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刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
圧餅の蒸し
圧餅の石型
圧餅の布袋

お茶の感想:
今回は自分ひとりで圧餅する。家の厨房のカンタンな設備で茶葉を蒸す。
圧餅の工程は、茶葉を蒸して布に包んで石型で圧して、冷ましてから布を外して涼干・晒干する。
文章にするとたった一行のことだが、ひとりでやると重労働で、一日20枚圧餅するのがやっと。道具を手入れして掃除を終えたら深夜になる。一週間続けたらあちこちの筋肉が盛り上がって体つきが変わってくる。
180g×20枚=3.6kg。製茶(萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干)をひとりでするのとほぼ同じ生産性である。65kg の体重の人間がたった3.6kgの茶葉に振り回されるのだから、圧餅の茶葉に与えるエネルギーがいかに多いかがわかる。
圧餅は、円盤型に整形するだけが目的じゃない。
散茶の嵩を減らして運搬しやすいようにしたことが出発点だったとしても、”蒸す”ことの火入れや、蒸気の水による軽発酵や、圧延することの茶葉の繊維の変化を、昔の職人はなんらかの利点として計算に入れたはず。お茶に薬効が求められていた時代だからなおさらのこと。
圧餅後の餅茶
餅面
もしも圧餅を工房に依頼すると一日数百枚も可能である。しかし、茶葉の変化を追いかけられない。数人一組の分業になるからだ。分業では、各自の担当するところの茶葉を観察できても全体は把握できない。蒸したとき、布で包むとき、包んでから2度蒸しするとき、石型で圧すとき、布を外すとき、涼干・晒干で乾燥させるとき。この一連の変化を見ているだけではダメで、どうしても手の感触で、身体で流れを知る必要がある。
晒青毛茶ができるまでの製茶も同じ。
采茶からはじまって萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干の流れを身体で知るのが大事。
というのが最近わかってきたので、圧餅も自分でやることにしたのだ。
身体で知ることは他人に伝えられる知識になりにくいせいか、軽視されがちだと思う。まして手の仕事は効率が悪くて、結果的にお茶の価格を上げてしまうから市場での評価は低い。
例えば揉捻について。
名前のとおり茶葉を揉み捻る工程であるが、「手でする場合は何分かかるの?」と、現場でよく聞かれる。
揉捻
手で揉捻すると、ある時点で急速に茶葉が変化しはじめるのが指先や手のひらの感覚に伝わる。さらにすすめると、あきらかに「もういいよ!」という茶葉の繊維や水分の変化が手に伝わる。手と茶葉との会話がある。
茶葉のコンディションは毎回異なる。たとえ同じ一本の茶樹から採取しても、日によって水分・栄養分・繊維質が異なるし、気温や湿度や気圧という外的な要因も揉捻の結果を左右するだろう。
したがって、揉捻の時間は5分で終わることもあれば20分かかることもある。その判断は手がする。
雲南の自然栽培の茶樹は一本一本の品種特性が微妙に異なり、茶葉の大きさもカタチも繊維質も成分も異なるから、揉捻一回の手に取る茶葉(この段階ではまだ水分が多いので1.5キロくらいだろうか)ごとにチカラ加減や時間を調整しなければならないはず。
手で揉捻すると個人によって技術もチカラも異なるから、例えば自分なら10分のところを他人なら15分かかるかもしれない。手は疲れてくるから1回めと10回めにかかる時間は異なる。
茶摘みのときから茶葉に触っていると、一連の工程(采茶・萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干・圧餅)の前後の関係にも気付く。
手で揉捻
例えば、早春の雨の降らない日が続いた茶葉の揉捻は短時間で済むとか、雨が降った後は繊維が硬くなって3倍の時間かかるとか、殺青で水分を残すようにするとヨジレやすいとか、殺青の火入れがしっかりできたときに手にくっつく茶醤の粘度が高いとか、揉捻をしっかりすると軽発酵がすすんで甘い香りが出るとか、揉捻しすぎると圧餅の粘着が悪くなるので蒸し時間を長くしなければならないとか、揉捻でわかる水分量で晒干の茶葉を広げて一日で乾く厚さを予測するとか。
もしも機械で揉捻して茶葉と手の会話が断絶すると、前後のつながりがなくなり、つじつまが合わなくなるだろう。お茶の性質をある方向に導こうとするなら、ある個性を宿そうとするなら、手で揉捻するのはあたりまえなのだ。
手で揉捻したら生産効率が5分の1になる。
単純に計算して5倍の価格でお茶を売ると機械揉捻の生み出す利益に追いつくわけだが現実的ではない。
機械揉捻
「手の揉捻は何分するの?」と聞く人の心理はおそらくこのことを先に考えている。
工業生産的な価値判断が背景にあるのは、そのほうがカシコイと評価される社会環境であり時代であるからだ。さらに悪いのは、それを知ったうえでマーケティングするのも出てくる。手で揉捻する本当の意味を考えずに揉捻時間を1分くらいに短縮してカタチだけ”古式”だったり”手工”だったりする。
労働をつまらないものにしてしまったので、現代のお茶づくりはどうしても昔のお茶づくりに勝てない。お茶だけでなくて道具づくりも。道具だけでなくてあらゆるモノづくりがそうだろう。
人が貧しくなるスピードが加速して、お金を稼ぐスピードが追いつかない。
さて、『刮風古樹青餅2018年・黄印』(未出品)。
刮風古樹青餅2018年・黄印
刮風古樹青餅2018年・黄印
5月4日に圧餅を終えて、10日間かけて涼干(陰干し)して、荷造りを終えたところ。長期熟成は西双版納では行わないからとりあえず上海にお茶が運ばれる。
180gの小餅サイズ全部で19枚。出品は17枚くらい。出品時期や価格はまだ決めていない。
圧餅の蒸し時間はいつもよりも長くなった。深蒸しになった。
これも手の判断である。石型を踏む足の判断でもある。
なぜ手や足がそう判断したのか?頭で解析を試みているところ。
この時期がいちばん不安になる。もしかしたら手が判断を誤ったのではないか?と疑いたくなるほど、お茶の味が揺れて安定しないからだ。
お茶淹れ
茶湯
この間に試飲しなければよいのに、気になりだしたら夜中であろうがガマンできずにお茶を淹れてしまう。ヘンな味が出て心配になって眠れなくなる。
圧餅を3日前に済ませてきた北京の茶友が、刮風寨の古茶樹のお茶を持ってきた。
彼のオリジナルだが、製茶は農家がして、圧餅はメーカーがしている。彼自身は身体を動かさないので太っている。カタチだけのお茶づくりは誰にでもできる。
茶友の餅茶
餅面がキレイ
メーカーの圧餅は餅形がキレイだ。
品茶
でも、やっぱりヘンな味が出ている。
圧餅後に10日くらいかけてゆっくり茶葉が乾燥する過程の同じ道をたどっている。
圧餅前の散茶の味をみると、そのヘンな味は無い。なので明らかに圧餅が影響した味である。
圧餅3日後の茶友のと10日後の自分のを比べると、ヘンな味が抜けているのがわかった。よかった。よかった。
炙って乾燥
圧餅後の水分が残っていることだけがヘンな味の原因じゃない。
炭火の遠火で炙って茶葉を強制的に乾燥させても、やっぱりヘンな味が残っている。
水分の他に茶葉の繊維の変化がお茶の味に影響していると推測する。繊維の変化には時間がかかる。

ひとりごと:
やっと終わった。ほっとした。

刮風寨単樹2号2018年 その1.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 散茶100g
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 農夫山泉・四川省
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
月
お茶で休憩

お茶の感想:
前回の更新日付を見たらもう1ヶ月以上も経っていてハッとした。お茶づくりに集中して茶葉のほうを向いていると、人間のほうの言葉があまり浮かんでこなくなって、書くこともなくなる。
お茶のことは身体が覚えているし、茶葉には物理的にすべてが記録されている。
お茶を淹れると味や香りとなって現場のことが再現される。
今年の春は良かった。
いろんなことがうまい具合に重なり合った。2009年からお茶づくりにかかわるようになって9年目になるが、はじめてスッキリいった気がする。モヤモヤしたところのない理想のお茶。夢が叶た。
前回の記事に書いたように、はじめは丁家老寨の古茶樹を追ったのだが、いろいろうまくゆかなくて、刮風寨のお茶をつくることになった。
刮風寨
刮風寨は人気のお茶どころで、これまでとは事情の違うところがあるが、今回は茶友たちに助けられた。茶友らは自分より10日先に山に入って、準備をしたり、旬のタイミングを計ったりしていた。彼らは刮風寨を追いかけて3年目になる。その経験が活かされた。
オフロードバイク
バイクで森に入る
6人ほどのチームプレイはピッタリ息が合っていた。声もでなくなるほどの重労働でヘトヘトになりながら、奇跡の数日にみんなコーフンぎみだった。誰も口には出さないが、自分たちがこの春一番かもしれないと思っていたはずだ。
森
森の小屋
自分が山にいた期間は10日間。オリジナルのお茶を4種ほど出品することになると思うが、4種合わせても10キロあるかないか。茶友たちの分を合わせても約60キロ。そのうち生茶のプーアール茶が45キロ。紅茶が15キロ。
6人は収茶(茶摘みを監視して鮮葉を集めて村へ持ち帰る)と製茶に集中して、茶摘みは農家が雇った13人の苗族の部隊が山小屋に住み込みで働いた。合わせたら19人。
苗族13人
19人で10日間(茶摘みは8日間)で60キロ。これでも数年に一度あるかないかの豊作。体力の限界だし、これ以上人手を増やすと質を落とすし、天気の良い日はそう長く続かないし。
テント
(製茶場にテントを張って24時間の監視体制)
晒干
刮風寨の山から降りてすでに10日以上経つが、筋肉や関節がまだ熱を持ったまま圧餅加工をはじめたので、疲労の限界に達したのか、ついに身体が動かなくなった。今になって、捻挫した足首やら、毒虫に噛まれた跡やら、竹の道具のトゲが刺さったままになっているのやら、あちこちの痛みが出てくる。
休養がてらとりあえず2015年の下見のときの刮風寨の写真をまとめた。
+【刮風寨 古茶樹】
今回つくったお茶の紹介ページはこれから半年ほどかけてアップする。
今回の写真はあまり多くない。忙しすぎてそれどころじゃなかった。まあいいのだ。茶葉という現物がある。写真よりもずっと確かな証拠になる。
チームプレイの結晶と言える刮風寨単樹のお茶2本。2018年4月13日采茶。
とりあえず1号・2号と名付けている。
単樹1号と2号
左:単樹1号100g
右:単樹2号100g
それぞれ1キロほどつくれて、自分は100gずつ分けてもらうことにした。出品しないで勉強会で自らお茶を淹れる。
そのうちの1本は2016年にも一度つくっていて、そのとき自分は刮風寨の現場にいなかったので友人に分けてもらって、ブログにも登場している。
+【刮風寨単樹小餅2016年 その1.】
今のところ自分の手元にある新しい生茶のプーアール茶ではいちばん美味しいお茶だが、2018年の春はこれを超える。
美味しさといい体感といい、奇跡のお茶だ。良すぎるのが怖いくらい。というのも、今年の春のように恵まれることはめったにないと知っているから。美味しいお茶のできる次の年はたいがい美味しくないことも何度か経験しているから。地域全体の森林の環境破壊がますます進んでいるのを目の当たりにしているから。
茶友らのリクエストで、単樹2号の殺青は自分が担当した。
殺青
今年の春は一鍋5キロの殺青を合わせたら30鍋はしただろうか。自分のお茶でなくても農家の手伝いもして経験を積んだ。
数年前まで易武山の殺青は平鍋と呼ぶ水平に据えられた鉄鍋が主流だったが、鍋の中で茶葉をひっくり返すのにチカラが要ってたいへんなので、近年はすべて斜鍋に置き換わっている。このため、熱のとおり具合が変わって、茶葉が乾燥ぎみに仕上がるようになった。それが生茶のプーアール茶としてふさわしくないと考えているので、斜鍋でも茶葉の水分を逃さないよう工夫した。茶友たちもこの方法に賛同してくれたので、われわれの生茶はひと味ちがう。はず。
揉捻作業
揉捻
刮風寨単樹2号。今日は2号のほうを飲む。ひとりで飲むのははじめてになる。
下から見たら樹高10メートルくらいと思っていたが、木登りした苗族の話では15メートルらしい。
単樹2号
2年前の2016年に茶友が収穫を試みたが、あまりに少なくて、一鍋3キロにも満たないので殺青がうまくゆかないと判断して、陰干しと天日干しで白茶風に仕上げていた。茶友らが集まるたびに飲んでもう無くなったが、記憶しているその味とよく似ている。
刮風寨単樹2号2018年
刮風寨単樹2号2018年
刮風寨単樹2号2018年
製茶が違うし、しっかり火を通したので白茶の味はしないが個性は同じ。驚くほど味が似ている。
鮮葉は4.5キロ。殺青の一鍋分しかない。年に一度の一打席でホームランを打たなきゃならない。火加減を間違って焦がしたらパーになる。かといって火を弱めたら弱気が宿る。できた散茶約1キロを数人で分けて、みんな圧餅しないで散茶のまま飲み切るつもりだから、殺青が完成度を決める。強気に高温で攻めたら、背中に感じたみんなの緊張感がそのまま、ヒヤッと冷たいような口感になってお茶の味に現れているような気がする。
葉底

ひとりごと:
刮風寨の山から降りて自分ひとりで圧餅の準備などをしていたときに、茶友ら数人はまた刮風寨に戻って数日を過ごしていた。
彼らが降りてきたときに「なにしていたの?」と聞くと、「なにもしなかった。」らしいのだ。
古茶樹の新芽・若葉はまだまだあって、鮮葉は毎日のように収穫されるので仕入れてお茶づくりができたのに、なにもせずにただボーっと他人のお茶になってゆくのを眺めていたらしい。
旬が過ぎたのだ。命の燃えるような旬のギラギラした輝きはほんの数日しか宿らない。その輝きを知ったらもうお腹いっぱい。たくさんあっても仕方がないことを知る。


茶想

試飲の記録です。

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