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熟茶づくり実験2019年 その6.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット
発酵の茶葉

お茶の感想:
さらに2袋分、調子が悪くなって捨てた。
これで手元の茶葉はいったんゼロになった。
原因はわかっている。
撹拌しすぎ。
乾燥しすぎ。
撹拌の目的は、水分の均等化と、上がりすぎた温度を下げること。
しかし、撹拌すると茶葉の表面が乾燥しやすい。どうやらそれがいけない。
茶葉の表面だけが乾燥して内部に水分が多くて茶葉の温度が34度以上あるようなときに、黒麹以外の微生物によるものと思わしき匂いが出てくる。イカの塩辛っぽい匂い。加湿して茶葉の表面に潤いが戻ると消えるし、たとえその匂いが出てもお茶の味にはほとんど影響しないが、いったん出ると後になるほど出やすくなる。メーカーの渥堆発酵中にもその匂いがあるので、問題ないのかもしれないが、今回の実験ではできるだけ黒麹優勢の発酵をすすめたい。得体の知れない変化はなるべく少なくしたい。
黒麹優勢の状態は色や匂いでわかるようになった。
種麹を仕込むことで黒麹による変化が特定できたのは今回の大きな成果。
布袋の発酵茶葉
黒麹発酵の茶葉
黒麹発酵の茶葉
しかし、黒麹優勢のバランスを保つのは難しい。
布袋に大きな餅のようなカタチに収まっている茶葉が、例えば部分的に、中央には黒麹で端っこだけはクモノスカビがちょっと出る、というふうに棲み分けするようにはなりにくい。黒麹が優勢になると布袋のひとかたまりが団体行動で同じほうを向いているような感じで、中央も端っこも同じ色に染まる。
このバランスが崩れると、ほんの数時間で優劣がひっくり返る。
ある一定の温度や湿度を保つくらいではバランスが保てない。今日一日の気温や湿度や気圧の変化、日々の変化、季節の移り変わり、など、揺れる要素はいろいろあるから目が離せない。
こんなに難しいとは思っていなかった。
撹拌は水分の均等化や温度を下げるのに有効だが、できるだけしないほうが茶葉の表面の潤いを保ちやすい。途中の散水は一滴も許されない。
手を使わずにご飯を食べるみたいな不自由さ。もどかしさ。
茶葉に触らないようにする。
そうすると、散水から24時間ほどで茶葉同士がゆるくくっついてくる。日本の麹造りで米の粒がゆるくくっついて固まるのと似ている。菌糸がつながっている様子。写真ではわかりにくいが、茶葉の表面にうっすら白く短い毛が生えてくる。
黒麹の菌糸と思われる。
黒麹の茶葉
菌糸が張り巡らされると、茶葉と茶葉の隙間の水分を逃がしにい構造になるらしい。布の内側の餅が全体的にしっとりしてくる。もしかしたらクエン酸による潮解の作用(空気中の水を捕まえる)も働いているのかもしれない。
しかし、撹拌すると乾いて菌糸が消える。1時間で消える。ものすごく繊細。
これを知らないうちは、加湿で調整できるだろうと考えていた。
撹拌して茶葉の表面が一時的に乾いても、加湿したらすぐに潤いがもどるだろう。
ところが、そうはゆかない。
茶葉の繊維は天気に反応している。
雨が降ったりして外気が湿れば茶葉も湿りやすい。カラカラに晴れて外気が乾けば茶葉も乾きやすい。その逆の方向へ調整するのが難しい。
また、加湿しすぎてもダメで、茶葉がどんどん水を吸って内部まで水浸しになって黒麹が呼吸できず、乳酸菌や納豆菌やケカビやクモノスカビが大繁殖する。酵母がアルコールをつくる。
毎日の天気を見ながら、一日の外気の変化を見ながら、加湿の加減も微妙に変わってくる。
ベストなバランス。内部には適度に空気と水がありながら表面が潤っているというバランスは、まずは散水の加減で決まるが、そこはなんとかコツを掴んだので、これからは保湿が課題である。
臭豆腐
写真は臭豆腐の一種の石屏豆腐。
綿のような菌糸の先に黒い粉が見えるが、これは黒麹ではなくてクモノスカビ。クモノスカビの発酵はクセがないので、これを見ないで豆腐料理になると発酵した豆腐であると気付かない。ただ、箸が止まらなくなる旨さと、ほんのちょっとチーズっぽい酸味がある。
撹拌しないで、発酵の温度が上がりすぎるのをどう対処するか?
冷やす設備がないので、気化熱で温度を下げるなど自然な現象を利用するしかない。
まず、発酵の部屋を変えた。
これまでの部屋は日当たりが良くて、遮光していても照射熱がこもって乾燥しやすい。3部屋あるので、隅々まで裸足で歩いて、床がいちばんヒンヤリしているところ、つまり水気がいちばんあるところに蒸籠を移動させた。
電気ポットの蒸気を利用するのをやめた。
水となじまない不自然な熱い空気が茶葉を乾燥させるから。
このところ一日の平均気温が30度はあるから、加熱する必要もない。
4時間に一度はチェックして、蒸籠の上段・下段を交換したり、上段・下段の間の中段に空の蒸籠をはさんで通気性を良くしたり、布袋ごと天地返したり、布袋の餅の中央にちょっとだけくぼみをつくったり、茶葉には直接触れない蒸籠や布に霧吹きをして熱を下げたり。
気化熱で内部の水を冷たくするダイ族の素焼きのヤカンの、外側の結露の水と冷気を利用したり。
ダイ族の陶器
土器
そのくらいしか手段がなくて、いずれも即効性はないが、ただ、試行錯誤しているうちにそれだけでもなんとかなりそうになってきた。
それで、現在は新しい茶葉で渥堆発酵をスタートさせている。すでに9日目。散水2回目から2日後。
今のところ安定している。
これまでのと比べてかなりキレイに発酵させている。
黒麹発酵の茶葉
3.5キロ(乾燥した茶葉)を1袋として2袋の7キロ分。
1袋の茶葉の量を2.5キロから3.5キロに増量したが、これも潤いを保つ効果が増すので有効と考えた。
茶葉を変えた。
孟海県の茶葉をやめて、孟臘県の旧六大茶山の蛮磚古山(現在名は曼庄)の生態茶にした。
旧六大茶山は山に水気が多くて、茶葉にも水気が多い。
生態茶は樹齢30年くらいの若い茶樹で、山の斜面に一本一本独立して植わっている。同じ山の古茶樹から種を採取して植えたものだから、古くからある原生の大葉種の品種特性が現れている。
あくまで推測だが、こちらのほうが茶葉がもともと持っている天然の微生物(黒麹菌を含む)の量が多いと見ている。
曼庄
晒青茶
黒麹の品種は、焼酎づくりにつかわれる日本には何百種もあるとどこかで聞いたことがあるが、おそらく熟茶づくりにおいても茶山や倉庫ごとに棲み着いている黒麹の品種特性がそれぞれあるにちがいない。
2016年の秋に熟茶づくりを試したときは種麹なしで、茶葉の持っている天然の黒麹を利用していた。そのとき、発酵に使う道具の布や笊を洗うと、黒い色素が水を染めるが、その黒にちょっと青味があったのを覚えている。万年筆のインクのような色。その色が今回の蛮磚の茶葉の発酵につかっている道具を洗うときにも出てきた。孟海県の孟宗山のは黒い色でもちょっと黄色っぽい感じだったので、もしかしたら黒麹の品種特性の違いが現れているのかもしれない。
発酵スタートのときに、茶葉を蒸して種麹を仕込んでいるが、ちょっと蒸したくらい(蒸し時間10分くらい)では天然の胞子が死なずに残っているのかもしれない。
発酵熱の茶葉
2回目の散水から24時間後、茶葉の温度がゆっくり上昇して40度を超えた。
さすがにこのときだけは撹拌して揉捻もした。
1回目の散水で40度に達すると、おそらくそれは茶葉が水浸しになっているから納豆菌らしきのが大繁殖するのだが、今回は40度になっても黒麹優勢の状態を維持している。栗のような甘い香りがしている。
茶湯の色
あいかわらず茶湯の色は変わらない。
黒麹が茶葉を酸化させないようにしている。
スタートから9日目、散水2回目。まだクエン酸の酸味が強いが、でんぷん質の糖化による甘味も強く出ている。
香りも味も透明感があって、怪しいところはまったくなし。
はい。
今日の授業はここまで。
葉底
葉底つぶす

ひとりごと:
今回の実験の最大の難関はまだこれから。
渥堆発酵を終えてからの、乾燥をどうするか。火入れをどうするか。
散水5回目までにいろんな可能性を考えておいて、これという方法を決めておきたい。


茶想

試飲の記録です。

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