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巴達一芽紅茶2019年・秋天 その1.

製造 : 2019年10月25日・26日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山怖司寨小茶樹
茶廠 : 農家+北京人
工程 : 紅茶
形状 : 散茶
保存 : 乾倉
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗 グラスの茶杯 銅瓶 電熱
台地茶
台地茶
新芽・わかば

お茶の感想:
前回の記事で「たった11キロの製茶で疲れ果てた・・・」と書いたけれど、そうじゃなかった。北京人のお茶づくりを手伝って、そっちのほうがもっと重労働だったのだ。
それは、一芽だけの紅茶。
新芽
新芽
全国的には珍しくないけれど、西双版納の大きさやカタチが揃わない混合品種の一芽でそれをつくるのはちょっとヘンなアイデアである。
製品化できるかどうかはさておき、この試みはワクワクする。
北京人は、まだ雨の季節の9月に布朗山の農家に頼んで15gほどのサンプルをつくっていた。
それを飲んでみると、びっくりするくらい上等な味がした。
透明感があり、渋味や苦味がなくて、きめ細かな水質を舌に感じて、のどごしは柔らかい。
本来なら安モノな小樹のお茶で、しかも9月の雨の季節で、苦い・渋い・粗いはず。
ところが、一芽だけになったら違う。
さらに、これは雲南の茶葉の持ち味なのだろうか、そこそこ煎がつづく。5煎くらいまで余裕でいける。他の地域の一芽だけのお茶にこれほど煎のつづくのがあるだろうか。たぶんないよな。
小樹
一芽をたくさん収穫するとなると古樹では難しい。
西双版納の古樹はなるべく選定をしないのが上等。剪定しないと枝分かれが少なくて芽数が少ない。労働効率が悪い。
若い茶樹で背の高さを低く保つように剪定している台地茶なら、枝分かれが多くて芽数が多い。収穫量に数倍の差があるだろう。
台地茶の栽培規模の大きな茶山となると、西双版納では勐海県の布朗山か巴達山になる。
なので巴達山のいつもの農家が都合よかった。
ただ、自分は何度も来ていて知っていたが、北京人は知らなかった。
巴達山の農家のふだんつくる安いお茶は、犬や猫がうろうろする地面に茶葉をひろげて萎凋や晒干をするし、殺青も揉捻も機械でする。衛生観念がズレているし、手工(手づくり)のための製茶道具がほとんどない。
製茶場
すべての掃除からはじめなければならないし、手工でつかう道具のほとんどは自分で持ち込まなければならない。
北京人はいきなり出鼻をくじかれた。
しかし、彼が到着したときにはもうすでに朝から十数人の農家が茶畑に入って茶摘みをはじめているし、鮮葉の鮮度を保つのは一刻を争う。
なんとか工夫するしかなかった。
こんなふうに、理想から遠くはなれてゆくことがお茶づくりのあらゆる場面で発生するから、リカバリーをいかにうまくできるかゲームだと思って楽しむしかない。
萎凋
一芽を採取するには2つの方法がある。
1.一芽二葉くらいで摘んでおいて、後から新芽だけを摘出する。
2.一芽だけ摘む。
初日に”1”を試した。
一芽二葉くらいで摘んだ茶葉から、指でつまんで一芽を取り出す。
鮮度のことがあるのでその日のうちにしなければならない。村の人に声をかけてアルバイトを10人集めたけれど、やはり深夜までかかった。
一芽二葉が一芽だけになると、25キロあったのがたったの2.8キロになった。
およそ10分の1。
カンタンに言って10倍の価格にしないと割が合わない。バイト料を含めたら15倍というところだろうか。
ま、それでも有名茶山の古樹の一芽三葉よりはずっと安い。
ただ、”1”の方法にはひとつ問題があった。
深夜12時くらいになると茶葉の水分が抜けて(萎凋がすすむ)柔らかくなってポキっと折って一芽と若葉を切り離すことができなくなる。爪の先を立てて切り離すという面倒な作業になる。
やはり”2”のほうがカシコイのかな?
ということで、二日目に”2”のほうを試した。
収茶
収茶
ところがここでまたトラブル発生。
25人ほどの茶摘みのアルバイトが夕方に収穫を終えて帰ってきてみると、ぜんぜん一芽になっていない。一芽一葉くらいで摘んでいる。一芽だけは割に合わないと勝手にルールを変えたらしい。
本来は、北京人が午前中に茶畑に入ってひとりひとりの指導するべきだが、それを他人に任せてしまったのだ。太陽が照って暑いし、山歩きはしんどいし、茶畑には痛い痒い虫がたくさんいるし、嫌な仕事だから。
一芽二葉
北京人はスネて、「茶摘みのお金は払うから茶葉はどうにでもしろ!帰る!」と言い出したが、なんとかなだめて続行した。捨てるのはもったいないから。
結局、初日とおなじくアルバイトを集めて深夜まで一芽を摘出した。
選別
こんなふうに想定外の費用が発生することがある。よくある。コストがこのくらいで販売価格がこのくらいで生産量がこれだけあればいくら儲かる・・・なんて計算していると、途中から何度も計算しなおすことになって疲れる。
農家の中にひとりだけ真面目な人がいて、一芽だけの純粋なのを采茶していた。半日で800g弱の収穫だった。一芽だけを要求するなら、1キロ摘めば一日のバイト料として見合う金額を約束しておくべきだが、北京人の条件はそれを下回っていたのだ。アルバイトが納得しないわけだ。
新芽
新芽
さて、一芽。
一芽だけになった鮮葉は、これまで見たことも触ったこともなかった。
例えば、萎凋のときに乾くのが早いとか、殺青のときの火が強すぎると焦げやすいとか、経験から知っていることもあるけれど、あくまで一芽三葉がひとつになっているのを観察してのことだから、純粋に新芽だけを観察したものではない。知らないことがある。
まず、意外に”重い”と感じた。鮮葉の時点では思っていたよりも水をたくさん含んでいるのだな。乾燥したら羽毛のように軽いからギャップが大きい。
そして、その水分はカンタンに抜けない。
もしかしたら、若葉や茎がくっついている場合はそっちに水を吸い取られて、一芽の乾きが早いのかもしれない。一芽だけになると水分が抜けにくい。
金針紅茶
左: 完成した状態
右: 鮮葉を萎凋している状態
紅茶をつくるのだから、揉捻・渥堆の製茶工程で軽発酵がすすんでくれないと困るが、なかなかすすまない。軽発酵がすすむときに発熱するが、その温度が低い。
色の変化が少ない。
若葉なら赤黒く変色するので、若葉のほうが軽発酵しやすい成分構成であることがわかる。
一芽の軽発酵度を見るのは、色の変化よりも香りの変化に注目するしかない。
香りの変化は、揉捻のときに現れる。
初日の”1”の一芽は、鮮葉の水分のあるときは2.8キロ。乾燥したら700g弱。少量なので手揉みで揉捻した。揉捻のときはすでに2キロ弱くらいになっていた。
いつもは手でそのまま茶葉を球状にして揉捻するが、一芽だけだとバラけやすくて球をつくりにくい。布袋ならカンタンにまとめて球にできる。
布袋
揉捻
ふだんの一芽三葉くらいで揉捻するときは、けっこう繊維の弾力があるから手応えがある。一芽だけになるとはじめから柔らかくて手応えの変化が少ない。
揉捻の終盤になると、茶葉の球がバスケットボールくらいからソフトボールくらいに小さくなる。そのときジワッと水分がでてくる瞬間がある。その水分が出てきたら鮮味の香りが強く出てくる。この香りの変化がいちばんわかりやすかった。
機械揉捻
二日目のは機械揉捻した。
二日目のは収穫が多くて、一芽だけになった状態で25キロほど。初日の10倍もある。乾燥して仕上がると6キロ弱になる。量が多いので手揉みすると時間がかかりすぎる。手揉みと機械揉みの差がどこにあるのかはっきりわからないので、機械を試すことになった。
結果はあまりうまくゆかなかった。一芽の先っぽの針のように尖ったところが千切れたり、ヘンに曲がりすぎたり。一芽だけの揉捻を想定した機械じゃないのだ。たぶん、他の地域の一芽のお茶づくりを専門にしているところでは機械の性能が違うはずだ。
揉捻を終えたら晒干。
初日のはうまくいった。
最後まで天気が良かった。
晒干
晒干完了
巴達金針紅茶
揉捻を終えたのが正午くらいで、そこから日光に晒すと、半日で7割がた乾燥する。そこまで乾いたら陰干しでひと晩置いても風味への影響は少ない。次の日の朝にもういちど日光に晒して乾燥を終える。
ところが、二日目のは途中から天気が崩れだした。
揉捻を終えて、いざこれから晒干というところで、すでに雲が多い。
天気予報は「ますます悪くなる」と言っている。
巴達山の農家はふだん大量生産で紅茶をつくっているので、石炭を熱源にする大きな乾燥機がある。それを使うことを北京人に提案したが、どうしても晒干をあきらめきれない様子。
「機械乾燥するくらいなら陰干がいい」と言い出して、町のアパートに持ち帰って除湿機のある部屋で乾燥させることになった。
空
このとき自分のお茶づくりは実験で少量の紅茶と白茶を試していたが、晒干がほぼ完了していたので、あとは陰干しするだけ。巴達山の農家に任せることにした。(このお茶は仕上げて後日記事にする。)
北京人の茶葉とともに山を降りることになった。
余談だが、一芽を取り除いた二葉だけの若葉がたくさんあって、北京人は同時進行で紅茶にしようとしていた。ところが、夜中に猫がウンコをして、気づかないまま揉捻して、ぜんぶダメになった。揉捻後の異臭でやっと気がついた。
北京人は怒って「農家にくれてやる!」と言って、そのまま置いて帰った。
たぶん、捨てられないで知らない人に販売されるだろう。
北京人になにかとトラブルの多いのは運が悪いからではない。予知しようとしていないだけだ。集中力不足。
さて、山を降りる途中、北京人は知り合いの茶廠(メーカー)の師匠に電話でアドバイスを求めた。
「とりあえず茶葉を見てから」と師匠はいうので、途中の勐海鎮の町まで戻って見てもらった。
師匠の下した判断は、渥堆発酵を明日まで続けて、それから機械乾燥する。
さらに、揉捻が不十分なのでこれから手で揉むべし。
メーカーだから職人たちがいる。5人でいっせいに揉捻したらほんの1時間で終わった。
木箱に詰めてひと晩軽発酵をすすめた。
降り出した雨は、夜になって雷を伴う大雨になった。
次の日の機械乾燥の現場は見ていない。疲れ果てて寝込んだから。
北京人に聞いた話では、10分間だけ100度まで温度を上げたらしい。
その数日後の試飲。
一芽紅茶
一芽紅茶
一芽紅茶
一芽紅茶
左:初日の晒干の一芽
右:二日目の機械乾燥の一芽
美味しい。
やはり、透明感があり、渋味や苦味がなくて、きめ細かな水質を舌に感じて、のどごしは柔らかい。
秋の旬の一芽。ひと口めにポッ!っと火がつくようなインパクトがある。アルコールランプに火をつけたときの小さな爆発のよう。
写真では伝わらないが、一芽の紅茶の茶湯の色はとても明るくて、この見た目にもインパクトがある。
ふたつを比べると、晒干で仕上げたほうが明らかに美味しい。口感の香りも涼しい。機械乾燥のは味も香りもモヤッとして暑苦しい。
ただ、その差は2煎くらいまではっきりしていて、3・4煎とすすめると差が少なくなってゆく。おそらく機械乾燥の技術を上げるとその問題は消える。
メーカーの師匠のつくった紅茶を飲んでみたが、それは機械乾燥だがすばらしい出来だった。晒干にはできない熱の通り方による香りが良い印象をつくっていた。
一芽の紅茶はいいお茶になる。
他の地域の上等のやつに負ける気がしない。素材がいいから。
北京人はこれからが勝負だな。
本人もちょっとやる気が出てきたみたいなのでよかった。

ひとりごと;
それでも自分はこの一芽のお茶はつくらないな。
他人のつくったのを転売するのはアリかもしれないけれど。
なにか違うな・・・という感じなのだ。


茶想

試飲の記録です。

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