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大益貢餅熟茶98年 その1.

製造 : 1998年
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山
茶廠 : 孟海茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶崩し
保存 : 通気・密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶葉

お茶の感想:
茶葉の整理をしていたら30gほどサンプルが出てきた。
+【大益貢餅熟茶98年崩し】
旬の若い茶葉が主原料の、典型的な現代熟茶。
自分の知る現代熟茶の中では、最高峰のひとつと言える。
餅面裏
崩し
金花
写真: 2010年当時撮影。2.8キロの大餅。崩したら金花がびっしり。
熟茶の渥堆発酵について、昨年の秋からある問題に注目している。
発酵の過程で酵母が過剰に活性化すること。
問題の原因は、やわらかい若葉が原料になっているため、と推測している。
微生物発酵の黒茶はもともと大きく育った老葉が使われていた。1970年代から量産のはじまった熟茶づくりにも当初はそういう茶葉が使用されていたが、国営時代の孟海茶廠が新芽・若葉をふんだんに使った新しいタイプの熟茶を出品する。
1975年のこのお茶が最初だろうか。
+【7562磚茶プーアール茶】
やわらかい若葉のしなやかな繊維と含水量の多さとが、酵母だけに有利な環境を提供して、他の優良な菌類の活動を制限してしまう。とくに黒麹菌は、酵母の発熱による高温と息苦しさのために生きていられる期間が短くなる。
渥堆発酵の茶葉の山の上のほうと下のほうと2層をつくって、下のほうでは高温・多湿になっても上のほうでは適温・適湿が保たれるようにして黒麹をつなぎとめて、渥堆発酵の生態環境を維持するのだが、1ヶ月間のうちに何度か撹拌して上下を混ぜ合わせるから、最後には全体が酵母発酵臭い茶葉になってゆく。
黒麹と酵母の活動時間の割合が、例えば5:5が理想だとしたら、現実は3:7くらいだろうか。感覚的に。 
「酵母発酵臭い」と言ったが、味は悪くない。むしろ甘くて、発酵の良いのは”美味しそう”な香りがする。
味の問題じゃないのだ。
体感の問題。酵母優勢の熟茶は暑苦しい。冷えた身体でないと美味しく飲めない。
消費者の嗜好というか、現代の人々の生活に合わせてお茶を飲む目的が変化して、体感よりも味のほうが重視されている。
しかしこの傾向は好ましくないと自分は見ている。
お茶がクスリから離れて味の嗜好だけを求めると、コーヒとポジションの奪い合いをして価格競争になる。
とくに微生物発酵茶においては、味はあくまで薬効を確認するための指標というくらいの役割で良いと思う。
正しい味よりも、正しい体感。
お茶はクスリからポジションを奪い返すべきだ。
(ここで言うクスリとは、病気を治すよりも快楽を得るほうのクスリ。)
さて、このお茶『大益貢餅熟茶98年』はどうか。
一煎め
このタイプの熟茶は、煮やしてはいけない。
高温の湯がよいので蓋碗よりも茶壺だけれど、短時間の抽出でサッと湯を切りたい。
1煎め2煎めは、発酵度の浅いスッキリ爽やかな風味となる。
1998年の国営時代の孟海茶廠の職人が自分用にとっておいたお茶で、その職人から入手しているので、原料の茶葉の身元が特定できている。孟海茶廠の自社所有の巴達山の茶畑のもので、他の地域のブレンドは無い。
渋味がしっかりしているし、口感のとろみも少なめだし、この味がブレンドしない無調整なのだから、発酵度の浅い渥堆発酵だと推測できる。
そして、たぶんこのために暑苦しさが抑えられている。
現在の渥堆発酵の技術において発酵度が浅いということは、例えば涼しい季節に低めの温度で発酵させるとか、なんらかのカタチで酵母発酵が抑制されているのかもしれない。
三煎め
3煎めくらいに抽出に時間をかけてみたら、やはり煮え味の酸味が出てくる。
ただ、製茶工程の渥堆発酵後なのか圧餅後なのか、熱風乾燥の高温による焦げ味が効いているから、煮えた味になってもバランスは崩れない。美味しい。
1998年のもので現在2018年だから20年熟成モノ。
20年間の常温保存による焦げ(メイラード反応)も関与しているから、つくられた当時に意図されたバランスではないかもしれないけれど。
葉底
葉底の色が均一であるのがブレンド無しの単一発酵モノであることを裏付けている。
茶葉の大きさが均一なのは、渥堆発酵後に篩がけで選別されているから。
篩がけは、渥堆発酵の茶葉の山の上の層・下の層の2層のうちの上の層のやや乾燥した部分だけを抽出できる。なぜなら、下の層になった若葉は茶葉同士で粘着してくっついて茶頭と呼ぶ塊になりやすいから。
茶頭の大きさは様々で、豆粒くらいから小石くらいまで。しっかり固まったのもあれば、揺すればほどけるくらいゆるいのもある。これらはすべて酵母発酵臭い。
渥堆発酵の撹拌のときに、茶頭をほぐさないように残しておいて、つまり撹拌を適当に手抜きして、最後の篩がけで取り除くようにしたら、酵母発酵の抑制された茶葉だけを抽出できる。
ということじゃないかな。
手抜きするためには、篩がけを機械を使って厳密にしちゃいけない。鍬みたいなので人力でザックリやるほうがよい。
ということは、近代的な設備ほど酵母発酵臭いお茶ができやすいことになる。
鍬
酵母発酵臭い茶葉とそうでない茶葉を篩にかけて選別したらよいのだ。1つの原料から2つの熟茶をつくればよい。
ただし、半々ではない。
酵母発酵臭くない茶葉は、3:7の、3のほうだけを選ぶ贅沢なつくりとなる。

ひとりごと:
そうだよな。
もう結論が出ている。

孟宋新緑散茶2018年 その2.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
茶器
茶葉

お茶の感想:
2018年の春のお茶。
早春の緑の爽やかさをそのまま表したような生茶というよりは緑茶っぽいお茶。
昨年の春だからもうすこしで1年経つが、晒干で仕上げたお茶は少なくとも1年くらい熟成したほうが味がしっとりしてくる。
+【孟宋新緑散茶2018年 その1.】
一煎め
煮やさないようにサッと湯を切る。
サッと淹れても薄くならない程度に茶葉はちょっとだけ多めにする。
2煎めくらいまでは水質にとろみがあって、味がふくよかに感じる。ふんわり緑の甘い香り。
3煎めに、試しにじっくり時間をかけて抽出してみると、水質のとろみは失われて角が出て、苦味や酸味が際立って、茶湯の色は黄色っぽくなり、香りには果実っぽさが出てくる。
煮やしてはいけない茶葉。
3煎め
葉底
葉底の色にも緑が鮮やかに保たれている。
黄色や紅茶色の軽発酵した部分が少ない。
揉捻が弱く、圧餅もしていない散茶のままなので、3煎くらいで捻じれが解けて茶葉が開く。
現在はこういうつくりの生茶のほうが多いかもな。
茶葉を煮やさないように気を使って淹れてもらえたら高い評価を得られると思う。

ひとりごと:
製茶の具合に応じたお茶淹れ技術をテーマにした勉強会をしたい。

刮風生態青餅2018年 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
餅面表
餅面裏
一煎め

お茶の感想:
ひとりで淹れて飲むのには、楽しめるお茶になったと思う。
+【刮風生態青餅2018年】
毎回新しい味に出会う。
チェコ土の茶杯
茶湯の色
「あとちょっと甘味があったほうが良いよな。」
なんて味の良し悪しはたいした問題じゃなくなっている。
どういうふうに淹れてもそこそこ美味しいから、雑味を出さないように淹れる技術を誇れるわけでもない。
ちょっとの違いに味の美が宿る。
茶湯
歌を歌うのが天才的な人の歌声に似た、ちょっとの響きの違いが大きな違いになるような、お茶の味の出方。
そういう瞬間に出会えるお茶。
葉底
葉底

ひとりごと:
お客様の好みやお茶淹れ技術を知った上でお客様の要望を無視する。
「あなたはこのお茶を買いなさい。」
みたいに、押し売りができたらいいよな。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その4.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
炭団
鉄瓶

お茶の感想:
熟成具合を確かめるのと、
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
先日の『祈享易武青餅2018年』と比べるのと。
+【祈享易武青餅2018年 その1.】
美味しさを比べるのには無理がある。
黄印は一天一采の1日だけの采茶に対して、祈享は3週間で21日分の茶葉が混ぜてある。原料の質に差があるから、そこは今回考えないでおく。
熟成壺
餅面表
餅面裏
注目するのは、製茶の違い。
黄印の製茶は、揉捻をしっかりしている。一晩渥堆発酵させている。水分を多く含んだまま晒干している。圧餅の蒸し時間が長い。石型で圧す時間が長い。
祈享の製茶はその逆をゆく。
一見、軽発酵度の調整に違いがあるように見えるが、祈享もあんがいしっかり軽発酵させてあるから、たぶんそこが狙いじゃないのだな。
祈享の茶葉は軽い。
黄印の茶葉は重い。
茶葉の形状や繊維の状態の差が体積の差となって、指でつまんだときの重さの感覚に現れる。
そこにおのおのの理想がありそう。
あくまで推測だが、祈享は白茶づくりに良いイメージを持っている。
揉捻なしの萎凋だけで仕上げる白茶づくりには、人の手が加わる工程が少ないほうが良いというある種の美学が伺える。
祈享の老板がそう話していたわけではないけれど、いろんな話をする中でなんとなくそういう価値観を感じる。
人の手を加えないということ。その観点からしたら、黄印は揉捻や圧餅に手が加わり過ぎているように見えるかもしれない。
ところで、白茶は淹れる技術に風味が大きく揺れるお茶。
白茶の葉底
写真:白牡丹生態茶2014年
あんがい淹れるのが難しい。
【白牡丹生態茶2014年 その5.】
祈享の生茶を老板が淹れると、かなり多めの茶葉(体積が大きいので多く見えるが重量はそれほどでもないかもしれない)をちょっと大きめな茶壺か蓋碗に入れて、熱湯を注ぐけれどサッと湯を切るように淹れる。
黄印は、少なめの(少なめに見える)茶葉をやや小さめの茶壺でじっくり蒸らすように淹れる。
黄色印
黄印のこの淹れ方で祈享を淹れると難しい。
ちょうどよい濃さにしようとしたら、抽出時間のタイミングは秒単位で変わる。
ピタッと決まったな!と満足できる煎は、5煎に1煎あったら良いほう。つまり5煎か6煎の一回の泡茶で、「うぁー美味しい!」と思えるのは1煎だけである。あとの煎は苦かったり酸っぱかったり薄かったりでバランスが悪い。バランスが良いとスカッと抜けが良くて爽やかだけれど、バランスが悪いとトゲトゲしかったり濁ったり物足りなかったりする。
泡茶に夢中になっている腕自慢の人は楽しいけれど・・・。
ところが、茶葉を多くして湯をサッと切る淹れ方にしたら何煎も安定した美味しさになる。ただし10煎以上飲める濃さが続くので、そのくらいガブガブ飲む覚悟というか、そのくらい何煎も飲むシチュエーション向きだということになる。
黄印は味の出方がおっとりしていて、その点でおひとり様向けに、ひとり静かに少量を飲んで満足できるようにできている。
どちらも、漫撒山のお茶の魅力の「無い味」を求めているとしたら、味の隠し方に美意識の違いがある。
黄印
祈享はキリッとした味なので、口に含んでから喉に流し込む時間が短い。
キラッと光る一瞬に幻を見たような見なかったような気になる。
黄印はぼんやりした味なので、口に含んでから舌にゆらゆらさせたい時間が長い。
あるのかないのかわからない味を探しているうちに寝むってしまって夢が続きを見ている感じ。
葉底
お茶をつくっているときにここまで意識しているわけではない。
例えば、揉捻をするときになってなんとなくの直感が”適度”を決めているのだが、そのなんとなくの直感の背後では、無意識が自分の奥深くに潜んだ美意識を引っ張り出してくる作業があるのだろうと思う。
祈享の老板と会話をしても、こうした内容は一切出てこない。
自分のことが自分でもよくわからないままつくっているから。お互いに。
そして、つくったモノに知られざる自分が見えるカタチになって現れる。
モノづくりは面白いなあ。

ひとりごと:
わからないままつくるべし。

祈享易武青餅2014年 その8.

製造 : 2014年04月02日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 京都 梅干壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
梅干し壺
餅面
鉄瓶

お茶の感想:
昨日の味を覚えているうちにこの茶。
+【祈享易武青餅2014年 その1.】
梅干壺に保存している。
蓋があってちょうどよい。
内飛び
熟成5年目。内飛に使われている一枚葉の色に赤味が加わった。
この茶葉も一扇磨の茶地から採取されたもので、色の変化が熟成度を現わしていてよいよな。
ま、自分のお茶にはしないけれど。
一煎め
1煎め2煎めくらいまでは製茶の粗の焦げ味が邪魔をする。
このときはまだ小さめの鉄鍋を使っていたので仕方がない。萎凋をしっかりして含水量の少なくなった茶葉を焦がさずに殺青するのは難しいだろうから。
茶葉の個性と道具と技術と身体のバランスって大事だな。
茶湯の色
このお茶は少々長めに蒸らしても茶湯の色にそれほど赤味が加わらない。
熟成5年目でこれはちょっと変化が遅いか・・・。
火入れがしっかりしていて、”生”の要素が少なくなっているのかもしれない。
お茶の味も前回飲んだときからどれほど変わったのかがよくわからないくらい。
だが、自分はこのくらい火入れのしっかりしたお茶のほうが熟成味に濁りが加わらなくて、清らかさを失わないと見ている。
また、体感も優しく落ち着いた雰囲気があると感じる。
祈享の老板は海南島生まれの田舎育ちだから、このへんの感覚はわからないかもしれない。厳しい見方だけれど、そうだから優れた美意識を持つプーアール茶が近年には無い。
お茶づくりやお茶市場をとりまく人間たちの背景が影響するから現実は厳しい。
農民がお茶をつくって土豪(文化や教養のない成金)がお茶を買う現在の高級プーアール茶市場では、本当の高級茶は生まれないだろう。
葉底
でも、マニアはそれで良いのだよな。
みんなが価値をつけていないものに独自の視点と深い考察とで価値を見出す。高級になりたくても高級になれない現代プーアール茶のその背景がまた面白くて勉強になる。
マニア頑張れー!

ひとりごと:
他人の認めた高級で自分も高級になっちゃおうなんて甘い考えだよな。
まったく。

祈享易武青餅2018年 その1.

製造 : 2018年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶と炭火
鉄瓶

お茶の感想:
このお茶の2018年の春の新作。
+【祈享易武青餅2014年 その1.】
上海に立ち寄って老板にサンプルをちょっとだけもらってきた。
その場でも飲んだけれど、すばらしく良い出来だと思った。
農家から土地の権利を借り上げて、生産量を控えて茶葉の質を上げる。
ひと山まるごとの規模である。
森の木を切らない。茶樹の枝を剪定しない。土に鍬を入れない。冬に老葉の一部を落とす。春と秋の旬だけ采茶する。その場で製茶する。
漫撒山の国有林の森の中でこの理想を実現しているのはこのお茶だけ。
5年目となる2018年は森と茶樹をいたわる効果が明らかになっているはず。
茶葉
茶葉
写真ではその色の調子がわからないが、同じ漫撒山の刮風寨の標準と比べると白っぽい。
刮風寨の単樹2号に似た品種が多いということか。
+【刮風寨単樹2号2018年 その2.】
茶葉の色が色とりどりなのは萎凋が良いから。
これ以上萎凋したら乾燥しすぎて殺青が難しくなるというギリギリを攻めていて、茶葉に殺青の熱が入ってほんの数十秒間の40度から70度の温度帯で軽発酵の変化が起こったその色。
大きめの鉄鍋に6キロの鮮葉を一度に殺青するらしいが、萎凋で水分の少なくなった茶葉を焦がさずに炒るためには、この量でなければならないバランスだろう。
国有林の森の中にキャンプして製茶しているから、采茶してすぐ萎凋台で涼干される。殺青は萎凋の仕上がり次第、深夜であっても行われる。
お茶づくりの夢を叶えている。
しかし、国有林の中で製茶を今後も続けられるかどうか・・・、規制が年々厳しくなっているので森の中で火を起こしたり寝泊まりするのが許されなくなるかもしれない。鮮葉を村まで持ち帰ることになれば、その道のりは徒歩とバイクで1時間以上かかるので、刮風寨でわれわれがしているのと同じになる。
この萎凋の微妙な仕上がり具合を再現するのは難しい。
茶湯の色
お茶の味はこれにちょっと似ている。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
刮風寨茶坪の中では珍しい小さめの茶葉の品種を選んだのと、殺青後の渥堆軽発酵が『祈享易武青餅2018年』の萎凋に似た効果を得ているのだろう。
似ていないところは、香りに気品のある感じと軽快な風味。
一扇磨の特徴である。
あと、揉捻をそれほどしっかりしていないところが似ていない。
揉捻をしっかりすると香りに甘味が加わるが悶々としてヌケが悪くなる。スカーっと晴れた空に吹くそよ風ではなくなる。
もともと一扇磨のお茶は漫撒山の中では甘さ控えめで軽快な苦味が持ち味なので、その個性を活かした製茶なのかもしれない。
茶湯の色4煎め
試しに4煎めに5分ほど抽出したら茶湯の色に赤味が出た。
この色の変化から見て殺青の火入れは浅めに仕上げてある。”生”が残っている。
圧餅の蒸しの火入れも控えめ。
祈享の圧餅は易武山のそこそこ大きな工房に依頼して行われているが、ゆるい圧延に仕上げるよう注文してあるから蒸し時間は短い。
この点で、自分の家の厨房で圧餅している『刮風古樹青餅2018年・黄印』との違いがある。
しかし、ここまで濃く抽出すると苦すぎてバランスが悪い。一扇磨のお茶だからこれでいい。
葉底
葉底を見てわかるように刮風寨のと比べて茎の部分が細い短い。
理屈からしても茎の部分にある糖質が少ないだろうから、味のバランスはやや苦いほうに傾くはず。
活かすも殺すもお茶を淹れる技術とセンスの問題。茶葉の個性の見極めが大事。
2017年から、易武山に倉庫を構えて長期熟成させているらしい。
温かい気候のほうが熟成に良いという考え方だが、自分はそれには否定的で、上海や日本のほうが良いと見ている。証明するために1筒7枚単位のこのお茶を買うのは高くつきすぎるから黙っておいた。
春の生産量は300キロほど。
単純計算して1日約20キロのペースでつくったらしい。この品質でこの生産量を実現しているのは、このお茶だけ。

ひとりごと:
宝物は水の流れで姿を現して水の流れで姿を消すのだ。
入手しておいたら良かったと後悔するかもしれないな。

版納古樹熟餅2010年 その41.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 通気・密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
炭火と鉄瓶と茶壺
 西双版納熟成
京都熟成
京都熟成

お茶の感想:
西双版納から持ち帰ったこのお茶。
日本で3年以上保存していたこのお茶。
+【版納古樹熟餅2010年】
もう何度も飲み比べてみたが、ほぼ同じ結果となった。
西双版納のほうはジューシー。
日本のほうは淡くてサラサラ。
注ぎ
茶湯の色
まるで炭のような味。実際に炭化がすすんでいるのだろうか。
甘濃いーベルギービールのような味を熟茶に求めると肩透かしをくらう。
どんなに濃くしても濁らない。澄んだ味がつづく。
ひとくちずつ飲む
茶壺からひとくちずつ杯に注いでは飲んでまた注いでは飲んで、いっぺんに杯に注ぎ切らないのが美味しい飲み方。
なぜかというと、この熟茶はどちらかというと”生”に仕上がっているから。
ひとくちごとの変化を感じる。一煎ごとに熱が入ってゆく変化も大きい。
茶葉が煮えると”生”の繊細な風味が失われるから、抽出時間や温度を考えたほうがよい。
”生”な仕上がり具合は圧餅後の熱風乾燥の温度が低かったのが原因だが、今になってその違いがどのくらいなのか実感としてわかってきた。
注ぎ
茶湯の色
もうちょっとしっかり火(熱)の入った熟茶、例えば『宮廷プーアル熟散茶03年』(卸売部)の熟成変化はこれほど大きくはない。焙煎とは言えないまでも比較的高温で熱風乾燥されているから、ある種の酵素は活性を失っているのだろう。
葉底
葉底
葉底の茶葉の繊維の質感の変化も大きい。

ひとりごと:
保存熟成の目指す方向がはっきりしてきたから、あとは待つだけ。

刮風秋水紅餅2018年 その3.

製造 : 2018年10月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と店長
工程 : 紅茶
圧餅 : 2018年10月25日
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 少し通気
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 紅泥の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶・炭火
炭火
秋水
刮風秋水紅餅2018年

お茶の感想:
手で揉捻することの価値を考える。
昨年の秋から引きずっていた疑問だが、産地から遠く離れた環境でようやく答えが出る。
+【刮風秋水紅餅2018年】
紅泥壺とお茶
注ぎ
機械揉捻した茶友は手の仕事は合理的でないと見ている。
味比べをすると、機械揉捻のほうが味が濃く出て美味しいと感じやすい。手の揉捻は味が出なくて薄い。
そこ。
味を隠さなければならないから。
だから手の揉捻のほうが良いのだ。
あからさまに美味しさがわかるのは上等ではない。
お茶の味だけではなくて、あらゆる”美”に共通することだろう。
こんなカンタンなことが産地に居るときはわからない。社会環境が異なるから仕方がないけれど。
茶湯の色
葉底
もうひとつ。
手で揉捻したやつは体感に”陰”の性質が宿る・・・はず。
このお茶はまだはっきりと現れていないが、そういう心の作用があるのではないかと推測している。
このお茶みたいに。
+【漫撒一水紅餅2016年 その4.】
機械揉捻のやつはあきらかに陽の性質で、みんなといっしょに飲むとおしゃべりが弾む。
その目的ならテーバッグの量産の紅茶で十分。

ひとりごと:
お茶は産地から遠く離れるほど美味しくなる。

安化方磚黒茶2017年 その1.

製造 : 2017年
茶葉 : 湖南省安化県有機栽培農園
茶廠 : 不明
工程 : 黒茶
形状 : 方磚茶1kgサイズ
保存 : 西双版納 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
安化方磚黒茶2017年

お茶の感想:
今回のお茶の名前は、適当に付けた。
もともと名前は無い。
黒茶にはそういうのがたくさんある。
昨年に西双版納の不動産王の茶友が安化に行ったときに一枚買ってきて、それが美味しいので北京の土豪(文化や教養の無い成金)が12トンも爆買いして、北京郊外の倉庫に寝かせているらしい。
西双版納の手元には1枚しかない。
正方形の分厚いレンガ状の端のほうを崩してひとカケをもらってきた。
金花カビの培養を試みたかったので、「なにかサンプルは無いか?」と版納の茶友を頼ったら、このお茶が出てきた。
安化方磚黒茶2017年
安化方磚黒茶2017年
このひとカケを崩すときにいつもの茶針で表面を剥ぎ取ろうとしたら、針先が弾き返された。
どうやら圧延するときの茶葉の層がプーアール茶の磚茶とは違う方向に積み重なっているのだが、おそらく金花カビの性質を考えてそうしてある。
黒茶にしては若葉の量が多くて、しっかり粘着していて、カッチリ固まっていた。
製法がはっきりしない。
あくまで推測だが、以下の2通りが考えられる。
1.鮮葉を蒸して殺青して、揉捻して、堆積して(微生物発酵)、揉捻して、蒸して圧延して、積み重ねて(微生物発酵)、出来上がり。
2.鮮葉を蒸して殺青して、揉捻して、乾燥させて、蒸して圧延して、積み重ねて(微生物発酵)、出来上がり。
ま、今回はどちらでもよい。
目的はこの製法について勉強することではなく、金花カビの胞子を得ること。
金花カビは、・・・圧延して、積み重ねて(微生物発酵)の、後者のほうで出現する。
水分とか、温度とか、通気の具合とか、その条件が揃わないと金花は生きられない。そのかわりいったん繁殖すると茶葉をコロニーとして独占支配するので、雑菌の侵入を防ぐことができて保存に強くなる。
炭火
安化方磚黒茶2017年
安化方磚黒茶2017年
安化の葉底
あんがいスッキリしていて、このお茶に似ている。
+【雅安蔵茶金尖芽細08年 その1.】
さて、この金花を移植してみたいのは、このお茶。
+【刮風寨冬片老葉2016年 その1.】
崩して
蒸して
囲って
保温
茶葉を細かく崩して、蒸して、囲って、保温する。
待つこと6日間。
発酵後の茶葉
発酵後の茶葉
茶葉がちょっと黄色く色付いたくらいで、何も変わっていない。金花の黄色い花(胞子)なんてどこにも見当たらない。
試飲
一応飲んでみたけれど、蒸したことによる変化以外の変化が感じられない。
失敗の原因ははっきりしている。
茶葉の乾燥が早すぎて、金花の増殖に必要な水分が足りていなかった。
なぜ乾燥が早いのかというと、茶葉が大きく育って繊維が硬くなりすぎて、水分を含む量が少なすぎるから。
揉捻をしていない茶葉なので、茶葉のミクロの水道管に亀裂が入っていなくて、水も金花の菌糸も入り込む余地がない。
大きく育った茶葉なので粘着力が少なく、布で絞って圧し固めても茶葉と茶葉との隙間が空きすぎて、水分が逃げやすい。
大きく育って繊維が硬くなった老葉が黒茶の原料として適しているのだが、そうはいってもちょうど良い頃合いというのがある・・・らしい。
秋に近づいた9月頃の一芽五葉くらい。教科書にはそう書いてあることが多いが、その頃合い。

ひとりごと:
また来年の夏頃に挑戦する。
種麹をつくるように、種金花をたくさんつくりたいのだ。
熟茶の微生物発酵の後半に撒いてもよいし、西双版納の倉庫熟成の茶葉に撒いてもよいし。

7592七子餅茶1999年 その2.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ崩し
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
90年代熟茶

茶の感想:
熟茶は微生物発酵の黒茶に分類されるが、黒茶は大きく育ったやや繊維の硬い茶葉(老葉)でつくるのが基本なのだが、近年の熟茶はそうでもない。けっこう若くて繊維の柔らかい茶葉でつくられる。
その理由は、新芽・若葉の柔らかい若い茶葉でつくる生茶が市場でよく売れているから、農家はその需要に向けて、とりあえず若い茶葉で晒青毛茶(天日干しの緑茶)をつくってしまい、売れなくて困ったのをメーカーが安く買い叩いて、熟茶の原料となるからだろう。
わざわざ大きく育つのを待ってから摘んで伝統的な黒茶のための原料をつくっている農家を、現地では見たことがない。
葉底
写真:刮風寨の早春の若い茶葉。柔らかくて粘着力もある。
また、自分の周囲にもいる茶友たちみたいに、上質なお茶を求めて産地のお茶づくりにまで手を出している人達も、「春の旬の若葉で熟茶をつくったら良いに違いない」みたいなことを言う。
カンタンな説明でお茶の上質を自慢したい甘い考えがチラっと見える。それとも、若い茶葉は香気も強いので、他人よりも美味しいお茶がつくれると考えるのかもしれない。
いろんなメーカーがすでに試みている。
葉底
写真:沈香黄片老茶磚80年代 硬い老葉
若葉と老葉とでは内容成分が異なるので、その違いが微生物発酵にも影響してお茶の風味を形成して、ちょっと違った味の熟茶ができるかもしれないが、実際のところみんなできていない。
美味しい不味いの違いはあるけれど、味の方向というか系統というか、みんな同じほうを向いている気がする。
この原因は茶葉の内容成分の違いから来るのではなく、茶葉の大きさやカタチ、繊維の形状や性質など、もっと物理的なものが関係していると見ている。
今日のお茶は、黒茶らしさのある老葉の熟茶。
+【7592七子餅茶1999年】
近年の熟茶にこういう茶葉は少ない。
温め
一煎め
熟茶の新製法を探るために渥堆発酵を試して、最近問題にしている微生物発酵中の通気のこと。
竹籠を利用した渥堆発酵では、空気が竹籠の内側にこもりやすくて、水蒸気が逃げにくくて、茶葉同士が密集しやすくて、老茶頭(水を多く含んだために茶葉同士がくっついて石ころみたいになった部分)とよく似た味になる。パラパラの散茶のはずなのに老茶頭に似た味になる。
微生物がやや呼吸困難になった状態でつくる成分が老茶頭の味を形成するのだが、しかし、この味は近年のメーカーのどの熟茶にも見られる。
竹籠を利用しないで、地面に茶葉を堆積した昔ながらの渥堆発酵のはずなのに、なぜか老茶頭っぽい味の熟茶が市場に流通している。
茶湯の色
90年代のこのお茶『7592七子餅茶1999年』のようなサラッとした口感の茶湯とは違って、ちょっとヌルんとしていて、味も暑苦しいような濃さを感じる。
その観点で見たら、当店の2010年のオリジナルの『版納古樹熟餅2010年』もどちらかというと暑苦しい。近年の熟茶の系統の味である。
葉底
あくまで推測だが、昔の熟茶づくりに大きく育った老葉が使われていたのは通気の問題が考慮されていたからだ。
堆積した茶葉に水を撒いても茶葉同士が密着しないで隙間をつくりやすい老葉の大きさ・形状・繊維の弾力。
茶葉の内側に水が入り込んでも外に逃がしやすい老葉のミクロの繊維の水道管の排水力。通気力。
若葉ではどうやっても無理。水を吸ったら、黒麹菌など主役の微生物を呼吸困難にさせる。
微生物が呼吸しやすいかどうかが味を大きく左右して、味の系統を分ける。
それは内容成分の違いよりもずっと、熟茶の味を決定する要因となる。

ひとりごと:
例えば、老葉を原料にして理想の熟茶ができたとしよう。
でも、その味のわかる人は現在はほとんど居ないわけだ。
仲間たちにも市場にも認められないお茶になる。
なので、近年のメーカーはわかっていてもやらないだろうな。


茶想

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