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熟茶づくり実験2019年 その4.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・鉄瓶+炭火

お茶の感想:
第二回目の散水後に悪くなる問題を考え中。
たまたま茶葉を整理していたら、温州人の第六批の発酵初期のサンプルが出てきた。
第一回目の散水だけで発酵6日目から自然乾燥させてある。二回目の散水はしていない。
第六批熟茶散水一回
これを比べてみる。
茶葉は見るからに黄色っぽい。
この色は、自分のやつではダメとしているが、温州人のはそうでもなさそう。漬物を干した梅干菜みたいな健康的な香りで、つまり、乳酸発酵している。
乳酸発酵の茶葉は布朗族の竹筒茶やミャンマーのミエンのように、食べたりスープにしたりするのがある。茶葉を漬物にするときには塩を使わない。一般的に漬物は水と塩で漬けるが、茶葉は塩を使わなくてもうまく発酵できるらしい。西双版納の市場ではいろんな漬物が売られているが、葉っぱモノにいくつか水だけで漬けたのがあるから、おそらくある種の葉に含まれる成分が他の雑菌を繁殖させないなどして、塩の代わりになるのだろう。
黒麹と乳酸
左: 実験中の茶葉
右: 温州人の茶葉
2つ並べると色の違いがわかりやすい。
実験中のは黒糖と醤油のような匂いで、温州人の茶葉が漬物の匂い。黒麹発酵と乳酸発酵との違い。
黒麹と乳酸
黒麹と乳酸
黒麹と乳酸
左: 実験中の茶葉
右: 温州人の茶葉
煎じると、もっと大きく違いが現れる。
茶湯の濁りの違いもあるが、注目するべきは色の変化。
温州人のは赤く変色するのが早くて、1煎めと2煎めの赤味が違う。
黒麹のは酸化を防ぐ効果ができているらしく、煎をすすめても変色が少ない。
温州人のは第一回目の散水が多すぎて茶葉が水浸しになって、さらに竹籠と布で囲われていて通気が悪く、黒麹よりも乳酸菌や納豆菌を繁殖させている。
ただ、黒麹がゼロというわけではない。黒麹のつくるクエン酸由来の酸味もあるし、旨味も甘味もあるし。
葉底
左: 実験中の葉底
右: 温州人の葉底
問題としているアンモニア臭やカラスミ味はない。
茶葉を熱したり葉底を潰したりしても悪い臭いは出てこない。
この第六批の完成版、第四回目の散水までいったのにはアンモニア臭やカラスミ味の問題があったので、第二回目の散水以降になにかが起こっている。
そうするとだ。
菌の繁殖バランスの問題ではなかったのだ。
なぜなら黒麹が優勢でも乳酸が優勢でも、第二回目の散水以降に同じような問題が発生するから。
実はこのことをずっと疑問に思っていた。
もしかしたら黒麹優勢ではダメなのか?、最初に蒸して殺菌するのがダメなのか?、種麹は他の地域のもので茶葉の持つ天然麹じゃないからダメなのか?、・・・などなど考えを巡らせていた。
温州人のは、茶葉を蒸さないし、天然麹だし、麹よりも乳酸発酵だし、それでも同じ問題が起こるのだから菌の繁殖バランスじゃないらしい。
温度の問題か・・・。
第六批熟茶散水一回
このサンプルの袋には”2018年9月”と書いてあるから、この地域(雲南省臨滄市鎮康県からミャンマーに入ったすぐ)はまだ雨季。室内の気温20度から30度、湿度は60%から75%くらいだろうか。
ここで、渥堆発酵の場合を考えてみる。
西双版納のお茶づくりにかかわるようになって10年めだが、熟茶づくりの最初から最後まで見ることができたのはこのお茶だけ。
+【版納古樹熟餅2010年】
ただ、このときまはだ知らないことも多くて、渥堆発酵のどこを注意して見るべきかわからなくて、今から振り返ったらいろんなところを見落としている。
実際に見たことと、見ていないところは想像力を働かせて「こうなっているのじゃないかな・・・」と推測しながら、渥堆発酵の工程と温度の変化を考えてみる。
孟海鎮
まず、発酵の倉庫の環境。
メーカーの渥堆発酵の倉庫は西双版納州孟海県の孟海鎮に集中している。国営時代の孟海茶廠がここにあったからここで始まったわけだが、気候や水が適しているというのもあると思う。
孟海鎮は、現在実験中のアパートの部屋がある景洪市よりも海抜が高い(1200メートルくらい)ので涼しい。
4月中頃から5月初旬までの西双版納はいちばん暑いとき。
雨季に入る前で雨の降らない日に太陽が建物を灼くので、室温が上がる。雨季に入れば短時間の雨が必ず毎日降るので室温は下がって過ごしやすくなるが、そういえば『版納古樹熟餅2010年』の渥堆発酵はそういうタイミングの5月26日にスタートしている。
倉庫
倉庫
景洪市は昼の気温が35度にもなるが、そんな暑い日でも孟海鎮なら32度くらいだろう。山から冷たい空気が降りてくる深夜から早朝は18度くらいまで下がることもある。
倉庫は温度や湿度の調整をしない。
室温は23度から32度くらいだろう。湿度は50度から80度くらいだろう。
20トンもの茶葉が微生物発酵中の場合は、温度も湿度も外気よりは上がっているが、通気のための窓が常に開けてあって、麹室(こうじむろ)のような保温や加湿はしないので、ギリギリ人が住むこともできるような環境。
なので、渥堆発酵の茶葉の山だけで温度と湿度を保つようにしなければ、黒麹菌が繁殖できる環境を維持できない。
それゆえに、「最低200キロの茶葉が必要」とか言われることになる。
大量に茶葉がないことには安定しないから。
散水一回目
第一回目の散水。
井戸からポンプで組み上げた水を乾いた晒青毛茶に散水する。
地下数メートルの浅い井戸なので水はそんなに冷たくない。気温29度なら水温25度くらいだろうか。
手元で実験したところ、水をかけた直後の茶葉は室温から4度から5度は低くなる。”気化熱”と呼ぶ作用で、茶葉から水が蒸発して熱を奪う。なのではじめの数時間は室温よりも茶葉の温度のほうが低いままになる。
微生物発酵で発熱してきて、12時間後くらいから室温を超える。さらに温度が上がって24時間から48時間後には、最も熱くなる茶葉の山の中心部は60度を超えることもある。
茶葉の山はおおまかに言うと二層に分けられる。
山の底の中心部と、その上に覆いかぶさる表層部と。
その割合は、中心部3割:表層部7割というところだろうか。
渥堆発酵
保温
中心部には水気と熱がこもって微生物発酵が盛んになりやすい。
この中心部から熱と蒸気が放たれて、表層部の茶葉に黒麹菌にとってちょうど良い28度から34度くらいの温度と湿度が供給される。
黒麹菌にとっては中心部は熱すぎて蒸れすぎて息苦しくて元気がなくなり、納豆菌・酵母・乳酸菌などが元気になる。
日本の麹造りのようにキレイに麹菌だけを優遇して繁殖させることを目的としたら、表層部の7割だけが良くて、中心部の3割は不良発酵ということになる。捨て駒になる。しかし、実際には捨て駒にはしない。茶葉を撹拌して散水して、中心部にあった茶葉にもいずれ表層部になる番がめぐってきて、黒麹の発酵を経験する。
渥堆発酵
撹拌
撹拌
3回目の散水
第二回目の散水。
撹拌してからまた茶葉の山をつくって散水する。
・・・たぶんこれだ。
撹拌は徹底的にやる。
茶葉を床にひろげて、また集めて、またひろげて。
なにをしているのかというと、温度を下げているのだ。
気化の作用で、おそらく室温よりも下がる。しっかり撹拌したら26度くらいまで下がるだろうか。
散水によって更に下がって、25度くらいになるだろう。
このとき茶葉の山は中心部と表層部の差はなくなっている。
冷えているから雑菌が繁殖できない。26度くらいまで下がると雑菌の繁殖は遅い。
茶葉に水をかけた瞬間に黒麹菌は窒息死する。
残された胞子がまた成長して菌糸を伸ばして活発になるのに少なくとも8時間ほどかかる。
その間は、抗菌のガードが甘くなるのかもしれない。
なので、その間になるべく温度を低めに調整したほうがよい。
熟茶と生茶ともによく飲む人は気付いていると思うが、暑い時期に、お茶を飲んだ後に茶葉を入れたままの茶湯を残して数時間放っておくと、熟茶のほうが腐るのが早い。
熟茶は黒麹をはじめとした微生物が栄養をつくりだしているから、腐りやすい成分構成になっている。
渥堆発酵の茶葉も同じ。
黒麹が元気な状態でなければ30度もの高温では腐りやすい。
写真を探したら出てきた。
『版納古樹熟餅2010年』の第二回目の散水後、第三回目の散水直前の茶葉。
黒い茶葉
黒い。黒麹菌による美しい発酵。
早速、手元の実験中の茶葉を撹拌して温度を下げて散水してみた。
散水後に扇風機の風を当てて気化熱の作用でさらに温度を下げてみた。24.5度まで下がった。室温は29.3度。
撹拌後
散水後温度が下がる
はい。今日の授業はここまで。
この結果はつぎの記事に書くとする。
第二回目の散水ができてホッとした。
なぜなら黒麹があきらかに元気をなくしていたから。
散水から4日めくらいで元気がなくなるのは、成長の周期だから仕方がない。
保温したり湿度を上げたり、いろいろしてみたが元気がない。
第二回目の散水の1時間後からはやくも良い色が戻ってきた。匂いも良い。
黒麹が元気を取り戻した。

ひとりごと:
もうひとつ知恵を見つけた。
渥堆発酵で第二回目からの散水は、撹拌した後で茶葉の山をつくって最後に散水して終わる。
散水してからは茶葉には触らない。撹拌もしない。
これには2つの効果がある。
1つめは、茶葉の粘着を防ぐ。
散水後に撹拌すると、表面の濡れた茶葉と茶葉がくっつきやすい。くっついて団子になって通気が悪くなって不良発酵する。
しかし、散水してそのまま放っておくと、吸水性の良い茶葉の繊維が水分を拡散させて、下のほうの乾いた茶葉を湿らせる。茶葉を動かさなければ、茶葉同士がくっついて団子になることも少ない。
2つめは、水滴が直接かからなかった下のほうの黒麹菌は窒息死していないということ。
撹拌と散水でいったん下がった温度が徐々に上がってきて、28度くらいになったら黒麹はすぐに活動再開できる。28度なら室温くらいなので、なにもしなくても数時間で戻る。
黒麹が活発になれば雑菌の侵入は難しくなる・・・というのが正しければ、散水でわざと水をかけない部分、水滴のかからない茶葉を残しておくほうが賢い。


茶想

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