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巴達曼邁熟茶2010年 その5.

采茶 : 2010年4月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺

お茶の感想:
クエン酸でお茶が酸っぱくなる問題を考える。
渥堆発酵の主役の黒麹菌はクエン酸をつくる。
なので酸味がゼロという熟茶はありえない。
しかし、流通している熟茶はそれほど酸っぱくない。どちらかというと甘い印象がある。
どうやって酸っぱいのを抑えるのか?
ところで、泡盛のもろみは黒麹菌で醸されるが、酒は酸っぱくない。蒸留酒だから、蒸留するときにクエン酸は蒸発しないでもろみに残る。なのでもろみは酸っぱい。
熟茶づくりに蒸留という工程はないので、クエン酸を分離できない。酸味をどうにかして緩和するしかない。
このアプローチについて考えてみる。
まず、クエン酸を控えめにするよう黒麹菌の活動を抑制する手はあるだろうか。
例えば、加水の量を減らしたり、保温の温度を低めにしたり、好気性だから密封するなどして呼吸を制限したり。
これはありえないと思う。
とくに発酵開始数日内の段階では、他の雑菌を殺したり寄せ付けなくするために、黒麹菌の増殖が圧倒的多数でないといけない。
西双版納のような亜熱帯気候では雑菌の繁殖も早い。強力な免疫力を得ることが発酵食品づくりの第一歩である。
もしも黒麹菌がクエン酸をつくらなければ、乳酸など、他の免疫力を持たせる必要がある。たしかに、黒茶づくりには乳酸菌を利用するのもあるが、そうなると熟茶ではなくなる。亜熱帯地方の環境で育った黒麹菌でつくるからこそ、この地域の味といえる。
ただし、クエン酸を増やし続ける必要もない。
つぎに考えるのは、どの時点で発酵のブレーキをかけるかということ。
一般的に熟茶づくりの渥堆発酵の期間は1ヶ月から2ヶ月である。その間に、3回から5回ほど加水して撹拌する。最後に茶葉を乾燥させるまで、黒麹菌は繁殖しつづけるだろう。
ここで注目するべきは、茶葉の水分と温度と空気と、この3つの条件によって発酵の結果はずいぶん異なるということ。
11月21日の記事でも紹介したが、餅茶の中心の石ころのように硬いところ。500円玉くらいのサイズをそのまま発酵させている。
これが、実はあまり酸っぱくない。とても甘い。
茶頭
パラパラになった散茶は加水から数日後には乾燥するのに、この石ころ状の茶葉はまだ水分を持って柔らかい。水の逃げにくい構造であり、空気の入りにくい構造でもある。発酵中は水分のあるところほど発熱しやすくて温かい。でんぷん質を糖化させる酵素の作用が活性化しやすい環境になっている。
黒麹菌は空気に触れやすいところだけでクエン酸をつくりやすく、内側にはつくりにくいのかもしれない。しかし、糖化酵素もまた黒麹菌のつくったものである。
ということは、水分と通気を調整したら酸味のバランスを調整できるかもしれない。
実際に、2回目の加水ではそうしている。
大量の渥堆発酵では堆積した茶葉の中心部分にその環境がつくられる。原料の晒青毛茶を1メートルほど堆積する。水をかけてからは50センチほどに下がる。中心部から下のほうはかなりの圧力がかかって、茶葉と茶葉の隙間がつぶれて、空気が入りにくい。
布に包んだ7キロの小堆発酵でも、加水してから重しをするなどして圧力をかければ、石ころ状の茶葉の環境に近づけることができる。
1回目の加水と2回目の加水で、発酵の目的が変わっている。
泡茶
ラオスに壺に売られている固形の酒がある。
液体ではなく「餅麹」というカビだらけの硬いパンのようなものが壺に入っている。壺に水を注いで草みたいなので蓋をして、2日も待てば発酵して酒になる。
1回目の発酵が餅麹づくり。2回目の発酵が酒づくりとなっている。
餅麹づくりは主に麹菌の仕事。でんぷん質を糖化する酵素をつくる。この段階で酵母も増えている。
壺に水を入れてからは主に酵母の仕事。酵素がでんぷんを糖にして、酵母が糖をアルコールにして酒となる。
渥堆発酵はここまではっきり仕事が別れていないが、発酵には段階があるということ。
これを意識したら、1回目の加水と2回目の加水の目的はあきらかに異なる。
そして、2回目の加水後は頻繁に撹拌しないほうがよいことになる。撹拌するほどに茶葉から水分が蒸発して減り、新鮮な空気が入り込んで、糖分よりもクエン酸が盛んにつくられるだろう。酵母は二酸化炭素をつくるので、通気をしなければ渥堆発酵の茶葉のかたまりは酸素が少ない状態になる。
糖分を増やすことでクエン酸の酸っぱいのが緩和されて甘いお茶になる。
例えば、トマトソースをつくるときに長時間加熱するのは、クエン酸の酸っぱいのを抑えるためだが、砂糖をちょっと足すのも効果がある。これに似ているかもしれない。
葉底
ここまではよいが、もうひとつ新しい問題が出てくる。
それは酵母の作用について。
酵母は糖を分解してアルコールをつくったり乳酸菌を発生させたり、よい香りにつながる成分もつくる。アルコール発酵は空気のない状態で起こるはずだが、ミクロの世界では、茶葉に水を含んで空気のない部分もたくさんある。
しかし、酵母が活躍すると糖分は減る。せっかく甘くなってもまた元に戻る。
この間も、黒麹菌はでんぷん質を糖化する酵素をつくりつづけるだろうから、でんぷん質があるかぎり糖分は供給される。
供給が早いか消費が早いか。
このバランスも、茶葉の水分と温度と空気と3つの条件で調整できるのだろうか。
観察をつづける。

お茶の感想;
単独の渥堆発酵でちょうどよいバランスの風味に仕上げるのは、あんがい難しいのかもしれない。熟茶製品の多くがブレンドで仕上げられるのは、発酵が足りなかったり、行き過ぎたりするのを調整する目的もあるだろう。
単一の原料で単独の渥堆発酵。これで良いバランスに仕上げた『版納古樹熟餅2010年』はすごい。
職人が良かったのだ。


茶想

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