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曼晒古樹青餅2017年 その1.

采茶 : 2017年04月12日
茶葉 : ミャンマー曼晒
茶廠 : ミャンマー布朗族の農家
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
圧餅の布袋

お茶の感想:
昔のプーアール茶は産地と消費地の距離が遠く離れていて、運搬や保存にも日数がかかっていたので、出荷されたときと消費者の手元に届いたときの状態には大きな差があった。まるで別のお茶になっていたはずだ。
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。茶葉の変化は誰かが泡茶する(淹れる)ところまで続いて、誰かが飲んでやっと完成する。
昔の生活は医食同源だから、お茶の効能についてもうるさかったので、”寒”が強い生茶をそのまま飲むことは少なかったはず。寒の性質が消えて温の性質になるのを見極めてから飲んでいたに違いない。
温の性質へと変化するチャンスは、製茶・運搬・保存・泡茶のいたるところにある。
その観点から圧餅(圧延加工)の工程を見直したい。
ということで、自分でやることにした。
圧餅の石型
いつもは工房の職人さんがパッパと手際よくやってくれる。
2010年から職人の仕事を観察しているので、設備・道具・技術のなぜこうなのか?は理解しているつもりだが、いくつか疑問がある。現在のやり方は効率を優先しすぎではないかと疑っている。
圧餅でもっとも茶葉の質を変えるのは”蒸し”の工程である。
蒸して茶葉を柔らかくして密着させて固める。蒸すことの高温と水分が茶葉を変化させるが、この変化をマイナスと捉えるかプラスと捉えるかで結果は異なる。しかし、現在のメーカーの関心はそこにはない。より早く・より数多く・より美しく、という経済価値を追求するために、どちらかというと変化をマイナスと捉えている。原料の晒青毛茶の味に近いほうがハズレのない風味になる。
なので、積極的に変化させたければ自分で試すしかない。
ミャンマーのお茶
茶葉は今年の20107年春のお茶。
西双版納から西へ国境を超えて100キロほど、ミャンマーの景棟地区の山岳地帯に住む布朗族の村から数キロ離れた森の中に数十本の古樹の群生が昨年見つかった。お茶の名前にしている「曼晒」は現地の地名に漢字を宛てたもの。外国人が入るのが難しい地域なので残念ながら茶地を見れないが、このお茶を飲んでみたところ、なかなか良い。珍しく良い。
曼晒古樹晒青茶2017年
曼晒古樹晒青茶2017年
お茶の深い味には台刈りされていない樹高の高い古樹の特徴があり、やさしい体感には森の中の陰涼に育った特徴があり、香りの強さと忍泡(煎がつづく)にはあまり茶葉が収穫されていない無垢な健康が現れていて、水質の清らかさには有名茶山に共通する土質の良さが現れている。
仕入れることにしたが、もともと20キロ弱しかないお茶。自分に回ってきたのは8キロほどで、このうち6キロを圧餅する。当店で唯一出品できる2017年の春のお茶となる・・・かも。
2017年の春は天候が悪くて、価格も高騰して、乱獲もつづいて、西双版納のお茶には手が出なかった。山続きのミャンマーやラオスの山岳地帯には清朝の貢献茶ブームのときに植えられた茶樹がひっそり森の中に生き続けて、樹齢200年を超える古樹も多い。越境のお茶の販売は年々増えているが、産地偽装のための大規模栽培・大量生産もはじまっているので、ミャンマーやラオスといえども茶葉の質はひとつひとつ吟味するしかない。その中で20キロ以下は、ちょうど農家が家族総出で5日ほどかかってつくる量。その生産量からしても森の古茶樹の可能性がある。
茶地を見ていないので無農薬・無肥料を確認できないが、西双版納の無農薬・無肥料と共通する、あるいはそれ以上の清らかな風味なので大丈夫と判断した。農薬や肥料の問題が出てくるお茶は、それ以前に茶樹が健康を崩したり、森林が荒れたりする風味が現れる。
現地に行った愛尼族の若者の話からすると、過去に(少なくとも20年間くらい)誰も摘んでいないので”野生茶”と呼べるかもしれないが、野生茶には品種に別の意味を持つので、そう呼ぶのを避けている。
お茶の味からすると人が飲んできた歴史のある品種。易武山の甘いお茶に似ている。おそらく清朝の時代に誰かが植えて育てていたはずだ。山岳少数民族は村ごと移住するので、栽培の歴史は忘れられやすい。
さて、圧餅。
石型を近所の茶友から借りてきた。
357gサイズの石型なので180gサイズにするにはちょっと大きくてカタチがキレイにキマらないだろうが、それは問題じゃない。問題は”蒸し”具合。
ミャンマー曼晒の古樹茶
茶葉を蒸す
茶葉を蒸すのは料理に使う鍋と蒸し籠。今回、専用の蒸し筒は使わない。
蒸しながら茶葉を何度かひっくり返して、手の感触で蒸し具合を探る。このため専用の蒸し筒は使えない。
このやり方では蒸気の温度が低い。90度くらいしかないだろう。
近年の茶廠は蒸気に圧力をかけているので余裕で100度を超えているはず。
コンプレッサーの蒸し機
鉄鍋の底に穴を空けたちょっと昔のやり方でも90度は超えるだろう。
鉄鍋を逆さにした蒸し機
蒸気の温度が低いと茶葉の柔らかくなるのに時間がかかる。蒸し時間が2倍くらい長くなる。
これだけでも茶葉の変化に違いができる。
蒸しているうちに茶葉の香りが変化してくる。
蒸して熱々の茶葉を手で袋に詰める
蒸して柔らかくなった茶葉を布袋に詰める。専用蒸し筒を使わないとここがちょっとスムーズじゃないので一時的に温度が下がるが、このあと円盤型に茶葉がなじむよう二度蒸しする。
この蒸し時間を3段階に分けてみた。

成形
成形
石型に乗って揺する
布を絞って石型で圧す。石型の上に乗って3分ほどユサユサするが、揉捻と同じような効果があると思う。
蒸しの時間が短いのは乾燥させると餅形が崩れる。
圧餅失敗
これは失敗。11枚ほど失敗した。
蒸し時間をちょっと長めにした10枚と、もっと長めにした9枚と、合わせて19枚だけがなんとか出品できるレベル。
ちょっと長めの10枚は、餅面の茶葉がゆるくてポロポロ崩れやすい。
蒸し具合ちょっと長め
このゆるい固まり具合は易武山の90年代の餅茶に似ている。このお茶がまさにそうだった。
+【真淳雅號圓茶96年】
もっと長めにした9枚は、茶葉がより柔らかくなって成形もうまくゆくので餅形はキレイである。餅面の茶葉がペタッとしている。現代の工房の鉄鍋の底に穴を空けた蒸し器によくある感じ。
蒸し時間長め
蒸し時間長め
蒸し時間が長くて茶葉が柔らかくなるほど揉捻効果も大きくなる。
蒸したことで茶葉が含む水分量は乾燥状態の180gにプラス20gほど。蒸し時間が長くなるとさらに3gほど増える。水分が多くなるほど乾燥に時間がかかり、茶葉の変化も長く続くが、晒干をスタートする時間によって乾燥までの時間はまちまちなので、水分量の多い少ないはそれほど大きな問題じゃないと思う。それよりも揉捻効果のほうが大きく影響する気がする。
涼干
涼干(陰干し)2時間。
晒干(天日干し)半日。
さらに涼干一週間。
ゆっくり涼干するのが大事。
乾燥するのを待てずに味見してみた。
圧餅後の試飲葉底
圧餅後の試飲茶湯
圧餅後のはあきらかに味も香りもぼやけて美味しくない。
ま、そんなものだ。この効果はこれから何年もかけて保存熟成がすすむことでやっとわかる・・・はず。

ひとりごと:
圧餅を易武山の私人茶荘がしていた1950年より以前は、農家が米を家庭で栽培してストックしていて、大豆を発酵させた醤油づくりも家庭でしていて、それに使用された竹籠や麻袋を使いまわしで茶葉を晒干したりストックして、良性の麹菌が茶葉に付着するチャンスが多かったはず。
現在、お茶が売れる農家では専業化がすすんで、家ごとに米をつくったり醤油をつくったりすることはなくなってきた。道具は茶葉専用に使われている。麻袋はなくなってプラスチック素材の袋になっている。
圧餅するメーカーでは、圧延の”蒸し”を高温・短時間で済ませるだけでなく、乾燥にも時間を掛けないよう室内で熱風乾燥して2日で済ませている。
こういう小さなことがひとつひとつ重なって、お茶の質を大きく変えてきたと思う。


茶想

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