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易武春風青餅2011年 その8.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶

お茶の感想:
今日はこのお茶と、
+【易武春風青餅2011年】
このお茶と飲み比べ。
+【祈享易武青餅2014年】
「春風」の一枚は西双版納の紫砂の壷で保存している。
熟成壺
宜興窯でつくられているが、安いものだから、土は伝統のものではなく外地からのとブレンドだろう。それでも西双版納のダイ族の壷に比べるとずっと良い具合に熟成がすすむ。
熟成壺にも土の相性というのがあるのだ。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
「春風」と「祈享」の違いは、まず山の環境。
「易武山」と「漫撒山」。
現在の行政区分ではすべて易武山という地名でくくられるが、清代までは2つの地区(茶山)に分かれていた。「春風」と「祈享」の茶樹のあるところは直線距離にして30キロほどしか離れていないと思うが、漫撒山のほうが森が深く水気が多く、気温が安定している。易武山の昔はどうか知らないが、この数年は農地開発(茶のできない山の低いところのバナナ園や天然ゴム園)がすすんで、森林を多く失い、山の上のほうの空気までもが乾燥してきて、日中の気温の変化が大きくなっている。と思う。体感しているレベルであり、計測したわけではないが、間違ってもいないだろう。
ただ、茶葉のカタチや色に見る特徴も「易武山」と「漫撒山」にはそれぞれの傾向があるので、気候の違いは昔からあって、それが品種的個性の違いにつながっているのかもしれない。
茶樹の栽培も異なる。
「春風」は古茶樹であっても、茶摘みの手がとどく高さに剪定されている。このために枝分かれが増えて、その分葉数が増えて、一枚一枚が小さく育つ。
1970年代から1980年代にかけての孟海茶廠の印級の「小葉青餅」のグループは、この剪定タイプの古茶樹か、それとも倚邦の小葉種の古茶樹か、意見の別れるところだが、風味の特徴は易武山の色が濃い。なので剪定タイプであると今のところは推測している。
+【七子紅帯青餅】
+【倚邦古樹青餅2014年】
茶樹の見た目の不自然さから(人工的であることから)、剪定タイプの栽培に否定的な見方があるが、それは違うと思う。その特徴を活かしたお茶づくりができるかどうかなのだ。
「祈享」は易武山の奥地の漫撒山の古茶樹。
この地位に伝統的な「熟した枝」づくり(熟した根を育てる技術でもある)のために老葉を落とす特殊な仕立てにより、枝を伸ばしたままにして、分岐が少ないので、一枚一枚の茶葉が大きく育つ。
茶摘みのタイミングの違いもある。
「春風」は早春の6日間のみで摘み取った。
「祈享」はたしか30日はかかっている。
圧餅の違いもある。
「春風」は「祈享」に比べるとしっかり固めている。標準的な圧延なのだが、そのためにしっかり蒸すことになる。
「祈享」はその変化を嫌って蒸し時間を短くしている。
圧延後の乾燥は両者とも低めの温度設定でゆっくり温風乾燥。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
洗茶なしに1煎めは、まるで年代違いの同じお茶かと思えるほどだった。透明感があり、茶気の強い語り口がよく似ている。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
茶湯の色には違いがあるが、味の差は見た目ほどにない。
2煎め3煎めも香り以外の差は少ない。
香りは、「春風」は薬味。「祈享」は緑茶っぽい新鮮な風味。しかし4煎を超える頃から香りも接近してくる。
3年前の記憶をたどると「春風」も緑茶っぽさがあったが、「祈享」ほど鮮明ではなかったと思う。また、杯の底に残る香りは、「春風」は田舎っぽい太陽の香りがあり、「祈享」はそこが少なく洗練されている。
圧餅の蒸し具合の違いが現れているのだろう。
「春風」以降、当店のオリジナルの餅茶の圧餅は晒干(天日干し)にしているが、そうすると余計に田舎っぽい香りが出てくる。しかし、そのほうが良いと思っている。将来に(いつになるかはまだわからないが)、餅茶を微生物発酵させて黒茶にしたいと考えている。そのためには、圧延の工程で蒸して水分をたくさん持った餅茶を、天日干しでゆっくり乾燥させるのが有効だと思っている。
なぜかという話は長くなるので、また別の機会にする。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
味については、ほんとうによく似ている。
煎を重ねるほどに接近する。
山が違い、栽培が違い、品種的な個性もまた違うはずなのに、なぜだろう?と思うくらい似ている。
なので、以下はほんの少しの差における感想となる。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
「春風」は軽い。「祈享」は重い。
舌触りの違いだろうか。
「春風」は、舌の当たりがやわらかく、まんべんなく全体を包み込む。水質の密度が細かく滑らかで、豊潤ながら消えが早く、喉へスッと落ちるスピードが早い。
それで軽い印象となるのだろう。
「祈享」は、舌の先にウェイトがあり、舌の奥にやや淡白である。「春風」に比べると水質の密度が舌の奥でやや粗く感じる。喉へスッと落ちるスピードはワンテンポ遅れる。
それで重い印象となるのだろう。
殺青の技術は接近しているらしい。
その差が現れていない。どちらも易武山伝統の水平鍋。高温炒り。鍋の中心に蒸気が集まってしっかり茶葉に熱が通る。このため炒る時間は比較的短い。
甘くて爽やかな易武山の味はここにも秘密があると思う。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
「春風」と名付けたのは、易武山の早春の風が山を縫ってどこまでもフワフワたなびくような感じがとても気持ちよかったからだが、お茶の余韻も同じように長くたなびく。その余韻は「祈享」も同じ。
ところで、
「春風」のほうが水質が良いと感じるのはなぜか?
上に説明したように、茶樹の育ちは漫撒山の「祈享」のほうが良いような気がする。
やはり、早春の6日間という純度の高い旬が有効なのだろうか?
茶樹の育ちの差を補って、茶葉の成分を充実させるのだろうか?
あるいは、もうひとつ思い当たりがある。
「春風」は一日一日の仕上がりの差を許して、均質化させるために混ぜる作業をしていない。
「祈享」はよく混ぜてある。
古茶樹は実生(種子から)で育つ。このため一本一本が、人間の顔がひとりひとり異なるように個性がある。単樹のお茶づくりが有効なのはそのためである。
人間の顔に地域的個性があるように、茶山ごとに品種的個性が少なからずある。「易武山」と「漫撒山」にはそれぞれに風味の傾向がある。
また、地域の中にもいろんな顔がある。
「春風」の茶摘みをしたときには気付かなかったが、同じ易武山のある農地にも、早生、中生、晩生、と品種的個性により一番摘みできる新芽の出てくるタイミングがやや異なるのだ。
そうすると、「春風」の6日間の茶摘みは、バラエティーが少なく、単樹とはいわないまでも個性が単一化している可能性がある。
それに対して「祈享」は、3月のはじめ、3月の終わり、あっちの斜面、こっちの斜面、とバラエティーが多くなり、それをしっかり混ぜ合わせるので、一枚の餅茶にいろんな個性が集約されている可能性がある。
均質化のために毛茶を混ぜる工程は、一枚一枚のムラをなくしたり、一枚の中で崩すところによって味が異なるのを防ぐことができる。しかし、ひとくちのお茶の味の中身までも均質化することはできない・・・ということか。混成のザワつきが、水質となって現れるのかもしれない。
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
易武春風青餅2011年と祈享易武青餅2014年
左: 易武春風青餅2011年
右: 祈享易武青餅2014年
もうひとつ気になることがある。
この二つはどちらかというと易武山寄りのお茶の味だった。
やさしい甘みと軽快な爽やかさ。舌にピリピリ感じるほどの刺激。小気味良いキレの良さが魅力である。
そうすると「祈享」は、もっとボンヤリした魅力のある漫撒山の個性を活かしきれていないのかもしれない。
逆に、易武山のお茶はその個性を活かして、烏龍茶づくりのような方向へ、もっと栽培や製茶の精度を高めてもよいかもしれない。

ひとりごと:
「春風」と「祈享」の飲み比べは、あまりに繊細なところを見ることになるので、餅茶を崩した場所とか、ちょっとしたことが揺れにつながり、一度に正確な試飲にはならないと思う。
また別の機会に飲み比べたい。
いつも意見が別れる北京や広州の茶友にも参加してもらおうと思う。


茶想

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