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孟海老師3号熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年 不明
加工 : 2018年8月
茶葉 : 雲南省孟海県詳細不明
茶廠 : 孟海県の老師
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
孟海老師3号熟茶2018年

お茶の感想:
温州人の茶友が竹籠での渥堆発酵を習った老師が孟海県にいる。
老師はふだんはメーカーの技術者として働いているが、自分でも少量の熟茶をつくって売っている。
そのお茶を飲む。
今年の8月にできたばかりの熟茶。
孟海老師の渥堆発酵は25キロだったかな。決まった量があるらしい。
メーカーの大規模な何トンという渥堆発酵からした25キロはごく少量だが、竹籠を使った小堆発酵からしたらそこそこの量。
茶頭
茶頭
いったん圧餅してから崩したサンプルだが、どう見ても茶頭がある。それに髪の毛が挟まっている。ま、よくあること。
竹籠の渥堆発酵で茶頭ができるということは、そんなに頻繁に撹拌していないということ。
注目したいのは、”糠味”と”カラスミ味”。
とくに悪印象のドブ水味を連想するようなカラスミ味に注目。温州人の熟茶はじっくり抽出して5煎め以降の葉底に出てくる。
蒸す
茶壺を鉄瓶の上に乗せて蒸して、蓋に結露する水滴と茶葉の匂いを嗅ぐ。
水滴は問題なし。糠味はちょっと味噌っぽい。バラの花のドライフラワーになったときのような爽やかな香りも交じる。
茶葉を熱する
茶葉に鼻を近づけると、一瞬だけアンモニアのツンとした刺激があったような気がして、もう一度鼻を近づけてみたが匂いはなくてツンとした刺激だけがある。
1煎めの色
茶湯の色
1煎めと2煎めを足した。
甘い。うまい。
カラスミ味がこの時点であるが、ちょっと違う。延長線上にドブ水を連想するような悪い印象ではない。
天日干しの棗っぽい香りと酸味がある。
茶湯の色は透明度が高い。出来たてでこのレベルはすばらしい。
色の出方がゆっくりで、温州人の熟茶のように1煎めからドバっと濃い色が出てくることはない。
口感がキレイ。飲んだ後の消えが良くて甘い濃い印象をサラッと流すので、もう一杯飲みたい気になる。
茶頭を保温ボトルに移してじっくり抽出しておいて、散茶のほうを飲んでみる。
保温ボトル
散茶
散茶のほうにも小さな粒状になった茶頭が存在していて、オレンジっぽい色をしている。
茶湯の色
やはり茶頭と同じ味。むしろもっと甘くてバランスが悪い。もっと味噌臭い。
茶湯の色は濁っている。
3煎めから真っ黒になるまで抽出してみた。
黒い
まだこのほうが美味しく飲める。この濃さで美味しいということは、やはり渋味・苦味が一般的な熟茶に比べてかなり弱いのだ。ヘンなバランス。これぞ茶頭の熟茶の味そのものである。
散茶にも茶頭の味がしているということは、竹籠の25キロすべてが茶頭味になっているということで、それなら『温州人第六批熟茶2018年』と似た結果だから、この味こそが竹籠を使った小堆発酵の特徴だと解釈するべきなのかな。
味噌っぽい風味を好む人も多いわけで、微生物発酵が悪い成分をつくっていなくて衛生的に問題なければこれでよいのかな。
葉底
老師の熟茶には5煎めくらいの葉底から出てくるカラスミ味は無い。
ただ、1煎めからのお茶の味にそれがまんべんなくある。悪い印象の味ではないから、好みの問題だろう。
葉底に緑色の残っているところもごく少なくて、全体的にキレイに変色している。
葉底
茶頭の葉底
茶頭を割って中のほうの葉底を見ても、均一な色でキレイな発酵ができている。さすが老師。
老師の熟茶を参考にしてつくったのなら、温州人の渥堆発酵はあと一歩のところまで来ているということか。

ひとりごと:
もしもこのお茶『孟海老師3号熟茶2018年』が茶頭味の中では高いレベルだとしたら、さらなる上の茶頭味を求めて渥堆発酵を試行錯誤するのはバカで、保存熟成の味の変化で差をつけるほうがカシコイのかもしれない。
保存熟成の経験から見て、味噌っぽい風味は数年で落ち着くだろうし、お香っぽい香りとかバラの花のドライフラワーの香りはもっとはっきりしてくるだろうし、メイラード反応(常温の焦げ)のカカオの風味も出てくるし、苦味はちょっと戻ってきて甘過ぎないバランスになるだろう。
でも嫌い。
はっきりわかったのは、自分は茶頭の味が好みじゃないということ。保温ボトルのお茶も飲まずに捨てたしな・・・。
ということは、竹籠を使っているかぎり好みの熟茶はできないことになる。

温州人第六批熟茶2018年 その3.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
6批熟茶

お茶の感想:
とりあえず試飲。
餅面に鼻を近づけるだけで酒饅頭に似た甘い香り。
酵母がつくったアルコール由来の香り。
温めるとさらに強く薫る。
茶葉を温める
市販されている熟茶の中には雑巾の生乾きのような匂いのもあるが、それはおそらく雑巾の生乾きと同じ雑菌が原因である。温州人の茶友のつくる熟茶にはそれは無い。
1煎めの茶湯の色は、前回の試飲のときに比べて透明度がちょっと高くなった。
一煎め
2煎・3煎くらいまでは美味しく飲める。
茶湯にも酒饅頭っぽい甘い香りがあって、奥の方にお香っぽい香りがある。
お茶の渋味は消えてまろやか。いや、消え過ぎていると思う。
このタイプの味は国営時代の昆明第一茶廠の品番7581にちょっと似ていて、孟海茶廠の味ではない。
現在はどこの熟茶づくりも孟海茶廠の製法が主流になっていて、われわれは初心者でとりあえず標準的な味を目指しているはずだから、この時点でなにかがおかしい。
4煎め
4煎を超えてから問題にしている”カラスミ味”が出てくる。味というか香り。この香りをものすごく悪い方向にもってゆくと、ドブっぽい匂いになるだろう。生活排水の流れるドブ水。チーズや臭豆腐など湿った発酵食品にはドブっぽくても健全なのがあるが、乾物である茶葉からこの匂いが出てきてはいけないと思う。
さて、この記事のつづき。
+【温州人第六批熟茶2018年 その2.】
新製法での熟茶づくりの技術的な失敗の原因を探る過程で、もっと根本的な問題に気付くことになったわけだが、いきなりその結論を話しても伝わらないと思う。
今回はその”気付き”のキッカケとなった技術的な失敗についてもうちょっと詳しい話をする。
この失敗は、2年前のちょうど今の時期に自分も経験している。
このへんの記事。
+【巴達曼邁熟茶2010年 その6.】  
このときはまだ失敗に気付いていない・・・・今読み返すと恥ずかしくて汗が出る。
布袋発酵
ちなみに、これらの茶葉はぜんぶ捨てた。
最近の『東莞人第一批熟茶2017年』の自分が圧餅した1キロ分も捨てた。
アパートの庭の緑が一部だけ特別に繁殖しているのはたぶんこのせいと思われる。
ダメな茶葉を手元に置いておくわけにはゆかない。良い茶葉に感染するかもしれないから。
緑の栄養になった茶葉
温州人の茶友の6批の熟茶は、発酵の状態がとても良いと途中経過をSNSで報告してくるくらいに自己評価の高いものだったが、できてみると茶頭と似た味になった。散茶なのに茶頭味になったのは微生物の呼吸困難が原因。
小部屋や木箱(温習人のは竹製)や布袋や竹籠の通気が工夫されたら問題が解決される・・・とは自分は思っていない。
茶頭は渥堆発酵の茶葉の山の底のほうで自然にできるもの。
茶頭をひとつもつくらないようにこまめに撹拌するのは、真面目なようで聞こえはよいが、実は良くない可能性がある。
自分が布袋で発酵させていたときも、茶葉が均等に発酵するのが良いと考えて、加水をこまめにしたり、保温に電気毛布をつかったり、そして茶葉の撹拌を1日2回も3回もしていた。茶葉同士がくっつく暇はないので、茶頭はひとつもできない。
50度
このやり方では、厚みのある茶葉の内側のほうの発酵が不十分になる。
温州人の4批の葉底にもその現象が現れていた。
+【温州人第四批熟茶2017年 その1.】
50度
自分の2年前の熟茶を淹れると、はじめの1煎から3煎めくらいまでの茶湯の色に赤味があって、その後の煎はだんだんと黄色く明るくなってゆくが、同じように茶葉の内側のほうが発酵不十分だったことがわかる。
黒麹菌は、イメージとしては木の根っこのような糸状の菌糸体で茶葉の内側に入り込んでゆくのだが、こまめに加水して常に茶葉の表面に豊富な水分のある状態では、わざわざ内側に入らなくてもよいから根っこが深いところにゆかないで表面を這う。
さらに茶葉の内側の水分が多すぎると、深いところでは息ができない。
では、どういう状態が良いのかと言うと、加水後に最初は茶葉の表面にあった水分がゆっくり浸透して内側に入って、表面が乾いてくること。内側に水分が残っているので、それを追いかけて菌糸体が深く潜る。
茶葉の表面が、湿って乾く・湿って乾く・湿って乾く・・・・を繰り返すのが理想。
茶葉に入り込んだ水分は自然乾燥ではなかなか抜けない。例えば、圧餅した後の陰干しで茶葉の真ん中の厚みのあるところの内側が乾燥するには1週間かかる。
なので、渥堆発酵の湿って乾くサイクルも1週間くらいかかるはずだ。
この1週間は触ってはいけないのだ。
もしも途中で茶葉を撹拌すると、乾燥を早めてしまうから。
古い倉庫
そういえば『版納古樹熟餅2010年』の渥堆発酵では、加水と撹拌を終えて山にした茶葉を、誰も触らないように倉庫に鍵をかけていた。ほぼ1週間誰も倉庫に入らない。
+ 【版納古樹熟餅2010年 その3】
1週間のうちに茶葉が乾きすぎたり温度が下がりすぎたりしないためには、茶葉の量がある程度たくさん必要になる。
それと、もうひとつ。
茶葉の持つ水分にムラがあったほうが良い。
渥堆発酵の底の方で水分が多すぎて茶頭になるところが一部残っていたら、茶頭が周囲の乾いてゆく茶葉に水分と熱を供給してくれる。水分をたくさん含むほど発熱で温度も高くなる。それが茶葉の山の底にあるのだから、湯たんぽみたいなカタチになる。
茶頭が嫌なら、渥堆発酵してから茶頭だけ別に分けたらよいのだから、すべてをまんべんなく発酵させる必要など無いのだ。
渥堆発酵
渥堆発酵
茶葉の均一な発酵=キレイな発酵。
このような勘違いは他にもある。
例えば、サーモスタットで自動的に電熱を調整して木箱の中でより適温・適湿を保つこと。
微生物発酵はある一定の温度でもっとも活発になるのだが、水分の量と発熱が関係していて、乾くと冷えてくる。
なので加水したり加湿したりするのだが、これも微生物と茶葉のなるがままに放っておいたほうがよいのだ。温度が高いときは高いときなり、低いときは低いときなりにそれぞれの発酵が営まれている。
さらに、茶友たちは雑菌を殺す目的で殺菌灯を使いだした。
雑菌を殺すつもりで良性の菌類を殺すかもしれないし、雑菌と良性の菌類の仲良い関係を壊すかもしれないし、殺菌灯に耐性をもつ変な菌が発生するかもしれないし。
管理するつもりで管理不能に陥っている。
森の木を切ってから、茶葉の害虫対策に殺虫剤を撒くようなものだ。

ひとりごと:
微生物発酵で特定の成分を製造するのが目的ではない。医薬品やサプリメントや工業薬品をつくるのが目的ではない。発酵食品は、自然のままでカンペキな生態バランスを取り入れるもの。里山と人間の関係のように絶妙なバランスで、手を加えるべきところと加えてはいけないところとがある。

温州人第六批熟茶2018年 その2.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
温州人6批熟茶

お茶の感想:
温州人の茶友の6批(第6作目)の熟茶。
前回の記事から1ヶ月経った。
+【温州人第六批熟茶2018年 その1.】
生産現場のミャンマーでは微生物発酵のための最後の加水を終えて、自然乾燥させて、熟茶のナマ(生)の散茶として完成している。そのサンプルが少し西双版納に送られてきた。
ナマというのはまだ火入れしていない状態で成分変化が不安定だから、圧餅加工の蒸気の熱で安定させた。蒸し時間は9分で自分基準の生茶と同じ。なので熟茶にしては短め。
晒干(天日干し)1日。涼干(陰干し)10日。
温州人6批熟茶
圧餅の成形には失敗しているが、味への悪影響はないだろう。
これで一応市販されている熟茶と同じ状態になった。
温州人は過去一番良い出来だと評価していたので、自分も期待したけれど、圧餅の蒸気で温まったときにアルコール由来の糠味が強くて、ダメかもしれないと予感した。
試飲
左: 熟茶のナマの散茶
右: 圧餅後
念のために散茶と圧餅のを飲み比べてみたが、大差はない。
これまで飲んだ中でもっとも甘い熟茶かもしれない。
味に悪いところはなく、口感には清潔感がある。
しかし、”麹味”もあれば”カラスミ味”もある。
温州人の熟茶の4批・5批と比べても、もっとも”麹味”と”カラスミ味”が強い。
市販されているメーカー産の熟茶にもこういうのはある。
飲んだことのある味だな・・・と記憶をたどってみた。
+【老茶頭プーアル茶磚06年】
+【醸香老茶頭散茶90年代】
いずれも茶頭の熟茶。
「醸香」は無名だったから仕入れたときに自分が名付けたのだけれど、名前のとおりで酒粕っぽさがあった。アルコール由来の”麹味”に似ている。
オレンジっぽい茶葉
オレンジっぽい色も『醸香老茶頭散茶90年代』に似ている。
一煎め
二煎め
茶壺で淹れてじっくり飲んでみた。
3煎めくらいまで濁る。
サラッと薄めに淹れると果物の梨みたいな感じ。
濃く淹れると”麹味”と”カラスミ味”が出てくる。
麹味は、どんな熟茶にも多かれ少なかれあるもの。
このお茶の麹味はどちらかというと好感が持てる。麹味にも良いのと悪いのがある。美人とブスがある。
温習人はアルコール由来のものは揮発するから、保存熟成の過程で消えると言っている。実際に1年間保存した4批には無くなっていたが、できたてのときは有ったらしい。無くなるのではなくて変化するというほうが正しいだろう。変化して美しい香りになるのなら、むしろ意識して麹味の出るようにつくったほうがよい。
葉底
葉底に緑色の発酵不十分なところが残っているのは、温州人の熟茶の4批・5批にもあった。
緑色のところは、長期保存のときにじわじわ酵素反応による熟成変化がすすむから、これでも良いのかな・・・。
この『温州人第六批熟茶2018年』はそこそこ美味しい熟茶にできている。
そう。問題はそこじゃないのだ。
問題は、茶頭と似たような味が出ているところ。
茶頭
『醸香老茶頭散茶90年代』の茶頭 2013年6月撮影
われわれが試みた新製法の渥堆発酵の茶葉は、大きな木箱の中に囲ったり、布や竹籠で包んだり、サーモスタットで温度・湿度を自動管理したり、こまめに加水を調整したり、茶葉を撹拌したり。メーカーの一般的な渥堆発酵よりもずっと人工的にコントロールしている・・・・はずだ。
茶頭は、大量の茶葉を渥堆発酵させたときにできる。
渥堆発酵
茶葉の山の底の方は水の逃げ場がなくて、茶葉が余計に水を含んで、茶葉と茶葉がくっついて塊になって、黒麹などの好気性細菌が息苦しい状態になって、息苦しいのが平気な酵母が水に溶け出した茶葉の成分を分解して、糖質をアルコールにして、その副産物として麹味につながる香りの成分ができる。
渥堆発酵の後半のゆっくり茶葉を自然乾燥させる段階で、茶頭の内部に残った水を求めて麹菌類がまた戻ってくるけれど、根っこみたいな菌糸が茶頭の表面から中心部まで掘りすすんで新たな発酵のサイクルが始まる前に乾燥してしまうから、息苦しい酸欠だったときにできた風味が残って定着する。だから茶頭は偏った風味になる。
製品にするときは、わざわざ篩にかけて散茶と茶頭を分けてから固形茶に加工する。なので茶頭は単独で製品化されることがほとんど。
渥堆発酵6批
『温州人第六批熟茶2018年』2018年10月温州人撮影
新製法は渥堆発酵をより人工的にコントロールして、茶頭をひとつもつくらないように工夫していながら、できた散茶が茶頭と同じ味の熟茶になったのはどういうこと?
ここが問題。
つまり、コントロールできていないということ。
4批・5批に比べて6批に”麹味”や”カラスミ味”、つまり茶頭の味がより濃く出た原因は、茶葉の量が多かったから。それまではせいぜい20キロ以内だったのが6批から急に100キロに増量している。
茶葉が多いほど活動する微生物の人口も多くて、その分大量に酸素が消費されて二酸化炭素が吐き出される。微生物発酵の小部屋や木箱の通気が悪くて酸欠になっていたのだろう。
加水した水の量が多すぎて酸欠になったのが茶頭で、通気が悪くて酸欠になっていたのが6批の熟茶ということ。
渥堆発酵の発熱
渥堆発酵6批
微生物の中には酵母や乳酸菌のように息苦しいのが平気なのがいて、そのときはそれなりの仕事をして結果を出すから、衛生的に問題さえなければ、これもお茶の味の個性と解釈できる。
偶然ではあるけれど、この6批はそこそこ美味しい。
このまま技術を高めて7批・8批・9批・・・と経験を重ねてゆくと、もっと意図した風味に持ってゆけるだろう。
では、なにが不満で「このやり方はダメ」と否定して根本からやり方を変えたくなったのか?
茶友たちからひとり離れてでも違うやり方を模索したくなったのか。
微生物発酵に対する自分の勘違いとはなにか。
つづきの話は別の記事にバトンタッチする。

ひとりごと:
他人がわかるように話すのはカンタンじゃないな。
自分が見たり経験したりして辿ってきた思考の過程を、それと同じ道を辿って話をするしかなさそう。
真理を追求するフリをして商売するのが目的なら、他人にわかりやすいように事実を曲げてしまうだろう。
広告というのはそのへん巧妙で、発信側が事実を曲げたのではなくて、視聴者側の無知を利用して誤解をうまく誘導している。
学生時代に広告の仕事がカッコよく見えて憧れたことがあったけれど、今は軽蔑している。

刮風紫叶青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月28日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 紙包+竹皮包
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮白磁の茶杯・鉄瓶・炭火
手の茶葉
茶壺に茶葉

お茶の感想:
北京人の茶友のお茶。
2018年春の刮風寨の茶王樹の古樹でつくった生茶。
この記事の後半に登場している。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.】
それから半年経っている。
圧餅したての「変な味」と言っていたのは今はもうない。
それを確かめるのではなくて、茶王樹の品種特性を確かめる。
今年の秋につくったオリジナルの紅茶に似ているかもしれないから。
+【刮風秋水紅餅2018年】
茎がひょろっと長いところや、葉が細長くて揉捻で縦にねじれているところや、そしてなんとなく色がヘンなところ。紫っぽいので北京人の茶友に電話して聞いたら、やはり鮮葉のときにそうだったらしい。
茶壺と鉄瓶
一煎め
茶湯の色
このタイプのお茶にはやや酸味があるけれど、このお茶は甘めのグレープフルーツみたいな味。バランス良ければすべてよし。
葉底
茶湯の色2
茶葉の色も茶湯の色も、うっすら紫が入っているような感じ。
濃いめに煮出すとわかりやすい。
このような茎の長いカタチの茶葉は、沸騰させない温度でじっくり抽出することで甘味が増して美味しい。
煮出す
茶湯の色5煎め
葉底
紫っぽい茶葉にもいろいろあって、オレンジっぽいのが混ざるのや、やや紺色っぽく毒々しいやつや、緑と完全に混ざり合って暗い緑色のやつなど。これは緑と混ざったやつかもしれない。
参考の写真ページ
+【易武山 品種のオアシス】
葉底の茎
新芽のは底
葉底の大きな葉
4月28日の采茶なので、刮風寨にしてもちょっと遅めの春だが、葉底は小さな若葉だけでなく大きく開いた茶葉も柔らかくて指でカンタンにすり潰すことができる。旬を保っている。采茶のタイミングがよい。製茶もよい。
今年の春に2キロだけのお茶。

ひとりごと:
このお茶なら仕入れてもよいけれど、2キロしかない宝物に値をつけさせるのだから、すごいことになるな。

蛮磚古樹青餅2018年 その1.

製造 : 2014年04月10日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明山曼庄国有林古樹
茶廠 : 農家+孟海の工房+北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 紫砂の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
餅面表
餅面裏

お茶の感想:
なかなかいい茶葉。
いい茶葉とすぐにわかるのは”蛮磚”(曼庄)という茶山が自分のホームグラウンドにしている漫撒山からそんなに遠くなくて、品種特性が似ているからだろう。見た目が、漫撒山の刮風寨や弯弓に古来からの大葉種と同じ系統のやつ。
蛮磚山は西双版納の旧六大茶山のひとつで、象明という地域に属している。象明は”倚邦山”や”革登山”や”曼松”の香り高い小葉種や中葉種が有名だけれど、地理的には漫撒山からそんなに遠くない。
ものすごく簡略化した地形でこの2つの地域を見ると、象明と漫撒山(易武)には南北縦に山脈があり、その間を川が流れて大きな谷を形成して、2つの山脈を分けている。
餅面裏
(その川。奥の方にダイ族の村の古い瓦屋根が見える。)
漫撒山の高いところから大きな谷を見下ろして、向こうに見えるのが蛮磚山や倚邦山になる。
この記事にスケール感がわかりやすい写真がある。
+【革登単樹秋天散茶2014年 その1.】
北京人の茶友は2015年から蛮磚に腰を下ろしてお茶をつくっている。
といっても、彼は商売人なので自分の手を動かさない。太っているから身体の動きが悪い。農家がつくるのを側で見るだけ。圧餅も工房の職人の作業を見るだけ。オリジナルな印刷の包装紙に包んでオリジナルなお茶が出来上がる。
小さなお店のオリジナルはだいだいそうなのだけれど。
ま、他人の商売には口を出さない。
「ただ、このやり方ではお茶の勉強はできないぜ!農家のつくるのを側で見ていてもその仕事が良いのか悪いのかわからない。」
というのがわかっているから、ここへ持ってきて試飲させるのだよな。
茶葉
一煎め
1煎目から3煎目まで煮え味があった。
お茶をグツグツ煮たような野暮ったい味。
3煎めまで杯の底に黒い粉が残る。鉄鍋で茶葉が焦げた粉。
これは殺青でお茶を煎る鉄鍋を一回ごとに洗わないから出てくる。
北京人に聞いてみたら、3回に一度だけ洗って、洗うときは金タワシで鍋の表面を擦っているらしい。
メンテナンス方法が間違っている。
1回ごとに鉄鍋に軽く水を流して、どこの農家にもある竹箒のブラシで水といっしょに汚れを掃き取るだけでよい。表面の黒鉄の酸化皮膜を削り取らないようにするべき。
3煎め
9煎め
4煎めくらいから製茶の悪いところが流れ去って透明感が出てきた。
美味しいので9煎か10煎までじっくり飲んだ。
刮風寨の古茶樹にも負けない素質を感じるので、聞いてみたら、蛮磚の一般的な古茶樹ではなくて国有林の森の中のやつだった。村から30分車で走ってから山道を歩いて30分というから、刮風寨の森に比べたら規模は小さいが、原生林に囲まれた茶地らしい。
やはり森のお茶だから、新芽・若葉の成長と采茶の人員確保と天気とのタイミングがなかなか合わなくて、1日の采茶でできた晒青毛茶は2キロ。春はこの2キロがすべて。
葉底
葉底
北京人の持ってきたサンプルはこの他に2種ほどあったけれど、このお茶だけじっくり飲んで終わった。
いい茶葉に出会ったらこうなる。
いっぺんにいくつもお茶を飲むのは、どのお茶もそこそこの質ということ。かもしれない。

ひごりごと:
川の向こうに見えていた村。
ダイ族の村
ダイ族の村
ダイ族の村
2014年の秋に散歩した。
その後ここに行っていないけれど、瓦屋根はまだ残っているのかな。
魚とり
この日、その川で魚捕って食べたのだった。
今は少ししか獲れなくなったと聞いている。

老撾高幹古樹2018年・秋天 その1.

製造 : 2018年10月(采茶)
茶葉 : ラオス・ポンサーリー県・孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨付近
茶廠 : 瑶族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶+炭火
ラオスの空
森
森の入口

お茶の感想:
刮風寨の山の裏はラオスで、ポンサーリー県になる。
刮風寨から続く山には瑶族が多く住んでいて、あちこちに村がある。
地元の瑶族たちは許可なしに親戚や友達を訪ねて行けるが、中国人といえども茶友たちはそういうわけにはゆかなくて、”辺民証”という許可書を取って国境を超える。
パスポートで超えられる大きな通関は限られていて、かなり遠回りすることになるが、辺民証で超えられる小さな通関はあちこちにあって、仕事で行き来する人たちには便利になっている。
刮風寨の春のお茶づくりが終わる頃に茶友たちがこのあたりを訪ねてきた。
目的は高幹の茶樹を探すこと。
といっても、彼らが森に直接入って探すなんてことはできない。道に迷ったら死ぬ。人づてに瑶族の村を訪ねて、そんな茶樹の群生する森はないか聞いてまわる。
茶樹上
茶樹下
高幹の茶樹はこんな感じ。
この写真のは中国側の刮風寨の茶坪の奥地。
単樹1号・単樹2号よりももっと背が高いが、ただ、あまり美味しくない。
+【刮風寨単樹1号2018年 その1.】
+【刮風寨単樹2号2018年 その1.】
この高幹の茶樹に会いにゆくために森の中のいくつもの尾根を超え谷川を渡ったが、銘茶は美人。地域の気候・山の地形・生態環境・土質、いくら良いとこに生まれ育ったお嬢さんでも、生まれながらの天性の素質のほうを評価される厳しい世界なのだ。
山道
川
鉈で密林を切り開かないと進めないところもある。毒蛇も毒虫も毒のトゲを持つ蔦もみんな密林の緑の召使いたちで、生きものが死んで足元の土になるのを望んでいる。彼らの純粋な殺意にはゾッとするものがある。
「ラオス側の森の中にいくらでも高幹の茶樹がある。」
と聞いているものの、黙っていて向こうからやって来るものではない。高幹の茶樹は収穫が難しくて少量で、商売にならないからだ。
刮風寨に近いラオス側の山でも甘いお茶ができる。なので産地偽装の茶葉の需要が大量にある。ほんの数キロではなくて数百キロの需要が農家にとってはうれしい仕事。なので多くの森が開拓されて小樹の農地になる。
小樹の茶樹
この写真は刮風寨の小樹の茶地。小樹といえど樹高は2メートルほどある。樹齢は20年弱。山の峰から中腹あたりまで原生林の緑で覆われていて、茶樹以外の農作物は無い。まさに理想の生態環境。こんなお茶は美味しいに決まっている。
山頂付近の森はいわば山の心臓であり血液の循環の役割を担っている。原生林が刈られて植林されたりすると心臓が止まる。栄養のめぐりの悪い山となる。
小樹の茶樹
この写真のような理想の環境が残っているのは偶然ではない。国有林を保護する国の活動と、刮風寨のお茶をブランド化して商売する業者と、経済活動に比較的熱心でない瑶族のおっとりした性質と、うまい具合に利害が噛み合ってこうなるわけで、山を超えてラオス側を見てきた茶友たちの話では、そうはうまくゆかないらしい。国の管理も茶商の目も届かないところだから、農家は短期的な利益を追求して原生林を刈りつくして見るも無残な農地が多いらしい。山の心臓が止まっているのだから、茶樹への栄養のめぐりも悪くて、数年でお茶の味は落ちるだろう。お茶の味が落ちるのが先か、流行で膨れ上がった需要が落ちるのが先か、どちらにしても短期的利益を追求するのが得策になるのは、産地偽装のお茶の宿命である。
そのようなわけでラオスの農家に高幹の茶樹から茶葉を採取してもらうことをお願いするには、取引条件の良い提案をするしかない。
瑶族の帽子
茶湯の色
泡茶
葉底
昨年にラオスの森の中で20本ほど群生している高幹の茶樹が見つかって、人の歩ける道をつくって森に入れるようにして、周囲の高い木々を伐採して草を刈って、今年の春から採取がはじまったお茶があった。
茶友がラオスの村を訪ねたときに製茶したての晒青毛茶(天日干し緑茶)が10キロほどあって、すぐに交渉した。2日後に刮風寨に運ばれてくるはずが、運搬途中で深センの茶商に横取りされた。もっと良い価格が提示されたのだろう。
情報が漏れている。
ラオスの農家と親戚関係の刮風寨の農家がスマホを使って微信(WeChat)で紹介してしまったのだ。
高幹の茶樹
(一番手前の白い幹が茶樹。刮風寨茶坪の奥地。)
幹
この秋にも数キロつくられたが、今回もこっちには回ってこなかった。
刮風寨に滞在中に少しだけ分けてくれたサンプルを飲んだ。それが上の写真。
栄養の充実っぷりが見てわかる葉底の緑色の濃さと茎の太さ。
少し家に持って帰ってきたので、なじみの茶器を使ってじっくり飲んでみる。
『老撾高幹古樹2018年・秋天』老撾とはラオスのこと。
ラオスの古樹茶
泡茶
古樹味はある。
古樹味とは、これと形容できる味ではなくて、あえていうと唾液みたいな味。腹ペコでごちそうを想像して出てくるヨダレの味。水よりも口に親和性があって、舌に溶けて、消化酵素がお腹を癒やす。
でも、このお茶はブスだった。不味い。嫌な苦味が舌に残る。
ラオスよりもミャンマー側の山に多いタイプのブス。茶文化のお茶ではなくて生活のお茶レベル。
葉底
高幹は、枝分かれが少なくスラッと上に伸びるように育った証だが、この理由が大事で、森の深いところで人知れずひっそり育ったか、農家が大事にして茶摘みや台刈りを自主規制したか、不味いので誰も見向きもしなかったか。
このお茶は誰も見向きしなかったやつだろう。
深センの老板が買ってくれてよかった。

ひとりごと:
口直しにこのお茶を飲んだ。
+【刮風秋水紅餅2018年 その1.】
秋水紅茶
圧餅後の乾燥4日目で、ほぼ完了。
カタチの崩れた余りモノの茶葉で180gに満たないから自分用にしているやつ。
泡茶
美人の唾液は甘い。
錯覚なんかじゃないだろ。物理的に証明されるときがくると思う。

温州人第五批熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : タイ北部の古樹+雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 餅茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
晒干茶
餅面表
餅面裏
餅面拡大

お茶の感想:
温州人が持ってきた自作の熟茶のいくつかのサンプル茶葉の中で、微生物発酵がほぼ完成していているのは第五批の試作。
これを圧餅テストした。
原料の茶葉の7割はタイ北部の古樹のもので春のもの。これは”苦茶”と呼ばれていて、実際に苦いお茶。苦い成分が多いというのではなくてバランスが悪い。甘味・酸味・旨味などが少ないので苦味が際立つことになる。ただ、栄養は充実している様子なので微生物が好んでくれたら発酵は大丈夫だろう。
チェコ土の茶壺
茶葉を温めて乾かす
圧餅後、完全に乾くのには一週間かかるから待ちきれなくて茶壺に入れて温めて乾かす。
このとき『東莞人第一批熟茶2017年』にはかすかにアンモニア臭がしたが、この『温州人第五批熟茶2018年』はまったくしない。
乳酸菌っぽい香り。自分は子供の頃にお腹が弱くてビオフェルミンを飲んでいたが、その系統の整腸剤によくある香り。良い発酵ができた証拠じゃないかと思う。
一煎め
二煎め
八煎め
2杯3杯飲むと実際に腹がスーッと気持ちよくなる。
できたての熟茶はどれもそうだが、茶湯の口感がヌルっとしている。それが残らないのが上質。おそらく微生物のつくった様々な酵素が湯の中溶けて混ざって瞬間に分解されるのだろう。唾液の酵素もかかわっているかもしれない。口から蒸発するように消えて清潔感がある。
味は透明感あって甘い。苦茶を原料にしたとは思えないほど。
潤いのある喉ごし。圧餅の後、涼干・晒干の自然の熱でゆっくり乾燥。メーカーの熱風乾燥とは違う。たぶん熱風乾燥が市販の熟茶にありがちな喉をカラカラさせる”燥”の感覚につながる。
葉底
葉底拡大
葉底はまだ柔らかい。
この柔らかさは正常。できたてのときは微生物発酵の後期に活躍する枯草菌類による茶葉の分解がまだすすんでいない。
圧餅後も熟茶はまだ完成していない。
版納古樹熟餅2010年
葉底
上: 『版納古樹熟餅2010年』の葉底2010年7月撮影
下: 『版納古樹熟餅2010年』の葉底2018年9月撮影
何年もかけて茶葉を別モノにして栄養価を増してゆく。発酵の仕事は一時的なものではない。これを評価せずにできたての新しい熟茶を買い求めるなんてどうかしている。

ひとりごと:
微生物発酵後期に活躍する枯草菌類は熱に強いから、圧餅の蒸気で死んだりはしない。まだ生きている。
しかし、茶葉が乾燥した状態では増殖したり酵素を増産したりできないはずだ。
なので圧餅後の熟茶の茶葉の成分変化は、熟茶づくりの工程でできた大量の酵素によるものであり、後に増殖したり酵素を増産したりしたものではない・・・はず。というのが自分の主張だが、温州人は圧餅後の増殖や酵素の増産があると見ているらしい。
ここの意見が別れているが、もうすぐ解明できるだろう。

温州人第六批熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
西双版納
メコン川
西双版納
西双版納

お茶の感想:
西双版納の空港に着くなり茶友が「見せたいものがある」と言って、市内のとある高層マンションに連れてゆかれた。
300平米に4部屋くらいある高級住宅だが、住人はすでに引っ越して住んでおらず、据え付けの木製家具だけが残っている。
そのうちの一室に木工職人が銭湯の風呂くらいある木箱を2つ組み立てていた。
本格的に熟茶づくりをするための設備である。
西双版納に近いミャンマーで鉱山開発をしている温州人の茶友が先頭を切って独自の熟茶づくりをはじめたのが2016年の秋。
この記事に書いている。
+【版納古樹熟餅2010年 その32.】 
+【温州人の易武古樹熟茶 その1.】
それから2年。
温州人の熟茶はすでに第六批の微生物発酵がはじまっている。6回目の熟茶づくりになる。
ミャンマーの紛争地域なので現場に入れないが、ちょくちょく持ってくるサンプル茶葉は回を重ねるたびに良くなっている。温州人の創意工と、微生物の世代交代がすすんで発酵に熟練してきたことと、いい具合に成熟してきた。
ミャンマーの発酵
ミャンマーの発酵
毎回数十キロ以内の少渥発酵。
メーカーでは一般的に何トンもの茶葉を発酵させるので、数十キロで安定した結果を得ることができるのはちょっと特殊。原料の茶葉は少量ほど質の良いものになるので、これまでにはない質の熟茶ができる。はず。
この技術をそのまま西双版納に移植するプロジェクト。
昨年の秋に広東人の茶友が西双版納のマンションの一室で試みたが、狭い部屋では温度や湿度の管理が難しいということがわかった。茶友たちと議論を重ねた結果、大きな部屋と大きな木箱が要ることになった。
そこで地元の不動産王の茶友に相談したら、広い空き部屋を提供してくれることになった。乾燥した毛茶にして150キロまでなら余裕で醸すことができる。
中国の田舎の不動産は空き部屋だらけである。なのに不動産価格は高騰してどんどん新しい建物ができる泡末経済。遠慮なくタダで借りることにする。
さて、原料の茶葉をどうするか。
ミャンマーの茶葉、ラオスの茶葉、タイの茶葉、雲南省臨滄市の茶葉、いくつか候補が上がっている。いずれも古樹の茶葉が安く入手できる。地元の西双版納に候補がないのは価格が高すぎるから。熟茶づくりの茶葉はもともと西双版納よりもその周辺地域のほうが多いので、問題ないだろう。伝統に培われてきた知恵を見落とすことにはならないはずだ。
今日のお茶は温州人の第六批。
『温州人第六批熟茶2018年』仮名とする。
原料の茶葉はミャンマーの鉱山から雲南省に入って最も近い茶山が臨滄市鎮康県の”果敢交界”というところらしい。古茶樹がある。
中国語のサイトに紹介があった。
+【来自中国镇康县与缅甸果敢交界的古树普洱茶】
茶具
晒青毛茶
温州人が何度か通って機械を使わない手工の殺青(鉄鍋炒り)を農家に教えて、今年の9月中頃につくった晒青毛茶を90キロほど調達した。もともと茶葉の価格の安い茶山なので一般的には機械で殺生・揉捻をしているらしい。たくさんつくってたくさん売らないと農家は生活費も稼げない。手工でつくる非生産的な分は追加料金を払って補うが、それでも西双版納の有名でない茶山に比べて3分の1の価格。
もちろん直射日光による晒干で仕上げるようオーダーしてある。
雨季がまだ終わっていないので秋の旬とは言えないが、試作には十分。いい感じの熟茶ができることがわかったら春の旬を待てばよいのだ。
微生物発酵させる前の段階の晒青毛茶(生茶)のサンプルもくれたので、まずはそれを試してみる。
泡茶
葉底
煙草っぽいスモーキーな香りがあり苦底があり、アッサムっぽい雲南大葉種の田舎臭さが出ているが、だが栄養は充実している様子。
製茶は、焦げや生焼けがほとんどなく均一な火が通っていて、熟茶づくりに適していると思う。
微生物発酵途中の茶葉。まだ発酵前期である。
第六批熟茶
散水第一回目から2週間目。
もうあと1回の散水を最後にして30日くらいかけてゆっくり乾燥させる。
なので早熟であるし、圧延の蒸気も通っていないから菌類の生きている”生”の状態だし、いつも飲んでいる熟茶とはずいぶん異なる味であるが、生の試飲も回を重ねて慣れてきたから、ある程度良し悪しがわかる。
第六批熟茶一煎め
第六批熟茶三煎め
上: 1煎め
下: 3煎め
熟茶は一煎めの茶湯の色が赤味があって煎を重ねるほどに黄色っぽく明るくなるのが普通だが、これは逆で生茶のように煎を重ねると赤味が増す。まだつくられていない酵素類がたくさんあるのだろう。
微生物発酵の水分の多いときに発熱して高温になるのを防ぐ工夫が新しくて、比較的低温を保ちながらゆっくり発酵させてある。その効果が現れていて透明で潤いある水質に仕上がっている。
茶湯の色は生茶のように黄色いが、味は微生物発酵のもの。といっても熟茶にはぜんぜんなっていなくて酸っぱいヨーグルトな感じ。
微生物発酵は前期と後期で異なる微生物が異なる仕事をする。前期の主役の黒麹によってつくられたクエン酸がまだ多く残っているから酸っぱいのだ。後期の主役の枯草菌類がこの酸を分解するのだろうか。
第六批葉底
葉底には緑色が残っているが、この先の30日間のうちに一日一日熟れてゆき、仕上がりはもっと赤い黒い茶葉になると予測している。
圧餅したらどうなるのか、蒸気の熱とその後の乾燥の影響がどうなのか、保存のときの変化はどうなのか、この続きを見たいから、次回は圧餅テストをしてみる。

ひとりごと:
現代の鉱山開発は土から金だのプラチナだのいろんな金属を分別しながら採集するので、土の成分分析をする技術がある。これで茶葉の成分分析をしているから、熟茶の微生物発酵がつくりだす良い成分と悪い成分を見分けることができる。健全な発酵ができているかどうかを人の感覚だけでなく科学的な観点で確かめられるのは安心できる。
温州人が試しにわれわれの今年の春の刮風寨の小茶樹と古茶樹の成分分析をしてみたら、古茶樹の茶葉には味にかかわるある成分がやや多いことがわかった。やや多いの”やや”のために価格差が5倍以上もする。そう思うとバカらしくなる。
もっともこれは味にかかわると認識できている成分にフォーカスした科学的な理解の仕方である。まだ認識できていない、それを説明する言葉すら定義されていない何らかの、人の感覚の森羅万象についてはいったん無視している。というか、無視できるのが人の脳の理解の仕方なのかもしれない。
ある成分が何だったのかは言わないことにしておく。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
薪ストーブ
お茶淹れ

お茶の感想:
2017年1月のこと。
チェコの冬の薪ストーブで沸かした湯で、マルちゃんとお茶淹れ比べをしたとき、ヤカンの湯がグツグツ沸騰するちょっと手前の湯でお茶を淹れたら締まりのない味になった。
その時のお茶は紅茶の『巴達生態紅餅2016年』。
雲南紅茶
マルちゃんは、グツグツ沸騰してからの湯を使うべきだと主張する。
もしも少しぬるめの湯にしたいならグツグツ沸騰させてから茶海に移すなり、ヤカンのまま冷ますなりしたらよい。
例えば、沸騰していない湯の温度が97度で沸騰したのが98度で、そのほんの1度の温度差がもたらす差ではない。もっと大きな差がお茶の味に現れる。
沸騰した湯にしかない熱の振動があるらしい。
そう解釈している。
その振動があるかないかが問題。
刮風古樹青餅2018年・黄印
茶器と茶葉
2018年の黄印の圧餅の工程の”蒸し”をテストした茶葉。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
蒸して涼干・晒干して、蒸し時間をどのくらいにするのかの参考にした。
餅茶180gサイズなので、1枚分に満たない端数の100gほどが散茶で余って、それを蒸した。
同じ蒸し器の熱量で180gと100gとでは、単純に考えると1.8:1.0の蒸し時間で熱の通りは等しいはず。
3分半蒸して×1.8倍したら6.3分。6分18秒が180gサイズの餅茶の場合に等しい蒸し時間となる。
最終的には6分40秒蒸すことにした。
けっこう近い数値に勘が働いたのは、その前に小樹の茶葉でもっとたくさん蒸しテストをしていたから。餅茶の180gで4分くらいのもあれば9分くらいのもある。
鉄瓶と炭
沸騰する湯
泡茶
葉底
蒸しによる”蒸し味”が目立つのはほんの1ヶ月間ほどで、5ヶ月経った今となってはどのくらい蒸したのかをお茶の味から推測することが難しくなった。さすがに4分と9分には差があるが、5分と6分の差はわからない。
いや、違う。
こういうのは例えば7分13秒で茶葉の温度があるところに達して、そこで急速な変化が起こるというようなものだろうから、5分と6分の差はどうでもよいのかもしれない。
そうすると微調整なんてのはたいした効果を得ない。急速な変化が起こる温度なり時間なりのポイントを知って、そこを超えるか超えないかの判断が大事になる。
もしも急速な変化の起こるのがほんの数秒間のことなら、その中間で止めることはまず無理だろう。
グツグツ沸騰した湯なのかそうでないのかの差と似ている。
ということを最近になって気付いたので、今後の参考のために記事にしておく。

ひとりごと:
殺青の鉄鍋炒りの時間もそうかもしれないな。

刮風生態青餅2018年 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
茶壺
底敷き
茶針
道具
鉄瓶

お茶の感想:
道具には生命感が大事。
そこにあるというよりか、そこにいるという感じ。
茶葉にも生命感。
+【刮風生態青餅2018年】
茶葉餅面
お茶の味にも生命感。
茶湯
葉底

ひとりごと:
たぶん、生命と生命が交信して命の話をしている。
瑶族のアクセサリー
ラオスのバスケット
タイの布


茶想

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