プーアール茶.com

7572七子餅茶80年代 その1.

製造 : 1980年代末期・1988年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶350gサイズ崩し
保存 : 香港−広州ー上海
茶水 : 農夫山泉
茶器 : 宜興の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
良くない方
良い方
良くない方
良い方

お茶の感想:
上海の友人の店に立ち寄ったらこのお茶の飲み比べができた。
1980年代の国営時代の孟海茶廠の熟茶。
店主の言うには、片方が良くて片方は良くないらしい。
ほぼ同じ年代の、同じメーカーの、同じ茶号(7572)なのに。
参考までに、7572は初代だけは生茶。
+【早期7572青餅70年代】
その後の7572はすべて熟茶で、そのうちのひとつは紹介したことがある。
+【黄印7572七子餅茶99年】
何年か前の入手時ですでに6000元(10万円くらい)したらしいが、個人的にはそんなに偉いとは思わない。今になって言えることだが、現在流通してる熟茶のほとんどがこれに似せた発酵の仕上げ方になったので、よくあるタイプの味になったから。
炭火
ただ、「良いのと良くないの」は気になる。どこが違うのだろうか。
7572の後ろの「7」が茶葉の等級(成長具合)を現しているが、これは品質を判別する指標にはならない。自然な育ちの茶葉をあの山この山から収集するのでサイズが合うはずがないし、山が違えば品種特性もちょっとずつ異なるのだから、茶葉の内容成分や繊維の質も違って、微生物発酵の具合も違って、その結果味も異なる。
今回飲み比べた2つがまさにそうで、餅面の茶葉の質が違う。
7572七子餅茶80年代
7572七子餅茶80年代
上: 良くない方
下: 良い方
写真ではわかりにくいが、良くない方のは茶葉が比較的小さく柔らかいせいか餅身がカッチリ締まっている。良い方のは茶葉が大きく繊維が硬いせいか餅身の締りが悪くてゆるい感じ。
微生物発酵の黒麹と酵母の活動のバランスを知ってからは、柔らかい小さな新芽・若葉の多いのは嫌な予感がする。
現在の市場はそこを勘違いしていて、生茶の上等と同じように熟茶にも柔らかい新芽・若葉のほうがモテている。
しかし、微生物発酵は酵母が優勢となってしまってバランスが悪い。
良くない方
良い方
上: 良くない方
下: 良い方
水色にもその違いが現れている。
黒っぽくなる原因ははっきりとわからないが、微生物発酵時に酵母が優勢となりすぎて、高温になったり、糖などのカロリーを過剰に消費したり、代謝物がたくさんできたことで、そうなったのだろうなと想像する。
味にはもっと大きく違いが現れている。
良くない方のは、まず口感がネットリしている。甘ったるい。穀物っぽい暑苦しさがある。
良い方のは、口感がサッパリ。甘いけれど消えが早く、酸味や苦味とのバランスも絶妙。そして長年熟成によって醸された薬草のような浄化の香りがある。これが生茶の年代モノに共通している。
体感も違う。
良い方は、身体の芯が温まる。喉が潤う。
良くない方は、皮膚が熱くなって、喉が渇く。
葉底
左: 良い方
右: 良くない方
良くない方の葉底は柔らかい茶葉の粘着力で老茶頭のようにくっついてほぐれにくい。渥堆発酵時にこの性質が酵母発酵の過剰を引き起こす。
西双版納の熟茶づくりをしている茶友にこのことを伝えたら、こう言われた。
「良い方のは硬くて大きな茶葉が多くて、出来たてのときは不完全発酵なところがところどころ残っていて、甘さが足りないし、美味しくないのでは?」
そう。そのとおりと思う。
たぶんそのほううがいいのだ。
酵母発酵を完全にさせようとして栄養を消費されてしまって、長期熟成の変化に伸びしろがなくなるよりは、出来たてのときの美味しさがそこそこで結構。酵母が優勢になっていなくても、その前後で黒麹菌などがしっかり仕事をして酵素などの良い成分を茶葉にたくさん残しているから、じわじわ時間をかけて成分変化が進んだほうが栄養価を減らさないで済む。
昔の人はそういうことを経験的に知っていたに違いない。

ひとりごと:
昔の人は賢くて今の人はアホ。
アホが飲める良茶なし。

祈享易武青餅2018年 その2.

製造 : 2018年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
炭火
茶器

お茶の感想:
前回の記事の『刮風生態青餅2018年』と比べたくて、このお茶を飲んだ。
サンプル最後の1回分。
+【祈享易武青餅2018年 その1.】
茶葉
1・2煎めは旬のきめ細かな水質、味は透き通っていながら密度の濃い充実感があるが、3煎めからの水質が粗くなる。舌にザラッとして渋味を感じる。4煎めからは茎や育った葉の厚いところに隠れていた甘味やとろみが出てきてまろやかになるので、粗っぽさは緩和されるけれど・・・。
1煎め
2煎め
このお茶の感じに似ている。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
そう。
采茶のタイミングがちょっと遅めなのだ。
その観点で注意して見たら、茶葉の色やカタチの様子もちょっと似ている。
采茶のタイミングを遅くすると茶葉は成長する。生産量を増やすためにそうしているのか、なんらかの考え方があるのか、わからないけれど、このお茶のポジションとしてはどうかな。
3煎め
葉そこ
葉底の繊維も早春にしてはちょっと硬い。
収穫を減らして生産量を減らして価格を上げて、水質をキメ細かく舌触り良くしたところで、このお茶を買う人にその意向が伝わるだろうか?
伝わらないから質をそこそこにしてやさしい価格にして喜んでもらう。
伝わらなくても正当な価格と質の上等を主張する。
質を上げるために生産量を3分の1に減らして価格を3倍にしてバランスをとったとしたら、その結果は、買う人が少ない上に買ってその質を知ることのできる人も少ない・・・ということになる。
仕事にコストパフォーマンスとか社会的な存在価値とかを求めたらできなくなる。
そんなこと気にしない。社会性なんて屁とも思わないひとりぼっち向きの仕事だよな。

ひとりごと:
ぼっちで良かった・・・。

刮風生態青餅2018年 その4.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶
茶器

お茶の感想:
試作のお茶。
この2つと同じ原料の茶葉。
+【刮風生態青餅2018年】
+【刮風生態紅餅2018年】
包装紙
この一枚は、炒不熟(浅い炒り具合)・渥一晩(渥軽発酵一晩)・2天晒(天日干し2日間)・加蒸5分(圧餅加工の蒸し+5分)などと書いてある。
「黄印」という分類になるから、「黄」の印が押してある。
餅面
茶葉
揉捻はしっかりしてあるが、揉捻後に茶葉を叩き伸ばして縮みを防ぐ仕事をしていないから縮んだままになっている。ま、風味への影響は少ないだろうから試作品として問題はないだろ。
もう少しで1年熟成となるこの茶葉。
黄色い
出来たてのときは圧餅の蒸し味が強く残っていた。蒸し味は香りを曇らせて、味はペタンと平面的でややカタイ酸味とピリピリした刺激があった。体感は穏やかな気がするが単独で飲んで違いがわかるほどでもない。
ほぼ1年熟成になる今飲んでみると、蒸し味が気にならない。
茶湯の色
香りは甘くて、味は透明度が高くて酸味も総合的なバランスに吸収されて、ピリピリは少なくなっていて、体感はあきらかに穏やか。
蒸し時間5分増しの効果でしっとりした熱が入っているせいか、1煎ごとに注ぐ湯の熱による変化が少なくて安定している。濃くなると苦くて薄くなると甘いバランスがシビアなのは3煎めまで。その先はひたすらじっくり抽出するのみ。雑味なく透明度の高いことで見えてくる深い味わいがある。
熱い湯で長時間蒸らしても野暮ったい煮え味が出ないのが「黄印」の良いところ。
圧餅の蒸し時間の長いほうが味の透明度が増すが、長期熟成の濁りも減らすことになるかもしれない。そんな気がする。
これ、もしかしたら本作品として出品したほうがよかったのかもしれないな。
いずれ勉強会をしてこのお茶のいくつかのパターンを飲み比べてもよい。
葉底

ひとりごと:
菩提酛のどぶろく
このお酒が飲んでもしんどくならないのは米の健康が理由かと思う。つくりのどうこうとは別だろ。
でも、原料の良さがつくりに良い影響をもたらす。
お茶もそうだし。

巴達古樹紅餅2010年 その26.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶380gサイズ
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶・炭火
紅茶2010年
380gサイズ

お茶の感想:
熟成の方針が固まってきた。
茶葉にあわせた保存方法を探ってきて、あっちへ向かったりこっちへ向かったりしてきたが、3年前の2016年くらいから目指すところが見えてきて、この先は微調整をすることはあっても大きな方向転換はしないだろう。
2016年までのお茶には、多かれ少なかれ保存環境を変えてきた熟成味がプリントされている。
わかりやすいのが2010年のこのお茶。
+【巴達古樹紅餅2010年】
カンタンに言うと、はじめの3年間ほどの保存環境は温度・湿度ともに高めだった。
紅茶はそのへん敏感だから。
今になってみたらこんなふうにはしないな・・・というくらい方向が違う。
2013年から後につくった紅茶は、産地の西双版納から半年以内に出して別の地域に置いている。
なので、手元のいくつかの紅茶の熟成味は大きく2つのタイプに分けられる。このお茶と2011年の『紫・むらさき秋天紅茶2011年』と、それ以降のお茶と。
+【紫・むらさき秋天紅茶2011年】
このお茶にプリントされた熟成味の特徴は、ドライフルーツのような熟れた甘い香り。酸化したやや酸っぱい味。
西双版納で保存されている生茶のプーアール茶にはよくあるタイプ。
この10年ほど、西双版納の現地で保存熟成したのが増えて、このタイプの風味に慣れてきたお茶ファンも増えて、市場ではそこそこ支持されている。
このタイプは茶気が穏やか。
ガブガブ飲むと身体が辛くなるお茶でも、熟成したら味も体感もまろやかになる。
このタイプを好む人を観察していると、おそらく味よりもこの体感のほうを好んでいるように見えるが、どうだろ。
熟成の味や体感の科学は不明。
温度や湿度だけで説明はできない。
外の環境と茶葉の内側の環境との関係。茶葉の内側のミクロの世界の水道管に溜まっている水が、気温や湿度や気圧の変化で動くから。でも、どういう時にどう動くのかがほとんどわからない。わかっているのは水は温かいところから冷たいところに逃げる性質があることだけ。
そもそも微量な水が茶葉の熟成にどう関わるかを証明した文献なんてないだろう。金にならない研究だし。
とにかく、西双版納の環境は生茶と紅茶の熟成には向いていない・・・・と自分は推測した。判断した。これに掛けてみる。
なので生茶と紅茶は西双版納で熟成させないことにしたのだ。
炭団
洪乾
このお茶をゆるい弱い火で長時間炙って出す。
炭団に火が着いてから灰で厚く覆って手をかざしても熱くない程度にする。
6時間ほどかけて390gあった重量が375gにまで軽くなる。減った15gは水。さらに陰干しに一日かけて粗熱をとると5g増えて380gになる。5gの水が戻っている。(1枚毎に10g前後の差はある。)
鉄瓶
マルティンハヌシュ
2煎め
こうすると風味が軽くなる。
ドライフルーツの熟れた香りはほぼ消えてドライフラワーくらいになる。酸っぱい味も全体のバランスに溶け込んでまるく納まる。
3煎めくらいから薬草っぽいスモーキーな香りが出てくる。バニラっぽい甘い香りもある。この香りに奥行きがあって景色がひろがる。
景色のある味は上等な味。
西双版納以外の環境で長期熟成させた紅茶にもこのような香りが出てくるのかどうかはまだわからない。
出てこなかったら、また西双版納の熟成をやり直したらいい。
葉底

ひとりごと:
保存熟成に完成度を求めると、そうなると、現在の出品方法では都合が悪くなる。
出品方法を変えることにする。
お客様にお取り寄せの案内メールはもうしない。
在庫から好きなお茶を選べるようにはもうできない。
コレでどうだ!という熟成の仕上がったひとつかふたつを、なんらかのカタチで発表して、何らかのカタチで取引する。
具体的にどうするかはゆっくり考えることにする。

大益貢餅熟茶98年 その1.

製造 : 1998年
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山
茶廠 : 孟海茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶崩し
保存 : 通気・密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶葉

お茶の感想:
茶葉の整理をしていたら30gほどサンプルが出てきた。
+【大益貢餅熟茶98年崩し】
旬の若い茶葉が主原料の、典型的な現代熟茶。
自分の知る現代熟茶の中では、最高峰のひとつと言える。
餅面裏
崩し
金花
写真: 2010年当時撮影。2.8キロの大餅。崩したら金花がびっしり。
熟茶の渥堆発酵について、昨年の秋からある問題に注目している。
発酵の過程で酵母が過剰に活性化すること。
問題の原因は、やわらかい若葉が原料になっているため、と推測している。
微生物発酵の黒茶はもともと大きく育った老葉が使われていた。1970年代から量産のはじまった熟茶づくりにも当初はそういう茶葉が使用されていたが、国営時代の孟海茶廠が新芽・若葉をふんだんに使った新しいタイプの熟茶を出品する。
1975年のこのお茶が最初だろうか。
+【7562磚茶プーアール茶】
やわらかい若葉のしなやかな繊維と含水量の多さとが、酵母だけに有利な環境を提供して、他の優良な菌類の活動を制限してしまう。とくに黒麹菌は、酵母の発熱による高温と息苦しさのために生きていられる期間が短くなる。
渥堆発酵の茶葉の山の上のほうと下のほうと2層をつくって、下のほうでは高温・多湿になっても上のほうでは適温・適湿が保たれるようにして黒麹をつなぎとめて、渥堆発酵の生態環境を維持するのだが、1ヶ月間のうちに何度か撹拌して上下を混ぜ合わせるから、最後には全体が酵母発酵臭い茶葉になってゆく。
黒麹と酵母の活動時間の割合が、例えば5:5が理想だとしたら、現実は3:7くらいだろうか。感覚的に。 
「酵母発酵臭い」と言ったが、味は悪くない。むしろ甘くて、発酵の良いのは”美味しそう”な香りがする。
味の問題じゃないのだ。
体感の問題。酵母優勢の熟茶は暑苦しい。冷えた身体でないと美味しく飲めない。
消費者の嗜好というか、現代の人々の生活に合わせてお茶を飲む目的が変化して、体感よりも味のほうが重視されている。
しかしこの傾向は好ましくないと自分は見ている。
お茶がクスリから離れて味の嗜好だけを求めると、コーヒとポジションの奪い合いをして価格競争になる。
とくに微生物発酵茶においては、味はあくまで薬効を確認するための指標というくらいの役割で良いと思う。
正しい味よりも、正しい体感。
お茶はクスリからポジションを奪い返すべきだ。
(ここで言うクスリとは、病気を治すよりも快楽を得るほうのクスリ。)
さて、このお茶『大益貢餅熟茶98年』はどうか。
一煎め
このタイプの熟茶は、煮やしてはいけない。
高温の湯がよいので蓋碗よりも茶壺だけれど、短時間の抽出でサッと湯を切りたい。
1煎め2煎めは、発酵度の浅いスッキリ爽やかな風味となる。
1998年の国営時代の孟海茶廠の職人が自分用にとっておいたお茶で、その職人から入手しているので、原料の茶葉の身元が特定できている。孟海茶廠の自社所有の巴達山の茶畑のもので、他の地域のブレンドは無い。
渋味がしっかりしているし、口感のとろみも少なめだし、この味がブレンドしない無調整なのだから、発酵度の浅い渥堆発酵だと推測できる。
そして、たぶんこのために暑苦しさが抑えられている。
現在の渥堆発酵の技術において発酵度が浅いということは、例えば涼しい季節に低めの温度で発酵させるとか、なんらかのカタチで酵母発酵が抑制されているのかもしれない。
三煎め
3煎めくらいに抽出に時間をかけてみたら、やはり煮え味の酸味が出てくる。
ただ、製茶工程の渥堆発酵後なのか圧餅後なのか、熱風乾燥の高温による焦げ味が効いているから、煮えた味になってもバランスは崩れない。美味しい。
1998年のもので現在2018年だから20年熟成モノ。
20年間の常温保存による焦げ(メイラード反応)も関与しているから、つくられた当時に意図されたバランスではないかもしれないけれど。
葉底
葉底の色が均一であるのがブレンド無しの単一発酵モノであることを裏付けている。
茶葉の大きさが均一なのは、渥堆発酵後に篩がけで選別されているから。
篩がけは、渥堆発酵の茶葉の山の上の層・下の層の2層のうちの上の層のやや乾燥した部分だけを抽出できる。なぜなら、下の層になった若葉は茶葉同士で粘着してくっついて茶頭と呼ぶ塊になりやすいから。
茶頭の大きさは様々で、豆粒くらいから小石くらいまで。しっかり固まったのもあれば、揺すればほどけるくらいゆるいのもある。これらはすべて酵母発酵臭い。
渥堆発酵の撹拌のときに、茶頭をほぐさないように残しておいて、つまり撹拌を適当に手抜きして、最後の篩がけで取り除くようにしたら、酵母発酵の抑制された茶葉だけを抽出できる。
ということじゃないかな。
手抜きするためには、篩がけを機械を使って厳密にしちゃいけない。鍬みたいなので人力でザックリやるほうがよい。
ということは、近代的な設備ほど酵母発酵臭いお茶ができやすいことになる。
鍬
酵母発酵臭い茶葉とそうでない茶葉を篩にかけて選別したらよいのだ。1つの原料から2つの熟茶をつくればよい。
ただし、半々ではない。
酵母発酵臭くない茶葉は、3:7の、3のほうだけを選ぶ贅沢なつくりとなる。

ひとりごと:
そうだよな。
もう結論が出ている。

孟宋新緑散茶2018年 その2.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶器
茶葉

お茶の感想:
2018年の春のお茶。
早春の緑の爽やかさをそのまま表したような生茶というよりは緑茶っぽいお茶。
昨年の春だからもうすこしで1年経つが、晒干で仕上げたお茶は少なくとも1年くらい熟成したほうが味がしっとりしてくる。
+【孟宋新緑散茶2018年 その1.】
一煎め
煮やさないようにサッと湯を切る。
サッと淹れても薄くならない程度に茶葉はちょっとだけ多めにする。
2煎めくらいまでは水質にとろみがあって、味がふくよかに感じる。ふんわり緑の甘い香り。
3煎めに、試しにじっくり時間をかけて抽出してみると、水質のとろみは失われて角が出て、苦味や酸味が際立って、茶湯の色は黄色っぽくなり、香りには果実っぽさが出てくる。
煮やしてはいけない茶葉。
3煎め
葉底
葉底の色にも緑が鮮やかに保たれている。
黄色や紅茶色の軽発酵した部分が少ない。
揉捻が弱く、圧餅もしていない散茶のままなので、3煎くらいで捻じれが解けて茶葉が開く。
現在はこういうつくりの生茶のほうが多いかもな。
茶葉を煮やさないように気を使って淹れてもらえたら高い評価を得られると思う。

ひとりごと:
製茶の具合に応じたお茶淹れ技術をテーマにした勉強会をしたい。

刮風生態青餅2018年 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
餅面表
餅面裏
一煎め

お茶の感想:
ひとりで淹れて飲むのには、楽しめるお茶になったと思う。
+【刮風生態青餅2018年】
毎回新しい味に出会う。
チェコ土の茶杯
茶湯の色
「あとちょっと甘味があったほうが良いよな。」
なんて味の良し悪しはたいした問題じゃなくなっている。
どういうふうに淹れてもそこそこ美味しいから、雑味を出さないように淹れる技術を誇れるわけでもない。
ちょっとの違いに味の美が宿る。
茶湯
歌を歌うのが天才的な人の歌声に似た、ちょっとの響きの違いが大きな違いになるような、お茶の味の出方。
そういう瞬間に出会えるお茶。
葉底
葉底

ひとりごと:
お客様の好みやお茶淹れ技術を知った上でお客様の要望を無視する。
「あなたはこのお茶を買いなさい。」
みたいに、押し売りができたらいいよな。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その4.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
炭団
鉄瓶

お茶の感想:
熟成具合を確かめるのと、
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
先日の『祈享易武青餅2018年』と比べるのと。
+【祈享易武青餅2018年 その1.】
美味しさを比べるのには無理がある。
黄印は一天一采の1日だけの采茶に対して、祈享は3週間で21日分の茶葉が混ぜてある。原料の質に差があるから、そこは今回考えないでおく。
熟成壺
餅面表
餅面裏
注目するのは、製茶の違い。
黄印の製茶は、揉捻をしっかりしている。一晩渥堆発酵させている。水分を多く含んだまま晒干している。圧餅の蒸し時間が長い。石型で圧す時間が長い。
祈享の製茶はその逆をゆく。
一見、軽発酵度の調整に違いがあるように見えるが、祈享もあんがいしっかり軽発酵させてあるから、たぶんそこが狙いじゃないのだな。
祈享の茶葉は軽い。
黄印の茶葉は重い。
茶葉の形状や繊維の状態の差が体積の差となって、指でつまんだときの重さの感覚に現れる。
そこにおのおのの理想がありそう。
あくまで推測だが、祈享は白茶づくりに良いイメージを持っている。
揉捻なしの萎凋だけで仕上げる白茶づくりには、人の手が加わる工程が少ないほうが良いというある種の美学が伺える。
祈享の老板がそう話していたわけではないけれど、いろんな話をする中でなんとなくそういう価値観を感じる。
人の手を加えないということ。その観点からしたら、黄印は揉捻や圧餅に手が加わり過ぎているように見えるかもしれない。
ところで、白茶は淹れる技術に風味が大きく揺れるお茶。
白茶の葉底
写真:白牡丹生態茶2014年
あんがい淹れるのが難しい。
【白牡丹生態茶2014年 その5.】
祈享の生茶を老板が淹れると、かなり多めの茶葉(体積が大きいので多く見えるが重量はそれほどでもないかもしれない)をちょっと大きめな茶壺か蓋碗に入れて、熱湯を注ぐけれどサッと湯を切るように淹れる。
黄印は、少なめの(少なめに見える)茶葉をやや小さめの茶壺でじっくり蒸らすように淹れる。
黄色印
黄印のこの淹れ方で祈享を淹れると難しい。
ちょうどよい濃さにしようとしたら、抽出時間のタイミングは秒単位で変わる。
ピタッと決まったな!と満足できる煎は、5煎に1煎あったら良いほう。つまり5煎か6煎の一回の泡茶で、「うぁー美味しい!」と思えるのは1煎だけである。あとの煎は苦かったり酸っぱかったり薄かったりでバランスが悪い。バランスが良いとスカッと抜けが良くて爽やかだけれど、バランスが悪いとトゲトゲしかったり濁ったり物足りなかったりする。
泡茶に夢中になっている腕自慢の人は楽しいけれど・・・。
ところが、茶葉を多くして湯をサッと切る淹れ方にしたら何煎も安定した美味しさになる。ただし10煎以上飲める濃さが続くので、そのくらいガブガブ飲む覚悟というか、そのくらい何煎も飲むシチュエーション向きだということになる。
黄印は味の出方がおっとりしていて、その点でおひとり様向けに、ひとり静かに少量を飲んで満足できるようにできている。
どちらも、漫撒山のお茶の魅力の「無い味」を求めているとしたら、味の隠し方に美意識の違いがある。
黄印
祈享はキリッとした味なので、口に含んでから喉に流し込む時間が短い。
キラッと光る一瞬に幻を見たような見なかったような気になる。
黄印はぼんやりした味なので、口に含んでから舌にゆらゆらさせたい時間が長い。
あるのかないのかわからない味を探しているうちに寝むってしまって夢が続きを見ている感じ。
葉底
お茶をつくっているときにここまで意識しているわけではない。
例えば、揉捻をするときになってなんとなくの直感が”適度”を決めているのだが、そのなんとなくの直感の背後では、無意識が自分の奥深くに潜んだ美意識を引っ張り出してくる作業があるのだろうと思う。
祈享の老板と会話をしても、こうした内容は一切出てこない。
自分のことが自分でもよくわからないままつくっているから。お互いに。
そして、つくったモノに知られざる自分が見えるカタチになって現れる。
モノづくりは面白いなあ。

ひとりごと:
わからないままつくるべし。

祈享易武青餅2014年 その8.

製造 : 2014年04月02日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 京都 梅干壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
梅干し壺
餅面
鉄瓶

お茶の感想:
昨日の味を覚えているうちにこの茶。
+【祈享易武青餅2014年 その1.】
梅干壺に保存している。
蓋があってちょうどよい。
内飛び
熟成5年目。内飛に使われている一枚葉の色に赤味が加わった。
この茶葉も一扇磨の茶地から採取されたもので、色の変化が熟成度を現わしていてよいよな。
ま、自分のお茶にはしないけれど。
一煎め
1煎め2煎めくらいまでは製茶の粗の焦げ味が邪魔をする。
このときはまだ小さめの鉄鍋を使っていたので仕方がない。萎凋をしっかりして含水量の少なくなった茶葉を焦がさずに殺青するのは難しいだろうから。
茶葉の個性と道具と技術と身体のバランスって大事だな。
茶湯の色
このお茶は少々長めに蒸らしても茶湯の色にそれほど赤味が加わらない。
熟成5年目でこれはちょっと変化が遅いか・・・。
火入れがしっかりしていて、”生”の要素が少なくなっているのかもしれない。
お茶の味も前回飲んだときからどれほど変わったのかがよくわからないくらい。
だが、自分はこのくらい火入れのしっかりしたお茶のほうが熟成味に濁りが加わらなくて、清らかさを失わないと見ている。
また、体感も優しく落ち着いた雰囲気があると感じる。
祈享の老板は海南島生まれの田舎育ちだから、このへんの感覚はわからないかもしれない。厳しい見方だけれど、そうだから優れた美意識を持つプーアール茶が近年には無い。
お茶づくりやお茶市場をとりまく人間たちの背景が影響するから現実は厳しい。
農民がお茶をつくって土豪(文化や教養のない成金)がお茶を買う現在の高級プーアール茶市場では、本当の高級茶は生まれないだろう。
葉底
でも、マニアはそれで良いのだよな。
みんなが価値をつけていないものに独自の視点と深い考察とで価値を見出す。高級になりたくても高級になれない現代プーアール茶のその背景がまた面白くて勉強になる。
マニア頑張れー!

ひとりごと:
他人の認めた高級で自分も高級になっちゃおうなんて甘い考えだよな。
まったく。

祈享易武青餅2018年 その1.

製造 : 2018年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶と炭火
鉄瓶

お茶の感想:
このお茶の2018年の春の新作。
+【祈享易武青餅2014年 その1.】
上海に立ち寄って老板にサンプルをちょっとだけもらってきた。
その場でも飲んだけれど、すばらしく良い出来だと思った。
農家から土地の権利を借り上げて、生産量を控えて茶葉の質を上げる。
ひと山まるごとの規模である。
森の木を切らない。茶樹の枝を剪定しない。土に鍬を入れない。冬に老葉の一部を落とす。春と秋の旬だけ采茶する。その場で製茶する。
漫撒山の国有林の森の中でこの理想を実現しているのはこのお茶だけ。
5年目となる2018年は森と茶樹をいたわる効果が明らかになっているはず。
茶葉
茶葉
写真ではその色の調子がわからないが、同じ漫撒山の刮風寨の標準と比べると白っぽい。
刮風寨の単樹2号に似た品種が多いということか。
+【刮風寨単樹2号2018年 その2.】
茶葉の色が色とりどりなのは萎凋が良いから。
これ以上萎凋したら乾燥しすぎて殺青が難しくなるというギリギリを攻めていて、茶葉に殺青の熱が入ってほんの数十秒間の40度から70度の温度帯で軽発酵の変化が起こったその色。
大きめの鉄鍋に6キロの鮮葉を一度に殺青するらしいが、萎凋で水分の少なくなった茶葉を焦がさずに炒るためには、この量でなければならないバランスだろう。
国有林の森の中にキャンプして製茶しているから、采茶してすぐ萎凋台で涼干される。殺青は萎凋の仕上がり次第、深夜であっても行われる。
お茶づくりの夢を叶えている。
しかし、国有林の中で製茶を今後も続けられるかどうか・・・、規制が年々厳しくなっているので森の中で火を起こしたり寝泊まりするのが許されなくなるかもしれない。鮮葉を村まで持ち帰ることになれば、その道のりは徒歩とバイクで1時間以上かかるので、刮風寨でわれわれがしているのと同じになる。
この萎凋の微妙な仕上がり具合を再現するのは難しい。
茶湯の色
お茶の味はこれにちょっと似ている。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
刮風寨茶坪の中では珍しい小さめの茶葉の品種を選んだのと、殺青後の渥堆軽発酵が『祈享易武青餅2018年』の萎凋に似た効果を得ているのだろう。
似ていないところは、香りに気品のある感じと軽快な風味。
一扇磨の特徴である。
あと、揉捻をそれほどしっかりしていないところが似ていない。
揉捻をしっかりすると香りに甘味が加わるが悶々としてヌケが悪くなる。スカーっと晴れた空に吹くそよ風ではなくなる。
もともと一扇磨のお茶は漫撒山の中では甘さ控えめで軽快な苦味が持ち味なので、その個性を活かした製茶なのかもしれない。
茶湯の色4煎め
試しに4煎めに5分ほど抽出したら茶湯の色に赤味が出た。
この色の変化から見て殺青の火入れは浅めに仕上げてある。”生”が残っている。
圧餅の蒸しの火入れも控えめ。
祈享の圧餅は易武山のそこそこ大きな工房に依頼して行われているが、ゆるい圧延に仕上げるよう注文してあるから蒸し時間は短い。
この点で、自分の家の厨房で圧餅している『刮風古樹青餅2018年・黄印』との違いがある。
しかし、ここまで濃く抽出すると苦すぎてバランスが悪い。一扇磨のお茶だからこれでいい。
葉底
葉底を見てわかるように刮風寨のと比べて茎の部分が細い短い。
理屈からしても茎の部分にある糖質が少ないだろうから、味のバランスはやや苦いほうに傾くはず。
活かすも殺すもお茶を淹れる技術とセンスの問題。茶葉の個性の見極めが大事。
2017年から、易武山に倉庫を構えて長期熟成させているらしい。
温かい気候のほうが熟成に良いという考え方だが、自分はそれには否定的で、上海や日本のほうが良いと見ている。証明するために1筒7枚単位のこのお茶を買うのは高くつきすぎるから黙っておいた。
春の生産量は300キロほど。
単純計算して1日約20キロのペースでつくったらしい。この品質でこの生産量を実現しているのは、このお茶だけ。

ひとりごと:
宝物は水の流れで姿を現して水の流れで姿を消すのだ。
入手しておいたら良かったと後悔するかもしれないな。


茶想

試飲の記録です。

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