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易武古樹青餅2010年 その38.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・杯・鉄瓶+炭火
餅面
茶葉の色
茶壺

お茶の感想:
熟茶づくりの実験が失敗に終わったので、「これからどうします?」とよく聞かれる。
+【熟茶づくり実験2019年 その8.】
失敗したけれど、当初の目的は果たした。
黒麹菌でスタートする微生物発酵を体験すること。
どんなときにどんな臭いがするとか、どんな温度になるとか、茶葉の色とか手触りとか、お茶の味とか。
わかってきたので他人の仕事が評価できるようになった。
つぎのステップは、渥堆発酵(微生物発酵)を代行する工房を探すこと。
原料となる晒青毛茶を自分で手配して、その工房で渥堆発酵してもらう。
水よし・空気よし・腕よしの三拍子そろったところを探す。
渥堆発酵は常に途切れなく発酵させている設備と環境がよい。アパートの一室を改造して発酵蔵をつくったとしても、年に一度するかしないかでは菌類のコンディションがよくないと考える。
ただ、熟茶づくりは急がない。もうちょっと勉強したい。
すぐにでも応用できるのは、生茶づくり。
これからの生茶づくりには微生物発酵を仕込むことにする。
生茶は、近年の製法においては微生物発酵していないのがほとんどと考えられるが、ゆっくりつくる昔ながらの製法では、わずかながら微生物発酵することがある。
例えばこのお茶。
+【易武古樹青餅2010年】
殺青揉捻
製造工程をふりかえってみると、微生物発酵のチャンスは二度ある。
一度目は農家で。
殺青・揉捻してからひと晩かけて涼干(陰干)、それに続いて次の日の晒干(天日干し)、茶葉が湿っていて微生物発酵するのに十分な水分があるのは15時間くらい。
涼干
二度目は工房で。
お茶の紹介ページにこんなふうに書いている。
「工房に持ち込んだすべての毛茶は一日で圧延を終え、餅茶となって室内の棚に並べて涼干され、翌朝の太陽を待ちます。」
ここでも茶葉が少なくとも12時間は湿ったままである。
蒸すことの水分と予熱で微生物発酵がはじまるのは、この茶葉でも経験している。
+【章朗古樹春天散茶2012年 その2.】
このときは気温も湿度も高くてほんの数時間で発熱しはじめた。
圧餅
圧餅工房の部屋は暖かい。
薪火を焚く蒸し器(鉄製の大きな鍋)が、火を落としてからでも数時間は熱を放出して部屋をあたためる。鉄鍋に残る湯の蒸気が空気を湿らせる。
農家も工房の職人も微生物発酵の知識はない。
なので意図したものではない。だからムラがある。
試作品として1キロサイズの大きな餅茶をつくったが、これがいちばん微生物発酵のすすんだ状態で仕上がっている。茶葉が多くて乾くのに時間がかかるからだ。また、餅身が大きいほど微生物が増殖するときに出す熱がこもりやすい。このことも影響するだろう。
熟茶づくりで体験した、その味、その香り。黒麹菌が増殖するはじめの1日から2日めにかけて出てくるその風味が、今、このお茶に見つけることができる。
茶湯の色
もしも経験がなければ、ただちょっと甘めの生茶の味。微生物発酵の味が潜んでいることに気が付かないだろう。
葉底
葉底を指でつぶしたときの感じ。
茎の部分の繊維が柔らかくなっている感じ。この感じも、微生物発酵の初期に現れていた。
『易武古樹青餅2010年』はこの9年間でよい具合に変化してきた。熟成にも影響しているはず。
微生物のつくった酵素が茶葉に大量に残っている。
蓋
『章朗古樹春天散茶2012年』の茶箱を開けてみたら、蓋のトタン貼りの表面にうっすら白い粉がついている。
目で見えないくらい細かいけれど、指でスッとこする感触でわかる。
酵素?それとも胞子?いつかわかるときがくるだろ。

ひとりごと:
熟茶づくりの実験から得たものは、まだ言葉にならない情報がたくさんあって伝えるのが難しいけれど、口や鼻や目や耳や手がそれらを覚えている。文章に残さなくても大丈夫だし、他人に話ができなくても大丈夫。これから出品するお茶に何らかのカタチで現れる。飲む人に伝わる。


茶想

試飲の記録です。

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