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熟茶づくり実験2019年 その8.

製造 : 2019年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明蛮磚古山生態茶
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 微生物発酵途中
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの杯・ステンレス電熱ポット

お茶の感想:
発酵スタートから18日目。
6回目の散水を終えてから2日目。
ここでダメになった。
残念だが、捨てるしかない。
今回の実験はこれですべての茶葉を使い果たして、滞在期間があるのでいったん終わりにする。
失敗に終わるが、ヒントを残した。
6回目の散水
5回目の散水の後まではうまくいっていた。
美味しい熟茶になりかけていた。
6回目の散水の後にトラブルが起こった。
トラブルの原因は4月中頃からはじまっていた異常気象。ある程度は予測できたが、天気予報すらだんだんひどくなるとは予測していなかった。気温は連日40度に達して、室内の気温も35度になって、湿度は30度のカラカラで、熱帯雨林の気候じゃない。砂漠のような感じ。
一袋3.5キロの少量ゆえに影響をうけやすい。
茶葉の発熱した温度を下げられなくなった。
4回目・5回目の散水まではなんとかいけた。撹拌するなどして数時間内に32度くらいまで下げられた。黒麹の活動のサインが消えなかった。
ところが、6回目の散水後から特別に暑い日がつづいて、3日間ほど茶葉の温度が40度以上になった。空気がカラカラに乾燥しているので撹拌は何度もできない。茶葉が潤いのあるうちは微生物のつくった酵素の作用があるが、乾燥すると効き目がなくなるので、抗菌効果のガードが下がる。
40度以上が24時間つづいた頃から変な匂いがしてきた。麦わらのような畳のような草っぽい匂い。
そして、黒麹の活動のサインが消えていった。
発酵失敗
メーカーの数百キロ以上の単位で行う渥堆発酵では、内側の茶葉の温度は50度以上になる。しかもその期間は長くて2日間以上続くこともある。
なぜこれほどの高温が長時間続いて大丈夫なのか?
どこが違うのかを考えてみた。
メーカーの発酵
おそらく、通気の状態が違う。
メーカーの渥堆発酵の内側の茶葉は、かなり酸素の少ない状態で発熱して50度に達する。
外側を覆っている茶葉の層は数十センチあって、そこは黒麹優勢になる条件がそろっている。通気が良くて温度は低め。例えば、室温が28度であれば表面の茶葉は28度から30度くらい。10センチほど掘っても35度以下だろう。
この数十センチの外側の層に活動する微生物が酸素を消費して二酸化炭素を吐き出して、内側を酸欠状態にしている。
実験の一袋3.5キロでは茶葉の層は上下6.5センチしかない。外側も内側も差がなくて、一袋すべてがひとつの環境になる。
発酵初期の黒麹菌を培養する目的のときはこれで都合がよかった。
一袋3.5キロの外側・内側のすべての茶葉に通気が良くて、32度くらいの低めに温度が保てて(そのときは室温も30度くらいだったので)、他の微生物の繁殖を抑えてキレイに黒麹の発酵がすすんだ。
しかし、発酵中盤からの”浄化”の目的になるとこれでは都合が悪い。
浄化に働くいくつかの優良菌には、通気の少ない環境で40度以上の高温を好むのもいるから。
こんなことも検討してみた。
例えば、浄化の発酵のために、布袋ごとプラスチックバッグで包んで通気を遮断して、酸素の少ない状態にする。
いいアイデアのように思えたが、これもよく考えるとダメ。
黒麹のサインが消えると必ず調子が悪くなる。
この法則にしたがうと、一袋まるごと酸素が少なくなったり高温になったりしてはいけない。黒麹が弱るから。
これは散水のときの技術にもあてはまる。
2回目以降の散水から茶葉に均一に水がかかってはいけない。黒麹の菌糸が窒息するから。不均一に散水することで、黒麹の活動が止まらないようにする。
手はなくはない。
一袋ごとの発酵を分ける。
一袋を浄化のための発酵。別の一袋を黒麹のための発酵。発酵を分けて行って、後にこの2つを混ぜ合わせる。
混ぜ合わせてからまた一袋ごとに分けて、浄化のための発酵と黒麹のための発酵とを分けて行う。
・・・・かなりややこしい。
言うは易しだが、布袋も蒸籠も毎日洗って天日干しして・・という作業もたいへんで、現実的ではない。
少量の渥堆発酵の難しい理由はここにある。
茶葉の量が少ないため相反するような2つの環境を一つの山(茶葉の集まり)でつくれないこと。
忘れないように、ダメになった茶葉の様子を記録しておく。
まず、茶葉の茎の部分が焦げる。
茎の焦げ
西双版納のお土産屋さんで売っているニセ年代モノの生茶にもよくある茎の部分の焦げ。湿気た跡であるが、焦げているだけではなくてカビている。
葉底
匂いが悪い。
それまで黒麹優勢のときは、栗や焼き芋のような甘い匂いがしていた。その甘い匂いだけしかなかった。
発酵がダメになると、麦わらや畳のような草っぽい匂いが混じるようになる。
茶湯
茶湯の色は6回目の散水でさらに赤く変色している。この色は正常。
しかし、味が悪い。
黒麹優勢のときの白ビールのような甘さはない。
クエン酸の酸味はかなり落ちているが、別の酸味、漬物っぽい酸味が出てきている。
なんとなく身体が受け付けない苦味があり、舌に残る。ほんのひとくちがすっと飲み込めない。
納豆菌が繁殖すると、ぬるんとした粘り気が茶湯にも出てきて、苦味が後味にあるが、この場合の苦味は健康的に感じる苦味。苦いのが悪いわけではない。
どこがどう悪いかと味の説明をするのは難しいが、誰にでも子供の頃からの経験の蓄積があって、これは飲むな!と身体が教えてくれるから、うまく文章にしておく必要はないだろ。
葉底
葉底に、死んだ魚っぽい匂いがかすかにある。茶葉に魚の匂いは危ない気がする。
葉底の色は、5回目の散水までは緑色や黄色がもっと鮮やかだったはずだが、6回目の散水後のはどこか全体に黒ずんで灰色っぽい。茶湯の色の暖色とは反対に、葉底の色が寒色になっている。この現象は茶友の熟茶にも見つけているが、どこかおかしい。
追記:5回目の散水後 軽く焙煎
まだダメになっていない5回目の散水後、そのときの試飲を記録しておく。
甘い香りがピークに達して、お茶を淹れると旨味が強く出て、クエン酸の酸味がちょっと落ちていて、もっとも熟茶らしい味。納豆菌の茶湯の粘りはほとんどなくキレイな口感。
これを軽く焙煎してみた。ステンレスの鍋を熱して、火から下ろして予熱だけで散茶に火入れした。
焙煎したときに焼いたパンの匂い。酵母発酵の匂い。味は火入れ前のよりもクエン酸の酸味が落ちて、透明感が増して、さっぱりとしていた。熟茶の年代モノにときどきあるちょっと埃っぽい感じの香り。アミノ酸の焦げからくる炭っぽい感じ。ここで発酵を止めて長期熟成させる手はあるかもしれない。と思った。
今回の実験の目的は、味も体感も涼しい昔の熟茶がどのような発酵によってつくられたかを探ること。
現物のお茶の味で証明することが叶わなかったが、現代の熟茶がなぜ味も体感も暑苦しいのか?、ひとつ思いつく理由がある。
おそらく浄化を意識しすぎているからだろう。
じゃんじゃん水をかけて、渥堆発酵の内側の発熱して高温になるところの時間を長めにして、つまり黒麹菌以外の良性の菌類による発酵をすすめて、”揺れ”の要素をなくしてゆくと、食品衛生的にはより安全になる。理論上はそうだ。このまま発酵をずーっとすすめて行きつくところは灰とか炭とか、枯れて毒にならない物質になる。
出荷してからすぐに飲めなければいけない現在の市場において、「発酵茶だから10年寝かせなければ毒が抜けない」なんて言い訳はできない。
しかし、それならなぜ昔の人も同じように考えなかったのか?
謎を残して、振り出しに戻ってしまった。

ひとりごと:
開発区
開発区
森を切って山を崩して川をせき止めて、人の住まない投資物件を増やしてゆく経済。
そんなんで儲けたヤツらが山ごと買い取って森を切って天然ゴムやバナナを植えて山が枯れてゆく。
罰当たるわな。
ビジネスは頭悪い。


茶想

試飲の記録です。

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