刮風茶王樹青餅2020年 その5.
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と茶友
采茶 : 5月3日
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
数量 : 10枚
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯・白磁の茶海+鉄瓶・炭火
お茶の感想:
2024年1月に4年ぶりに西双版納に訪問し、ついでにプーアール茶最大の消費地である広州も訪ねた。
生茶の熟成方法に変化を見つけた。
------------------------------------------
前置き。
生茶の熟成は新世代になっている。
旧世代の黒茶の生茶に対して、新世代は緑茶の生茶。
通信講座#001を参照。
+【通信講座#001 生茶はなぜ黒茶だったのか】
旧世代と新世代の境は1990年初期の頃。
写真のお茶は西双版納の茶友が所有していた1990年代中期の生茶。
易武山の茶葉。晒青毛茶の段階ですでに微生物発酵していた旧世代ではあるが発酵が浅いせいか、茶葉の湿気たダメージによるマイナスイメージの味が少しある。1990年代中期は新世代との境目に近いところ。
新世代の生茶の長期熟成については混迷している。
大きく二手に分かれる。
過去の旧世代のやり方を継承するか、緑茶として新しい保存方法にするか。
かつての消費地は広東省から東南アジアの華人が主であった。
高温多湿な環境に保存されていた。
新世代の緑茶タイプをこの地域で同じように保存すると湿気て風味が落ちる。
場合によってはカビが生える。(悪いほうのカビ)
旧世代の黒茶タイプは微生物発酵により作られた成分が茶葉を守っている。
抗酸化作用が強かったり、繊維にたくさん穴が開けられて水を吐き出しやすくなっていたり、より甘くなったり、魅力的な香りになったり。発酵による効果で風味は落ちないどころか、美味しさの価値を上げる。
黒麹のつくった抗生物質で他の雑菌が繁殖できない状態になっている。
(黒麹発酵している熟茶で明らかな現象。)
なので、旧世代の保存方法であまり問題がなかった。
1990年初期から徐々に緑茶タイプの生茶に移行して、2000年以降の生茶はほとんど緑茶タイプになった。
(あくまで個人的な経験に基づく見方である。)
旧世代の保存方法が多い西双版納で、湿気て味が落ちることを多くの業者が認識しだしたのが2014年頃。
この頃にはすでに倉庫に空調設備を備える業者があり、湿気ない味の茶葉と湿気た味の茶葉の差が明確になってくる。
ちなみに当店が現地で空調(除湿機)を導入したのは2014年。
西双版納に保存していたオリジナルの生茶は、2014年以前と以降とで味の雰囲気がガラッと変わる。
ここまでが前置き
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2024年1月。
広州の茶友の案内で、易武山茶区の生茶を主力製品にしている中堅メーカーの”歳月知味”の本部に訪問した。
本部は東莞にある。広州と深圳の間にある。
オーナーと幹部の若手が対応してくれた。
歳月は2005年から刮風寨茶王樹の餅茶サンプルを残しており、順番に試飲させてくれた。
2005年、2008年、2013年、2015年、2020年、だったと思う。
歳月の倉庫は何箇所かあるらしいが、メインは東莞にある。
そして2015年から完全に空調設備の整った倉庫に変更している。
中堅メーカーの中では早く変更したほうだと思う。
お茶の味は2015年からガラッと変わる。
それ以前のはどこか雑味(湿気たことによる)がありスッキリしない。
2015年からのお茶はスッキリ。
この結果からみても、湿気やすい環境に茶葉を保存している業者はすべて空調設備を導入するはずだと思える。
注目するべきは2020年の刮風寨茶王樹。
同じく2020年の茶王樹の生茶(同行した広州の茶友のつくったもの)を保有していて京都熟成させている。
(この記事のタイトルになっているお茶。)
東莞熟成と京都熟成の熟し具合が大きく異なる。
たった4年でこれほどまで異なるのかと驚くほど。
東莞は香港にも近い高温多湿な地域で、空調を使用して乾燥を保っていても温度による熟成変化がすすむ。
東莞熟成の茶湯の色はすでにオレンジっぽく赤みがあるのに対して、京都熟成のはまだ緑茶っぽいのがやっと黄色っぽくなった程度。
(東莞のほうの茶葉や茶湯の写真を撮るのを忘れた。以下は京都のもの)
冬でも暖かい気候が変化を促す。
乾燥を保つことにより透明感を保ちつつ、より熟した味を実現している。
知らない人が飲むと、製法の異なるお茶を飲んだように感じるだろう。そのくらい異なる。
この結果をふまえて、現在所有する生茶の保存熟成をどうするか。
検討することにした。
現在はすべて京都熟成にしている。
これからの長期保存のために西双版納など暖かい気候のところに倉庫を移すか。
それともこのまま京都熟成を続けるか。
検討した結果、すべてこのまま京都熟成を続けることにした。
暖かい地域での空調による乾燥保存がひとつの成功例を示したのは明らか。
みんなが同じことを追いかけるようになる。
透明感を残しつつどれだけ早く熟した味を達成するか競争になり、どちらがより赤みのある色をしているか、どちらがより甘く変化しているか、このようにわかりやすい観点で評価されるようになる。
思考の罠。
どちらがより美味しいか、どちらがより美しいか、というわかりにくい観点が後回しになる。
この競争に参加しないで、独自の道をゆく熟成味が10年後により魅力的になるという読み。
茶廠 : 農家と茶友
采茶 : 5月3日
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
数量 : 10枚
保存 : 茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 中国宜興土の茶壺・チェコ土の茶杯・白磁の茶海+鉄瓶・炭火
お茶の感想:
2024年1月に4年ぶりに西双版納に訪問し、ついでにプーアール茶最大の消費地である広州も訪ねた。
生茶の熟成方法に変化を見つけた。
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前置き。
生茶の熟成は新世代になっている。
旧世代の黒茶の生茶に対して、新世代は緑茶の生茶。
通信講座#001を参照。
+【通信講座#001 生茶はなぜ黒茶だったのか】
旧世代と新世代の境は1990年初期の頃。
写真のお茶は西双版納の茶友が所有していた1990年代中期の生茶。
易武山の茶葉。晒青毛茶の段階ですでに微生物発酵していた旧世代ではあるが発酵が浅いせいか、茶葉の湿気たダメージによるマイナスイメージの味が少しある。1990年代中期は新世代との境目に近いところ。
新世代の生茶の長期熟成については混迷している。
大きく二手に分かれる。
過去の旧世代のやり方を継承するか、緑茶として新しい保存方法にするか。
かつての消費地は広東省から東南アジアの華人が主であった。
高温多湿な環境に保存されていた。
新世代の緑茶タイプをこの地域で同じように保存すると湿気て風味が落ちる。
場合によってはカビが生える。(悪いほうのカビ)
旧世代の黒茶タイプは微生物発酵により作られた成分が茶葉を守っている。
抗酸化作用が強かったり、繊維にたくさん穴が開けられて水を吐き出しやすくなっていたり、より甘くなったり、魅力的な香りになったり。発酵による効果で風味は落ちないどころか、美味しさの価値を上げる。
黒麹のつくった抗生物質で他の雑菌が繁殖できない状態になっている。
(黒麹発酵している熟茶で明らかな現象。)
なので、旧世代の保存方法であまり問題がなかった。
1990年初期から徐々に緑茶タイプの生茶に移行して、2000年以降の生茶はほとんど緑茶タイプになった。
(あくまで個人的な経験に基づく見方である。)
旧世代の保存方法が多い西双版納で、湿気て味が落ちることを多くの業者が認識しだしたのが2014年頃。
この頃にはすでに倉庫に空調設備を備える業者があり、湿気ない味の茶葉と湿気た味の茶葉の差が明確になってくる。
ちなみに当店が現地で空調(除湿機)を導入したのは2014年。
西双版納に保存していたオリジナルの生茶は、2014年以前と以降とで味の雰囲気がガラッと変わる。
ここまでが前置き
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2024年1月。
広州の茶友の案内で、易武山茶区の生茶を主力製品にしている中堅メーカーの”歳月知味”の本部に訪問した。
本部は東莞にある。広州と深圳の間にある。
オーナーと幹部の若手が対応してくれた。
歳月は2005年から刮風寨茶王樹の餅茶サンプルを残しており、順番に試飲させてくれた。
2005年、2008年、2013年、2015年、2020年、だったと思う。
歳月の倉庫は何箇所かあるらしいが、メインは東莞にある。
そして2015年から完全に空調設備の整った倉庫に変更している。
中堅メーカーの中では早く変更したほうだと思う。
お茶の味は2015年からガラッと変わる。
それ以前のはどこか雑味(湿気たことによる)がありスッキリしない。
2015年からのお茶はスッキリ。
この結果からみても、湿気やすい環境に茶葉を保存している業者はすべて空調設備を導入するはずだと思える。
注目するべきは2020年の刮風寨茶王樹。
同じく2020年の茶王樹の生茶(同行した広州の茶友のつくったもの)を保有していて京都熟成させている。
(この記事のタイトルになっているお茶。)
東莞熟成と京都熟成の熟し具合が大きく異なる。
たった4年でこれほどまで異なるのかと驚くほど。
東莞は香港にも近い高温多湿な地域で、空調を使用して乾燥を保っていても温度による熟成変化がすすむ。
東莞熟成の茶湯の色はすでにオレンジっぽく赤みがあるのに対して、京都熟成のはまだ緑茶っぽいのがやっと黄色っぽくなった程度。
(東莞のほうの茶葉や茶湯の写真を撮るのを忘れた。以下は京都のもの)
冬でも暖かい気候が変化を促す。
乾燥を保つことにより透明感を保ちつつ、より熟した味を実現している。
知らない人が飲むと、製法の異なるお茶を飲んだように感じるだろう。そのくらい異なる。
この結果をふまえて、現在所有する生茶の保存熟成をどうするか。
検討することにした。
現在はすべて京都熟成にしている。
これからの長期保存のために西双版納など暖かい気候のところに倉庫を移すか。
それともこのまま京都熟成を続けるか。
検討した結果、すべてこのまま京都熟成を続けることにした。
暖かい地域での空調による乾燥保存がひとつの成功例を示したのは明らか。
みんなが同じことを追いかけるようになる。
透明感を残しつつどれだけ早く熟した味を達成するか競争になり、どちらがより赤みのある色をしているか、どちらがより甘く変化しているか、このようにわかりやすい観点で評価されるようになる。
思考の罠。
どちらがより美味しいか、どちらがより美しいか、というわかりにくい観点が後回しになる。
この競争に参加しないで、独自の道をゆく熟成味が10年後により魅力的になるという読み。
- 2024.03.16 Saturday
- プーアール茶2020年
- 10:30
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- by ふじもと