プーアール茶.com

茶教室・京都

曼晒古樹青餅2017年 その6.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯 鉄瓶+炭火
茶葉

お茶の感想:
何度か自分で淹れているうちに良さのわかるお茶。
『曼晒古樹青餅2017年』。
西双版納から西にミャンマーへ数十キロのあたりの、今となっては無名茶山だが、かつて明代から清代にかけてお茶どころとして栄えた歴史のある山の半野生茶。
おっさんの独り茶にはこういう奥ゆかしいタイプもよい。
例えば、上海の茶葉市場の小売店ですすめられて品茶しても、その場でこの茶葉の素質を見抜くことのできる人は少ないだろう。
そういう自分も品茶に3日かけている。
毎日毎日いろんな山のお茶を試している自分でさえそうなのだから難易度は高い。
なぜすぐにわからないのか。
(もしもすぐにわかっていたら11キロ余分に買えた。すぐに判断できずにいたので8キロしか入手できなかった。)
茶教室でよく話しているように、茶葉の良し悪しは味や香りよりも酔い感や水質をみる。
この観点はじっくり飲んで自分の身体に「どうですか?」と聞くことになるので、紅茶のテイスティングのようにカップをズラッと並べて順に口に含むようなやり方ではわからない。
もしも小売店で売っていたら、少しだけ買って家であらためてじっくり飲んでみるしかない。
それはさておき、もうひとつ別の問題がある。
今回話題にするのは、泡茶技術の問題。
茶湯
このお茶は蓋椀では難しい。
茶壺でじんわり熱をとおす淹れ方においてはじめて奥の方の輝きに気付くことができる。
葉柄の大きい大葉種の中でも、さらに大きめの茶葉になる品種特性。
小さめの新芽・若葉を収穫するから、茶葉の大きさは他の生茶のものと一見変わりないように見えるが、繊維の質や成分構成が異る。
これと湯の熱との関係。
山ごとに品種特性が異る”山頭茶”。
それぞれの特性にあわせた茶器の構成や淹れ方を見つけるまでは何度か試すしかないだろう。湯の熱の入り方の違いをいくつかのパターンで試す。
茶葉の専門店や産地の農家に買い求めに行って試飲をしても、ほとんどが蓋椀などでシャッシャと同じ淹れ方をしている。
この淹れ方がピッタリ合うこともあれば合わないこともある。
もしかしたら、茶葉の素質が見抜けないままスルーしてきたかもしれない。
もしかしたら、すでに買った手元の茶葉においてもまだ素質に気付いていないかもしれない。
通信講座の#003,#005などはそれに関わることをテーマにしている。
+【通信講座】
また、茶教室でもそのあたりの講義をしている。
手元の茶葉でわかりにくいのがあれば、お持ち込みいただくのもアリ。
茶葉の特性をどうやって探るかの実践をお見せします。
葉底
どうぞよろしく。

曼晒古樹青餅2017年 その5.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯 鉄瓶+炭火
茶器

お茶の感想:
熟成を確かめるルーティン。
古樹味とはどういうものかを知る教材の茶葉に採用したこのお茶。
+【通信講座#002 消えゆく古樹の味】
古樹味だけでなく、旬の味も濃いお茶。
裏
このツヤ、色、新芽の細かさ、茎の部分のしなやかな曲線。
熟成するほどにツヤが増して黒々としてきている。
2017年5月の圧餅したての頃の写真と比べてみる。
裏
写真で見るとあまり変化していないような・・・。実物はもっとわかりやすい。
茶湯
葉底
若葉は大きく育っているが、繊維は柔らかく指でカンタンに潰れる。この柔らかさは旬の濃い証。

刮風茶坪青餅2017年・雨天 その1.

製造 : 2017年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
鉄瓶
鉄瓶

お茶の感想:
2017年の春は雨が多くて、自分はお茶づくりをしなかったが、茶友たちが刮風寨でつくっていた。
波
茶葉にツヤがない。
色が薄い。
大柄で茎が長く育っている。
繊維が硬くて揉捻が効かないのでペタッとしている。
茶湯
舌に辛い。(水質が粗い)
味が薄い。(薄いのと透明のとはちがう)
耐泡がない。(数煎したら急に水っぽくなる)
この地域で春の一番摘みのタイミングで雨が多いということは、春が短かく過ぎて夏の雨季のような気候になっているということ。
先日の記事で紹介した二波の茶葉に近い状態。
+【一扇磨青餅2017年・二波 その1.】
葉底
この『刮風古樹青餅2017年』は期待ハズレ。
高価にもかかわらず美味しいお茶ではない。
有名茶山のお茶にはハズレが多い。

一扇磨青餅2017年・二波 その1.

采茶 : 2017年4日下旬
茶葉 : 西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨 小樹+古樹
茶廠 : 農家と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
餅面表
餅面裏

お茶の感想:
名前の”二波”とは、春の二番摘みのこと。
時期は毎年異なるが、”一波”から3週間後くらい。だいたい4月下旬から5月初旬。
2017年は雨の多い春だったので、自分はお茶をつくらなかったけれど、茶友がつくっていた。
西双版納の季節は夏。ほんとうは春とは言えない。
この時期になるとほぼ毎日夕立のような雨が降る。雨季である。
気温が高くて水が多くて、茶葉はよく育つ。
二波の産量は一波の3倍から5倍になる。
数も多いけれど、葉が大きく育ちやすいので重量が増す。
安価にたくさんつくれる。
メーカーの有名茶山のお茶は二波の茶葉が多い。
それでも春のお茶として売るので利益率は高い。
ツヤが無い。春の旬の成分が少ない。
葉柄は大きく、崩していたら茎の部分の長いのが出てきた。
葉
よく見たらけっこうたくさん混ざっている。
もしも一波の柔らかい新芽・若葉に、こういう硬い繊維の茎が混ざると、揉捻したときに柔らかい茶葉を痛めるから取り除くのだけれど、二波の茶葉の繊維は全体的に強いから、あまり気にしなくてもよい。
これ単独で飲むと十分に美味しい。
茎の部分に甘味があるからわかりやすい美味しさ。
苦味の強い一波よりも、初心者は美味しいと感じるかもしれない。
泡茶
香りも二波のほうが甘い。フルーティーな感じがして、この点もまた初心者にはウケが良いと思う。
茶葉の成長度によって成分構成が変わってくる。
葉底
安くて美味しい二波のお茶。
もしも、快楽の薬としての美しさを求めるなら一波。

曼晒古樹青餅2017年 その4.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶+炭火
熟成部屋

お茶の感想:
引っ越し完了。
夏の終りに始まって冬までかかった。
茶室づくりにハマっている。
茶器
茶室
いろいろ整ってきたのでこのお茶。
【曼晒古樹青餅2017年】
茶葉
しっかり熱を入れられる道具の組み合わせを工夫すると、高幹のお茶の底力が現れる。
湯気
茶器を温める
茶器を温める
泡茶
茶湯

曼晒古樹青餅2017年 その3.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 保温ボトル 鉄瓶+炭火
森
空

お茶の感想:
山歩き。
このお茶。
+【曼晒古樹青餅2017年 その1.】
茶
茶酔いの波がゆったり大きい。
街

孟海老師班章熟茶2017年 その1.

采茶 : 2017年 不明
加工 : 2017年 不明
茶葉 : 雲南省孟海県布朗山詳細不明
茶廠 : 孟海県の老師
工程 : 熟茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
孟海老師班章熟茶2017年

お茶の感想:
昨日に続いてもうひとつ孟海老師の熟茶。
2017年の作だから現在は1年経っている。圧餅してある。
餅面に現れた茶葉の様子からは、昨日のような茶頭っぽいところが感じられない。色といい茶葉の形状といい、もうちょっと乾いた感じだろうか。
鼻を近づけるとやや小便臭い。この匂いは熟茶にはときどきある。アンモニアのツンとした刺激はない。
茶葉を鉄瓶の蒸気で温める。5分ほど。
茶壺が水を含んでいては意味がないから、事前に炭火で温めてしっかり乾かしてある。
孟海老師班章熟茶2017年
これで出てくる香りを確かめるのは効果的。
蓋の裏に結露した水滴の香り。茶葉から立つ香り。両方を確かめる。
水滴の香りに悪いところがあるのはだいたい保存の問題。
茶葉から立つ香りに悪いところがあるのはだいたい製茶の問題。
このお茶はどちらの香りにも問題はない。小便臭いのは温めてからも強くも弱くもならないので、落ち着いた状態なのだろう。
注ぐ
湯を注いで一瞬でこの匂いが黒糖の香りに変わった。
甘くてちょっと煙たくて酸味もあるような。
フワッと立ち昇って半径2メートルくらいまで届いたと思う。
一煎め
茶湯にはかすかにカラスミ味があるけれど嫌なものではない。このカラスミ味、ベルギービールの甘い濃いタイプのやつとか、乾いてカチカチのチーズにあるのと似ている。延長線上にドブ水を連想することはないから悪いものではない。
お香のような清涼な香りもあるが、もうひとつ、雑巾の生乾き臭もごく微かにある。
味はやや甘い。バランスは悪くない。
2煎め
2煎めが濃くなった。
濃い色が一瞬で出て来た。油断したのではない。いつもの調子でちょっと長く蒸らしただけ。
茶湯が濁っている。ここで茶頭味が出てきた。
やはり竹籠の渥堆発酵では、散茶の部分も茶頭の部分も、ぜんぶ同じ茶頭の味になる。
班章の茶葉のもともとの味なのか、それとも1年の熟成変化なのか、苦味がちょっと効いているのでバランスは昨日のものほど悪くはないが、渋味がないせいか、茶湯がヌルんとしているせいか、暑苦しい。
5煎め
この濃さに淹れても苦すぎたり渋すぎたりしない。ゴクゴク飲める。たくさん飲んでも茶酔いでフラフラになったり、眠れなくなったり、身体を冷やして寒くなったり、しない。とにかく穏やか。優しいお茶。
それが茶頭の良いところ。
葉底
葉底はキレイに色が均一。
5煎め以降の葉底からドブ水を連想するカラスミ味は出てこない。
孟海の老師の熟茶はそこそこ人気があるらしい。
もともと喫茶文化の無かった西双版納で、この10年くらいで急激にプーアール茶需要が拡大して、お茶の仕事に新しく関わる人が増えて、試飲や付き合いでお茶を飲む機会が増えて、慣れないお茶を毎日たくさん飲むことになって、疲れて、茶頭のお茶にたどり着く。
人気が出るわな。

追記:
黒糖香は、圧餅の後の熱風乾燥で糖質が焦げたやつかもしれない。
ふと思いついて、温州人6批熟茶を焙煎することにした。
炭火と灰
焙煎
炭火を灰で覆い隠して数時間焙煎。涼干一日。明後日に試飲する。
カラスミ味がどうなるかも見どころ。
温州人の茶友の6批熟茶は、たしか100キロの原料で微生物発酵後は80キロくらいだろうか。
ふじもとにサンプルを提供したら、「カラスミ味がドブ水の方向を向いている」と言われたから気が気じゃないだろう。夜も眠れないかもしれない。
なんとか改善策を見つけないと・・・・。

温州人第四批熟茶2017年 その1.

采茶 : 2014年秋・2015年春
加工 : 2017年9月・10月
茶葉 : 易武山落水洞古樹秋茶+老曼峨古樹春茶
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
第4批熟茶
茶葉

お茶の感想:
昨年の秋にミャンマーで微生物発酵された熟茶。
木箱と布袋の新製法で温州人の茶友が醸している。
木箱発酵は温州人の茶友が早くはじめて、一歩も二歩も進んでいて、最新のはすでに7批までできている。
この製法を東莞人の茶友がわれわれの地元の西双版納でも再現しようとして、版納の不動産王の茶友も巻き込んで、設備を整えて茶葉を手配してすでに2批めの発酵が終盤にかかっている。
しかし、自分なりに考えた結果、「このやり方はダメだろな」と否定しだしたから、茶友たちに冷水を浴びせたカタチになった。「新製法でイケる!」と言い出したのは自分だったから、無責任かもしれない。
当然の結果として今はひとり孤立している。
よくある展開。
ひとりぼっちは慣れている。
新製法の木箱発酵
温度と湿度のセンサー
新しい試みの過程で、小さな間違いに気付きだして、大きな方向転換では済まない、もっと根本のところからやり直さなければならないことになる。どんな方面の仕事にも共通してあることだろ。
投資で言うところの”損切り”というやつだ。
決断を遅らせるほどに負債がふくらんでゆくが、心理的には方向転換だけで済ませたい気持ちが強い。
この2週間の間に、温習人の茶友とだけはSNSを通じて討論が続いていた。
実は彼も経験を通して同じ間違いに気付いていたのだ。
合計したらすでに200キロを超えている新製法の熟茶を捨てなければならなくなる可能性をチラチラ見ながら、間違いを認めるのは勇気がいる。
間違いに気づいてそれをどう修正するか。
この瞬間の決断と深い考察が、将来の仕事の結果を天と地に分ける。
鉄瓶と茶壺
さて、今回試飲する『温州人第四批熟茶2017年』だが、すでに7批までできているのにわざわざ1年前の4批を試飲するのは、散茶のまま1年間熟成させたことによる変化が大きくて、その風味にいろんなヒントが隠れているからだ。
温めて水気を切る
散茶を自然乾燥させて保存しているので水分が多く残っている。生茶ならもしかしたら緑黴が発生してダメになるのに、熟茶はまったく平気なのは麹菌のつくった天然の防腐剤が効いているせいかもしれない。
生茶と熟茶の黴
以前に紹介したことがあるが、タイのチェンコーンのメコン川沿いの定宿に、お菓子の紙箱に入れて保存していた生茶と熟茶。冬は西双版納よりも気温が低くて湿度が高い。半年ほどで生茶には緑黴がびっしり。熟茶は変わりなし。飲んでみても味に悪いところほとんどなし。

一煎め
湯をかけた葉底から甘いバニラの香り。
茶湯はビオフェルミンのような整腸剤の香り。
味はお汁粉の小豆風味。とろんと甘くて、舌触りはサラッとしていて消えが早い。清潔感がある。
食品衛生のための成分分析をいずれしなければならないが、その前に、味や香りに違和感がないかどうかを見るのが大事。舌や鼻のセンサーは敏感だし、”美味しいお茶”は舌や鼻が決める。
成分分析の結果が安全でも不味いお茶はたくさん流通している。
(毎回の発酵ごとに成分検査して証明証をもらっているはずはないと見ている。危ないのも流通する。)
3煎め
4煎め
3煎め4煎めをじっくり抽出して濃くしてみた。
味や香りに問題はないが、このときの茶湯の色はちょっと黒すぎる。
温習人はこれで良いと言うが、自分はそうは思わない。
湯をはって鉄瓶の上に
蒸し煮
さらにじっくり抽出するために茶壺に湯をはって鉄瓶の上で蒸す。
7煎め
7煎め。茶湯の色が明るくなって、このときの風味にちょっと違和感がある。
自分なりにわかりやすいように名付けると”カラスミ味”。あのボラの卵巣を塩漬けしたやつのタンパク質の風味にある独特なやつ。
この風味が最新の『温州人第六批熟茶2018年』にもっと強く現れたのだ。
原因はわかっているが、別の記事に書くことにする。
カラスミ味のあるのは最初のほうの煎の葉底に”糠味”が同時に現れる。ぬか漬けの臭味に似ている。
6批にはこのカラスミ味と糠味が両方はっきりと現れているが、この4批には糠味はまったくない。バニラのような甘い風味になっている。
糠味は酵母が糖質をアルコールにするときに発生するもので、アルコールは蒸発するから、4批の1年間の保存の間に蒸発したというのが温州人の見解。
どうなのかな。
葉底
葉底
葉底に色のむらを見つけた。
揉捻でよじれた柔らかい茶葉を破らないようにそっと開くと、内側のほうの色が緑っぽくて、発酵がしっかりできていない色が残っている。
微生物発酵の加水や温度や湿度や通気や時間の加減などを調整して、微妙なバランス点を探る試みをしてきたわけだ。
だが、それは考え方として根本的に間違っていた。

微生物が特定の成分を目的にした薬品をつくのではなくて、食品をつくるということ。そのすべてを人の身体が取り入れるということ。
発酵食品とはなにか。やっと入り口に立てたかもしれない。

東莞人第一批熟茶2017年 その3.

采茶 : 2017年4月
加工 : 2017年11月・12月
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : 東莞人
工程 : 熟茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・グラス杯・鉄瓶+炭火
東莞人第一批熟茶2017年

お茶の感想:
圧餅してから2週間ほど経った。
初日の晒干後は竹ザルに並べたまま茶葉倉庫の部屋で陰干しした。湿度は55度から60度くらい。
これ以上乾燥させる必要はないので、そろそろ長期保存の器に移してもよい。今回は布袋に包んでダンボール箱に入れて茶葉倉庫の中での通気を許した熟成を試みる。
東莞人の茶友を呼んで試飲した。
茶葉を熱して乾かす
前回のように茶葉を熱したが、今回はアンモニア臭はまったく出なかった。カカオの香りのするよくある熟茶。
圧餅前の散茶にあった海鮮味も完全に消えている。
2週間のうちに成分変化がすすんでいる。
注ぎ
茶湯の色
茶湯の濃く濁った色から想像できるような味ではない。透明感があってさっぱりしている。甘味が下がったせいか苦味が際立って、東莞人は「苦くなった」と言うが、一般的な熟茶に比べるとかなり甘いほうに傾いている。
3煎めくらいの味の奥のほうに”陳香”と呼んでいる老茶っぽい香りが少しある。できたての熟茶らしくない香り。
ここで意見が別れた。
東莞人は微生物発酵度がちょうど良いか、まだもうちょっと発酵させても良いくらいだと言うが、自分は発酵し過ぎていると見た。
例えば、この熟茶は6回くらい加水しているが、実は3回目か4回目くらいで止めてもよかったのじゃないかというのが自分の見方。
葉底
葉底の柔らかい触感やまだ緑っぽい新鮮な色が残っているところから東莞人はもっと発酵をすすめるべきと判断していると思うが、発酵がすすむのは加水して微生物が活発に活動している時間帯だけじゃない。
圧餅してから後がもっと大事。
圧餅して乾燥した茶葉の中では、微生物は死んでいるか冬眠しているか、つまり息をしたり食べたり増殖したりはしないのだが、彼らがつくった大量の酵素が残っていて、その酵素反応だけでも茶葉は発酵度を深めてゆく。気温や気圧の変化や空気中の水分だけで少しずつ成分が変化する。
『版納古樹熟餅2010年』の圧餅直後の2010年と8年経った2018年の葉底の写真をこのページで紹介したとおり。
+【温州人第五批熟茶2018年 その1.】
では、加水して微生物が活動しているときと、圧餅後の活動していないときと、どう違うのか。
もしも同じなら、加水の回数を増やして微生物の活動期間を長くすれば、10年かかるところを10日間でできるかもしれない。
でも、そうじゃないのだな。
微生物が生きて活動しているうちは茶葉のある種の栄養を消費してしまう。
微生物が活動しなければその栄養は消費されない。
加水して茶葉にたっぷり水分があると60度にも達するくらい発熱するが、それはつまり微生物がカロリーを燃焼しているということだから、茶葉のある種の栄養分が消費されていることになる。
その栄養分を残しながら発酵度を深めるには、微生物には死んでもらうか寝てもらうほうがよい。
繰り返し言うが、圧餅後の変化は微生物のつくった大量の酵素によるもの。その変化がまるで微生物が生きて仕事をしているような変化に見えるから微生物発酵はややこしい。
圧餅後の乾燥状態でも湿度が70%を超えて気温が28度もある状態なら、ある種の良性の微生物が活動したり増殖したりしていると温州人の茶友は主張している。
『版納古樹熟餅2010年』の保存環境でも夏の一時期はたしかにその条件下にある。
しかし、茶葉が発熱するほどカロリーの燃焼はしていない。
版納古樹熟餅2010年
2018年10月26日現在の『版納古樹熟餅2010年』。
餅面の色は8年前からそんなに変わっていない。全体的にやや黒っぽくなったくらいだろうか。

東莞人第一批熟茶2017年 その2.

采茶 : 2017年4月
加工 : 2017年11月・12月
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : 東莞人
工程 : 熟茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
生の熟茶
生の熟茶

お茶の感想:
『東莞人第一批熟茶2017年』を圧餅テストする。
圧餅加工のために蒸して茶葉を柔らかくする熱で”火入れ”する。
圧餅しない散茶の熟茶、例えば『宮廷プーアール茶』にしても、散茶のまま熱風乾燥で”火入れ”されている。
火入れしないと温度や湿度に敏感すぎて保存が安定しないし、それ以前に”生”のままはそれほど美味しいと思えないし、熟茶らしい”温”の体感も少なくて、生茶のような”寒”が残っていたりする。
火入れしてこそ熟茶は完成する。
圧餅道具
散茶1キロ分を東莞人の茶友から買った。
原料の晒青毛茶の価格+30%を支払ったが、30%はほぼ微生物に喰われて減った分で、加工費などは一切加算されていない。
原価のもっと安い温州人の熟茶を圧餅テストしたかったが、まだミャンマーにて発酵途中。明日から涼干(陰干し)がはじまると聞いているので、最短でもあと3週間はかかる。
待っていられない。
というのも、すでに秋茶の旬になって待機中。しかし毎日長い雨が降ってどうしようもない。焦る気持ちを圧餅の重労働でいなそう。
茶葉を蒸す
茶葉を蒸す2
茶葉を蒸す3
圧餅の足
圧餅後
圧餅後
「第一批」だから、東莞人のはじめての熟茶づくりであり、微生物にとってもはじめての環境での仕事となる。明らかな失敗が無かっただけでも上出来。
できたては口に残るヌメリが気になったが、茶葉が乾燥し切った現在は気にならない。
自分は近所に住んでいるが、発酵の現場は見ていない。スマホの写真を見せてもらったり、途中経過の報告を聞いたりしただけ。衛生管理のために東莞人ひとりだけが発酵部屋に入るようにしていたからだ。
温度・湿度を自動制御できる装置をつけたり、発酵の器と散水の器を分けたり、新しい工夫もあって理屈の上では間違いはなかったはず。
圧餅したてでまだ湿っているが、待ちきれなくて飲むことにした。東莞人を呼んでいっしょに飲んだ。
東莞人第一批熟茶2017年
泡茶
試飲
茶葉を乾燥させるためにチェコ土の茶壺に入れて鉄瓶の上で蒸した。
茶葉が温まってきたときに微かにアンモニア臭がした。普通に淹れていたらアンモニア臭はしないので偶然の発見。臭覚はほんの少しの成分でも嗅ぎ分けるチカラがある。
湯を注いで飲むときにはアンモニア臭は消えていたが、若干のヌメリがまた戻っている。
お茶の味には問題は見つからない。茶湯の色は濁っているができたての熟茶はこんなもの。味には透明感がある。香りのないコーヒーみたいな味。一般的な熟茶によくある土臭みはまったく無くて甘くて美味しい。
アンモニア臭は、微生物発酵のときに好気性細菌が呼吸困難になったときにつくるのだと思う。散水の水が多すぎたり、微生物の発熱が高くなりすぎたり、茶葉を発酵させる器の通気が悪かったり、いろんなところに酸欠になる原因が考えられる。
ミャンマーに滞在中の温州人にSNSで意見を求めたら、原因は酸欠ではなくて周囲の環境の差が大きいと見ているらしい。たしかに、西双版納の景洪市の空気はミャンマーの山の中よりは乾燥していて気温も安定しない。空気中に飛び交う微生物にも違いがあるだろう。周囲の森林も水田もますます減ってきて、車が増えて排気ガスも多くなっている。
市内のマンションの一室で微生物発酵させるプロジェクトの雲行きが早くも怪しくなってきた。
葉底
葉底の柔らかさからしたら、微生物の活動によってできた酵素による成分変化の余地がまだまだありそう。圧餅後も数ヶ月間はお茶の味が大きく変わるだろう。酵素による成分変化が安定してきたら葉底はもっとシワシワパサパサになる。1年ほどかかる。『版納古樹熟餅2010年』のときもそうだった。

『温州人第五批熟茶2018年』を1枚だけついでに圧餅してみた。
東莞人と自分のもらっていたサンプルを合わせてたら200gあって、180gサイズの餅茶にできた。
温州人第五批熟茶2018年
温州人第五批熟茶2018年
左:温州人第五批熟茶2018年
右:東莞人第一批熟茶2017年
つぎの記事に書く。


茶想

試飲の記録です。
プーアール茶.com

・キーワード検索

通信講座

開催中
+【通信講座】

・カレンダー

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

・表示されている記事

・お茶と年代のカテゴリー

・記録

Instagram

お茶の歴史
お茶の歴史 (JUGEMレビュー »)
ヴィクター・H・メア,アーリン・ホー

・サイトリンク

・プロフィール

 

mobile

qrcode

powered

みんなのブログポータル JUGEM