プーアール茶.com

老字号可以興茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 可以興茶庄
工程 : 生茶のプーアル茶 (陳年茶葉)
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明乾倉 紙包み
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・鉄瓶・炭火
鉄瓶と炭火

お茶の感想:
お客様から「思っていたような良いお茶ではない。」とコメントを頂いたので試してみる。
『老字号可以興茶磚80年代』(卸売部)
老字号可以興茶磚80年代
老字号可以興茶磚80年代
もともと量産できて安く売れることを目指したメーカーのもので、一批か二批だけ本当に良いが出荷されて、それだけは日本円にしたら数十万円から二百万円くらいで取引されるが、その他のはすべて安値のまま売られている。老茶の中でも評価の低いお茶であるが、それが正しい評価だろう。
茶葉は表面だけ新芽・若葉に見えるが、ほとんどがクズ茶葉で、熟成度もバラバラで、いろんな茶葉をかき集めて混ぜ合わせて圧延加工したことが伺える。
茶湯の色
飲んでみると、あんがい良い。
湿気た雲南紅茶みたいな香りもあるし、カビた生茶の苦味もある。しかし、健康的な味。茶湯の色のように味も透き通っている。
甘くもなく苦くもなく。
可もなく不可もなくという絶妙のポジション。ちょっとツウ好みな見方かもしれないけれど、ほとんどのお茶が美味しいか不味いかのどちらかであって退屈なわけだ。その点、このお茶は美味しくもなければ不味くもないチカラの抜けたバランスがなんとも乙なのだ。
なので、美味しいお茶を探している人にはおすすめできない。このお茶は美味しくないのが良いのだから。
そういえば、チェコで勉強会をしたときにこのお茶を飲んで、やっぱりたいして良くないという意見をいただいた。ニセモノじゃないのか?という意見もあったが、なにも考えずにニセモノをつくるとホンモノの品質を超えてしまう可能性があるのだから、そんな可以興の特徴を考えると、あまり意味のない意見だと思った。
茶湯の色
逆に、このお茶に好印象があるお客様は、この味に近いものの体験に好印象があるからだろう。
味が良いとか悪いとかの判断基準は、過去のいろんな飲みものや食べものの記憶に基づく。
ある時代、おそらく1980年代中頃から1990年代中頃までの間に、香港や広東の飲茶のお茶を飲んでいる人、なおかつそれに良い思い出のある人。
現在の飲茶レストランが無料で提供するお茶は、熟茶のプーアール茶(メーカーで微生物発酵されたもの)になっているはずだが、過去には生茶を強制的に後発酵をすすめて老茶のような味にしたものが多かった。この二次加工は、雲南の産地のメーカーの倉庫で散茶のまま何年か放置するとか、香港の茶荘の倉庫で湿気させるとか、いくつかの手法が試されていたが、中にはダメになったのもあって、カビ臭いプーアール茶のイメージはここから来ている。
中には良いのもあって、豊潤な熟成風味や甘い香りやほろ苦味が加わり、飲茶の点心を引き立てたのもある。
熟茶のプーアール茶はメーカーで完成するから衛生的であるが、身体を暖めるので高温多湿な広東や香港では飲みにくい。
生茶は二次加工されても身体に熱がこもることはないので涼しく飲める。なので現地の人の口には生茶の二次加工のほうが合ったのだろう。しかし、1990年代中頃に二次加工の不衛生が指摘されだしてから、この手のお茶は消えてゆく。
葉底
『老字号可以興茶磚80年代」のメーカー「可以興」が消えたのも、おそらくそうした需要の変化が影響しているはずだ。(現在はまた同じ名前のメーカーが営業しているが、昔のままのお茶づくりではない。)
今現在、またこういう味のお茶が大量に流通しだしている。
それは、2000年以降に雲南の産地の茶商が倉庫に大量に保管していたもの。ほとんどが売れ残りのお茶で、茶葉の乾燥に気を使わないから湿気ている。
プーアール茶は2000年以降に大陸のマーケットが開けて、新しい消費者が増えたから昔の良いほうの熟成味を知らない。だからあんがいこういうのでも売れる。
その中から良いものを見つけたことがあった。
+【漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その2.】
そういえばこれ以降に良いのには出会っていない。
ゴミの山の中から宝を探すのは効率悪すぎて仕事にならない。

ひとりごと:
プーアール茶を学ぶにあたって自分にはこの人という先生はいないけれど、それでも深く掘り下げてゆくことができたのは、記憶の中に関連付けられる味のデータベースが豊富にあるからだろう。お茶の味の体験が少なくても、他の味の体験を応用して脳が考えてくれる。直感が働くのはそういうことだろう。
ワインやウィスキーの熟成モノの趣味のある人は比較的近いところに体験があるが、発酵食品や保存食品など古い時代の食べものの経験も近いと思う。
昔の人の暮らし、昔の家屋、昔の栽培、昔の道具、昔の味付け、昔の味覚。
おじいちゃんおばあちゃんの財産はもう消えて、父や母には受け継がれていないけれど、自分の脳の中には記録されている。

沈香黄片老茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶(西双版納易武山)
茶廠 : 昆明茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 昆明乾倉 竹皮4枚一組
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
鉄瓶と炭火
沈香黄片老茶磚80年代

お茶の感想:
老葉(大きく成長して硬くなった茶葉)でつくられたお茶にはいろいろある。
茶葉の見た目が似ているので、つい同じような性質のお茶だと解釈してしまうが、そうでもない。老葉は年中収穫できるが、季節によって内容成分が異なる。
新芽・若葉にはわかりやすい尺度がある。
その旬は春と秋にほんの数日間あって、タイミングをハズすと茶気が充実しない。気の抜けた炭酸飲料やアルコール度数の低い酒のようになる。
老葉のお茶はそこが曖昧。
茶気の充実しているのが良いとも限らないから。
チベットの遊牧民のようにお茶に求めるものがはっきりしていたら、どの季節に采茶するべきで、製茶工程はこうあるべきで、お茶の味はこういうのが良いとはっきりするだろうけれど。
義安棗香73特厚磚茶
73特厚磚を飲む機会があった。
【義安棗香73特厚磚茶】
10年ぶりくらいかな。
熟茶の最高峰でありながらもっとも熟茶らしくないお茶。熟茶と定義されているからには水をかけての微生物発酵の工程があったことになるが、それの無い生茶の老茶に近い味。
このお茶の説明に気になる部分がある。
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姚計氏は、プーアール茶を仕入れるときは、5級〜6級の大きめの茶葉で作ったものを選びました。新芽はおいしい緑茶を作れるが、おいしいプーアル茶を作らないと考えていたようです。
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姚計氏が73特厚磚以外にどのお茶を倉庫に寝かしたのか知らないが、香港の倉庫に届いている時点で、その先のルートで届く地域においては、生活のお茶としての役割を期待していないはずだ。遊牧民が飲むものではなく、都市生活者が飲むお茶である。
73特厚磚の味を忘れないうちに今日のこのお茶。
『沈香黄片老茶磚80年代』(卸売部)
沈香黄片老茶磚80年代
注ぎ
沈香黄片老茶磚80年代
あえて言えば73特厚磚ほど甘味はない。水の質がトロッとしていない。
それ以外は茶湯の色も香りも味もそっくり。
特徴あるお香の香り。味はあるようなないような感じ。長い時間(7分くらい)かけて抽出しても湯の色が明るい。同じ年代の新芽・若葉の生茶に比べても色が明るい。赤黒くならない。
そして、共通するのはあんがい旬の季節に采茶されているらしき茶気の充実感があること。新芽・若葉ほどではないが老葉のわりには酔い心地がふんわりしている。
葉の様子から、一般的な新芽・若葉の生茶と同様に殺青の火入れも浅いことが伺える。
体感は温でもない涼でもない。いつでも飲める。
葉底
はじめから都市生活者の普段飲みを意識してつくったのではないだろうか。
見た目重視の新芽・若葉で高級だけれど中身は旬をハズした茶気の充実しない手頃な価格のお茶をつくる現代のメーカーよりも、昔の国営メーカーのこのアイデアのほうが安くて栄養が充実してクスリとしては優れている。
茶気の充実が都市生活者向けのお茶として必要条件であれば、冬の老葉を採取した『刮風寨冬片老葉2016年』よりも春の終わりに育った茶葉を摘んだほうがよいかもしれない。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
こういうやつ。
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
葉底
見た目は生活のお茶で大衆だけれど中身はその逆。

ひとりごと:
結局自分には高いお茶しかつくれない。
都市生活者向けの中身になるから。

プーアル方茶80年代 その1.

製造 : 1980年代後期
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海茶区
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 未入倉
茶水 : 京都地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶
プーアル方茶80年代
プーアル方茶80年代

お茶の感想:
資料として保存しているサンプル茶葉を整理していたらこんなのが出てきた。
+【プーアル方茶80年代】
美味しいかというと、1980年代のお茶の中ではそれほどでもない。
でも個性が立っている。
8月1日に予定している上海での勉強会の「体感を探る」にピッタリなお茶だろ。ということで試飲してみる。
久々なので、熟成がすすんでいるはず。
チェコ土の茶壺
個性のある茶葉にはチェコ土のマルちゃんの茶壺。
茶壺
かけ湯
めったにしないこんなこともしてみる。効果のほどは定かでない。
惑星の表面っぽいザラザラ肌が湯を吸って吐く。それを見たいだけ。
チェコ土の茶壺
熱があるので蒸発してすぐ乾く。
プーアル方茶80年代
プーアル方茶80年代
ちょっと思い切って濃くしてみた。
苦い甘い。薬っぽい。仁丹みたい。
新芽・若葉の摘み時がよかったのだろう、水質がキメ細かく舌触りに潤いを与える。口に苦くてもスルッと入る。
30年くらい熟成したことで身体へのアタリは穏やかだけれど、孟海茶区独特の苦味による涼しさは健在。方茶ならではのスッキリ感がある。アミノ酸的な旨味の少ない健康な茶葉だ。
微かにチョコレート風味が感じられるようになった。熟成による味の変化。崩して保存しているので茶葉が空気に晒されたことによる効果だと思う。方茶は圧延が強く内側に空気が入りにくいので、固まったままだとこうはならない。
2007年に出品したときに比べると甘味が増してずっと美味しくなっている。
葉底
1980年代のお茶だが、香港倉庫に入らなかった未入倉のものなので、茶葉にまだ緑っぽいところが残っている。

ひとりごと:
勉強会のテーマ「体感を探る」は、これから日本でもやってゆく。
お茶の味を自分の身体に聞いてみる。これがあんがいできていないのだ。
なぜできないかというと、自分の身体にどう聞いたらよいのかわからないからだ。
体感のタイプの違うお茶を飲むことで、身体のどこにどういう変化が現れるのかを経験したらわかるようになる・・・はず。
この経験はお茶だけでなくふだんの食事にも応用できる。
ほんとうに知るべきは、お茶の上質よりもふだんの食事にある。

紫天樟香青磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州易武山
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代) 南天公司監修
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明 紙包・段ボール密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
紫天樟香青磚80年代

お茶の感想:
老茶の味を知ったら、新しいお茶に戻れなくなる。
身体が求める。
手元に老茶があるかぎり戻る必要もないだろう。(お客様の立場なら)
今日はこのお茶。
『紫天樟香青磚80年代』
+【紫天陳香青磚88年 その1.】
+【紫天樟香青磚80年代 その1.】
今日飲んでみたら苦味が強いと感じたが、これは製茶の粗だとわかった。殺青の時に焦がしたのだな。
紫天樟香青磚80年代
完璧な老茶など、今どきこんな値段では放置されていない。
+『中茶牌3917沱茶93年 その11.』
これに説明した泡茶技術で欠点をカバーして欲しい。
水を荒らさないようやさしくそっと淹れたら、甘いお茶になる。
紫天樟香青磚80年代プーアル茶
あきらかに微生物発酵させた陳年茶葉と、そうでない晒青茶(天日干し緑茶)と、ブレンドして圧延してある。
もしかすると陳年茶葉は「種麹」的な役割があったのではないかと推測する。
紫天樟香青磚80年代プーアル茶
紫天樟香青磚80年代プーアル茶
圧延加工の工程による蒸気の熱と、熱風乾燥の熱とで、いったん微生物は死滅するはずだが、微生物のつくった酵素がまだ陳年茶葉にたっぷり残っている。
このため、倉庫保存での無加水状態での微生物発酵の立ち上がりが良くなる。
例えば、熟茶は陳年茶葉と似た性質を持っている。加水による微生物発酵である「渥堆」工程の後の熱風乾燥により、いったん微生物は死滅しているはずだが、茶葉に酵素が残っている。
このため、西双版納の倉庫保管では、しばしば金花菌の沸いているのを見つけられる。
例えばこのお茶。
+【大益貢餅熟茶98年崩し】
西双版納からハンドキャリーで上海に持って帰って、餅茶を崩してみたら金花菌がびっしり付いていた。特有の甘い香りが漂った。
空気中に漂う金花菌が茶葉に着地して、じわじわ繁殖するにあたって、金花菌がそのまま食べられる状態の栄養分が熟茶にはある。わざわざ分解酵素をつくって茶葉を噛み砕いたり溶かしたりする必要がない。その点、微生物発酵させていない生茶の原料である晒青茶は、そのままでは食べられないのだ。
陳年茶葉をブレンドすることによって、保管倉庫でまずは金花菌を陳年茶葉だけに繁殖させることができたら、その隣の晒青茶葉に多数の金花菌がアタックを繰り返してじわじわ侵食してゆくだろう。一時的に倉庫の湿度が上がって、茶葉が水分を吸収した時に、金花菌のつくる酵素はより強力に作用する。だから金花菌の活動しやすい28度くらい(だったかな)の気候の時に、雨が続いて湿度の上がる日が続くのはむしろ歓迎なのだ。
紫天樟香青磚80年代プーアル茶
南天公司のお茶に陳年茶葉のブレンドが多いのはこのためだ。
あくまで推測だが、イイところをツイているのではないかと思う。
微生物発酵のスタートがいちばんの難関。
いったん良性の微生物が繁殖すると、あとは楽で、抗菌作用・抗酸化作用・除湿作用など茶葉の品質保持に有利な効果が得られる。
微生物発酵のスタートに水を撒くことができる熟茶づくりは、微生物の繁殖を促し、酵素の作用を最大限に引き出すことができ、有利な展開となるはずだが、それでも水を撒いてから数日の立ち上がりは難関で、失敗すると悪性の菌類が繁殖して腐敗する。熟茶づくりにいちばん神経をつかうところとなる。
水を撒かない無加水発酵のスタートをどのように促すか。
後発酵を手元で行った昔の茶商たちが、あの手この手を考えなかったはずがない。

ひとりごと:
西双版納の手づくり黒砂糖。
サトウキビを絞った汁を、鍋で煮詰めただけ。
ダイ族のおばちゃんがときどき売っている。
後発酵(手元に保存中に微生物発酵)している。
西双版納の黒砂糖
西双版納の黒砂糖
酵母が沸いてアタックアタック。
半年置いておくだけで、小さな泡が吹いたような跡ができる。
砂糖は腐らない。ということは、発酵もしないはずだが、手づくり黒砂糖にはいろんな成分が混ざっていて、ミクロの微生物なら活動できる隙間がたくさんあるのだろう。
麹菌のようなのが表面にうっすら綿をかぶることもある。酵母のつくった成分の上だけに生きられるのだと思う。
もちろん美味しい。消えの早い上質な甘味・旨味。

7532七子餅茶80年代 その2.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山古茶樹
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー上海 密封
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
茶器 : 日本の市川孝さんの茶壺+チェコのマルちゃんの茶壺
7532七子餅茶80年代プーアル茶
7532七子餅茶80年代プーアル茶

お茶の感想:
今日はこのお茶。
+【7532七子餅茶薄紙80年代】
保存熟成のコンディションがあまり良いとは言えない。
埃っぽい味がはじめの2煎めくらいまで強い。
そこで、釉薬のかかっていない素焼きの茶壺で淹れてみることにした。
市川孝さんの茶壺
(日本の陶芸作家の市川孝さんの作。伊吹山の土。)
もしかしたら、雑味を吸い取ってくれるかもしれない。
7532七子餅茶80年代プーアル茶
ほぼ狙い通りになったと思う。
モワンとしたような「7532七子餅茶」の熟成コンディションの悪い茶葉にありがちなダラけたところはなくなった。
お香のような芳しさの陳香が出た。
甘味が吸収されるのか、苦味が効いてシャキッと爽やかな印象。
同席したお客様は倉庫臭を感じたらしいが、ここまでシャキッと清潔感があれば上出来。
4煎ほど淹れてみて、やや単調に感じたので、チェコのマルちゃんの茶壺に入れ替えてみた。
7532七子餅茶80年代プーアル茶
チェコのマルちゃんの茶壺
両者の差が意外に大きくて面白かった。
日本のはシャキーンとした感じ。縦に垂直の線が伸びる感じ。
チェコのはホワーンとした感じ。横に水平の線が伸びる感じ。
消えの良い甘味が出て、ぬるめの風呂に浸かるような老茶の酔い心地と相まって、延々と飲み続ける。
1つの茶葉で2つのお茶を飲めて、得をした気分になった。
7532七子餅茶80年代プーアル茶
葉底(煎じた後の茶葉)の感触は、
昨日の『厚紙8582七子餅茶』に比べたら柔らかい。新芽・若葉の多い感触。
無加水の微生物発酵しているはずだが、微生物は新芽・若葉よりも大葉・茎が好きなので、それゆえに香港倉でコンディションの良い「7532」は少ないのだな。

ひとりごと:
そろそろ白磁の蓋碗に戻ろう。
やはり仕事で土モノを使うわけにはゆかない。
お客様は、土モノで遊んでくださったらよいと思う。

厚紙8582七子餅茶 その2.

製造 : 1985年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 西双版納孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 香港ー広州 紙包+竹皮包
茶水 : 京都御所周辺の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗
厚紙8582七子餅茶プーアル茶

お茶の感想:
お茶会のお客様がないので、
ひとりでじっくりこのお茶をいただく。
+【厚紙8582七子餅茶】
昨日の続きでも、まだまだいける。
15煎は超えていると思う。
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
バニラのような香り。ぜんざいのようなとろみのやさしい液体。
手足の先がゆっくり温まり、風呂上がりのような心地が続く。色が出なくなって、味も薄れてきて、それでも延々とこのまま飲んでいたくなるのが老茶。味を変えたくないし、お菓子で邪魔したくもない。もはや味を求めているのではなく、喉の乾きを癒すのでもなく、なにか別の見えないものを求めている感じ。
茎は真っ黒に変色し、葉はカサカサになりながらも弾力を保つ。
茶葉をここまで変質させてしまうのは、微生物発酵でなければできない仕事。
このお茶をつくった南天公司の周氏は、プーアール茶をこういうふうに見ていたのだ。
南天公司についてはこのページ参照。
+【天字沱茶90年代初期】
数年前まで、これらの老茶を扱っているときは、まだ周氏の仕事を知らなかったと思う。
お茶を知るということ。
文献を疑えるようになること。
人を疑えるようになること。
現象を疑えるようになること。
自分を疑えるようになること。
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
厚紙8582七子餅茶プーアル茶

ひとりごと:
別にお茶を知らなくても、茶商はできるし、お茶の先生もできる。
逆に知っていたからといって、茶商をやってゆけるとは限らないし、良い先生になれるとも限らない。
ま、そんなものなのだ。

厚紙8582七子餅茶 その1.

製造 : 1985年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 西双版納孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 香港ー広州 紙包+竹皮包
茶水 : 京都御所周辺の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗
プーアール茶ドットコムお茶会
プーアール茶ドットコムお茶会

お茶の感想:
当店がプーアール茶の老茶を販売していた時代のお客様が、お茶会に参加された。
差し入れにこのお茶。
+【厚紙8582七子餅茶】
このクラス老茶は当店にはもう無い。
残念ながら、お茶会にはこの数年につくった新茶しか出せない。今回は2010年から2014年までの易武山系統の新茶を4種ほど飲んでいただいたが、その反応は、
「うーん・・・・・・・・・。」
老茶とのギャップに、
「つながりがあるのかないのかわからない。」
と、率直なご感想を頂いた。
つながってきたかどうか?
この問題は、ホンモノの老茶を知るごく少数のプーアール茶ファンにしかわからない問題であり、お茶を売る店としてはもはや考えないほうが良い問題である。しかしながら放っておけないのは、酒造りに米の品種のことを考えないと同じで、ある種の味を追求するには避けて通れない道であるからだ。
当店としては、茶葉の産地および品種と製茶はほぼ特定できたという実感がある。
それなのに、新茶と老茶に大きな隔たりを感じるのはなにか?
お客様とそこを話し合った。
結局、倉庫熟成が違いすぎるという結論に至った。
厚紙8582七子餅茶プーアル茶
無加水状態での微生物発酵。
つまり「後発酵」が、昔と今とではまったく異なる。現在は世界のどの地域の倉庫で熟成するにしても、無加水状態での微生物発酵がうまくいったという話を聞かない。昔の香港の倉庫は、今はもう無い。地価の高騰や気候の変化で、昔のままを維持できなかった。
再現できない。
再現できないのであれば、腐敗させるリスクを犯してまで多湿の環境での熟成を試したくないから、微生物発酵を避けた乾燥状態で保存したい。オリジナルのお茶の熟成は2010年からなので、熟成5年目であるが、その味は老茶とのつながりが希薄であるから、やはり微生物の関与がこの隔たりの要因であると思われる。(もうそれ以外の要因はないと思う。)
古い酒蔵の蔵付き酵母と同じで、微生物のお茶の味へおよぼす森羅万象は、何らかの数値で読み取ることができるほどカンタンなものではない。経験が必要なのだ。昔、易武老街の茶荘のお茶づくりをしていた職人や、香港の倉庫を管理していた茶商の、鼻、肌、眼、耳。それが覚えている美味しい熟成茶ができる環境。ある種の微生物がすでに繁殖している空気。気配。そういうのがわかる人の経験が要るが、もうみんな死んでいる。
米がお酒になる。
米の品種は特定できている。蒸すところまではできる。
ところが、その先の醸造工程が特定できていない。
そういうことになる。
新茶の味をどうこう評価したところで、それは米の砥汁を評価しているのと同じ。酒の評価にはならない。
プーアール茶は後発酵のお茶。
キビシイな・・・。
プーアール茶ドットコムお茶会
プーアール茶ドットコムお茶会

ひとりごと:
プーアール茶業界全体では、もうすでに新茶の評価が重要になっていて、保存熟成による後発酵のことは無かったことにしようという傾向がある。
良い酒になる米と、食べて美味しい米とが異なるように、美味しい後発酵茶になるお茶と、新茶のまま美味しいお茶とは異なる。
どうするかな。
やっぱりここまで来たら、後発酵だよな。
後発酵をやらないのなら、西双版納に住む必要もなかった。お茶づくりに関わることもなかった。体力づくりのためにヨガをはじめることもなかった。

老字号可以興茶磚80年代 その3.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 可以興茶庄
工程 : 生茶のプーアル茶 (陳年茶葉)
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明乾倉 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶

お茶の感想:
なじみのお客様に、
「倉庫臭のようなものまだ残っているかな・・・」
とコメントをいただいて、
ダメなのか・・・と、心配になって確かめてみた。
1980年代までの老茶に経験のあるお客様は、今はもう老茶をあまり買われなくなっていて、最近になって卸売部に出品している老茶は、どちらかというとはじめて試すお客様が多いと思う。
舌の経験が浅いと、美味しいとか美味しくないとか、好みに合うとか合わないとか、そのへんはわかっても、いかほど良いのか悪いのか、値打ちがあるのか無いのか、そのへんはわからないかもしれない。
だから老茶を飲んだ経験者の意見は貴重なのだ。
ほんとうはこの手の老茶は、専門店のお店の主人とお客様とがいっしょに試飲をして、熟成はアウトかセーフか、この味にしてこの価格は妥当かどうかと、ギリギリの線を探りながら仕入れを決める。
今は西双版納でそれができる経験者が周りに一人もいなくて、店長ひとりで決めているから、出品したお茶に自身が持てないのだ。
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶
美味しいと思った。
心配するほどではなかった。
老茶ならではの薬効あらたかな体感があり、心地良い。
一日ずっと飲んでも腹の具合がおかしくなることはなかった。
倉庫臭はたしかに2煎めくらいまであるけれど、倉庫臭にもいろいろあって、香港の飲茶のプーアール茶が飲める人なら、このお茶はむしろ清淡に感じると思う。
ただ、昨日まで搾りたてジュースのように新鮮な春の晒青毛茶を飲み比べしていた舌には、老茶は暑苦しい・・・。
新茶なら新茶。
老茶なら老茶。
それぞれ集中して飲まないと、どちらもダメにしてしまうと思った。
老字号可以興茶磚80年代プーアル茶

ひとりごと:
今の老茶で感動するというのは難しいのかもしれないとも思った。
老茶の味わいは、倉庫の環境とか、熟成による香りとか、茶葉の素質とか、一歩踏み込んだディープな観点で良し悪しを見て、そこで希少なバランスの美しさをもった風味に出会うと心が弾むけれど、その経験がなければ「ふーんこんな味もあるのか」くらいで終わるかもしれない。
もともと、無傷な味の老茶は少ない。
たとえ何十万円する有名銘柄だって、今や無傷ではないだろう。
その傷が、美味しさを汚していないかどうか、味わいのひとつとなっているのかどうか、まるで骨董品を鑑賞するような眼で楽しむ。そこの面白さが理解できないと、廉価な老茶はそもそも粗い茶葉やむちゃくちゃな製茶技術で出来ているのだから、傷の向こうにある美しさを見るところまで辿りつけないかもしれない。
新しいお茶の熟成も同じだ。
熟成の味の美しさという観点に、無傷を求めるような眼では魅力のある味を引き出せないと思う。
シーズンオフになったらまた老茶を探してみるつもりだ。

紫天樟香青磚80年代 その3.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州易武山
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代) 南天公司監修
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明 紙包・段ボール密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代

お茶の感想:
昨日のサンプルの『陳年プーアル茶磚80年代』が美味しいので、
同じく1980年代のこのお茶、
『紫天樟香青磚80年代』(卸売部に出品中)
と比べてみた。
価格差は3倍ほど。
『紫天樟香青磚80年代』は正統派ではあるが、当時としては大衆茶だったと思われる。そういう工夫が茶葉に見られる。
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
紫天樟香青磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
左: 紫天樟香青磚80年代
右: 陳年プーアル茶磚80年代
圧倒的だった。
価格差なりだった。
『紫天樟香青磚80年代』は樟香がスカッと爽快。突き抜ける。
苦味が効いて辛口と思っていたら、そうでもない。すっと切れる甘味が上品。残らない。バランスがよいから甘味が前に出過ぎないだけだった。
価格を抑える工夫をしながらも「上等」の風味を宿す茶葉を原料に選ぶ南天公司はすごい。名を残す努力をしなくても、現物を残せるお茶づくりは良いな。
お客様はこの2つを入手しても、同時に飲み比べてはいけない。比べなければ2つとも美味しくて幸せになれる。

ひとりごと:
生茶でも熟茶でも、どちらに分類してもよい『陳年プーアル茶磚80年代』は「熟茶」に決定。
それでも出品する方向で考えたい。
価格差に納得がゆけば、選ぶ人の自由を残したい。そうしないと当店の本部の老茶のように、「美味しいのがもう見つからないので終わります・・・」ということになってしまう。
お客様も変わってゆく。
いったん舌に基準ができると風味の変化や価格の変化について行けず、楽しめなくなるから仕方がないのだ。かつて何年も熟成させるのが常識であったワインも、熟成させないのが常識となった時代があって、古い客が去って新しい客を得たらしい。(古い客が老いて死んでいったのだと思うけれど・・・。)
熟成のプーアール茶にも新しいお客様が必要。お店は今できる範囲でベストを尽くせばよいのだ。

文革大号熟磚80年代 その1.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県晒青毛茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 磚茶 500gサイズ
保存 : 昆明 紙包・段ボール密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめ蓋碗
文革大号熟磚80年代プーアル茶
文革大号熟磚80年代プーアル茶
文革大号熟磚80年代プーアル茶

お茶の感想:
問屋さんから回ってきた老茶のサンプルのひとつ。
レンガ型に圧延された500gサイズの熟茶で、1980年代だろうとのこと。
1970年代から1980年代の磚茶で「7581」や「7562」などの茶号のつかないお茶、つまり鑑定できないお茶は、とりあえず「文革磚」にしておくということにいつの間にかなっているみたいで、それにしたがって『文革大号熟磚80年代』とした。「お茶の名前は売る人が適当に考えてくれ」、「鑑定したければ自分で調べてくれ」という投げやりな感じの老茶しか、味と価格が釣り合いそうなのは残っていない。
それでいいのだ。それがいいのだ。
本来、プーアール茶はそういう「野趣」が魅力だったと思う。
民間の航空機が西双版納に降りたのが1990年。山だらけで鉄道も高速道もない時代は昆明から車で崖っぷちだらけの山道をクネクネ4日3晩かかっていた。世界のお茶の故郷でありながら、最後の未踏の地だった。どんなふうにお茶がつくられているのか、どんな民族がどんな生活をしているのか、何年につくられものなのか、人づてに聞く少ない情報から想像をいっぱいにふくらませて、長い旅をしてきて今手元にある茶葉と向き合う。
一対一。
すごい様相の茶葉を目の前にして、情報の裏付けなんていらない。湯を注いで、薫るか薫らないか、美味しいか美味しくないか。いろいろ飲んでゆくうちに茶山や茶樹や季節や熟成の個性を風味に見つけてゆくのは、ちょっとした冒険だったに違いない。子供の頃に読んだ冒険小説のワクワク感を大人になっても蘇らせるジュール・ヴェルヌの小説『地底旅行』のようなものだ。
1980年代の中頃から台湾でこれが流行となり、雑誌社がお茶屋さんと組んで、産地の紹介、銘柄の鑑定、熟成の良し悪しを解説してゆく。お茶ファンもそれを喜んで、やがて「良いお茶の基準」みたいなのができてくる。意図しなくてもできてしまうのだ。そして野趣が消えてゆく。
鑑定可能な有名銘柄のお茶に宝物を発掘する楽しみは残されていないが、無名のお茶にはまだその可能性が残されている。
文革大号熟磚80年代プーアル茶
美味しい。
陳化した熟茶独特の香りがある。
何度か試飲を重ねて、他の年代モノの熟茶にはない個性が見つかれば当店で扱いたい。
文革大号熟磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
文革大号熟磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
文革大号熟磚80年代と陳年プーアル茶磚80年代
左: 文革大号熟磚80年代
右: 陳年プーアル茶磚80年代
昨日のサンプルの『陳年プーアル茶磚80年代』と飲み比べてみた。
ずいぶん違う。
こうするとやはり「熟茶」と「生茶」という感じがするが、『陳年プーアル茶磚80年代』はどちらに分類してもよいのなら、あえて「熟茶」にしたほうがよいかもしれない。お求めになったお客様にささやかなサプライズをプレゼントできる。

ひとりごと:
たとえ高級茶に値するお茶でも、それが美味しいのかどうか、どのくらいの価値があるのかを、自分で決められる人よりも自分で決められない人のほうが多いと思う。
このお茶はどのくらい美味しいか、どのくらいお買い得なのかと、手がかりになる情報がないとお茶は売れない。茶葉そのものの品質や価値よりも、お茶という商品としての客観的な保証が大事なのだ。
保証できるお茶はよく売れて、保証の難しいお茶は売れ残る。
だから老茶探訪は尽きることがないだろう。埋もれた宝がいくらでも出てくる。
良し悪しの基準なんて持ってはいけない。いつも手元のこのお茶と一対一で、探索の旅をはじめるのだ。


茶想

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