プーアール茶.com

易武荒野大餅2013年 その3.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 農家+易武山工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶

お茶の感想:
辺境のお茶どころとしての長い歴史に培われた社会環境により易武山の人はウソつきなので、このお茶にはなにかカラクリがあるだろうと出品してからも疑いが晴れない。しかし、餅茶の内側に硬く育った「黄片」(一般的にはハネる)を取り除かずに混ぜているくらいで、その他に問題は見当たらない。黄片の様相から見ても早春の茶葉に違いなく、それならむしろ香り高いから、野性味あるお茶としてマイナス要素にはならないだろう。
いちばん警戒したのはブレンド。比較的量産できる台刈りした農地の古茶樹の茶葉を混ぜて、コストを落としているかもしれないと疑ってみたが、一般的な易武山の茶葉よりも格上の質であることは明らかで、格下の茶葉のブレンドは見つけられない。
易武荒野大餅2013年プーアル茶
ただ、ありのままの価格。安くないのだ。
春の4月の有名茶山の古茶樹の、その中でも上質なほうのお茶が秋の10月になっても現地にまだ残っているのは珍しい。理由はひとつ。安くないからだ。
工房は意図してカンタンに売らない方針でいる。新しく建てた倉庫の熟成に自身があるらしく、何年か熟成させて、もっと高く売るつもりかもしれない。
逆に見ると、原料の茶葉の素質に自身があるということかもしれない。
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶
今日はサンプルと餅茶を崩したのとを比べてみた。
(サンプルと製品が異なるのはよくあることだから。)
色の出方がちょっとだけ違ったが、それは采茶の日が異なるとか、採取した茶樹が異なるとか、そのくらいの理由で、飲んでみると味も香りも同じ。製品のほうが香りが良いのは保存状態が良いからだと思う。湿度の低い乾倉の味。
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶
アピールの強いお茶ではない。
これといった個性はない。
そこがまた鑑定を難しくしている。
例えば「落水洞」のお茶は「落水洞」の個性がはっきりしなければ、たとえ本物でもパスする。ところが、このお茶「荒野」は易武山としての個性はあるものの、その一帯の中のどの地域かを特定できるほど際立ったところはない。
水平鍋で炒った特徴の「火味」があることは前回の記事で書いたが、もうひとつ、製茶の工程の「萎凋」の時間が短すぎるという問題がある。
電気もない山小屋に鉄鍋を持ち込んでの作業は、まだ空の明るいうちに殺青を済ませることになるので、おのずと萎凋の時間が短くなる。本当に山奥で作業しているのだ。
萎凋で香りが開いていないから、採取地による香りの特徴が隠れて没個性になる。
静かな表現のお茶。

ひとりごと:
易武山の人はウソつきなので、しっかりお茶の勉強をさせていただける。
これからもこの調子でお願いしますと言いたい。

漫撒古樹青餅2013年・緑印 その12.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山瑶洞古茶樹春茶
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武山プーアル茶
易武山プーアル茶

お茶の感想:
西双版納のお茶は熱帯雨林のお茶。
乾燥した空気や強い太陽光を嫌う原生の品種。
森林を伐採して農地を広げ、日当たりを良くして茶葉をたくさん産出させると、じわじわ風味が変わってゆく。
どう変わるのかうまく言えないが、なんとなくスッキリしない感じ。茶樹の苦しみが味ににじみ出る感じ。
世界に普及している茶樹の多くは品種改良がすすんで、比較的乾燥した空気や、強い太陽光に慣れている。
影を好む熱帯雨林のお茶は希少になりつつある。
易武山の甘いお茶は、熱帯雨林のお茶。
やわらかい印象で女性的と言われることもある。
飲んでみたらわかるが、実は甘味が強いわけではない。甘味に係る成分は他のお茶に比べて少ないほうかもしれない。
それでも「甘い」印象があるのは、お茶の味の構成によるところがあると思う。
例えば、味の空白。舌や喉に感じる水の密度。ピリピリくる辛味。すっと消える苦味・渋味。内側から薫る「内香」。冷めゆく湯に薫る「涼香」。・・・などなど。甘味があるように錯覚させる。脳は甘いお茶と覚えていて、つぎに飲む時にはパブロフの犬のような条件反射で唾液を分泌させる。
易武山の有名寨子の「落水洞」や「麻黒」の価格が落ちてきている(周辺の刮風寨や弯弓に比べると値上がり率が低いという意味で)。1980年代から少しずつ進んできた森林の伐採や台刈りによる茶樹の矮小化、さらに外地から買ってきた苗を植えての新しい農地開拓は、2013年の古茶樹ブームでピークを迎えた。それと同時に西双版納のお茶らしさを失った味に市場は厳しい評価をつけたと思う。
しかし、山には必ず例外がある。
ある農家はこの自体を予測していて(過去に経験していて?)、森林のお茶を残している。春の季節に一軒の農家につきどんなに多くても100キロ以内の晒青茶。1本の茶樹から採取できるのが1キロから2キロの晒青茶としたら、およそ70本の大きな古茶樹を森の中に所有していることになる。
このお茶には特別価格がつく。
革登山プーアル茶
(写真は革登山の森の中。影にある茶樹がわかるだろうか。)
革登山プーアル茶
(写真は革登山の森林が伐採された農地。)
先日紹介した『易武老街青餅2014年』の製茶工房が、2013年春の麻黒の森の古茶樹から採取した茶葉でつくった餅茶のサンプルを持ってきた。
森林の環境や茶樹の健康具合がいかほどかを見るのにピッタリなお茶がある。
+【漫撒古樹青餅2013年・緑印】
このお茶と比べてみた。
漫撒古樹青餅2013年・緑印と易武麻黒青餅2013年
漫撒古樹青餅2013年・緑印と易武麻黒青餅2013年
餅面を見て、実は結果がわかっていた。
この品種においては、新芽・若葉は日照が良い所ほど短時間で硬く成長しやすい。まだ大きく育たないうちに硬くなり、製茶工程で黄片になる。
日照が悪いところほど柔らかさを保ちながら大きく育つ。森の中の弯弓のお茶がまさにそれで、手のひらサイズに育ってもまだ柔らかく、製茶後に黄片にならないことがある。
弯弓のプーアル茶
黄片にならずとも、新芽・若葉の硬度や弾力が異なるのだろう。餅茶に圧延加工した時に、餅面(表面にくる茶葉の様相)にそれが現れる。
2010年の当店オリジナルの易武山のお茶『易武古樹青餅2010年』は、一軒の農家で1ヶ月ほどかかってつくった晒青毛茶を混ぜあわせないままに圧餅加工したので、一枚一枚のお茶の味に差が現れた。
+【易武古樹青餅2010年】
易武古樹青餅2010年プーアル茶
易武古樹青餅2010年プーアル茶
この餅茶面に現れている違いがそれ。
以下は今日の試飲。『麻黒』と『緑印』。
漫撒古樹青餅2013年・緑印と易武麻黒青餅2013年
漫撒古樹青餅2013年・緑印と易武麻黒古樹青餅2013年
漫撒古樹青餅2013年・緑印と易武麻黒古樹青餅2013年
左: 易武麻黒古樹青餅2013年
右: 漫撒古樹青餅2013年・緑印
結果はやはり『緑印』に軍配が上がる。
香りの強さは同じでも、『緑印』の香りにはツンとした刺激がある。
『緑印』の苦味はサッと消えて、『麻黒』の苦味・渋味はともに残る。
甘味のボリュームはむしろ『麻黒』のほうが大きいが、甘い印象は『緑印』に宿る。
「日当たりの良いほうが薫る」とうそぶく農家や茶商もいる。たくさんつくってコストを落として安くして売るのが商売の良心。
しかし当店は森林を大事にすることにした。熱帯雨林のお茶の美しさに惚れたのだ。

ひとりごと:
雨で数日は足止め。
西双版納は雨
今年の秋は、最後の最後にちょっとだけ残ったのを拾いにゆくのが精一杯だと思う。

易武荒野大餅2013年 その2.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 農家+易武山工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武荒野大餅2013年プーアル茶

お茶の感想:
易武老街のこのお茶は、
どちらかというと易武山を代表する麻黒よりも漫撒山(旧易武山)のおっとりした表現があると感じて、手元のこのお茶と飲み比べてみた。
+【丁家老寨青餅2012年】
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
丁家老寨青餅2012年プーアル茶と易武荒野大餅2013年プーアル茶
左: 丁家老寨青餅2012年
右: 易武荒野大餅2013年
今日の『丁家老寨青餅2012年』は石鹸のような華やかな香りが前に出て、ややアピールが強かった。「今日の」というのは、明日はまた違うかもしれないから。
このお茶は揺れる。熟成2年目でゆっくり揺れるようになったので明日はほぼ同じかもしれないが、10日後はわからない。
自然のままに育ったお茶ほど、樹齢の古いお茶ほど、揺れは大きい。
おそらく『易武荒野大餅2013年』も揺れるだろうから、評価に時間を掛けないといけない。
今日この2つを比べるとやはりよく似ていたが、『易武荒野大餅2013年』はとくに火味が強いことに気がついた。
「火味」。
焦げ味にも似ているし、煙味にも似ているが、ちょっと違う。くぐもったような火そのものの香り。メラメラユラユラ炎が揺れるように味の輪郭をボカス。
かすかに曇った景色が美しい。
水平鍋によるものだと思う。
+【水平鍋】
この記事では蒸し焼き効果のことを書いたが、水平鍋の効果はそれだけではなかった。
水平鍋
水平鍋は焦げやすい。
この焦げが重要なのだ。焦げによってストレートな表現に霞がかかる。このことで景色に奥行きが増す。また、味わう人の想像力をかきたてる。
斜鍋
水平鍋が標準だった易武山でも、近年は斜めに備えた「斜鍋」が増えてきた。焦げのないクリアーな味。
厳しい見方かもしれないが、この背景にはお茶ファンの鑑賞力の衰退があると思う。
新しいプーアール茶ファンは減点方式でお茶の味を評価する。
焦げ・渋味・濁り・煙味。本来は美しいのと嫌な感じのと、微妙な判定のあるべきこれらをまとめて欠点とする減点方式の見方は、誰にもわかりやすく、公平さがあるようにも思える。そこがウケているのだろう。
楽なのだ。本来お茶の味の評価はしんどい。お茶を試しているつもりでも、いつのまにか自分の鑑賞力が試される。他人がどう言おうが自分がどう見るか。ほんとうに正直な見方なのか?自分自身をも疑うことになるのは疲れる。
カンタンに物事を見ること。公正な基準をつくること。スポーツのルールのようなフェアな観点は西洋から来たのかもしれないが、お茶は東洋に生まれたもの。
侘び寂びがまだ生きているのだ。

ひとりごと:
『易武荒野大餅2013年』をつくった工房は、近年は焦げ味が嫌われることを知っていて、それでもなお水平鍋を使い続けることを選んでいる。世間の評価を気にしていない。
こういうのは手ごわい。当店にとって将来は難しい敵になるかもしれないから、今からしっかりマークしておこう・・・いや、今からしっかり友達になっておこう。
『易武荒野大餅2013年』は仕入れて出品するつもりだ。1キロの大きな餅茶。びっくりするような価格になると思うが、いつかそれが安かったと知る時が来るだろう。

易武荒野大餅2013年 その1.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 農家+易武山工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
山へ行ってきた。
当初は紅茶をつくるつもりでいたが、ときどき小雨の降る天候のためにあきらめて、現場の人々と交流したり、まだ訪ねていなかった易武山の奥地「刮風寨」に足を運んだりした。
易武山刮風寨
易武山刮風寨
易武山刮風寨
易武山刮風寨
刮風寨(gua fen zai)。
この辺りでお茶づくりにもっとも古い山岳民族の瑶族の村。山が深くて、数年前までは3日かかって行く最後の秘境だったはずだが、行ってみるとがっかり。密造茶の基地のようになっていた。たいそう儲かっている様子で、2年ほど前の老班章がそうだったように、新しいコンクリート建ての家が村じゅうで建設中だった。
易武山刮風寨
易武山刮風寨
易武山刮風寨
「こんなところはダメ」
と、あきらめることもできる。
物事は核心に近づくほど複雑で困難になる。茶商はあらゆる段階で試され、篩いにかけられ、最後に残った者だけが宝石のような真実を手に入れるのだ。易武山のお茶はダメになった!と決めつけるのはカンタン。それはたしかに事実だけれど、別の事実もある。
刮風寨周辺からラオスの国境にかけての深い森に、まだ知られていない古茶樹の群生地がいくつか隠れている。この一帯は国有林のため農地の割り当てがない。極端に言えば採取した者勝ち。周辺の村々の瑶族が山へ入って採取して、弯弓や刮風寨に持ち込むと高級茶に化ける。
この辺境地のお茶を直接狙う動きが出てきた。
人を雇って深い森に鉄鍋を持ち込んで数日間お茶をつくる経費と、その間に他のお茶をつくる機会損失を考えると、割に合わない仕事になるが、それでも乱獲によって本来の風味を失った有名茶山の茶葉を扱うよりもずっとましなお茶がつくれる。
易武荒野大餅2013年プーアル茶
易武荒野大餅2013年プーアル茶
『易武荒野大餅2013年』。
名前を「易武荒野」としたのは適当な地名がないため。易武山の麻黒の一帯でもなく、弯弓のある漫撒山の一帯でもなく、刮風寨の一帯でもない。地図には無いけれど易武山老街からラオスへ続く山道があり、さらにそこから道なき山へ入って数日掛けて茶摘みをする。
易武山の甘いお茶。
杯に口を近付けただけで、この味を憶えている人なら反射的にヨダレが出てくるだろう。
たしかに今まで飲んだことのある易武山のお茶とはちょっと違った風味。易武山の麻黒の一帯でもなく、弯弓のある漫撒山の一帯でもなく、刮風寨の一帯でもない。葉底(煎じた後の茶葉)の茶葉がやや小ぶりで茎が短いのにも特徴がある。
手元にあるサンプルの中ではもっとも近い(かもしれない)このお茶と比べてみた。
+『瑶郷古樹青餅2014年』
易武老街青餅2014年プーアル茶と瑶郷古樹青餅2014年プーアル茶
易武老街青餅2014年プーアル茶と瑶郷古樹青餅2014年プーアル茶
易武老街青餅2014年プーアル茶と瑶郷古樹青餅2014年プーアル茶
左: 瑶郷古樹青餅2014年
右: 易武荒野大餅2013年
風味の系統は似ていても、こうして比べると明らかな違いがわかる。
『瑶郷古樹青餅2014年』は薫る。味も濃くてわかりやすい。そして後味が残る。
『易武荒野大餅2013年』は「無」の味。内包する香り。そして後味が消える。消えてから、味や香りの幻を見てしまう。
易武山のお茶がかつて高級茶となって世界中に売れたのは、甘いというわかりやすい特徴のためではない。むしろ姿の見えない味や香りの美しさにお茶ファンは心を動かしたのだ。
この姿の見えない味を得るためには、易武山でなければならない。深い森に入らなければならない。古茶樹でなければならない。周辺の森に人の手が加わることで日当たりが良くなったり、茶樹の幹を切って短くしたりして品種の特性が変ると、たちまち味や香りが姿を表わす。
姿の見えない味を表現するために、山の人は労力を費やし、茶商は忍耐力と経済力を試される。

ひとりごと:
漫撒山
漫撒山
漫撒山
プーアール茶づくり
お茶は大学。
あらゆるところであらゆる課目が開講中。

老瑶古樹青餅2013年 その2.

製造 : 2013年4月
茶葉 : ラオス古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒山工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
昨日の「ひとりごと」の話のつづきになるが、近年のお茶の味が変化してきているのは、お茶を飲む人の価値の求め方の変化があるかもしれない。
ちょっと寄り道してこの話から。
雲南省は山の高低差で、年中いろんな野菜や果物ができる。地元に流通する少量生産モノが多くて、なかでも山のおばあちゃんが裏山から採ってきたものや自家菜園で育てたのがあって、朝の路上市場でそれを探すのは楽しい。
柚子
柚子が旬。
大量生産モノは小型トラックで売りに来て街道沿いに列をなしている。山のおばあちゃんのは朝の路上市場で風呂敷の上に数個並べられる。
今日のこれは当たり!だった。
厚い皮を剥くだけでにじみ出る深い森の空気。
味をしめてまた買うとハズレることもある。なにが違うのかよくわからない。採取するタイミングなのか、木が違うのか、とにかく山のおばあちゃんのは野菜にしても果物にしても品質が安定しないのだ。大きさや形や色だけでなく、味までも安定しない。甘いか酸っぱかくらいの差もあれば、食えるか食えないかくらいの差のときもある。例えば、割ってみたら虫だらけとか・・・。
柚子
その点で大量生産モノは安定している。お金を使うことに公正を求める人には、スーパーマーケットに並ぶ品は良心的とも言える。山のおばあちゃんのは価値をはるかに超える品質の日もあれば、価値に満たない日もある。
良し悪しのわかる目利きになると損はしないが、あらゆる野菜や果物について目利きになるのは難しい。地元の人達は品質のムラを理解していて、何度も買うからトントンと考えているのかもしれない。
それが自然を理解するということかもしれない。
昔のプーアール茶にもこのようなムラがあって、マニアはかえってそれを楽しんでいた。「餅面の光沢」とか「茶杯に映る金冠」とか、今でもときどき言われることがあるけれど、美味しいお茶の法則みたいなのを独自に見つけて目利きになるのも楽しかった。
有名銘柄の高級茶にさえ昔は良いのと悪いのとがあって、価格の差は品質の差よりもまだ小さかったから、数年前までは当店でも仕入れることができた。今は価格が公正すぎてまともな老茶は利幅が取れないので仕入れるのは難しい。卸売部に出品中のはちょっと視点を変えて、多くの人がダメと思って残っているから比較的安く拾えているのだ。
近年になって西双版納の新しいお茶の味が急激に変わってきている。
古茶樹の価格が高騰して今までにはなかった価格帯となったこともあるが、それよりも、新しいお茶ファンの金額に公正を求めるチカラが大きくなり、その圧力がお茶づくりの現場にまで届いて、品質を変えつつあるのだと思う。
お金を使う側からしたら当然の権利ではあるけれど、人間社会で当然の権利を主張するほどに、自然社会にある茶樹はじわじわ人工的に変わらざるをえないだろう。山のほうを向いて仕事をしていた人たちが、お客様のほうを向いて仕事をするようになるだろう。
最近はタオバオ(中国版のAMAZONや楽天のようなもの)などのネット販売も多くなり、店がお客様の評価を下げないために簡単に返品に応じているが、そんなに短時間で良し悪しを見極められないこともある。逆に言えば、短時間で見極められるお茶だけが市場で評価されることになる。
そして、お茶ファンとしては本当は望んではいなかった結果になるだろう。
たとえ分かっていてもこの流れは止められない。
今日はこのお茶。
【老瑶古樹青餅2013年】
老瑶古樹青餅2013年プーアル茶老瑶古樹青餅2013年プーアル茶
原生の品種は薫っても薫らなくても苦くても甘くてもどちらでもよい。実は目立たないだけで、焦げも生焼けもある製茶が妖しい魅力を醸し出していることを見逃してはならない。煎を重ねるほどににじみ出る滋味はつくれるものではない。
ちなみに、2014年の春のは製茶がむちゃくちゃで、ちょと腐っている部分もあったりしてあきらめたけれど、後から聞いたらそれでも仕入れた商人がいるらしい・・・。
地元の茶商が製茶を良くするためにラオスの現地へ行くアイデアもあったが、もしかしたら放っておいたほうが良いのかもしれないと最近思う。
当店のお茶のラインナップでは、ちゃんとフィルターをかけて品質を保証する「単樹」のようなお茶と、瑶族の人がラオスから山を超えて売りに来るような品質の安定しないお茶と、2つを明確に分けてゆくことになるだろう。

ひとりごと:
北京の愛好家との一問一答。
鳳凰単叢
■「プーアール茶以外の他の高級茶をもっと勉強したほうがよいのではないか?」
少しずつ試しているけれど、一般的に高級茶はつくる人の意志が強く反映されている。プーアール茶はその逆で、つくる人の意志をむしろ消す方向で上等を模索したい。
自然な育ちの茶樹や素朴な製茶を求めるほどに、自分の思い通りにはならない。仕事の効率が悪かったり、大衆にウケル味にならなかったり、品質のムラが大きかったりする。
「この自然な状態に価値があります。」
と堂々と主張したい。
鳳凰単叢
■「高級茶づくりもまた思い通りにならない自然と付き合っているのでは?」
そうだけれど、つくり手がそこを丸め込んで、飲む人に知らせないようにしている。美意識が根本的に異なる。
飲む人がお金を払った上に、さらに学ぶ必要のあるお茶。これが正しいと教える先生のいないお茶。金額に公正さの欠けるお茶。
もしかしたらそういうのも必要かもしれない。
鳳凰単叢
■「自然のままならあなたの仕事の余地がないのでは?」
それは違う。今どき、山にも茶樹にも栽培にも製茶にも、人が都合よく変えようとする意図を避けて仕事をするほうが難しい。例えば、新品種の小さな茶樹を避けて、古い原生種の大きな茶樹だけを選んで采茶するのは、農家の都合の悪いほうへ仕事を導くことになる。ぱっとわかりやすい味や香りにならない古い原生種は試飲におけるアピールが弱いから、お茶屋さんにも都合が悪い。
植物を相手にする人の仕事は、自然に任せたら人工的になってゆく。わざとらしくなってゆく。偽物や粗悪品が増えてゆく。
やるべき仕事はたくさんある。
正山小種
■「春の旬を選ぶのもまた作為的なのでは?」
これも違う。春の旬が一年で一番良いから選んでいるのであって、春の旬を人工的につくろうとしてはいない。自分の思うように加工して整形美人にするつもりはない。
優れた素質を発掘する仕事さえも放棄したら、それはお茶にはなりえない。
正山小種
■「山の農家のむちゃくちゃな製茶をどう考える?」
プーアール茶は他のお茶に比べて生産地と消費地が地理的に遠く離れている。歴史的にそうだった。山の農家はお茶を飲むお客様のことなど知らない。お客様の顔色を伺うことができない。だから自由奔放で、正しさが求められず、品質は安定しない。
安定しない結果をありのままにお客様に説明する手もあるし、ブレンドで紛らす手もあるし、現場の製茶を専業化して農家から切り離す手もあるだろう。どれが良いかは、山やお茶ごとに個別にじっくり検討するべきだと思う。

漫撒古樹青餅2013年・緑印 その11.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山瑶洞古茶樹春茶
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗

お茶の感想:
先日紹介した『易武古茶2014年』は、易武山刮風寨に近い森の中のお茶だということがわかった。それなら当店のオリジナルのこのお茶に近いかもしれない。
+【漫撒古樹青餅2013年・緑印】
一度比べてみようということになった。
「緑印」と略して呼んでいるが、本家本元の「緑印」はこちら。
+【七子小緑印圓茶7542の散茶】
現在もしも確かな本物が取引されたら1枚10万元はすると思う。
1970年代の配方(等級をいったん分けてから圧餅のときにブレンドする)のお茶なので、当店の「緑印」とは系統が異なる。しかし、共通点があるかもしれないのだ。
現在の「刮風寨」や「弯弓」は、易武山一帯で一番高値をつける茶葉の採れるところだが、1970年代の生茶の高級茶、例えば「藍印」・「緑印」・「黄印」にそんな地名は出てこなかった。『七子小緑印圓茶7542』の原料となった茶葉は易武山麻黒村ということになっている。しかし、麻黒村の茶農家が自分の農地の晒青毛茶(プーアール茶の原料となる半加工の茶葉)だけを国営メーカーに提供していたのではない。当時は麻黒村から歩いて2日かかったとされる瑶族の村「刮風寨」から運ばれてきた晒青毛茶を、麻黒村で転売していたのだ。
刮風寨の2014年9月の晒青毛茶
(刮風寨の2014年9月の晒青毛茶)
晒青毛茶の形や色には明らかな違いがあっただろう。
茶葉の等級は、一般的には新芽・若葉・大葉と成長に合わせた大きさの違いで分ける。例えば早春の一番の新芽は小さく細いが、旬を外した雨の季節の新芽は太く長く育つ。この場合はもちろん早春の小さな新芽が上等。
しかし、易武山での等級は茶樹の育った環境、栽培方法、それにともなう品種の違いにより、茶葉の大きさだけでは割り切れないものがあったはずだ。
つまり、1970年代から1980年代の孟海茶廠の配方のお茶には、刮風寨の晒青毛茶も異なる等級としてブレンドされた可能性がある。
今や再現不能となっている老茶の味を再現したい当店にとって、茶葉の採集地の解明がますます重要になってきている。製茶や圧延加工によって生じる差よりも、茶葉の素質による差のほうがずっと大きいことがはっきりしてきたからだ。老茶づくりの実績のある「易武山」・「象明山」・「漫撒山」一帯の山々の、どのあたりの古茶樹がどのような個性を持っているのかを詳細に把握したい。手元にサンプルを増やして経年変化を追いかけると、ピタッと一致する味を見つける時が来ると思う。
経験のある広州の茶荘の注目する茶葉と、当店の手元の茶葉とが一致するのは偶然ではないのかもしれない。
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
易武古茶2014年と漫撒古樹青餅2013年・緑印プーアル茶
左: 易武古茶2014年と
右; 漫撒古樹青餅2013年・緑印
写真のとおりに似ている。
葉底の色の違いは、茶樹の日照時間の違いを表している。
外地から持ち込まれた品種は少ない一帯で、原生に近い品種が純血を保って、葉の形や色が比較的揃っている。
味は「緑印」のほうがちょっと甘い。「易武古茶」にはやや渋味があり、それが香りと相まってキリッと清涼感を与える。しかし、誤差。基本的にこの2つのお茶は同じ。水の中に香りの成分が内包されたまま姿を表さない。薫らないお茶。苦味・渋味に化けたその成分がタダモノではないと感じられるようになるには、舌の学習が必要かもしれない。今は解らなくても、熟成したら姿を表わすときが来ると思う。5年後か10年後か、それとも30年後かはわからないけれど。

ひとりごと:
老茶の飲み比べ。
7582大葉青餅70年代プーアル茶と7581五輪金花青磚91年プーアル茶
左: 7582大葉青餅70年代
右: 7581五輪金花青磚91年
この差は大きい。
『7582大葉青餅70年代』は易武山のお茶。
『7581五輪金花青磚91年』は臨滄もしくは布朗山のお茶。
老茶は易武山の味が圧勝すぎる。
単独で飲めば、臨滄や布朗山の苦い味もそこそこ楽しめるだろう。しかし同時に比べるとダメ。
比較するに値するサンプルを的確に集めるのが茶商の仕事。

漫撒山一扇磨の散茶2013年 その4.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨野生茶
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武山のお茶飲み比べ
易武山のお茶飲み比べ
易武山のお茶飲み比べ

お茶の感想;
広東の友人が地元広州の茶荘を贔屓にしたいらしい。
しかし、まだ知り合って日が浅いので不安があり、この茶荘が手がけた易武山のお茶のいくつかを鑑定してほしいということになった。本人の知らないところでは失礼なので、広州の茶荘の老板に相談して、「ふじもとの標本と比べてみる」という話をして、しかるべきサンプルが送られてきた。
広州の茶荘の老板とは自分も易武山で会っていて、直感的にあまり人を騙しそうな感じではないのと、長年のキャリアがあることから、安心して鑑定できると思う。
鑑定は、誰かにとって有益となり、別の誰かにとって不利益となることがあるので、簡単には応じられない。
また、自分の知らない産地のお茶について適当な事を言うと、こんどは自分にとって不利益となるので、よほど熟知したお茶についてしか語れない。
広東の友人もそのあたりは心得ている。
そして、実は結果はすでに見えていた。
広州の茶荘は有名茶山ごとに100キロ以上つくっている。
自分の手元のは1キロから20キロ以内のを選んでいる。
たとえ同じ茶山の同じ斜面の同じ古茶樹から採取されたお茶であっても、摘み取りのタイミングが10日も違えばクオリティーは変わる。また、100キロつくるうちには製茶のミスもあれば天候不順もある。質が落ちて当然。
広州の茶荘のサンプルは3種。
「落水洞」・「一扇磨」・「弯弓」。
詳細はさておき、落水洞には落水洞の、一扇磨には一扇磨の、弯弓には弯弓の「らしさ」が大事という話をした。山に境界線はない。例えばちょっと離れたところの弯弓でも、弯弓の性質が強く現れていたらそれはホンモノに値する。
丁家老寨の原生品種と落水洞
丁家老寨の原生品種と落水洞
左: 丁家老寨の原生品種2012年
右: 落水洞2014年(広州の茶荘)
一扇磨の野生茶と一扇磨の栽培茶
一扇磨の野生茶と一扇磨の栽培茶
左: 一扇磨2013年
右: 一扇磨2014年(広州の茶荘)
弯弓と弯弓
弯弓と弯弓
左: 弯弓2014年
右: 弯弓2014年(広州の茶荘)
葉底
本来は同じ年、同じ茶山のと比べるべき。
ところが、2014年の春はちょっと難しくて、当店は良いのが少ししか入手できなかった。難しいから諦めるのと、難しくてもなんとか揃えるのとでは、プロ意識ちがうかもしれない。実際に収益では10倍以上の差があるだろう。
このことを考えるとため息が出る。来年はもっと難しい。価格は下がるがクオリティーはもっと下がるだろう。なぜそう予想するかというと、過去に2007年のプーアール茶バブルの後に、翌年の2008年はお茶の質が全体的にダメになったからだ。高値の成功体験の忘れられない農家が、価格が下落しようが何しようが乱獲しすぎるのを止められないのが原因と思う。車も家もこれからはじめて買う人達だから、稼ぎたくて仕方がないのだ。
今回の飲み比べでは、手元の一扇磨の個性がとりわけ光っていたので、もう一度比べてみた。
【漫撒山一扇磨の散茶2013年】
漫撒山一扇磨の散茶2013年プーアル茶と飲み比べ
左: 漫撒山一扇磨の散茶2013年
右: 広州の茶荘の一扇磨
見てのとおり、まず晒青毛茶の形や大きさが異なる。
当店のは葉も茎も長い。全体的に大ぶり。
広州のは葉が細かくて、茎が短い。
一扇磨は200年以上前までは近くに村のあったお茶どころだが、現在は住む人もなく、山の中に残った茶が勝手に育っている。そんな野生育ちが魅力だったが、近年の市価の高騰により、森林の雑木を伐採して茶樹の採光を確保し、産量を増やすところから始まり、新たに苗を植えるところも出てきた。農地に戻りつつあるのだ。
村が近くに無いことには製茶が難しかったが、現在は性能の良いオフロードバイクが山道を急げば、鮮葉(摘みたての加工前の茶葉)を2時間で近隣の村や製茶場へ運ぶことができる。そうして製茶の精度は上がってきたが、そのかわり野生の特徴が失われ、栽培の特徴が現れてきた。
野生茶は新芽の発芽が遅い。
春の旬の古茶樹の茶摘みは3月1日頃からはじまるが、同じ品種の同じ茶山のものでも、野生状態で育つと一ヶ月遅れて4月1日頃からやっと芽を出す。森林の影にあるからひょろひょろと徒長する。茶摘みがあまりされないため枝の分岐が少なく、葉の数も少なく、大ぶりに育つ。
すなわち当店の一扇磨は野生育ちの特徴が現れている。
旬をハズした雨の季節もまた茎が長く育つが、その場合は芽が大きく育ち、色が白っぽくなり、かんたんに見分けがつく。
広州の茶荘のは採光が確保されて育った特徴がある。茶摘みが年に2回以上行われ、それにより枝分かれして茶葉の数が増え、産量が増え、3月の中旬頃から芽を出すので春の旬の収穫期間も長くなる。晒青毛茶100キロを確保できるのはそうしたカラクリがある。
一扇磨は一扇磨。
産地に偽りはない。無農薬・無肥料は当たり前。しかし、一扇磨が特別な価格をつけるのは野生茶の性質があるから。それが希少というよりは、その美しさを愛でたいからだと思う。
漫撒山一扇磨の散茶2013年プーアル茶と飲み比べ
試飲に同席した北京と広東の友人たちは、当店の一扇磨に軍配を上げた。
しかしそれは野性育ちのお茶の滋味や、内包されて薫らない香りの美しさを知っているからであって、何も知らなければ人は慣れた味のほうを選ぶだろう。分かりやすい濃い味はむしろ広州の茶荘の一扇磨にある。太陽の光をよく浴びた茶葉からつくられる成分には、味覚や臭覚が直接認識できる成分が多いのだろう。
茶が野生種から栽培種へと変化してゆく過程を、この試飲で見たような気がする。
昔の人は普段の食生活で山菜や果物や木の実などの野性味を口にする機会が多かった。それに慣れているからお茶の野性味も嗜むことができただろう。さらに、野性味の中に薬効の成分を見つけていたはずだ。
今、われわれのような一般的な都市生活者は、このような味を知る機会が少なく、慣れない味になりつつある。薬効成分は薬局や病院で求めるものになっている。
一扇磨の葉底
一扇磨の葉底

ひとりごと:
美味しいとか、好みとか、そういうのを超えて、鑑定可能なお茶には知恵があり、鑑定のプロセスそのものに価値があると思う。
しかし、今の時代に「鑑定」というと、いくら?と金額を問うことになって、また知恵は功利的な結果と結びつけられやすい。例えば、「古茶樹でこの味でこの価格なら安い!」みたいな。
このお茶の味はこういうところが美しい。
ここに個性がある。
育った環境の特徴が味に現れている。
昔のお茶の鑑定ではそんなことが大事だったのではないかと思う。
ちなみに、今回の試飲では値段のことは一切話題にならなかった。

漫撒古樹青餅2013年・黄印 その9.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印

お茶の感想:
このお茶、
+『漫撒古樹青餅2013年』
の「黄印」と「青印」は半発酵度が違う。
茶摘みから製茶まで参加して見ているのだから確かだ。
でも、それだけではなかった。
同じ丁家老寨の古茶樹の春摘みを使用したつもりでも、早生(3月上旬に若葉が育つ)と晩生(4月になってから若葉が育つ)でちょっと品種が異なる。「黄印」は早生の品種。「青印」は晩生の品種。
樹齢何百年になるのか今はもう誰も知らない古い古茶樹を選んでいても、茶山として歴史の古い丁家老寨の品種の混生状態はちょっとややこしい。
簡単に言えば、
「黄印」は易武山麻黒村に共通する早生の品種が多い。
「青印」は漫撒山弯弓に共通する晩生の品種が多い。
早生の品種は明代末期の1600年頃にこの地域に移植されたものが混じり、晩生の品種は瑶郷がまだこの山々をうろうろ移住していたときからすでに山にあった自生のものが多いと推測できる。もちろん早生と晩生の境目があいまいなので、はっきり分けることはできない。
しかし、茶摘みをしてたらその葉の色や形の違いははっきりとわかる。
丁家老寨の原生品種
丁家老寨の原生品種
(これは古くからある原生品種の特徴が見える)
ただし、深い森に囲まれた弯弓では山に水分が多く気温が安定しているため、晩生の品種でも早生の時期に若葉を出す。
そう。晩生の品種は茶葉に水分を多く持つ。この水分が製茶を選ぶ。水分が多いと製茶中の軽発酵が進みやすいので、無理をしないで軽発酵を受け入れる。その結果、緑茶よりも青茶(烏龍茶)により近付くことになる。
振り返ってみると「黄印」と「青印」は、はじめから2つのお茶をつくる計算があったわけではない。茶葉の水分の違いから製茶方法が2つに別かれたわけだが、これには品種の違いが原因にあったのだ。
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印
漫撒古樹青餅2013年プーアル茶の黄印と青印
左: 青印
右: 黄印
世界のお茶づくりは、イギリスがインドでプランテーションに成功した頃から、品種をひとつに絞ってゆくことで製茶を安定させる道を選んだ。人の思い通りに自然をコント―ロールする方向へ一歩進んだ。そのかわり製茶が固定されて、自由を失い、お茶づくりの進化はその時を境に止まったと言えるかもしれない。
西双版納はまだ止まっていない。

ひとりごと:
今年のテーマは「製茶」。
製茶の根本から問いなおしてやる。
知っていることに固執しないで、知らないことを増やして、もっと自由になるぞ。

漫撒古樹青餅2013年・青印 その14.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
漫撒古樹青餅2013年・青印プーアル茶

お茶の感想:
孟海の老師は「殺青」(鉄鍋炒り)による多少の焦げは気にするなと言う。気にしないで何年か放っておくと薄れて、消えることがあるからだ。
しかし、出来立てのときの焦げ味はよく目立ち、どうしても気になる。
このお茶もまた出来立ての時は目立ったので気にしていた。
【漫撒古樹青餅2013年・青印】
今日は広州のお茶仲間のリクエストでこれを飲んだ。
漫撒古樹青餅2013年・青印プーアル茶
漫撒古樹青餅2013年・青印プーアル茶
熟成1年半になる今は焦げ味などまったく気にならない。それどころか焙煎に似た芳ばしさが引き締まった印象を与える。逆にこれがあったほうが良かったと思える。もしかしたら、焦げた部分の成分が長期熟成には有効に働いている可能性があるとまで考えてみる。
もしも焦げを徹底的に嫌うのなら、とっくの昔に鉄鍋で手炒りする殺青は消えて、機械炒りになったり、蒸したり茹でたりして焦がさない製法へと変わっただろう。
お茶づくりは可能性の追求。
必ず誰かが試みたはず。それにもかかわらず変わらなかった。というか、変えられなかった理由があるのだ。
広州のお茶仲間は、地元広州や香港の店で飲んだ易武山のお茶とは雲泥の差だと、このお茶を褒めてくれた。
「やはり軽発酵をすすめた製茶が良かったのか?」
という質問に、こう答えた。
「丁家老寨には原生種の古茶樹がある。それだけを選んで茶摘みをしたから。」
出来たての時はわからなかったけれど、今ははっきりわかる。つまり、製茶技術よりも品種特性はもっと強くお茶の性質を決めるということ。小手先の技術ではどうにもならない「血統」の違いがあるということ。
「水に香りが内包されている。」
彼らはそう表現したが、まったくその通り。このお茶は実際のところ香りはおとなしい。しかし香りの予感が強くある。それが原生品種の特性。
焦げ味は人為的でないから嫌うというのは人の勝手。人為的に軽発酵をすすめた結果がたいした影響がないのなら、焦げ味もたいした影響がない。
孟海の老師はそういうことを言いたかったのかもしれないな。
漫撒古樹青餅2013年・青印プーアル茶
(どっちが原生品種かわかるかな?)

ひとりごと;
「なぜもっとちゃんと広告したり、試飲会で人びとにお茶の実力を紹介しないのか?」
と広州のお茶仲間が言うから、
「自分も今やっと分かってきたところなのに、どうやって?」
と答えた。それよりもお茶を理解してゆく過程をみんなと学べる道場を開きたいと言った。
「それは上海?北京?東京?」
と聞くので、
「今思いついたところ。」
と答えた。
人間にも品種特性があるのだ。

易武山落水洞の散茶2013春 その3.

製造 : 2013年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山落水洞古茶樹
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : プラスチック袋密封
茶水 : 京都御所周辺の地下水
茶器 : 大きめの蓋碗
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶

お茶の感想:
易武山落水洞のお茶は熟成させると独特の蜜味(蜜の香り)が出てくるが、1年経ったこのお茶にもそんな香りがかすかに出てきた。
+【易武山落水洞の散茶2013年】
この先蜜味はさらに熟してメープルシロップやバニラのような華やかさが顔を出すと思う。
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶
易武山落水洞の散茶2013春プーアル茶
易武山の「麻黒」と「落水洞」は山続きにあるが、お茶の味は若干異なる。
当初は製茶が違うと考えていたがそうでもない。
気候・土質・品種、そしてそれによって育ちの異なる茶葉の形状や内部構造が、製茶の結果に誤差を生む。また、落水洞の寨子(村)はすり鉢状になった山の谷底に位置しており、やや湿度が高い。このことも関係していると思う。

ひとりごと;
製茶をする場所の環境はお茶の味を左右する。
西双版納の春は短い。乾季から雨季へ。気温が上昇し、真っ青な空に白い雲が日に日に増えてくる。霞のかかった春の空は透明な夏の空に変わってゆく。
お茶の葉の成長もだんだん早くなる。製茶葉に吹く山の風はじわじわ暖かくなる。
一日一日のお茶の仕上がりが異なって当然。
曇り空のために茶葉が一日で乾燥しきらない日もある。
近年は農家が家を新築するついでに、製茶場の地面をコンクリートにするところが増えた。これによって放射熱が増えて、茶葉の乾燥は早くなったが、お茶の仕上がりに良い結果となっているのかどうか、ちょっと疑問に思っている。
製茶場
こういうのが理想。


茶想

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