発酵)、出来上がり。
目的はこの製法について勉強することではなく、金花カビの胞子を得ること。
金花カビは、・・・蒸した水分で増殖して出現する。
水分とか、温度とか、通気の具合とか、その条件が揃わないと金花は生きられない。そのかわりいったん繁殖すると茶葉をコロニーとして独占支配するので、雑菌の侵入を防ぐことができて保存に強くなる。
炭火
安化方磚黒茶2017年
安化方磚黒茶2017年
安化の葉底
あんがいスッキリしていて、このお茶に似ている。
+【雅安蔵茶金尖芽細08年 その1.】
さて、この金花を移植してみたいのは、このお茶。
+【刮風寨冬片老葉2016年 その1.】
崩して
蒸して
囲って
保温
茶葉を細かく崩して、蒸して、囲って、保温する。
待つこと6日間。
発酵後の茶葉
発酵後の茶葉
茶葉がちょっと黄色く色付いたくらいで、何も変わっていない。金花の黄色い花(胞子)なんてどこにも見当たらない。
試飲
一応飲んでみたけれど、蒸したことによる変化以外の変化が感じられない。
失敗の原因ははっきりしている。
茶葉の乾燥が早すぎて、金花の増殖に必要な水分が足りていなかった。
なぜ乾燥が早いのかというと、茶葉が大きく育って繊維が硬くなりすぎて、水分を含む量が少なすぎるから。
揉捻をしていない茶葉なので、茶葉のミクロの水道管に亀裂が入っていなくて、水も金花の菌糸も入り込む余地がない。
大きく育った茶葉なので粘着力が少なく、布で絞って圧し固めても茶葉と茶葉との隙間が空きすぎて、水分が逃げやすい。
大きく育った老葉が黒茶の原料として適しているのだが、そうはいってもちょうど良い頃合いというのがある・・・らしい。
秋に近づいた9月頃の一芽五葉くらい。教科書にはそう書いてあることが多いが、その頃合い。

雅安の藏茶1970年代 その1.

製造 : 1970年代
茶葉 : 四川省雅安市
茶廠 : 四川省雅安市茶廠
工程 : 藏茶
形状 : 圧延貨幣型
保存 : 崑山市倉庫
茶水 : 京都地下水
茶器 : 鉄瓶・チェコ土の茶杯
藏茶1970年代

お茶の感想:
四川省雅安市の藏茶。
推定1970年代のもの。先日の上海の勉強会のときに借りた天山茶城のお店に売っていた。
いまどき藏茶の老茶も珍しいので経緯を聞くと、台湾人のお茶マニアが上海近郊都市の崑山市に大きな倉庫を構えて大量の茶葉を保有していて、そこから出てきたらしい。たぶん老茶を小出しに売りはじめたのだろう。
崑山市は上海と蘇州の間に位置する。台湾系の大手企業が集まり工業団地をつくって、この20年くらいで急速に発展した。現在は地価が高騰しているが、昔なら倉庫にできる土地ならいくらでもあったはずだ。倉庫の土地と茶葉に投資してダブルで価格高騰するのを待つ。例えば20年待ったとして30倍に達しただろうか。今世紀中にはもう二度とないチャンスだったと思うが、珍しいことではない。長い歴史をみると物価や茶葉の価格変動を見込んで大量の茶葉を貯蔵してひと儲けした例はいくらでもある。
貨幣のカタチ
貨幣のカタチ
実際、このお茶は古代の貨幣のカタチをしている。
ある地域では茶葉がそのまま通貨として流通していたこともある。長い目で見たら、いつの時代も現金よりも茶葉を貯蓄しておいたほうが安定している。
この固まり390g。竹で編んだ直方体の籠に30キロ分で詰められ牛か羊の皮で包まれる。(上の写真)
藏茶は四川の雅安市から西へ運ばれる。高原に住む遊牧民族やチベット仏教の坊さんのお茶。出荷する前に微生物発酵を促す工程があるので黒茶に分類される。
遊牧民のバター茶はまさにこの茶葉でつくる。”煎じるお茶”の勉強会のテーマにピッタリ。
煎じ方はカンタン。ヤカンに湯を沸かして茶葉を投入するだけ。
茶殻
ヤカンに茶葉
ここで注目するのは、煮出し時間によって味も体感も変わってゆくということ。
何分煮出すのがよいのだろう?
煮出し2分
煮出し2分め。
20分以内で十分とは思うが、それを飲んで確かめるのが今回の勉強会。
ちょうどよい煮出し時間は、茶葉の性質によっても、飲む人の体質によっても、その日のコンディションによっても異なる。自分で飲んで自分の身体に聞くのがよい。
煮出し20分
煮出し20分茶湯
煮出し20分め。
茶葉に熱が通るほどに成分の変化がすすむ。鉄瓶なので鉄分との化合によるなにかもあるだろう。
煮出し2分と20分を飲み比べて体感の違いに気付く。20分のほうが身体へのアタリが柔らかくて涼しい。
茎も混ざる繊維の硬い老葉を微生物発酵させたお茶にはピリピリ感があるが、煮出し時間を長くするとそれも和らぐ。
ここで疑問なのが、なぜあらかじめもっと火入れをしておかないのか?ということ。
メーカーから出荷する前に焙煎しておけば、20分も煮出す必要はないだろう。
このお茶もまたお茶を淹れるときの火入れの余地を残した生な仕上げになっている。
生のまま長期熟成させることになにか意味がある。後発酵の微生物がつくった酵素を死活化させないためだろうか。
葉底
葉底の色からしたら1970年代っぽくない。プーアール茶だったらこの緑が残っていたらおかしいけれど、たしか藏茶づくりの乳酸発酵を経た茶葉は、長年熟成しても緑色が残りやすい。

白牡丹生態茶2014年 その5.

製造 : 2014年4月
茶葉 : 福建省福鼎市磻溪大白茶種
茶廠 : 福鼎の農家
工程 : 白茶
形状 : 散茶
保存 : ステンレス茶缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶
鉄瓶

お茶の感想:
鉄瓶の湯には粘りがある。
保温力というか持続力というか、すぐに冷めにくい感じ。
鉄瓶から注いだ茶壺にも、茶壺から注いだ茶杯にも、粘りのある熱はつづいている。
これを高温という言葉で表現すると、デリケートな茶葉を煮やしてしまいそうだが、そうはなりにくい。
高温ながらやさしく熱が伝わる感じ。
『白牡丹生態茶2014年』。
熱にデリケートな茶葉。
一般的に、ちょっと温度を下げてみて・・・・となりがち。
鉄瓶の熱々の湯ならどうだろう。
茶壺
この白茶は2014年ですでに3年経っている。熟成の香りが現れている。かすかに漢方のような。
この香りは、温度を下げた80度くらいの湯では立たない。
かといって、沸き立ての湯を注いで蒸らすと酸っぱくなりやすい。渋味も出てくる。茶葉が煮えた状態。香りを立てると味が厳しくなる。
そこで、鉄瓶の湯の粘りに期待してみる。
例えば、熱い湯の風呂にザブーンと入ったら火傷するけれど、かけ湯して皮膚を慣らしながらそっと入ったら大丈夫。熱の伝わり方が違うとその作用も異なってくる。
例えば、鉄瓶から注ぐ湯の落ち方。茶壺の中での湯の熱のまわり方など、茶葉にやさしく熱が伝わる湯の流れをイメージする。
あくまで熱々の湯で香りを立てつつ味を柔らかくが目標。
チェコマルちゃんの急須
チェコマルちゃんの急須
チェコ土の茶壺は浅くて底が広いのを選んだ。
湯の熱は上に昇る。茶壺がタテに深いのは熱が茶葉に直接的にあたって煮やしやすい。底が広く浅いのは湯の熱が逃げたり、反射して間接的になるので柔らかい。
器をしっかり温めてから、妥協のない熱い湯を注ぐ。
白茶を淹れる茶葉を浮かべる
湯を注いでから茶葉を浮かべる。茶葉が自身の重さで沈むのを待つ。浮いているのはそのまま。蓋をして蒸らすと乾いた茶葉が湯を含んでゆっくり沈む。
風呂の熱い湯に片足ずつそっと入るように、茶葉を湯に慣らす。
3煎め
3煎めくらいまで浮かんだままの茶葉があった。
浮いている茶葉が蒸らされる空間を残すように湯の量を調整した。
湯を注ぐところを開ける
2煎めからは茶葉に熱い湯が直接当たらないようにした。
煮えることなく酸味は出なくなった。渋味も少ない。香りは立って生き生きとしている。
3煎・4煎とすすめても新鮮味がある。4煎めくらいでちょっと渋味が出たが、問題はない。
白牡丹生態茶2014年
白茶
白茶は前菜のようなお茶。主菜なお茶ではない。
プーアール茶みたいに10煎も続くのを自慢したりはしない。
サッと3煎くらいで終えるにしても、熱い湯でしっかり出し切れるほうが気持ちがよい。

ふと思いついて、紅茶を淹れてみた。
このお茶。
+【漫撒一水紅餅2016年】
漫撒一水紅餅2016年
漫撒一水紅餅2016年注ぎ
漫撒一水紅餅2016年
茶壺の口もといっぱいまで湯を注いでじっくり抽出したら、やはり煮えて酸味が強くなった。

広西六堡茶90年代 その2.

製造 : 1990年代
茶葉 : 広西壮族自治区梧州
茶廠 : 農家
工程 : 黒茶
形状 : 散茶
保存 : 広西壮族自治区梧州梧州市ー西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代 
広西六堡茶90年代

お茶の感想:
昨日のつづきで、広西六堡茶のサンプルの試飲。
本日4種。昨日の8種と合わせて12種。
そのうち、気持よく飲めたのはこのお茶『広西六堡茶90年代』のみ。
こんなものだろうと思う。
熟成の味を求めたらこうなる。
ダメだったサンプル茶葉に注目すると、無加水状態での後発酵に積極的だからゆえの失敗も見られた。チャレンジ精神は評価したいが、お腹を壊さないかと心配になるような不味いお茶を流通させるのはやめてほしい。
近代的な設備の大手メーカーによる渥堆発酵の、安定した品質の新しい六堡茶が市場を席巻するのも無理ない話だ。
同じ黒茶の熟茶のプーアール茶と比べると、原料の茶葉の素質が全般的にちょっと低めだった。古茶樹とか無農薬・無肥料を謳っていても、西双版納では無名茶山の安モノのレベルのほうがましなくらい。
やはり茶葉の素質という点では雲南省に優位性がある。
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
素質が低いという言い方は、ちょっと理解が足りないかもしれない。
なぜなら、伝統的な六堡茶の茶摘みは、一芽五葉くらいに大きく育った老叶子。黒茶にするのはこういうタイプであり、旬の新芽・若葉は緑茶としてそのまま流通していたのではないかと思う。
プーアール茶の熟茶は、旬の季節の新芽・若葉の微生物発酵をいち早く成功させた。
渥堆発酵の水を掛けるという手段。旬の新芽・若葉の強い茶気のガードは微生物の繁殖をなかなか許さない。水をかけることでガードが下がりやすくなる性質を利用したのである。茶気・香気の立つシャキッとした輪郭の味は、それまでの眠たい味の黒茶に比べたら、目の覚めるようだった。
過去に紹介したこのお茶がそんな感じだった。
+【下関茶磚80年代】
そして、六堡茶にもこの技術が試されるようになる。
今回の六堡茶にも、1980年代とされるサンプルのひとつに(本物かどうかの鑑定は難しい)、渥堆発酵の特徴があった。旬の新芽・若葉が使われていてた。しかし、この方向で勝負するならプーアール茶の熟茶には勝てないだろう。
六堡茶もまた、新しい市場における自らのポジションをつくるために、道を探っているところなのだ。
広西六堡茶90年代
今回のこのお茶『広西六堡茶90年代』は、その点で昔ながらと言える。
一芽五葉くらい。茎もしっかり混ざっている。眠たい味の黒茶ながら、口当たり喉越しともに清潔感がある。
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
葉底の色がいろいろなのは、もしかしたらブレンドしたのかもしれないが、よく見ると、新芽・若葉の色が比較的新鮮を保ち、老葉と茎がより黒く変色している。無加水の微生物発酵においてはこのようになりやすい。渥堆発酵があった茶葉なのかどうかは今となってはわからないが、加水されていたとしても少なめだったと考えられる。

広西六堡茶90年代 その1.

製造 : 1990年代
茶葉 : 広西壮族自治区梧州
茶廠 : 農家
工程 : 黒茶
形状 : 散茶
保存 : 広西壮族自治区梧州梧州市ー西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
広西六堡90年代
広西六堡90年代

お茶の感想:
広西壮族自治区の黒茶(微生物発酵のお茶)六堡茶をいくつか試した。
残念なことに、六堡茶もまた伝統の製法ではなくなっている。
1990年頃からだと思うが、メーカーの設備で加水による渥堆発酵が取り入れられ、熟茶のプーアール茶と似たつくり方となった。味も似ている。
広西六堡90年代
昔は生茶のプーアール茶と同じく、晒青緑茶(天日干しの緑茶)を農家がつくって、竹籠に詰めたのを出荷していた。後発酵は無加水での微生物発酵で、中流通の茶商や貿易会社の倉庫で行われたと聞いている。
このタイプの黒茶は”越陳越香”。長年保存熟成させることで、ますます魅力的な味になってゆく。
過去に扱った1970年代の六堡茶。
+【広西六堡茶】
前回の上海でも老茶の愛好家に1980年代のを飲ませてもらったが、あるところにはある。
しかし、その年代のを仕入れて売るとなると値段が飛ぶから難しい。
プーアール茶の老茶が高騰した前例があるから、茶商がすでに買い漁って、世界各地の老茶ファンの手元にしっかり収まって、現在もまだ流通に残る六堡茶にはそれほど良いものはないだろう。
それでも六堡茶を試すのには理由がある。
近代的な製法であろうがなかろうが、六堡茶の茶商たちは麹の類である”金花”の無加水発酵に積極的である。
倉庫で囲って独自の味を醸している。
もしかしたら、ちょっと特別な風味が見つかるかもしれない。
広西六堡90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年
結論から言うと、ひとつ見つかった。
本日紹介のお茶の『広西六堡茶90年代』。
8つのサンプルを試して、たったの1つ。7つは残念な感じだった。
六堡茶を専門に扱う流通から取り寄せたサンプルですらこの打率だから、市場に流通するのはもっと質が落ちていると思われる。
サンプルの中には、1970年代・80年代・90年代・2000年代といろいろ記してあったが、1970年代と1980年代のは明らかに偽物。渥堆発酵の味がする。
1990年代のはいくつかあったが、そのうちのひとつにちょっと生茶の老茶に似た風味を見つけた。茶商に確認すると、これもやはり熟茶製法ということだが、水の散布の少ない味。プーアール茶の熟茶であれば1980年代までの技術による味。
良いと思う。
茶葉の素質はベストではない。秋茶葉だと思われ、春茶のような茶気・香気は立たない。淡々と穏やかな表現。水質に密度はないがキレイな質感。喉越しは柔らかい。
何煎でも気持ちよく飲める。
気持ちよく飲めること。いくらでも飲めること。これこそ黒茶の良さ。

政和寿眉老茶90年代 その1.

製造 : 1990年代
茶葉 : 福建省政和県 春茶
茶廠 : 政和の農家
工程 : 白茶
形状 : 散茶
保存 : ステンレス茶缶密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代

お茶の感想:
上海からメッセージ。
『政和寿眉老茶90年代』のほうが美味しいけれど・・・。
過去の試飲の結果に異議あり!ということらしい。
昨年10月にこのお茶を試していた。
もしかしたらと思うところあり、手元に残るサンプルを探して、もう一度『寿眉老茶2003年』と飲み比べてみた。
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
左: 寿眉老茶2003年
右: 政和寿眉老茶90年代
同じ白茶の老茶。
製造年がちょっと違うが、それ以外にも大きな違いがある。
『寿眉老茶2003年』は、福建省福鼎市の秋茶。
『政和寿眉老茶90年代』は、福建省政和県の春茶。
前回の飲み比べ、
+【寿眉2003年白茶 その2.】
こんなことを書いていた。
------------------------------
この二つを比べると、『政和寿眉老茶1990年代』には「火共」と一文字で書く炙り味(香)が強くあった。
長期保存中に風味が傾いてくると炙ってシャンとさせる。これまでに何度炙られたのかわからないが、炙ると火味が加わる。ほんのりスパイスになることもあるが、このお茶は烏龍茶のような華やかさが生じていた。表現を抑えきれず、白茶らしさを失っていると思う。
------------------------------
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
今日飲んでみると、炙りの味は落ち着いて、白茶らしさを戻していた。
味は互角。
しかし、そもそも福鼎市と政和県では、白茶づくりの思想が違うのではないか?
秋茶と春茶という原料の違いや、炙るという製茶工程の違いもまた、思想の違いからきているのであって、モノの良し悪しの判断基準にはならないのではないか?
さらに、原料の選定や製茶工程には、それぞれ狙いとする薬効の違いもあったはず。現在お茶づくりをする人々は、歴史の断絶により、その意味はもう忘れているけれど、受け継がれた技術になにかが残っているかもしれない。
もしも2つを比べることに意味があるとしたら、どっちが美味しいか、どっちがそれらしいかということよりも、背後に隠れた知恵を読み取るべきだったのではないか?
頭がクラクラする。
ま、一歩一歩やってゆく。
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代


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