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温州人第六批熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
西双版納
メコン川
西双版納
西双版納

お茶の感想:
西双版納の空港に着くなり茶友が「見せたいものがある」と言って、市内のとある高層マンションに連れてゆかれた。
300平米に4部屋くらいある高級住宅だが、住人はすでに引っ越して住んでおらず、据え付けの木製家具だけが残っている。
そのうちの一室に木工職人が銭湯の風呂くらいある木箱を2つ組み立てていた。
本格的に熟茶づくりをするための設備である。
西双版納に近いミャンマーで鉱山開発をしている温州人の茶友が先頭を切って独自の熟茶づくりをはじめたのが2016年の秋。
この記事に書いている。
+【版納古樹熟餅2010年 その32.】 
+【温州人の易武古樹熟茶 その1.】
それから2年。
温州人の熟茶はすでに第六批の微生物発酵がはじまっている。6回目の熟茶づくりになる。
ミャンマーの紛争地域なので現場に入れないが、ちょくちょく持ってくるサンプル茶葉は回を重ねるたびに良くなっている。温州人の創意工と、微生物の世代交代がすすんで発酵に熟練してきたことと、いい具合に成熟してきた。
ミャンマーの発酵
ミャンマーの発酵
毎回数十キロ以内の少渥発酵。
メーカーでは一般的に何トンもの茶葉を発酵させるので、数十キロで安定した結果を得ることができるのはちょっと特殊。原料の茶葉は少量ほど質の良いものになるので、これまでにはない質の熟茶ができる。はず。
この技術をそのまま西双版納に移植するプロジェクト。
昨年の秋に広東人の茶友が西双版納のマンションの一室で試みたが、狭い部屋では温度や湿度の管理が難しいということがわかった。茶友たちと議論を重ねた結果、大きな部屋と大きな木箱が要ることになった。
そこで地元の不動産王の茶友に相談したら、広い空き部屋を提供してくれることになった。乾燥した毛茶にして150キロまでなら余裕で醸すことができる。
中国の田舎の不動産は空き部屋だらけである。なのに不動産価格は高騰してどんどん新しい建物ができる泡末経済。遠慮なくタダで借りることにする。
さて、原料の茶葉をどうするか。
ミャンマーの茶葉、ラオスの茶葉、タイの茶葉、雲南省臨滄市の茶葉、いくつか候補が上がっている。いずれも古樹の茶葉が安く入手できる。地元の西双版納に候補がないのは価格が高すぎるから。熟茶づくりの茶葉はもともと西双版納よりもその周辺地域のほうが多いので、問題ないだろう。伝統に培われてきた知恵を見落とすことにはならないはずだ。
今日のお茶は温州人の第六批。
『温州人第六批熟茶2018年』仮名とする。
原料の茶葉はミャンマーの鉱山から雲南省に入って最も近い茶山が臨滄市鎮康県の”果敢交界”というところらしい。古茶樹がある。
中国語のサイトに紹介があった。
+【来自中国镇康县与缅甸果敢交界的古树普洱茶】
茶具
晒青毛茶
温州人が何度か通って機械を使わない手工の殺青(鉄鍋炒り)を農家に教えて、今年の9月中頃につくった晒青毛茶を90キロほど調達した。もともと茶葉の価格の安い茶山なので一般的には機械で殺生・揉捻をしているらしい。たくさんつくってたくさん売らないと農家は生活費も稼げない。手工でつくる非生産的な分は追加料金を払って補うが、それでも西双版納の有名でない茶山に比べて3分の1の価格。
もちろん直射日光による晒干で仕上げるようオーダーしてある。
雨季がまだ終わっていないので秋の旬とは言えないが、試作には十分。いい感じの熟茶ができることがわかったら春の旬を待てばよいのだ。
微生物発酵させる前の段階の晒青毛茶(生茶)のサンプルもくれたので、まずはそれを試してみる。
泡茶
葉底
煙草っぽいスモーキーな香りがあり苦底があり、アッサムっぽい雲南大葉種の田舎臭さが出ているが、だが栄養は充実している様子。
製茶は、焦げや生焼けがほとんどなく均一な火が通っていて、熟茶づくりに適していると思う。
微生物発酵途中の茶葉。まだ発酵前期である。
第六批熟茶
散水第一回目から2週間目。
もうあと1回の散水を最後にして30日くらいかけてゆっくり乾燥させる。
なので早熟であるし、圧延の蒸気も通っていないから菌類の生きている”生”の状態だし、いつも飲んでいる熟茶とはずいぶん異なる味であるが、生の試飲も回を重ねて慣れてきたから、ある程度良し悪しがわかる。
第六批熟茶一煎め
第六批熟茶三煎め
上: 1煎め
下: 3煎め
熟茶は一煎めの茶湯の色が赤味があって煎を重ねるほどに黄色っぽく明るくなるのが普通だが、これは逆で生茶のように煎を重ねると赤味が増す。まだつくられていない酵素類がたくさんあるのだろう。
微生物発酵の水分の多いときに発熱して高温になるのを防ぐ工夫が新しくて、比較的低温を保ちながらゆっくり発酵させてある。その効果が現れていて透明で潤いある水質に仕上がっている。
茶湯の色は生茶のように黄色いが、味は微生物発酵のもの。といっても熟茶にはぜんぜんなっていなくて酸っぱいヨーグルトな感じ。
微生物発酵は前期と後期で異なる微生物が異なる仕事をする。前期の主役の黒麹によってつくられたクエン酸がまだ多く残っているから酸っぱいのだ。後期の主役の枯草菌類がこの酸を分解するのだろうか。
第六批葉底
葉底には緑色が残っているが、この先の30日間のうちに一日一日熟れてゆき、仕上がりはもっと赤い黒い茶葉になると予測している。
圧餅したらどうなるのか、蒸気の熱とその後の乾燥の影響がどうなのか、保存のときの変化はどうなのか、この続きを見たいから、次回は圧餅テストをしてみる。

ひとりごと:
現代の鉱山開発は土から金だのプラチナだのいろんな金属を分別しながら採集するので、土の成分分析をする技術がある。これで茶葉の成分分析をしているから、熟茶の微生物発酵がつくりだす良い成分と悪い成分を見分けることができる。健全な発酵ができているかどうかを人の感覚だけでなく科学的な観点で確かめられるのは安心できる。
温州人が試しにわれわれの今年の春の刮風寨の小茶樹と古茶樹の成分分析をしてみたら、古茶樹の茶葉には味にかかわるある成分がやや多いことがわかった。やや多いの”やや”のために価格差が5倍以上もする。そう思うとバカらしくなる。
もっともこれは味にかかわると認識できている成分にフォーカスした科学的な理解の仕方である。まだ認識できていない、それを説明する言葉すら定義されていない何らかの、人の感覚の森羅万象についてはいったん無視している。というか、無視できるのが人の脳の理解の仕方なのかもしれない。
ある成分が何だったのかは言わないことにしておく。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
薪ストーブ
お茶淹れ

お茶の感想:
2017年1月のこと。
チェコの冬の薪ストーブで沸かした湯で、マルちゃんとお茶淹れ比べをしたとき、ヤカンの湯がグツグツ沸騰するちょっと手前の湯でお茶を淹れたら締まりのない味になった。
その時のお茶は紅茶の『巴達生態紅餅2016年』。
雲南紅茶
マルちゃんは、グツグツ沸騰してからの湯を使うべきだと主張する。
もしも少しぬるめの湯にしたいならグツグツ沸騰させてから茶海に移すなり、ヤカンのまま冷ますなりしたらよい。
例えば、沸騰していない湯の温度が97度で沸騰したのが98度で、そのほんの1度の温度差がもたらす差ではない。もっと大きな差がお茶の味に現れる。
沸騰した湯にしかない熱の振動があるらしい。
そう解釈している。
その振動があるかないかが問題。
刮風古樹青餅2018年・黄印
茶器と茶葉
2018年の黄印の圧餅の工程の”蒸し”をテストした茶葉。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
蒸して涼干・晒干して、蒸し時間をどのくらいにするのかの参考にした。
餅茶180gサイズなので、1枚分に満たない端数の100gほどが散茶で余って、それを蒸した。
同じ蒸し器の熱量で180gと100gとでは、単純に考えると1.8:1.0の蒸し時間で熱の通りは等しいはず。
3分半蒸して×1.8倍したら6.3分。6分18秒が180gサイズの餅茶の場合に等しい蒸し時間となる。
最終的には6分40秒蒸すことにした。
けっこう近い数値に勘が働いたのは、その前に小樹の茶葉でもっとたくさん蒸しテストをしていたから。餅茶の180gで4分くらいのもあれば9分くらいのもある。
鉄瓶と炭
沸騰する湯
泡茶
葉底
蒸しによる”蒸し味”が目立つのはほんの1ヶ月間ほどで、5ヶ月経った今となってはどのくらい蒸したのかをお茶の味から推測することが難しくなった。さすがに4分と9分には差があるが、5分と6分の差はわからない。
いや、違う。
こういうのは例えば7分13秒で茶葉の温度があるところに達して、そこで急速な変化が起こるというようなものだろうから、5分と6分の差はどうでもよいのかもしれない。
そうすると微調整なんてのはたいした効果を得ない。急速な変化が起こる温度なり時間なりのポイントを知って、そこを超えるか超えないかの判断が大事になる。
もしも急速な変化の起こるのがほんの数秒間のことなら、その中間で止めることはまず無理だろう。
グツグツ沸騰した湯なのかそうでないのかの差と似ている。
ということを最近になって気付いたので、今後の参考のために記事にしておく。

ひとりごと:
殺青の鉄鍋炒りの時間もそうかもしれないな。

刮風生態青餅2018年 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
茶壺
底敷き
茶針
道具
鉄瓶

お茶の感想:
道具には生命感が大事。
そこにあるというよりか、そこにいるという感じ。
茶葉にも生命感。
+【刮風生態青餅2018年】
茶葉餅面
お茶の味にも生命感。
茶湯
葉底

ひとりごと:
たぶん、生命と生命が交信して命の話をしている。
瑶族のアクセサリー
ラオスのバスケット
タイの布

刮風寨単樹2号2018年 その2.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶100g
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶・炭火
単樹2号
単樹2号
茶壺

お茶の感想:
お茶が美味しいかどうかの判断は過去の記憶に頼っている。
そうしようと意識しなくても、無意識のところで脳が働いている。
はじめて飲むプーアール茶の美味しさが一瞬で分かるのはそのせい。過去に別の食べものや飲みもので経験した記憶があるから。その記憶は抽象化したカタチになっていて、美味しさの要素みたいな共通点を見つけることができる。
ここまでが、どこかで聞いてきた脳の働きの話。
ここから先が、さらに勝手に想像を膨らませた話。
美味しさの記憶は舌や鼻だけでなく、歯の記憶も、目の記憶も、耳の記憶も、喉の記憶も、胃の記憶も、腸の記憶も関連しているかもしれない。
味に関するデータだけでなく、光や音や温度や振動や電気信号からもカタチの共通点を見つけているかもしれない。
例えば、はじめて飲むお茶に、いつか見た夕日の空の光と同じカタチを見つけて「懐かしい味」と認識するとか。
例えば、好きな音楽の旋律やリズムと同じカタチを見つけて、お茶の味に同じ印象を味わうとか。
味の経験がなくても美味しさを判断できる。
紫砂
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
+【刮風寨単樹2号2018年 その1.】
「静かな湖面を水鳥が低空飛行でずーっと飛んでいる感じ」。
チェンコーンの友人がこのお茶を飲んで言っていたのは、そのことだった。
想像力を働かせて比喩的に表現したのではない。記憶にこのお茶の余韻と同じカタチのものがあったのだ。
お茶を飲んで、目の前にないはずの遠い景色を見たり、歩けないはずの雲の上を散歩したり、息をしたまま海の深いところへ潜っていったり。
無意識は自由に遊べる。
葉底

ひとりごと:
こんな話をしているせいか、お客様二人からメールで写真をもらった。
無意識ですべてが繋がっている。
許可を頂いて掲載。
海
海
港
海の光。
森と火
森と日
森の空気。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
黄印餅形表
黄印餅形裏
黄印餅形包内側
包み紙
餅面
茶葉

お茶の感想:
このお茶。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
ちゃんと炭で湯を沸かす。
鉄瓶
鉄瓶
湯を注ぐ
蒸らす
茶湯の色
泡茶
すべてがピタッと揃わないと。

ひとりごと:
熟成壺入り。
熟成壺
熟成壺
1年以上熟成させてから出品することにした。
長い長い。がまんがまん。

孟宋新緑散茶2018年 その1.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・ガラス杯・鉄瓶+炭火
孟宋新緑散茶2018年

お茶の感想:
西双版納でよく交流している愛尼族の農家の若者がつくったお茶。
緑茶のような生茶。
強い火でいっきに炒り上げて、軽発酵のスキを与えず、緑の新鮮味が固定されている。
ここまで高温で攻めて焦がさないのはなかなかの腕前で、その腕前を自慢をしたい気持ちが現れた若さがある。
茶樹は樹齢70年くらいの小樹で、2年前までしばらく采茶されていなかった自然栽培だから原料としては申し分ないが、采茶のタイミングが数日早くて、新芽・若葉が細かくて、風味がしっかり乗っていない。
サッパリ爽やかなだけが取り柄のようなお茶。
泡茶
孟宋新緑散茶2018年
いいポジションを取ったと思う。
あと数日待って茶葉が育ってから采茶したら、よくある生茶の原料となっていたし、特別な存在にはなれなかったかもしれない。
全部で8キロ。
できたての晒青毛茶をどうしたら良いか?と、農家の若者が山から持って降りてきた。
計画性なくいつも金がなくて困っている人なので、すぐに現金と交換してやった。たぶんお金を急いでいたから采茶のタイミングが早かったのだと思う。
茶湯の色
さて、どうしようかとひとりで何度か試飲するうちに、あんがい好きになった。
3月18日采茶で、春の訪れを告げるお茶となるから、上海の友人の店に6キロ送った。7月に立ち寄ったときにはすでに売り切れていた。
残りの2キロは自分の手元にある。
圧餅を試そうかと検討してみたが、殺青で火入れしすぎているから軽発酵の効果も期待できず、運搬の利便性以外に利益はなさそう。2キロだから小さめの枕くらいの嵩しかないので、散茶のままにした。
おまけのお茶にしてお客様に分けているうちに減ってきた。夏のうちに配りきって、夏の終わる頃には飲み切るだろう。
葉底
新芽若葉
忘れた頃にまた春が巡ってきて、あいかわらず金に困っている若者がタイミングの早い采茶をして、できたての晒青毛茶を8キロほどを持ってくる。
そういうふうに進歩のないほうがよいかもしれないな。

ひとりごと:
上海
上海に9日間居た。
今回は勉強会をしなかった。
台風が近づいて雲がすごいスピードで流されていて、毎日雨が降って、お茶の味も荒れていた。
夏休みになったところの小学2年生の上海の坊と遊んだ。
雨のときは天山茶城にある友人の店を借りて二人でお茶淹れの稽古をした。
晴れのときは中山公園を走り回ったり、美味しいものを食べ歩いたりした。
上海の坊はまだ幼いから、叔叔が他の大人たちよりも暇人であることに、なにの違和感もない。
暇人じゃないとできない仕事もあるぞ。
我ながらいいポジションを取っていると思う。

刮風生態青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・ステンレス電気ポット
はじめのトンボ
トンボと空
メコン川とトンボ

お茶の感想:
この春、刮風寨の小茶樹でつくった生茶。
+【刮風生態青餅2018年】
よいお茶だと思う。
泡茶
水滴
若い生命力にあふれている。
味が見えないくらい透き通っている。
香りは朝の空気のように身体を浄化する。
雰囲気があるので、人それぞれに景色を見ると思う。
そんな想像力の空白のあるお茶。
甘いとか苦いとかなにかに香りが似ているとか、具体的な表現でつまらないものにしたくない。誰もが子供の頃には持っていた霊的な感覚が目を覚まして、少し黙って鑑賞したい気持ちになるだろう。
原料となる茶葉の素質はもちろんだけれど、この味には製茶の成果も現れていると思う。
そんなに特別なことはしていない。
黄印や緑印のように気合いを入れたわけでもない。
茶友たちは刮風寨のお茶づくり3年目で、もっとこうしたいああしたいという欲も出てきて、経験と工夫も積み重なって、鮮葉を目の前にしていざ製茶をはじめるときに頭の中にいろいろ考えを巡らせていたと思う。
でも、自分ははじめてだった。
同じ漫撒山の丁家老寨や一扇磨のお茶が近いから、とりあえずその経験をもとに製茶してみるしかない。
泡茶の茶葉
泡茶
はじめの殺青の5鍋分くらいは生焼けだったり焦がしたりして失敗している。
とにかく、刮風寨の鮮葉に自分を合わせるのが精一杯で、自分なりの工夫を凝らす余裕なんてなかった。
無心だったわけだ。たぶんそれが良かった。
自分から意識して無心にはなれない。意識していないから無心なわけだし。
この次に刮風寨の製茶に無心になれるときが来るとしたら、もっともっと経験を積んで、鮮葉を目の前にしたときに考えるより先に身体が動くときだろう。
ということは、それまではスランプになって悩む期間があるのかな?
ま、今からそれが分かっていたらちょっとはましだろう。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)
焦げもあるし軽発酵ムラもあるし、透き通った味が説明できない。
こういうのが好き。

ひとりごと:
今日はトンボの日だった。
トンボの群れ
トンボ拡大
トンボ
斑のトンボ

刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.

製造 : 2018年4月末(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・ステンレスポット
チェンライバス
チェンライバスの扇風機
チェンコーン
メコン川
晩春

お茶の感想:
今年のメインのお茶のページができた。
タイのチェンコーンに滞在して1ヶ月。布を求めてラオスに1日行った以外は、毎日文章とにらめっこした。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】 
+【刮風古樹青餅2018年・緑印】 
ここに書いていない続きの話がある。
自分が景洪のアパートで圧餅をしているときに、茶友はまた刮風寨に行った。
第一波(初摘み)の最後の”晩春”のお茶をつくるため。
すでに何度も雨が降っているから、茶葉の繊維は硬くなっているし、早春の茶気は逃げているし、しかし、噂によると早春よりも香りは強いらしい。価格も安いから普段飲みのお茶になるかも。
それで、5月15日頃だったか、茶友が山から降りてきてサンプルをくれた。
刮風寨の工房で圧餅も済ませてある。
采茶は4月末頃。黄印や緑印のおよそ2週間後。
晩春の餅面
晩春の餅面裏
西双版納は雨季の入り口で雨の降る日が多くなっているから、次の日の晒干(天日干し)を含めて2日間晴れが続く日を選ぶと、結局2日分しかつくれなかったらしい。少量すぎて売る分はない。
一般的には雨が降ってもつくる。農家は毎日つくっている。半透明のプラスチックボードの下で干すからだが、われわれは直射日光にこだわるからつくれない。
古茶樹は新芽の出てくるタイミングが一本一本違う。
例えば今年の茶坪の場合、契約する農家の山の斜面の200本ほどのうち4月11日・12日・13日の3日間に采茶した黄印や緑印になった51本と、単樹の2本と、合わせて53本が理想のタイミングで采茶できたが、それ以外の147本は理想からはズレたタイミングで新芽が出る。
さらに、一本の茶樹の大きな枝ごとにもちょっとずつ差がある。
理想のタイミングの53本も、あと2週間ほど待つと別の枝の新芽・若葉が成長していて収穫できる。
したがって、理想のタイミングの収穫量は200本分の53本ではない。400本分の53本に相当するだろう。
理想と理想でないのは1:8の割合ということになる。第一波(初摘み)のお茶にもいろいろなレベルがあるのだ。
茶友が試した理想ではないほう。最後の初摘みの晩春のお茶。
晩春
『刮風古樹青餅2018年・晩春』と名付けた。
見るからに違うが、内容もまったく違うお茶になっている。
茶葉が開いているのは、繊維が硬くて揉捻で捩れないせい。
新芽が少ないのは、育って若葉になっているせい。
茎が短いのは、大きく育って柔らかい葉のところだけを摘むせい。茎はさらに長く太く育って硬いから摘めない。
葉の色がとりどりなのは軽発酵のムラがあるせい。
茶壺で淹れる
茶湯の色
湯を注いですぐに香りが立つ・・・というほどではない。刮風寨の大きく垂れるタイプの茶葉なので、香りは内に薫る。
おそらく香りの成分と共通であろう渋味・苦味・辛味が強い。甘い香りなので苦味や渋味とのバランスは良い。茶気は弱いのでサラッとしていていくらでも飲める。水質は粗くて舌の上にザラつくが、のど越しはきれいに滑るから悪くはない。飲んだ後の口や喉にメントールの涼しさがある。
茶坪のお茶は刮風寨の中では香りが弱いと思っていたが、刮風寨どころか漫撒山一帯のお茶と比べても香りが際立つ。
香りはどこから来たのか。
雨が降って成長して開いた茶葉が太陽光を受けて光合成が活発になったことの成分・・・もあるけれど、それだけではない。
茶友の話では、殺青(鉄鍋炒り)がほんの5分で済むらしい。もっとしっかり炒ろうとしたら焦げてしまう。
茶葉に水分が少ないのだ。雨が降って成長した茶葉なのに。
殺青は茶葉の形状や質に合わせて、火の熾し方や撹拌する手の動きを調整しなければならないし、生茶づくりで最も難関だから、そこを中心に製茶を組み立てることになる。
茶葉の形状や質。
茶葉は、尖った新芽、開いた若葉、円柱形の茎、と形がバラバラで、さらに繊維の質や成分や水分も異なるから、殺青の鉄鍋炒りでいかに熱を均一に通すかが問題。
円柱形の茎がいちばん水分が多く、いちばん熱が通りにくいから、黄印や緑印はこの難問に全力で立ち向かって、最高の結果を出したつもりだったが、晩春のはあっけなくその苦労を回避している。茎がほとんど無いから。
泡茶
葉底
しかし、そのせいで蒸し焼き状態にならない。茎の水分が無い。
蒸しの効果がなければ焦げやすい。
高温の鉄鍋の表面と接触することで茶葉に熱を伝えるしかなく、手返しを早くしないと焦げる。
結果的に短時間にしておかないと焦げの割合が多くなる。
イメージとしてはチャーハンの米粒をパラパラに仕上げる炒め方。きつね色を通り越して黒くなったら、香ばしいを通り越して焦げ臭くなる。
米なら、蒸すなり炊くなりしてから炒めるからよいが、茶葉は熱が伝導しきらない”生”のままの部分が残って、晒干のときにそこが軽発酵のムラとなり、色とりどりになる。
香りは、海苔を火でさっと炙ったみたいな状態。鉄鍋の高温に接触して焦げる一歩手前に焼けたところが薫る。
たしかに海苔みたいに炙ることができたら、炒るよりはよいかもしれない。
焦げないように低温で長時間炒るという手もあるが、生茶ではなく緑茶になってしまう。
生と焼けがミックス状態になっている。
これぞプーアール茶と言えるのかどうか、何年かかけて吟味するつもり。
ラオス糸を紡ぐ
綿花から糸になる

ひとりごと:
サイトのお茶の紹介ページは、お茶をつくるのと同じくらいの時間をかけている。
ブログの記事なら2日で書くが、サイトのページは3週間はかかる。
なのに、ほとんどの読者にとって役に立たない。
事実を記録して伝える文章のはずが、文章にはいくらでもウソが入るから、ウソを見極めることのできる人だけにしか真価を発揮しない。
”こだわり”のラーメンみたいな感じ。多くの人にこだわりのウソを見抜けない。
古茶樹も自然栽培も、どの業者もそう言うから、文章からはホンモノとニセモノの区別がつかない。
ま、文章なんてその程度のものだ。
みんなに真実が伝わるなんて期待しない。
いつか、来年の春なのかもっと先なのかわからないが、同じところに立った人が現場で難しい問題に直面して、別の可能性を探ることになる。
そのときはじめてこの文章は役に立つ。
そのひとり(自分自身かもしれないけれど)のためだけにインターネットで公開しておく価値がある。
日本語で書いているが、ほんとうに必要な人は中国語にも韓国語にも訳すだろう。

刮風寨単樹1号2018年 その1.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 散茶100g
保存 : 西双版納 
茶水 : 農夫山泉・四川省
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号

お茶の感想:
刮風寨単樹1号は「鉄拐李」と仲間内で呼んでいる。
鉄拐李(李鉄拐)が足の悪い仙人だったから。
遠い昔に足を刈られたせいか根元のほうで2つに分かれ、いったん横に倒れた幹が大きく曲がって上に伸びる姿は神々しくもある。
刮風寨のエリアは山深いので、お茶の需要が減ると誰も茶地に入らなくなって、ほんの数年で自然の森に戻ってしまう。台刈りや剪定されないまま何十年も枝を伸ばした高幹は、単樹のお茶にするのにふさわしい。スラット上に伸びた幹と同じバランスで地面の下の根もスラッと下に伸びているはずで、深い地層に根が達していると想像できる。
刮風寨単樹1号の葉
3年前から刮風寨のお茶に集中している茶友も単樹のお茶の味にはまって、刮風寨のエリアから裏山を超えてラオスにまで足を伸ばして、すでに何本もの単樹のお茶をつくっては試しているが、今のところ単樹1号の美味しさに叶うのは見つからない。
前の記事にした単樹2号は同じ茶坪の斜面を横に50メートルほどずれたところにあって、土質は同じだと思うが、品種特性的な違いが現れていて葉形も違えばお茶の味も違う。そしてやはり単樹1号の美味しさには叶わない。
左1号右2号
左: 単樹1号 100g
右: 単樹2号 100g
同じ100gの晒青毛茶でも1号と2号では嵩がこれほどにも違う。茶葉に含まれる成分の違い。1号の黒い色は鉄分などのミネラルの含有率が高いせいだと思われる。
采茶は1号も2号も4月13日。
1年前から農家と約束して、10日前から森に入って新芽・若葉の成長具合を確かめて、采茶のための木登り人員を確保して、製茶の日の天気を予測して、この日!という采茶のタイミングを決める直前には緊張で胃が痛くなる。
単樹1号の殺青は瑶族の農家の主人が担当した。ホッとした。
農家の主人が殺青
農家の主人もこのお茶を愛していて、自分用の取り分を主張するので誰も文句なし。
側で殺青を見ていて、やはり熟練の殺青はすばらしいと思った。ふだんの他人に売る用のお茶の殺青とはぜんぜんちがう動きだった・・・。
自分の殺青との違いは手返しのスピード。
農家は強火で攻めて手返し早くすることで焦げを防ぐが、このやり方では水分が蒸発しやすく標準的な茶葉だと緑茶っぽい風味になりやすい、が、単樹1号はそうならない。茎の部分が長く育って水分を多く含むからだろう。
殺青
茶葉を投入する直前の鉄鍋の温度は390度。
何年か前に非接触温度計でいろんなところの鉄鍋を計ったが、だいたいこの温度。
一鍋で炒る約5キロの鮮葉を投入した瞬間にたしか190度に下がる。さらに1分か2分でもっと下がる。それから数分でまた温度が上がってくるが、この間が問題。茶葉が常温から70度以下の低温域が長く続くと意図しない軽発酵がすすむ。茶葉に均一にそうなればよいが、縁のほうや茎の部分だけが黄色やオレンジ色に変色する。また、風味も紅茶のようなモワンとした甘い香りが混ざる。
炒りはじめて短時間に茶葉の水分を高温の蒸気に変えるには強火がよいし、鉄鍋に厚みのあったほうが鍋の温度が下がりにくくてよい。
ただ、ここを追求しすぎると、違う種類のお茶になりそうな気がする。
漫撒山の地域一帯は森の水気が多く、茶葉は茎が長く育って水を含む。その結果、炒った茶葉のところどころに変色が残るのが普通。
単樹1号も2号も手の動作をがんばって精度を上げてみたけれど、追求はこのへんにしておくのが良さそう。
単樹1号
茶湯の色
葉底
「神韻」と呼ぶやつだと思う。
脳がクラっときて、一瞬であっちの世界へと連れて行ってくれる。味もさることながら酔い心地が違う。まるでクスリ。どうしてももう一度やりたくなってしまうタイプのやつ。

ひとりごと:
勤勉や勤労がエライのは日本の社会環境での価値観であって、おそらくそうじゃない社会のほうが世界には多い。
勤勉や勤労がより早くより大規模に自然環境を破壊してきた結果を見ると、あまりカシコイくないと思える。
お茶の味や体感みたいな美の世界も勤勉や勤労の通用するところじゃない。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
圧餅の蒸し
圧餅の石型
圧餅の布袋

お茶の感想:
今回は自分ひとりで圧餅する。家の厨房のカンタンな設備で茶葉を蒸す。
圧餅の工程は、茶葉を蒸して布に包んで石型で圧して、冷ましてから布を外して涼干・晒干する。
文章にするとたった一行のことだが、ひとりでやると重労働で、一日20枚圧餅するのがやっと。道具を手入れして掃除を終えたら深夜になる。一週間続けたらあちこちの筋肉が盛り上がって体つきが変わってくる。
180g×20枚=3.6kg。製茶(萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干)をひとりでするのとほぼ同じ生産性である。65kg の体重の人間がたった3.6kgの茶葉に振り回されるのだから、圧餅の茶葉に与えるエネルギーがいかに多いかがわかる。
圧餅は、円盤型に整形するだけが目的じゃない。
散茶の嵩を減らして運搬しやすいようにしたことが出発点だったとしても、”蒸す”ことの火入れや、蒸気の水による軽発酵や、圧延することの茶葉の繊維の変化を、昔の職人はなんらかの利点として計算に入れたはず。お茶に薬効が求められていた時代だからなおさらのこと。
圧餅後の餅茶
餅面
もしも圧餅を工房に依頼すると一日数百枚も可能である。しかし、茶葉の変化を追いかけられない。数人一組の分業になるからだ。分業では、各自の担当するところの茶葉を観察できても全体は把握できない。蒸したとき、布で包むとき、包んでから2度蒸しするとき、石型で圧すとき、布を外すとき、涼干・晒干で乾燥させるとき。この一連の変化を見ているだけではダメで、どうしても手の感触で、身体で流れを知る必要がある。
晒青毛茶ができるまでの製茶も同じ。
采茶からはじまって萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干の流れを身体で知るのが大事。
というのが最近わかってきたので、圧餅も自分でやることにしたのだ。
身体で知ることは他人に伝えられる知識になりにくいせいか、軽視されがちだと思う。まして手の仕事は効率が悪くて、結果的にお茶の価格を上げてしまうから市場での評価は低い。
例えば揉捻について。
名前のとおり茶葉を揉み捻る工程であるが、「手でする場合は何分かかるの?」と、現場でよく聞かれる。
揉捻
手で揉捻すると、ある時点で急速に茶葉が変化しはじめるのが指先や手のひらの感覚に伝わる。さらにすすめると、あきらかに「もういいよ!」という茶葉の繊維や水分の変化が手に伝わる。手と茶葉との会話がある。
茶葉のコンディションは毎回異なる。たとえ同じ一本の茶樹から採取しても、日によって水分・栄養分・繊維質が異なるし、気温や湿度や気圧という外的な要因も揉捻の結果を左右するだろう。
したがって、揉捻の時間は5分で終わることもあれば20分かかることもある。その判断は手がする。
雲南の自然栽培の茶樹は一本一本の品種特性が微妙に異なり、茶葉の大きさもカタチも繊維質も成分も異なるから、揉捻一回の手に取る茶葉(この段階ではまだ水分が多いので1.5キロくらいだろうか)ごとにチカラ加減や時間を調整しなければならないはず。
手で揉捻すると個人によって技術もチカラも異なるから、例えば自分なら10分のところを他人なら15分かかるかもしれない。手は疲れてくるから1回めと10回めにかかる時間は異なる。
茶摘みのときから茶葉に触っていると、一連の工程(采茶・萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干・圧餅)の前後の関係にも気付く。
手で揉捻
例えば、早春の雨の降らない日が続いた茶葉の揉捻は短時間で済むとか、雨が降った後は繊維が硬くなって3倍の時間かかるとか、殺青で水分を残すようにするとヨジレやすいとか、殺青の火入れがしっかりできたときに手にくっつく茶醤の粘度が高いとか、揉捻をしっかりすると軽発酵がすすんで甘い香りが出るとか、揉捻しすぎると圧餅の粘着が悪くなるので蒸し時間を長くしなければならないとか、揉捻でわかる水分量で晒干の茶葉を広げて一日で乾く厚さを予測するとか。
もしも機械で揉捻して茶葉と手の会話が断絶すると、前後のつながりがなくなり、つじつまが合わなくなるだろう。お茶の性質をある方向に導こうとするなら、ある個性を宿そうとするなら、手で揉捻するのはあたりまえなのだ。
手で揉捻したら生産効率が5分の1になる。
単純に計算して5倍の価格でお茶を売ると機械揉捻の生み出す利益に追いつくわけだが現実的ではない。
機械揉捻
「手の揉捻は何分するの?」と聞く人の心理はおそらくこのことを先に考えている。
工業生産的な価値判断が背景にあるのは、そのほうがカシコイと評価される社会環境であり時代であるからだ。さらに悪いのは、それを知ったうえでマーケティングするのも出てくる。手で揉捻する本当の意味を考えずに揉捻時間を1分くらいに短縮してカタチだけ”古式”だったり”手工”だったりする。
労働をつまらないものにしてしまったので、現代のお茶づくりはどうしても昔のお茶づくりに勝てない。お茶だけでなくて道具づくりも。道具だけでなくてあらゆるモノづくりがそうだろう。
人が貧しくなるスピードが加速して、お金を稼ぐスピードが追いつかない。
さて、『刮風古樹青餅2018年・黄印』(未出品)。
刮風古樹青餅2018年・黄印
刮風古樹青餅2018年・黄印
5月4日に圧餅を終えて、10日間かけて涼干(陰干し)して、荷造りを終えたところ。長期熟成は西双版納では行わないからとりあえず上海にお茶が運ばれる。
180gの小餅サイズ全部で19枚。出品は17枚くらい。出品時期や価格はまだ決めていない。
圧餅の蒸し時間はいつもよりも長くなった。深蒸しになった。
これも手の判断である。石型を踏む足の判断でもある。
なぜ手や足がそう判断したのか?頭で解析を試みているところ。
この時期がいちばん不安になる。もしかしたら手が判断を誤ったのではないか?と疑いたくなるほど、お茶の味が揺れて安定しないからだ。
お茶淹れ
茶湯
この間に試飲しなければよいのに、気になりだしたら夜中であろうがガマンできずにお茶を淹れてしまう。ヘンな味が出て心配になって眠れなくなる。
圧餅を3日前に済ませてきた北京の茶友が、刮風寨の古茶樹のお茶を持ってきた。
彼のオリジナルだが、製茶は農家がして、圧餅はメーカーがしている。彼自身は身体を動かさないので太っている。カタチだけのお茶づくりは誰にでもできる。
茶友の餅茶
餅面がキレイ
メーカーの圧餅は餅形がキレイだ。
品茶
でも、やっぱりヘンな味が出ている。
圧餅後に10日くらいかけてゆっくり茶葉が乾燥する過程の同じ道をたどっている。
圧餅前の散茶の味をみると、そのヘンな味は無い。なので明らかに圧餅が影響した味である。
圧餅3日後の茶友のと10日後の自分のを比べると、ヘンな味が抜けているのがわかった。よかった。よかった。
炙って乾燥
圧餅後の水分が残っていることだけがヘンな味の原因じゃない。
炭火の遠火で炙って茶葉を強制的に乾燥させても、やっぱりヘンな味が残っている。
水分の他に茶葉の繊維の変化がお茶の味に影響していると推測する。繊維の変化には時間がかかる。

ひとりごと:
やっと終わった。ほっとした。


茶想

試飲の記録です。

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