プーアール茶.com

困鹿山単樹の散茶2016年 その2.

製造 : 2016年04月
茶葉 : 雲南省思茅市困鹿山
茶廠 : 困鹿山の農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
鉄瓶

お茶の感想:
前回の『朝のお茶・晩のお茶8月10日』の、夜のお茶にはこの2つを選んだ。
+【92紅帯青餅】
+【困鹿山単樹の散茶2016年】 
暑い一日をすごした疲れと、弱った胃腸。
癒やしのお茶ならとにかく熟茶だけれど、8月10日は昼の熱気が盆地にこもったまま夜になった。エアコンのない室内の気温32度。氷の角柱を2つ置いてその温度。炭火があるしな・・・。熟茶の味を想像するだけで汗が出てくる。
余談だが、熟茶の量産がはじまったのは1973年。最大の消費地である広東や香港の飲茶レストランのエアコンの普及と熟茶の普及はシンクロしている。
あらかじめ暑い夜になることが予測できたので、紅茶にするか熟成感のある生茶にするかで迷っった。
迷ったときはサンプル茶箱の整理。
サンプル茶葉箱
茶葉の保存にプラスチックバッグを使わないようにして、クラフト紙の袋にすべて入れ替えが終わったところ。トタンの箱の中に石油製品はひとつもない。スッキリした。
整理がてら、あの茶葉この茶葉を回想してみる。
それで、この2つがピタッと決まった。
92紅帯と困鹿単樹
左: 92紅帯
右: 困鹿山単樹
この2つはいろんな意味で対局にある。
熟成感のある生茶という点では似ているけれど、性格がまるで違う。
「良いお茶は、広がる方向がはっきりしている。」
いつか上海の茶友がそんなことを言っていたが、今回の2種はタテとヨコ。
タテに広がる『92紅帯青餅』。
ヨコに広がる『困鹿山単樹の散茶2016年』。
チェコ土の茶壺
茶葉の水分
『92紅帯』は、切り戻しされて低く仕立てられた古樹の、早春の新芽・若葉。
『困鹿山単樹』は、単樹で幹が高く一本伸びている古樹の、晩春のよく育った老葉。
まず成分構成に違いがある。
新芽・若葉・老葉と育つほどに茶葉の役割が異なってくる。内容成分もそれぞれに異なる。例えば光合成による生産活動をはじめるとか。
茶湯
成分構成だけではない。
製茶は、鮮葉の形状や繊維の質や水分量など物理的要素が仕上がりを左右する。
『92紅帯』は、より緑茶的に仕上がった生茶。
『困鹿山単樹』は、より白茶の寿眉的に仕上がった生茶。
白茶的に仕上がった理由は殺青による火入れが浅いから。
昨年のお茶に似た状況のがあった。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
火入れが浅いのは茶葉の水分が少ないので焦げやすいから。火入れをほとんどしない白茶に似て当然。
老葉
『困鹿山単樹』は2016年の熟成期間の短い、プーアール茶的には新しいお茶であるが、茶友が西双版納でダイ族の壺に1年間入れて湿気たせいで予期せぬ軽発酵がすすんでいる。リカバリーのために自分の手元で炭火の遠火で乾燥させたが、そのときすでに白茶の寿眉的なバニラっぽい甘い香りがしていた。
新芽・若葉よりも老葉のほうが湿気に強い。老葉のほうが茶葉のミクロの水道管がしっかりしていて排水しやすい構造になっている。もしも新芽・若葉の柔らかい茶葉だったら、湿気てカビてダメになっていただろう。
ホンモノの寿眉も老葉に育つのを待ってから采茶するので、茶葉の成長度も同じような感じ。
茶湯
ま、こうしたこと諸々がタテへの広がりとヨコへの広がりの違いをつくるのだろうな。
『困鹿山単樹』は”陽”な感じで心が解放されて、飲みだすと会話がはずんだ。
白茶は熱を除く作用があるとされるが、このお茶もそうだったかもしれない。暑くてもスッキリしていた。
ちょっと元気になって、夏の夜の夢見心地を味わえたと思う。
葉底

ひとりごと:
困鹿山単樹はこの記事を書くのに最後の茶葉を使った。
明日の分はないから。

刮風寨冬片老葉2016年 その4.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の片口+炭火
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す
炭を熾す

お茶の感想:
炙るお茶を試す。
もういちどこのお茶。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
茶葉を炙る
茶葉を炙る
漫撒山の原生林のまん中にある刮風寨茶坪。
写真のある記事。
+【刮風寨古樹紅茶2015年・秋天 その1.】
こんな老葉ぜいたくすぎるが、茶漬けにする。
炙り具合は、茶葉の香りが芳ばしくなってくるのでカンタンにわかる。
白いご飯と片口と
湯を注ぐ
茶葉アップ
火の通った茶葉は湯に浸かると黒く変色する。まだ緑の残っている部分はあまり火の通っていないところ。このムラのあったほうが風味がふくらむ。
片口から湯気
お茶漬け
茶葉のほんのり焦げた芳ばしさと、大葉の透き通った旨味と、米の甘味と。
これまで食べた中でいちばん美味しいお茶漬け。
勉強会・京都 炭火とプーアール茶 1月27日・28日にて試食予定。

ひごりごと:
乳酸発酵の製造工程があると思われるちょっと酸っぱいお茶。
+『昆明老方磚92年 その1.』
これもお茶漬けを試してみた。
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
昆明老方磚92年
銅のヤカンで炭火の低温90度くらいで30分間煮出した。
お茶の酸味と米の甘味の相性がよいかと思ったが、これはダメだった。
陳香(お香のような香り)のクセが強くて、米のほんのり甘い香りを消してしまう。

刮風寨冬片老葉2016年 その3.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 銅のヤカン+炭火
炭火

お茶の感想:
プーアール茶は沸き立ての熱い湯で淹れるのが基本とされている。
蓋碗なり茶壺なりに熱湯を注いでサッと湯を切る短時間の抽出により、茶葉を煮やさないようにして、お茶の新鮮な香りや涼しい味わいを求める。熱い湯で煮やしてしまうと重くなって涼しさを損なう。また、90度以下に温度を下げると煮える問題はないが、香りも味もぼやけて涼しさを欠く。新しい(熟成数年くらいの)生茶は生っぽさが鼻につく。
熱湯で淹れるプーアール茶
蓋碗なり茶壺なりに湯の熱が吸収される分も考えて、やはり熱湯がふさわしい。
西双版納で淹れていたお茶を上海に持ってきて淹れると、上海のほうが美味しくなる。
海抜600メートルくらいの西双版納の沸点は97度くらい。海抜0メートルくらいの上海の沸点は100度くらい。たった3度の差がお茶の味に影響する。
温度が低くても、持続させて熱量でカバーしてはどうだろ?
茶馬古道のチベットやネパールなどの山岳地帯の遊牧民がヤカンで煮たお茶にバターを混ぜて飲むのをテレビ番組などで見るが、海抜3000メートルを超えるところでグツグツ沸かしても90度に達しないはずだから、もしかしたら煮え味の問題はないかもしれない。
そこで、炭火の出番。
炭火
銅のヤカン
炭火の湯を観察していると、90度から80度くらいの”静かな温度”が長く続くことに気付く。
これは他の熱源の電気やガスでは難しい。
電熱ポットには温度調整できるものがあり、80度に設定すればよいと思うかもしれないが、その構造上センサーが80度から外れた温度を感知すると電熱のオン・オフを頻繁に繰り返し、ポットの中の湯は熱源に近いところは熱くて遠いところは冷たくて、暖流と寒流が混ざり合い湯は荒れている。こんなところに茶葉を放り込んだら味も荒れるだろう。
炭火の照射熱がヤカンを下からふんわり包み込んで生まれる”静かな温度”の湯。
温度計は見なくてもよい。
鉄瓶なり銅のヤカンなりで湯を沸かすのに慣れてくると、沸騰するまでのサインをいくつか見つける。湯気の出方とか、湯の動きとか、鉄や銅の微かな音鳴りとか。沸騰する前後の湯を飲んで、口の感覚で違いを覚える手もある。
そうすると、だいたい80度から90度くらいをキープする炭火の加減がわかるようになる。
まずこのお茶を試す。
『刮風寨冬片老葉2016年』(卸売部)
刮風寨冬片老葉2016年
刮風寨冬片老葉2016年
湯気
茶湯の色
30分ほど湯に浸かってこの透明な茶湯の色。
味も透明感ありながら生っぽさはない。もともと火入れの甘い製茶なので、白茶の寿眉に似た草っぽい生さがあったが、香りは新鮮味を残しつつ味わいはしっかり晒青緑茶。いわゆる生茶のプーアール茶。大きく育った茶葉なので、渋味・苦味がほとんど無く、ぼんやり輪郭の見えない味。
このくらいが飲み頃だと思うが、試しにさらに1時間浸してみた。
炭は燃え尽きるのを待つだけだが、途中隙間が空いて空気の通りが良くなると火力が上るので、たまに見て火箸で炭のポジションを調整する。
銅のヤカンの中
茶湯1時間後
香りは、草というより茶葉に近づき、漢方っぽいスパイスもある。
味は、柔らかい苦味とちょっとの渋味が加わりキリッとしてきた。
煮えたときに出てくる濁りや、舌にねっとりした感じは無い。爽やかさを保っている。
茶葉の性質上、このお茶はこの淹れ方が最も適しているだろう。
次回はこの淹れ方が適してなさそうな茶葉で試そうと思う。

ひとりごと:
炭火には、茶壺や蓋碗のように手の延長になってくるような感覚がある。
火箸で炭と炭の隙間を調整したり、角度を変えてみたり。灰匙で灰を寄せてみたり、灰を避けてみたり。
まだ思うようにはゆかないけれど、自転車に乗ってバランスをとるような身体の感覚。
電熱のダイヤルやガスのつまみを調整するのとは違うよな。
炭火使用後
炭火

困鹿山単樹の散茶2016年 その1.

製造 : 2016年04月
茶葉 : 雲南省思茅市困鹿山
茶廠 : 困鹿山の農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
上海の朝
上海の夕方

お茶の感想:
炭火で沸かす湯の効果は大きくて、ガスや電気コンロと比べたらその差は誰でもわかる。
けれど、実際に試して確かめる人は少ないだろう。
勉強会で実証して見せても、明日から炭火を使おうとする人は少ないだろう。
火が危険だとか、一酸化炭素中毒が怖いとか、面倒だとか、時間がかかるとか、マイナスイメージをふくらませて使わないで済まそうとするだろう。でも実際はコツを掴めばそれほど危険でもないし不便でもない。上質な炭さえ手に入れば室内でニオイが気になることもない。白い灰が飛び散って部屋を汚すかもしれないけれど、灰には洗剤みたいな効果があるので、掃除をしたらむしろキレイになる。
炭火
お茶の味と薬効はリンクしているから、炭火で淹れた味が違うということは身体への効果も異なるはず。同じ茶葉・同じ水・同じ茶器を用いても火の性質が違うだけで異なる結果を得ている。
そこまで言っても、炭火にする人は少ないだろう。
そんな現実を考えると、ちょっとガッカリする。
炭炉上海にて
上質なプーアール茶を求めて、山の生態環境に注目したり、茶樹の健康に注意したり、薪火の殺青や手もみの揉捻にこだわったり、星のめぐりや太陽や風に翻弄されたり、ひとつひとつの大事なことが、みんなにとってはそれほど大事じゃないらしい。現場で一喜一憂している自分がアホみたいだ。
さて、この市場環境の中で、トップクラスの上質なお茶は姿を隠すようになってきている。
もともと量が少ないから、ほんとうに好きな人といっしょに飲める時間を共有するときだけに茶葉を消費したい。
たぶん、ワインの世界でもそうなっているように、お茶もそうなっている。
そういうお茶は、山が深いとか、森の影に隠れた茶樹で新芽・若葉がちょっとしか出ないとか、この何年か一度も采茶(茶摘み)されていないとか、山に入って采茶のタイミングが合うことが奇跡だとか、出会うだけでも運がいるし、つくるのは苦労する。苦労しすぎると商品にできなくなる。
『困鹿山単樹の散茶2016年』はそんな茶葉。
西双版納の茶商友達がほんの一握り、20gほど分けてくれた。
困鹿山単樹の散茶2016年
上海で古い茶友らと飲む機会があった。
困鹿山は西双版納の北の清朝1800年代の貢献茶ブームのときに易武山の品種が持ち込まれて植えられたので、甘いお茶。茶文化のお茶で、生活のお茶ではない。
困鹿山には樹高3メートルほどの古茶樹はたくさんあって、そのクラスのは何度か飲んだことがあった。美味しいお茶だった。「単樹」は10メートルを超える茶樹が選ばれる。単樹のお茶づくりは、周囲の生態環境、茶樹の健康、品種の見極め、茶摘みのタイミング、そんな総合的な理想が求められる。少ない単樹からさらに理想の1本が選ばれるわけだから、価格もそれなりになる。安い価格の単樹も流通しているが、それはつまりいろいろ理想的ではないからだ。
最近ではこれがベスト。
『刮風寨単樹小餅2016年 その1.』
この『困鹿山単樹の散茶2016年』はそれに並ぶか、さらに超えるレベルだと思う。
困鹿山単樹の散茶2016年
単樹の上質なお茶には共通して、森の日陰に育った涼しさと透明な甘さがある。
いちばんわかりやすいお茶の味の特徴は、渋味に嫌な刺激が一切無いこと。
いちばんわかりやすい体感の特徴は、首から背中から腰のあたりまでの筋肉がゆるんでリラックスできること。
口が喜ぶ。身体が喜ぶ。いつまでも飲み続けていたくなる。10煎を超えて茶の色が出なくなっても離れがたい。
遠い昔に人間がお茶の葉を飲みものにしたときの、初対面の印象ってこんなのだったと想像する。
茶樹の栽培に人の手が入って、茶樹が人を嫌って性質を変えて、お茶の味や体感が悪くなるのをなんとかお茶づくりの技術でカバーしようとして、製茶が高度になってゆく。烏龍茶なんかは300年くらいそういう流れでお茶づくりが成熟してきたのだろうか。
ご苦労さんと思う。

ひとりごと:
この『困鹿山単樹の散茶2016年』は陶器の壺で熟成されていた。
プーアール土のヤカン
写真は同じ土で焼かれたヤカン。
粗い土で柔らかくて、水漏れするので、糯米を炊いて水漏れを止めてから使う。これをつくる村では昔からそうしてきたらしい。
水漏れするくらいだから湿気もとおす。西双版納の湿気のために、たった1年で中の茶葉の色は紅茶のように赤黒くなっているが、湿気た嫌な臭いや味はしない。うまい具合に熟成味が醸されている。老茶のように”温”の性質で、飲んでからしばらくして身体がポカポカ暖かい。ちょっと肌寒くなりかけた上海で飲むのにちょうどよかった。
生茶は熟成10年めくらいまではどうしても”寒”の性質が強いので、たった1年でトラブル無しに性質を変えられるならこの陶器はすばらしい。
茶葉の成分に独特のものがあってたまたまこうなっただけかもしれないので、もうちょっとこの陶器を使った熟成茶葉のサンプルを集めてみる。

刮風寨古樹青餅2016年 その1.

製造 : 2016年4月23日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺
鉄瓶

お茶の感想:
ヨガを習い始めて3年経つ。
いまだに初心者だが、最近ようやく呼吸を利用して身体の変化を味わえるようになってきた。
頭でわかっていても身体ではわかっていない。口で言うのはカンタンでもやれるのとは違う。だから時間がかかる。
それでもまだ慣れていないせいか、かなり集中力がいる。油断するとただのストレッチ体操になる。
上海での「体感を探る」がテーマの勉強会は、ヨガと同じように身体の変化に注目する。お茶を飲むごとに身体のどこかに起こっている変化を見つけなければならない。
お茶のほうになにかを見つけるのではなくて、自分の身体のほうになにかを見つける。
そこが医食同源を理解するのに大事なところ。
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試飲する茶葉の一部
刮風寨古樹晒青茶 2017年4月 生茶 春 新葉
刮風寨古樹青餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨単樹小餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨冬片老葉茶 2016年12月 生茶 冬 老葉
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刮風寨は「茶王樹」と「茶坪」が古樹の二大群生地であるが、上の4つのサンプルはすべて茶坪のもの。茶坪の同じ斜面の半径20メートルくらいにある古茶樹から採取している茶葉。
条件が絞られていてサンプルとして優れていると思う。
以前に読んだなにかの本で、どこかの大学が緑茶とプーアール茶のミネラル分の違いを検査していたけれど、どうやら緑茶とプーアール茶のサンプルは違う産地の茶葉なのだ。同じ茶地の同じタイミングで摘んだ茶葉で緑茶とプーアール茶をつくりわけて検査しなければ意味がない。製法によるミネラル分の差は見つからないはずだが・・・。
どこかの大学が小遣いをもらって太鼓持ちしたのだろう。専門家にもニセモノはいる。
サンプルB
『刮風寨古樹青餅2016年』
今日はサンプル2番めのお茶を試す。
広東の茶友が刮風寨に泊まり込んでつくったもの。そのとき自分は現場にいなかったが、毎日のように茶友から報告を受けていたので手に取るようにわかっている。その後の圧餅の加工は参加している。
2016年4月23日采茶。春の旬をちょっと外した遅めのタイミング。それでも2016年の初摘みである。森の中の古茶樹は新芽の出る時期がやや遅いのが多い。
季節は雨季に入ったところ。雨を避けて晴れの3日間続く(続きそうな)タイミングを見計らって茶摘みを依頼して鮮葉を仕入れる。茶友はもちろん茶坪の森に入って茶樹の下で監視している。
天気が思わぬ方向に変化したら天日干しの製茶がうまくゆかないけれど、この日はうまくいった。
葉の色が薄い
新芽が大きく育って、黒く変色した若葉の色が薄い。
茶葉の水分量が多いため殺青の鉄鍋炒りで焦がすことも少ない。揉捻がしっかりかからないので茶葉がより大きく立派に見える。
サンプルB
サンプルB
早春の、ひとくちでパッと燃え上がるような茶気はないが、春っぽい陽気はまだある。
早春に比べると茶酔いのアタリは穏やかで飲みやすい。
呼吸。鼻の通り。息の温度。心臓の鼓動。舌や口の中の力のかかっているところ。喉から胸の通り。ゲップ。おなら。腹への収まり。耳鳴り。眼の光の感じ方。頭の血の巡り。手足の血の巡り。手足の筋肉。首の筋肉。肩の筋肉。背筋の筋肉。汗のかき方。眠気。覚醒。などなど気付くところはいろいろあるはず。
これを訓練してゆくと、ふだんの食べものや飲みものの良し悪しは、自分の身体が見つけてくれるようになる。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)は、茶葉の質を見ることもできるが、お茶淹れの良し悪しを見ることもできる。

ひとりごと;
酒は3日欠かせてもヨガは3日欠かせない。
いつのまにかヨガのほうが酒よりも気持ちのよいものになっている。
個人の体質だが、自分は上火しやすい。上火とは身体に熱がこもること。
上火するとまず眠りが浅くなる。全身がだるくなる。ものを食べるときに舌や唇の内側を噛んでしまったり、口内炎ができたりする。鼻水が出る。喉が乾いてガラガラ声になる。風邪の初期症状と勘違いしてカロリーの高いものを食べて体力をつけようとすると火に油を注いで長期化する。こうなるとお茶もダメで、どんなに身体に涼しいタイプのを選んでも症状が治まらない。
西瓜(スイカ)を食べるのが熱を取るのに早いが、ハウス栽培したものや肥料をやりすぎているものは「涼」の効果が薄れているので効かないこともある。
最近発見したのだが、ヨガは上火を鎮火させるのにも効果的である。
1時間半ほどかけてゆっくり基本動作を味わうようにする。呼吸をお腹に送り込むの動作が効くのだが、どういう仕組みで熱がとれるのかわからない。なにかに解放されるようにスーッと気持ち良くなる。その日の夜はぐっすり眠れる。
頭で知るより先に身体を動かすことからはじまるヨガは、頭が先になりがちなお茶よりも医食同源を知るのにも有効かもしれないな。

刮風寨冬片老葉2016年 その2.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の宝瓶+鉄瓶
冬片老葉

お茶の感想:
最近このお茶をいろんな人にすすめているがウケない。
+『刮風寨冬片老葉2016年 その1.』
あまり反応がないというか、手応えがない。
たぶん、見るべきところが伝わっていない。
お茶の体感からしたらかなり上質。新茶のものではなく20年モノや30年モノの老茶と同じレベルだと思う。
成長した大葉は身体へのアタリが優しい。冬茶の厚い葉や茎はでんぷん質を多く含むからお腹への収まりがよい。
ひとことで言うと、飲み疲れしないお茶。
毎日飲んでやっとその良さがわかる。ちょっと飲んだくらいではわからない。
冬片老葉
冬片老葉
こんなお茶、いまどき少ない。
その希少性もいまひとつ伝わらない。
毎日同じお茶を飲む生活スタイルの人なんていないから、そういう観点で評価されない。
中国茶全体を見ても、売れ筋の多くは飲み疲れするようなアピールの強いものばかり。お茶を買いに行った店で試飲するとアピールの強いのにどうしても惹かれてしまう。
SNSの口コミも最近はチカラをもっていて、口コミしたい人が口コミしやすいお茶がウケル。ちょっと飲んだくらいではわからないお茶なんてウケないのだ。
プーアル方茶80年代
写真は碁石茶。
4年前にこのブログで紹介している
お茶の産地にあるのは銘茶だけではない。
ある茶山にしかない。ある村にしかない。ある家の人しかつくっていない。そんなお茶がいくらでもあった。名前も分類も定義もないお茶。特定の消費者だけに求められていたお茶。碁石茶もそんなお茶のひとつ。現地を巡ってそんなお茶に出会うのは旅する茶商の楽しみだった。
でも、最近はこういうお茶になかなか出会わない。
農家もSNSを活用して売れ筋を把握したり消費者に直接アピールしたり、マーケティングしている。生産者としては不特定多数に求められるお茶をつくったほうが儲かるし安全だし。労力が同じなら儲かる仕事をしたいのは当然。
名前も分類も定義もないお茶は居所がなくなったのだ。
冬片老葉
冬片老葉
今年の春にチェコの若い茶商が西双版納に訪ねてきて、この『刮風寨冬片老葉2016年』をたくさん持って帰った。
どういうふうに紹介するのかと聞くと、毎月のお試しセットでいろんなお茶と一緒に箱に詰めて200人の会員に配るらしい。15gに小分けするそうだ。
「そんなのでこのお茶の良さはわからないよ!」
と言ってみたものの、
「それしか茶葉を売る術はない。」
と賢そうな顔をして返されて、なにも言えなくなった。
くやしい。こんなヤツに紹介しなきゃよかった。
冬片老葉
と思ったけれど、結局自分も毎日飲むお茶として利用するお客様を見つけられず。同じことだった。

ひとりごと:
すでに人々の生活に毎日のお茶の居所がなくなっているというのに、それを知りながら毎日のお茶を礼賛するのはわざとらしいかなあ。どうだろ。

章朗古樹春餅2016年・黄印 その2.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
保存 : 密封
茶水 : 京都地下水
茶器 : 白磁の蓋碗・鉄瓶・ステンレス電気ポット
八角鉄瓶

お茶の感想:
今回入手した鉄瓶はすべて新品。
古びた感じに見えるが中古ではない。
専門店に教えてもらって、なるべく昔ながらの製法のを選んだ。
内側に漆が塗ってあり、漆と鉄が化合してできた黒錆(黒鉄)の膜をつくっている。これによって鉄を劣化させる赤錆の発生が防げる。
茶葉のタンニンと鉄の化合によっても黒錆はできるので、ときどき茶葉を煮て内側の膜を補強するとよい。
それにしても鉄瓶はデリケート。
湯を沸かした後にしっかり乾かさないで濡れたままにすると、次の日にはもう赤錆の小さなスポットが現れる。
茶葉を煮たらすぐにリカバリーできるが、鉄という素材は敏感というか不安定というか、見かけによらないところがある。
鉄瓶の錆
詳しい人の話では、鉄瓶で沸かした湯には鉄イオンが溶け出すらしい。ということは、やはり濃いめのお茶に個性が現れるはず。時間をかけて小さな火で水からゆっくり沸かしたり、茶葉の成分をじっくり抽出するのは有効なのだ。
鉄瓶で湯を沸かすだけでお茶淹れのいろんなバランスが変化する。鉄や水や火や空気の微かなサインを読み取らなければならない。
幼いころは水遊びや砂遊びに夢中になれて、万物と自分とのつながりを確かめていたけれど、大人になってからは水や火や土みたいな元素なやつに興味が薄れてしまうのだな。なぜだろ?あまり賢そうじゃないし、オシャレでもないしかな。
自然観察が楽しめたらお茶淹れは面白い。鉄瓶ならではのデリケートさも味わえるだろう。
そこが味わえないと、お茶淹れがただの作業になってしまう。
作業になると、正しさを求めたり合理的にやろうとしたり、つまらないものにしてしまう。
鉄瓶が機能的かどうか、プーアール茶を美味しく淹れられるかどうか、実はそんなことはどうだってよいのだ。お茶淹れそのものの味わいが味わえるかどうか。鉄瓶ならではの味わいを見つけられるかどうか。味わいの達人になれるかどうか。
章朗古樹青餅・黄印2016年
さて、今日はこのお茶。
【章朗古樹青餅2016年・黄印】
西双版納の孟海茶区から西へ、ミャンマーにかけて分布する古茶樹には共通した苦味がある。
苦くて、その反動で甘い。
この苦味が鉄瓶の湯にどう反応するのかが見どころ。
今回はステンレスの電気ポットと比べてみる。
ステンレス電気ポットと鉄瓶
久しぶりに白磁の蓋碗。
茶葉の重量もちゃんと計ってテイスティングっぽくなった。
鉄瓶は湯が沸くのに25分。
ステンレス電気ポットは3分20秒。
湧いてから、鉄瓶はアルコールランプの小さな火で沸騰状態を保つ。ステンレスの電気ポットは一煎ごとにスイッチを入れて再沸騰させる。
もちろん、鉄瓶の湯に鉄の味がするなんてことはない。念のため。
章朗古樹青餅・黄印2016年
左:ステンレス電気ポット
右:鉄瓶
茶湯の色はまったく同じ。
香りのボリュームにはほとんど差がなかった。
鉄瓶の湯は熱い。
杯を持つ指の感じでは5度くらいの差がある。
2煎め
3煎め
葉底(煎じた後の茶葉)の開き方が1煎めから違っている。写真は2煎めと3煎め。
水質が違う。
鉄瓶のは、口当たりまろやかで喉ごしに潤いがある。
ステンレスの電気ポットのは、”燥”。ドライでカラッとしている。
味わいは、金属の質感のもつイメージ通りで、鉄瓶のは重低音。ステンレスのは高音。音のような響きの違いがある。
ステンレス電気ポットと鉄瓶
苦味は鉄瓶のほうがよい。強いのに優しい。
ステンレスの電気ポットは若い味。鉄瓶は1年ほど保存熟成したような味に落ち着きがある。
なるほど、このような味の出方ならハツラツとしすぎた新しい生茶を飲むなら鉄瓶が適している。
耐泡(煎がつづく)は意外と同じ。
7煎くらい進めても、茶湯の色も味のボリューム感もほぼ同じである。
鉄瓶の煎が前倒しになって続かないというのは、錯覚だったのだろう。
次回は熟茶で試してみる。

ひとりごと:
多くの人がお茶淹れをあまり楽しめていないのではないかとうすうす感じていて、なぜそうなのかと考えてみて、こんな話になった。
機能性や合理性を求めるあまり、お茶入れが作業になる。
作業はつまらないから、いずれロボットにお茶を淹れてもらうようになる。コーヒーマシンがすでにそうか・・・。
なんでもロボットになってゆくと、作業にひそんでいた味わいが減るよな。味わいながら無意識に楽しんだり学んだりしているのに、もったいない。
ロボットメーカーの立場からは、日常に潜む味わいを無駄なこととして、まずは人々の意識から価値を無くしていって、もっとたくさんロボットを売ろうとするだろ。
機能性や合理性や正しさを主張している人は、実はみんなロボットメーカーの回し者で、味わい泥棒なのだ。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その5.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の宝瓶
雲南紅茶茶葉
雲南紅茶泡茶

お茶の感想:
2016年のオリジナルの紅茶に共通してあるトマト味。缶詰トマトのような煮え味。
白磁の蓋碗でサッと淹れると見つけにくいが、茶壺など保温性の高い茶器で高温の湯でじっくり抽出すると出てくる。
生茶のプーアール茶は、まだ新しい数年くらいのうちは緑茶的なので、茶葉を煮やさないように注意して淹れる。湯の温度をちょとだけ下げたり、湯の注ぎを細く弱くして熱の響きをやわらげたり、抽出時間を短めにしたり。
しかし、熟茶や老茶のプーアール茶は違う。一般的に高温でじっくり抽出する。これに慣れると、茶葉の色の黒いのが似ている紅茶もつい煮やしてしまいがちになる。(自分だけかもしれないけれど。)
餅茶
餅茶
当店の紅茶は天日干しと圧延加工の蒸気の熱だけで仕上げているので、色は黒くても茶葉はまだ「生」に近い。ある部分では生茶よりもっと「生」である。なので熱に敏感。
ただ、トマト味は2014年・2015年の紅茶には無かったし、2016年のも圧餅前の散茶の状態ではたしか無かったはずなのだ。
ということは、2016年の圧餅の工程のどこかに原因があるのだろうと推測していた。
圧餅のスチームの水が臭いとか、布袋がキレイでないとか、天気が悪くてスッキリ乾燥していないとか、初歩的な失敗はない。(逆に言うと西双版納のお茶づくりは初歩的な失敗だらけと言える。)
晒干の餅茶
は夕立ちのような雨が降りやすい。実際にその日の夕方からつぎの日まで雨が続いた。もしも圧餅後すぐに晒干しなければ、熱風乾燥するしかなかった。
トマト味は淹れ方の技術でカバーできる。
香りは薔薇のような熟した甘さがあるので、香りを引き立てつつトマト味を出さないようにしたら、スッキリ清涼感のある風味になる。
そこで今回はチェコ土の宝瓶を使ってみた。
チェコ土の宝瓶チェコ土の宝瓶
土は茶壺と同じものであるが、形状が異なるだけで熱の響き方がぜんぜん違ってくる。
また、水の注ぎ口が茶壺のような筒ではなく溝であるから熱が逃げやすい。水の勢いが弱い。なので熱の響きはやさしい。
注ぎ葉底
こうするとトマト味はほとんどない。これからの暑い季節にも涼しい風味が楽しめる。
さて、このトマト味をどう解決するかを考えていたのだが、たぶん解決しないという選択があると思う。
圧餅のときに天気が良かったらよいけれど、そうでなかったら機械乾燥させることになる。それならはじめから機械乾燥を選んでおいたほうが仕上がりの風味がコントロールしやすい。ま、実際にほとんどの工房はそうしている。
意図して晒干を行ったとして、その揺れを後から修正するとしたら焙煎する手がある。福建省など烏龍茶の地域ではあたりまえに行うべき工程であって、もしも行わないとしたら未完成だと評価されるだろう。
だからやはり当店の製法による紅茶はプーアール茶という分類にしたほうがわかりやすいかもしれない。
茶器を選んだり淹れ方を工夫したり、自分で試行錯誤したい人には楽しめる。

ひとりごと:
すべてのことを他人が準備した上等もあるけれど、自分で試行錯誤する上等もある。
今の市場が求めているのは前者のほうだから、本来のプーアール茶は時代遅れになってゆく。見た目は昔風であっても中身は新しい。そうでないと”正しくない”と評価される。たぶんそういう社会環境なのだ。
農家にしてもメーカーにしても茶商にしても現代に生きているから仕方がない。

刮風寨冬片老葉2016年 その1.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター水
茶器 : 銅のヤカン
チェンコーン空
チェンコーンメコン川

お茶の感想:
久しぶりに陸路で西双版納に来た。
タイのチェンコーンからメコン川を渡ってラオス経由で西双版納に入った。
アパートに着くまでトゥクトゥクやバスやタクシーを7回乗り継いで12時間以上かかる。
ゴールデントライアングルのこのルートはバックパッカーなら楽しめるかもしれないけれど、目的がはっきりしている人には無駄もストレスも多い。
ラオスから中国へ出るボーダーが長蛇の列で予定時間を1時間半もオーバーした。バスは自分を待たずに出発して、ひとりだけ置いてけぼりをくらった。しかし、このままバスで移動を続けても、その日のうちにアパートまで到着できない時間だった。中国側の国境の町で次の日のバスを待って一晩過ごすことになる。安いホテルはあるが、暗闇のあちこちで麻薬取引していそうな気味の悪いところだ。
そんなこともあろうかと昨日のうちに西双版納の友人に電話をして中国側の国境まで車で迎えに来てもらった。ちょうど12時間の移動で予定通りに景洪市のアパートに着いた。
ちなみに、飛行機ならタイのチェンマイから昆明経由で遠回りだが移動は5時ほど。
一帯一路(中国からラオス・タイ・マレーシア・シンガポールまでをつなぐ道路や鉄道の計画)の影響で、大規模な工事による混乱はこれからもつづくだろう。5年と言われていても実際は10年かかるだろう。
ま、混乱に巻き込まれることはわかっていたけれど、あえて陸路で来たのはこの変化を見ておきたいから。
日本のように成熟しているところでは10年経っても風景はそんなに変わらない。
バスの窓から見るこのルートの風景は年々変わっている。工事のホコリにまみれて生きる人々にはなぜか活気がある。
かれこれ7年の間に何度も通った車窓の風景に、ふと記憶の断片が蘇る。自分もまたずいぶん変わってきたよな・・・。昨日と今日の連続する日常が旅をするとプッツり途切れて大きな時間が見えてくる。
西双版納の茶業が大きく変化して、この仕事もまた変化した。
今年も春の旬が巡ってくるけれど、昨年と同じ仕事はもう通用しない。このスピードについてゆけない。
今年の春はお茶づくりを休んでみようと思う。
山には行くし、もちろん素晴らしい茶葉があれば少しは仕入れるけれど。
ところで、昨年秋にはじめたオリジナルの熟茶づくりはいったんストップした。
試作中の茶葉はすべて処分してアパートの庭の土にした。実は、冬の間にあるサンプルの茶葉が手に入ってから、これまでの考えがひっくり返った。すぐに次のアイデアも出てこないので、しばらく寝かせることにした。
そういうわけで仕事は縮小したのに、西双版納に来るとなぜか忙しい。
あらゆる農産物と同じように、茶葉もまた人を休みなく働かせるのだ。
まずはこのお茶『刮風寨冬片老葉2016年』を出品する。
冬片老葉茶2016年
刮風寨の「茶坪」という地名の森の古茶樹から採取した冬の葉っぱ。
漫撒山の瑶族の独特の栽培方法で、根を育てるために大きく育った茶葉を枝から擦り落とす。
この落とした葉っぱをお茶にする。
このページで紹介している。
【丁家老寨青餅2012年 その2.采茶】
瑶族の人と山に入って、お昼ご飯のときに飲むお茶に近い。
茶葉を枝ごと折って取ってきたのを炙ってヤカンで煮るお茶。
炙る1
炙る2
これは炙るかわりに蒸している。
大鍋にグラグラ湯を沸かして蒸し器に茶葉を放り込み熱を通してから晒干(天日干し)する。それだけ。冬のあいだに刮風寨の農家がつくってくれた。
晒干緑茶の一種で、これもプーアール茶と言えるだろう。この地域でつくられるお茶はなんでもプーアール茶にしておけばよいからわかりやすい。
このお茶は瑶族やダイ族が食事の共に飲んでいるだけで遠くへ運ばれてはいないはず。嵩がありすぎて馬では運搬できない。おそらく粉砕して黒茶の原料にしていたのだ。微生物発酵するとさらに嵩が減る。圧延して固めたり竹籠にギュウギュウに詰めたらコンパクトになる。
西南シルクロードの茶馬古道を経て、チベットやインドに行った生活のお茶。
新芽・若葉でつくるお茶とは体感がまったく異なる。
カビの侵食
虫食い
紫葉
茶花
見た目は悪い。
1年以上も茶樹に付いたまま育って老いた茶葉もある。虫食いがあったり、カビの寝食があったり、枯れ葉になりかけていたり。
ところが、お茶の味は見かけとはまったく逆で清らかで柔らかい。苦くも渋くもない。ほんのり甘い。
白茶にもある乾いた草のような香り。
煮るお茶
煮るお茶2
刮風寨の原生林の森の香りがする。
飲んだ後の心地には森の影の涼しさがある。

ひとりごと:
やっぱり森のお茶が一番。

香椿林青餅2016年 その3.

製造 : 2016年4月1日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺
香椿林

お茶の感想:
このお茶を出品した。
【香椿林青餅2016年】
通販休業中なので、次回の夏頃の発売になる。
香椿林青餅2016年
香椿林青餅2016年
ここにきて、やっぱり美味しい。
だいたいひと月に1度は試飲していたが、ちょっとずつ良いほうに傾いているのがわかった。
もうすこしで熟成1年めになる今は、毎日飲みたくなるほどのバランスの良い味。
この味なら、わざわざ微生物発酵させる必要はないかもしれない。
餅茶1枚を少しずつ崩して、半年くらいで飲みきるもよし。
乾燥を保って常温の焦げ(メイラード反応)による熟成をすすめてみるもよし。
茶葉を少し
茶葉は少なめで、ちょっと濃くしたほうが美味しい。
舌の上でミクロな泡がフワフワしてシュワシュワ弾ける。実際には泡ではなくて、なんらかの成分が舌の上で一瞬のうちに変化しているのだろう。その後、ピリッとした刺激が消えるときに蘭香がチラッと薫る。舌の上から薫る。息を吐くたびに喉の奥のほうから薫る。
専門家によると、ピリッとしたのは香りの元の成分らしい。何らかの化合物となっていて落ちついた状態なので、アロマオイルのように揮発して鼻を強く刺激することはない。口に含んでから成分の結合がゆっくりほどけて溶けて、舌や喉を潤した茶湯の一部が水蒸気になるときに、息の出入りにいっしょに運ばれて鼻をくくすぐる。
典型的な漫撒山の内香のお茶。
チェコ土の茶壺
濃く淹れるのは、製茶の仕上げがそれに向いているから。
香椿林の茶葉はもともと水分が多く、製茶工程での軽発酵が比較的すすんでいる。意図したものではないので「黄印」と名付けなかったが、当店ではこのように軽発酵のすすんだ生茶を「黄印」と名付けている。
「黄印」の茶葉は熱に耐性ができるのか、沸き立ての湯で淹れても煮えたエグ味が出にくい。
逆に、熱い湯で淹れないことには、輪郭がぼやけてシャキッとしない。
一般的に、早春の新芽・若葉は繊細で、とくに一煎めを熱い湯で煮やすとエグ味が出やすくて、二煎めからもその嫌な感じが若干残る。一煎めだけ湯を冷まして(80度から90度くらい)淹れるとか、茶葉への湯の注ぎを穏やかにするとか、抽出を短時間でサッと湯を切るとか、ちょっと気を使う。一煎めで茶葉が熱に慣れると二煎めからは熱々でも大丈夫になる。
その点、「黄印」は一煎めから熱い湯で、抽出時間をじっくりとったほうが味に厚みができる。香りが甘くなる。
香椿林青餅2016年
振り返ってみると、圧餅の工程で晒干(天日干し)するときに、餅面の色の黒さが際立っていた。
同じ漫撒山の『一扇磨青餅2016年』よりも黒っぽかった。
この色は良いサインだ。
日陰に育つ茶樹であること・根の深い古樹であること・早春の成分が充実していること・新芽・若葉が柔らかいこと、などの条件が揃っている。
刮風寨との比較
刮風寨との比較
写真で比較している餅茶(右)は、昨年の春に広東の茶友がつくった刮風寨の生茶。
茶樹の大きさ、森の深さ、わかりやすい上質の条件はいずれも刮風寨のほうが勝っている。
しかし、茶摘みのタイミングが悪い。
昨年の春は早い時期から雨が多かったから、新芽の出る時期が遅い森の中の大きな古茶樹に一日の収穫量を求めると、旬を逃してしまう結果となった。
やや早いタイミングで新芽を出す古茶樹は、森の中のは特に少ない。香椿林の森も同じで采茶できたのは数本のみ。しかも茶葉が小さい。一日の収穫量が限られる。同じ人件費で森に入って采茶するわけだから、採算が合わなくなる。
でも、採算の合うかどうかは人の都合だよな。
お茶の値段が高くなったら売れなくなる・買えなくなるというのも人の都合。
人の都合(人の都合なのに農業技術だの製茶技術だのを賢くアピールする)のお茶がたくさん流通して、自然の都合にあわせたお茶は少ない。
少なすぎて、みんなの前に姿を見せることはない。
もっとも、姿を見せるつもりもない。
香椿林青餅2016年泡茶

ひとりごと:
お茶の関係で人と交流するときに、ちょっと気になるのだけれど。
お茶をしているだけで、なにかいいことしているつもりになりやすいのじゃないかな。
業者にしても、趣味で勉強するにしても。
いいことしているつもり仲間で集まったりして。
いいことするのも人の都合だよな。
自然はそんなのまったく無視だから。
ま、自分にも言い聞かせておくけど。


茶想

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