プーアール茶.com

中茶牌65周年青磚03年 その1.

製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶
茶廠 : 中国土産畜産雲南茶叶進出口公司
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 昆明ー上海 紙包密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶

お茶の感想:
このお茶いい!
卸売部の、『中茶牌65周年青磚03年プーアル茶』。
渋い・苦い昔ながらの気骨ある風味。
唇の内側や歯茎がシワシワするほどの収斂味。
なのにまろかやでお腹への刺激も穏やかなのは10年熟成の賜物。
男のお茶だ。
なんといっても作意が無い。
「中国土産畜産雲南茶叶進出口公司」が下請メーカーに委託生産するときに、「なるべくいい茶葉を使ってね。」くらいのざっくりした注文しかしていないだろう。
原料となる晒青毛茶をつくる農家は、いつものようにお茶を摘んで炒って揉んで天日干しする日々の暮らしをしているだけで、とくべつ美味しいお茶をつくるつもりなんてなかっただろう。
下請メーカーも山の農家を回って、出来上がった晒青毛茶を有るだけ買い集めただけで、技術的な注文などしていないし、仕上がりのムラは混ぜ合わせて解決しただろう。よく混ぜるほど茶葉が切れ切れになって渋味が出るが、どのみち強く圧延して切れ切れになる。長期熟成したらまろやかになるから大丈夫。そういう粗っぽいつくり方だっと思う。
雲南の2003年は大陸でのプーアール茶ブームが来る直前で、まだ需要が限られていた。農家の生活は日本の時代感覚でいうところの明治時代。あるいは江戸時代。世界のお茶の故郷でありながら、世界でもっとも文明の後れたお茶づくりが残る聖地だったのだ。
だから適当なつくりでも生まれながらに素質の良い茶葉の集まることがあった。これを外の世界に運びだしたら珍しいくらいに強い味のお茶となる。
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
中茶牌65周年青磚03年プーアル茶
一方で外の世界のお茶はすでに経済の荒波に揉まれてお客様に喜ばれる味を追いかけている。有名なお茶どころでは有名茶師の手掛けるすばらしい技術のお茶が出てくる。ブランド力のある会社のマーケティングによって新しい味が出てくる。雲南も今そうなりつつある。もちろんまだ素朴なお茶もたくさんあるが、作意を持ったお茶に全体がひっぱられてキレイになってゆくのは自然な流れだ。栽培も製茶も人工的になってゆく。人工的な「オーガニック」もある。
作意のあるお茶は飽きる。
ミシュランで星の付くレストランの料理のようなわざとらしさがある。
数年前に新宿のSM倶楽部のオーナーさんと上海で食事をしたことがあった。(経済視察のツアーに来られていた。)そのときの話が思い出される。「女王様が演技できるのは叩かれて喜ぶオヤジがいるからであって、”痛えなコノ野郎!”と怒られてはサービスが成り立たないのです」。相席していた人たちはサラッと聞き流したが、自分はすごく納得した。女王様とオヤジの関係はいろんなところにある。例えば、漫才で笑いたい観客。結果が見えるプロレス。ファッションの流行。有名シェフの料理。大企業の上司と部下。みんなどこかSMごっこなのだ。
作意に満ちたお茶もそうで、そういうお茶に感動したい人がいるからこそ無駄に美味しいお茶がつくれる。だから文化が成り立つとも言えるが、都市生活における圧力の無いところから冷めた目で見ると、くすぐったくなる。
作意のあるお茶は疲れる。
美味しいものが食べたければ、近所の家がやっている小さな居酒屋でよいのだ。
それよりも早く家へ帰ってお茶漬けが食べたいのだ。
そう。つまりこのお茶は「お茶漬けの味」。
チカラが抜けていて、ほっとする。
世界のお茶の故郷は、お茶の味の故郷でもある。

ひとりごと:
昔の家庭を展示する博物館に「お茶漬け」が飾られる日が来る。
そのときには、雲南のプーアール茶は会社がつくるお茶になっていて、農家がつくるお茶ではなくなっているだろう。すでにそういう兆候がある。
農家の暮らしがつくるお茶。その独特の風味。
来年のお茶づくりのテーマは「製茶」にしようかな・・・。

宮廷プーアル熟散茶03年 その4.

製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納密封
茶水 : タイチェンライのミネラルウォーター
茶器 : サーモス真空断熱マグ
ミツバチ

お茶の感想。
『麻辣火鍋の薬味セット』の販売が今季もはじまった。
【麻辣火鍋の薬味セット】
ひとつ問題があって、郵便局が「豆板醤」を液体物とみなして郵送できなくなった。これからは乾物の薬味だけの販売となる。日本で市販している「豆板醤」はわからないので、次回日本に帰った時に天然醸造の味噌を手に入れて代替品を自作してみるつもりだ。イメージでは「豆味噌」+「四川唐辛子」+「酸っぱい漬物」を合わせてたっぷりの油で炒める。一日くらい寝かせたほうがよいかもしれない。漬物は保存料ゼロ・化学調味料ゼロのものを入手する。それがなければ自作する。
ところで、今年は15種ある薬味のひとつ「八角」を南糯山から入手した。
茶農家が山でひろってきて天日干しで仕上げてくれる。南糯山の「八角」は先祖が防風林として植えたものらしい。毎年秋に緑色の実を付ける。天然モノなので無農薬・無肥料。しかも山の高いところだからお茶と同じく薫り高い。
八角
八角
八角
もちろんオーガニックの認証はない。
少量すぎてそんなことはできない。しかし、オーガニックとは本来少量ずつ採れる副産物のことなのだ。自然の循環があるということは、ひとつの作物だけが集中的に育てられるということではない。生命の外殻をどんどん変えながら有機物質が穀物・野菜・果物・スパイス・薬草、家畜、虫、小鳥、獣などなどいろんな形になって循環している。山の人もまたその循環に輪の中にいる。
農作物と共にいろんな生き物が共存している。穀物にも野菜にもお茶にも虫がかじった跡があったり、虫がついたままになっていたり、後からまちがって虫が入ってしまうようなことは普通にある。鶏の羽毛だって入るし、もみ殻は大手メーカーのプーアール茶にさえある。
ところが、都市生活では虫に接する機会が少ないせいか、幼い頃は好きだったはずの虫がいつのまにか嫌いになっていて、そんなものが食べモノについて欲しくないと思うようになる。同じ山のものなのに「異物混入」などという言葉で悪いイメージを持つ。マーケットのそんな要求に合わせて、虫の痕跡の無いオーガニック食品が売られることになる。しかし上に説明したように虫の痕跡が無いということは自然の循環の輪が繋がっていないことになるから、本来のオーガニックではありえないはずなのだ。
そう言う自分も、上海から西双版納へ引っ越してきた当時はまだ少し抵抗があった。市場には毎日山の人が竹籠を背負って運んで来る野菜や果物がたくさんあるけれど、毛虫やダニみたいなイヤな虫がついているのをちょっと怖がっていた。山の小さなゴキブリだってついていることもある。市場の甘い果物に誘われたミツバチが飛んできて、首筋に止まるのを叩いてしょっちゅう刺されていた。ミツバチは塩分が欲しくて汗をかいた肌にとまる。それを知ってからは気にしなくなりめったに刺されなくなった。ミツバチがいるということは近くに受粉を待つ花があるということ。蜂蜜はお茶と同じで、薫り高さ・舌触りの細かさ・味のふくよかさ・余韻にいたるまで上には上がある。専業の養蜂家は少ないから他所の土地へ売れるほどの量はない。蜂蜜もやはり副産物なのだ。
オーガニックな食品を毎日食べたいのなら、いろんな生き物の輪を理解して歩み寄るしかないと思う。イヤな虫だけを抹殺して食べ物だけを頂くなんて泥棒みたいなことは許されていない。
自然の循環の輪はすべてを認識するのが難しいくらい様々な生き物が絡んでいる。役にたっているのかどうかわからないような虫もたくさん輪の中にいる。土の中の見えない世界では細菌類もたくさんいる。このことをわかりやすく教えるために古い農業の道徳は仏教となって殺生を禁じたのだろう。
虫や細菌に対してイヤなイメージを植え付ける広告でモノやサービスを売る業者はこれからも繁盛するだろう。国や大企業でつくる協同組合みたいな組織で「認証」された量産のオーガニックもますます増えるだろう。土のいらない水栽培の工業生産的野菜は外食では知らないうちに口に入るだろう。
都市における食糧危機は別の形で始まっていると思う。
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
今日は卸売部のこのお茶。
『宮廷プーアル熟散茶03年』。

ひとりごと:
チェンライ県のバス
チェンライ県のバス
チェンライ県のバス
自然栽培ピーナッツ
自然栽培ピーナッツ
市場で泥付きのまま蒸したピーナッツを買う。30円。
タイのチェンコーンからチェンライへのバスの道中のおやつ。
やはり虫食いのがあるけれど、そんなのは口に入れる前にわかるから問題無し。
美味しさだけじゃなくて、疲れがスッととれる効果もある。

宮廷プーアル熟散茶03年 その4.

製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
宮廷プーアル熟散茶03年と05年プーアル茶
宮廷プーアル熟散茶03年と05年プーアル茶

お茶の感想。
「宮廷プーアル茶」は数あれど卸売部で出品中(現時点)の『宮廷プーアル熟散茶03年』よりも美味しいのはめったにない。と言ったので、「宮廷プーアル茶」の飲み比べをしてみる。
今回は同じく孟海茶廠のもの。民営化後の2005年の品。
2000年頃から雲南の茶業の自由化がはじまって、国営大手メーカーもすべて民営化した2004年からはいろんなメーカーが「宮廷プーアル茶」を出すようになるけれど、「宮廷プーアル茶」といえば孟海茶廠なのだ。
それにはこういう経緯がある。
1973年に熟茶の量産初の品『73厚磚』を出したのは「昆明茶廠」だが、同時期に「孟海茶廠」も研究をすすめていて、熟茶製品をいくつか出品してくる。その中には高級茶路線のものがあった。
例えばこの品。
【7452七子餅茶プーアル茶】
1970年代から1980年代にかけての孟海茶廠は外貨を稼ぐための高級な生茶を中心につくっていたから、熟茶もその流れを汲むものがあった。なので、「宮廷プーアル茶」を出したのはもしかしたら孟海茶廠がいちばん早かったのではないかと思う。
熟茶はもともと生活のお茶。健康茶を安くつくって普及させることが目的だったから、元祖熟茶メーカーの「昆明茶廠」はどちらかというと等級の大きな粗い茶葉でつくられた銘柄ばかりだった。
微生物発酵の熟茶で高級茶をつくるのは意外と難しい。なぜなら、発酵に活躍する菌類は茶葉の刺激成分を嫌うから、その刺激成分が多い春の旬や新芽・若葉を完熟に仕上げるのはハードルが高いのだ。しかし高級茶というのはその刺激成分の強い春の旬の新芽・若葉をつかうのが常識。
「宮廷プーアル茶」の新芽・若葉だけを選り分けるのは発酵後に行われる。大きく育った粗い葉や茎といっしょのまま発酵させるので、一見しっかり発酵してるように見えても、選り分けて新芽・若葉だけにしてみたら、熟茶というよりは紅茶のような、微生物発酵というよりは茶葉そのものの成分変化による発酵のような味がする。ということが初期の熟茶づくりでは起こったのではないか?と推測できる。実際にそんな風味の熟茶が初期の銘柄にいくつかある。『7562磚茶プーアール茶』は三分熟茶(生茶)とされているけれど、これはもしかしたら未熟な熟茶だった可能性がある。
【7562磚茶プーアール茶】
熟茶の発酵技術が確立されている現在では、新芽・若葉もしっかり微生物発酵の風味に仕上げるのはそう難しくもなくなっている。全体的にしっかり発酵させたものが多くなっている。このしっかり発酵の技術は、孟海茶廠が業界全体をリードしてきたと思う。発酵の観点からすると孟海県の茶葉と地下水が、より発酵を促す性質があったのかもしれない。
そのようなわけで国営時代の2003年や民営化間もない2005年の「宮廷プーアル茶」なら、とりあえず孟海茶廠が定番ということになるのだ。
宮廷プーアル熟散茶03年と05年プーアル茶
宮廷プーアル熟散茶03年と05年プーアル茶
左: 宮廷プーアル熟散茶05年
右: 宮廷プーアル熟散茶03年 (卸売部出品中のお茶)
2005年のはチョコレート風味が強い。
2003年のはそれが少ない分スッキリしているけれど、陳香がある。
2005年のほうが、香りのせいでちょっと甘く濃いように感じる。それ以外は良く似ている。滑らかな舌触り。喉にすっと消える清らかさ。耐泡がすばらしくて、少なめの茶葉でも4煎か5煎まで風味はしっかりしている。5煎めになると2003年のほうが陳化の奥行きが感じられる。

ひとりごと:
生茶よりも熟茶のほうが長期保存に強くて失敗が少ない。今すでに美味しい熟茶はこれからもっと美味しくなることが保証されているようなものなのだ。『宮廷プーアル熟散茶』は壺に入れて蓋をしてさらなる陳化の風味を楽しむのにちょうどよい。
2007年のプーアール茶ブームの後から集めている人たちがこのことに気付きだしているせいか、昨年くらいから熟成年数が10年ほどになる熟茶がぐっと高価になった。市場の在庫が徐々に消えつつある。
この2005年のを今から仕入れて売ると、なぜか2003年のよりも高価になる。

宮廷プーアル熟散茶03年 その3.

製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納紙包み+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
西双版納
西双版納
西双版納
西双版納

お茶の感想。
「宮廷プーアル茶」は数あれど卸売部で出品中(現時点)の『宮廷プーアル熟散茶03年』よりも美味しいのはめったにない。
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
熱い湯でサッと。湯を注いで数秒以内。新芽・若葉のお茶はじっくり煮出してはいけない。逆にこれが黄片や茎の多いお茶であればじっくり30秒から場合によっては1分以上煮出したほうがよい。そのへんのコツがパッとわかる人はめったにいないから、ほとんどの人はこのお茶の味わいを知らないまま死んでゆく。

ひとりごと:
プーアール茶の熟茶は黒茶。黒茶は微生物発酵のお茶。
中国に微生物発酵のお茶は数あれど、プーアール茶の熟茶ほど「完全発酵」の奥地へ到達したお茶は他に無いかもしれない。この「渥堆発酵」という製法を手元で試してみてわかったのだけれど、熟茶の発酵度の深さはタダモノではない。
いろいろな黒茶を飲んでみると、プーアール茶の熟茶の味はなんとなくその延長線上にあるような気がするし、実際に飲んでみてやはり「お茶はお茶にちがいない」と思うし、それほど異次元のものには感じられない。しかしほんとうはもっと異次元なのだ。
発酵のお茶プーアール茶
実は、熟茶は茶葉の形を残したキノコだと言える。お茶の味のするキノコ。
「冬虫夏草」という漢方材に似ている。
冬虫夏草はある種の蛾の幼虫に寄生した菌が内部から虫を喰い殺してしまう。形はそのまま残すから干からびた芋虫に見えるけれど、中身はほぼ100%キノコ(菌)に分解されたなにものかになっているというわけだ。
キノコ(茸、菌、蕈)とは、菌類のうちで比較的大型の子実体を形成するもの、あるいはその子実体そのものをいう俗称で厳密な定義があるわけではない。ここでいう「大型」に明確な基準があるわけではないが、肉眼でその存在がはっきり確認できる程度の大きさのものをキノコという場合が多い。
ウィキペディアフリー百科事典より
熟茶もまた茶葉の形は残るし、お茶の味はする。だからお茶として紹介したほうが人々にはわかりやすい。菌類が分解・生成する元となる物質は「茶葉」しかないのだから、その成果にお茶の成分が残るのは当たり前の話だし、虫ほどは蛋白質が豊富でもないから分解するにも限界がある。これもまた境目などないから定義する必要はないけれど、みんなが思っているよりもずっとキノコなんだと言いたいだけだ。ま、そのくらい熟茶の発酵過程ではすごい変化が起こっている。
過去に当店の扱った完熟の熟茶『天字沱茶90年代初期』はやはりキノコだった。キノコ汁を飲んでいた。
【天字沱茶90年代初期プーアル茶】

臨滄古樹圓茶2003年 その1.

製造 : 2003年
茶葉 : 雲南省臨滄茶区古茶樹
茶廠 : 臨滄茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
臨滄古樹圓茶・プーアル熟茶

お茶の感想:
店長失格。
案の定というか、
卸売部の品を選りすぐりにしたら出品が間に合わない。
どんどん品数が減ってゆく。
そんなに簡単にいいお茶なんて見つからない。本音のところ。
新しい品がいろいろ入るのはお店の魅力のひとつ。その魅力のない店は客足が途絶えて在庫が残るという悪循環に陥る。
ま、いいだろ。
変わりたいのだ。
その結果が良くても悪くても変わらないよりまし。
ひとつ良い兆候がある。
品選びは店長に任せておけばよいのだから、お客様は受け身になるのかと思っていたら、その逆だった。
「なぜあの品を引き上げたのか?」
「なぜあの品は仕入れることにならないのか?」
過去にはあまりなかった声がとどく。
品選びを主張すると、お客様の主張も増えた。
綱引きの力がつりあっている感じがする。
もしかしたら、みんないっしょのことを考えているのかもしれない。
どういうのを良いお茶とするかはいろいろだけれど、
お茶の知恵が見つけられるようなお茶が欲しい。今の時代にそういう知恵が埋もれているのは、生産者だけの責任ではない。現在の人の知識の在り方とか、生活とか、世界観とか、もっと大きなところがベースにある。
たぶんそこを変えたいのだ。
というか、自分自身が変わりたいのだ。
お茶だけが変わるなんて都合が良すぎる。生産者も、流通業者も、消費者も、みんなが結託して自分たちの利益を追求して、お茶だけに変わってもらう。
そんなのはもうヤメ。
ときにはお茶の個性を理解するために歩み寄る努力を要する。専門用語みたいな他人の言葉ではなく、自分の言葉として身体で理解する。お金を払ってそこまでしなければならない面倒なお茶。それが我々には必要なのだ。
なにのために必要かというと、この星の王様である植物の言葉を理解し、自分の中にある自然と向き合うため。
さて、今日は昨日売り切れた卸売部のこのお茶。
『臨滄古樹圓茶・プーアル熟茶』(卸売部の紹介ページは非表示にした)
臨滄古樹圓茶・プーアル熟茶
臨滄古樹圓茶・プーアル熟茶
いまいちど紹介文章を読み直したらむちゃくちゃだった。
ここに改めて紹介しておこうと思う。
1956年創業のメーカー「臨滄茶廠」の製造。
当時は専売公社制だったので、臨滄茶廠は国営貿易会社の下請けで東南アジア向けのお茶をつくっていた。マイナーで有名銘柄は少ないが、1987年代〜2003年にかけてつくられた『銀毫沱茶』は香港・台湾の老茶ファンに人気が出てそれなりの価値がついた。
2004年民営化後はいくつかのメーカーに分かれてこの「銀毫沱茶」銘柄を引き継いでいるが、たぶんこれも多くのお茶と同じように国営時代のときのほうが良いお茶だったはずだ。
『臨滄古樹圓茶』の製造年がはっきりしないので、当店は2003年と推定したが、2002年という話もある。2004年に同銘柄の品が出ているけれど、包み紙の印刷に違いがある。
茶葉はしっかり厚みがあり、茎が太く、ほんとうに粗い。もみ殻などの混入物が混じる昔ながらの農家のお茶。茶馬古道の時代にチベットやネパールやインドの高原の遊牧民に運んでいた生活のお茶。
このタイプのは、熟茶の第一号を1973年に出品したメーカー「昆明茶廠」(昆明第一茶廠)のものに多く、当店の過去に扱ったなかでは『7581雷射磚茶』が似ている。
【7581雷射磚茶プーアル茶88年】
風味もちょっと似ているところがあった。
焼き芋の焦げた皮の味。墨汁の香り。
茶葉は真っ黒に変色している。焦げというより炭っぽい。
最近の熟茶製品にこの風味が少ないのは、ここまで粗い茶葉を使わないこと。粗い茶葉のもつ栄養が発酵の仕上がりを変える。それを圧延する場合、粘着力がほとんどないので、しっかり深蒸ししてから機械の強い力でプレスすることになる。この深蒸しが長期熟成を経て、焼き芋の焦げを墨汁風味にしてゆく。その黒の成分に知られざる薬効があるような気がする。
臨滄古樹圓茶・プーアル熟茶
赤味の強い透明感のある水色と同じように、クリアーな風味。
(個人的にちょっと風味が薄いような気がしたので高い評価を与えなかった。)
熟茶は長期熟成させるほどにクリアーになってゆくから、現在の孟海県の茶葉でつくられる濃い熟茶風味に慣れた人には物足りなさを感じるかもしれない。
売切れとなったが、西双版納の個人の手元にまだ14枚あるので、欲しい方はご相談ください。ただし、価格は8,500円一枚だったのが10,000円になると思います。

ひとりごと:
革登山の写真ページをアップした。
+【革登山 古茶樹 写真】
ちょっとでも雰囲気が伝わればよいと思う。
山の形、河の流れ、植物の様相、漂う空気、森の気配、茶樹の枝ぶりや葉の形。
むかしむかし。
茶が世界の飲料となるもっとずっと前の、まだこの辺りの山の民族しか茶を知らなかった時代。瑶族(ヤオ族)は川を見て、山を見て、
「この上にはお茶がある。」
というのがわかった。
山に登ってゆくと、涼しくなって、森の様子が違ってくる。植物が変わってゆく。
それを見て、
「あのへんの斜面には甘いお茶がある。」
というのがわかった。
革登山に訪問したときにこんなことを想像した。
今回の訪問は、現地の農家に知り合いがいないので、いきなり山へ行った。どこに古茶樹の森があるのかもわからないので、ほんとうにこんな感じで、あのあたりかなあという山道を上がって見つけた。
森の中に人の声がするので、近付いてゆくと、少年たちが高い木に登って酸っぱい果物を採っていた。
木の上に人がいる
(木の上に人がいる。)
その後に、村に一軒だけ茶農家を見つけて、近くの古茶樹の森を紹介してもらった。秋なので下草が茂っていた。足元から爽やかな香りが漂うので、よく見たら、ミントの葉の絨毯を踏んでいた。
ミントの絨毯

宮廷プーアル熟散茶03年 その2.

宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)ー鴻福茶廠出品
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納ー上海 茶缶密封
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
小さめの蓋碗できっちり。

お茶の感想。
1990年代の熟茶が売り切れてからは、
「老味のする熟茶」や「陳香のある熟茶」を求められた場合は【卸売部】に出品中のこのお茶『宮廷プーアル熟散茶03年』をすすめるようにしている。
これを「小さめの蓋碗」+「ぬるめの湯」で淹れたらもっと薫るだろう。
ということで試してみた。
たまたま手元に「宮廷プーアル熟散茶」と同じ名前のつく2010年モノのサンプルがあったので、同時に比べることにした。「宮廷プーアル・・・」というのは普通名詞であって固有名詞ではない。共通した基準は、発酵の工程の後に篩いわけされた新芽や若葉のいちばん小さなところが使用されているということ。茶山や茶摘みの季節を問わないから、いろんなお店が「宮廷プーアル・・・」を売っているが、クオリティーはばらばら。それを知っているお客様には当店の腕の見せ所となる。
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
2gを量って小皿に分けた茶葉(上の写真)を見てすぐにわかったが、2010年モノのほう(左側)は色が薄くて痩せている。旬の茶葉であれば、新芽の金色になる部分は小さくて少なく見えて、それ以外は黒々と変色するのが西双版納の雲南大葉種の特徴。そして「肥る」と表現されるように、小さな茶葉一粒一粒にも立体感がある。
味比べするまでもないが、一応やってみる。
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
見た目よりも味の差はもっとあった。
3人で飲んだが、みんな美味しいほうに手が伸びる。
小さな蓋碗で淹れた効果か、ライチのような南国果実の甘い風味があった。2煎めくらいからは熟茶の老茶特有のあずきの香りもする。宮廷プーアルらしい澄んだあじわいながら濃厚な存在感。好きな人にはたまらない風味だと思う。
旬の茶葉の豊富な滋養が、発酵の菌類を刺激して、いろんな形となって味や香りに現れる。やはりもとの茶葉の素質は大事だ。

ひとりごと:
先斗町。
先斗町

宮廷プーアル熟散茶03年 その1.

宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
製造 : 2003年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)ー鴻福茶廠出品
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納ー上海 茶缶密封
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水 
蓋碗できっちり。

お茶の感想。
暴飲暴食のつぎの朝は熟茶でスタート。
やさしい味を求めて、ちょっと老味のあるこのお茶を選んだ。
【卸売部】に出品中(現時点)で、「おすすめ」にしている。
このお茶は2003年製なので、よく考えてみると「孟海茶廠」がつくった可能性が高い。それを新しいメーカーが買い取って出品したはずなので、表示をそのように更新した。
熟茶づくりは発酵の工程に1ヶ月半から2カ月かける。2003年の出品であっても2002年の茶葉を使うことが多い。
農家やメーカーの自社農園の製茶場でつくられる原料の晒青毛茶(炒って揉んで天日干しで仕上げた生茶)を、出来立てすぐに発酵させるのは具合が悪い。少なくとも3ヵ月、場合によっては1年ほど寝かしてから発酵させるほうがよい。そのほうが立ち上がりが早い。発酵に活躍する菌類が新しいお茶の辛辣な青味を嫌うからだ。
乾燥した晒青毛茶を倉庫に積み上げて水をかけるところから発酵が始まるが、倉付きの菌類の活動する前に、水分だけで茶葉の成分変化が起こる(ごくカンタンに言えば緑茶が紅茶になるような変化)。その期間をできるだけ短くしたほうが輪郭のしっかりした味になる。逆に、水分だけの変化が長く進むと、味がだらけて不味くなる。それを防ぐために、熟茶用の晒青毛茶の殺青はやや火入れ強めに仕上げる。
2006年のプーアール茶バブルの前後は、需要に供給が追いつかなくなり、出来たての晒青毛茶を無理やりたくさんの水をかけて急いで発酵させたようなのが出てきた(味から推測しただけだけれど)。マイナスなイメージの「煮立ち味」・「泥味」・「焦げ味」など、やはり味のどこかに無理が残った。
その後も量産と短期発酵の研究がすすんでいるだろうから、新しい設備のあるメーカーでは出来たての晒青毛茶でもうまく発酵させる技術がすでにあるのかもしれないが、10年前の熟茶の美味しさを知っている人が、「今の熟茶はちがう」と感じるのは、このあたりに理由があるのかもしれない。
2003年製のこのお茶には1980年代の味がある。
熟茶は1973年から出品されているが、その頃の味はまたちょっと違って、発酵を浅く仕上げた生茶のような風味が残っていた。今日の熟茶づくりの礎となった技術は1980年代からだと思う(独自の見解だけれど)。
長い前置きになったが、「ちょっと老味のある」というのは、10年熟成の味でもあり、古いつくり方による味でもある。
熟茶の発酵については当店オリジナルのこのお茶も参照。
【版納古樹熟餅2010年プーアル熟茶】
宮廷プーアル熟散茶03年プーアル茶
「宮廷」と名がつくのはとくに小さな新芽・若葉が篩分けされている。
このタイプは湯を注いですぐに濃く抽出されるので、手返しを早くして杯に注ぎ切る。3煎めまでは素早い動作が必要。
ここでも書いていたけれど、
【天福雲南貢餅熟茶00年 その1.】
新芽・若葉は淡くほろ苦いのが持ち味。それを活かすためにも、じっくり煮出すような淹れ方は賢明でない。熱湯をサッと流し切る。
湯を注いだ瞬間におはぎのような甘い香りがあり、ひとくちすると一番だしのように上品かつ力強い旨味がある。吐く息に穀物風味と漢方風味が絶妙に調和する。
濁り味の美味しい熟茶もあれば、このお茶のように清らかな味のもある。

ひとりごと:
倉
マンションに取り囲まれてゆく日本酒の酒蔵。

仮・[王攵]紅大益青餅03年 その1.

[王攵]紅大益青餅03年プーアル茶
製造 : 2003年
茶葉 : 雲南省西双版納州大葉種晒青茶
茶廠 : 西双版納孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 日本 紙の封筒
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水
蓋碗できっちり淹れる。

お茶の感想:
「他所で買ったこの紫大益ニセモノでした。」
と、お客様からこのお茶を頂いて、試すことになった。
ニセモノかもしれないから「仮」とした。
鑑定はできない。
けれど、どのあたりがニセモノなの?ということに興味があった。
中国のどこかのお店で何年か前に入手したということで、このコメントが他人の商売の邪魔はしないだろう。
まず、「紫大益」ではなくて「[王攵]紅大益」の印刷の色だと思う。
2003年にそれが実在したかどうかは、台湾の出版社の鑑定本で調べられるかもしれない。
2004年に大益ブランドの孟海茶廠は完全民営化した。だから2003年は微妙な時期で、この年代のお茶は価値が上がっているから、ニセモノが出現しやすい。2006年以降の品になると、大益ブランドは廉価品を多くつくるようになって、ニセモノをつくる価値がなくなった。現在のニセモノ情報は大益ブランド自らが価値を上げるために流布していると見ている。
【王攵】紅大益青餅03年プーアル茶[王攵]紅大益青餅03年プーアル茶
さて、飲んでみたところ美味しくない。
茶湯の色も冴えない。
殺青の火入れが強すぎて焦げ味が全体にまわっている。鉄鍋の手炒りならよいが、機械炒りでの焦げ味は蒸し焼き効果もあって火が通り過ぎる。だから、年数が経っても熟成で醸しだされる美味しさは出にくい。10年モノにしては茶湯の赤味が少ないこともそれを裏付けている。
(追記: のちに餅茶を崩してゆくと内側は屑茶ばかりで、それを無理に固めたものだった。やっぱりニセモノかな・・・。)
この年代の大益ブランドのお茶が広州の卸からまわってきた2007年の頃、
いよいよ1990年代の老茶も高価になって、しかし民営化してからの大益ブランドのお茶にかつての銘茶のような美味しいのが見つからなくて、これからどうしようかと迷った。
『紫大益7542青餅00年』はちょうどその頃仕入れている。
【紫大益7542青餅00年】
文章をふりかえると、2003年の『銀大益青餅03年』や『紫大益4号青餅03年』との味比べをしている。それらのお茶も、実はたいして美味しくなかったと記憶している。
待っていても来ない。
だから決断した。
まだ結果は出ていないけれど、あのままなにもしないよりは良かったと思う。
初心を思い出すきっかけを下さったお客様と、このお茶に感謝。
大益ブランドのために補足しておくと、あの頃に比べたら現在の品質はかなり向上していて、価格なりのものであれば他のメーカーよりも安定している。今の時代の大企業へと孟海茶廠は舵を切った。

ひとりごと:
樟
大きい楠木。


茶想

試飲の記録です。

・キーワード検索

・カレンダー

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

・表示されている記事

・お茶と年代のカテゴリー

・記録

お茶の歴史
お茶の歴史 (JUGEMレビュー »)
ヴィクター・H・メア,アーリン・ホー

・サイトリンク

・プロフィール

 

mobile

qrcode

powered

みんなのブログポータル JUGEM