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一扇磨青餅2016年・緑印 その3.

製造 : 2016年03月28日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
本
万代屋

お茶の感想:
開高健の『宝石の歌』。
学生のときと、10年くらい前にもう一度読んだ。
今また読むと、新しい感動があった。
宝石の傑作もまた、おしつけがましさがない。
「・・・人工物も天工物も、至上の傑作には、はからずも、同じ顔がある。顔のない顔がある。・・・・」
そうだよな。
茶葉の話をするのが嫌になって、ブログの更新が1ヶ月ほど止まった。
しかし、いくらやかましく言おうが、茶葉の実力というか素質というか、そこは動かない。変えられない。
情報に惑わされて、そのもののチカラをまっすぐ見るのは難しいことも、昔から変わらない。
大丈夫だ。
また話をつづけようと思う。
外
さて、熟成のこと。
茶葉に空気中の水が入ってきて「風味がぼやけた」と、5月の中頃に話していた。
7月、梅雨はまだ明けていないけれど、意外と茶葉はカラッとしている。
空気中の水は温かいほうから冷たいほうへ流れる。
おそらく今は、茶葉のミクロの繊維の中のほうが温かくて、水が外に吐き出されたのだ。
あくまで推測であるが、それっぽいことが起こっている。
鼻や指の感覚で、そうなのじゃないかな?ということ。
5月から変化を追いかけていたこのお茶。
+【一扇磨青餅2016年・緑印】
餅茶
雨の音で湯の沸く音が聞こえない。
しっとりした風味にしたくて茶葉を少量。
熱々の湯を注ぐが、小さめの茶壺だからおそらく温度が下がるのは早め。
ぬるめの湯でゆっくり蒸らす。
茶壺
色
1ヶ月ほどで味が柔らかくなった気がするが、たぶん気のせい。
雨のせい。茶器や淹れ方のせい。炭火で湯が沸くのに1時間も待ったせい。
熟成がどのくらいなんてわからない。
でも嬉しい。
葉底

ひとりごと:
保存熟成の場所を移動させることになった。
予期しないことがあって、仕方がない。
振り返ると、これまでの10年間でも6回ほど移動させてきた。
周囲の環境が変わってダメになったり、家主さんの都合が変わったり、経営難で縮小したり、熟成が思わしくなかったり。
こんなはずじゃなかったけれど仕方がない。
これから先の10年間も安定しないと覚悟はしているが、一箱20キロ以上ある茶葉だから、移動のたびに階段を上がったり下がったり、クルマに積んだり降ろしたり。腕や肩や腰に食い込んだ重さの記憶が刻まれていて、想像すると冷たい汗が出る。
10年間の茶葉の変化はちょっとなのに、人間の変化は大きいよな。
長年熟成のお茶の味は、大事にされてきた古い木造の建築物を見るのと似た感動がある。

一扇磨青餅2016年・緑印 その2.

製造 : 2016年03月28日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯 鉄瓶・炭火
茶壺

お茶の感想:
熟成は茶葉の繊維に出入りする水が影響する。
となると、品種特性の問題でもある。
例えば、糸の太さや織り方とかで布の質は様々になる。これにちょっと似ていると思う。
繊維はミクロすぎて見えないけれど、茶葉のカタチや質感に現れるところはわかる。
餅綿
幅の細い茶葉に長く柔らかい茎。
ピンピン跳ねるような弾力。
昨日このお茶を崩して気付いたのだが、これは品種特性のものだ。
+【一扇磨青餅2016年・緑印】
紹介ページでは「采茶のタイミングが少し早かったのが原因」と解説していたが、それだけじゃない。
もともとこういうカタチの、つまりこういう性質の茶葉だったのだ。
このカタチには見覚えがある。
最近ではこのお茶もそう。
+【刮風八樹青餅2018年 その1.】
おなじ漫撒山。
西双版納の古茶樹の品種特性は山に属する。
兄弟のようなのが漫撒山一帯にチラホラあるのだろう。
大きな谷を挟んだ対面にある革登山にも似たのがあった。
葉
泡茶の一煎・二煎めが、「あれ?」と思うくらい出ない。味がない。
そこも『刮風八樹青餅2018年』と似ている。
味の出方も繊維の性質が影響していると思われる。
試飲会で一煎めの味がないときのお客様の反応・・・。
たぶんドキドキしているよな。
実はこっちもちょっとドキドキしている。
煎を重ねても淡々としている。
「茶葉の量、間違ったんじゃないの?」と、お互いに思っていたりする。
でも大丈夫。
味がなくても口感は充実している。
泡茶
3杯も飲むと茶酔いがくる。
昇ったり降りたりしない。水平方向にスライドするゆったりした酔い。
潮が満ちて海の水面が上昇してくるような満たされ感。
かすかにお香のような落ち着いた香り。
熟成香と思われる。
できたてのときに白花香があったはずだが、その鮮烈はもう影すらない。
味の印象はあまり変わらない。
西双版納の倉庫で湿気た茶葉にありがちな、干し葡萄のようなダラけた甘酸っぱさはない、透明で清らかな風味を保っている。
熟成の方向に間違いはない。
ただ、すでに4年経っている。
微妙すぎるだろ。
誰にでも違いのわかる到達点までゆくのに、どう見てもあと50年はかかるだろ。
このお茶は美味しいからあと10年も残らない。
いや、そういう問題じゃない。
50年後には生きていないし。
葉底

ひとりごと:
わかっていても止められないし。
今年も来年も50年後を夢見て、また新しいお茶を保存してしまうのだ。

一扇磨青餅2016年・緑印 その1.

製造 : 2016年03月28日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
青餅

お茶の感想:
5月に入ってから、生茶の風味がやや寝ぼけている。
保温ボトルで飲む分にはわからないが、茶壺や蓋碗でちゃんと淹れるとすぐにわかる。
3煎めまでがシャキッとしない。
4煎めにやっと目が覚める。
目が覚めてからは、いつものように美味しい。
湿気ているらしい。
茶葉の繊維に水が入っている。
このお茶。
+【一扇磨青餅2016年・緑印】
餅茶
泡茶
茶箱で熟成中の一枚を取り出した。
やはり寝ぼけた感じである。
やはり4煎めから目が覚める。
天気、気候、場所、保存の器、熟成は森羅万象なので正解はひとつにならないが、この茶葉の場合、手元の保存環境の場合、許容範囲である。
そのままにしておく。
天気がかわり、季節がかわり、茶葉の繊維に入った水が勝手に出てゆく。
なので、飲む分だけ醒茶する。
今回は茶缶をつかって、何回分かをまとめて醒茶しておく。
炭団のやわらかい熱で温めた。10分くらい。
天日干しでもよいが、1時間はかかる。
ぜったいに焦がさないこと。
香りを立ててもいけない。
茶葉の温度を上げて水を外に出すだけが目的だから。
茶葉
茶葉
指
途中で茶葉をさわると、指の腹にかすかな蒸気を感じる。
茶缶
常温で2時間くらい冷ましてから蓋をする。
そのまま保存すればいつでもすぐに淹れられる。
餅茶はもとの茶箱に戻した。
茶箱には保温性がある。
そして蓋は意図してゆるくつくられている。
茶箱の外側と内側に気圧や温度の差が生じると、空気がわずかに入れ替わる。
たぶんそれが大事。
コーヒー豆やナッツ類を保存するキャニスターのゴムパッキンで密封するようなのは呼吸できないから、何年も保存熟成させるのは向かない。
茶箱
茶葉が摘まれる前の生きていたとき。太陽を浴びて光合成をしていたとき。
茶葉はたっぷり水をたたえて、繊維の中でその水は流れていた。
お茶に加工されてからも繊維にその記憶が残っている。
生茶の製法はとくに繊維の記憶を残しやすい。
水を含みやすく吐き出しやすい。
昔のプーアール茶はあまり神経質にならずに済んだ。
20年・30年と熟成がすすむにつれ、繊維が老化して記憶を失って、水を含みにくくなるから。
赤ちゃんの肌はホヤホヤプニプニで老人はシワシワカサカサ。それと同じ。
円盤型の一枚357g規格の重量が、熟成30年モノくらいで330gくらいに減っているのはよくあること。
減った分の27gはどこへ行ったか?
これ、おそらくほとんどが水。
若いときの繊維なら含むことができた水。
水以外で減ったのは、粉になってポロポロこぼれた分とか、昔の香港の倉庫なら微生物や茶虫が食べた分とか。
茶葉の吐き出した水が容器の中に溜まったままになるといけない。だから保存容器は呼吸できるのがよい。
お茶を飲む前に水を出す。
醒茶は、保存熟成の生茶のプーアール茶を飲むには大事な技術なのだ。
醒茶
泡茶
醒茶後は一煎めからシャキッとした。
シャキッとしてもなかなか姿を表さない味。
これはこのお茶の持ち味だから。

ひとりごと:
1リットルの保温ボトルは、鉄瓶で沸かした湯ののこりを入れておいて、次の日にまた沸かして使えるので便利。
klean kanteenのはゴツいけど、カッコいいよな。
カッコいいから使いたくなる。
使うから好きになる。
保温ボトル
重いよ。
でも、重さって大事だ。

章朗古樹春餅2016年・黄印 その3.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
保存 : 密封
茶水 : 京都地下水
茶器 : 保温ボトル 鉄瓶・炭火
入り口
根っこ
花
道

お茶の感想:
山に行った。
風が止んで穏やかな空気。
2日前の強風の日とはガラッと雰囲気が違う。
雲ひとつない青空。
陽気につつまれて、子どもたちはキャーキャーはしゃいで、茶友たちはおしゃべりになっていた。
街
ところで、空気に味があるのを見つけた。
匂いというよりは味。
なぜかというと、鼻ではなくて舌とか口の内側とかで感じているつもりだから。
味覚と臭覚は切り離せないから、ほんとうは匂いが原因で舌や口になにかを錯覚させるのかもしれない。
ま、そんなことはいい。
道すがらパクパクして口の感じを確かめた。
春の若葉っぽい刺激がある。
街
こう仮定してみる。
空気中を漂うのは味の成分そのものではなくて、味の成分のカタチを振動に置き換えた水。水が伝達している。
例えば虫が葉っぱに擬態するみたいに、水がその成分のカタチをコピーしているイメージ。
春の新緑をコピーした水が空気中を漂う。
舌や口がその振動を受けて、脳が春のお茶を連想する。
たしか仙人は霞を食べているのだったよな。
今日はこのお茶。
+【章朗古樹青餅2016年・黄印】
お茶
殺青のときに、なぜか巴達山の茶葉はなかなか火が通らない。いつもより長時間炒っている気がする。
薪がまだ新しくて水分を持っているせいか、炎が激しい。
この2つの作用なのかどうか知らないが、お茶の味に火の記憶がある。
アルコール度数の高いお酒のような、”烈”の刺激。
汗をかいて登ってきて、晴天の太陽に照らされて、遠くを眺めながら飲む。
1杯飲むと、スッと身体のこわばりがとれる。
2杯飲むと、吐く息・吸う息が力強くなる。
3杯飲むと、足の裏がしっかり地面につく。
4杯飲むと、目に見える色彩がはっきりしてくる。
この身体に伝わるスピード感は、成分由来ではないのでは?というのが自分なりの見方。
水が火の記憶を身体に伝える。
コピー1 鮮葉の水分が鉄鍋ごしに伝わる炎のゆらぎをコピーする。
コピー2 茶葉のミクロの繊維に炎のカタチがコピーされ、形状記憶される。
コピー3 お湯を注いだら、茶葉から湯に炎のカタチがコピーされる。
コピー4 茶湯の炎のカタチが、人の口・喉・お腹の水にコピーされる。
お茶を飲んだら身体に火が入る。
晴れの日の山にピッタリ。
『章朗古樹青餅2016年・黄印』を飲む会。会場は山の上。
こんなのを一度してみたいな。
老茶
その他に飲んだお茶。
+『章朗古樹紅餅2016年・青印』
+『昆明老方磚92年』
根

ひとりごと:
新型コロナに対する恐怖心には個人差があって、どのくらい怖いと感じているのかわからない相手に、自分がどう振る舞ってよいのかわからない。
ヘラヘラ笑っていたらムカつくかもしれないし、難しい顔をしていたら心配するかもしれないし、ちょうど中間の顔にしたら目の下の筋肉がヒクヒクして止まらなくなるし。
迷っているうちに、自分の元のポジションがわからなくなる。
なんだこの不安定な感じ。
そのまま放置してみよう。

香椿林青餅2016年 その4.

製造 : 2016年4月1日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 保温ボトル 鉄瓶・炭火
林
山
トレイル
街

お茶の感想:
今日も山歩き。
自転車と徒歩で行けるから密集には近付かない。
けれど、山の上から見た街はどこも密集。
家の中も外も大差ないように見える。
みんなと同じ空気を呼吸している。
街
密集
しばらくしたら街そのものが感染源になるのかもしれないな。
そうなったら自分も感染して闘うぞ。
今日はこのお茶。
+【香椿林青餅2016年】
初回の山歩きで3時間半かけた道のりを2時間半でゆく。
息が荒くハアハアしながらも、ペースを落とさないよう歩きつづける。
汗をかいて、足のふくらはぎや太ももに疲労が溜まってきた終盤で一休み。
お茶を飲む。
茶
生茶
生茶は晴れのお茶。
太陽や風に負けないお茶。
一杯ごとにチカラがみなぎってくる。
早春のチカラ。火のチカラ。生のチカラ。太陽のチカラ。
口や喉にお茶の涼しい感覚が残って、一息ごとに山のチカラが入ってくる。風の吹くように気持ちが自由になる。
空
飲み終わって歩き出したときに、茶友が「今日は前回より足が軽い。」と言った。
しばらくして、「いや、さっきお茶の効果だ。」と訂正した。
そう。
生茶は夏に飲むけれど、それは汗をかくからよいのだ。
とくにジョギングした後などが気持ち良い。
もしも運動不足で汗をかかない状態で飲むと、”寒”が入ってきたり、眠れなくなったり、生茶のパワーが逆効果になる。毒になる。
山歩き
お茶は身体に穏やかなのがよいという判断基準を持っていた茶友は、春の生茶の強いチカラもクスリになることに気付いたと思う。
春の新緑が日に日に色づいてきたように、自分たちの身体も日に日に変化している。
健康を維持するのは、安定ではなく、不安定な揺れにバランスを取り続ける状態なのだ。

ひとりごと:
噂で、近所に空き巣が入ったと聞いた。
新型コロナウィルスの騒ぎで生じたスキを狙われたのかもしれないな。
怖い怖いと恐怖を自分で増幅していると心に弱みができる。スキができる。そこを狙ってくる詐欺や洗脳があるかもしれない。
コロナ真理教の洗脳はテレビやネットでとめどなく入ってくるから、離れて忘れる時間をつくったほうがよいな。

漫撒春眠紅餅2016年 その2.

製造 : 2016年03月21日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 散茶
保存 : お菓子の缶
茶水 : 井戸水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
庭
茶器

お茶の感想:
花粉症なのでこの季節は辛い。
目や鼻や喉がムズ痒くて、痒いと思えば思うほど痒くなるから、炎症にまで発展しないよう熱を冷ますお茶で忘れたい。
涼のお茶。
+【漫撒春眠紅餅2016年 その1.】
”陰”でもあり、”あっち”でもある。
前回の試飲の記事は2016年9月。鮮味が強く残っていることや、白茶の性質があることを書いていた。
それから3年半。今そこに注目してみたら、鮮味は消えて、白茶の熟成に似た薬味が出てきている。
茶湯
いいお茶だな。
内輪だけで集まって静かに飲みたかったけれど、あまり静かになれない。
そうか。
はじめて会う人同士がいると、お茶よりも人に気を取られるのだな。
ま、仕方がない。
お茶に気を取られないということは、それこそ”陰”の作用かもしれない。
葉底
花粉症の痒みも忘れていた。
忘れていることさえ忘れていた。
今になって振り返ってみて、そういう状態だったなーとわかる。
当初の涼をとる目的はどうでもよくなっている。
飲んだ瞬間の反応に意識を向けるだけでは、こういうお茶の評価はできないよな。

ひとりごと:
人の出会いにもそういうことがあるかもしれない。

困鹿山単樹の散茶2016年 その2.

製造 : 2016年04月
茶葉 : 雲南省思茅市困鹿山
茶廠 : 困鹿山の農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
鉄瓶

お茶の感想:
前回の『朝のお茶・晩のお茶8月10日』の、夜のお茶にはこの2つを選んだ。
+【92紅帯青餅】
+【困鹿山単樹の散茶2016年】 
暑い一日をすごした疲れと、弱った胃腸。
癒やしのお茶ならとにかく熟茶だけれど、8月10日は昼の熱気が盆地にこもったまま夜になった。エアコンのない室内の気温32度。氷の角柱を2つ置いてその温度。炭火があるしな・・・。熟茶の味を想像するだけで汗が出てくる。
余談だが、熟茶の量産がはじまったのは1973年。最大の消費地である広東や香港の飲茶レストランのエアコンの普及と熟茶の普及はシンクロしている。
あらかじめ暑い夜になることが予測できたので、紅茶にするか熟成感のある生茶にするかで迷っった。
迷ったときはサンプル茶箱の整理。
サンプル茶葉箱
茶葉の保存にプラスチックバッグを使わないようにして、クラフト紙の袋にすべて入れ替えが終わったところ。トタンの箱の中に石油製品はひとつもない。スッキリした。
整理がてら、あの茶葉この茶葉を回想してみる。
それで、この2つがピタッと決まった。
92紅帯と困鹿単樹
左: 92紅帯
右: 困鹿山単樹
この2つはいろんな意味で対局にある。
熟成感のある生茶という点では似ているけれど、性格がまるで違う。
「良いお茶は、広がる方向がはっきりしている。」
いつか上海の茶友がそんなことを言っていたが、今回の2種はタテとヨコ。
タテに広がる『92紅帯青餅』。
ヨコに広がる『困鹿山単樹の散茶2016年』。
チェコ土の茶壺
茶葉の水分
『92紅帯』は、切り戻しされて低く仕立てられた古樹の、早春の新芽・若葉。
『困鹿山単樹』は、単樹で幹が高く一本伸びている古樹の、晩春のよく育った老葉。
まず成分構成に違いがある。
新芽・若葉・老葉と育つほどに茶葉の役割が異なってくる。内容成分もそれぞれに異なる。例えば光合成による生産活動をはじめるとか。
茶湯
成分構成だけではない。
製茶は、鮮葉の形状や繊維の質や水分量など物理的要素が仕上がりを左右する。
『92紅帯』は、より緑茶的に仕上がった生茶。
『困鹿山単樹』は、より白茶の寿眉的に仕上がった生茶。
白茶的に仕上がった理由は殺青による火入れが浅いから。
昨年のお茶に似た状況のがあった。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
火入れが浅いのは茶葉の水分が少ないので焦げやすいから。火入れをほとんどしない白茶に似て当然。
老葉
『困鹿山単樹』は2016年の熟成期間の短い、プーアール茶的には新しいお茶であるが、茶友が西双版納でダイ族の壺に1年間入れて湿気たせいで予期せぬ軽発酵がすすんでいる。リカバリーのために自分の手元で炭火の遠火で乾燥させたが、そのときすでに白茶の寿眉的なバニラっぽい甘い香りがしていた。
新芽・若葉よりも老葉のほうが湿気に強い。老葉のほうが茶葉のミクロの水道管がしっかりしていて排水しやすい構造になっている。もしも新芽・若葉の柔らかい茶葉だったら、湿気てカビてダメになっていただろう。
ホンモノの寿眉も老葉に育つのを待ってから采茶するので、茶葉の成長度も同じような感じ。
茶湯
ま、こうしたこと諸々がタテへの広がりとヨコへの広がりの違いをつくるのだろうな。
『困鹿山単樹』は”陽”な感じで心が解放されて、飲みだすと会話がはずんだ。
白茶は熱を除く作用があるとされるが、このお茶もそうだったかもしれない。暑くてもスッキリしていた。
ちょっと元気になって、夏の夜の夢見心地を味わえたと思う。
葉底

ひとりごと:
困鹿山単樹はこの記事を書くのに最後の茶葉を使った。
明日の分はないから。

刮風寨冬片老葉2016年 その4.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の片口+炭火
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す

お茶の感想:
炙るお茶を試す。
もういちどこのお茶。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
茶葉を炙る
茶葉を炙る
漫撒山の原生林のまん中にある刮風寨茶坪。
写真のある記事。
+【刮風寨古樹紅茶2015年・秋天 その1.】
こんな老葉ぜいたくすぎるが、茶漬けにする。
炙り具合は、茶葉の香りが芳ばしくなってくるのでカンタンにわかる。
白いご飯と片口と
湯を注ぐ
茶葉アップ
火の通った茶葉は湯に浸かると黒く変色する。まだ緑の残っている部分はあまり火の通っていないところ。このムラのあったほうが風味がふくらむ。
片口から湯気
お茶漬け
茶葉のほんのり焦げた芳ばしさと、大葉の透き通った旨味と、米の甘味と。
これまで食べた中でいちばん美味しいお茶漬け。
勉強会・京都 炭火とプーアール茶 1月27日・28日にて試食予定。

ひごりごと:
乳酸発酵の製造工程があると思われるちょっと酸っぱいお茶。
+『昆明老方磚92年 その1.』
これもお茶漬けを試してみた。
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
銅のヤカンで炭火の低温90度くらいで30分間煮出した。
お茶の酸味と米の甘味の相性がよいかと思ったが、これはダメだった。
陳香(お香のような香り)のクセが強くて、米のほんのり甘い香りを消してしまう。

刮風寨冬片老葉2016年 その3.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 銅のヤカン+炭火
炭火

お茶の感想:
プーアール茶は沸き立ての熱い湯で淹れるのが基本とされている。
蓋碗なり茶壺なりに熱湯を注いでサッと湯を切る短時間の抽出により、茶葉を煮やさないようにして、お茶の新鮮な香りや涼しい味わいを求める。熱い湯で煮やしてしまうと重くなって涼しさを損なう。また、90度以下に温度を下げると煮える問題はないが、香りも味もぼやけて涼しさを欠く。新しい(熟成数年くらいの)生茶は生っぽさが鼻につく。
熱湯で淹れるプーアール茶
蓋碗なり茶壺なりに湯の熱が吸収される分も考えて、やはり熱湯がふさわしい。
西双版納で淹れていたお茶を上海に持ってきて淹れると、上海のほうが美味しくなる。
海抜600メートルくらいの西双版納の沸点は97度くらい。海抜0メートルくらいの上海の沸点は100度くらい。たった3度の差がお茶の味に影響する。
温度が低くても、持続させて熱量でカバーしてはどうだろ?
茶馬古道のチベットやネパールなどの山岳地帯の遊牧民がヤカンで煮たお茶にバターを混ぜて飲むのをテレビ番組などで見るが、海抜3000メートルを超えるところでグツグツ沸かしても90度に達しないはずだから、もしかしたら煮え味の問題はないかもしれない。
そこで、炭火の出番。
炭火
銅のヤカン
炭火の湯を観察していると、90度から80度くらいの”静かな温度”が長く続くことに気付く。
これは他の熱源の電気やガスでは難しい。
電熱ポットには温度調整できるものがあり、80度に設定すればよいと思うかもしれないが、その構造上センサーが80度から外れた温度を感知すると電熱のオン・オフを頻繁に繰り返し、ポットの中の湯は熱源に近いところは熱くて遠いところは冷たくて、暖流と寒流が混ざり合い湯は荒れている。こんなところに茶葉を放り込んだら味も荒れるだろう。
炭火の照射熱がヤカンを下からふんわり包み込んで生まれる”静かな温度”の湯。
温度計は見なくてもよい。
鉄瓶なり銅のヤカンなりで湯を沸かすのに慣れてくると、沸騰するまでのサインをいくつか見つける。湯気の出方とか、湯の動きとか、鉄や銅の微かな音鳴りとか。沸騰する前後の湯を飲んで、口の感覚で違いを覚える手もある。
そうすると、だいたい80度から90度くらいをキープする炭火の加減がわかるようになる。
まずこのお茶を試す。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
刮風寨冬片老葉2016年
刮風寨冬片老葉2016年
湯気
茶湯の色
30分ほど湯に浸かってこの透明な茶湯の色。
味も透明感ありながら生っぽさはない。もともと火入れの甘い製茶なので、白茶の寿眉に似た草っぽい生さがあったが、香りは新鮮味を残しつつ味わいはしっかり晒青緑茶。いわゆる生茶のプーアール茶。大きく育った茶葉なので、渋味・苦味がほとんど無く、ぼんやり輪郭の見えない味。
このくらいが飲み頃だと思うが、試しにさらに1時間浸してみた。
炭は燃え尽きるのを待つだけだが、途中隙間が空いて空気の通りが良くなると火力が上るので、たまに見て火箸で炭のポジションを調整する。
銅のヤカンの中
茶湯1時間後
香りは、草というより茶葉に近づき、漢方っぽいスパイスもある。
味は、柔らかい苦味とちょっとの渋味が加わりキリッとしてきた。
煮えたときに出てくる濁りや、舌にねっとりした感じは無い。爽やかさを保っている。
茶葉の性質上、このお茶はこの淹れ方が最も適しているだろう。
次回はこの淹れ方が適してなさそうな茶葉で試そうと思う。

ひとりごと:
炭火には、茶壺や蓋碗のように手の延長になってくるような感覚がある。
火箸で炭と炭の隙間を調整したり、角度を変えてみたり。灰匙で灰を寄せてみたり、灰を避けてみたり。
まだ思うようにはゆかないけれど、自転車に乗ってバランスをとるような身体の感覚。
電熱のダイヤルやガスのつまみを調整するのとは違うよな。
炭火使用後
炭火

困鹿山単樹の散茶2016年 その1.

製造 : 2016年04月
茶葉 : 雲南省思茅市困鹿山
茶廠 : 困鹿山の農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
上海の朝
上海の夕方

お茶の感想:
炭火で沸かす湯の効果は大きくて、ガスや電気コンロと比べたらその差は誰でもわかる。
けれど、実際に試して確かめる人は少ないだろう。
勉強会で実証して見せても、明日から炭火を使おうとする人は少ないだろう。
火が危険だとか、一酸化炭素中毒が怖いとか、面倒だとか、時間がかかるとか、マイナスイメージをふくらませて使わないで済まそうとするだろう。でも実際はコツを掴めばそれほど危険でもないし不便でもない。上質な炭さえ手に入れば室内でニオイが気になることもない。白い灰が飛び散って部屋を汚すかもしれないけれど、灰には洗剤みたいな効果があるので、掃除をしたらむしろキレイになる。
炭火
お茶の味と薬効はリンクしているから、炭火で淹れた味が違うということは身体への効果も異なるはず。同じ茶葉・同じ水・同じ茶器を用いても火の性質が違うだけで異なる結果を得ている。
そこまで言っても、炭火にする人は少ないだろう。
そんな現実を考えると、ちょっとガッカリする。
炭炉上海にて
上質なプーアール茶を求めて、山の生態環境に注目したり、茶樹の健康に注意したり、薪火の殺青や手もみの揉捻にこだわったり、星のめぐりや太陽や風に翻弄されたり、ひとつひとつの大事なことが、みんなにとってはそれほど大事じゃないらしい。現場で一喜一憂している自分がアホみたいだ。
さて、この市場環境の中で、トップクラスの上質なお茶は姿を隠すようになってきている。
もともと量が少ないから、ほんとうに好きな人といっしょに飲める時間を共有するときだけに茶葉を消費したい。
たぶん、ワインの世界でもそうなっているように、お茶もそうなっている。
そういうお茶は、山が深いとか、森の影に隠れた茶樹で新芽・若葉がちょっとしか出ないとか、この何年か一度も采茶(茶摘み)されていないとか、山に入って采茶のタイミングが合うことが奇跡だとか、出会うだけでも運がいるし、つくるのは苦労する。苦労しすぎると商品にできなくなる。
『困鹿山単樹の散茶2016年』はそんな茶葉。
西双版納の茶商友達がほんの一握り、20gほど分けてくれた。
困鹿山単樹の散茶2016年
上海で古い茶友らと飲む機会があった。
困鹿山は西双版納の北の清朝1800年代の貢献茶ブームのときに易武山の品種が持ち込まれて植えられたので、甘いお茶。茶文化のお茶で、生活のお茶ではない。
困鹿山には樹高3メートルほどの古茶樹はたくさんあって、そのクラスのは何度か飲んだことがあった。美味しいお茶だった。「単樹」は10メートルを超える茶樹が選ばれる。単樹のお茶づくりは、周囲の生態環境、茶樹の健康、品種の見極め、茶摘みのタイミング、そんな総合的な理想が求められる。少ない単樹からさらに理想の1本が選ばれるわけだから、価格もそれなりになる。安い価格の単樹も流通しているが、それはつまりいろいろ理想的ではないからだ。
最近ではこれがベスト。
『刮風寨単樹小餅2016年 その1.』
この『困鹿山単樹の散茶2016年』はそれに並ぶか、さらに超えるレベルだと思う。
困鹿山単樹の散茶2016年
単樹の上質なお茶には共通して、森の日陰に育った涼しさと透明な甘さがある。
いちばんわかりやすいお茶の味の特徴は、渋味に嫌な刺激が一切無いこと。
いちばんわかりやすい体感の特徴は、首から背中から腰のあたりまでの筋肉がゆるんでリラックスできること。
口が喜ぶ。身体が喜ぶ。いつまでも飲み続けていたくなる。10煎を超えて茶の色が出なくなっても離れがたい。
遠い昔に人間がお茶の葉を飲みものにしたときの、初対面の印象ってこんなのだったと想像する。
茶樹の栽培に人の手が入って、茶樹が人を嫌って性質を変えて、お茶の味や体感が悪くなるのをなんとかお茶づくりの技術でカバーしようとして、製茶が高度になってゆく。烏龍茶なんかは300年くらいそういう流れでお茶づくりが成熟してきたのだろうか。
ご苦労さんと思う。

ひとりごと:
この『困鹿山単樹の散茶2016年』は陶器の壺で熟成されていた。
プーアール土のヤカン
写真は同じ土で焼かれたヤカン。
粗い土で柔らかくて、水漏れするので、糯米を炊いて水漏れを止めてから使う。これをつくる村では昔からそうしてきたらしい。
水漏れするくらいだから湿気もとおす。西双版納の湿気のために、たった1年で中の茶葉の色は紅茶のように赤黒くなっているが、湿気た嫌な臭いや味はしない。うまい具合に熟成味が醸されている。老茶のように”温”の性質で、飲んでからしばらくして身体がポカポカ暖かい。ちょっと肌寒くなりかけた上海で飲むのにちょうどよかった。
生茶は熟成10年めくらいまではどうしても”寒”の性質が強いので、たった1年でトラブル無しに性質を変えられるならこの陶器はすばらしい。
茶葉の成分に独特のものがあってたまたまこうなっただけかもしれないので、もうちょっとこの陶器を使った熟成茶葉のサンプルを集めてみる。


茶想

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