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東莞人第一批熟茶2017年 その1.

采茶 : 2017年4月
加工 : 2017年11月・12月
茶葉 : ミャンマーシャン州 チャイントン
茶廠 : 東莞人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶(生)
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
東莞人第一批熟茶2017年

お茶の感想:
昨年の秋に広東の茶友が西双版納のマンションの一室で微生物発酵させた熟茶。
彼にとっては第一作めの熟茶。
広東省は広くて、いろんな地域のいろんな文化や生活習慣があるので、茶友の故郷は東莞市だから東莞人と呼ぶことにする。
東莞市は深センと広州の間にあって香港にもすぐに行ける地の利だから飲茶文化の真ん中にあるけれど、茶友の家庭はお婆ちゃんがシンガポールから帰ってきた華人だったせいか、朝はコーヒー夜は洋酒と洋式の嗜好で育ったので、お茶のことは詳しくない。西双版納に移住した2013年から勉強しはじめている。
中国人がみんなお茶に詳しいわけではないのだ。
とはいえ、実家には陶器の壺に30年モノの老茶があったり、20年モノの陳皮があったり、生活の中に老味が浸透しているから、舌や鼻の経験はある。
子供の頃は茘枝の栽培農家で、貧しくて、米も野菜も家庭菜園で育てるしかなく、水牛の世話をするのが日課だったらしく、なので古式の農業の経験が今のお茶づくりに生かされている。
ちなみに、茘枝もまた古樹の高幹(すらっと高く伸びた幹の樹)のが美味しいらしい。どの茶樹を選ぶと美味しいお茶ができるかという勘が働くので、これも役に立っている。
小学校卒業で働いて働いて小型トラック・中型トラック・大型トラックの運転手を経て、染料の工場やぬいぐるみ工場を経営して大陸のあちこちの都市に10箇所の工場を持って、42歳でサラッと引退。多少、ヤバイことをしていたのかもしれない。
西双版納に引っ越してきたすぐは何もすることが無いのでいつもイライラしていたが、5年目の今はもう西双版納の時間の流れに慣れて暇を楽しんでいる。もちろん、お茶づくりのときは忙しくしている。
さて、このお茶『東莞人第一批熟茶2017年』。
熟茶
原料の茶葉はなんと『曼晒古樹晒青茶2017年』(卸売部)
+【曼晒古樹青餅2017年 その1.】
采茶の日は1日か2日異なるかもしれないが、ほぼ同じ質のモノ。
高価すぎるからはじめての熟茶づくりにはもったいないと反対したが、自分や温州人の熟茶づくりから学んでいて、なんとなく自信があったらしい。10キロの少量だから彼にとっては失敗しても金銭的に痛くはないかもしれないが、この茶葉はなかなか出会えないクラスの美味しさだから精神的には痛い。
昨年末のこと、自分はタイのチェンコーンから西双版納に帰ってきて、その数日後に上海を経由して日本に一時帰国する直前に、このお茶を飲んだ。
1ヶ月ほどかけた微生物発酵の最後の散水を終えて6日目くらいだったので、まだ完成していない段階。
そのとき、実はあまり良い出来とは思えない味であった。なぜか舌にヌメリが残る。
「勉強会で使ってくれ」とサンプルを少し分けてくれたが、一度も飲まずに今に至っている。
この秋、西双版納に帰ってくるなりこのお茶を飲まされた。
これが、どういうわけか美味しくなっている。茶湯のヌメリはサラサラと消えて舌に残らず、清潔感がある。
最後の散水を終えてから30日間かけて涼干(陰干し)したらしい。やはりこの工程が大事なのだ。
しかし、まだ圧餅していない”生”の状態。
高温の蒸気で熱を通していないので、生の熟茶特有の香りがある。
われわれが”海鮮味”と呼んでいる干しエビみたいな香り。ちなみに中国語で”味”と表現するのは香りを意味することもある。
当店唯一のオリジナル熟茶『版納古樹熟餅2010年』の圧餅前の生の状態にも海鮮味があった。
渥堆発酵
「イカのワタのような香りがごく微かにあります。」と書いているのがそれ。
+【版納古樹熟餅2010年 その3】
自作の熟茶のうちの自分の失敗したいくつかや温州人の1批から6批、そしてこの『東莞人第一批熟茶2017年』にも、多かれ少なかれある。しかしこのお茶の海鮮味がこれまでに一番強い。
海鮮味の正体はある種のアミノ酸。
茶葉の植物性タンパク質が微生物によって分解されて、海鮮モノに多く含まれるアミノ酸に似たものがつくられるのだろう。
熟茶の味わいは出汁の旨味ということになる。
このアミノ酸は、どうやら高温に弱いらしく、圧餅のときの蒸気の熱で海鮮味の香りはほぼ消える。出汁の旨味は消えないので、香りの成分構造だけが変わるのかもしれない。
蒸し
大手メーカーの熟茶製品にも出荷直後の新しいうちはこの香りが少し残っていることがある。数年寝かせるとこれも消える。
試しに蒸してみた。
10分ほど蒸すと海鮮味はカカオ味となった。
チョコレートのような甘い香りが食欲をそそる。よだれが出てくる。
長年熟成させた茶葉のメイラード反応(常温の焦げと呼んでいる)にも共通したカカオ味が出るが、この香りもアミノ酸が焦げた反応によるものである。
泡茶
第3泡
濃い甘い熟茶。
自分の記憶でここまで強いカカオ味のあるのはこの熟茶。
+【天字沱茶90年代初期】
カカオを通り越してコーヒーみたいになっていた。
このお茶もカカオの香りが強かったと記憶している。
+【大益貢餅熟茶98年崩し】
旬の新芽・若葉の多い熟茶。
『東莞人第一批熟茶2017年』の葉底を見るとまだ緑色が多く残っている。
葉底
微生物発酵はそれほど深くない。
『温州人第六批熟茶2018年』の葉底と比べても浅めに仕上がっている。
ということは、海鮮味からカカオ味に変化したある種のアミノ酸は茶葉のもともと持っていた量によって強くなったり弱くなったりということかもしれない。旬の新芽・若葉が濃い『曼晒古樹晒青茶2017年』には最も多く含まれることになる。季節外れの安い茶葉には少ない。
高価な原料を使った効果がここに現れるということか。

ひとりごと:
温州焼干海老(天然モノ)。
紹興酒15年モノ(自然発酵・自然醸造モノ)。
いずれも市場には売っていない個人のつくったもの。
茶友たちは酒を飲まないから、酒と肴はこっちに回ってくる。
温州焼海老
良い茶葉が手元にあると、中国では喰いぱぐれがないどころか、茶葉の質によっては中国全土からお金では買えない食品が集まってくる。相手もたぶん良い酒さえつくれば・・・と、同じことを思っているに違いない。等価交換。
茶葉を売って現金に交換することが最もバカらしい取引になる。
外から見えない内輪経済が世界中でこれから発展する。
不労所得を得る株主や、仕事のできないダメ社員たちや、年金生活で一日中テレビ見るだけの老人たちや、他人の労働の上前を撥ねる役人たちや、それに尻尾を振る政治家たち、この人たちに利益を分配してもなお安全で質の良い食べものが手に入るほどの余裕は、地球上の生態環境にはなくなっているのかもしれない。
自然環境が栄養を分けてくれるのは、古式の農業によると労働参加して自然環境にエネルギーを費やした人のみだろう。これも等価交換。
内輪の社会に参加したい個人がいたら、外では買えない上質の酒や食品やお茶の道具をつくって持ってくるべし。


茶想

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