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丁家老寨青餅2019年・秋天 その2.

采茶 : 2019年11月12日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+チェコ土の茶杯+銅瓶+電熱
泡茶
茶湯

お茶の感想:
このお茶美味しい。
誰にでもわかる美味しさ。
甘いし、香ばしいし、柔らかいし、清々しいし。
秋から冬になる冷たい空気。晴れて高く青い空。そのもののお茶の味。
前回の記事では、渋いとか酸っぱいとか書いていた。
+【丁家老寨青餅2019年・秋天 その1.】
なので、ホントかな?・・・と思って、昨日から続けて3度淹れて飲んだ。
でも、やはり美味しい。
評価ミスだった。
圧餅後にちゃんと乾燥しきっていなかったのだろう。
自分でこう書いている。
圧餅はお茶づくりの一工程で、ここで明確に変化させたほうがよいと考える。
散茶の美味しさが消えて、餅茶の美味しさが出てくる。
どうも近年は散茶の美味しさをそのまま餅茶にしたいようなところがあって、メーカーの技術をみても成形だけが目的になっているような感じがするが、これは間違っている・・・と仮定する。
味がはっきり変わるくらい火(熱)を入れたり圧して揉んだりしているのだから、ということは、茶葉の変化のショックもそれなりに大きい。例えば、一般の餅茶が圧餅後の風味が落ち着くのに5日かかるとしたら、ウチのは10日かかって当然だろ。
茶葉の本質がだんだんとわかってくる。
時間がかかる。
前回の記事で「殺青には問題ない・・」と書いていたが、やや焦がしている。ややしっかり火が入っている。
葉底
葉底に比較的緑色がキレイに残っている。
焦げは気にならない程度。火入れしすぎて豆を炒ったような緑茶風味は出ていない。ど真ん中の生茶風味を保っている。
しっかり火が入っているけれど、ちゃんと軽発酵している風味。
丁家老寨やその隣の張家湾の農家の習慣で、けっこう粗い茶葉や長い茎を新芽・若葉といっしょに摘んでおいて、製茶してから後で選別する。
これが良いのかもしれない。
もしも新芽・若葉だけで炒ったら、乾燥するのが早すぎて緑茶っぽくなる。
烏龍茶づくりでは、茶葉がかなり成長したときに采茶のタイミングがくるが、これは軽発酵をすすめるのに十分な水分を確保するためだろう。
そうすると、自分の考えていたことは逆になる。
春のお茶はとくに、新芽・若葉のなるべく柔らかく小さいのを採取しようとしていたけれど、これにこだわると軽発酵がうまくすすまずに、緑茶っぽくなりやすい。
餅面
生茶を”青餅”と呼ぶ”青”の意味は、烏龍茶(青茶)のような軽発酵度を示していると解釈している。そうすると、采茶は一芽三葉くらいに大雑把にして、製茶が終わって乾いてから新芽・若葉だけを摘出するほうがよい。
その新芽・若葉はちゃんと軽発酵がすすんでいる。
これ、けっこう大事なところ。
近年のプーアール茶っぽくないプーアール茶は、これについて考えが足りないのじゃないかな。
泡茶
この美味しさは、2012年の秋を思い出す。
ブログにもサイトにも登場しないが、2012年の秋に丁家老寨で生茶をつくって、たしか180gサイズの餅茶にして20枚あった。上海ですぐに売り切れた。
餅茶の写真があった。
たぶんこれに違いない。
表
裏
色調がちょっと違うのはカメラが違うせいだが、それにしても”青餅”らしい色をしている。
2012年の秋の写真に、このお茶をつくった一部が残っている。
+【易武山丁家老寨 秋天】
さらに探してみたら、圧餅の写真にこのお茶を見つけた。
渥堆軽発酵
晒干
圧餅
晒干
晒干している真ん中あたりにある小さめの餅茶がそう。
両脇の大きめの餅茶はなんだったのだろう?思い出せない。
このときは、数年に一度しか当たり年が巡って来ないことをまだ知らなかった。
なので、つづけて2013年の秋にも丁家老寨に行ってお茶をつくったけれど、2012年の美味しさには及ばなかった。
これだな。
+【漫撒山秋の散茶2013年 その1.】
今年、2019年の秋は全体的にはそれほどでもないので、”当たり年”ではないかもしれないけれど、晩秋の最後のギリギリを狙った効果はあったのじゃないかな。
秋の味わいが表現できたと思う。
めでたしめでたし。

ひとりごと:
正月に上海に行くことになった。
また天山茶城の友人の店を借りてお茶を飲めるようにするつもり。
無料ではないけれど・・・。
詳細は後日。
よろしく。

老撾高幹青餅茶2019年・秋天 その1.

製造 : 2018年10月(采茶)
茶葉 : ラオス・ポンサーリー県・漫撒山(旧易武山)天門山に近い
茶廠 : 瑶族の農家+義烏人の茶商
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火

お茶の感想:
このお茶のつづき。
+【老撾高幹晒青茶2019年 その1.】
圧餅した。
180gサイズ5枚
余った110gほどの1枚。
この小さめの1枚を試飲用にした。
高幹表
高幹裏
圧餅は、ちょっと長いめの10分間蒸した。
製茶のときの殺青の火(熱)が控えめにしてある分、圧餅の蒸しで調整したつもり。
餅形がわるい。
まるくならない。
繊維が違うのだな。たぶん。
5枚ではコツがつかめないので、餅形の整わないのは仕方がない。
高幹上
高幹下
この茶樹を見に行くことにした。
といっても、すぐには無理。
体力がない。
トレーニングするところからはじまる。最短でも2ヶ月はかかるかな・・・。
片道5時間と聞いていたが、これは走ってのこと。ベトナム戦争の映画に出てくる密林を走るゲリラのスピードで。
そんなことできるのは義烏人の茶友と地元の瑶族だけ。
慣れない自分なら8時間はかかるだろう。
しかも、8時間では目的地に着かないことを考慮して泊まるらしい。
1日目:村から茶地に向かう途中でキャンプ。
2日目:キャンプ地から茶地に入る。茶地から帰路の途中でまたキャンプ。
3日目:キャンプ地から村へ戻る。
という計算。
そうなのだ。
采茶も日帰りではなかったのだ。
どおりで、20日間かかって7キロしかつくれないわけだ。
こんなスケジュールになる。
采茶を午後2時には終わって、足の早い人が鮮葉を担いで走って、村に着く頃は日が暮れている。一晩萎凋させて、翌日の早朝から殺青と揉捻。正午までには晒干をはじめる。昼食後に、つぎの鮮葉を採りに出発する。行けるところまで行って一晩キャンプして、翌日の早朝に茶地に入って采茶する。采茶を午後2時には終わって・・・・。その繰り返しの20日間。
自分にはこの仕事は無理だ。体力がもたない。年齢的にも限界。
森の上
森の下
過去にもっとも山歩きしたのは一扇磨だったかな。
+【一扇磨 古茶樹 写真】
このとき一日8時間は歩いたと思うが、次の日は筋肉痛で山歩きなんて無理だった。
一扇磨への道は草刈りくらいはしてあったが、ラオスの山は道がない。
道なき道の経験は巴達山の茶王樹の裏山に入ったときだった。
+【巴達山 茶樹王の森】
熱帯雨林。びっしり緑で埋まった密林へは一歩も入れない。道のかわりに沢の流れをつたって入った。
たぶんラオスもこんな感じなのだろう。
義烏人は現在またラオスに入っていて、ときどきスマホから写真などを送ってくる。
また新しく未開の茶地を発見したようで、10メートル超えの高幹の茶樹が100本は群生しているらしい。
そこも村から1日では行けない遠いところ。
「せめて村から4時間くらいで見物できる高幹はないの?」
すぐに、これがアホな質問だと気が付いた。
一本すらっと上に伸びる高幹は、茶樹が生まれてからほとんど采茶されなかったことを示している。例えば樹齢が300年なら、もしかしたら300年間誰も采茶していないことになる。人間と出会ったことがない茶樹。
そんな場所、村の近くにあるわけない。
お茶として飲めない野生種の茶樹なら、村の近くにあってもおかしくない。
しかし、これはどう見てもどう飲んでも、美味しく飲めるお茶の品種。
鮮葉
歴史では、西双版納からラオス・ミャンマーにかけての山岳地帯が、人間とお茶がはじめて出会った場所と推測されている。
人間がはじめて出会った、そのときの森。そのときの茶樹。そのときのお茶の味。そのときの体感。
近づいている。
西双版納側の弯弓や刮風寨の国有林の中にも高幹は少し残っている。このブログでも出会ったやつを紹介してきた。しかし、これらはもう何年も前から采茶されていて、性質を変えていて、味も年々変わってきている。
いずれ、ラオスのも何年か続けて采茶されて、性質を変えてゆくだろう。
なので、今すぐ行かないと・・・。
泡茶
葉底
茶湯
で、来年3月には必ず行くつもりだが、その後どうする?
もしかしたら製茶を手伝うことになるかもしれないし、ラオスに製茶設備の投資をするかもしれないし、いっそうのこと西双版納から引っ越すことにするかもしれないし。
ま、そんな先のことはどうでもいいこと。
あと3ヶ月ほど。
この間はラオスの茶樹に出会うことを最優先して、まっすぐ生きることにする。

ひとりごと:
肩がまだ痛いのだよな。
こういう不安要素をできるだけ消しておきたい。
山に入って歩き疲れると、足の踏ん張りがきかなくなって、あちこちに体をぶつけて、打ち身や擦り傷が増える。
そして、ふとこんな考えがよぎる。
もしもここで倒れても、村まで自分を運ぶには人手が足りない。誰かが村人を呼びに戻って、何人か連れてきて担いで帰るにしても、夜道は動けない。ということは少なくとも2日はかかる。虎や象のいる森で、動けないまま夜を過ごすのか・・・。
おそらく、案内する現地の瑶族も同じ心配をするはず。
なので、「この人なら行ける!」と心配させない体造りをしておかないとな。
がんばる。

丁家老寨青餅2019年・秋天 その1.

製造 : 2019年11月12日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+景徳鎮白磁の茶杯+銅瓶+電熱
晒青毛茶

お茶の感想:
秋の最後のお茶づくりで丁家老寨に行ったら、できたての晒青毛茶があった。
といっても4キロちょっと。
一日に采茶した分量。
6日前だったらしい。
その日、11月12日の天気予報は雨だった。
なので自分は来なかったのだ。
実際、景洪市は一日中雨が降った。
ところが、丁家老寨では雨が降らかなったらしい。
農家にはまだアルバイトがいたので、山に上がって采茶して、生茶の原料となる晒青毛茶に仕上げていた。
製茶になにの注文もしなければ、農家は半透明のボードごしの部屋で茶葉を乾燥させる。
このお茶もそう。
自分は直射日光でなければダメと考えているので、ダメはもともとで、とりあえずこのまま太陽にあててみた。
晒干
試飲
それで試飲してみた。
まだよくわからない。
良いのか悪いのか判断できない。
大きく育った粗い葉と茎があまりに多いので、とにかく選別してみた。
粗い葉
茶葉
選別
これにまる1日かかって、もう一度試飲してみたが、それでも判断つかず。
農家で試飲してもわからない。
いや、この時点でわかるくらい上等なもの・・・ではないということはわかった。
試飲
晩秋の古茶樹にはちがいないから、原料はいいと思うけれど・・・。
滞在の最終日になっても判断できず。
とりあえず買って帰ることにした。少量なので、もしもダメなら誰かに転売してもよいし。
さて、家でじっくり試飲してみると、いまいちな感じ。
ウチで試飲
香りはよいけれど、ちょっと渋い。ちょっと酸っぱい。
味はどこか軽薄な感じがする。
透明感というのではなくて、単に薄い感じ。
おかしいよな。
ほぼ同じ原料(采茶のタイミング7日間の差しかない)でつくった紅茶はすばらしい出来なのに、生茶はいまいちなのはなぜか。
製茶に問題があったのか?
現場を見ていないからわからないが、でも、殺青(鉄鍋炒り)は問題なさそう。
ということは揉捻か?
もしも揉捻不足なら、自分が圧餅したら補えるかも・・・。
そう考えて、圧餅までしてみた。
蒸し時間は9分。これはウチの生茶の標準。ちなみに紅茶は10分。
蒸している間に香りが変化する。
7分めくらいでやっと火(熱)がとおったとわかる香りになる。
石型の上に乗ってユサユサして揉むように、1枚につき5分以上じっくりと圧し揉みした。
これが揉捻に似た効果を得る。
圧餅
24枚なので半日かかった。体力的にはこれが限界。
圧餅後はゆっくり乾燥させた。
天日干しもしっかりして、表面を太陽で焦がした。
この記事を書いている11月末はもう完全に冬。毎日カラッと晴れている。
23枚
餅面
茶葉がいい色になった。
艶もある。
揉捻は軽発酵をうながす。生茶がちょっとだけ紅茶に近づくような変化がある。
圧餅の圧し揉みも、ちょっとこれに似た変化が得られる。
殺青の鉄鍋炒りや圧餅の蒸しによって火(熱)が入っているから、変化の幅は狭いかもしれないけれど、それでも茶葉の色や香りの変化がはっきりわかる。
圧餅はお茶づくりの一工程で、ここで明確に変化させたほうがよいと考える。
散茶の美味しさが消えて、餅茶の美味しさが出てくる。
どうも近年は散茶の美味しさをそのまま餅茶にしたいようなところがあって、メーカーの技術をみても成形だけが目的になっているような感じがするが、これは間違っている・・・と仮定する。
もう一度試飲。
崩し
泡茶
うーん。やっぱりいまいちか。
渋味も酸味も落ち着いて、甘味が増して、ひとつにまとまった感じではあるが。
農家がボードの下で乾燥させたときに蒸れたのだろうか、そんな感じの味がまだ後を引いている。
それとも乱獲のために、茶葉の栄養成分が少ないせいなのか。
しかし、透明感というか、スキッとした感じが冬の晴れた空のようで、これまでの丁家老寨にはなかった風味。
もしかしてこれが晩秋の持ち味なのか。
鑑賞の仕方によっては見どころがあるのかもしれない。
とりあえず、しばらく熟成させてみる。

ひとりごと:
だから他人のつくったお茶は気に入らんのだ。
なんで自分が農家のいいかげんな仕事の後始末をしなきゃならない。

老撾高幹晒青茶2019年 その1.

製造 : 2018年10月(采茶)
茶葉 : ラオス・ポンサーリー県・漫撒山(旧易武山)天門山に近い
茶廠 : 瑶族の農家+義烏人の茶商
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
北京人の茶室

お茶の感想:
理想の終点にあるお茶。
漫撒山からラオスにかけての、深い山の原生林の残る森の中の、瑶族のテリトリーにある、高幹のお茶。
お茶ドリームの極みだ。
世界中のどこの国のお茶マニアでも、奥の細道に入っていくと中国茶になる。中国茶の奥の細道に入ってゆくと上の方に霧のかかったエリアがあることに気付く。情報も現物の茶葉もほとんど共有されないのだから、そのエリアに入ると趣味を分かちあえる友達がいなくなる。
ひとりぼっちになる。
知らない人がそのお茶を飲んでもその良さがわからないから、友達もなく家族にも相手にされず、ひとり孤独にお茶を飲む。
自分だけが知っている。
それでいいのさ。
ということなので、ほんとうの最高峰は知られていない。
みんなが知るのは、化粧や演技やストーリーやらでにぎやかで、「ホンモノじゃない」とは言わないけれど、どこか汚れている。人間の汚れた手垢でベタベタになっている。
(こういうふうに言うから大人になれない中二病なのかな。)
高幹のお茶をつくりたい。売りたい。
純粋無垢のものを商品にするなんてイヤな大人のすることだけれど、数が少ないので入手できる人も少ないし、入手してもわからない人がほとんどだろうし、結局なにも変わらないし、ま、いいか。手垢がついたりしないだろ。
茶葉
高幹のお茶をつくるのは今はまだ難しい。
その夢を叶えるにはいろいろ問題がある。
近づくほどに問題が出てきて難しくなっているが、この傾向はいいヤツだ。確実に近づいている証拠だから。
自分では無理でも、その夢を先に叶えた他人のお茶を買うことはできる。
そういえば、高幹のお茶を狙っている茶商がいて、易武山に住み込んで毎日10キロの山道を走ってトレーニングしているという話を人づてに聞いていた。
あの人に会えないかな・・・。
北京人の茶友にそんなことを話したら、あっさり連絡が取れた。
近づいている・・・よな。
その人はラオスの山にこもってお茶づくりをしている最中だったので、山を降りてくるのを待った。
まだ、その茶葉を見てもいないし、価格も聞いていないけれど、「とりあえず1キロ買いたい」と言ってみたら、あっさり売ってくれた。
2019年の10月20日から10日間でつくられたのはぜんぶで7キロ。
この7キロのためだけに3ヶ月ほど山で過ごしている。
散茶のまま1キロを分けてくれて、あとの6キロは”龍珠”と呼ぶ8gの飴玉状に圧延加工したらしい。
龍珠
散茶は自分で圧餅する。
(後に、龍珠も1キロ買うことにした。)
その人は浙江省義烏市の人で、数年前に小さなお茶の店をはじめた。
これからは”義烏人”と呼ぶことにする。
茶湯の色
喫茶の歴史ある浙江省だけあって、わかるお客がいる。
ホンモノを求める数人の要望に応えるだけで、この仕事が成り立っているらしい。
お茶の味になんとなく記憶がある。
たぶんこれに似た系統。
+【老撾高幹古樹2018年・秋天 その1.】
記事に出てくる高幹のお茶は「美味しくない」と書いているが、このお茶は美味しい。
聞いてみると、同じラオスの山でも場所がちょっと違うらしい。中国側の漫撒山から見たら北寄り、刮風寨よりは丁家老寨に近いらしい。
距離にしたら数キロしか離れていないが、お茶の味は違う。
高幹の茶葉
圧餅前に、散茶のままの味を記憶しておくことにする。
葉柄がとにかく粗い。長い。茎が太い。
高幹の茶葉
泡茶
泡茶
泡茶
義烏人の言うには、殺青を意図して浅いめに仕上げているらしい。
それが昔ながらの易武山の味というのもあるけれど、飴玉状の龍珠に加工するときに、どうしても蒸すときの熱が過剰になりやすい。そのバランスを考えているらしい。
歩いて5時間ほどかかる山奥。
村から5人の采茶のアルバイトを連れて入っても、采茶の時間がない。
帰りの5時間の道すがら袋に詰めた茶葉が蒸れて軽発酵のような変化が始まる。
山に製茶小屋をつくることも考えたらしいが、山道があまりに険しくて、大きく重い鉄鍋を持ち込めないらしい。
製茶のクオリティーを求めるお茶ではない。
茶湯
葉底
サッと抽出して薄めにしても、しっかり抽出して濃いめにしても、いずれにしても淡くあっさりしているのが高幹の特徴。
辛味・渋味がほとんどなくておっとりしているのも高幹の特徴。
半日かけて15煎くらいは飲んだけれど、煎ごとの変化があまり大きく感じられないのも高幹の特徴。
ゆったりした茶酔いで興奮しない。静かに沈んでゆくのも高幹の特徴。
殺青のときの薪の火の煙を吸ったかな?という煙味があるけれど、3煎もしたら消えるので問題ない。
煙味はラオスの農家の殺青の窯の造りがひと昔前のままで、排煙がうまくできていないからだ。むしろリアルでいいと思う。
10月20日からの采茶は秋の旬の真ん中だけれど、雨季から乾季になる途中で、まだちょっと雨の降る日もあったはずだけれど、高幹の茶樹は根が深いせいだろうか、お茶の味はあまり天候に左右されない。それも特徴。
葉底
葉底は茎の部分が3分の1ほど占める。
茎は長くて太くて柔らかい。柔らかいから製茶できる。製茶できるから摘むのであって、故意に長い茎を摘んで重量を稼いでいるのではない。
1950年までの易武山の私人茶庄の”號級”の餅面の茶葉とそっくり。

ひとりごと:
自分でお茶をつくるのはたいへんだけれど、他人のつくったお茶を買うのはカンタンだな。楽だ。楽したい。
お金があれば楽できる。
お金が欲しい。

曼派古樹青餅2019年 その1.

采茶 : 2019年04月
茶葉 : ミャンマー曼派
茶廠 : 曼派布朗族の農家+孟宗の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 農家
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
農家

お茶の感想:
農家の若者がお茶を売りに来た。
彼の土地には名物の古茶樹がない。
広い土地もないから、小茶樹のお茶を大量につくることもできない。
稼ぎが足りない。
こういう農家はお茶づくり代行をして稼ぐ。
別の農家から鮮葉を仕入れてきて製茶や圧餅を請け負う。
数キロの少量からできるので、規模の小さな小売店がオリジナルのお茶をつくることができる。
農家の若者はそういう仕事をしている。
このお茶は、ミャンマーの農家がつくった晒青毛茶を仕入れてきて、農家の若者が自分で圧餅や包装をしたもの。
包み紙を白紙にしてあるから小売店のオリジナルにすることもできる。
一般的には誰かのオーダーによってつくられる。農家が自分のリスクでつくって在庫するなんてことはしない。
もしかしたら途中でなにかトラブルがあったのかもしれない。
そんなことは聞いても本当のことを言うわけがないから、茶葉を見て判断するしかない。
とはいえ、いろいろ聞いてみた。
餅面
まず、産地はミャンマーの”曼派”のお茶である。
布朗山から南へ国境を超えた地域。
地元の人であれば通行証だけでカンタンに行き来できる。
山続きだから、曼派にもたくさんの古茶樹があって、老班章とか老曼峨とかブランド古茶樹の原料を提供している。つまり産地偽装のお茶どころ・・・と、聞いている。
3年くらい前から景洪市のあちこちの店で曼派のお茶が売り出された。
中国から大きな資本が入って、製茶の設備が整えられたらしい。
ミャンマーだから秘境というわけではない。
目の届かないところだから、余計に気をつけないといけない。
崩し
崩した
このお茶は手づくり。
曼派の農家が鉄鍋炒りの殺青をして、揉捻をして、直に太陽の光の当たる晒干をしている・・・らしい。
古茶樹の中でも大きなのを選んで、今年の春に30キロ、昨年の秋に7キロ、合計37キロつくられている。
一軒の農家の手づくりならだいたいこのくらいがリアル。
もしも100キロもあれば、何軒かの農家の鮮葉や晒青毛茶が足して混ぜられるから、古茶樹ではなくなる、手づくりではなくなる、春の旬ではなくなる、など、純粋ではなくなる。
茶湯
初回飲んだときに美味しいと感じた。
サンプルを多めに置いてもらって、3日間で決めると約束した。
もしもウチの店が仕入れるなら、200gサイズの餅茶になった180枚分。36キロ。ぜんぶもらう。
けっこうな金額になるので慎重に試飲した。
それで、3日目に「いらない」と返事した。
古樹味に欠ける。渋味が強く出る。
布朗山方面の古樹の味をあまり勉強していないから、老班章の高級茶を専門に扱う地元の茶商を訪ねてホンモノを飲ませてもらった。
老班章の古樹のそこそこのは晒青毛茶の仕入れ価格が日本円にしてキロ20万円を軽く超えるから、小売価格はその2倍・3倍になるわけで、土豪(田舎成金)かほんとうに好きなファンしか買わないお茶になっている。
安いニセモノなら大量に流通しているが、ホンモノは飲む機会がめったにない。
で、飲んでみたところ、やはりホンモノは良かった。
過去に飲んだ老班章はあれもこれもニセモノだったのかな・・・という感じ。
煮茶
山続きの曼派は、お茶づくりがまだこなれていない感じなのだ。
茶樹の選び方にしても采茶のタイミングにしても製茶にしても、研究が不十分で、その素質がしっかり引き出されていない。
人気が集中してバカ高い有名茶山の古樹のお茶は敬遠したくなるけれど、より多くの人が茶の評価に参加して、お茶づくりの研究がされて、上には上がつくられて、修練されてゆく・・・というところは勉強できる。
美味しいお茶ならいくらでもある。曼派のお茶も美味しいお茶である。
でも、叩かれて強くなる過程がまだ足りないよな。
葉底
写真ではわかりにくいが、茶葉の色がくっきり2色に分かれる。何度淹れても2色になる。農家の若者は「春と秋が混ざっているから」と説明するが、どうかな。ミャンマーの農家がなにかしたのじゃないかな・・・。
転売のお茶は真実がわからないから、こういうのがあると引いてしまう。

ひとりごと:
叩かれるのを避けたら強くなれないな。

蛮磚古樹晒青茶2019年 その1.

製造 : 2019年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明山曼庄国有林古樹
茶廠 : 農家+景洪市の茶商
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶・炭火
晒青毛茶

お茶の感想:
自分でお茶をつくると少ない量しかできなくて、店が成り立たない。
他人のつくったのを探してみるか・・・・。
ということで、茶友らに声をかけてみた。
すでにいくつものサンプルを試したけれど、どれもいまひとつ。
ところどころ欠点が目立つ。
自分のお茶なら「欠点もまたよし」なんて理屈をこねるけれど、他人のはそうはゆかない。
原因がはっきりしないから。
この地域のお茶は分業でつくられるのが基本。
例えば、農家の主人が家族やアルバイトにまかせてつくったとか、農家が商人の真似をして他の茶山の農家にオーダーしてつくったとか、茶商が農家にオーダーしてつくったとか。
例えば、采茶はアルバイトがして、製茶の殺青だけ自分がして、揉捻や晒干は家族がしたとか。
分業だから、ひとりがすべてを見ていた・・・というお茶はまずない。
なので、お茶づくりの現場でなにが起こったのか知るよしがない。
人づてに聞く話なんてまったく信用ならないのがこの地域の習慣。
茶葉を転売する人たちは、お茶の欠点の原因がわからないまま、実は不安なままでいる。
不安があるから、目の前で試飲すると空気がピリピリする。
なので必ず自分の家に持ち帰ってひとりで試飲する。
そうさせてくれない場合はあきらめる。
泡茶の前
泡茶
『蛮磚古樹晒青茶2019年』は景洪市の地元の茶商のもの。経験もそこそこある。それでも采茶や製茶の現場を見ることはない。みんながやるようにやっている。
これと似たのを、似たやり方で、北京人の茶友がつくっていた。
+【蛮磚古樹青餅2018年 その1.】
この記事を読み返して、味がよく似ていることに気がついた。
今回は、自分のお茶づくりの失敗経験が活きた。
このお茶の味から殺青の温度に問題があるのがわかった。
殺青の鉄鍋に投入する茶葉が多すぎるのが原因。
農家はたいがい薪火の火力はしっかりしている。
火力と茶葉の量とのバランスの問題。例えば、チャーハンを炒めるのに一人前ずつ炒めるのと三人前をいっぺんに炒めるのと、結果はぜんぜん違ってくるよな。
茶葉は40度から70度のあいだで成分変化が盛んになる。火力が足りないときにこの時間が長くなって変化しすぎる。
煮えすぎて酸化がすすんだようなアク味が出て、香りが弱くなる。
自分もこの失敗を何度かしていて、そのサンプルを残しているからすぐにわかった。
それ以外に、とくに文句はない。
惜しいお茶である。
素材の良さは味の透明感や水質の密度に現れている。
縦方向にスッと伸びる感じ。沈んでゆく茶酔い。ゆったりとした波。体感もよい。
2煎め
4煎め
茶湯の色
蛮磚(曼庄)国有林の古樹。しかも大きく育ったのだけ十数本を選んだホンモノである。
国有林に自生する茶樹は個人が権利を持たない。そのテリトリーの少数民族の村で話し合って村人に分けている。ちなみに象明の曼庄は彝族のテリトリー。
山奥にバイクや徒歩で入り込んで采茶するので、まずは采茶のタイミングを見るのに何度も足を運ぶことになるし、采茶はたいへんな労働になるし、人件費がかかるし、もしも途中で天気が崩れたらダメになるし、リスクが大きい。農家はリスクを取らない。村から近い私有地の茶地のお茶をつくったほうが安全に確実に儲かるから。
なので、国有林のお茶づくりは茶商がリスクを取る。オーダーしたら出来が良くても悪くてもすべて買い取ることになる。
この構造においては、農家は製茶をがんばるメリットは無い。いつものように適当にやっても市場価格(だいたい決まった値段)で売れるから。
そこでどうするか。茶商は農家にボーナスを出して高い技術を要求するか、自前で職人を雇って派遣するか、それとも自分でするか。
いずれにしてもコスト分は高額になる。
高額になるのを理解した顧客がいないとできない。
地元の茶商は、この次どうするかな。
葉底
葉底は、一見キレイな色に見えるが、本来はもっと青黒いはず。全体的に黄色っぽく変色しているのが殺青の温度の低い結果の色。軽発酵をうながすなど意図した製茶の場合は別だが、意図しないのにこうなるのはおかしい。
お茶づくりの裏舞台を書いている。
興味ない人がこのお茶を飲むのはもったいない。
お茶の美味しさを知って深くはまってゆくということは、審美眼が形成されるということ。
この地域のお茶はどういうところを高く評価していて、それと引き換えにどういうところを犠牲にしているか。長所と短所は一対になるので、点数配分を間違えると評価を誤る。
上質の上には上がある。どの方向を目指しているお茶なのかを知らないと、間違ったモノサシで測って、出会うことすらできない。
こういう見方というか価値観はやや東洋的だよな。
見える人にしか見えない。それでいいのだ。いや、それがいいのだ。
西洋にこれを評価する審美眼の育つ気がしない。
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。
この地域でお茶をつくる人たち。遠くへ運ばれて、このお茶を飲む習慣のある人たち。
お茶の味を形成しているモノゴトの因果関係が面白い。

ひとりごと:
お茶づくりになにか無理な圧力がかかると、必ずそのお茶を飲む人にも影響がある。因果関係が見えないところに潜んでいる・・・と、最近つくづく思う。
例えば、自然破壊を犠牲にしてつくられた農作物は、それを食べる人になんらかの悪影響を与える。
ふだん食べているものを疑う。他人を疑う。それをしないのは怠惰である。
消費者は信用とか良心とか都合よく言って楽なほうに逃げる。商人はそこをうまいこと利用する。どっちも根性の悪い奴らなのだ。
にんげんだもの。

天門山古樹青餅2019年 その1.

製造 : 2019年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山天門山
茶廠 : 易武山の茶商
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・白磁の杯・ステンレス電熱ポット
西双版納の茶店

お茶の感想:
今年の春のお茶はつくらなかったし、晒青毛茶を仕入れることもなかったし、浅い評価しかできないけれど、メモを残しておこうと思う。
50日間ほどかかりきりになった熟茶づくりの実験を終えてから、ほんの3日間だけ地元のお茶屋さんを巡ったり茶友を訪ねたりして、今年の春のお茶をいくつか飲んでみた。
あまり期待していなかった。
昨年の春が数年ぶりに良かったので、星の巡りからしてハズレるような気がしていたのと、3月のはじめに西双版納に到着して飛行場に迎えに来た茶友がひと言めに「冬に雨降りが続いた」と異常気象を嘆いていたから。
本来は、この地域の冬は乾季なので、雨は1ヶ月に1度か2度かほんのちょっと降るくらいが正常。毎日降るのはおかしい。
植物は地面を境に上と下とで交互に成長する。
地面の上の葉の成長が止まる期間に根が育つ。冬に雨が降って葉が育って、根が水を上げるのに忙しく働いたら根の育つ期間がない。
はたして、このことが影響したのかどうか、関連性があるのかないのか証明はできないが、結果から見たら今年の春のお茶は香りが弱い。
味は充実している。水質はきめ細かくて飲みごたえがある。
なのに香りが弱い。
このパターンははじめて出会う。
春の茶摘みがはじまってからの天気のコンディションは良かった。
毎日晴れて空気が乾燥していて製茶の天日干しがうまくいった。この数年はむしろ雨の日が多くて製茶に苦労したから、カラッと晴れた日がつづいたのはうらやましい。
製茶はスッキリ仕上がっているはずなのに香りは弱い。
旬に入った3月中頃から4月末頃まで、一滴も雨の降らない日が続いた。自分が数えただけでも33日間雨が降らなかった。空気は異常なほど乾燥した。34日目にほんのちょっと雨が降ったけれど地面はすぐにもとのカラカラに戻った。まとまった雨が降るようになったのは5月末から。春はもう終わっていた。
気温は異常に上がって連日40度を超えた。こんなこともはじめて。昨年まで35度を超えた日などなかったと思う。
農家が言うには、今年の春の茶葉の生産量は例年の半分だった。
雨が降らないので、そもそも新芽の数が少ないのと、若葉に育つまでに乾いて硬くなってお茶に加工できないのと。
乾いて硬くなる前に茶摘みをするから、新芽・若葉は小さく柔らかいうちに采茶される。茶商の立場からすると上質な茶葉が同じ価格で入手できて有利になった。農家の立場からすると小さい茶葉では重量が稼げないので不利になった。
茶摘みのタイミングも良いはずなのに香りが弱い。
お茶を売る人の立場からすると毎年「今年の春は良い」と言いたい。香りが弱いのはたいした問題ではないと言いたい。
けれど、何年か経ってから「あの年のお茶は良かった」という声が聞こえてくる。新茶の評価は甘くて、年月の経ったお茶の評価は辛い。当たり年は数年に一度しかないことが後になってからわかる。
長年熟成させた味をウリにしたい立場からは、数年に一度のお茶だけ扱うのも良いかと思っている。
さて、その観点からすると、香りの弱いのはお茶の個性の表現も弱い。
天門山古樹青餅2019年
このお茶『天門山古樹青餅2019年』は西双版納の易武山地区を専門にする茶商にサンプルとして分けてもらった。
自分は”天門山”という茶地の名前を知らなかった。
よく通っていた漫撒山の丁家老寨から山続きにある茶地なのに、無名だったから名前が聞こえてこなかった。
しかし、価格は3年ほど前から天門山のほうがずっと高いらしい。
それもそのはずで、古茶樹のお茶の生産量は20世帯くらいの村全部を合わせても200キロくらい。一本の茶樹から2キロできると計算して100本しかないわけで、それを茶商がひとりで買い占めるのだから、需要と供給のバランスで価格が上がる。商売商売。
近年の丁家老寨の古茶樹は収穫しすぎで、味が薄くなっているのに比べると天門山のほうはまだ味が濃い。2014年から摘み始めたそうなので、まだ摘み過ぎの悪影響が少ないのかもしれない。
飲んで気がついたのだが個性がない。
漫撒山は南北に18キロほどの峰の周辺に、張家湾・丁家老寨・一扇磨・香椿林・多依樹・薄荷塘・弯弓・・・・・白茶園・冷水河・白沙河・茶王樹・茶坪。と、大小さまざまな茶地があって、それぞれの味があって、だいたい飲んだら当てられる。漫撒山のお茶の味の中にそれぞれに個性がある。
その個性は香りがキーになっているらしい。
香りが弱いので、天門山のお茶の個性が現れていないのか、もともとこんなものなのか?
と疑問に思ったまま他の茶店で刮風寨の茶王樹と茶坪の今年の春のお茶を飲んだ。
茶王樹
茶王樹
瑶族の農家の知り合いのものなのでモノに間違いはない。刮風寨の中でも上質を競うお茶。価格もトップクラス。
ところが、これも昨年のに比べて香りが弱い。
味も口感も充実しているのに、香りだけが欠けている。
天門山のお茶の個性は来年以降に見つけることにする。

ひとりごと:
北京から西双版納に遊びに来ている中医学の先生と交流した。
内モンゴルに牧場を持って牛をある試みで育ててみたり、趣味の範囲が広すぎて、ふだんはどこで何をしているのかよくわからない人だった。
久しぶりにブッ飛んでいる中医学の不思議な話を聞いた。
山東省のある種の天然の樹木から切り出した棍棒で、関節痛の人の骨をゴリゴリして治す。その棍棒は一回きりで焼いて捨てなければならない。つまり、棍棒のほうに悪い”気”が乗り移るという仕組みらしい。そのある種の天然の樹木でないとダメとか、樹齢とか伐採のタイミングとか、細かなルールがあるらしい。
長年苦しんできた関節痛が一発で治る。
西双版納の茶友が半信半疑で北京に行って足を診てもらったら、ほんとうに一発で治って帰ってきた。
中医学の先生は高学歴の人で、スタンフォード大学で科学的なアプローチから解明を試みたらしいが、無理だったらしい。
積み重ねでたどり着けるところじゃない。雲の上を飛ぶような解決策で結果が出ている事実。こういうことに中国ではたまに出会うから面白い。
古代文明の優れた欠片が残っている。
人の文明は、すでに何度も滅びているのだろうな。
お茶づくりの文明も、実はもう滅びている。

熟茶づくり実験2019年 その8.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット

お茶の感想:
発酵スタートから18日目。
6回目の散水を終えてから2日目。
ここでダメになった。
残念だが、捨てるしかない。
今回の実験はこれですべての茶葉を使い果たして、滞在期間があるのでいったん終わりにする。
失敗に終わるが、ヒントを残した。
6回目の散水
5回目の散水の後まではうまくいっていた。
美味しい熟茶になりかけていた。
6回目の散水の後にトラブルが起こった。
トラブルの原因は4月中頃からはじまっていた異常気象。ある程度は予測できたが、天気予報すらだんだんひどくなるとは予測していなかった。気温は連日40度に達して、室内の気温も35度になって、湿度は30度のカラカラで、熱帯雨林の気候じゃない。砂漠のような感じ。
一袋3.5キロの少量ゆえに影響をうけやすい。
茶葉の発熱した温度を下げられなくなった。
4回目・5回目の散水まではなんとかいけた。撹拌するなどして数時間内に32度くらいまで下げられた。黒麹の活動のサインが消えなかった。
ところが、6回目の散水後から特別に暑い日がつづいて、3日間ほど茶葉の温度が40度以上になった。空気がカラカラに乾燥しているので撹拌は何度もできない。茶葉が潤いのあるうちは微生物のつくった酵素の作用があるが、乾燥すると効き目がなくなるので、抗菌効果のガードが下がる。
40度以上が24時間つづいた頃から変な匂いがしてきた。麦わらのような畳のような草っぽい匂い。
そして、黒麹の活動のサインが消えていった。
発酵失敗
メーカーの数百キロ以上の単位で行う渥堆発酵では、内側の茶葉の温度は50度以上になる。しかもその期間は長くて2日間以上続くこともある。
なぜこれほどの高温が長時間続いて大丈夫なのか?
どこが違うのかを考えてみた。
メーカーの発酵
おそらく、通気の状態が違う。
メーカーの渥堆発酵の内側の茶葉は、かなり酸素の少ない状態で発熱して50度に達する。
外側を覆っている茶葉の層は数十センチあって、そこは黒麹優勢になる条件がそろっている。通気が良くて温度は低め。例えば、室温が28度であれば表面の茶葉は28度から30度くらい。10センチほど掘っても35度以下だろう。
この数十センチの外側の層に活動する微生物が酸素を消費して二酸化炭素を吐き出して、内側を酸欠状態にしている。
実験の一袋3.5キロでは茶葉の層は上下6.5センチしかない。外側も内側も差がなくて、一袋すべてがひとつの環境になる。
発酵初期の黒麹菌を培養する目的のときはこれで都合がよかった。
一袋3.5キロの外側・内側のすべての茶葉に通気が良くて、32度くらいの低めに温度が保てて(そのときは室温も30度くらいだったので)、他の微生物の繁殖を抑えてキレイに黒麹の発酵がすすんだ。
しかし、発酵中盤からの”浄化”の目的になるとこれでは都合が悪い。
浄化に働くいくつかの優良菌には、通気の少ない環境で40度以上の高温を好むのもいるから。
こんなことも検討してみた。
例えば、浄化の発酵のために、布袋ごとプラスチックバッグで包んで通気を遮断して、酸素の少ない状態にする。
いいアイデアのように思えたが、これもよく考えるとダメ。
黒麹のサインが消えると必ず調子が悪くなる。
この法則にしたがうと、一袋まるごと酸素が少なくなったり高温になったりしてはいけない。黒麹が弱るから。
これは散水のときの技術にもあてはまる。
2回目以降の散水から茶葉に均一に水がかかってはいけない。黒麹の菌糸が窒息するから。不均一に散水することで、黒麹の活動が止まらないようにする。
手はなくはない。
一袋ごとの発酵を分ける。
一袋を浄化のための発酵。別の一袋を黒麹のための発酵。発酵を分けて行って、後にこの2つを混ぜ合わせる。
混ぜ合わせてからまた一袋ごとに分けて、浄化のための発酵と黒麹のための発酵とを分けて行う。
・・・・かなりややこしい。
言うは易しだが、布袋も蒸籠も毎日洗って天日干しして・・という作業もたいへんで、現実的ではない。
少量の渥堆発酵の難しい理由はここにある。
茶葉の量が少ないため相反するような2つの環境を一つの山(茶葉の集まり)でつくれないこと。
忘れないように、ダメになった茶葉の様子を記録しておく。
まず、茶葉の茎の部分が焦げる。
茎の焦げ
西双版納のお土産屋さんで売っているニセ年代モノの生茶にもよくある茎の部分の焦げ。湿気た跡であるが、焦げているだけではなくてカビている。
葉底
匂いが悪い。
それまで黒麹優勢のときは、栗や焼き芋のような甘い匂いがしていた。その甘い匂いだけしかなかった。
発酵がダメになると、麦わらや畳のような草っぽい匂いが混じるようになる。
茶湯
茶湯の色は6回目の散水でさらに赤く変色している。この色は正常。
しかし、味が悪い。
黒麹優勢のときの白ビールのような甘さはない。
クエン酸の酸味はかなり落ちているが、別の酸味、漬物っぽい酸味が出てきている。
なんとなく身体が受け付けない苦味があり、舌に残る。ほんのひとくちがすっと飲み込めない。
納豆菌が繁殖すると、ぬるんとした粘り気が茶湯にも出てきて、苦味が後味にあるが、この場合の苦味は健康的に感じる苦味。苦いのが悪いわけではない。
どこがどう悪いかと味の説明をするのは難しいが、誰にでも子供の頃からの経験の蓄積があって、これは飲むな!と身体が教えてくれるから、うまく文章にしておく必要はないだろ。
葉底
葉底に、死んだ魚っぽい匂いがかすかにある。茶葉に魚の匂いは危ない気がする。
葉底の色は、5回目の散水までは緑色や黄色がもっと鮮やかだったはずだが、6回目の散水後のはどこか全体に黒ずんで灰色っぽい。茶湯の色の暖色とは反対に、葉底の色が寒色になっている。この現象は茶友の熟茶にも見つけているが、どこかおかしい。
追記:5回目の散水後 軽く焙煎
まだダメになっていない5回目の散水後、そのときの試飲を記録しておく。
甘い香りがピークに達して、お茶を淹れると旨味が強く出て、クエン酸の酸味がちょっと落ちていて、もっとも熟茶らしい味。納豆菌の茶湯の粘りはほとんどなくキレイな口感。
これを軽く焙煎してみた。ステンレスの鍋を熱して、火から下ろして予熱だけで散茶に火入れした。
焙煎したときに焼いたパンの匂い。酵母発酵の匂い。味は火入れ前のよりもクエン酸の酸味が落ちて、透明感が増して、さっぱりとしていた。熟茶の年代モノにときどきあるちょっと埃っぽい感じの香り。アミノ酸の焦げからくる炭っぽい感じ。ここで発酵を止めて長期熟成させる手はあるかもしれない。と思った。
今回の実験の目的は、味も体感も涼しい昔の熟茶がどのような発酵によってつくられたかを探ること。
現物のお茶の味で証明することが叶わなかったが、現代の熟茶がなぜ味も体感も暑苦しいのか?、ひとつ思いつく理由がある。
おそらく浄化を意識しすぎているからだろう。
じゃんじゃん水をかけて、渥堆発酵の内側の発熱して高温になるところの時間を長めにして、つまり黒麹菌以外の良性の菌類による発酵をすすめて、”揺れ”の要素をなくしてゆくと、食品衛生的にはより安全になる。理論上はそうだ。このまま発酵をずーっとすすめて行きつくところは灰とか炭とか、枯れて毒にならない物質になる。
出荷してからすぐに飲めなければいけない現在の市場において、「発酵茶だから10年寝かせなければ毒が抜けない」なんて言い訳はできない。
しかし、それならなぜ昔の人も同じように考えなかったのか?
謎を残して、振り出しに戻ってしまった。

ひとりごと:
開発区
開発区
森を切って山を崩して川をせき止めて、人の住まない投資物件を増やしてゆく経済。
そんなんで儲けたヤツらが山ごと買い取って森を切って天然ゴムやバナナを植えて山が枯れてゆく。
罰当たるわな。
ビジネスは頭悪い。

熟茶づくり実験2019年 その7.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット
温度

お茶の感想:
四回目の散水を終えて2日目。
茶葉の温度は最高45度まで上がった。
さすがに撹拌しないとこの温度を下げられない。放っておけば50度を超えるので撹拌した。
かなり不安定な状態。
そういう段階。
三回目の散水からとても不安定になっている。
黒麹優勢の発酵はもうここで限界だと思う。
これまでにない匂いが出てきて、消えて、また出てきて、というふうに揺れる。
豆っぽい匂い・キュウリっぽい匂い・うどん出汁っぽい匂い・漬物っぽい匂い・卵の黄身っぽい匂い・カビっぽい匂い・焼いたパンっぽい甘い匂い・栗っぽい甘い匂い、など。
お茶の味も揺れる。
茶湯
クエン酸の酸味が落ちてきて、これまでになかった苦味が出てきたり、強い旨味や甘味が出てきたりする。数時間後に飲んでみるとまたクエン酸の酸味が戻っていたりする。
グラスの底に菌糸や胞子の死体?のようなのが増えてきた。
グラスの底
栄養が豊富になりすぎているのだと思う。
豊富な栄養は、腐りやすいカビやすい。
黒麹菌だけではもう安全を保てないから、納豆菌や酵母や乳酸菌の援護が必要。
こちらから援護を要請しなくても向こうから勝手に来てくれて、活発な発酵になって茶葉の温度がこれまで以上に上がる。自然にそうなる。
おそらく、良性な菌類だけはないだろう。
茶葉は複雑なカタチをしていて、ミクロの世界ではいろんな環境ができるから、悪いやつも侵入してくる。
カビ
カビ
茶葉が高温になると水蒸気が増えて蒸籠につくカビも増えてきた。黒麹っぽい黒いのがほとんどだが、そうでないのもいる。もうすぐそこまで迫って来ている。いや、すでに茶葉に侵入しているだろう。
でも大丈夫。
酵母・納豆菌・乳酸菌は、さらに発酵をすすめることで毒が毒のカタチを保てなくなるまで分解するから。
発酵により浄化する。
汚れた土や水が微生物によって浄化されるように、茶葉につくられた毒もまた浄化される。
浄化のプロセスが渥堆発酵には必要。だから、単独の微生物による支配では無理。いろんな微生物が複雑にからみあって共存してくれないといけない。
共存するには、もともとの茶葉の栄養では少なすぎるので、黒麹菌が栄養をつくってくれないといけない。
黒麹菌は栄養をつくりすぎる。だから余剰な栄養は酵母などが燃焼してくれないといけない。毒を分解してくれないといけない。
茶葉の水分や温度など、ほんの少しの環境差で微生物たちは棲み分けするから、茶葉の堆積の高低差によって層をつくる。茶葉の内側の水分が多いところから半乾きになるまでの含水量の変化する時間の幅をとる。
部分的に、もしくは一時的に、それぞれの微生物の繁殖をゆるす。
版納古樹熟餅2010年
写真: 版納古樹熟餅2010年メーカーの倉庫での渥堆発酵
渥堆発酵が、
なぜこれほど何度も散水するのか。
なぜこれほど高温を保つように発酵させるのか。
なぜこれほど長い期間発酵させるのか。
それは、熟茶づくりに”浄化”のプロセスが必要だから。
2袋それぞれの発酵
茶湯の色
葉底
ここにきて、一時的に45度になる高温を経て、ようやく茶湯の色に赤みが加わってきた。
左と右は同時に発酵をスタートした同じ茶葉の2袋だが、1袋ごとの具合がちょっと違ってきた。ほぼ同じ環境になるようにしてきたが、例えば蒸籠の上段と下段とか、散水の量の微妙な差とか、発酵に差がでてくる。お茶の味にも差がある。
一方は、カビっぽい苦味がちょっと出てきたが、香りが甘い。
もう一方は、カビっぽさはなくて漬物っぽい酸味があり甘味も強いが、香りが少ない。
これからの展開を観察する。
黒麹優勢の茶葉
高温になっても黒麹優勢のときの黒っぽい色のサインが消えなくなってきた。35度くらいに温度が下がってくると、栗の甘い匂いが戻ってくる。
はい。
今日の授業はここまで。

ひとりごと:
西双版納は異常気象で雨が降らない。まったく降らないので空気はカラカラ。熱帯雨林の気候じゃなくなっている。
連日、気温は39度まで上がる。
このままだと渥堆発酵の最終段階が危ない。
西双版納
渥堆発酵の最後は、茶葉を広げて温度を下げて微生物の活動を止めて、10日ほどかけて自然乾燥する。
高温のために微生物が活動してはいけないし、乾いた空気が茶葉を早く乾燥させてもいけない。
なにか別の手を打つしかなさそう。

熟茶づくり実験2019年 その6.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット
発酵の茶葉

お茶の感想:
さらに2袋分、調子が悪くなって捨てた。
これで手元の茶葉はいったんゼロになった。
原因はわかっている。
撹拌しすぎ。
乾燥しすぎ。
撹拌の目的は、水分の均等化と、上がりすぎた温度を下げること。
しかし、撹拌すると茶葉の表面が乾燥しやすい。どうやらそれがいけない。
茶葉の表面だけが乾燥して内部に水分が多くて茶葉の温度が34度以上あるようなときに、黒麹以外の微生物によるものと思わしき匂いが出てくる。イカの塩辛っぽい匂い。加湿して茶葉の表面に潤いが戻ると消えるし、たとえその匂いが出てもお茶の味にはほとんど影響しないが、いったん出ると後になるほど出やすくなる。メーカーの渥堆発酵中にもその匂いがあるので、問題ないのかもしれないが、今回の実験ではできるだけ黒麹優勢の発酵をすすめたい。得体の知れない変化はなるべく少なくしたい。
黒麹優勢の状態は色や匂いでわかるようになった。
種麹を仕込むことで黒麹による変化が特定できたのは今回の大きな成果。
布袋の発酵茶葉
黒麹発酵の茶葉
黒麹発酵の茶葉
しかし、黒麹優勢のバランスを保つのは難しい。
布袋に大きな餅のようなカタチに収まっている茶葉が、例えば部分的に、中央には黒麹で端っこだけはクモノスカビがちょっと出る、というふうに棲み分けするようにはなりにくい。黒麹が優勢になると布袋のひとかたまりが団体行動で同じほうを向いているような感じで、中央も端っこも同じ色に染まる。
このバランスが崩れると、ほんの数時間で優劣がひっくり返る。
ある一定の温度や湿度を保つくらいではバランスが保てない。今日一日の気温や湿度や気圧の変化、日々の変化、季節の移り変わり、など、揺れる要素はいろいろあるから目が離せない。
こんなに難しいとは思っていなかった。
撹拌は水分の均等化や温度を下げるのに有効だが、できるだけしないほうが茶葉の表面の潤いを保ちやすい。途中の散水は一滴も許されない。
手を使わずにご飯を食べるみたいな不自由さ。もどかしさ。
茶葉に触らないようにする。
そうすると、散水から24時間ほどで茶葉同士がゆるくくっついてくる。日本の麹造りで米の粒がゆるくくっついて固まるのと似ている。菌糸がつながっている様子。写真ではわかりにくいが、茶葉の表面にうっすら白く短い毛が生えてくる。
黒麹の菌糸と思われる。
黒麹の茶葉
菌糸が張り巡らされると、茶葉と茶葉の隙間の水分を逃がしにい構造になるらしい。布の内側の餅が全体的にしっとりしてくる。もしかしたらクエン酸による潮解の作用(空気中の水を捕まえる)も働いているのかもしれない。
しかし、撹拌すると乾いて菌糸が消える。1時間で消える。ものすごく繊細。
これを知らないうちは、加湿で調整できるだろうと考えていた。
撹拌して茶葉の表面が一時的に乾いても、加湿したらすぐに潤いがもどるだろう。
ところが、そうはゆかない。
茶葉の繊維は天気に反応している。
雨が降ったりして外気が湿れば茶葉も湿りやすい。カラカラに晴れて外気が乾けば茶葉も乾きやすい。その逆の方向へ調整するのが難しい。
また、加湿しすぎてもダメで、茶葉がどんどん水を吸って内部まで水浸しになって黒麹が呼吸できず、乳酸菌や納豆菌やケカビやクモノスカビが大繁殖する。酵母がアルコールをつくる。
毎日の天気を見ながら、一日の外気の変化を見ながら、加湿の加減も微妙に変わってくる。
ベストなバランス。内部には適度に空気と水がありながら表面が潤っているというバランスは、まずは散水の加減で決まるが、そこはなんとかコツを掴んだので、これからは保湿が課題である。
臭豆腐
写真は臭豆腐の一種の石屏豆腐。
綿のような菌糸の先に黒い粉が見えるが、これは黒麹ではなくてクモノスカビ。クモノスカビの発酵はクセがないので、これを見ないで豆腐料理になると発酵した豆腐であると気付かない。ただ、箸が止まらなくなる旨さと、ほんのちょっとチーズっぽい酸味がある。
撹拌しないで、発酵の温度が上がりすぎるのをどう対処するか?
冷やす設備がないので、気化熱で温度を下げるなど自然な現象を利用するしかない。
まず、発酵の部屋を変えた。
これまでの部屋は日当たりが良くて、遮光していても照射熱がこもって乾燥しやすい。3部屋あるので、隅々まで裸足で歩いて、床がいちばんヒンヤリしているところ、つまり水気がいちばんあるところに蒸籠を移動させた。
電気ポットの蒸気を利用するのをやめた。
水となじまない不自然な熱い空気が茶葉を乾燥させるから。
このところ一日の平均気温が30度はあるから、加熱する必要もない。
4時間に一度はチェックして、蒸籠の上段・下段を交換したり、上段・下段の間の中段に空の蒸籠をはさんで通気性を良くしたり、布袋ごと天地返したり、布袋の餅の中央にちょっとだけくぼみをつくったり、茶葉には直接触れない蒸籠や布に霧吹きをして熱を下げたり。
気化熱で内部の水を冷たくするダイ族の素焼きのヤカンの、外側の結露の水と冷気を利用したり。
ダイ族の陶器
土器
そのくらいしか手段がなくて、いずれも即効性はないが、ただ、試行錯誤しているうちにそれだけでもなんとかなりそうになってきた。
それで、現在は新しい茶葉で渥堆発酵をスタートさせている。すでに9日目。散水2回目から2日後。
今のところ安定している。
これまでのと比べてかなりキレイに発酵させている。
黒麹発酵の茶葉
3.5キロ(乾燥した茶葉)を1袋として2袋の7キロ分。
1袋の茶葉の量を2.5キロから3.5キロに増量したが、これも潤いを保つ効果が増すので有効と考えた。
茶葉を変えた。
孟海県の茶葉をやめて、孟臘県の旧六大茶山の蛮磚古山(現在名は曼庄)の生態茶にした。
旧六大茶山は山に水気が多くて、茶葉にも水気が多い。
生態茶は樹齢30年くらいの若い茶樹で、山の斜面に一本一本独立して植わっている。同じ山の古茶樹から種を採取して植えたものだから、古くからある原生の大葉種の品種特性が現れている。
あくまで推測だが、こちらのほうが茶葉がもともと持っている天然の微生物(黒麹菌を含む)の量が多いと見ている。
曼庄
晒青茶
黒麹の品種は、焼酎づくりにつかわれる日本には何百種もあるとどこかで聞いたことがあるが、おそらく熟茶づくりにおいても茶山や倉庫ごとに棲み着いている黒麹の品種特性がそれぞれあるにちがいない。
2016年の秋に熟茶づくりを試したときは種麹なしで、茶葉の持っている天然の黒麹を利用していた。そのとき、発酵に使う道具の布や笊を洗うと、黒い色素が水を染めるが、その黒にちょっと青味があったのを覚えている。万年筆のインクのような色。その色が今回の蛮磚の茶葉の発酵につかっている道具を洗うときにも出てきた。孟海県の孟宗山のは黒い色でもちょっと黄色っぽい感じだったので、もしかしたら黒麹の品種特性の違いが現れているのかもしれない。
発酵スタートのときに、茶葉を蒸して種麹を仕込んでいるが、ちょっと蒸したくらい(蒸し時間10分くらい)では天然の胞子が死なずに残っているのかもしれない。
発酵熱の茶葉
2回目の散水から24時間後、茶葉の温度がゆっくり上昇して40度を超えた。
さすがにこのときだけは撹拌して揉捻もした。
1回目の散水で40度に達すると、おそらくそれは茶葉が水浸しになっているから納豆菌らしきのが大繁殖するのだが、今回は40度になっても黒麹優勢の状態を維持している。栗のような甘い香りがしている。
茶湯の色
あいかわらず茶湯の色は変わらない。
黒麹が茶葉を酸化させないようにしている。
スタートから9日目、散水2回目。まだクエン酸の酸味が強いが、でんぷん質の糖化による甘味も強く出ている。
香りも味も透明感があって、怪しいところはまったくなし。
はい。
今日の授業はここまで。
葉底
葉底つぶす

ひとりごと:
今回の実験の最大の難関はまだこれから。
渥堆発酵を終えてからの、乾燥をどうするか。火入れをどうするか。
散水5回目までにいろんな可能性を考えておいて、これという方法を決めておきたい。


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