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巴達曼邁熟茶2010年 その6.

采茶 : 2010年4月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺

お茶の感想:
12月の通販の臨時営業を延期した。
熟茶づくりに集中する。
次回の営業は来年の2月になる・・・かな。ちょっと自信がない。
ま、誰も困らない。
さて、熟茶。
渥堆発酵の布袋
鏡餅のように円盤を重ねている。
試行錯誤の末に収まってきたカタチ。
大量の渥堆発酵に近づけるために、布でくるんだ茶葉を二段にしている。もっと圧力を加えるために3段にすることもある。圧力があるほど高温になりやすい。
糖化を促したい茶葉を3段の真ん中にサンドイッチする。
渥堆発酵の主役の黒麹菌は酸っぱいクエン酸をつくるが、でんぷんを糖化させる酵素もつくる。
でんぷんを糖化する酵素は、茶葉が水をたっぷり含んで、でんぷん質が糊状になるときに効果を発揮する。糊状になる温度は50度から60度とされるが、渥堆発酵においては堆積した茶葉の中心部でそうなっている。
50度を超える渥堆発酵
しかし、後で調べてみたら黒麹菌のつくる酵素はもうちょっと低温でも糖化できるらしい。ただ、実際にはやはり50度を超える温度のほうがあきらかに糖化が早い。
加水4回目の頃から酸っぱい味がどこかへ消えてなくなる。
よく味わってみると存在するのだけれど、隠れてしまう。
分解されたのか結合されたのか知らないが、舌に酸っぱさを感じさせなくなる。
渥堆発酵の黒く変色した茶葉
加水5回目になると甘さすらも減ってゆく。旨味も減って淡くなる。そしてかすかに苦味が出てくる。
これは酵母の仕業だと思われる。
せっかくつくった糖などの美味しさを構成する成分を酵母が食べてしまう。
このとき水分が多すぎるとアルコールがたくさんつくられる。アルコールは香りの成分をつくるので、少しだけつくられるのがよいが、加減が難しい。
酵母は乳酸菌とセットらしいので、乳酸菌による仕事もなにかあると思うが、そこはまだよく解らない。
ここでちょっと考えてみる。
黒茶にする目的はなんだったのだろう。
緑茶としてすでに完成している茶葉に、わざわざ手間をかけて、時間をかけて、お金もかけて、茶葉の一部を微生物に喰われて重量を減らして、それでも黒茶にするのは、味を良くするためだけではない。
別の目的はなにか?
カフェインなどの刺激を和らげる。
長期保存や長距離の運搬に強い茶葉にする。
栄養価を高める。
そう、味よりももっと具体的というか現実的な目的がある。
黒茶の目的を意識したら、渥堆発酵をどの時点で止めるのか?という答えが出るだろう。
ということで、数日ずっと考えていたが、よくわからないまま、茶葉はどんどん変化を続けている。
熟茶のようになった茶葉
見た目は、すでに一般的な熟茶のようになっている。
小堆発酵の熟茶泡茶1
小堆発酵の熟茶泡茶2
もういいかな。
味はもうじゅうぶん熟茶になっている。
熟茶の泡茶5煎め
5煎め。
煎を重ねるとまだ新鮮な感じの色が出てくる。茶葉の芯まで変化していない。
葉底
葉底もまだ緑っぽさを残している。
しかし、黒麹菌が生きているうちは抗酸化作用が効いて、赤黒く変色させるのは難しいと思う。このまま適度な加水と乾燥を繰り返しても、変色のすすみはゆっくりである。
ここから乾燥させてみる。
茶葉がカラカラになると麹菌や酵母などの微生物は死ぬが、微生物のつくった酵素がまだ生きている。酵素は生物ではないから、酵素の活性(効力)がまだ残っているというのが正しい。
酵素は70度くらいの高温でその活性を失うのが多いので、餅茶に圧延加工をすれば、高温の蒸気で活性を失う酵素もあるだろう。
なので、このまま常温で長期熟成させることにする。
ラオスの竹編みの米びつ
ラオスの竹編みの米びつ
適度な通気を与えたいので、ラオスでつくられている竹編みの米びつを買ってきた。西双版納では雑貨屋さんや路上で売っている。
二重になっている。
ひと籠に5キロ入る。
完成したお茶を日本向けに売るには、長距離輸送のために圧延加工してコンパクトにしたほうがよいだろうが、上海の友人の店なら米びつごと散茶で売ってもよいな。

その他、メモ的に記録しておく。

保温について。
電気カーペットを利用して高温で発酵させるようになって失敗がなくなったが、そのかわり30度くらいの比較的低温で茶葉を長時間湿らせておくのが難しくなった。高温になりすぎて乾きが早い。
低温の調整ができる高性能なのに買い替えた。
これまでは下に1枚敷いていたが、上にも1枚被せて2枚体制にする。
低温設定で上下からじわじわ温められるので、蒸気が一方方向に逃げにくく、茶葉の保湿時間が長くなった。

熟成について。
お茶の味を調整するという黒茶づくりの目的は、長期熟成によって達成される。
これまでの渥堆発酵の過程では、微生物が邪魔をして味を思ったように変化させてくれない部分がある。いったん死んでくれないとどうしようもない。
酵素もまた、効力を発揮しやすい水分や温度の条件があるが、時間をかければ緩慢に変化がつづくので、それを頼りにするしかない。
やはり長期熟成でなければ解決できない問題もある。10年かかることもある。

泡茶で味が完成する。
お酒は液体で、完成した状態で売られているが、茶葉は個体で、まだ完成していない。
湯を注いだ瞬間に、温度の高い水と茶葉にあるいろんな成分とが融合して化学反応を起こして、味として完成する。
そこが泡茶の面白いところである。お酒を注ぐよりも、お茶を淹れるほうがずっと複雑なことをしている。
お茶の味を完成させるのは、湯を注ぐ瞬間である。

カビ毒について。
麹菌類にはカビ毒と呼ぶ毒素をつくるものがあるから、完成したのを一度地元の検査局で調べてもらう。茶葉を1キロ提供して、費用は1800元かかる。
茶葉のカビ毒は気温25度以下の低温多湿において発生しやすい。西双版納では乾燥に気をつけてさえいれば、まず問題はない。冬は乾季なので、空気は乾燥している。
渥堆発酵の最後の乾燥の工程では、茶葉を26度以上に保ちながら乾燥させる。
26度以上であれば、茶葉にまだ水分のあるうちは黒麹菌が生きていて、茶葉を守るだろう。このときちょっとだけ酸っぱいのが戻るかもしれない。

竹皮についた乳酸菌
竹皮についた乳酸菌
このお茶の原料である『巴達古樹青餅2010年』の7枚組を包んでいた竹皮を外したら、内側に白い粉が吹いていた。乳酸菌だ。
竹は乳酸菌と仲良しなので抗菌作用があって、食品の保存に利用できる。
こういうの大事だ。
存在理由のわからない菌をすべて排除するという考え方は間違っている。というか、不可能なのだ。
誤解を恐れずに言えば、自然界に存在する毒素でさえ、少量であればなんらかのカタチで人の身体の健康に貢献している可能性がある。風が吹けば桶屋が儲かるみたいにまわりくどくて、解明の難しいのも多いだろう。
そのご利益を排除してゆくような現代的な食品づくりの考え方が気持ち悪い。

ひとりごと:
渥堆発酵の熟茶づくりも労力のいる仕事。
細かな作業がたくさんあり、ひとつひとつにコツがある。
料理をつくるのと似ていて、慣れるまでは順序がわからなくてモタモタするし、余計なチカラを使うし、失敗もする。
しかし、慣れてくるとスピードが上がる。身体の筋肉もそれに対応して成長してくる。
料理の上手な人がチャッチャと手早くつくれるように、渥堆発酵の作業も手早くできるようになる。
作業のスピードやリズムもまた、お茶の味に関係していると思う。


茶想

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