プーアール茶.com

沈香黄片老茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶(西双版納易武山)
茶廠 : 昆明茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 昆明乾倉 竹皮4枚一組
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
鉄瓶と炭火
沈香黄片老茶磚80年代

お茶の感想:
老葉(大きく成長して硬くなった茶葉)でつくられたお茶にはいろいろある。
茶葉の見た目が似ているので、つい同じような性質のお茶だと解釈してしまうが、そうでもない。老葉は年中収穫できるが、季節によって内容成分が異なる。
新芽・若葉にはわかりやすい尺度がある。
その旬は春と秋にほんの数日間あって、タイミングをハズすと茶気が充実しない。気の抜けた炭酸飲料やアルコール度数の低い酒のようになる。
老葉のお茶はそこが曖昧。
茶気の充実しているのが良いとも限らないから。
チベットの遊牧民のようにお茶に求めるものがはっきりしていたら、どの季節に采茶するべきで、製茶工程はこうあるべきで、お茶の味はこういうのが良いとはっきりするだろうけれど。
義安棗香73特厚磚茶
73特厚磚を飲む機会があった。
【義安棗香73特厚磚茶】
10年ぶりくらいかな。
熟茶の最高峰でありながらもっとも熟茶らしくないお茶。熟茶と定義されているからには水をかけての微生物発酵の工程があったことになるが、それの無い生茶の老茶に近い味。
このお茶の説明に気になる部分がある。
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姚計氏は、プーアール茶を仕入れるときは、5級〜6級の大きめの茶葉で作ったものを選びました。新芽はおいしい緑茶を作れるが、おいしいプーアル茶を作らないと考えていたようです。
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姚計氏が73特厚磚以外にどのお茶を倉庫に寝かしたのか知らないが、香港の倉庫に届いている時点で、その先のルートで届く地域においては、生活のお茶としての役割を期待していないはずだ。遊牧民が飲むものではなく、都市生活者が飲むお茶である。
73特厚磚の味を忘れないうちに今日のこのお茶。
『沈香黄片老茶磚80年代』(卸売部)
沈香黄片老茶磚80年代
注ぎ
沈香黄片老茶磚80年代
あえて言えば73特厚磚ほど甘味はない。水の質がトロッとしていない。
それ以外は茶湯の色も香りも味もそっくり。
特徴あるお香の香り。味はあるようなないような感じ。長い時間(7分くらい)かけて抽出しても湯の色が明るい。同じ年代の新芽・若葉の生茶に比べても色が明るい。赤黒くならない。
そして、共通するのはあんがい旬の季節に采茶されているらしき茶気の充実感があること。新芽・若葉ほどではないが老葉のわりには酔い心地がふんわりしている。
葉の様子から、一般的な新芽・若葉の生茶と同様に殺青の火入れも浅いことが伺える。
体感は温でもない涼でもない。いつでも飲める。
葉底
はじめから都市生活者の普段飲みを意識してつくったのではないだろうか。
見た目重視の新芽・若葉で高級だけれど中身は旬をハズした茶気の充実しない手頃な価格のお茶をつくる現代のメーカーよりも、昔の国営メーカーのこのアイデアのほうが安くて栄養が充実してクスリとしては優れている。
茶気の充実が都市生活者向けのお茶として必要条件であれば、冬の老葉を採取した『刮風寨冬片老葉2016年』よりも春の終わりに育った茶葉を摘んだほうがよいかもしれない。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
こういうやつ。
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
葉底
見た目は生活のお茶で大衆だけれど中身はその逆。

ひとりごと:
結局自分には高いお茶しかつくれない。
都市生活者向けの中身になるから。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その7.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・炭火
鉄瓶と炭
チェコ土の茶壺と茶杯
金継ぎ

お茶の感想:
2016年の春のお茶は一天一采。
ある一日に采茶した茶葉でひとつのお茶をつくっている。
その経験から采茶のタイミングがいかにお茶の性質を左右するかがわかってきて、手元のお茶を飲むたびに新しい発見があって、今年2018年の春のお茶づくりも采茶のタイミングを重視した。
茶針で崩す
餅面の茶葉
+ 【章朗古樹紅餅2016年・青印】
「采茶のタイミングをどう見ますか?」
と前回の勉強会で質問されたが、そのときはうまく説明できなかった。
茶葉の成長度も見るし、天候も見るし、茶摘みの手の雇用の問題もあるし、農家との利害交渉もあるし。
いちおう理に叶った見方を説明できるけれど、そうじゃない。なにかが違う。
そんなに合理的に判断できるものじゃないのだ。
現場にいて、采茶のこの日!というのが来るときはもっと興奮している。冷静ではいられない。
天の恵みの光が射すとき。
その日のために自分のこれまでの人生があって、すべてがつながって、なにのために生きているのか生かされているのかを一瞬にして悟る。
たぶん目の色が変わっている。
新芽・若葉の生命力が緑の炎を上げているように見える。
鉄瓶と炭
鉄瓶注ぎ
注ぎ
冷静になって経済合理性を考えると、もう数日待って茶葉が大きく成長してから摘むほうがよいこともある。そのほうがたくさんつくれて安く売れて、みんなが幸せになれる。
でも、現場に居てこの日!というのを迎えると、そんな計算できる経済などぜんぜん小さく見えてしまう。想像もできない巨大な運気がやって来て、これを逃したらバチが当たるのではないかと心配になるくらいだ。
ツイているお茶。
そのはずだけれど、これを買って飲む人にその運気は巡っているだろうか?
うちのお茶を飲むようになってから人生が変わったという人は、こっそり教えてほしい。
怪しい人になるから他人には言わない。
茶湯の色

ひとりごと:
うちのお茶を飲むようになってから大金持ちになれた人がいたら、ちょっと分けてほしい。
どうも自分は茶葉に運を使いすぎたっぽい。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その6.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・炭火
鉄瓶縦長
チェコ土の茶壺
夏の空

お茶の感想:
暑さで内蔵が疲れているせいか、生茶のプーアール茶がちょっと辛い。
熟茶はお腹をいたわるけれど身体の熱がこもってスッキリしない。
なので紅茶。
+ 【章朗古樹紅餅2016年・青印】
みんな同じことを感じているせいか、なぜか今年の夏は紅茶の注文が多い。
章朗古樹紅餅2016年・青印
晒干で仕上げた涼しい体感が夏にピッタリ。
とくに巴達山章朗寨のは苦味がキリッと立つので味もまた涼しい。
生茶に比べるとおっとりしていてお腹への収まりもよい。ミネラルを採って熱中症予防にもなる。
こういう効果は熱いお茶を飲まないと得られない。消化のシステムがそうなっているからだと思う。
ねっとうをかける
飲んでしばらくすると身体のいろんなところにジワジワ快感が現れてくる。
個人によって現れ方が異なるから、各自が自分を観察をして、飲むべき量や飲むべきときを選ばなければならない。
飲んだ後の感じ、食べた後の感じ、それが大事。
味わうポイントは舌先ではなく体感。そうじゃないとわざわざ高価な古茶樹のお茶を求める必要はないだろう。
注ぎ
西双版納の古茶樹にもピン・キリがあるのは、山の気候や土質や周囲の森林の健康や栽培の自然度や采茶のタイミングを追求したことがそのまま体感の質となって現れるからであって、そこを味わえなかったら価値がなくなる。
難しいことを言ってはいない。飲んで気持ち良くなる度合いが高いか低いかだけのことだから。
こういう話はこのブログでも何度もしているけれど、何度も繰り返さなきゃならないのだろな。脳の理解のシステムがそうなっているからだと思う。
舌先や鼻先だけで評価したら、この紅茶は同じ巴達山の生態茶の『巴達生態紅餅2016年』に負ける。約半額の紅茶に負けるわけだ。
茶湯の色
実際、世界中の紅茶のほとんどは背を引く仕立てた灌木の茶樹であるが、経済合理性によって美味しさだけを評価をして、体感の良し悪しを忘れてしまって、古茶樹はリストラされたのかもしれない。
舌先や鼻先だけを喜ばせるものから本当の快感を得られるわけがない。

ひとりごと:
ヨガは快感の運動。
お茶は快感のクスリ。
快感を追求していたら医療費は確実に減らせる。
みんなの好きな経済合理性もあるのに、なぜみんなそうしないのだろな。
チェコ土の茶壺と皿

瑶洞古樹青茶2015年 その1.

製造 : 2015年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山瑶洞古茶樹春茶
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都・陶器の壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺+鉄瓶+炭火

お茶の感想:
このお茶は一般的には刮風寨のお茶として販売される。
+【瑶洞古樹散茶2015年 その1.】
この散茶を餅茶にしたのが今日の『瑶洞古樹青茶2015年』(卸売部)。
瑶洞古樹青茶2015年
つまりニセ刮風寨のお茶である。
これもそう。
+【瑶郷古樹青餅2014年】
刮風寨から山ひとつ超えたラオスに茶地がある。
これらのお茶はニセ刮風寨になったほうがたくさん需要があって、よく売れて、安く買えて、みんなが幸せになれる。美味しさで比べても価格差ほどはない。
今年の春、ホンモノの刮風寨の古茶樹のお茶づくりをした。
ここに来るまで9年。念願の夢がかなったのだが、もっと早くに夢を叶えたらニセ刮風寨を売っていたかもしれない。
ニセとは自分も知らず、お客様も知らず、もっと安くもっと大量に販売して、多くの人に喜ばれた。
瑶洞古樹青茶2015年
ホンモノを追求する仕事に合理的な理由はない。
自己満足はできても他人を幸せにできない。
みんなに喜ばれる仕事をするほうが、喜ばれない仕事をするよりも幸せになれる。
それが商品の限界かもしれない。
あらゆる商品にウソがたくさん混じるのは、ウソを排除するのが目的ではないからだろう。
今年の春に刮風寨の古茶樹のお茶をつくって飲む以前から、実はもう何年も前から、美味しさの差はあまりないことを知っている。
それでもホンモノをつくりたかったのはなぜか自分でもよくわからない。
鉄瓶
たぶん、その過程が面白いから。
地理的な環境や人の行動を勉強するのに9年かかったということは、9年も楽しんだということ。
世界中のいろんな地域のいろんな人々の生き方を見たい。仕事を見たい。誰にもそんな興味はある。
中国は交易の歴史が古いから、貿易で栄えた古い都市にはいろんな言葉や文化や宗教の人が入り混じって生活していて、泥棒が多い。地理的な環境が地域の経済や政治や人々の生活習慣にまで影響をあたえて、なるべくしてそうなっている。
かつては世界中が羨む産品が中国にたくさんあったから、利にさとい商人たちが研究を重ねて偽物や粗悪品は巧妙かつ冷静で、さらに西洋と東洋が混じった大航海時代にイギリス東インド会社が風で動く船を往復させて、ロンドンの港に2年かかって船が戻ってきたときには、積荷のうちの2割以下の茶葉が8割以上の儲けになったというから、茶葉におけるあの手この手はとくに成熟している。
瑶洞古樹青茶2015年
西双版納の現地で行われるあの手この手の情報は外には出ない。山の民族や農家や仲介業者たちとの交流から学ぶしかない。何度か騙されてみるしかない。
こういう勉強を日本人は嫌う傾向にある。
幼い頃から他人を疑うことに後ろめたい感情を持つように教育されているから、他人を疑うのが気分悪い。
「いい人だから」、「長い付き合いだから」。
取引相手が信頼できるので良い茶葉を仕入れることができると主張するケースが多いが、たいがい知らないところでやられている。勤勉を美徳とするのは日本人の勝手で、逆の価値観においては年々仕事の手を抜いてゆくのがあたりまえで、付き合いの長いことが良いとも限らない。
やられていても気が付かないし、バレないから罪にならない。
瑶洞古樹青茶2015年
例えば、この『瑶洞古樹青茶2015年』を「刮風寨のものじゃない!」と鑑定できる人などほとんどいない。自分の知る範囲でもひとりかふたりしかいない。
現地の商人はこのことを利用して、大量にニセ有名茶山モノのお茶をつくって売る。市場価格よりも安く出荷するからたくさん売れて、ホンモノよりも利幅は大きいからたくさん儲かる。
みんなが幸せになれてどこが悪い?
中国の常識では、他人を疑うことに感情は要らない。
騙すよりも騙されるほうが悪いという考え方は、勉強不足を戒めているのであって、堕落ではないと思う。
茶葉はウソをつかないから気持ちよく勉強できるけれど、人はウソを付くから気持ち悪い。
しかし、人の勉強を避けてうまく生きてゆこうなんて都合が良すぎるだろ。そんな消極的な姿勢でいながら世の中が良くなるのを願うなんてわがまますぎる。
と、思うけどな。
葉底
刮風寨と言わないで知名度のないまま出品したこのお茶は、どうなのだろ?
茶葉からしたら有名も無名も知ったこっちゃないから、刮風寨として出品されたほうが飲む人にも喜ばれてよかったのではないか?自分は商人として未熟すぎるのではないか?
自分も他人も幸せにしないで、どこが良いのか?

ひとりごと:
刮風寨の古茶樹のお茶の”黄印”と”緑印”は、一般的な刮風寨の古茶樹のお茶の3倍の価格をつけるつもりでいる。
それでも喜んで買う人がいる。
それは、西双版納の現地の茶商やメーカーのオーナーたち。
彼らの手元にはホンモノがない。
中には真面目な人がいて、ニセモノを扱っているけれどホンモノも知っていることを証明しようとする。自分にもホンモノがつくれることを匂わせたいのだ。
彼らはホンモノの難しさを知っている。
その足元を見ている。
10年ほど寝かせておいて、ホンモノの希少価値がもっと上がってから10倍以上の価格で売ってやってもよい。
高く売りながら顧客満足度を最大化させるのは、商売の姿勢として正しいはずだ。

孟海旧家紅餅2018年 その1.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・銅のヤカン+炭火
銅のヤカン
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
先日紹介した緑茶のような生茶と同じ原料でつくられた紅茶。
+【孟宋新緑散茶2018年 その1.】
生茶は采茶のタイミングが早すぎると評価していたが、紅茶はどうだろ。
当店の紅茶を甘い紅茶と苦い紅茶に分けると、このお茶は苦い紅茶。
早春の苦味といい、ツンと尖った香りといい、涼しさは満点。
生茶のプーアール茶は、7煎でも8煎でもダラダラ続けてじっくり味わいたいファンが多くて、その期待があるので摘み時が早い新芽・若葉はちょっと物足りない。そういう見方で評価されてしまう。
しかし紅茶ならこれはアリと思う。
緑茶のようにパッと気分を変えるつもりのお茶。
1・2煎めの鮮烈な印象が勝負どころ。
もちろん、4煎でも5煎でも続けて飲めるし、だんだん甘くなってくるけれど、このお茶ならではの個性はなくなる。
餅面
農家の若者が当店の紅茶の製法を参考にして自己流で軽発酵させている。
プーアール茶のように圧餅する当店の紅茶は、圧餅工程での変化を計算して、晒干で散茶が仕上がる時点では軽発酵がちょっと足りないくらいに仕上げるが、農家の若者はその加減がわからない。散茶になった段階ですでにしっかり軽発酵がすすんでいるので、茶醤と呼ぶエキスに粘着力が無くなって、圧餅がうまくゆかなかった。
圧餅失敗したのが3枚ほどあるので、崩して出品することにした。
(餅茶の崩し売りを嫌っている当店としては珍しく崩しを出品。)
孟海旧家紅餅2018年
これぞ春の紅茶!という風味で、完成度は高いと思う。
すでに当店の圧餅の紅茶ファンになっている方からしたら、プーアール茶らしさがちっとも無いから満足できないかもしれないが、紅茶の味に正しさを求めるならこっちだろう。
晒干(天日干し)だけで仕上げた紅茶にしては、メイラード反応のチョコレート風味のコクもしっかりしている。
対象的に、甘い紅茶はこれ。
+【刮風生態紅餅2018年】
茶葉が大きくて、茎の部分が長くて、そこから成分を抽出するのに1・2煎では足りない。3煎・4煎と深くなってゆくプーアール茶っぽい紅茶。
気分に合わせてチョイスするために、両方あったほうが良いけれど・・・。
葉底
ところで、『孟海旧家紅餅2018年』の「旧家」は、昔の村の意味。
山奥の村でなにしているのかわからない人たちがいるのは政府としては管理しにくいから、政策で国道に近いところに新しい村をつくって引っ越してもらって、数年前から新しい村で生活している。
茶摘みのときだけ山奥の古い村の近くの茶地に通う。
その古い村のことを「旧家」と彼らは呼んでいる。
また、孟宋山なのに孟海としたのは、西双版納には孟宋という地名のところが3つあって、そのうちの孟海県の孟宋山を表すため。

ひとりごと:
春の終わりに孟海県の孟宋山の村へ行った。
鳥居
鶏
囲炉裏
農家の若者が鶏料理を御馳走してくれた。

孟宋新緑散茶2018年 その1.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・ガラス杯・鉄瓶+炭火
孟宋新緑散茶2018年

お茶の感想:
西双版納でよく交流している愛尼族の農家の若者がつくったお茶。
緑茶のような生茶。
強い火でいっきに炒り上げて、軽発酵のスキを与えず、緑の新鮮味が固定されている。
ここまで高温で攻めて焦がさないのはなかなかの腕前で、その腕前を自慢をしたい気持ちが現れた若さがある。
茶樹は樹齢70年くらいの小樹で、2年前までしばらく采茶されていなかった自然栽培だから原料としては申し分ないが、采茶のタイミングが数日早くて、新芽・若葉が細かくて、風味がしっかり乗っていない。
サッパリ爽やかなだけが取り柄のようなお茶。
泡茶
孟宋新緑散茶2018年
いいポジションを取ったと思う。
あと数日待って茶葉が育ってから采茶したら、よくある生茶の原料となっていたし、特別な存在にはなれなかったかもしれない。
全部で8キロ。
できたての晒青毛茶をどうしたら良いか?と、農家の若者が山から持って降りてきた。
計画性なくいつも金がなくて困っている人なので、すぐに現金と交換してやった。たぶんお金を急いでいたから采茶のタイミングが早かったのだと思う。
茶湯の色
さて、どうしようかとひとりで何度か試飲するうちに、あんがい好きになった。
3月18日采茶で、春の訪れを告げるお茶となるから、上海の友人の店に6キロ送った。7月に立ち寄ったときにはすでに売り切れていた。
残りの2キロは自分の手元にある。
圧餅を試そうかと検討してみたが、殺青で火入れしすぎているから軽発酵の効果も期待できず、運搬の利便性以外に利益はなさそう。2キロだから小さめの枕くらいの嵩しかないので、散茶のままにした。
おまけのお茶にしてお客様に分けているうちに減ってきた。夏のうちに配りきって、夏の終わる頃には飲み切るだろう。
葉底
新芽若葉
忘れた頃にまた春が巡ってきて、あいかわらず金に困っている若者がタイミングの早い采茶をして、できたての晒青毛茶を8キロほどを持ってくる。
そういうふうに進歩のないほうがよいかもしれないな。

ひとりごと:
上海
上海に9日間居た。
今回は勉強会をしなかった。
台風が近づいて雲がすごいスピードで流されていて、毎日雨が降って、お茶の味も荒れていた。
夏休みになったところの小学2年生の上海の坊と遊んだ。
雨のときは天山茶城にある友人の店を借りて二人でお茶淹れの稽古をした。
晴れのときは中山公園を走り回ったり、美味しいものを食べ歩いたりした。
上海の坊はまだ幼いから、叔叔が他の大人たちよりも暇人であることに、なにの違和感もない。
暇人じゃないとできない仕事もあるぞ。
我ながらいいポジションを取っていると思う。

刮風生態青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・ステンレス電気ポット
はじめのトンボ
トンボと空
メコン川とトンボ

お茶の感想:
この春、刮風寨の小茶樹でつくった生茶。
+【刮風生態青餅2018年】
よいお茶だと思う。
泡茶
水滴
若い生命力にあふれている。
味が見えないくらい透き通っている。
香りは朝の空気のように身体を浄化する。
雰囲気があるので、人それぞれに景色を見ると思う。
そんな想像力の空白のあるお茶。
甘いとか苦いとかなにかに香りが似ているとか、具体的な表現でつまらないものにしたくない。誰もが子供の頃には持っていた霊的な感覚が目を覚まして、少し黙って鑑賞したい気持ちになるだろう。
原料となる茶葉の素質はもちろんだけれど、この味には製茶の成果も現れていると思う。
そんなに特別なことはしていない。
黄印や緑印のように気合いを入れたわけでもない。
茶友たちは刮風寨のお茶づくり3年目で、もっとこうしたいああしたいという欲も出てきて、経験と工夫も積み重なって、鮮葉を目の前にしていざ製茶をはじめるときに頭の中にいろいろ考えを巡らせていたと思う。
でも、自分ははじめてだった。
同じ漫撒山の丁家老寨や一扇磨のお茶が近いから、とりあえずその経験をもとに製茶してみるしかない。
泡茶の茶葉
泡茶
はじめの殺青の5鍋分くらいは生焼けだったり焦がしたりして失敗している。
とにかく、刮風寨の鮮葉に自分を合わせるのが精一杯で、自分なりの工夫を凝らす余裕なんてなかった。
無心だったわけだ。たぶんそれが良かった。
自分から意識して無心にはなれない。意識していないから無心なわけだし。
この次に刮風寨の製茶に無心になれるときが来るとしたら、もっともっと経験を積んで、鮮葉を目の前にしたときに考えるより先に身体が動くときだろう。
ということは、それまではスランプになって悩む期間があるのかな?
ま、今からそれが分かっていたらちょっとはましだろう。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)
焦げもあるし軽発酵ムラもあるし、透き通った味が説明できない。
こういうのが好き。

ひとりごと:
今日はトンボの日だった。
トンボの群れ
トンボ拡大
トンボ
斑のトンボ

刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.

製造 : 2018年4月末(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・ステンレスポット
チェンライバス
チェンライバスの扇風機
チェンコーン
メコン川
晩春

お茶の感想:
今年のメインのお茶のページができた。
タイのチェンコーンに滞在して1ヶ月。布を求めてラオスに1日行った以外は、毎日文章とにらめっこした。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】 
+【刮風古樹青餅2018年・緑印】 
ここに書いていない続きの話がある。
自分が景洪のアパートで圧餅をしているときに、茶友はまた刮風寨に行った。
第一波(初摘み)の最後の”晩春”のお茶をつくるため。
すでに何度も雨が降っているから、茶葉の繊維は硬くなっているし、早春の茶気は逃げているし、しかし、噂によると早春よりも香りは強いらしい。価格も安いから普段飲みのお茶になるかも。
それで、5月15日頃だったか、茶友が山から降りてきてサンプルをくれた。
刮風寨の工房で圧餅も済ませてある。
采茶は4月末頃。黄印や緑印のおよそ2週間後。
晩春の餅面
晩春の餅面裏
西双版納は雨季の入り口で雨の降る日が多くなっているから、次の日の晒干(天日干し)を含めて2日間晴れが続く日を選ぶと、結局2日分しかつくれなかったらしい。少量すぎて売る分はない。
一般的には雨が降ってもつくる。農家は毎日つくっている。半透明のプラスチックボードの下で干すからだが、われわれは直射日光にこだわるからつくれない。
古茶樹は新芽の出てくるタイミングが一本一本違う。
例えば今年の茶坪の場合、契約する農家の山の斜面の200本ほどのうち4月11日・12日・13日の3日間に采茶した黄印や緑印になった51本と、単樹の2本と、合わせて53本が理想のタイミングで采茶できたが、それ以外の147本は理想からはズレたタイミングで新芽が出る。
さらに、一本の茶樹の大きな枝ごとにもちょっとずつ差がある。
理想のタイミングの53本も、あと2週間ほど待つと別の枝の新芽・若葉が成長していて収穫できる。
したがって、理想のタイミングの収穫量は200本分の53本ではない。400本分の53本に相当するだろう。
理想と理想でないのは1:8の割合ということになる。第一波(初摘み)のお茶にもいろいろなレベルがあるのだ。
茶友が試した理想ではないほう。最後の初摘みの晩春のお茶。
晩春
『刮風古樹青餅2018年・晩春』と名付けた。
見るからに違うが、内容もまったく違うお茶になっている。
茶葉が開いているのは、繊維が硬くて揉捻で捩れないせい。
新芽が少ないのは、育って若葉になっているせい。
茎が短いのは、大きく育って柔らかい葉のところだけを摘むせい。茎はさらに長く太く育って硬いから摘めない。
葉の色がとりどりなのは軽発酵のムラがあるせい。
茶壺で淹れる
茶湯の色
湯を注いですぐに香りが立つ・・・というほどではない。刮風寨の大きく垂れるタイプの茶葉なので、香りは内に薫る。
おそらく香りの成分と共通であろう渋味・苦味・辛味が強い。甘い香りなので苦味や渋味とのバランスは良い。茶気は弱いのでサラッとしていていくらでも飲める。水質は粗くて舌の上にザラつくが、のど越しはきれいに滑るから悪くはない。飲んだ後の口や喉にメントールの涼しさがある。
茶坪のお茶は刮風寨の中では香りが弱いと思っていたが、刮風寨どころか漫撒山一帯のお茶と比べても香りが際立つ。
香りはどこから来たのか。
雨が降って成長して開いた茶葉が太陽光を受けて光合成が活発になったことの成分・・・もあるけれど、それだけではない。
茶友の話では、殺青(鉄鍋炒り)がほんの5分で済むらしい。もっとしっかり炒ろうとしたら焦げてしまう。
茶葉に水分が少ないのだ。雨が降って成長した茶葉なのに。
殺青は茶葉の形状や質に合わせて、火の熾し方や撹拌する手の動きを調整しなければならないし、生茶づくりで最も難関だから、そこを中心に製茶を組み立てることになる。
茶葉の形状や質。
茶葉は、尖った新芽、開いた若葉、円柱形の茎、と形がバラバラで、さらに繊維の質や成分や水分も異なるから、殺青の鉄鍋炒りでいかに熱を均一に通すかが問題。
円柱形の茎がいちばん水分が多く、いちばん熱が通りにくいから、黄印や緑印はこの難問に全力で立ち向かって、最高の結果を出したつもりだったが、晩春のはあっけなくその苦労を回避している。茎がほとんど無いから。
泡茶
葉底
しかし、そのせいで蒸し焼き状態にならない。茎の水分が無い。
蒸しの効果がなければ焦げやすい。
高温の鉄鍋の表面と接触することで茶葉に熱を伝えるしかなく、手返しを早くしないと焦げる。
結果的に短時間にしておかないと焦げの割合が多くなる。
イメージとしてはチャーハンの米粒をパラパラに仕上げる炒め方。きつね色を通り越して黒くなったら、香ばしいを通り越して焦げ臭くなる。
米なら、蒸すなり炊くなりしてから炒めるからよいが、茶葉は熱が伝導しきらない”生”のままの部分が残って、晒干のときにそこが軽発酵のムラとなり、色とりどりになる。
香りは、海苔を火でさっと炙ったみたいな状態。鉄鍋の高温に接触して焦げる一歩手前に焼けたところが薫る。
たしかに海苔みたいに炙ることができたら、炒るよりはよいかもしれない。
焦げないように低温で長時間炒るという手もあるが、生茶ではなく緑茶になってしまう。
生と焼けがミックス状態になっている。
これぞプーアール茶と言えるのかどうか、何年かかけて吟味するつもり。
ラオス糸を紡ぐ
綿花から糸になる

ひとりごと:
サイトのお茶の紹介ページは、お茶をつくるのと同じくらいの時間をかけている。
ブログの記事なら2日で書くが、サイトのページは3週間はかかる。
なのに、ほとんどの読者にとって役に立たない。
事実を記録して伝える文章のはずが、文章にはいくらでもウソが入るから、ウソを見極めることのできる人だけにしか真価を発揮しない。
”こだわり”のラーメンみたいな感じ。多くの人にこだわりのウソを見抜けない。
古茶樹も自然栽培も、どの業者もそう言うから、文章からはホンモノとニセモノの区別がつかない。
ま、文章なんてその程度のものだ。
みんなに真実が伝わるなんて期待しない。
いつか、来年の春なのかもっと先なのかわからないが、同じところに立った人が現場で難しい問題に直面して、別の可能性を探ることになる。
そのときはじめてこの文章は役に立つ。
そのひとり(自分自身かもしれないけれど)のためだけにインターネットで公開しておく価値がある。
日本語で書いているが、ほんとうに必要な人は中国語にも韓国語にも訳すだろう。

刮風寨単樹1号2018年 その1.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 散茶100g
保存 : 西双版納 
茶水 : 農夫山泉・四川省
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号

お茶の感想:
刮風寨単樹1号は「鉄拐李」と仲間内で呼んでいる。
鉄拐李(李鉄拐)が足の悪い仙人だったから。
遠い昔に足を刈られたせいか根元のほうで2つに分かれ、いったん横に倒れた幹が大きく曲がって上に伸びる姿は神々しくもある。
刮風寨のエリアは山深いので、お茶の需要が減ると誰も茶地に入らなくなって、ほんの数年で自然の森に戻ってしまう。台刈りや剪定されないまま何十年も枝を伸ばした高幹は、単樹のお茶にするのにふさわしい。スラット上に伸びた幹と同じバランスで地面の下の根もスラッと下に伸びているはずで、深い地層に根が達していると想像できる。
刮風寨単樹1号の葉
3年前から刮風寨のお茶に集中している茶友も単樹のお茶の味にはまって、刮風寨のエリアから裏山を超えてラオスにまで足を伸ばして、すでに何本もの単樹のお茶をつくっては試しているが、今のところ単樹1号の美味しさに叶うのは見つからない。
前の記事にした単樹2号は同じ茶坪の斜面を横に50メートルほどずれたところにあって、土質は同じだと思うが、品種特性的な違いが現れていて葉形も違えばお茶の味も違う。そしてやはり単樹1号の美味しさには叶わない。
左1号右2号
左: 単樹1号 100g
右: 単樹2号 100g
同じ100gの晒青毛茶でも1号と2号では嵩がこれほどにも違う。茶葉に含まれる成分の違い。1号の黒い色は鉄分などのミネラルの含有率が高いせいだと思われる。
采茶は1号も2号も4月13日。
1年前から農家と約束して、10日前から森に入って新芽・若葉の成長具合を確かめて、采茶のための木登り人員を確保して、製茶の日の天気を予測して、この日!という采茶のタイミングを決める直前には緊張で胃が痛くなる。
単樹1号の殺青は瑶族の農家の主人が担当した。ホッとした。
農家の主人が殺青
農家の主人もこのお茶を愛していて、自分用の取り分を主張するので誰も文句なし。
側で殺青を見ていて、やはり熟練の殺青はすばらしいと思った。ふだんの他人に売る用のお茶の殺青とはぜんぜんちがう動きだった・・・。
自分の殺青との違いは手返しのスピード。
農家は強火で攻めて手返し早くすることで焦げを防ぐが、このやり方では水分が蒸発しやすく標準的な茶葉だと緑茶っぽい風味になりやすい、が、単樹1号はそうならない。茎の部分が長く育って水分を多く含むからだろう。
殺青
茶葉を投入する直前の鉄鍋の温度は390度。
何年か前に非接触温度計でいろんなところの鉄鍋を計ったが、だいたいこの温度。
一鍋で炒る約5キロの鮮葉を投入した瞬間にたしか190度に下がる。さらに1分か2分でもっと下がる。それから数分でまた温度が上がってくるが、この間が問題。茶葉が常温から70度以下の低温域が長く続くと意図しない軽発酵がすすむ。茶葉に均一にそうなればよいが、縁のほうや茎の部分だけが黄色やオレンジ色に変色する。また、風味も紅茶のようなモワンとした甘い香りが混ざる。
炒りはじめて短時間に茶葉の水分を高温の蒸気に変えるには強火がよいし、鉄鍋に厚みのあったほうが鍋の温度が下がりにくくてよい。
ただ、ここを追求しすぎると、違う種類のお茶になりそうな気がする。
漫撒山の地域一帯は森の水気が多く、茶葉は茎が長く育って水を含む。その結果、炒った茶葉のところどころに変色が残るのが普通。
単樹1号も2号も手の動作をがんばって精度を上げてみたけれど、追求はこのへんにしておくのが良さそう。
単樹1号
茶湯の色
葉底
「神韻」と呼ぶやつだと思う。
脳がクラっときて、一瞬であっちの世界へと連れて行ってくれる。味もさることながら酔い心地が違う。まるでクスリ。どうしてももう一度やりたくなってしまうタイプのやつ。

ひとりごと:
勤勉や勤労がエライのは日本の社会環境での価値観であって、おそらくそうじゃない社会のほうが世界には多い。
勤勉や勤労がより早くより大規模に自然環境を破壊してきた結果を見ると、あまりカシコイくないと思える。
お茶の味や体感みたいな美の世界も勤勉や勤労の通用するところじゃない。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
圧餅の蒸し
圧餅の石型
圧餅の布袋

お茶の感想:
今回は自分ひとりで圧餅する。家の厨房のカンタンな設備で茶葉を蒸す。
圧餅の工程は、茶葉を蒸して布に包んで石型で圧して、冷ましてから布を外して涼干・晒干する。
文章にするとたった一行のことだが、ひとりでやると重労働で、一日20枚圧餅するのがやっと。道具を手入れして掃除を終えたら深夜になる。一週間続けたらあちこちの筋肉が盛り上がって体つきが変わってくる。
180g×20枚=3.6kg。製茶(萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干)をひとりでするのとほぼ同じ生産性である。65kg の体重の人間がたった3.6kgの茶葉に振り回されるのだから、圧餅の茶葉に与えるエネルギーがいかに多いかがわかる。
圧餅は、円盤型に整形するだけが目的じゃない。
散茶の嵩を減らして運搬しやすいようにしたことが出発点だったとしても、”蒸す”ことの火入れや、蒸気の水による軽発酵や、圧延することの茶葉の繊維の変化を、昔の職人はなんらかの利点として計算に入れたはず。お茶に薬効が求められていた時代だからなおさらのこと。
圧餅後の餅茶
餅面
もしも圧餅を工房に依頼すると一日数百枚も可能である。しかし、茶葉の変化を追いかけられない。数人一組の分業になるからだ。分業では、各自の担当するところの茶葉を観察できても全体は把握できない。蒸したとき、布で包むとき、包んでから2度蒸しするとき、石型で圧すとき、布を外すとき、涼干・晒干で乾燥させるとき。この一連の変化を見ているだけではダメで、どうしても手の感触で、身体で流れを知る必要がある。
晒青毛茶ができるまでの製茶も同じ。
采茶からはじまって萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干の流れを身体で知るのが大事。
というのが最近わかってきたので、圧餅も自分でやることにしたのだ。
身体で知ることは他人に伝えられる知識になりにくいせいか、軽視されがちだと思う。まして手の仕事は効率が悪くて、結果的にお茶の価格を上げてしまうから市場での評価は低い。
例えば揉捻について。
名前のとおり茶葉を揉み捻る工程であるが、「手でする場合は何分かかるの?」と、現場でよく聞かれる。
揉捻
手で揉捻すると、ある時点で急速に茶葉が変化しはじめるのが指先や手のひらの感覚に伝わる。さらにすすめると、あきらかに「もういいよ!」という茶葉の繊維や水分の変化が手に伝わる。手と茶葉との会話がある。
茶葉のコンディションは毎回異なる。たとえ同じ一本の茶樹から採取しても、日によって水分・栄養分・繊維質が異なるし、気温や湿度や気圧という外的な要因も揉捻の結果を左右するだろう。
したがって、揉捻の時間は5分で終わることもあれば20分かかることもある。その判断は手がする。
雲南の自然栽培の茶樹は一本一本の品種特性が微妙に異なり、茶葉の大きさもカタチも繊維質も成分も異なるから、揉捻一回の手に取る茶葉(この段階ではまだ水分が多いので1.5キロくらいだろうか)ごとにチカラ加減や時間を調整しなければならないはず。
手で揉捻すると個人によって技術もチカラも異なるから、例えば自分なら10分のところを他人なら15分かかるかもしれない。手は疲れてくるから1回めと10回めにかかる時間は異なる。
茶摘みのときから茶葉に触っていると、一連の工程(采茶・萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干・圧餅)の前後の関係にも気付く。
手で揉捻
例えば、早春の雨の降らない日が続いた茶葉の揉捻は短時間で済むとか、雨が降った後は繊維が硬くなって3倍の時間かかるとか、殺青で水分を残すようにするとヨジレやすいとか、殺青の火入れがしっかりできたときに手にくっつく茶醤の粘度が高いとか、揉捻をしっかりすると軽発酵がすすんで甘い香りが出るとか、揉捻しすぎると圧餅の粘着が悪くなるので蒸し時間を長くしなければならないとか、揉捻でわかる水分量で晒干の茶葉を広げて一日で乾く厚さを予測するとか。
もしも機械で揉捻して茶葉と手の会話が断絶すると、前後のつながりがなくなり、つじつまが合わなくなるだろう。お茶の性質をある方向に導こうとするなら、ある個性を宿そうとするなら、手で揉捻するのはあたりまえなのだ。
手で揉捻したら生産効率が5分の1になる。
単純に計算して5倍の価格でお茶を売ると機械揉捻の生み出す利益に追いつくわけだが現実的ではない。
機械揉捻
「手の揉捻は何分するの?」と聞く人の心理はおそらくこのことを先に考えている。
工業生産的な価値判断が背景にあるのは、そのほうがカシコイと評価される社会環境であり時代であるからだ。さらに悪いのは、それを知ったうえでマーケティングするのも出てくる。手で揉捻する本当の意味を考えずに揉捻時間を1分くらいに短縮してカタチだけ”古式”だったり”手工”だったりする。
労働をつまらないものにしてしまったので、現代のお茶づくりはどうしても昔のお茶づくりに勝てない。お茶だけでなくて道具づくりも。道具だけでなくてあらゆるモノづくりがそうだろう。
人が貧しくなるスピードが加速して、お金を稼ぐスピードが追いつかない。
さて、『刮風古樹青餅2018年・黄印』(未出品)。
刮風古樹青餅2018年・黄印
刮風古樹青餅2018年・黄印
5月4日に圧餅を終えて、10日間かけて涼干(陰干し)して、荷造りを終えたところ。長期熟成は西双版納では行わないからとりあえず上海にお茶が運ばれる。
180gの小餅サイズ全部で19枚。出品は17枚くらい。出品時期や価格はまだ決めていない。
圧餅の蒸し時間はいつもよりも長くなった。深蒸しになった。
これも手の判断である。石型を踏む足の判断でもある。
なぜ手や足がそう判断したのか?頭で解析を試みているところ。
この時期がいちばん不安になる。もしかしたら手が判断を誤ったのではないか?と疑いたくなるほど、お茶の味が揺れて安定しないからだ。
お茶淹れ
茶湯
この間に試飲しなければよいのに、気になりだしたら夜中であろうがガマンできずにお茶を淹れてしまう。ヘンな味が出て心配になって眠れなくなる。
圧餅を3日前に済ませてきた北京の茶友が、刮風寨の古茶樹のお茶を持ってきた。
彼のオリジナルだが、製茶は農家がして、圧餅はメーカーがしている。彼自身は身体を動かさないので太っている。カタチだけのお茶づくりは誰にでもできる。
茶友の餅茶
餅面がキレイ
メーカーの圧餅は餅形がキレイだ。
品茶
でも、やっぱりヘンな味が出ている。
圧餅後に10日くらいかけてゆっくり茶葉が乾燥する過程の同じ道をたどっている。
圧餅前の散茶の味をみると、そのヘンな味は無い。なので明らかに圧餅が影響した味である。
圧餅3日後の茶友のと10日後の自分のを比べると、ヘンな味が抜けているのがわかった。よかった。よかった。
炙って乾燥
圧餅後の水分が残っていることだけがヘンな味の原因じゃない。
炭火の遠火で炙って茶葉を強制的に乾燥させても、やっぱりヘンな味が残っている。
水分の他に茶葉の繊維の変化がお茶の味に影響していると推測する。繊維の変化には時間がかかる。

ひとりごと:
やっと終わった。ほっとした。


茶想

試飲の記録です。

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