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漫撒一水紅茶2016年 その1.

製造 : 2016年4月3日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 晒干紅茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : マルちゃんの茶壺
香椿林の森上
香椿林の森下

お茶の感想:
今年の春のお茶はすべて「一天一采」を実行した。
昨年11月にこの記事
で宣言したとおり、茶摘みの日ごとにお茶を分けた。
「生茶」と「紅茶」の二種しかないが、日付や茶山や茶樹で分けると14種のお茶ができた。そのうち何種かは圧延加工するときにブレンドするので、出品は8種くらいになるだろう。
今年の春のテーマは「製茶」だった。
今になって学んだことの内容がはっきりしてきた。
一天一采は、茶葉の成長具合や天候に影響されやすいこの製法の「揺れ」を把握するのに有効だった。すべては茶葉に記録されていて、お茶の味に現れる。
振り返ってみると、今年の春は天候が良いほうだった。
悪天候に悩まされた昨年に比べると、茶の香りが高く、産量も全体的に多かっただろう。美味しいお茶を仕入れて売るという本来の仕事をするチャンスに恵まれたはずなのに、そうはゆかなかった。一天一采を求めたゆえに産量が犠牲になった。
采茶上
采茶中
采茶下
ちょっと話がそれるが、学生の頃から魚釣りが好きで、会社勤めをはじめてからもしばらくは週末ごとに琵琶湖にくり出していたことがある。
限られた時間のなかで、魚が活発に食事をするのは、明け方と夕まずめの1時間くらい。そのゴールデンタイムに、どこへ竿を出すか、どんな仕掛けで挑むか、作戦が釣果を左右する。
短いゴールデンタイムに釣り場を移動すると、移動時間がロスとなるので、どこかひとつの場所を決めたほうがよい。「やっぱりあっちの釣り場にしたほうがよかったかもな・・・」という疑念が湧いてきても、もう遅い。今、眼の前のこの釣り場に集中して最大限の成果を得るほうがよい。
一天一采のお茶づくりもそう。
今年は漫撒山の香椿林の森の30本ほどの古茶樹に、ゴールデンタイムの勝負を掛けた。漫撒山地区には、刮風寨、丁家老寨、白茶園など、行きたい茶地、つくりたいお茶は他にもあるけれど、その選択を捨てたからこそ学ぶことのできる深いところがある。
香椿林のゴールデンタイムは4月3日だった。うまくゆけば、その1日で10キロほどの毛茶(原料となる散茶)ができる皮算用だったが、結果は1.9キロに終わった。
籠に鮮葉
農家に裏切られた。
4人か5人集まるはずだった茶摘みのアルバイトが1人しか来なかった。この日、地域一帯が茶摘みのピークを迎えて、アルバイトが不足していたので仕方ないと諦めていたが、実は農家はそのアルバイトを他に回して、こちらが狙っていた香椿林の茶葉を摘ませなかったのだ。偶然や不注意ではなく、故意の可能性が高いことに、その日の晩になってから気がついた。
なぜ農家はそんなことをしたのか?
理由は追求しないが、推測するに、もっと高価に売れるかもしれないと知恵を働かせたのだろう。
当初は、4月6日が香椿林のゴールデンタイムになると農家は見積もっていた。しかし、天気が崩れる予報がでているので、4月3日に前倒しした。3日間早い分、茶葉はまだ小さく重量も少ない。収穫量が3割ほど減って農家の収入も減る。
4月3日に摘まないで、茶葉がしっかり成長するのを待ってから摘む。そして農家が自前で晒青毛茶(生茶の原料となる散茶)をつくり、他の茶商に売る。「日本から来ている茶商が狙っていた茶樹ですよ。」とアピールすると5割は高く売れるだろう。
農家がちょっと自分に相談してくれたら5割くらい多めにお金を出したのに・・・。しかし、漫撒山の農家は利に敏いから、そのズルいところを隠すために複雑な手を打ったのだろう。
そこまで先読みして、こちらから先手を打つべきだった。
空に雲
後になって言えることだが、数日後の茶摘みは天候が崩れて、農家の企みは空振りに終わった。特別なお茶にならないどころか、天日干しのスッキリしない味となって、売れ残っているはずだ。運が良ければ品質にこだわらない茶商が買ってくれるが、価格はそれなりだろう。
よくあることなのだ。漫撒山一帯では人間の欲がお茶をダメにする。ダイヤの原石が人の手に汚れて輝きを失う。
ちょっと離れたところから見ると、この地域特性は良くも悪くも作用していて、結果的にお茶を面白くしているのだが・・・。
乾きたての毛茶
1.9キロできた紅茶。
『漫撒一水紅茶2016年』仮名。
180gサイズに圧延すると10枚にしかならない。
仕事の結果としては不足だが、学んだことはたくさんある。一天一采だからこそ学べたことだ。
「一水」と名付けたのは、前夜の4月2日に雨が少し降ったからだ。漫撒山ではこの春にはじめての雨らしい雨となった。といっても、ほんの5分ほどで止んだ。雷の音と突風が激しかったけれど、雨の量は少なくて、農家の庭の土の地面は10分もしたら元の乾いた状態に戻った。しばらくしたら空には星がたくさん見えて、雨がウソのようだった。
香椿林の森は深いから、草が濡れると歩くことすら困難になる。そんな心配もなかった。
バイク
お茶の味に影響はないだろう。
農家も自分もそう判断した。土に雨水が染み込んで根にとどく前に蒸発したので、根から茶葉に水が供給されない。そう考えたのだが、間違っていた。
茶葉は雨粒を浴びたり、空気中の水を吸ったりして、水をたくさん含んでいた。こんなことになるなんて、はじめて知った。
茶葉と手
次の日、朝からスッキリ快晴だったが、摘んだ茶葉を入れた竹籠の中で、茶葉は汗をかくほど水を吐き出していた。
これではいけないと、応急処置で芭蕉の葉を地面に敷いて萎凋させた。
芭蕉の葉の上で萎凋
だんだん萎れてしんなりするものの、午後3時の持ち帰るときになってもまだ水分が多くある。手の感触でわかる。天気はよくても、空気が湿っているから乾きにくいのだ。
農家に持ち帰ってからも萎凋をつづける。太陽が沈んで、食事を済ませて、午後9時から揉捻をはじめたが、まだ水分が多い。しかし、これ以上待つと次の工程の軽発酵の時間が足りなくなる。翌日は太陽が出てからすぐに晒干(天日干し)をはじめなければ、一日で乾き切らないだろう。
8キロほどの鮮葉をひとりで揉んで揉んで、深夜12時まで4時間ほどかかった。異常事態だ。茶醤と呼ぶ茶葉の汁に粘着力がなくて、繊維が硬くて、揉んでも揉んでもなかなか捩れない。
揉捻
揉捻の茶葉
農家が故意に、柔らかい新芽・若葉を避けて大きく成長したカタイ茶葉をアルバイトに積極的に摘ませたこともまた影響している。揉捻できないカタイ茶葉をひとつひとつ取り除くたびに手の動きが止まってしまう。
茶葉の芯からしっかり水を出さないといけない。茶葉がちぎれて見かけの悪くなるのを承知で手に力を入れた。
強い揉捻によって軽発酵が促されて、その後はスムーズだった。翌日の晒干スッキリと終わった午後4時頃に、クルマに茶葉を積んで町へ帰って、すぐに巴達山へと移動したので、試飲するのは今回がはじめて。
漫撒一水紅茶2016年
漫撒一水紅茶2016年
クラっとくるくらい美味しい。
水の味はあるにはあるが、そのぼんやり感がなんともいえない奥ゆかしい表現となって、個性を引き立てている。
銘茶は美人。
美人はどこを取っても美しい。
4月2日はやはり香椿林のゴールデンタイムだった。
漫撒一水紅茶2016年 茶色

ひとりごと:
ところで4月3日に、農家が茶摘みのアルバイトを別の茶地に回して摘んだ茶葉がある。一扇磨の森の中だが、これはむしろ収穫が多すぎたために、農家が製茶を慌ててしまった。
萎凋の水分コントロールが丁寧にできないまま殺生(鉄鍋炒り)したので、殺生後も水分をたくさん持ったまま翌日を迎えた。天気は良くても、一日でスッキリと乾き切らない。意図しない軽発酵がすすんで、茶葉が黄色っぽく変色する。生茶に求めるスッキリ感が失われる。
こんなことになるのなら、セコイことを考えずに、自分にもっとたくさん紅茶をつくらせればよかったのに・・・。
作戦ミスだな。
漫撒山では人間をコントロールする作戦も大事だ。


茶想

試飲の記録です。

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