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香椿林青餅2016年 その2.

製造 : 2016年4月1日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : チェコの水道水・ブリタ濾過
茶器 : チェコ土の茶壺と宝瓶
クリコフの道

お茶の感想:
お茶づくりで西双版納の山の人の家に泊まり込んで寝食をともにするように、今回はチェコのマルちゃんの工房に泊まり込んでいる。
西双版納の山の人の生活は、生きている世界が違う。時代が違う。なじめないこともある。
それを考えたらチェコの工房の生活は楽。自分と同じ世界、同じ時代に生きている。
自然にやさしく質素で素朴なところは似ていても、向かう方向が違う。
西双版納の山の人は、半自給自足の農業から脱して、経済社会の仲間入りをはじめたところで、もっと消費を増やそうとしている。
マルちゃんは自ら選んで消費を減らそうとしている。
チェコはヨーロッパの中では田舎かもしれないが、町に住めば世界の大都市とほぼ同じ生活ができる。田舎の村へ行っても不便はない。プラハの都会っ子として育ったマルちゃんは、できるのにしない、という選択で今の生活をしている。スローライフというのかな。
マルちゃんは菜食主義だが、これも都会の人だからこその思想で、山の人にその発想はないと思う。布朗族の古い仏教のお寺は菜食主義だが、お坊さん以外の普通の人にその選択はありえないだろう。
この違い。
どうなのだろ。

スローライフの思想は作品に反映している。
例えば、土の成形。
土の成形が失敗した例
茶壺の注ぎ口を胴体にくっつける作業のときに、マルちゃんの手元がくるって胴体がちょっとだけ凹んだ。叩いたり揉んだりして直したはずなのに、焼きあがってみると少し元に戻っている。
形状記憶というやつか。
このケースは自覚できているが、自覚できていない形状記憶もある。
食べものによって体質が変わり、思考も変わり、言動に影響するように、例えば、粘土の成形の微妙なカーブは草食と肉食では違ってくるだろう。
作陶は自然がいっぱい。粘土の成形だけでなく、釉薬のかかり具合、薪の火加減、その時の天気などが仕上がりに大きく影響する。作品の持つ雰囲気には、作家の生活がなんらかのカタチとなって反映している。もしかしたら淹れるお茶の味や体感にまで物理的な影響が及ぶかもしれない。
マルちゃんはそこを気にしている。
台所
そうなると、作品を使う側にもスローライフを求められる。
マルちゃんの作品はだいたいちょっと不便にできていて、使った後の手入れにもちょっと手間がかかるので、丁寧な生活のできる人向きである。チェコは比較的スローライフがしやすい環境かもしれない。ガチガチの共産主義だった1989年までの生活はスローだったから。
自分の場合、仕事なので茶器は毎日使うが、食器は使わない可能性が高い。
丁寧な生活をすると収入が減る。
お金を使って便利を求めたり、時間を節約したり、将来もっと収入を得るために今するべきことを選んでいる。忙しくて急いでいる。
食器は生活になじめずに部屋のインテリアになるだろう。ふだんは使わないのに、来客のあるときだけうやうやしく使ってみたりする。
水漏れする茶壺
水漏れする茶壺
今回いくつか選んだ茶壺の中に、ひとつ水漏れするのがあった。
粗いシャモット(耐火レンガを砕いた粉)の混じる土で焼かれたこの茶壺は、小さな空気の泡が内部にいっぱいできすぎていて、湯がじわじわ表面に漏れ出てくる。
水滴が落ちるほどではないが、蒸気になって出てゆく。
香椿林青餅2016年
『香椿林青餅2016年』(未発売)。
しっかり時間を取って抽出しようとしたら、杯にお茶を注ぐ前に部屋いっぱいに爽やかな緑の香りが広がった。蓋を閉めたまま、茶壺の胴体から茶の香りを伴った蒸気が出ているのだ。
昨年の春のお茶で、まだあまり熟成していないから、山の緑がそのまま薫る。
香椿林青餅2016年泡茶
面白いけれど、手入れはちょっと面倒で、使った後はすぐに洗って乾かさないと、細菌が発生して臭うようになる。
お茶淹れを丁寧に時間をかけて楽しめる人には、かわいい道具になる。毎日使いたいくらい。
忙しい人は、あまり使わなくなって、インテリアになる。
食事

ひとりごと:
できるのにしない、という選択をマルちゃんがしたから、作品は意志を持っている。方向がはっきりしている。
意思のある作品に対して、そこをうやむやにするのは難しいことかもしれない。「使う人が自由にしたらいい」と言ったって、どこかわざとらしい気がする。
ま、そういう世界と時代にわれわれは生きている。

張家湾古樹熟茶2016年 その2.

采茶 : 2016年10月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)張家湾
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺

お茶の感想:
もう一度失敗。
7キロの茶葉が土になる。
その後さらにもう一度8キロ失敗。
渥堆発酵失敗の茶葉1
渥堆発酵失敗の茶葉2
合計40キロを超えたかな・・・。
いずれも初回の加水が多すぎた。ある種の発酵臭を引きずっている。一般的な熟茶にはよくあるけれど、これを取り除くようにしたい。
写真で見てわかりにくいが、茶葉がヘタっている。
もっとピンとしなければならない。
渥堆発酵成功の茶葉
メモ的に要点を挙げる。
読者のための内容ではない。
自分のためと、いつか同じ失敗を経験することになった人のため。

加水が多すぎて茶葉が弾力を失うと、茶葉と茶葉との隙間がなくなり、好気性の黒麹菌は息苦しくなる。この状態での発熱は酵素反応による。
隙間がないと水分が蒸発しにくいため、高温が長時間続く事態となる。
これがある種の発酵臭を生む原因である。
通気が良くて熱がこもらず、黒麹菌が活発になっているときは、発酵臭は極めて少ない。

加水するのは主役である黒麹の繁殖を促すためである。
好気性の黒麹菌の菌糸が茶葉の内側の深くに潜り込んで欲しい。
そのために、茶葉の吸水性についてよく考える必要がある。

ところで、酒米は、精米での摩擦熱を数日間かけて冷まさないと、次の浸水の工程に移れない。水は温かいほうから冷たいほうへ逃げる性質があるので、米粒の中心部に熱がこもっていると、水が浸透しにくいのかもしれない。水が浸透しないと菌糸が入り込まないので、発酵による分解作用がすすまない。

茶葉はどうだろ。
雨の降らない季節でも青々と茂る常緑樹の葉は、水をカンタンに逃さない構造になっている。枝についているかぎり、強い太陽の光に焦がされても乾かないし枯れない。ミクロの世界では水道管が網の目に張り巡らされていることだろう。
製茶の段階では、いかに茶葉の内側の水を出し切るかが課題である。炒ったり揉んだり炙ったり干したり、すべての工程は茶葉の水分を意識している。
張家湾古樹熟茶2016年
熟茶の原料となる晒青毛茶は、緑茶や烏龍茶よりも火入れも揉捻も短時間で仕上げる。天日干しで乾かすので、茶葉の繊維の変質の少ない「生」のお茶である。
「生茶」とも呼ぶ。
吸水力は抜群。むしろ吸水しすぎるくらいだから、上の写真で見た失敗につながりやすい。

これをふまえて、まず第1回目の加水は茶葉の内側までしっかり水を浸透させるが、弾力を保って隙間をつくれるように加減する。
加水直後は弾力を保っていても、15分ほど経過すると水がなじんで弾力を失うことがある。たいがいそうなる。
あらかじめ乾いた茶葉を少し分けておいて、後から足して撹拌して調整するのがよい。乾いた茶葉が余分な水分を吸収してくれる。

7キロ以内の茶葉を布袋に包んで堆積させるが、堆積の厚さは茶葉の弾力に応じて10センチから20センチが適当である。
大量発酵においては50センチほどの高さに堆積させるが、条件がまったく異なるので、比べようがない。

7キロ以下の少量の堆積においては、熱がこもりにくく、温度が上がりにくいことがある。50度近い高温に近付くときの成分変化も必要であるとするなら、加熱して発熱を促すしかない。
いろいろ試したが、現在は電気カーペットを使っている。下から上へ熱が上がるので、底冷えしにくく管理しやすい。
ただし乾くのがやや早くなる。
保温・保湿のために、厚手の帆布の布生地の袋を用意した。現在のところ効果的である。

茶葉に水がなじんでいると、黒麹菌の菌糸が深く潜り込んで、発酵による変化が得られるが、数日くらいでは表面だけで内部にまで達しない。
内部に達しないまま2度めの加水をすると、茶葉の表面ばかりに変化が起きる。
菌糸が深く潜り込んだかどうか、これを確かめる方法がある。
泡茶3煎め・4煎めの味をみる。
1煎め・2煎めは茶葉の表面から成分が抽出されるが、3煎め・4煎めになると茶葉の内側の成分が出てくる。抽出時間も長くなる。
ここで、従来の茶葉にはなかった旨味や甘味が出てくるようになれば、菌糸の先端が茶葉の内側に達して、成分変化を促していることになる。
1煎め
2煎め
3煎め
(上から1煎・2煎・3煎。茶葉の表面から発酵がすすむのが、この色の出方でわかる。)
菌糸が茶葉の内側に潜り込むには、水分を保ちつつも表面はやや乾燥している期間が必要である。
水が茶葉の内側に逃げて、菌糸がそれを追いかけて深く潜り込む。ということかもしれない。
茶葉の内側の水分は、茎の部分を指でつまんで確かめる。内部に水分があると柔らかく曲がって、完全に乾くとポキっと折れる。
2度めの加水は、乾燥しきる一歩手前くらいまで待ってからでもよい。

2度めの加水の水の量は1度目の半分以下になる。茶葉の変質具合によっては3分の1でも十分。
ミクロの世界では菌糸が茶葉の繊維の水道管をあちこち破裂させているだろうと思うが、そのため吸水力も保水力もかなり弱っている。
もしもここで水の量を誤って多くすると、茶葉の内側に吸収されずに表面に滞留する。
表面にはたくさんの酵素がつくられており、水分を得ると1時間くらいで発熱するので、黒麹菌の活動が盛んになったように思えるが、そういうわけではない。
表面に水が滞留したときの酵素反応は発熱が過剰になりやすく、ある種の発酵臭が生じやすくなる。甘いような酸っぱいような、パンづくりの酵母を寝かすときのような香りで、そう悪くはないが、高温になると薬品っぽくなり、更に高温がつづくとアンモニアっぽくなる。これが乾燥すると一般的な熟茶によくある土っぽい香りとなる。
2度め以降の加水は、茶葉に水をゆっくりなじませる。茶葉の吸水性を確かめながら、一度に水を掛けずに何度かに分ける。しっかり撹拌する。
葉底

ここから先は発酵の設備についてのメモとなる。
渥堆発酵の部屋は太陽の熱の影響を受けにくい北向きがよい。西・南は昼と夜の温度差が大きくなるので適さない。
部屋の気温は25度くらい。湿度は50度以下くらい。
西双版納の冬の乾季の標準的な環境である。
空気はやや乾燥して、室温は茶葉よりやや低い温度。このほうが衛生的に管理しやすい。
茶葉から蒸発する水分が空気中に逃げやすく、茶葉を包んでいる布袋や竹籠が乾燥した状態を保つことができる。水と温度の性質を利用する。

茶葉の保温に箱は使わないほうがよい。
当初は保温性の高い木箱をつくる予定だったが、箱は通気に問題があり、内部の湿度が高くなりすぎる。湿度が高くなると雑菌が発生しやすい。
部屋の窓は開けて通気をするが、風が当たらないようにする。
夜の空気の冷える時間帯は窓を締める。

茶葉を包む布袋は薄いガーゼ生地にした。通気性がよくガスが溜まないので、好気性の微生物には良い。余分な水分や熱を逃す効果もある。
また、ガーゼ生地の小さな布袋(漢方薬を煮出すときに使われるやつ)は、種麹の培養に使える。それごと渥堆発酵中の大きな袋に入れておくと、適温・適湿で培養できる。外気に触れやすい外側に置くほうが黒麹菌には良いはず。

ガーゼ生地の布袋ごと茶葉を揺すったり揉んだりすることで、手を触れずに撹拌できる。数時間ごとに天地をひっくり返すと、茶葉の中の熱や水分が移動して、発酵を均一にできる。
発酵開始から10日目くらいになって乾燥していると胞子の飛散が多くなり、ガーゼ生地ごしでも飛び散るので、撹拌作業のときはマスクを着用する。
ちなみに、茶葉や布袋に手を触れるときは必ずアルコールで消毒している。
布袋のポジションは日に1度は交換する。
部屋に入るときは靴下は新しいのに履き替えるが、裸足でもよい。裸足は目に見えない小さな埃や温度や湿気に気付くことができる。そこから得られる情報は多い。
外出した服は空気中の雑菌がたくさん付着しているのですべて着替える。
部屋の床は掃き掃除はするが、濡れた布巾での拭き掃除はめったにしない。水気があると雑菌が繁殖するかもしれない。

これからの課題についてのメモ。
ひとつ問題は、大量の渥堆発酵とはかなり異なる環境になっていること。
お茶の味もすでに熟茶から外れて、別の黒茶になりかけている。
7キロ以下の少量渥堆発酵では布に包んだ茶葉をどうしても均一な環境に置いてしまう。大量の渥堆発酵で発生していた発酵ムラを再現できない。
発酵ムラ=雑味の元ではないかもしれない。中心部の過剰に加熱したところや、外側のカラカラに乾いたところや、被せられたシートの上部の蒸気で湿ったところなど、管理のゆき届かないそれらには良性の菌類による活動や、酵素反応の多様な結果があり、もしかしたら熟茶の美味しさを構成しているのかもしれない。
大量の渥堆発酵
実際に大量の渥堆発酵ではいろんなタイプの菌糸体を見る。黄色のチョークの粉、綿のような白いうぶ毛、蜘蛛の巣のようなのなど。
極少量発酵では白い綿や蜘蛛の巣は出現しない。
しかしこの方向でやってみようと思う。
袋の内側の環境に大きな差異がつくれないなら、日数をかけて袋全体に変化を与えるしかない。
この場合、全体の揺れにビビってはいけないのかもしれない。酸っぱくなったり、苦くなったり、発酵臭が出たり、そうした揺れが味の層をつくるってゆくのかもしれない。
観察を続ける。

ひとりごと:
空気のキレイな西双版納では洗濯物は天日干しに限るが、天日干しの場合、天気が悪かったり、風がなかったり、湿度が高かったり、温度が低かったり、洗濯物と洗濯物の間隔が狭すぎたり、いろんな理由で生乾き臭が発生する。これも微生物による仕業だよな。
微生物の知識はなくとも原因と結果の関係がわかっていたら、洗濯が上手な人になれる。
発酵のお茶づくりもそうだ。原因と結果をいろいろ経験して学ぶしかないのだ。

張家湾古樹熟茶2016年 その1.

采茶 : 2016年10月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)張家湾
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺
張家湾古樹
張家湾中腹
張家湾茶樹

お茶の感想:
10月に張家湾を訪ねた。
丁家老寨からすぐ向かい側に見えている山なのに、まだ歩いたことがなかった。
古樹の数で言うと丁家老寨のほうが広範囲に多いが、張家湾にもある。ずいぶん昔に台刈りされた跡があり、大きな幹から分枝している茶樹は、清朝の頃に栄えたお茶どころのひとつだったことを表している。
漫撒山一帯では比較的海抜の高いところにあって香り高い。甘味が強いが、酸味もしっかりある。お茶の味もまた丁家老寨とよく似ている。
張家湾古茶樹園
張家湾古茶樹
張家湾古茶樹
卸売部には『張家湾森林春の散茶2015年』を出品している。
今年の秋は山を散策しただけで、結局お茶づくりはしなかったが、地元の製茶農家から晒青毛茶を少し仕入れた。
その中に、1本の茶樹からひとつのお茶をつくる単樹モノがあった。
ひとつの袋に300gから1200gほど入ったのが12種類ほどあっただろうか。現場ですべて試飲して、そのうち4種類を選んだ。
4種のうち1種だけ「紅叶」と呼ぶ、茶葉の先が赤い色した品種特性を持つのがあった。これは少しだけサンプルを残してあるので、別の機会に紹介したい。「紫叶」と呼ぶ紫色した茶葉のとよく似た風味である。
張家湾古茶樹試飲1
張家湾古茶樹試飲2
さて、この4種類4袋を混ぜ合わせてひとつにして渥堆発酵することにした。
4袋分でたった2キロしかない。
あまりに少量すぎるので適正温度が維持できない。
11月中頃から西双版納も急に冷えてきた。といっても、室内で昼間は24度くらい。夜は20度くらい。
人間からしたら温かいほうだが、黒麹菌からしたらちょっと寒い。寒いと動かなくなる。
西双版納の冬の空
冬の乾季なので雲が少ない。湿度40度から50度。西双版納にしては乾燥している。
いろいろ工夫してなるべく自然なカタチで、室温は25度、渥堆発酵の袋の中の茶葉は28度、このくらいをキープしている。
2キロの袋を、他の渥堆発酵中の温かく発熱している7キロの袋でサンドイッチすることにした。水分も供給されるから、適温・適湿が同時に得られる。
布とカゴ
(まだ部分的にしか見せない。技術が成熟していないから。)
いちばんぬくぬくと育っているのが、この2キロの茶葉『張家湾古樹熟茶2016年』ということになる。
しかし、ひとつ問題がある。
酸素が薄いということ。
黒麹菌は好気性微生物だから、息ができないと活動しない。
では、いったいどのくらいの通気性があれば気持ち良く活動してくれるのか?
大量の渥堆発酵では大きな倉庫に茶葉が山積みになって、保温のためのシートが一枚被せられるだけである。通気性は抜群に良いように見えるが、そうでもない。堆積された茶葉の大きな山の表面のところからせいぜい10センチくらいは通気性が良いだろうが、もっと内側の大部分は息苦しいのではないかと推測する。通勤ラッシュの山手線みたいなものか。人間は肺呼吸だから無理やり空気を吸って動くけれど、肺のない菌は動かなくなる。
このやや酸欠ぎみのところが、あんがいお茶を美味しくするのに重要ではないかと推測している。大量の渥堆発酵はむしろ通気が良すぎるくらいかもしれない。
大量渥堆発酵
大量渥堆発酵シート
通気が良いほど、茶葉の赤く変色するのが早い。2週間のうちに2回か3回加水するだけで色も味も熟した、みんなのイメージする熟茶になる。
水と酸素と茶葉の栄養とを大量に消費して熱を大量に発散する。この短期間の発酵では、お茶が強い陽性を持つことになると思う。
一般的な熟茶のプーアール茶は冬に飲むと身体が温まって気持ちよいが、夏に飲むと暑苦しい。他の黒茶にこれほど暑苦しいのは無い。
他の黒茶と熟茶の発酵の違いは、同じ微生物発酵であっても緩慢であるか急速であるか、発酵のすすめ方に違いがある。
(近年は熟茶製法がいろんな黒茶に取り入れられつつあるから、伝統的な製法においてはである。)
自分はあくまでも熟茶のプーアール茶をつくる。他の黒茶にするつもりはない。この方針に変わりはないが、陽性と陰性のバランスの良いお茶にしたい。夏に飲んでもあまり暑苦しくないお茶。
そういう熟茶は過去にあったのだ。
1970年代から1980年代までの熟茶は多くがそうだった。
1990年代の孟海茶商の製品『7572七子餅茶』あたりから陽性が強くなっている。その甘濃い味が市場にウケたことで、みんながその方向を追いかけて今に至っているのだと思う。
7581荷香茶磚97年
1980年代の製法が用いられた『7581荷香茶磚97年』(卸売部)
この熟茶は比較的涼しい体感である。
急速な発酵のスピードを落としてスローにさせる。
どんな方法があるか。
加水を少なめにすると発熱が少なくて黒麹菌の活動がスローになるが、この方法では黒麹菌にとって寒すぎる。保温すると茶葉の乾燥が早すぎる。また、茶葉の温度は変化が緩慢なので、急な対応ができない。
その点、通気を調整するやり方は、迅速かつ微調整が可能である・・・と思う。
加水を減らさずに発熱量をキープする。発熱は黒麹菌のつくった酵素の化学反応によるもので、菌の活動によるのではないから、渥堆発酵初期にしっかり黒麹菌を培養しておけば大丈夫。
通気の調整はこまめな撹拌によって行う。撹拌して内側の空気と外側の空気を交換する。その間隔を少しずつ変えてみる。
撹拌するときに微生物の微かな声を聞く。もちろん言葉はないが、色や香りや触感の変化など、なんらかのサインを出している。
張家湾古樹熟茶2016年泡茶1
張家湾古樹熟茶2016年泡茶2
張家湾古樹熟茶2016年泡茶3
『張家湾古樹熟茶2016年』
思った通りの味と香りと涼しい体感。
最初の加水から10日経つが、茶湯の色の明るさは緩慢な発酵を示している。
やや酸味が強く出ているが、張家湾のお茶はもともと酸味がある。
この調子で30日くらい経過してからの様子を見たい。
布袋
布袋の厚みが違うと通気性も違う。
いくつか厚みの違うのを試してみることにした。無漂白の布。
洗剤を使わずに2度洗いする。14枚洗うために洗濯機が24時間稼働している。

ひとりごと:
よく売れているお茶が正しいとは限らない。
よく売れている酒が美味しいとは限らない。

版納古樹熟餅2010年 その32.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 軽い密封 紙包
茶水 : タイ・チェンマイの飲料水
茶器 : Klean Kanteenの保温ボトル
渥堆発酵の熟茶づくり

お茶の感想:
温州人の茶友が渥堆発酵にアタックした。
熟茶づくりの微生物発酵をメーカーや工房に任せずに、自分でやる。
設備や道具は手作り。茶葉は農家にオーダーしたもの。
昨年からずっと茶友たちと話し続けていたテーマである。
他人に任せていてはこのお茶の再現すらできない。
+【版納古樹熟餅2010年】
経験が豊富であろう大手メーカーの職人は、もう良い仕事ができない。経済環境、社会環境、いろんなことが変化している。
どのみち伝統(多くの人が長い年月を掛けて考えて試してやり尽くした知恵の蓄積)は失われている。熟茶は1970年頃からの、黒茶にしては比較的新しい製法であるが、1970年代、1980年代と渥堆発酵の技術は変わってきたし、お茶の体感(効能)の面から見ると2000年代の熟茶はすでに別モノになっている。
つくり手だけのせいじゃない。消費する側の変化もある。
お茶づくりは産地が半分。消費地が半分。
茶友たちは中国人なので、成功したら中国で売ろうと思っている。
数年後には良いタイミングが来るかもしれないと思う。
大陸の人たちがプーアール茶を飲むようになったのは最近のこと。まずは大きな市場に向けたお茶づくりからはじまって、市場が成熟してゆくにつれ細分化したところを狙えるようになる。
熟茶はもともと大衆茶としてつくられた経緯があるから、手づくりしたがゆえに高価になったのを受け入れる消費者はまだ少ない。安易に古茶樹を謳ったものはいくらでもあるが、旬を外した夏の安い茶葉が使われている。たとえ旬と言ってもど真ん中の旬ではないし、何らかの問題があって売れ残った晒青毛茶(原料となる天日干し緑茶)を買い叩いてつくられるのが一般的だから、どこか問題がある。
我々が原料の茶葉を騙されることはもうない。西双版納に住んで山の農家に行って自分で茶摘みを管理するようになると、その問題はなくなる。だから生茶はよいのがつくれるようになってきた。問題は熟茶。晒青毛茶を渥堆発酵させる工程に1ヶ月以上もかかる。それを行う倉庫などの設備、道具、水の管理、そして職人の手、すべてにおいて不満があった。
ぜんぶ一からやり直す。
設備も道具も手づくりでよいから自分で考えてつくる。
渥堆の籠
茶友たちは、当初はふじもとが熟茶をつくって、安く分けてもらえたら良いな、あんなにリスクの高いことを自分でするのはバカだな・・・くらいに思っていた。
けれど、ふじもとは4年間消極的だった。2012年に人の不注意による大失敗があってから、試行錯誤を続ける経済的体力に不安を持つようになったからだ。
いつまでもノロノロしているふじもとに茶友たちは痺れを切らした。
温州人は西双版納で『版納古樹熟餅2010年』を20枚買って毎日飲んで、あることを発見した。
イケる。やってみる。先にやるぜ!
ミャンマーの山奥での金鉱採掘の仕事が忙しいので、採掘場の事務所の側に部屋をつくって、アドバイスした道具をぜんぶ揃えて、中国から茶葉を数十キロ持ち込んで、渥堆のテストを始めた。
一回目の水掛けから7日目。
すでに白カビが発生している。甘い香りが漂っているらしい。
熟茶の渥堆発酵
渥堆発酵
「ところで、何日に一度水をかける予定なの?」
「え、毎日霧吹きしているけど・・・そしたら微生物が活発になって温度が上がるし。」
「でも、毎日開けていたら雑菌が入りやすいけどな・・・。」
初めてだからワクワクして毎日見ずにはいられないし、水をかけた微生物の反応をリアルタイムで確かめたいし、ガマンできないのだろう。
こんな具合なので、このお茶は他人に売るどころか、飲ませることもできないだろう。
しかし、この一歩は大きい。
中国では人が信用できなくて、良いモノがつくれない。人の不注意によって大きな損失を被ることがある。裏切りによって思わぬ損失を被ることもある。必ずある。
先生は信用ならない。自分で一からやらなければならない。けれど、そんな展開が生み出すなにかがある。
版納古樹熟餅2010年
『版納古樹熟餅2010年』
旅のときは崩して携帯している。
Klean Kanteenの保温ボトルに湯を注ぐだけ。
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
ちょっとコツがある。湯を注いでから30秒くらい蓋を締めて蒸らして、また蓋を開けて熱を逃がす。70度くらいに温度が下がると茶葉の煮え味がなくて、透明感のある清らかなお茶になる。

ひとりごと:
星のめぐりだ。
頑張らなくても大丈夫。
お茶の良いのは、できるときにできるのであって、つくられるものじゃない。
漁師さんが魚が捕れるのは、潮のめぐりであって、調整できるものではない。
もちろん、人の技術がたよりとなるお茶づくりもあるのだろう。
でも、プーアール茶はそうじゃないほうが良いと思う。
自分たちが熟茶づくりに挑戦するのは、技術的に優れたものを求める肉食的な態度ではなくて、人の荒れている技術の影響を受けたくないという草食的な態度なのだな。
チェンマイは雨
まだ雨の季節。
チェンマイがカラッとしてきたら、西双版納もそろそろ秋の旬がはじまる。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その3.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺

お茶の感想:
チェンマイに着いた。
チェンマイ空港
次の日から茶学。
お茶はこれ。
+【章朗古樹紅餅2016年・青印】
茶学SATI
茶学SATI
ヨガの先生が香港の友達を誘っていきなりはじまる。まさかお茶を淹れることになるとは思っていない。そのうえ香港人なのにこのようなカタチでお茶を淹れたことがないらしい。
茶学
茶学
それでもピタッと決まる。
1煎め、2煎め、3煎めと、水の落としの印象を変化させようと意識したのがちゃんと味に現れている。
集中力。
他人に見られたら恥ずかしいとか、他人よりも美味しく淹れようとか、失敗するのが怖いとか、水の落としの印象をつくること以外に気が散っていたら、味も香りも散ったお茶になる。
葉底
三人三様の葉底。
やはり今回は香港人のがいちばんキレイに茶葉が開いていた。
このときあえてお茶の説明をしなかったし、もちろん当店サイトを見たこともない人である。店長ふじもとが何者なのかよくわからないままお茶を淹れさせられている。
情報が少ない。ゆえに集中できたかもしれない。
案内役として自分が最初に淹れるお茶の、水の落としの印象とお茶の味との関係を注意深く観察していた。
ただそれだけのこと。
ただそれだけのことが、だんだんできなくなってゆく。
ビギナーズラックはまぐれではない。はじめての喜びや緊張がもたらす集中力が、熟練を圧倒している。

ひとりごと:
夜間飛行
(月明かりに輝く東シナ海)
『夜間飛行』
アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ著
100年前の夜間飛行は、郵便を一日早く届けることへの挑戦だった。
夜の空に小さな飛行機が吸い込まれてゆく。GPS位置情報システムなどない時代。遭難したら燃料が尽きるまで飛び続けるしかない。
人間が進化するために支払う代償は大きい。なぜそこまでするのだろうと筆者は問いかける。理屈のとおる説明などできないけれど、そこに人間の本性みたいなものが見える。
数年前に読んだ本を思い出した。
日本からバンコクへのフライトは深夜の便にして2回め。
台湾に大きな台風が近づいていたけれど、飛行機はそこを横切って飛んだ。
現代の飛行技術では、夜の空も台風も問題ないのだな。
夜間飛行
夜間飛行
夜間飛行
問題ないとわかっていても夜の海は暗くて広くて怖い。
怖いのになぜか心はシンとなって落ち着いている。
落ち着いているのになぜか涙が出そうになる。
こういう種類の感動があってよかったと思う。

章朗古樹春天散茶2016年 その5.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 巴達山製茶農家+店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : ミニ熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺 紫砂の茶壺 日本土の茶壺 銅のヤカン
章朗古樹春天散茶2016年
章朗古樹春天散茶2016年

お茶の感想:
昨日のテストでは銅のヤカンとチェコ土の茶壺との相性が悪かった。
両方のことをいっしょに考えるとややこしいので、まず銅のヤカンの問題を考える。
ひとつの茶葉。
+【章朗古樹青餅2016年・緑印】
ひとつのヤカン(銅のヤカン)。
ひとつの水。
ひとりが淹れる。
異なるのは茶壺だけ。
茶壺3種
章朗古樹春天散茶2016年
章朗古樹春天散茶2016年
チェコ土の茶壺では、過剰に熱が加わったような煮え味が出た。
熱伝導率が悪くて保温性の高いチェコ土の茶壺。茶壺の中で逃げ場のない熱が茶葉を煮やす。
写真には写りにくいが、他の茶壺と比べて茶湯の色がやや赤い。今年の春の新茶なので明るい緑色のはずが、赤味が加わって山吹色になる。
この赤味の加わるのが他の茶壺にも同じであれば、銅のヤカンの問題である。
ところがそうじゃない。
日本土の茶壺とプーアール茶
日本土の茶壺
紫砂壺とプーアール茶
日本土の茶壺も、紫砂の茶壺も、明るい緑色になる。
どちらも風味は軽くて爽やか。煮えたような味にはならない。
チェコ土の茶壺は昨日の失敗をふまえて、茶葉を少なく、湯の注ぎを極細の線で、短時間でサッと湯を通すような抽出をしてみた。軽くなって美味しく飲めるようになったが、それでも他の茶壺と比べたらモッタリしている。トロンと粘りのある水質。甘味が強いが苦底も強い。
この結果は9月7日の陶器のヤカンとチェコ土の茶壺の組み合わせでも同じであった。
+【一扇磨春の散茶2016年 その2.】
こうなると、銅のヤカンよりもチェコ土の個性に注目したほうがよいだろう。
チェコ土の茶壺と紫砂の茶壺
葉底
葉底
葉底には熱の通り具合の違いがちょっとだけ現れている。
この茶葉の場合、熱がしっかり通ったほうが青黒くなる。写真はちょっとわかりにくいが、左のチェコ土のほうがやや青黒い。
熱の伝わり方なのか、土質による化学反応なのか。
いずれにしても、生茶のまだ新しいうちは向いていないと言える。
熟茶とか、ちょっと煮出し気味に抽出するのが美味しい老葉の黒茶とか。
チェコ土は茶葉を選ぶ。
次回は老葉系の熟茶『7581荷香茶磚97年』あたりを試してみようと思う。

ひとりごと:
「趣味を極めるってたいへんなことですね。」
このテストをたまたま側で見ていた人がポツっと言った。
ちょっと興味があってちょっと齧ってみる。なにごともそのうちは楽しいけれど、深くなってゆくと手間も暇かかるようになる。お金もかかる。お金はともかく時間はみんなに平等に有限なので、なにかひとつのことに集中すると、別のなにかをあきらめる必要もある。場合によってはしんどい思いをすることもある。
ふと、「学会学習」を思い出す。
中国雲南省の紅河州を旅した時に、どこかの小学校の石碑に刻まれていた言葉。
「学ぶ機会があるから学ぶ」みたいな感じだろうか。
ひとりごとのようにつぶやかれた言葉。誰かになにかを教えるでもなし、なにかを励ますでもなし、そのへんの石ころくらい自然な印象で、チカラが抜けたのを覚えている。
学ぶというのは人間の宿命なので逃げることはできない。学びの過程で悩まされることにいちいち悩む必要なんてないのだ。
学ぶ機会があるから学んでいる。それだけ。

章朗古樹春天散茶2016年 その4.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 巴達山製茶農家+店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : ミニ熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺 銅のヤカン
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
ひとつの茶葉。
ひとつの茶壺。
ひとつの水。
ひとりが淹れる。
ヤカンが異なる以外の条件は同じ。
昨日にひきつづきこのお茶。
+【章朗古樹青餅2016年・緑印】
そしてチェコ土のマルちゃんの茶壺。
指で弾くとコン!と低めの音が鳴る。
厚みがある。重い。粗い肌の土の感触。
湯を注いでから表面が熱くなるのにちょっと時間がかかる。宜興紫砂の茶壺のような金属を連想させる鋭い熱の伝わり方ではない。じわっと鈍い熱の伝わり方。
ちょっと思いつきで銅のヤカンで淹れてみる。
銅のヤカン
チェコ土の茶壺とプーアール茶
これがぜんぜん美味しくならない。
嫌な苦底が出る。のっぺり重い。爽やかさがない。胸につっかえる。
なぜだろう?
熱の伝わり方に音の響きのような違いがあるとしたら、たしかにそうなのだ。銅の質感と土の質感が違いすぎる。チーン!とコン!。不協和音の響いた湯に茶葉が浸される。
それなら、ヤカンの素材をもっと柔らかい土モノにしたらどうか。
日本土のヤカン
日本土のヤカン
日本土のヤカン
日本土のヤカン。
口から落ちる水の線がユルユル。
日本土のヤカンとプーアール茶
ユルユルの水で熱の響きもやわらかそう。
日本土のヤカンとプーアール茶
これは美味しい。
甘い。ふんわり軽い。目の覚める爽やかさ。スッと喉を通って腹の底へ沈む。
それならこれはどうか。
日本土のヤカンと紫砂の茶壺
日本土のヤカンと紫砂の茶壺
日本土のヤカンと紫砂の茶壺
日本土のヤカンと紫砂の茶壺
これはいける。
それならこれは。
銅のヤカンと紫砂の茶壺
これもいける。
それならこれは。
真鍮のヤカンとチェコ土の茶壺
真鍮のヤカンとチェコ土の茶壺
真鍮のヤカンとチェコ土の茶壺
これもいける。
西双版納ではいつもこのチームでお茶を淹れていた。手が慣れている。
真鍮のヤカンは銅に比べると熱伝導率が低いので、熱の響きはおっとりしているのかもしれない。あるいは、使い込んでいるせいで内側の錫引きの表面が化学変化して、水の性質を変えない(安定している)のかもしれない。そうすると、やはり銅のヤカンのまだ新しい錫引きによる化学変化の問題であって、熱の響きの問題ではないのだろうか?
チェコ土の茶壺と紫砂の茶壺はどこがちがうのか?
チェコ土の茶壺と紫砂の茶壺
チェコ土の茶壺と紫砂の茶壺
紫砂の茶壺からチェコ土の茶壺に茶を注ぐ。
チェコ土の茶壺は苦味が重い。紫砂の茶壺は苦味が軽い。
苦味の出方だけが異なる。
こうなるとやはり化学変化のほうの影響も考えなければならないのか。
ヤカンと茶壺との相性は複雑すぎて、ひとつひとつ試してみないとわからないことになるだろうか。
うーん。
スッキリしない。

ひとりごと:
このままでは済ませないぞ。
茶葉はまだある。
章朗古樹青餅2016年・緑印

章朗古樹春天散茶2016年 その3.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 巴達山製茶農家+店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : ミニ熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 紫砂の茶壺 台湾窯
章朗古樹春天散茶2016年
銅のヤカンと陶器のヤカン
銅のヤカンとお茶

お茶の感想:
今日のお茶は散茶だが、圧餅したのを出品している。
+【章朗古樹青餅2016年・緑印】
散茶のままのは圧延の時に残ったちょっとだけの余り物。
たった6枚の出品だから、自分の飲む分はこの散茶だけ。
これを銅のヤカン(内側錫引き)と、台湾の陶器のヤカンで比べてみる。
銅のヤカンは水が甘い。
そのためお茶の輪郭がぼやける・・・と思っていたが、そうではない。
銅のヤカンの個性が理解できていないだけだった。
まだうまく言えないけれど、熱の伝わり方には音の伝わり方のような違いがある。
その違いが、茶葉の成分を抽出するカタチを変えて、お茶の味を変える。
この実験に立ち会ってお茶を飲み比べた人は、まるで魔法を見たように驚く(今回の証人は2人居た)。
そのくらいお茶の味に差がある。
ひとつの茶葉。
ひとつの茶壺。
ひとつの水。
ひとりが淹れる。
ヤカンが異なる以外の条件は同じ。
茶壺は、宜興の土を台湾窯で焼いたもの。形状はオーソドックスなタイプで、かなり薄手に軽くつくってある。精巧なつくり。水の切れも良い。
紫砂の土でもって台湾窯で焼かれた茶壺
紫砂の土でもって台湾窯で焼かれた茶壺
なぜこれにしたかというと、銅のヤカンとの相性が良いかもしれないと考えたから。
なぜ相性が良いかもしれないかというと、音の響きが似ているから。
指で弾いてキン!と響く感じ。
同じ響きのする水。同じ響きのする熱。
熱には響きがある。(たぶん)
音のように多彩である。
多彩な響きに茶の味が揺れる。人の心が揺れる。
熱の響き方の違いは、ヤカンや茶壺の質感や質量や形状から生まれる。
ここでは、何らかの物質が化学反応して味覚に関わる成分を変化させるというところに注目していない。
熱の響き方の違い。そこに注目している。
ブログを読むだけなら、おかしな話に聞こえるだろう。
でも、実際にお茶の味を体験したら、この説明は現実的であると納得するだろう。
ついでに言うと、「茶学」に参加しなかったのはバカだったと悟るだろう。(水の味の関係しているあらゆる仕事に従事する人に。)
銅のヤカン
銅のヤカンの湯の注ぎ
銅のヤカンは陶器よりも注ぎ口が精巧に作れて、落とす水がシャープな線を絵描く。
この感じも熱の響き方に関係している。
陶器のヤカン
陶器のヤカン
陶器のヤカンは水が太めにユルユルと揺れる。
そしてそのように熱の響きも揺れて、やや乱れる。
銅のヤカンとプーアール茶
銅のヤカンのお茶は甘い。
舌触りの甘さであり、糖が舌に残る甘さではない。
涼しくて透明感があり深く入り込めて身体に馴染む。
陶器のヤカンのお茶は渋い。
熱の響きの乱れが雑音となる渋さであり、渋味の成分がどうのこうのではない。
味にボリュームがあるが前に出てしまって深みにゆけない。雑味が舌に残って涼しくない。
今回は、銅のヤカンのお茶が圧勝。
「それぞれの個性があって良い・・・・」
みたいな言い方が自分は嫌いだが、なぜ嫌いなのか、こういう実験をするとよく分かる。
それぞれに個性があっても、一番美味しいのは誰でも分かる。意見は一致する。
ぞれぞれに美味しいみたいな平等意識は「美」を心で感じない石頭のすることであり、理性で世界をつまらないものにしている。
チェコ土の茶壺と銅のヤカンとプーアール茶
チェコ土の茶壺と銅のヤカンとプーアール茶
さらにチェコ土の薄いつくりの茶壺。
指で弾くとキン!とコン!の間くらいの音。
高音と低温の間の中音といったところか。焼き締めがやや柔らかいらしい。
やはりこれも予測したとおり銅のヤカンとの相性が良い。
ただ、ちょっと水の落としを高いところから強めにして、水音に高音を響かせる必要がある。
葉底
もしかしたら、陶器のヤカンと相性の良い茶壺を見つけることができるだろう。
このお茶はまったく違った美味しさを見せるかもしれない。
美人にはいろんなタイプがあるが、出会ってみるまで分からない。

ひとりごと:
夏が終わって秋になる空気。
空気の質感が光の反射を微妙に変えている。
自転車

一扇磨春の散茶2016年 その2.

製造 : 2016年03月21日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 京都地下水
茶器 : 白磁の蓋碗 紫砂の茶壺 チェコ土の茶壺 日本土の茶壺
一扇磨春の散茶2016年

お茶の感想:
つぎの勉強会のテーマは茶器。
9月にしたかったけれど、準備のための時間が足りない。
12月に延期する。
プーアール茶を美味しく淹れるにはどの茶器を選ぶと良いか?
正解はひとつではありません。
美味しさや体感にはいくつもの表情があるからです。
茶葉の個性と茶器の個性。
組み合わせの可能性を探ります。
このとおり。
考えられる限りを試した結果を凝縮して3時間の勉強会にする。
茶壺いろいろ
茶壺いろいろ
ひとつの茶葉『 一扇磨春の散茶2016年』を、いろんな茶壺で淹れる。白磁の蓋碗も含めて今回は8種の茶器を試した。
ちなみにこの散茶は5月14日に圧餅して出品している。
+【一扇磨青餅2016年】
この茶葉を選んだのは、早春の采茶ということ。新芽・若葉であること。茶樹が比較的若いこと。(今年2016年の早春は若い茶樹しか摘めるほどに茶葉が成長していなかった。)このため湯の熱に敏感に反応する。
散茶という形状もまた、湯の熱に敏感に反応する。
2016年は古茶樹の樹齢の古いのは晩春になってやっと摘み時が来たので、夏の雨の季節にさしかかっていた。茶葉の成長が早くて比較的大きく育ち、水分が多い。この場合、湯の熱には比較的おっとり反応するように仕上がるので、茶器の違いを試すには向いていないと考えた。
一扇磨春の散茶2016年
今日のいちばんは宜興紫砂の薄手の水平壺。
淹れたお茶は淡く優しいながらキリッとした輪郭がある。
ヒヤッと舌に冷たい感じがする熱いお茶。
そよ風のような爽やかさは深い森のお茶の表現にピッタリであった。
4種あった宜興の土の茶壺の中で、この水平壺が良かった。
違いははっきりしている。
厚みである。この茶壺は薄くて軽い。そして焼き締めが硬い。
宜興の土といっても、土質はいろいろあり、焼き締めによってもまた違う。
なんらかの物質と物質の化学反応が関係していそうに思えるが、今回はそこじゃない。
ずばり熱伝導率。
お茶の味を左右したのは、茶壺の中でいかにして湯の熱が茶葉に伝わったか。
熱の伝わり方の違いが大きい。
紫砂の茶壺
一扇磨春の散茶2016年
この茶葉『一扇磨春の散茶2016年』の性質を自分はよく知っている。
今年は「一天一采」を試みたので、より純粋に茶葉の個性を把握している。
春のお茶14種の中でも、このお茶の試飲回数はいちばん多いだろう。
どんな風味が出た時にどんな熱の通り方をしたのか、その因果関係を把握している。
その経験をふまえての推測ではあるが、熱の伝わり方の違いがお茶の味の違いとなった。
日本土の茶壺
日本土の茶器は、その多くが中国茶には合わない。
繊細な香りを吸ってしまったり味の輪郭を失うのが多いと思っていた。しかし、今回は違う結果が出た。2年ほど前に一度試したことがあって、そのときはダメと思っていたが、今日試したところでは宜興紫砂とちょっと似た感じのお茶の味になった。雑味は出るが嫌味はない。
この茶壺も薄い。軽い。そして宜興のとよく似た熱の伝わり方のする土肌である。土肌の見た目はぜんぜん違うが、熱の伝わり方が似ている。
湯を注いで茶壺が熱々になってゆく過程を、蓋のあたりに指を添えて観察する。指に伝わる熱の、伝わり方に注目する。
2年前はそこに気付いていなかった。
なので、この茶壺の個性を活かす淹れ方ができなかったのかもしれない。相性のよい性質の茶葉を選べていなかったかもしれない。
また、土モノは出来たてのときは安定しない。長らく使っているうちに安定してくるので、新品のうちに評価を急いではならない。
チェコ土の茶壺
茶学でもよく使っているチェコ土の茶壺。マルちゃん作。
今日のこの茶葉とはちょっと相性が悪い。
輪郭を失うのは予測できたので、そこを補うために全体のボリュームを上げようとして、じっくり抽出時間をとった。
豊満な風味。トロンと粘着力のある水質。ボリューム満点な味わいになったが、ヌケが悪い。爽やかさに欠ける。涼しくない。
(ちなみに今日の昼は暑かった。夏の終わりの台風が近づいている。空気はムッと湿気ている。涼しいお茶を身体が欲した。)
この茶壺で狙うべき美味しさのツボは、もっと違うところにあったと思うので、別の機会に試してみる。
白磁の蓋碗も試している。
白磁の蓋碗
なにもかもがストレート。そしてドライ。
熱い湯が冷たい舌触りになるはずがない。熱いのは熱い。辛い。
香りが強く立つ。立ちすぎてクドイくらいだ。
携帯のカメラで撮影したみたいに、被写界深度が深くてすべてにピントが合っているお茶の味。すべてが隠しようなく前に出るから逃げ場がない。ヌケが悪い。
業者の試飲にはやはり蓋碗が良いということになる。
白磁の蓋碗は薄い。指で弾いたらチン!と鳴る。高い音。
熱もまたそのように響いて茶葉に伝わる。
チェコ土のように柔らかくて厚みのあるのはコン!と鳴る。低い音。
熱もまたそのように響いて茶葉に伝わる。
そんな感じ。
葉底
たくさん葉底が溜まった。
今日はこのくらいにしておく。

ひとりごと:
熟成壺の試作品が届いた。
釉薬なしの焼き締めバージョン。
プーアール茶の熟成壺
プーアール茶の熟成壺
ほぼ完成。
4年かかった。仕事も熟成する。

章朗古樹春餅2016年・黄印 その1.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
保存 : 密封
茶水 : 京都地下水
茶器 : 宜興紫砂の茶壺+銅のヤカン
銅のヤカン
銅のヤカン

お茶の感想:
銅のヤカンが久しぶりに登場。
しばらく使っていなかったのは、修理に出していたから。
内側の錫引きにムラがあったので職人さんのところへ持って行ったら、無料で新品同様に仕上げてくれた。やはり仕事に不備があったのだろう。
ま、手づくりのものにはこんなこともある。
銅のヤカン
錫引きが新しくなったので金属臭を取り除くためにもういちど開壺作業をやり直した。茶葉を1時間ほど煮ると化学反応で茶湯が真っ黒になる。それを捨てて茶葉を新しく交換して、さらに4時間ほど煮る。こうすると金属臭が取れる。ちなみに茶葉は熟茶が良いような気がする。
それでもまだ安定しない。毎日使って3ヶ月くらい経ってやっと安定してくる。
銅のヤカンでこのお茶を試す。
+【章朗古樹青餅2016年・黄印】
銅のヤカンはちょっとクセがある。
クセを理解すると、いつもとは違うお茶の味を引き出せる。自分だけの特別な味。
この歩み寄りが、道具との関係をつくる上で大事なところ。買ってすぐに上手に使いこなせるような道具は、たぶん当たり障りなくみんなが使いやすいように作ってある。便利で、安くて、安定していて、日用品としては満点である。
自転車で言うとママチャリなのだな。はじめから足として使う以上の期待はしていない。
例えば、細く大きなタイヤでドロップハンドルで前傾姿勢をとる自転車であれば、まだ行ったことのないもっと遠くへ行ってみたくなる。太いブツブツのタイヤでサスペンションがついているマウンテンバイクなら、わざわざ山のオフロードを駆け下りてみたくなる。
ある目的に機能が特化してゆくと、日常の足としては逆に使い勝手が悪くなる。なにかを得てなにかを諦めることになる。その一長一短を心得ているから楽しみが深くなる。
シングルスピード
(7月に購入した愛車は、完成車として販売された自転車だから、汎用性の高いようにシングルスピードを後から多段ギア化できるようにフレームに幅を持たせてある。それが今になってちょっと物足りなく感じる。もしもシングルスピード限定のフレームなら、もっとシャープな線で美しいだろう。ペダルはもっと敏感に反応してシングルスピードならではの漕ぎ味が味わえるだろう。しかしそこまで特化して需要を限定すると数が売れなくなる。自分だけのために特注すると高価な趣味になる。中間は存在しにくい。このもどかしさ・・・。)
章朗古樹青餅2016年・黄印
章朗古樹青餅2016年・黄印
章朗古樹青餅2016年・黄印
章朗古樹青餅2016年・黄印
「黄印」+「宜興紫砂の茶壺」+「銅のヤカン」は、孟海県の古茶樹独特の「苦底」を味わうのに最強の組み合わせ。苦いけれど辛くない。苦いけれど軽い。軽いけれど長く響く。甘味もノッている。
香りは微かに「松香」(松葉の香り)がある。高温淹れでしっかり熱が通った時に顔を出す。
葉底
葉底の茶葉の開き具合、フワフワの触感、そして色からもしっかり熱の通った状態が伺える。
ちょっと茶葉が多すぎた・・・。
茶葉を少なめにすると濃くなり過ぎる心配がないので、じっくり時間をかけて抽出できる。グッと熱の通った味わいが引き出せただろう。

ひとりごと:
広東の茶友に頼まれて手配した。
黄銅(真鍮)のヤカン。
黄銅のヤカン
彼はすでに同じタイプの赤い銅のヤカンを愛用していて、リピートの注文。
銅のヤカンは水が柔らかくなりすぎて、茶葉の香りが立ちにくい。彼はそこを心得て、自分好みの美味しいお茶を淹れている。
熱伝導率のちょっとだけ低い黄銅がどのように使われるのか、どんなお茶の味と出会えるのか、楽しみである。


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