プーアール茶.com

版納古樹熟餅2010年 その38.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
熟成壺
熟成壺
版納古樹熟餅2010年

お茶の感想:
強い台風が去って空気が落ち着かないので熟茶。
こういうときの生茶はどんなに美味しいやつでも美味しくならない。
チェコ土の壺熟成1年目のもの。
入れている熟茶は10年モノ。
+【版納古樹熟餅2010年】
餅茶一枚を崩して壺にいっぱいに入れていたが、ちょくちょく飲むので減った。
新しい一枚を崩して足すかどうするか・・・。基本、器の中の茶葉が多いほど茶葉同士で水分などを調整しやすいはずだから。
台風の残した爪痕のせいで忙しくて手間がかけられないので、今日はサクッと2煎で出し切る。手数が少なくて短い時間で、それでもあんがい美味しくなる淹れ方。
道具がいつもとはちょっと違う。
大きめの茶壺と茶杯
茶壺
背が高くて腹のふくらんだ茶壺300cc。
茶壺の重さはこの大きさで169gとけっこう薄造りで軽い。
コツはたっぷりの湯で茶壺も杯も温めること。
湯で温める
温めるときにいっきに湯を注ぐと割れる可能性があるので、ちょっとずつ湯を注ぐ。
湯を捨てるのはもったいないので鉄瓶に戻して沸かしなおす。茶壺も茶杯もキレイに洗っているからいいだろ。
湯を注いで3分
茶葉を入れて湯を注いで4分。じっとがまん。
注ぐ1
注ぐ2
注ぐ3
最後の一滴まで注ぎ切る。
湯量が多いとなかなか冷めなくて熱くて飲めないので、先に次の煎の湯を注いで蒸らしておく。2煎めの蒸らし時間は7分くらい。
2煎め
この長時間蒸らしのうちに冷めるようではダメだから、湯量が多くて熱量の多い茶壺を使う。湯量の少ない小さな茶壺では7分間も待てば冷めてしまう。手元に大きめの茶壺が無いのならグラスのコーヒーサーバーで十分。
2煎めを蒸らしているうちに1煎めをゆっくり飲む。
注ぎ3
注ぎ4
茶湯の色
2煎め。こんなに黒い色になっても味は淡くて透明。
茶葉の健康と、製茶や微生物発酵を丁寧にした成果と、壺熟成の効果と、ひとつの方向を目指して歩いている感じ。
葉底
出し切った葉底。
指で潰しても色がつかないくらい成分は湯に出尽くしている。

ひとりごと:
この茶壺はバランスが悪いくらい口の位置が高いところにあるように見えたけれど、その設計の効果で注ぎの水を上手に制して静かに注げるから、お茶の味も大人しく丸くまとまる。
茶壺

刮風生態紅餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月7日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶
鉄瓶内側

お茶の感想:
この頃よく使っている鉄瓶は古物で、名が入っていなくて素性がはっきりしないが、どうやら量産の型モノではなく一点モノらしい。昔の釜師がつくったものかもしれない。
手に持った瞬間にわかる軽さ。薄いつくりである。鋳造のもので薄いのは技術的に難しいらしい。
軽いだけでなく水の調子も良い。
鉄瓶は新しいのと古いのと鉄の成分が異なるらしいが、現代の一点モノをつくる釜師の職人さんでさえ鉄の違いは謎だと言っている。
水の調子が良いのは鉄の成分だけが原因とは限らない。湯を沸かすことの科学には、形状や厚みの違いだけでなく、鋳物をつくる技術からなるミクロの組織構造も関係しているだろう。ミクロの世界に手の仕事が形状記憶されている。
鉄瓶のような古い時代のものはたいがい、現代の人は知らないことを昔の人は知っている。
お茶もまた古い時代のもので、昔の人のほうが知っているにちがいない。
刮風生態紅餅2018年
今年のオリジナルのお茶は自分ひとりで圧餅するようになった。
これは言わば一点モノのお茶づくり・・・のつもりである。
茶葉を摘むところから圧餅が仕上がるまでの変化を、つじつまの合うように調整する。手や目や耳や鼻の感覚に従う。
自然が偉大すぎてコントロールしきれないのが西双版納のお茶で、ぜったい自分の思うようにはゆかないけれど、調整しようという意思があるかないかの違いは大きい。茶葉のミクロの組織構造にその意思が形状記憶されるはずだから。
鉄瓶の優れたものの良さはすぐに分かるものではない。使い込んでいるうちにジワジワ発見が増えてゆくだろう。今まさにそれをしている。
お茶もそうで、出来てから何年か試飲を重ねて隠れたところを発見してゆく。
刮風生態紅餅2018年
+【刮風生態紅餅2018年】
今年2018年の刮風寨小樹のお茶は生茶も紅茶も辛い。
このことはすでに何人かのお客様も指摘していて、この辛さについての解釈を試みているところ。
痺れるような辛さが漫撒山の森の古茶樹には少なからずあるのだが、今回の辛さは痺れる”麻”というよりはピリピリする唐辛子の”辣”に近い。30分ほど経つうちに”麻”に変化して舌に痺れの余韻が残る。
なぜかわからないが、これが良い具合に現れるときとそうでないときがある。
先日の9月2日の勉強会ではこの”辣”が喉の奥までも刺激して、気持ちよく飲めないくらいだった。
上海の勉強会のために残していたサンプルの一枚を、友人がハンドキャリーで届けてくれて、飛行機で着いて2日後の試飲だったので、荒れていたのだと思う。輸送の振動や気圧の変化や磁場の変化や、いろんなことが茶葉をイライラさせる。
何度もこんなことを経験しているのでぜんぜん慌てないが、勉強会の参加者はドキドキしたかもしれない。
茶壺
茶湯の色
熟成壺で5日間寝かせた今日はいい感じ。
”辣”は舌だけに留まってそれほど喉を刺激しない。
辛さが落ち着くと、お茶の味の透明度に吸い込まれる。
これまでのオリジナルの紅茶との違いは、茶葉一枚一枚の軽発酵度がより均一に仕上げられたこと。
漫撒山の原生の大葉種の血の濃い茶葉は、カタチや大きさの複雑さゆえに軽発酵のムラができやすい。それがかえって魅力を醸し出しているのかもしれないが、もっと均一な軽発酵度に仕上がったのがどんなのかを知りたかった。
今回は製茶時の天候不順も手伝ってくれて、予想を遥かに上回る均一な仕上がり。
自分で圧餅したことでさらに均一になって、これまでの紅茶とは明らかに異なる。
茶湯の色
葉底
紅茶の味はする。それ以外のものはなにも無い。
ひとことで言うと味がない。いや、無い味である。
舌に痺れる辛味が、もっといろんな味が存在していたことを想像させる。

ひとりごと:
宜興の茶壺
茶壺
ちょっと小さめの古い時代の宜興の茶壺。
土は良くて水を甘くするけれど、蓋がユルユルで困った。

醸香老茶頭散茶90年代 その3.

製造 : 1995年頃
茶葉 : 雲南省景谷茶区大葉種潅木晒青茶
茶廠 : 昆明第一茶廠(推定)
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
熟茶の壺熟成
熟茶の壺熟成
チェコ土の壺
宮廷プーアル茶2005年

お茶の感想:
壺熟成をはじめている。
美味しいお茶をつくるのは夢で、それを熟成させるのは夢のまた夢。
壺はどういうのが良いのか、置き場所の環境はどこが良いのか、そんなことを問いだしたら果てしない。
壺が足りない。場所が足りない。時間が足りない。お金が足りない。
一生かかっても満足できないから、愉しみだけは足りている。
写真は熟茶のプーアール茶。
生茶と熟茶の熟成はちょっと違う。
そのコツをカンタンに言うと、生茶は乾燥気味にして熟茶はちょっとしっとりさせる。しっとりさせた分、出荷前にはカラッと乾燥させる必要がある。
トラブルを避けたいならはじめから乾燥気味にしたほうがよい。
茶缶で熟成
乾燥を保つために茶缶に入れておくだけで熟成はすすむ。
少量だったらこれでもよい。日が当たらない室温の安定したところに置くこと。エアコンの風が当たるところはダメ。
熟茶の場合は、甘くまろやかで透明感が増し、カカオ風味が少し加わるのが理想。
通気のある入れ物なら、幸運に恵まれると、金花と呼ぶ麹カビの一種が緩慢に活動して、お香のような甘く上品な香りと、ほろ苦味のスパイスを加えてくれる。
このお茶は金花がもともと着いていた。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
入荷した当時はそれがまだ活動していたせいか、黄色やオレンジ色が鮮やかだったけれど、茶葉が乾燥してゆくにつれ金花カビは休眠するせいか、いつのまにか色が落ち着いている。
これでいいのだ。菌類のつくった酵素がびっしり茶葉の表面についているだけで熟成は十分に面白い。もしも菌類が生きたまま活動を続けたら、茶葉が土になって、お茶の味はなくなるだろう。
良性の菌類を付けて増殖させる”発酵”の過程と、それがつくった酵素成分による緩慢な変化が起こる”熟成”の過程と、区分けするべきなのだ。
鉄瓶と茶壺
チェコ土の茶壺
茶葉は乾燥していても熱するとミクロの繊維が抱えている水が出てくる。
わずかなので菌類が活動したり増殖したりはできないけれど、酵素の働きで茶葉の成分変化が起こるには十分。
雑菌に活動させないためにも、菌類の増殖を期待して湿度を上げるようなことはしないほうがよい。
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
入荷した当時よりも味が薄くなったような気がするが、それで正しい。透明感が増して、もっと繊細なところの風味が鮮やかに見えてくるから充実感がある。飲んだ満足感が満ちてくる。
雑味のあるうちはミルクティーにしても良かったけれど、現在はストレート風味の広がりや奥行きのほうがずっと魅力的に思える。
茶葉の乾燥
茶葉の乾燥
もうちょっと乾かして熟成させたほうが良いと思って、炭火の熱で水を抜いた。

ひとりごと:
「当たり年のワインのポテンシャルはそれはいいだろう。せっかちな俺には早く飲み時を迎えるから、ハズレ年のワインもそう悪いもんではない。」
という言葉があるらしい。

勉強会・京都 山笑う 9月1日土曜晩

森
森の小屋
苗族13人

2018年春。
4年ぶりに恵まれた天候、歴のめぐり、新芽・若葉の育ち。
プーアール茶の聖地”刮風寨”で理想の叶ったお茶づくり。
現場の興奮冷めやらない店長がお茶自慢をします。

日時:
9月1日 土曜 午後5時半から8時半頃まで 終了

場所:
京都 岡崎 好日居(地図)
エアコンありません。
熱いお茶を飲んで自然な涼を求めます。

氷
(氷置きます。)

お代:

茶単:
刮風古樹青餅2018年・黄印
刮風古樹青餅2018年・緑印
刮風古樹青餅2018年・晩春

予約:
+【店長にメール】
メールにてご応募ください。
前日までにご予約ください。
定員5名さま。

注意:
お茶をたくさん飲むので空腹はお腹に負担がかかります。なにか軽くお腹に入れておいてください。
途中でご飯とお漬物など出します。

刮風寨単樹2号2018年 その2.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶100g
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶・炭火
単樹2号
単樹2号
茶壺

お茶の感想:
お茶が美味しいかどうかの判断は過去の記憶に頼っている。
そうしようと意識しなくても、無意識のところで脳が働いている。
はじめて飲むプーアール茶の美味しさが一瞬で分かるのはそのせい。過去に別の食べものや飲みもので経験した記憶があるから。その記憶は抽象化したカタチになっていて、美味しさの要素みたいな共通点を見つけることができる。
ここまでが、どこかで聞いてきた脳の働きの話。
ここから先が、さらに勝手に想像を膨らませた話。
美味しさの記憶は舌や鼻だけでなく、歯の記憶も、目の記憶も、耳の記憶も、喉の記憶も、胃の記憶も、腸の記憶も関連しているかもしれない。
味に関するデータだけでなく、光や音や温度や振動や電気信号からもカタチの共通点を見つけているかもしれない。
例えば、はじめて飲むお茶に、いつか見た夕日の空の光と同じカタチを見つけて「懐かしい味」と認識するとか。
例えば、好きな音楽の旋律やリズムと同じカタチを見つけて、お茶の味に同じ印象を味わうとか。
味の経験がなくても美味しさを判断できる。
紫砂
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
+【刮風寨単樹2号2018年 その1.】
「静かな湖面を水鳥が低空飛行でずーっと飛んでいる感じ」。
チェンコーンの友人がこのお茶を飲んで言っていたのは、そのことだった。
想像力を働かせて比喩的に表現したのではない。記憶にこのお茶の余韻と同じカタチのものがあったのだ。
お茶を飲んで、目の前にないはずの遠い景色を見たり、歩けないはずの雲の上を散歩したり、息をしたまま海の深いところへ潜っていったり。
無意識は自由に遊べる。
葉底

ひとりごと:
こんな話をしているせいか、お客様二人からメールで写真をもらった。
無意識ですべてが繋がっている。
許可を頂いて掲載。
海
海
港
海の光。
森と火
森と日
森の空気。

漫撒一水紅餅2016年 その4.

製造 : 2016年4月3日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 店長+孟海県の工房
工程 : 晒干紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 通気を許した保存
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の白泥の茶壺+チェコ土の杯+鉄瓶+炭火
宜興の白泥の茶壺
漫撒一水紅餅2016年

お茶の感想:
漫撒山の原生品種に近い茶樹が日陰で育ったことの"陰"の味わい。
+【漫撒一水紅餅2016年】
手で揉捻したことでこの効果が引き立っていると思う。
紅茶は紅茶で特別なことのない味であるが、身体への影響と心への作用に個性がある。
口に溶ける。喉を滑る。腹になじむ。背中や肩がゆるんで沈んでゆくような体感。
なにもしたくなくなる脱力感。心が静まって、だまって一点を見つめたままになる。
多くの紅茶が目の覚めるような”陽”の性質を持つので、それを飲み慣れた人からすると、あるいはそれすら気付いていない人からすると、陰の味わい方がわからないだろう。
仲間と無言のままでは悪いのでがんばってお喋りしたり、なにもしないのはもったいないのでお茶を飲みながら仕事をしたり音楽を聞いたり、とにかく陰に光を当てて潰してしまう。
注ぎ
白泥の茶壺
陰翳礼讃。暗がりの美しさ。
この美しさを表現する絵画や写真は数あれど、体感させることができるのはお茶ならではだろう。
ということを伝えたくて勉強会をする。
学芸員や評論家が芸術作品を解説するように、お茶の鑑賞方法をカッコよく解説したい・・・・と思う気持ちをぐっと堪えて、陽の味わいの紅茶と飲み比べる。
陽の紅茶。
+【孟海旧家紅餅2018年】(卸売部)
自分で気付いていただく。
この場合、2つのお茶を同時に口にしてもどちらが陽で陰なのかわからないから、ひとつずつじっくり飲む。
注ぎ
実は10日ほど前に仲間内でお茶を飲む機会があって、この実験をした。
あんがい効果がはっきりわかって面白かった。
陽の紅茶を飲んだ後はおしゃべりがはずんで、陰の紅茶を飲みだしてからはみんなだまってしまった。
意識しなくてもその感覚はすでに自分の中に発生している。
このとき解説資料を用意していたが、勉強会では資料も無しにする。
茶学の資料
資料があるとそこに目がゆく。外の世界の情報を拾うほうに意識が向いてしまう。
自分の中に意識を向けてほしいのだ。目を瞑って光の情報を断つくらいのほうがよい。

ひとりごと:
美の鑑賞は外側にはなくて内側にある。
自分の身体や脳がその美をどう捉えてどう反応するかという問題。
個人的なものだから、言葉やなんかで共有するのは、共有できているという誤解を共有しているだけかもしれない。

越境野生青餅2010年 その4.

製造 : 2010年4月
茶葉 : ミャンマーJing dong 野生古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 通気のある常温
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
鉄瓶に鉄瓶の湯
餅茶崩し
茶葉

お茶の感想:
布朗山系のお茶は、ここにきて石鹸のような香りが出てきたという話を地元の茶商から聞いたので、このお茶を飲んでみた。
+【越境野生青餅2010年】
たしかに石鹸っぽい香りがある。
煙草と鰹節の混ざったような、もともとのスモーキーな香りに石鹸が交じる。
2010年当時につくった文章を読むと「お香のような香りがある」と書いているが、それが今言う石鹸の香りのことだが、たしかに以前よりも華やかに開いている。
布朗山系統のお茶はあまり好みではないけれど、この美味しさがわからないでもない。
ちょっと濃くすると舌にピリッとしたスパイスを残すワイルドな感じ。
製茶の殺青の鉄鍋炒りのほんのり焦げがもたらす煙たい風味。
何煎めかになるとお米っぽい「糯米香」のほっこりした雰囲気。
苦さを引き立てる甘味の絶妙なバランス。このお茶は苦味に重さがないので軽い。
最近注目する快楽のクスリ的な観点では、どちらかというと気分をパッと明るくさせる酒にも似た陽気さがあって、仲間とお喋りしながら飲むのも良いし、ひとりで仕事をしながら飲むのも集中力を高めるから良いだろう。
注ぎ
茶湯の色
今になって気付いたのだが、このお茶の産地はミャンマーのシャン州チャイントンである。チャイントンは中国語の漢字で景棟(Jing dong)。最近出品したこのお茶と同じ地域。
+【曼晒古樹青餅2017年 その1.】
清朝の貢茶が流行った時代にチャイントンは大規模に茶地を開拓されて、需要が減った時代が長く続いて野生化していたのが近年徐々に見つかっている。
ミャンマーのアクセサリー
チャイントンのあたりは布朗族が多くて、生活のお茶づくりの歴史はもっと長いはずだが、茶文化のお茶づくりは清朝の時代にはじまったと想像できる。
この2つのお茶は、自分の評価が分かれる。
チャイントンの地域には茶山がいくつもあると聞くので、2つのお茶の風味の違いは茶山の違いもあると思うが、そういう問題じゃない。
葉底
美人かどうかの問題。
このお茶『越境野生青餅2010年』は、上に書いたように美味しさの要素は満たしているけれど、美人じゃない。対して『曼晒古樹青餅2017年」は美人である。
その違いを尊重したいと思う。
お茶をつくる現場のどこからその違いが発生するのかも、いくらかわかってきたので、どちらを取るかという選択が迫られたときは迷わず美人を取る。

ひとりごと:
美人とそうでないのとをお茶の価格に反映してゆく。
公平になるように。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
黄印餅形表
黄印餅形裏
黄印餅形包内側
包み紙
餅面
茶葉

お茶の感想:
このお茶。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
ちゃんと炭で湯を沸かす。
鉄瓶
鉄瓶
湯を注ぐ
蒸らす
茶湯の色
泡茶
すべてがピタッと揃わないと。

ひとりごと:
熟成壺入り。
熟成壺
熟成壺
1年以上熟成させてから出品することにした。
長い長い。がまんがまん。

老字号可以興茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 可以興茶庄
工程 : 生茶のプーアル茶 (陳年茶葉)
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明乾倉 紙包み
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・鉄瓶・炭火
鉄瓶と炭火

お茶の感想:
お客様から「思っていたような良いお茶ではない。」とコメントを頂いたので試してみる。
『老字号可以興茶磚80年代』(卸売部)
老字号可以興茶磚80年代
老字号可以興茶磚80年代
もともと量産できて安く売れることを目指したメーカーのもので、一批か二批だけ本当に良いが出荷されて、それだけは日本円にしたら数十万円から二百万円くらいで取引されるが、その他のはすべて安値のまま売られている。老茶の中でも評価の低いお茶であるが、それが正しい評価だろう。
茶葉は表面だけ新芽・若葉に見えるが、ほとんどがクズ茶葉で、熟成度もバラバラで、いろんな茶葉をかき集めて混ぜ合わせて圧延加工したことが伺える。
茶湯の色
飲んでみると、あんがい良い。
湿気た雲南紅茶みたいな香りもあるし、カビた生茶の苦味もある。しかし、健康的な味。茶湯の色のように味も透き通っている。
甘くもなく苦くもなく。
可もなく不可もなくという絶妙のポジション。ちょっとツウ好みな見方かもしれないけれど、ほとんどのお茶が美味しいか不味いかのどちらかであって退屈なわけだ。その点、このお茶は美味しくもなければ不味くもないチカラの抜けたバランスがなんとも乙なのだ。
なので、美味しいお茶を探している人にはおすすめできない。このお茶は美味しくないのが良いのだから。
そういえば、チェコで勉強会をしたときにこのお茶を飲んで、やっぱりたいして良くないという意見をいただいた。ニセモノじゃないのか?という意見もあったが、なにも考えずにニセモノをつくるとホンモノの品質を超えてしまう可能性があるのだから、そんな可以興の特徴を考えると、あまり意味のない意見だと思った。
茶湯の色
逆に、このお茶に好印象があるお客様は、この味に近いものの体験に好印象があるからだろう。
味が良いとか悪いとかの判断基準は、過去のいろんな飲みものや食べものの記憶に基づく。
ある時代、おそらく1980年代中頃から1990年代中頃までの間に、香港や広東の飲茶のお茶を飲んでいる人、なおかつそれに良い思い出のある人。
現在の飲茶レストランが無料で提供するお茶は、熟茶のプーアール茶(メーカーで微生物発酵されたもの)になっているはずだが、過去には生茶を強制的に後発酵をすすめて老茶のような味にしたものが多かった。この二次加工は、雲南の産地のメーカーの倉庫で散茶のまま何年か放置するとか、香港の茶荘の倉庫で湿気させるとか、いくつかの手法が試されていたが、中にはダメになったのもあって、カビ臭いプーアール茶のイメージはここから来ている。
中には良いのもあって、豊潤な熟成風味や甘い香りやほろ苦味が加わり、飲茶の点心を引き立てたのもある。
熟茶のプーアール茶はメーカーで完成するから衛生的であるが、身体を暖めるので高温多湿な広東や香港では飲みにくい。
生茶は二次加工されても身体に熱がこもることはないので涼しく飲める。なので現地の人の口には生茶の二次加工のほうが合ったのだろう。しかし、1990年代中頃に二次加工の不衛生が指摘されだしてから、この手のお茶は消えてゆく。
葉底
『老字号可以興茶磚80年代」のメーカー「可以興」が消えたのも、おそらくそうした需要の変化が影響しているはずだ。(現在はまた同じ名前のメーカーが営業しているが、昔のままのお茶づくりではない。)
今現在、またこういう味のお茶が大量に流通しだしている。
それは、2000年以降に雲南の産地の茶商が倉庫に大量に保管していたもの。ほとんどが売れ残りのお茶で、茶葉の乾燥に気を使わないから湿気ている。
プーアール茶は2000年以降に大陸のマーケットが開けて、新しい消費者が増えたから昔の良いほうの熟成味を知らない。だからあんがいこういうのでも売れる。
その中から良いものを見つけたことがあった。
+【漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その2.】
そういえばこれ以降に良いのには出会っていない。
ゴミの山の中から宝を探すのは効率悪すぎて仕事にならない。

ひとりごと:
プーアール茶を学ぶにあたって自分にはこの人という先生はいないけれど、それでも深く掘り下げてゆくことができたのは、記憶の中に関連付けられる味のデータベースが豊富にあるからだろう。お茶の味の体験が少なくても、他の味の体験を応用して脳が考えてくれる。直感が働くのはそういうことだろう。
ワインやウィスキーの熟成モノの趣味のある人は比較的近いところに体験があるが、発酵食品や保存食品など古い時代の食べものの経験も近いと思う。
昔の人の暮らし、昔の家屋、昔の栽培、昔の道具、昔の味付け、昔の味覚。
おじいちゃんおばあちゃんの財産はもう消えて、父や母には受け継がれていないけれど、自分の脳の中には記録されている。

漫撒一水紅餅2016年 その3.

製造 : 2016年4月3日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 店長+孟海県の工房
工程 : 晒干紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
炭火
鉄瓶
鉄瓶

お茶の感想:
朝起きて湯を沸かしてお茶を飲む。
仕事柄それが日課で、たいがいひとりで静かに飲むのだが、ひとりで居ても心は騒ぐ。黙ったまま心の中でおしゃべりしていることのほうが多い。静かになりたいのになれない。
ヨガには瞑想の術があるけれど、自分はまだ習得していない。
でも、お茶があるから大丈夫。
心のおしゃべりをピタッと止める陰涼のお茶。
漫撒山の深い森の陰で育った茶樹のお茶。
+【漫撒一水紅餅2016年】
漫撒一水紅餅2016年
お茶の性質には個性があって、例えば同じ森のお茶でも巴達山章朗寨のでは静かになれない。むしろもっとおしゃべりになる。
なにがどうなってこうなるのか理屈はわからないが、心に及ぼす作用に違いがあるのは確かである。
漫撒山の森のお茶は生茶でも紅茶でも同じように心を静める。三杯めには心が黙ってしまう。ということは製法ではなくて原料の問題か・・・。
昔の人はこのことに気がついていたのではないかと考える。
お茶が快楽のクスリとして嗜まれていた時代。心に及ぼす作用が鑑賞され、その良し悪し、美しさ、効能の響き、などの評価に議論が重ねられ、多数の意見が一致したところで六大茶山のひとつとして認められるようになったのではないか。
漫撒一水紅餅2016年
雲南省南部からラオス・ミャンマーにかけての山岳地帯には有名茶山でなくても自生の茶樹が森の中にある。美味しいお茶ならいくらでもある。
味と香りだけでお茶を選ぶとなると、数多くの茶地から六つだけ山を選んだり、その地域を六つの茶山に分けたりというのが難しい。体感や心の作用という観点もあるような気がする。
注ぎ
茶湯
西双版納の茶友らが数人集まって漫撒山の森のお茶を飲むと、みんな黙って静かになって、各自がある方向の一点を見つめたままになって、たぶん傍から見たらお通夜のようで、悲しいことでもあったのかと見えるかもしれないが、そうじゃない。われわれは味わい方を知っているだけだ。
勉強会で上海や日本のお客様といっしょに飲むと、勉強会だからなにかしゃべらないといけないとか、なにか質問したほうがよいかもしれないとか、お互いに気を使って無理やり会話をしてしまうが、そんなにしゃべりたくもないのにしゃべるのだから妙に疲れる。
自然に逆らわずに沈黙の勉強会にしてもよいかもしれない。
葉底

ひとりごと:
昔の人は心と身体とを分けて考えない。
心の作用に注意を向けたら、大量生産される加工食品や化学調味料の危なさにもっと早く気付くと思う。


茶想

試飲の記録です。

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