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農薬について考える その5.

西双版納のある茶山の畝作りの茶畑では殺虫剤が使われている。
そこでは10年ほど前から使用しているらしいが、10年前から茶葉の虫食いが増えたためにそうしているらしい。
10年ほど前といえば2007年のちょうど大陸のプーアール茶ブームで需要が拡大した頃、新しい茶園が増えた時期と重なっている。さらに、この10年間は自動車のタイヤの需要による天然ゴムのプランテーションの開拓がすすみ、茶山周辺の森林を大規模に失ってきた。
茶葉につく虫を食べる小鳥たちが住むところを失う。地域全体が乾燥して気候が変わる。他の変化には気付きにくいが、いろんな生物や植物が住むところを失って生態系のバランスが崩れてきている。
化学薬品が使われる茶畑
生態系のバランスが崩れると殺虫剤の出番が増える。
農家の経済の変化も関係する。
四季折々いろんな作物をつくって半自給自足の生活をしていたスタイルが、収益の高いひとつの作物に集中して、その稼ぎで生活費を賄うスタイルへと変化してきた。マイカーを買う。家を新築する。子供を大学にやる。収入を増やさないとやってゆけない。
中国は農家一軒ごとに土地が割り当てられた小規模農業が中心なので、限られた土地で生産性を上げなければならない。高く売れる作物に労働力を集中させたほうが効率よい。村の誰かが有効な手段を見つけたら村のみんなに普及する。殺虫剤が有効となれば村じゅうに普及する。
殺虫剤をいちど使用した茶畑は、来年も再来年も続けないと食害が止まらなくなる。
生態系のバランスが崩れて虫の天敵が減ったことに加えて、茶樹そのものの体質が虫に弱くなってゆくことも考えられる。虫のアタックを防ぐために自ら免疫力をつくりだして虫の嫌う体質になろうとするのを殺虫剤が阻んでしまうのだ。人間の子供と同じで、過保護は病気への抵抗力を養う機会を奪うことがある。
部外者の我々は安易に考える。
例えば、自然栽培をアピールしたら消費者にその価値が理解されるのではないかとか。国が保護したり規制したりするのが有効ではないかとか。
生態系のバランスが崩れたまま無農薬を維持するなど実際には不可能なのに、矛盾をかかえたまま農家は板挟みになる。
西双版納は交通の便が良くなって観光者は年々増えている。有名茶山を参観するお茶ファンも増えている。農家は彼らにウケがよいように自然栽培を演出する。お茶ファンに見せる農地だけに自然栽培を保って、ちょっと奥へ入った農地では化学薬品をつかう。そうなると余計に難しい。カムフラージュされると外から問題を見つけにくくなる。国や自治体が管理するのもうまくゆかない。巧妙な隠蔽工作を増やしたり、内部から腐敗することもある。
相反する(ように見える)2つの問題が絡んでいる。
生態系のバランスを健康に保つこと。農家が経済成長できること。
ここに勘違いがある。
作物をひとつに集中させたほうが生産効率が良いという勘違い。
例えば、茶畑には茶樹しか存在しない状態のほうが、茶葉の生産効率は良いと考えられている。栄養を茶樹に集中させたいので、他の生物や植物はなるべく排除したい。
短期的に見るとたしかにそうした農家ほど生産性を上げて稼いでいるが、長期的に見るとそうでもない。量産しやすい農産物ほど市場での需要が飽和するのにそう時間を要しないから。
巴達山の生態茶園で試みられた、茶樹に寄生する薬草の栽培に面白い結果が出ている。
巴達山の茶園
茶樹の寄生植物
茶樹の寄生植物
茶樹の寄生植物
寄生植物に栄養が奪われて茶樹が弱るのではないか?
茶葉の生産量が少なくなるのではないか?
当初はそういう心配があったが、3年目の現在はぜんぜんそんなことはない。茶樹はむしろ元気で生産量は変わらない。気のせいかもしれないが他の茶園よりもお茶は薫り高い。
薬草のためにも除草剤も殺虫剤も使えないので、労働力を要して生産コストは上がっているが、その分は薬草の収入で賄える。茶葉だけ生産する無農薬栽培よりも薬草分の収入が多いことになる。
他の生物や植物と共生することで、なにかを失うがなにかを得ている。
ひとつの作物の生産性を見るよりも生態系のすべての生産性を見たほうが、生態系にある資産が活用できるということ。まだ知らないだけで莫大な資産が眠っている可能性がある。
農家がこの分野にもっと賢くなれば、化学薬品の使用は経済的にも不合理となる。


茶想

試飲の記録です。

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