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老鉄観音1988年 その1.

製造 : 1988年頃
茶葉 : 福建省安渓県感徳鎮
茶廠 : 王爺
工程 : 烏龍茶
形状 : 散茶
保存 : 10gアルミパック密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗
老鉄観音1988年

お茶の感想:
プーアール茶の老茶の1950年代・1970年代・1980年代の一部の高級品は、専売公社制の時代に海外に輸出され、外貨を稼いでいた。なのでかなり精密なお茶づくりが行われていた。民営と違って国営はコスト意識に低いから、上質を求めるのにも原材料費や人件費が惜しみなく注がれたことだろう。今、老茶の茶葉を観察しても、難しい仕事を見つけることがある。
老プーアール茶
老プーアール茶
1980年代までは人民元が安く、まして西双版納のような辺境地は物価も人件費も安かったから、どんなに高い価格をつけても海外に持って出たとたんに、「安い高級茶」というポジションを得た。
この質と価格の差がどんどん詰まっていって、ほぼ隙間のない、つまり、安くない高級茶となったのは2007年以降ではないかと思う。しかし、2007年以降も価格は上がって、先日の上海(2015年2月)で聞いた価格は、『紅印圓茶1950年代』は1枚350gで70万元(現在のレートで約1330万円)になったという。
高い株ほどよく上がる。
たしかこんな言葉が株式投資にあったと思うが、まだ1枚100万円で買えた2005年頃にすべてを投げ打って『紅印圓茶1950年代』だけを買っておけばよかった。ま、それができないから今がある。
さて、このプーアール茶の老茶の価値が上がったのは、上のような特殊な条件がそろったことと、熟成するほどに美味しさと心地よさ(おそらくそれは薬効でもある)が増してゆく越境・越香の性質があるからであって、他のお茶にも共通して老茶が上質になるということはないと思う。
今日のこの『老鉄観音1988年』もそのひとつ。
老鉄観音1988年
昨日の『水仙烏龍古樹茶餅2014年』の安渓鉄観音の茶農家出身の老板が紹介してくれたお茶。
老板のお父さんは1980年代までの国営時代(鉄観音にも専売公社制の時代があったらしい)に検査員として働いていた。現在は民営化されているが、元国営メーカーの倉庫にたくさん売れ残りの茶葉が眠っているので、もしかしたらプーアール茶みたいに価値が付くのでは?ということから老鉄観音づくりがはじまる。
プーアール茶はもともと高級茶としてつくられたもの。鉄観音は売れ残りの茶葉。スタート時点ですでに差がある。
倉庫の木箱に密封保管されているらしいが、木箱のコンディションも様々。あきらかに傷んでいるのもある。比較的マシなのを選んで火入れされる。
この火入れするというところも鉄観音らしい考え方。
プーアール茶の老茶を火入したら、その味の価値を落としてしまうだろう。
老鉄観音1988年
早い話が、それほど美味しいと思えないが、このブログは試飲の記録。
なぜ美味しいと思えないのか、ちょっと考えてみることにする。
まず、甘い。
甘いという言葉は比較的肯定的に捉えられるが、甘味や旨味の消えが悪いのは茶葉の育ちの質がそれほど良くない証拠。人工的な栽培になるほどこの甘味や旨味は強く出る傾向がある。肥料などで茶葉を肥やすとてきめんである。茶葉だけでなく、穀物も野菜も果物も同じような傾向があり、それに慣れてしまっている人々の舌には、甘味・旨味の残るほうが濃くて美味しいと感じる。市場はより人工的な味を求めている。
香りの逃げる方向が定まらない。
口に含んでから鼻に逃げる香り。ひとつの方向へ向かってスッと逃げてゆくのが上等。あっちへ向かったりこっちへ向かったりどっちへ行きたいのかわからないのはダメ。この『老鉄観音1988年』はまさにそうで、2つの別々のほうへ向かう香りがある。
これはもしかしたら2種類の茶葉が混じっているせいかもしれない。
老鉄観音1988年
鉄観音は、茶農家がある一日につくった単天のお茶を特別注文しないかぎりは、多くはブレンドされる。つくった日の違うもの。製茶の仕上がりの違うもの。茶山の違うもの。ブレンドしてから焙煎でひとつにまとめる。その技術がすごいのだけれど、この『老鉄観音1988年』のブレンドはあまりに違いすぎる茶葉がブレンドされているのではないかと思う。倉庫から出てきてから焙煎されるが、その技術でまとめられる限界を超えているのではないだろうか。
喉の滑りが悪い。
喉にイガイガするほど悪いものではないが、スッと一本の筋が落ちて、腹の底に届くのが感じられる清らかさはない。これも素材となる茶葉の育ちの質に由来していて、人工的な栽培ほど喉ごしの滑りは悪くなる。腹に届くのが遅い。また、旬を外した茶葉も水質がザラザラして喉にひっっかかりやすい傾向がある。
体感がそれほど良くない。
上質な老茶はなんといっても体感。毛細血管が開いて血が隅々まで巡り、風呂上がりのような心地よさ。背中や肩の筋肉の緩むのを感じて、そこにチカラの入っていたことを知る。胸が開いて自ずと姿勢が良くなる。腹の底から温まる。そして持続する。
それほど上質でもない老茶は、はじめは体が温まるが、まもなく冷める。筋肉の緊張が解けない。なんとなく身体を動かしたくなって、貧乏揺すりする人がでてくる。
どちらかというとこの『老鉄観音1988年』は後者のほう。

ひとりごと:
鉄観音のお茶ファンだったら、こんなに低い評価にはならないだろう。もっと技術に注目するからだ。
技術はすばらしい。
ほぼ逝っていたと思われる茶葉を火入れで蘇らせる技術。
バラバラな組み合わせでもひとつにまとめ上げる技術。
清らかな香りとまろやかな味わいをつくる技術。
やはり自分はプーアール茶ドットコムの店長なのだな。
現代プーアール茶が高級でもない大衆でもない市場ウケする中途半端なお茶をつくるのに抵抗があるのも、老茶から入門したからなのだな。
この特殊性において選ぶお茶に、お客様がどんな価値を付けるか・・・ということになる。


茶想

試飲の記録です。

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