プーアール茶.com

巴達曼邁熟茶2013年 その3.

采茶 : 2013年4月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺
巴達曼邁熟茶2013年

お茶の感想:
渥堆発酵の管理は、時計や温度計などの数値に頼らないで、なるべく身体で覚えるようにしている。
例えば、7キロの茶葉に対して初回の加水は1.75リットル。4分の1が一般的だとしよう。しかしそのつもりで水をかけてみると、ある種の茶葉はぜんぜん水が足りない様子だし、ある種の茶葉は水が多すぎる。茶葉によって吸水性や撥水性や、ちょっと時間が経つと蒸発する水の量など、いちいち差がある。そのときの気温や湿度も関係する。
だから固定された数値に頼るわけにはゆかない。
大量渥堆発酵のときは4分の1から3分の1の水が掛けられるが、茶葉からこぼれ落ちて床を濡らしていたりする。大手メーカーの職人からしたらそれは計算のうちに入っているが、7キロの少量渥堆発酵では水はすべて茶葉に吸収される。それは計算に入っていない。
だから先生の言うことを信用するわけにはゆかない。
メーカーの渥堆発酵
では、なにを基準にして水が多いとか少ないとかを自分で決めているのか?
無意識だったけれど、改めて考えてみると、やはり経験が頼りになっている。
まず、茶葉の水分量をみるのは、製茶でさんざん苦労してきたから、言うまでもなく手でわかる。
発酵の良し悪しについては、過去に食べた発酵食品の記憶とか、自分でつくってみた発酵食品の記憶とか、ある種の香りを鼻で嗅ぎ分けていたり、手触りの質感や温度に発酵状態がどんな段階にあるのかわかったりする。
具体的に思い出せないこともあるが、なんとなく嫌な感じとか、なんとなく良い感じとか、直観が働いている。
発酵食品
こういうの大事だ。
家庭の生活に発酵食品づくりがもっと根付くべきだ。
小さな実践で学べることにホンモノの文化があると思う。
ぬか漬けだけでなく味噌も醤油も酒も、そして黒茶も家庭でつくるようになったらよいのだ。
国の人が労働者の上前を撥ねるために規制などしてはいけない。
資本主義なメーカーが設備や技術を難しくして専門家ぶってはいけない。
そんなのは芝居文化だ。
日本酒はとっくに芝居文化になって、業者らが演技の巧さを競ったりしていないだろうか・・・しているよな。
発酵食品づくりは家庭にあるべき。
酒造りは、家では面倒であれば居酒屋にあるべき。
黒茶づくりも家でやればよいのだ。
そういうわけで7キロの極少量渥堆発酵は、家庭でもできるレベルの技術に落とし込みたい。
7キロくらいは(完成後は5キロくらいになるが)、半年で消費するよう各家庭がガブガブ飲むべき。そんなにたくさん飲まないというのなら、生活がすでに芝居になっている可能性がある。
当店の芝居がかったお茶を買って飲むしかないかもな・・・。
さて、今日のお茶は2013年の春につくった晒青毛茶が原料。
上海の友人のお店の倉庫に保存されていたのを西双版納に送り返した。
保存状態は良い。3年間の熟成によって(これには微生物は関与していない。成分の変化のみ。)春の棘味がいくぶんか穏やかになっているから、発酵のスタートはスムーズにゆくだろう。
最初の加水から7日目。
2回めの加水から48時経ったところ。
巴達曼邁熟茶2013年をチェコ土の茶則
巴達曼邁熟茶2013年をチェコ土の茶則のアップ
巴達曼邁熟茶2013年一煎め
巴達曼邁熟茶2013年一煎めアップ
3煎め。じっくり待つと茶湯は赤く変色する。
巴達曼邁熟茶2013年三煎め
この茶葉はまだ圧餅していない散茶であるから、繊維に弾力があり、茶葉と茶葉の隙間が大きい。ミクロの世界では茶葉の中の水道管が潰れていないところが多い。すなわち水の吸収が早い。どうしても水を多めにかけてしまいがちになるが、蒸発も早いので失敗しにくい。
茶葉は乾燥した状態でちょっと多めの8キロほどあったのだが、これがたっぷり水を含んで微生物発酵しはじめて24時間ほど経つと、中心部の発熱がすごいことになる。素手で触れるとアチッ!となる。
中心部をそのままにしておくと、最初はちょっと薬品っぽい香りが出てくる。麹発酵のゆきすぎに「セメダイン臭」と呼ぶのがあるそうだが、それに似ている。
さらにそのままにしておくと水分が蒸発して熱は下がってくるが、セメダインを通り越してアンモニア臭が出てくることがある。ひき割り納豆のちょっと古くなったのと似ている。
こうなるといけないので、セメダイン臭が出てきたらすぐに撹拌する。撹拌後も、茶葉に水分の多いうちは数時間も経たないうちに過剰に発熱するので、またすぐに撹拌して冷まさなければならない。
ゆっくり眠れなくなる。かわいいやつめ。
ただ、中心部の発熱が高温のうちは周囲の茶葉のコンディションは良い。乳酸飲料のような甘くてほんのり酸っぱい香りがしてくる。
黒麹菌はクエン酸をつくるそうだが、もしかしたら雑菌を殺すだけでなく、嫌な臭いの消臭にも効果があるのかもしれない。撹拌するとセメダイン臭がすぐに消える。
葉底
葉底にはまだ緑が残っている。
微生物発酵がうまくゆかないまま水分を多く持って時間が経つと、茎の部分から黒っぽく変色してくるが、これは全体的に均一な色を保っている。

ひとりごと:
京都の町はいつの時代から生活文化の芝居をしているのだろ。
芝居でも長年続けばそれなりの迫力がある。

巴達曼邁熟茶2010年 その2.

采茶 : 2010年4月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺
巴達純生青餅2011年7キロ
巴達純生青餅2011年泡茶
葉底

お茶の感想:
渥堆発酵にまた失敗。
7キロ分の茶葉を土にした。
原料は『巴達純生青餅2011年』(未出品)。
巴達山曼邁寨の古茶樹の2011年の春の采茶で、殺青の火入れを浅くして半生に仕上げた。長期熟成にどんな効果があるのかを確かめるのが目的だったが、5年めの熟成になってもパッとしないので、熟茶にしてみた。
失敗の原因は原料にあったのではない。加水が多すぎたのだと思う。
途中までうまくいっていたが、6日目になって、一般的によくある熟茶の土っぽい風味が出てきた。
発酵中の茶葉が少しずつ乾燥してゆくと同時に熱が下がってくる、水分が多く残ったまま冷たくなる部分に望ましくない変化が現れる。
あともう少し温度を高く保っていれば。
あともう少し茶葉が乾燥していれば。
ま、後からならなんとでも言える。
せっかく独自製法を試しているので、一般的によくある熟茶とはひと味もふた味も違うものにしたい。
渥堆発酵の倉庫
熟茶づくりの要の微生物発酵は「渥堆発酵」という名の通り、茶葉を堆積して行う。
一般的には1000キロ以上もの大量の茶葉を集めるが、近年は竹籠で囲う技術が普及して、数十キロの単位でもいける。
更にそれを改良して7キロという極少量を試みている。
7キロでなくても、2キロでも10キロでもよいのだが、いろいろ試したところ、手元の道具や設備では7キロが適量である。
少量の茶葉で大量の渥堆発酵と同じ状態にいかに近づけるかが課題。
大量の茶葉を堆積させて水を掛けると、もっとも水が集まりやすく、熱がこもる中心部から発熱してくる。48時間後には60度に達することもある。
この中心部の熱と、熱による蒸気の発生とを利用して、微生物発酵に適した環境を周囲の茶葉に与える。
このため、茶葉の量が多いほど長期間(数日間)にわたって熱と蒸気を維持できるというわけだ。28度くらいの比較的高温を好む黒麹菌の活動が持続しやすくなる。
中心部の発熱している茶葉は捨て駒というか、周囲の茶葉の犠牲になっていると考えられる。なぜなら黒麹菌は50度以上では生きて活動できないからだ。
数日ごとにかき混ぜることで選手交代する。外側と内側の茶葉が入れ替わる。これを何度か繰り返して、微生物発酵による成果を均一化させる。
同じく、黒茶(微生物発酵のお茶)の「広西六堡茶の」現在の製法には、熟茶の渥堆発酵を応用して生コンミキサー車のような大きなドラムをゆっくり回転せながら均一に発酵させる技術がある。水分も温度もムラができない。
しかし、この結果がたいして魅力のある美味しさにつながっていない。
市場の流通量からみても熟茶が圧勝ということは、発酵ムラとも言える中心部の熱や外側の乾燥したところなど、環境に多様性があってこそ魅力ある風味が醸し出されるということかもしれない。
これを前提にして極少量発酵の技術を探る。
7キロの茶葉でも中心部と外側の発酵ムラはできる。
しかし、大量発酵ほどは大きな差はない。そこが良いと思っている。
大量発酵では細部の管理が雑になる。水分の多すぎるところ。乾燥しすぎるところ。熱がありすぎるところ。冷たくなりすぎるところ。空気に触れにくいところ。触れすぎるところ。これら、ゆきすぎるところに雑味が発生する。
例えば茶頭。
茶頭
茶頭は、茶葉が粘着して石ころのような塊になってしまった部分である。水分が多く高温になる中心部にできやすい。数年前に流行ったが、実はこの塊の中は空気の好きな黒麹菌が活動しない。熟茶らしくない味が宿ることになる。実際に『版納古樹熟餅2010年』の茶頭は味が薄かった。
+【版納古樹熟餅2010年 その5】
では、なぜ茶頭が美味しいという話が広まったかというと、数年前までメーカーは売れない茶頭をたくさんかかえて保存していたからだ。メーカーの高温多湿の倉庫で比較的乾燥したところを好む金花(麹の一種)などによって後発酵(二次発酵)が起こって美味しくなったのだろう。老茶頭には確かに特別な風味があった。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
さて、今日のお茶は『巴達曼邁熟茶2010年』(仮名)。この茶頭、ではなくて、餅茶を崩したときに硬すぎてどうしても崩せない真ん中の部分。
茶頭
500円玉くらいの大きさ。
いっしょに渥堆発酵している。7キロの中には約18枚分の18個はある。
茶頭崩したところ
茶針で2つに割ってみると、内側の茶葉に麹の胞子は現れていない。変色もしていない。水分を吸収してちょっと柔らかくなっている。空気の入る隙間がない。水分がこもって発熱していた。酵素によって澱粉質が糖化しているはずだ。茶頭に近い状態になっている。
茶頭の茶湯
湯を注いだときにちょっと酒粕のような香り。酵母が糖をアルコール発酵させたのかもしれない。安モノの熟茶にこの香りはよくある。
葉底の色ムラ
葉底の色にムラがある。外側と内側の色の違い。
渥堆発酵の散茶
散茶の泡茶
散茶のと比べると、茶湯の色からしても発酵の結果が異なるのがわかる。
酒粕臭はまったくない。
極少量発酵では、こまめに撹拌して茶葉の粘着を防ぐので、茶頭はできない。布でくるんでいるので局所的に冷たくなりすぎたり、乾燥しすぎることもない。
では、なぜ今回失敗したかというと、局所的なムラはなくても全体的に偏りやすいということ。
全体が水を含みすぎる。全体が熱くなりすぎる。冷たくなりすぎる。乾きすぎる・・・など。大量の茶葉を堆積した状態に比べると、変化の波が大きすぎる。
さて、そこで考えついたのが「連続発酵」という方法。
発酵スタートの時差のある布袋2つをピッタリくっつけて、熱交換や水分交換をさせる。これによって大量の茶葉を堆積したのと似たような環境がつくれる・・・はず。

ひとりごと:
この仕事は研究成果を美味しいお茶で証明するしかない。
それしかない。
望むところだ。
当店のお茶を飲まずにブログを見て知識を得る人は、研究成果を得ていないことに気がついていないのだ。

巴達曼邁熟茶2010年 その1.

采茶 : 2010年4月
加工 : 2016年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
西双版納の乾季の空
捨てた茶葉

お茶の感想:
熟茶づくりの渥堆発酵をスタートして14日め。
寝不足と筋肉痛に耐えながら、ひとりで黙々と作業している。
こういうの嫌いじゃない。
ひとりがよい。
他人の意見はまったく聞きたくない。
わからないことは、茶葉や微生物に直接聞いてやる。
お茶づくりは可能性の追求。
先人や教科書の言うことが間違っているかもしれないし、われわれの解釈に誤解があるかもしれない。
その時・その場所・そのモノの条件がひとつでも違えば、同じ結果にはならないかもしれないし、成功したようで実はそうじゃないかもしれないし、失敗したようで実はそうじゃないかもしれない。
他人を疑う。自分を疑う。
もうひとつの可能性を試してみる。
それで、やはり4回ほど失敗して合計28キロ分の茶葉をアパートの庭の土にした。
捨てた茶葉1
捨てた茶葉2
捨てた茶葉3
ミミズが喜んでいる。
失敗の原因は、茶葉に掛ける水の加減が分からないからだ。
春の茶葉、秋の茶葉、孟海県の茶葉、孟臘県の茶葉、散茶、圧延の餅茶を崩した散茶、それぞれの吸水性にあわせて適量の水をなじませるが、その加減がまだよくわからない。
渥堆発酵
渥堆発酵
茶葉に水を掛けてから黒麹菌が繁殖して活発になるまでのおよそ24時間。この時間がいちばん危ない。もしも黒麹菌が繁殖しなければ別の雑菌が繁殖するが、その前に、茶葉が酸化して酸っぱくなってダメになる。緑茶が紅茶みたいな色になる。
どうやら、黒麹菌は水に濡れた茶葉の酸化を止めるらしい。どういう仕組みで止めているかはまだよくわからない。
黒麹菌
手漉き紙についた黒麹菌。その名の通り黒い色素をもつ。
失敗と成功
失敗が左で、成功が右。わずかな色の違いがわかるかな。
幸いなことにこの結果に中間はない。
成功か失敗か、黒か白か。茶葉が緑を保ったまま甘くなるか、赤く変色して酸っぱくなるか。
はっきりしていてわかりやすいから、顕微鏡を覗いたり、検査局にサンプルを持ち込んだりする必要はない。見たり、嗅いだり、触ったりするだけでわかるから、どんどん試して分水嶺を見つければよいのだ。
版納古樹熟餅2010年
熟茶づくりの教科書は、自分にとっては『版納古樹熟餅2010年』がすべてである。種となる麹はこれを培養している。
6年の間、これより美味しい熟茶は見つからない。なので、なるべく近づけたらよいが、700キロもの晒青毛茶で行った渥堆発酵を、これからは7キロの少量で行う。
ここ数年の産地の変化、時代の変化により、上質な茶葉を大量に集められなくなった。
そのため、当店では2010年以降に美味しい熟茶が出品できていない。
7キロという少量での渥堆発酵が成功すれば問題は解決する。
日本人的に、もっと清潔に・もっと細かく・もっと動的に発酵の手伝いをしている。風邪で熱を出した子供を徹夜で看病する親のようなもので、油断ならない。不眠不休で活動する微生物に付き添って、自分が先に倒れないようにしないと。
西双版納の人にそういうキメ細かな気質はない。東南アジアらしい粘り弱さでいい加減な仕事している・・・ように見える。
しかし、これを軽く見てはいけない。
渥堆発酵で活躍する微生物たちにとっては、そのいい加減な仕事によってできる隙間が、むしろ好環境をつくりだしたり、その逆で厳しい環境を与えたりして、間接的な作用があって、結果的に美味しいお茶になっているのかもしれない。
あらゆる可能性を考えながら観察する。
巴達古樹熟散茶2010年
現在4種類の晒青毛茶を渥堆発酵しているが、今のところいちばん個性的な変化を見せているのはこれ。
『巴達曼邁熟茶2010年』(仮名)
曼邁はmanmai と読む。
2010年。そう、6年前につくった生茶のプーアール茶『巴達古樹青餅2010年』を崩して原料にしている。
巴達古樹青餅2010年
巴達古樹青餅2010年崩し
早春の新芽・若葉の棘味を黒麹菌は嫌うが、6年の熟成によってちょっと和らいでいる。この熟成に微生物発酵は関わっていない。成分変化のみだと思われる。
泡茶
渥堆発酵9日目。
加水2回めから24時間経過している。
まだ水分の多いときで熱を持っている。袋の中心あたりは50度を超えるが、1日に2回か3回はかき混ぜて熱を逃がしている。5日に1度ほどかき混ぜる以前のやり方とはかなり違う。
熱を持たないように、はじめから水を少なめにしたらよいのではないか・・・と思うかもしれないが、それは違う。わざと水を多くしているのだ。その理屈を話すと長いので別の機会にしたいが、ちょっといい感じの薬味が加わる効果を見つけている。
渥堆発酵の熟茶
渥堆発酵の熟茶
渥堆発酵中の茶湯は濁る。
味はスッキリ透明。お茶のお茶たる味は濃い。苦味は軽い。そして甘い。
『巴達古樹青餅2010年』の渋味は良いスパイスになって、ミントのような涼しさが口に残る。
まるでクラフトビールのような色だが、味もまたクラフトビールのよう。濃厚な味わいにして爽やか。原料の茶葉の持っていた陳皮のような香りも加わる。
葉底
この段階でも十分美味しいが、まだもっと深く発酵させる。加水4回めくらいが目標。
次回の勉強会は「お茶の微生物発酵」をテーマにしたい。
徹夜でやれるほど話すことがたくさんある。

ひとりごと:
ところで、『版納古樹熟餅2010年』を淹れるとき、
洗茶をしないでサッと湯をくぐらせるように抽出したとき、
版納古樹熟餅2010年
かすかな薄い色にもかかわらず、驚くほど甘くなっている。
湯が酵素の働きを促して甘味成分を瞬時に作り出しているからではないだろうか。
酵素は、例えば洗剤で知られているように、水分と温度を得ると瞬時に効力を発揮するものがある。
『版納古樹熟餅2010年』の茶葉の表面には、見えないけれど大量の酵素が残っている。

茶学 人を見ない

他人のことが気になるような、
暇な人の趣味になってはいけない。
お茶を淹れると、人それぞれの味が出てくる。
個性があって、まるで人格が映し出されるように見える。
しかし、そのときに人を見てはいけない。
人を見るのは茶学の目的ではない。
一杯ごとのお茶の味から、その原因となった技術や物理を探る。
それだけに集中する。
もしもお茶の味に人格が出るとしても、そこからなにかを学べるのは自分で気付くときだけ。
こういう話をあえてするのは、どうやら暇な人が多いということ。
自分を見る機会をお茶に求めるよりも、他人を見る機会を見つけてしまう人が多いということ。
お茶のワナだ。
誰もがカンタンにはまってしまう。
そうはさせまいと自分に言い聞かせよう。
茶学人を見ない

巴達生態紅餅2016年 その1.

製造 : 2016年3月28日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山賀松寨小茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 景徳鎮の茶壺とチェコ土の茶壺
倚邦の雲海上
倚邦の雲海中
倚邦の雲海下

お茶の感想:
今年の秋茶は不作。
西双版納のどこの茶山でも新芽・若葉が少ない。
春から夏にかけてずっと雨が多かったし、気温もそこそこ高かったし、育ちがよくなる条件が揃っていたように見えたけれど、星のめぐりのような見えないチカラのほうが大きかった。
茶葉の育ちが悪いと、香りも味も良い。
ヘンな話だがそういうものなのだ。
育ちの良いたくさんの茶葉で栄養を分けてしまうと一枚の分は薄まる。
何年ぶりかで味の乗った秋茶をつくるチャンスだったが、天気がそれを許さなかった。
例年なら乾季となる11月なっても雲が多い。3日に一度は雨が降っている。晴れても雲が多いので、天日干しのお茶はダメになる。
天日干し
夏からなんとなく予感していて、
「秋はどうするのですか?」
と聞かれても、
「ま、様子見ですね。」
みたいなことを言っていたと思う。
なぜ予感していたのか自分でもよくわからない。
星のめぐりが作用しているのだろうか。
お茶をつくらないとなると一箇所に留まる必要がないので、あちこちの茶山を歩くチャンスとなった。10日間ほどいくつかの茶山を訪ねて、つぎの春に備えた。
漫撒山のなじみの農家がつくっていた晒青毛茶を4キロほど仕入れたので、これは後に餅茶にして出品する。180gサイズの小餅茶で20枚。
景洪の雨
景洪の虹
この3日間雨が降り続いている。
北京の愛好家が持ってきた景徳鎮の作家につくってもらった茶壺を試すことにした。
こう書くといかにも暇を持て余しているように見えるが、実はこの秋から熟茶の渥堆発酵にふたたび挑戦していて、寝る間を惜しんで働いている。というか、微生物に働かされている。奴らは寝ないのだな。
お茶の仕事は重労働。
熱をもった筋肉が腫れた腕。寝不足でボーっとした頭。
お茶の味の囁きを聞くなんてことのできる状態じゃないが、これがリアルなお茶屋さんの仕事である。美味しいお茶をつくるのは知識や感性よりも根性や体力である。
さて、茶器によってお茶の味は変わるという話。
湯の熱の伝わり方に音の響きのような違いがあり、それがお茶の味を変える。
景徳鎮の青磁の茶壺とチェコ土の茶壺
指で弾くとチン!と鳴る青磁の薄くてカタイ質感は見ただけでわかる。
チェコ土の陶器の茶壺と比べる。
青磁の茶壺
チェコ土の茶壺
青磁の茶壺のほうがちょっとだけ重いが、容量は150ccで、チェコ土の茶壺は100cc。1.5倍の差があるので青磁のほうが薄造りである。手に持ったときに軽く感じる。
お茶は『巴達生態紅餅2016年』(卸売部)
巴達生態紅餅2016年
3.5gずつ。
早春の新芽・若葉でつくられたこのお茶は熱に敏感で、茶器を試すのにちょうどよい。とくに香りの立ち方にいろんな表情を見せてくれる。
青磁の茶壺
青磁の茶壺一煎め
チェコ土の茶壺一煎め
1煎めから茶湯の色に違いがある。
5煎くらいまで飲んでみたが、1煎めの違いが最後まで続いた。
青磁の茶壺は保温力はないかもしれないが、熱を反射する瞬発力みたいなものがあるのだな。
香りの立つスピードの早さと、摘みたての野の花のような新鮮で涼しい刺激のある感じが、この紅茶の性質をストレートに表している。
チェコ土のは、マルちゃん作の茶壺の中では薄造りなほうだが、柔らかい土の温かい感じは熱の伝わり方にも現れている。
1煎めは湯を注いでから10秒以内という短時間で抽出しているが、それでもこの違いが現れるのは、やはり保温力というよりも熱の反射の違いが大きいような気がする。
新芽・若葉にゆっくり熱を伝えると煮えてしまう。このお茶の場合は苦味や酸味が出る。
チェコ土の茶壺はもっと抽出時間を短くするべきなのかもしれないが、そうすると香りが立たない。たった10秒の抽出でも香りには熟れた甘味があって、これはこれで良いかもしれないが、青磁に比べるとおっとりしすぎている。
葉底青磁とチェコ土
葉底(煎じた後の茶葉)。
チェコ土のほうがしっかり茶葉が広がっていて、変色していて、触ると柔らかい。熱のしっかり通った結果が出ている。煮えているとも言える。
熱をしっかり通すほどに滋味深い味が出てくるという、古茶樹のような性質の茶葉ではない。熱の瞬発力で美味しいところだけサッと流し取るような感じが良いと思う。

ひとりごと:
空の光
秋の収穫
すすき
秋の収穫
農家はお茶が忙しくなくても、米とかトウモロコシとか、生活のための収穫に忙しい。
今年は自家製白酒の良い原料ができそうだな。

版納古樹熟餅2010年 その35.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : ステンレス茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 景徳鎮の白磁の蓋碗大・小
白磁の蓋碗大・小上から
白磁の蓋碗大・小底から
白磁の蓋碗大・小碗

お茶の感想:
手元の蓋碗の大小2種を比べる。
水を満タンにして小は90cc大は140cc。
蓋碗の碗だけの重量は小は63g大は79g。その差16gしかない。
蓋碗の大きさに対して「小」のほうはやや厚みがあり「大」のほうはやや薄づくりというバランスだが、大小にかかわらず同じ厚さでつくられてこうなったという見方が正しいと思う。手づくりだから個体差はある。
今日もこのお茶。
+【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
3.6g。
蓋腕小
蓋碗大
ほぼ同量の湯を注ぐことにする。
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
淹れてみると、蓋碗大のほうは黒っぽい。
最初の煎から最後の煎(7煎くらい)までずっとこのような色の差がある。
蓋碗大の味は良い。口当たりがまろやかで、味に深みがある。甘味もある。
蓋碗小は口当たりがちょっとピリ辛い。味は軽くて深みがない。甘味も少ない。
香りの立ち方は似ているが、蓋碗大のほうが香りにも深みがある。
湯の温度に差があるのか?
ヤカンの湯は97度
沸き立ての湯。海抜600メートルくらいの西双版納では97度。
蓋碗に注ぐと90度くらいに下がる。
蓋碗大・小湯の温度
蓋碗大・小湯の温度
蓋碗に注ぐ湯の量は大・小ともに70ccくらいにそろえている。誤差はある。
結論から言うと、湯の温度の変化に蓋碗大・小の差はほとんどない。
注ぎたては同じ温度。
2分半ほど待っても、その差は1度ほどしかない。
保温力の差はほとんどないと言える。
北京の愛好家の蓋碗も測ってみた。
これは手元の蓋碗大と比べると少し保温力がある。
といっても、2分半蒸らしてからの温度差は1.5度ほど。
この微妙な温度差がお茶の味の差になっているとは思えない。
北京の愛好家の蓋碗
湯を注いですぐに茶湯の色の差が現れるのだから、茶葉の成分の抽出に、温度以外のなにかが大きく影響しているのだ。
「浸透圧」というのがある。例えば、シチューの具を煮込むときに塩を最後に加えるのは浸透圧を考慮しているから。最初に塩を加えて煮ると、肉は水分が抜けてワシワシになってしまう。塩分濃度の差が浸透圧を発生させるわけだが、こういうふうな目に見えない複雑なことが、茶葉と湯と茶器のあいだに起こっているのだろう。
感覚的に理解したいな。
形とか色とか手触りとか、指で弾いたときの音とか、手に取ったときのぬくもりとか、重さとか。
パッと直感でわかるようになりたい。

ひとりごと;
今日はこのお茶の整理。
『沈香黄片老茶磚80年代』(卸売部に出品)
沈香黄片老茶磚80年代
沈香黄片老茶磚80年代
いい顔しているよな。
そういえば、茶葉は感覚的にわかることがある。
茶器も経験を積めばわかるようになるだろ。

版納古樹熟餅2010年 その34.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : ステンレス茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 景徳鎮の白磁の蓋碗2種
白磁の蓋碗2種横
白磁の蓋碗2種上

お茶の感想:
白磁の蓋碗2種のつづき。
ひっくり返して底を見ると形の違いがはっきりする。
北京の愛好家の蓋碗(左)はまるい。手元の蓋碗(右)は角ばっている。
水の流れ、水の振動、湯の熱の響き方が違ってくるよな。
今日はこのお茶。
+【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年計量
3.6g
餅茶は崩し方を同じようにしないと、塊のままと崩れてバラバラの茶葉とで味の出方が違ってくる。
熟茶のような発酵のすすんだ茶葉は一般的に熱い湯でじっくり抽出するのがよいと思われているがそうでもない。
このお茶のように旬のタイミングで采茶されていたら、小さな新芽や柔らかい若葉が多く、それなりに熱に敏感である。
香りを立てるため、一煎めから味を充実させるため、必ず湧きたての熱い湯をつかうが、煮出して濁った味にならないように、注ぎや蒸らしを注意したほうがよい。
白磁の蓋碗2種1煎め
白磁の蓋碗2種1煎め茶杯
1煎め。
湯を注いで、ちょっと蒸らして、蓋碗の蓋をちょっとずらしたときに香りが立つ。
この香りにすでに違いがある。
手元の蓋碗は苺のような透明感のある爽やかさがあり、北京の愛好家の蓋碗は糠のようないわゆる発酵香が混ざって香りが鈍る。
茶湯の色はこの時点で北京の愛好家の蓋碗のほうが赤味が強く、熱のとおった色をしている。
ところが、これから後の煎ではずっと手元の蓋碗のほうがやや黒っぽい色になる。
白磁の蓋碗2種3煎め
白磁の蓋碗2種3煎め茶海
白磁の蓋碗2種3煎め茶杯
3煎め。
白磁の蓋碗2種5煎め
白磁の蓋碗2種5煎め茶杯
5煎め。
香りの印象がそのままお茶の味の印象をつくる。
前回の『章朗古樹紅餅2016年・青印』のときとほぼ同じような違いが現れる。
+【章朗古樹紅餅2016年・青印 その4.】
手元の蓋碗は清らかで軽く上にぬける。
サラッとしたドライな感じ。
口に溶けて自然に喉を滑り落ちる。
北京の愛好家の蓋碗はやや濁りがあり重く沈む。
とろみのあるウェットな感じ。
口に残り喉に押し込むような抵抗がある。
葉底
葉底は同じ。
飲み比べると明らかに手元の蓋碗のほうが美味しい。
これは好みの問題ではないと思う。
どうしても北京の愛好家の蓋碗を使うのなら、蒸らし時間を短めにするために、ちょっとだけ茶葉を多めにするとよいかもしれない。
注ぎ切ってから底にある茶葉が煮えないように、茶針でちょっと起こして蒸気を逃してもよいだろう。
そのくらい気を使って手間を掛けてでも、苺のような香りの出るときの美味しさには価値がある。
嬉しくなって、その日一日が輝く。
版納古樹熟餅2010年煮出して飲む
蓋碗では抽出しきれない茶葉や茎の内側の成分を銅の器で煮出す。
弱火で5分ほど。
甘くてとろみのある茶湯。
はじめの3煎めくらいまではこの甘味やとろみを出さないように意識したほうがよいな。

ひとりごと:
メコン川からラオスのお寺
ラオスのお寺
ラオスのお寺の壁の絵
チェンコーンから河を渡ってすぐのラオスのファイサーイにあるお寺の鐘。
大型トラックのホイールと、ベトナム戦争のときの弾頭と。
いい音する。
お寺の鐘に弾頭
お寺の鐘にホイール
力強い造形。アートだ。

漫撒三家青餅2014年・秋天 その4.

製造 : 2014年10月28日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山三家寨古茶樹
茶廠 : 易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 陶器の茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 景徳鎮の白磁の蓋碗2種
漫撒三家青餅2014年・秋天
漫撒三家青餅2014年・秋天包み紙

お茶の感想:
昨日ののつづき。
蓋碗2種を試す。
今日はこのお茶。
『漫撒三家青餅2014年・秋天』(卸売部に出品)
漫撒三家青餅2014年・秋天5g
5g
北京の愛好家の蓋碗は熱を溜める。
それがじわじわ茶葉を煮やす。
この特徴を活かせないだろうかと考えた。
2014年の秋のお茶は、今から振り返って言えることだけれど、この数年でいちばんコンディションが悪かった。
見てのとおり大きく成長しすぎている。
これでも柔らかい一芽二葉か一芽三葉だから、雨の季節が終わっていないタイミングで采茶していることになる。
早春の新芽・若葉の多い茶葉は熱に敏感で、熱い湯で火傷させないよう気をつけなければならないが、秋の大柄の茶葉は熱い湯で葉や茎の内側の成分をしっかり抽出したほうが美味しい。
漫撒三家青餅2014年蓋碗2種1煎め
1煎め。
ほとんど差がない。
この時点で、このテストはあまり面白いことにはならないと予測した。蓋碗では役不足なのだ。
それでも少しの差があったので記録しておく。
手元の蓋碗(右の蓋碗)は、一煎めの味に微かな湿気味が感じられた。茶葉にまだ熱がしっかり通っていないときに出る味。口に含んだ茶の香りと味とが分離したようでまとまらない。その点、北京の愛好家の蓋碗は一煎めから比較的まとまっていた。ほんとうに微かな差である。
4煎めの蓋碗
4煎めの茶海
4煎めの茶杯
4煎め。
差なし。
ほんとうに差がないからびっくりする。
あえて言うなら、北京の愛好家の蓋碗のほうがちょっと甘い気がする。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)
茶葉の色も同じ。
蓋碗では味が出し切れない。
もったいないから紫砂の茶壺にバトンタッチ。
茶壺
茶湯の色は薄いがしっかり味が出た。まとまったまるい味。
以上。

ひごりごと:
業者仲間と天気の話が多くなってきた。
昨日も今日も雲が空を支配して、ときどき大粒の雨を降らしている。
西双版納の秋の旬は、雨の季節が終わるのが早いか、茶樹が冬眠するのが早いか、そのギリギリを狙いたいところだが、場合によっては雨の季節が終わらないうちに茶樹が寝てしまうこともある。
雨の季節が長引くほうが茶葉の育ちがよいので農家は収穫量が多くて儲かる。
農家に嫌われる茶商にならないと。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その4.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 景徳鎮の白磁の蓋碗2種
白磁の蓋碗裏

お茶の感想:
湯の熱の伝わりには響き方の違いがある。
お茶の味や香りの違いにつながる。
茶器の形や質によってその違いが生まれる。
「音」の高音や低音に似ているかもしれない。ボリュームの大・小のように数値化しやすいものではなくて、色や形のように感覚的に評価されるもの。
スピーカーをつくる技術者は、高音と低温の美しさについてじっくり考えている。感性を重視する音楽ファンは、どちらが優れているというよりも、どちらが美しい音色を出すかでメーカーやモデルを選んでいるはずだ。
茶器をつくる技術者はどうだろ。
現在はそれについてあまり多くを語られなていないような気がする。
素材の土の性質と水や茶との相性とか保温性とか、物理的にわかりやすそうな話はあるが、いまひとつ感性に訴える話は聞こえてこない。
もっとも、語られないから知らないとは言えない。
結果よりも過程。言葉よりも身体。東洋的な理解の仕方がある。
より多くの人にいち早く伝達したいがために言葉に頼りすぎると、脳ミソ先行的になって身体が伴わない。お茶についての西洋的理解のアプローチがいまひとつ芯を捉えないのは、そこに理由があると思う。
白磁の蓋碗
白磁の蓋碗に茶葉
北京の愛好家が景徳鎮にオーダーした蓋碗を持ってきた。
商品化するらしい。1000元というから蓋碗にしてはちょっと高級。
背の低い形状がパッと見た目にもわかる。
晒青毛茶(プーアール茶の原料と鳴る天日干し緑茶)を現地では試飲することが多いが、その大きな形状の茶葉を観察しやすいというのが一番めの理由。
湯を注いで茶葉が開くときにきゅうきゅう詰めにならずに気持ち良く伸びられる。そのほうが美味しくなるというのが二番めの理由。
口の大きく開いた形状のほうが香りが出やすい(広がりやすい)というのが三番めの理由。
しかし、それらはお茶の味の印象を決定づける要因としては弱いと思う。
それよりも、質量と形状がもたらす熱の響き方がお茶の味に強い個性をもたらすと考えている。
そこで、手元の蓋碗と比べてみることにした。
蓋碗2種上から
蓋碗2種ヨコから
若干色は違うが、どちらも景徳鎮の白磁。
北京の愛好家の蓋碗
手元の蓋碗
水を適量張ると、手元の蓋碗のほうが5ccから6ccほど多めに入るので、そこは注ぐときに調整したらよいだろう。
このお茶で比べる。
+【章朗古樹紅餅2016年・青印】
選んだ理由は、香りが出やすいことと、やや熱に敏感に反応すること。そして耐泡(煎がつづく)の古茶樹の茶葉であること。6煎めくらいの、茶湯の色も味も薄くなってくる頃になにか見つかるかもしれない。
章朗古樹紅餅2016年・青印3.6g
3.6g。
蓋碗2種一煎め
蓋碗2種一煎め注ぎ
1煎め。
この時点ですでにその差が現れた。
手元の蓋碗のお茶の味は軽い。香りが上のほうに抜ける。口の中に上昇気流が起こっている感じ。
北京の愛好家のお茶は重い。香りは上に抜けずに淀む。横に広がる感じではあるが、それにしても「抜け」が悪い。
蓋碗2種3煎め
蓋碗2種3煎め
3煎め。
味のボリュームという点では互角。
しかし印象は異なる。
やはり北京の愛好家の蓋碗のは重くて、手元の蓋碗のは軽い。
重いのが好印象であれば味の重厚感と言って褒められるが、そうではない。
湯の質感に粘りがあり、口あたりのキレが悪い。喉越しのスムーズさにも欠ける。このお茶の個性である涼しさを損なっている。
蓋碗2種5煎め
蓋碗2種5煎め注ぎ
5煎め。
煎を重ねて風味が薄くなってくると、大きく育った茶葉や茎の部分の旨味・甘味が出てくる。茶葉が煮えているのだ。熱々の湯を注いでいて5煎めにもなると、どちらにしても煮えた味になるが、煮え味の出方にも違いがある。北京の愛好家の蓋碗にはカンロ飴みたいな野暮ったさがある。手元の蓋碗にはそれがなくて、スキッとした涼しさを保っている。
蓋碗2種と7煎めの葉底
葉底上から
葉底ヨコから
7煎めの葉底。
葉底の色の違いに注目。
結果からもわかるように、北京の愛好家の蓋碗は熱がしっかり通って茶葉の酸化がすすんでいる。
そうなったほうが美味しいお茶もあるが、新芽・若葉の多いこのお茶の場合は手元の蓋碗のほうが圧倒的に美味しい。
白磁というガラス質を多く含む素材という点で、両者の化学的反応の差は少ない。
そうすると、厚みや形状による熱伝導の違いがお茶の味の差を生むと考えられる。
北京の愛好家の蓋碗
北京の愛好家の蓋碗蓋を開けたところ
手元の蓋碗
手元の蓋碗蓋を開けたところ
蓋をはずした碗だけの重量をみても124gと79g、45gもの差がある。
この45gが湯の熱の響き方の差になっている。
口径の大きくて背の低い形状の北京の愛好家の蓋碗のほうが熱が逃げやすいので、保温性の面では劣るはずだが、45g分の厚みが溜め込んだ熱がじわじわ茶葉を煮やすらしい。底にゆくほど厚みがあるようにつくられているが、茶を注いだ後の茶葉はその厚いところに残る。淹れる人が意図せず変化が続くことになる。蓋碗の中で茶葉が自由に広がりやすいというが、それがために底にベタッとへばりつく。手元の蓋碗は茶葉が窮屈に見えるが、広がりきらないで曲がったまま隙間をつくる。そこに熱の逃げ場ができる。
茶学でテーマにしている水の注ぎはどうだろう。
ヤカンから蓋碗に湯を注いだときの水の振動。水の音。
北京の愛好家のは背が低いので、落ちる水が水面を叩いてやや高い音が響く。
手元の蓋碗は背が高いので、水がちょっと溜まってくると深く潜って低い音が響く。
うまく説明できないが、手元の蓋碗の低い水音の響きは、お茶が美味しくなるサイン。
蓋碗の中での湯の流れと茶葉の動きにも違いが生じているが、これについてもまだ説明できるほど理解できていない。
ただ、このお茶の味の結果は蓋碗を手に持ったときからある程度予測できていた。
蓋と碗で185gある北京の愛好家のと126gの手元のと。約60gの差だけではない。手に持ち辛いほど口径が大きいために余計に重く感じて、湯を注ぐ手の動きも鈍くなる。重鈍な感じがそのままお茶の味に反映している。
低く横に広がった形状と高く背を伸ばした形状と、その形の感じがそのままお茶の味に反映している。
指で弾くとコン!と鳴るのとチン!と鳴るのと、その音の感じがそのままお茶の味に反映している。
直感は捉えている。
いつかどこかで経験した記憶が無意識のところで瞬間に繋がって、応用によって新しいものを理解するのだな。

ひとりごと:
チェンコーンからラオスに一日だけ足を伸ばした。
ラオスの焼酎「ラオカオ」は米とバナナ(たぶんバナナではなくて芭蕉だと思う。芭蕉の実ではなくて茎のような気がする。)で醸す。
ラオカオ1
ラオカオ2
ラオカオ3
ラオカオ4
昼間から赤ら顔の太っちょの親父が嬉しそうにつくる酒。
「これはいい酒だぞ」と直感は言ったが、以前に別の家のラオカオで頭が痛くなったことがあって、ちょっと警戒してしまった。
持ち帰って飲むほどに美味しくて、ちっとも悪酔いしない。芭蕉の効果なのか涼しくて、身体が熱く火照らない。もっと買っておけばよかったと後悔した。
直感に素直になろう。

版納古樹熟餅2010年 その33.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 軽い密封 紙包
茶水 : タイ・飲料水
茶器 : Klean Kanteenの保温ボトル
雲と鳥
雲と旗
チェンコーンへバスの窓の水滴
バスの窓から入道雲

お茶の感想:
バンコクからチェンマイの飛行機は早朝で、窓から下を見ると朝の白い太陽に水の反射がキラキラしている。蛇行する河とそこから網の目に広がる水路と、地平線まで延々とつづく水田と。それだけじゃない。陸の上であるはずの住宅地やその周りの空き地にもキラキラ反射する水面がある。水溜りや水瓶なのだろう。そういえばタイの人はよく水鉢に蓮などを生けているよな。
水鉢
この印象が今回の滞在中にずっとあって、頭のなかをグルグル巡っていた。
タイ水浸し。
雨季の続く9月後半。雨も毎日のように降る。空気中の水も多くてムッとしている。気温は高くて暑苦しくて、肌にはじっとり汗がにじんで乾かない。
逃げ場のない水。
水に身を浸しているような圧力。
2日間もいると骨にまで水が染みて芯から冷えてくる。
宿の部屋ではエアコンで空気を乾燥させるが、それでも関節が重い。寝汗をかいて深夜に起きる。
熱いシャワーで汗を流すとちょっと落ち着く。
身体の芯が冷えていることに気付いて、靴下を履いて寝るようにしたら寝汗はましになった。
タイの人や旅行者たちは氷の入った冷たい飲みものをガブガブ飲んでいるけれど、身体に水を貯めすぎて、しかも芯から冷やすことになる。唇の色にその兆候の現れている人が多い。
熱いお茶を飲むとたちまち汗が吹き出る。この汗は出したほうがよいのだ。
身体を芯から温めるお茶がよいな。
熟茶
生茶、紅茶、熟茶のどれが温まるかというと熟茶なのだけれど、そういう問題ではなくて、ひとくちかふたくちで背中のあたりに汗が出るようなお茶。
ちょっと濃いめに淹れた熱々の一杯。
はじめは苦くて後からスッキリ爽やか。

ひとりごと:
早朝の月
メコン川の空
メコン川
メコン川と小舟
チェンマイからバスに乗って6時間かけてチェンコーンに行って、パパイヤビレッジのハーブサウナを2回した。ヒリヒリするくらいのハーブの刺激が皮膚に染みて、おもいっきり汗をかいてスッキリした。
タイに住むなら家で毎日サウナできるようにしたい。
花
keep quiet
チェンコーンのタミラ
夜と月


茶想

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