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孟庫戎氏宮廷小熟餅05年 その4.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 小餅茶145g
保存 : 昆明−上海ー西双版納 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
茶壺を蒸して温める

お茶の感想:
茶友たちが試みているオリジナルの熟茶づくりで問題としている”糠味”と”カラスミ味”。中国語で”味”は香りのことも含み、この場合はどちらかというと香りのこと。
お茶を淹れて出てくる”糠味”と”カラスミ味”は時間差がある。同時には出てこない。
糠味ははじめの3煎めくらいまで。後の煎は弱くなる。
カラスミ味は茶壺でじっくり蒸らして、5煎めくらいから後の葉底に強く出てきて、茶湯にもその香りがある。上の写真のように鉄瓶の上に乗せて蒸して加熱するとより出やすくなる。
1-4煎めくらいは別の香りが蓋をして出てこないのか、それとも熱が通ってから出てくるのか、よくわからない。
よくわからないけれど”カラスミ味”は厄介なやつであると感じている。
温州人にこの報告をして1週間経つ。
今朝、ミャンマーからのSNSでの報告では早速対策をはじめているらしい。
現在渥堆発酵進行中の7批(7番目の作)は、布袋の底の方の呼吸困難になっているであろう茶葉3分の1ほどを分離したらしい。
7批熟茶
7批
この茶葉、捨てることになるのかな・・・・。
新しく渥堆発酵をはじめて数日の8批は、はじめから布袋を取り除いて通気のよい竹籠だけにしたらしい。
8批熟茶
ちなみに下の写真は布袋があったときのもの。内側に綿の布。外側には麻の布が貼ってある。
布袋
ということは、やはり温州人も通気の問題と考えているのだろう。「二酸化炭素が蓋をして呼吸困難になる・・・」みたいなことを中国語で言っているが、意味は同じだ。
それともうひとつ結露の問題がある。
茶葉が水を含んで微生物発酵がはじまると発熱して蒸気が出る。茶葉だけでなく微生物発酵モノはだいたい熱が出て蒸気が発生するだろう。空気中の水分はより冷たいところに移動する。設備や道具の表面に結露する。
結露した小さな水玉に雑菌が増殖する。
人間の目には小さく見えても細菌にとっては湖くらいたっぷり水があるのだろう。すぐに乾けばよいけれど、乾かないで1日も2日も水が留まると雑菌が増殖するのに十分な時間を与えてしまう。
結露しない工夫も大事だけれど、もっともカンタンで有効なのは設備や道具をなるべく簡素にすることだろう。
この問題についてはまだ温州人の改善案が出ていないけれど、たぶん自然にそうなってゆくと思う。
これらの結果が出るのは2週間から1ヶ月かかる。
さて、今日の試飲はかつて糠味のあったお茶。
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年
+【孟庫戎氏宮廷小熟餅05年 その1.】
その1.の文章で”味噌っぽい香り”と書いているのが糠味のこと。
2013年9月13日の記事だが、この時点ですでに糠味は消えていたらしい。2005年の生産だから2013年ではすでに8年経っている。今日はさらに5年後の試飲となる。
糠味ですぐに思い出した熟茶は、茶葉同士が粘着して小石のような塊をつくった”茶頭”だったが、このお茶は”宮廷”と謳っているくらいなので小さな新芽・若葉で構成されている。
餅面表
餅面裏
餅面の表はたしかに新芽・若葉が多く見えるが、よく見ると粉砕されて細かくなった茶葉のほうが多い。裏面はとくにそれが多い。
あー!そうか。
これ、茶頭を粉砕して粉々にしていっしょにして圧餅したのだな。糠味はやはり茶頭の味だったのだ。
茶頭
写真は『版納古樹熟餅2010年』の茶頭。
熟茶の渥堆発酵は、山にした茶葉の上のほうの乾燥した部分と、底のほうの湿った部分と、2層を意図してつくらないとうまくゆかないのではないか?という考察を前回の記事でしていた。
+【温州人第六批熟茶2018年 その3.】
見た目にましな餅茶にしようとしたら、篩いにかけて茶頭を取り除くのが一般的。
篩がけ
写真は篩がけの機械。
糠味が目立っていたということは加水の量が比較的多くて茶頭がたくさんできていたはず。
そうすると、茶頭を取り除くと生産量はかなり減ったはず。
しかし茶頭を粉砕していっしょに混ぜて圧餅したら、生産量を増やしてコストを下げることができる。
なかなか良いアイデアだと思う。
現在は茶頭にも人気があるが、昔の茶頭は”余りモノ”と認識されていて、なかなか売れなかったから。
泡茶
意識して飲んでみると、糠味とは言えないけれど、確かにその足跡のようなものがほんのり薫る。13年間の熟成で陳化して出てきたお香のような香りと混ざって良いバランスだと思う。
粉砕してあるから1煎めからドバっと濃い色が出てくるが透明度は高い。味も濁りがない。
味はちょっと酸味が立つけれど甘味も強いからバランスがとれている。
葉底
熟茶はもともと生活のお茶。
食卓に出すのならすぐに美味しく飲めるほうが良い。
広東や香港の飲茶レストランの出てくる熟茶にはピッタリだが、このくらい美味しいお茶を出す余裕は、現在のレストランにはないかもな。

ひとりごと:
わかるかな、この違い。
緑黴の落花生
落花生
上のやつは緑黴が発生している。
匂いはかすかに黴臭くて味はちょっと苦い。何粒かうっかり食べてしまったが、ま、大丈夫だ。
版納の茶友が袋いっぱい1キロほどプレゼントしてくれたが、3分の1ほど緑黴が発生していた。問題がなければ生のまま食べられるやつで、美味しいのだが・・・。
悪いけれどすぐに捨てた。
茶葉を置いている近くに黴の発生源を置いておくことはできないから。
気候の温かい地域だから細菌たちも心地よく繁殖できて、種類も多くて生存競争も激しくて、それだから熟茶の発酵で活躍する黒麹菌はクエン酸のような強力な免疫力を備える。敵を毒殺するわけだ。まさに生物兵器。
発酵食品の地域的な特性を忘れて人間が勝手にいじったりしたら、ヤラれてしまうぞ。

温州人第六批熟茶2018年 その3.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
6批熟茶

お茶の感想:
とりあえず試飲。
餅面に鼻を近づけるだけで酒饅頭に似た甘い香り。
酵母がつくったアルコール由来の香り。
温めるとさらに強く薫る。
茶葉を温める
市販されている熟茶の中には雑巾の生乾きのような匂いのもあるが、それはおそらく雑巾の生乾きと同じ雑菌が原因である。温州人の茶友のつくる熟茶にはそれは無い。
1煎めの茶湯の色は、前回の試飲のときに比べて透明度がちょっと高くなった。
一煎め
2煎・3煎くらいまでは美味しく飲める。
茶湯にも酒饅頭っぽい甘い香りがあって、奥の方にお香っぽい香りがある。
お茶の渋味は消えてまろやか。いや、消え過ぎていると思う。
このタイプの味は国営時代の昆明第一茶廠の品番7581にちょっと似ていて、孟海茶廠の味ではない。
現在はどこの熟茶づくりも孟海茶廠の製法が主流になっていて、われわれは初心者でとりあえず標準的な味を目指しているはずだから、この時点でなにかがおかしい。
4煎め
4煎を超えてから問題にしている”カラスミ味”が出てくる。味というか香り。この香りをものすごく悪い方向にもってゆくと、ドブっぽい匂いになるだろう。生活排水の流れるドブ水。チーズや臭豆腐など湿った発酵食品にはドブっぽくても健全なのがあるが、乾物である茶葉からこの匂いが出てきてはいけないと思う。
さて、この記事のつづき。
+【温州人第六批熟茶2018年 その2.】
新製法での熟茶づくりの技術的な失敗の原因を探る過程で、もっと根本的な問題に気付くことになったわけだが、いきなりその結論を話しても伝わらないと思う。
今回はその”気付き”のキッカケとなった技術的な失敗についてもうちょっと詳しい話をする。
この失敗は、2年前のちょうど今の時期に自分も経験している。
このへんの記事。
+【巴達曼邁熟茶2010年 その6.】  
このときはまだ失敗に気付いていない・・・・今読み返すと恥ずかしくて汗が出る。
布袋発酵
ちなみに、これらの茶葉はぜんぶ捨てた。
最近の『東莞人第一批熟茶2017年』の自分が圧餅した1キロ分も捨てた。
アパートの庭の緑が一部だけ特別に繁殖しているのはたぶんこのせいと思われる。
ダメな茶葉を手元に置いておくわけにはゆかない。良い茶葉に感染するかもしれないから。
緑の栄養になった茶葉
温州人の茶友の6批の熟茶は、発酵の状態がとても良いと途中経過をSNSで報告してくるくらいに自己評価の高いものだったが、できてみると茶頭と似た味になった。散茶なのに茶頭味になったのは微生物の呼吸困難が原因。
小部屋や木箱(温習人のは竹製)や布袋や竹籠の通気が工夫されたら問題が解決される・・・とは自分は思っていない。
茶頭は渥堆発酵の茶葉の山の底のほうで自然にできるもの。
茶頭をひとつもつくらないようにこまめに撹拌するのは、真面目なようで聞こえはよいが、実は良くない可能性がある。
自分が布袋で発酵させていたときも、茶葉が均等に発酵するのが良いと考えて、加水をこまめにしたり、保温に電気毛布をつかったり、そして茶葉の撹拌を1日2回も3回もしていた。茶葉同士がくっつく暇はないので、茶頭はひとつもできない。
50度
このやり方では、厚みのある茶葉の内側のほうの発酵が不十分になる。
温州人の4批の葉底にもその現象が現れていた。
+【温州人第四批熟茶2017年 その1.】
50度
自分の2年前の熟茶を淹れると、はじめの1煎から3煎めくらいまでの茶湯の色に赤味があって、その後の煎はだんだんと黄色く明るくなってゆくが、同じように茶葉の内側のほうが発酵不十分だったことがわかる。
黒麹菌は、イメージとしては木の根っこのような糸状の菌糸体で茶葉の内側に入り込んでゆくのだが、こまめに加水して常に茶葉の表面に豊富な水分のある状態では、わざわざ内側に入らなくてもよいから根っこが深いところにゆかないで表面を這う。
さらに茶葉の内側の水分が多すぎると、深いところでは息ができない。
では、どういう状態が良いのかと言うと、加水後に最初は茶葉の表面にあった水分がゆっくり浸透して内側に入って、表面が乾いてくること。内側に水分が残っているので、それを追いかけて菌糸体が深く潜る。
茶葉の表面が、湿って乾く・湿って乾く・湿って乾く・・・・を繰り返すのが理想。
茶葉に入り込んだ水分は自然乾燥ではなかなか抜けない。例えば、圧餅した後の陰干しで茶葉の真ん中の厚みのあるところの内側が乾燥するには1週間かかる。
なので、渥堆発酵の湿って乾くサイクルも1週間くらいかかるはずだ。
この1週間は触ってはいけないのだ。
もしも途中で茶葉を撹拌すると、乾燥を早めてしまうから。
古い倉庫
そういえば『版納古樹熟餅2010年』の渥堆発酵では、加水と撹拌を終えて山にした茶葉を、誰も触らないように倉庫に鍵をかけていた。ほぼ1週間誰も倉庫に入らない。
+ 【版納古樹熟餅2010年 その3】
1週間のうちに茶葉が乾きすぎたり温度が下がりすぎたりしないためには、茶葉の量がある程度たくさん必要になる。
それと、もうひとつ。
茶葉の持つ水分にムラがあったほうが良い。
渥堆発酵の底の方で水分が多すぎて茶頭になるところが一部残っていたら、茶頭が周囲の乾いてゆく茶葉に水分と熱を供給してくれる。水分をたくさん含むほど発熱で温度も高くなる。それが茶葉の山の底にあるのだから、湯たんぽみたいなカタチになる。
茶頭が嫌なら、渥堆発酵してから茶頭だけ別に分けたらよいのだから、すべてをまんべんなく発酵させる必要など無いのだ。
渥堆発酵
渥堆発酵
茶葉の均一な発酵=キレイな発酵。
このような勘違いは他にもある。
例えば、サーモスタットで自動的に電熱を調整して木箱の中でより適温・適湿を保つこと。
微生物発酵はある一定の温度でもっとも活発になるのだが、水分の量と発熱が関係していて、乾くと冷えてくる。
なので加水したり加湿したりするのだが、これも微生物と茶葉のなるがままに放っておいたほうがよいのだ。温度が高いときは高いときなり、低いときは低いときなりにそれぞれの発酵が営まれている。
さらに、茶友たちは雑菌を殺す目的で殺菌灯を使いだした。
雑菌を殺すつもりで良性の菌類を殺すかもしれないし、雑菌と良性の菌類の仲良い関係を壊すかもしれないし、殺菌灯に耐性をもつ変な菌が発生するかもしれないし。
管理するつもりで管理不能に陥っている。
森の木を切ってから、茶葉の害虫対策に殺虫剤を撒くようなものだ。

ひとりごと:
微生物発酵で特定の成分を製造するのが目的ではない。医薬品やサプリメントや工業薬品をつくるのが目的ではない。発酵食品は、自然のままでカンペキな生態バランスを取り入れるもの。里山と人間の関係のように絶妙なバランスで、手を加えるべきところと加えてはいけないところとがある。

南糯山神青餅2011年 その7.

采茶 : 2010年秋茶 2011年春茶
茶葉 : 雲南省西双版納南糯山老Y口寨古樹
圧餅 : 2011年12月
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 プラスチックバッグ密封・陶器の壺
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火

お茶の感想:
お茶の保存熟成のときの通気をどのくらいに加減するか。
通気の差がどのくらい茶葉に影響するのか。
熟茶について良いサンプルが見つかったので、先日これを試飲した。
+【版納古樹熟餅2010年 その39.】
実はこのとき同時に生茶のサンプルも見つけていた。
真空パックと熟成壺
左: 真空パック
右: 熟成壺
このお茶。
+【南糯山神青餅2011年】
真空パックのは1年か1年半かあるいは2年くらい。忘れていたからこの状態にあるわけで、期間がはっきりしない。
お茶を遠距離輸送するときに真空パックにしたりジップロックみたいなチャック付きのプラスチックバッグでなるべく空気を抜いておくのは有効で、最近は西双版納の小売店でもこうする店が出てきた。
お土産用のお茶を買って帰る人がスーツケースに入れると、通気のある紙包や紙箱だけでは他のモノの匂いが移りやすいし、湿気やすいし。それに空輸のときは温度差から結露する(茶葉の温度が低くて空気の温度が高いと空気中の水分が茶葉に吸い寄せられる)問題があるので、密封しておくと被害は最小限に抑えられる。
熟成壺のは5年くらいと思う。
熟成壺
これもこの1枚のみ。西双版納にはこの1枚しか残していない。
2011年のお茶だが、はじめは6枚一組竹皮包のまま西双版納で保存熟成していた。
しかし、西双版納の環境がどうも生茶の熟成に向いていないような気がしてきて、ほとんどの生茶を移動させた。西双版納に残しているのは熟茶のみ。
この先また気が変わるかもしれないけれど・・・。
真空パックと熟成壺
左: 真空パック
右: 熟成壺
オリジナルの生茶は一日一日采茶して一日一日製茶したのをそのまま袋に詰めていって、圧餅のときにこれを混ぜないのがウチの方針。茶葉の成長や天気の変化で一日一日のお茶の味が変わってゆくので、一枚一枚のお茶の味も微妙に異なることになるが、それで良いと思っている。
しかし『南糯山神青餅2011年』は違う。
春茶と秋茶のブレンドを試したから、しっかり混ぜなくてはならなかったので、一枚一枚の味の差はあまりないだろう。
なので、今回の試飲には適したサンプルである。
真空パックと熟成壺
一煎め
茶湯の色
左: 真空パック
右: 熟成壺
茶葉の色も茶湯の色も、熟成壺のがちょっとだけ赤く変色している。
1煎めは真空パックのに新鮮な香りが立ってよかったが、味はやや酸っぱい苦い。熟成壺のは甘い。
2煎めから香りの差はなくなって、味の差だけが広がってゆく。
味はバランスで、おそらく熟成壺のほうの甘味が強いから酸味や苦味を感じにくいのだろう。真空パックのは甘味が足りないから酸味や苦味を強く感じるのであって、酸味や苦味が強くなるような変化があったのではない。
いや、そうじゃなくて熟成壺のほうの酸味や苦味が少なくなったということかもしれない。
いずれにしても、見た目の色の差よりは味の差のほうが大きくて、熟成壺のほうは美味しいと感じて、真空パックのほうは不味いと感じる。微妙な差だけれど、美味しさは微妙なバランスの上に揺れているものなのだ。
真空パックと熟成壺
葉底
左: 真空パック
右: 熟成壺
しかし、煎を重ねるほどにこの差がはっきりしてくるのはいったいどういうことだろ。
しばらく考えてみる。

ひとりごと:
真空パックと通気熟成の熟茶。
+【版納古樹熟餅2010年 その39.】
袋を開けて通気を許して、今日で9日目。
実は2日前、通気を許して7日目に味比べしてみた。
密封チャック付きの袋に餅茶
両方とも今はチャック付きのプラスチックバッグで保存。
袋の中の空気はたっぷりある状態。
真空パックと通気熟成
一煎め
一煎め
三煎め
三煎め
左: 通気保存
右: 9日前まで真空パック
前回よりも味の差が縮んでいる気がする。
もう少し日数が経ってから試飲レポートを記事にしたい。
ちなみに、熟茶の場合は煎を重ねるほどに味の差はなくなってゆく。

温州人第六批熟茶2018年 その2.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
温州人6批熟茶

お茶の感想:
温州人の茶友の6批(第6作目)の熟茶。
前回の記事から1ヶ月経った。
+【温州人第六批熟茶2018年 その1.】
生産現場のミャンマーでは微生物発酵のための最後の加水を終えて、自然乾燥させて、熟茶のナマ(生)の散茶として完成している。そのサンプルが少し西双版納に送られてきた。
ナマというのはまだ火入れしていない状態で成分変化が不安定だから、圧餅加工の蒸気の熱で安定させた。蒸し時間は9分で自分基準の生茶と同じ。なので熟茶にしては短め。
晒干(天日干し)1日。涼干(陰干し)10日。
温州人6批熟茶
圧餅の成形には失敗しているが、味への悪影響はないだろう。
これで一応市販されている熟茶と同じ状態になった。
温州人は過去一番良い出来だと評価していたので、自分も期待したけれど、圧餅の蒸気で温まったときにアルコール由来の糠味が強くて、ダメかもしれないと予感した。
試飲
左: 熟茶のナマの散茶
右: 圧餅後
念のために散茶と圧餅のを飲み比べてみたが、大差はない。
これまで飲んだ中でもっとも甘い熟茶かもしれない。
味に悪いところはなく、口感には清潔感がある。
しかし、”麹味”もあれば”カラスミ味”もある。
温州人の熟茶の4批・5批と比べても、もっとも”麹味”と”カラスミ味”が強い。
市販されているメーカー産の熟茶にもこういうのはある。
飲んだことのある味だな・・・と記憶をたどってみた。
+【老茶頭プーアル茶磚06年】
+【醸香老茶頭散茶90年代】
いずれも茶頭の熟茶。
「醸香」は無名だったから仕入れたときに自分が名付けたのだけれど、名前のとおりで酒粕っぽさがあった。アルコール由来の”麹味”に似ている。
オレンジっぽい茶葉
オレンジっぽい色も『醸香老茶頭散茶90年代』に似ている。
一煎め
二煎め
茶壺で淹れてじっくり飲んでみた。
3煎めくらいまで濁る。
サラッと薄めに淹れると果物の梨みたいな感じ。
濃く淹れると”麹味”と”カラスミ味”が出てくる。
麹味は、どんな熟茶にも多かれ少なかれあるもの。
このお茶の麹味はどちらかというと好感が持てる。麹味にも良いのと悪いのがある。美人とブスがある。
温習人はアルコール由来のものは揮発するから、保存熟成の過程で消えると言っている。実際に1年間保存した4批には無くなっていたが、できたてのときは有ったらしい。無くなるのではなくて変化するというほうが正しいだろう。変化して美しい香りになるのなら、むしろ意識して麹味の出るようにつくったほうがよい。
葉底
葉底に緑色の発酵不十分なところが残っているのは、温州人の熟茶の4批・5批にもあった。
緑色のところは、長期保存のときにじわじわ酵素反応による熟成変化がすすむから、これでも良いのかな・・・。
この『温州人第六批熟茶2018年』はそこそこ美味しい熟茶にできている。
そう。問題はそこじゃないのだ。
問題は、茶頭と似たような味が出ているところ。
茶頭
『醸香老茶頭散茶90年代』の茶頭 2013年6月撮影
われわれが試みた新製法の渥堆発酵の茶葉は、大きな木箱の中に囲ったり、布や竹籠で包んだり、サーモスタットで温度・湿度を自動管理したり、こまめに加水を調整したり、茶葉を撹拌したり。メーカーの一般的な渥堆発酵よりもずっと人工的にコントロールしている・・・・はずだ。
茶頭は、大量の茶葉を渥堆発酵させたときにできる。
渥堆発酵
茶葉の山の底の方は水の逃げ場がなくて、茶葉が余計に水を含んで、茶葉と茶葉がくっついて塊になって、黒麹などの好気性細菌が息苦しい状態になって、息苦しいのが平気な酵母が水に溶け出した茶葉の成分を分解して、糖質をアルコールにして、その副産物として麹味につながる香りの成分ができる。
渥堆発酵の後半のゆっくり茶葉を自然乾燥させる段階で、茶頭の内部に残った水を求めて麹菌類がまた戻ってくるけれど、根っこみたいな菌糸が茶頭の表面から中心部まで掘りすすんで新たな発酵のサイクルが始まる前に乾燥してしまうから、息苦しい酸欠だったときにできた風味が残って定着する。だから茶頭は偏った風味になる。
製品にするときは、わざわざ篩にかけて散茶と茶頭を分けてから固形茶に加工する。なので茶頭は単独で製品化されることがほとんど。
渥堆発酵6批
『温州人第六批熟茶2018年』2018年10月温州人撮影
新製法は渥堆発酵をより人工的にコントロールして、茶頭をひとつもつくらないように工夫していながら、できた散茶が茶頭と同じ味の熟茶になったのはどういうこと?
ここが問題。
つまり、コントロールできていないということ。
4批・5批に比べて6批に”麹味”や”カラスミ味”、つまり茶頭の味がより濃く出た原因は、茶葉の量が多かったから。それまではせいぜい20キロ以内だったのが6批から急に100キロに増量している。
茶葉が多いほど活動する微生物の人口も多くて、その分大量に酸素が消費されて二酸化炭素が吐き出される。微生物発酵の小部屋や木箱の通気が悪くて酸欠になっていたのだろう。
加水した水の量が多すぎて酸欠になったのが茶頭で、通気が悪くて酸欠になっていたのが6批の熟茶ということ。
渥堆発酵の発熱
渥堆発酵6批
微生物の中には酵母や乳酸菌のように息苦しいのが平気なのがいて、そのときはそれなりの仕事をして結果を出すから、衛生的に問題さえなければ、これもお茶の味の個性と解釈できる。
偶然ではあるけれど、この6批はそこそこ美味しい。
このまま技術を高めて7批・8批・9批・・・と経験を重ねてゆくと、もっと意図した風味に持ってゆけるだろう。
では、なにが不満で「このやり方はダメ」と否定して根本からやり方を変えたくなったのか?
茶友たちからひとり離れてでも違うやり方を模索したくなったのか。
微生物発酵に対する自分の勘違いとはなにか。
つづきの話は別の記事にバトンタッチする。

ひとりごと:
他人がわかるように話すのはカンタンじゃないな。
自分が見たり経験したりして辿ってきた思考の過程を、それと同じ道を辿って話をするしかなさそう。
真理を追求するフリをして商売するのが目的なら、他人にわかりやすいように事実を曲げてしまうだろう。
広告というのはそのへん巧妙で、発信側が事実を曲げたのではなくて、視聴者側の無知を利用して誤解をうまく誘導している。
学生時代に広告の仕事がカッコよく見えて憧れたことがあったけれど、今は軽蔑している。

温州人第四批熟茶2017年 その1.

采茶 : 2014年秋・2015年春
加工 : 2017年9月・10月
茶葉 : 易武山落水洞古樹秋茶+老曼峨古樹春茶
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
第4批熟茶
茶葉

お茶の感想:
昨年の秋にミャンマーで微生物発酵された熟茶。
木箱と布袋の新製法で温州人の茶友が醸している。
木箱発酵は温州人の茶友が早くはじめて、一歩も二歩も進んでいて、最新のはすでに7批までできている。
この製法を東莞人の茶友がわれわれの地元の西双版納でも再現しようとして、版納の不動産王の茶友も巻き込んで、設備を整えて茶葉を手配してすでに2批めの発酵が終盤にかかっている。
しかし、自分なりに考えた結果、「このやり方はダメだろな」と否定しだしたから、茶友たちに冷水を浴びせたカタチになった。「新製法でイケる!」と言い出したのは自分だったから、無責任かもしれない。
当然の結果として今はひとり孤立している。
ま、よくある展開なのだ。
ひとりぼっちは慣れている。
新製法の木箱発酵
温度と湿度のセンサー
新しい試みの過程で、小さな間違いに気付きだして、大きな方向転換では済まない、もっと根本のところからやり直さなければならないことになる。どんな方面の仕事にも共通してあることだろ。
投資で言うところの”損切り”というやつだ。
決断を遅らせるほどに負債がふくらんでゆくが、心理的には方向転換だけで済ませたい気持ちが強くなってゆく。
この2週間の間に、温習人の茶友とだけはSNSを通じて討論が続いていた。
実は彼も経験を通して同じ間違いに気付いていたのだ。
合計したらすでに200キロを超えている新製法の熟茶を捨てなければならなくなる可能性をチラチラ見ながら、間違いを認めるのは勇気がいる。
間違いに気づいてそれをどう修正するか。
この瞬間の決断と深い考察が、将来の仕事の結果を天と地に分ける。
鉄瓶と茶壺
さて、今回試飲する『温州人第四批熟茶2017年』だが、すでに7批までできているのにわざわざ1年前の4批を試飲するのは、散茶のまま1年間熟成させたことによる変化が大きくて、その風味にいろんなヒントが隠れているからだ。
温めて水気を切る
散茶を自然乾燥させて保存しているので水分が多く残っている。生茶ならもしかしたら緑黴が発生してダメになるのに、熟茶はまったく平気なのは麹菌のつくった天然の防腐剤が効いているせいかもしれない。
生茶と熟茶の黴
以前に紹介したことがあるが、タイのチェンコーンのメコン川沿いの定宿に、お菓子の紙箱に入れて保存していた生茶と熟茶。冬は西双版納よりも気温が低くて湿度が高い。半年ほどで生茶には緑黴がびっしり。熟茶は変わりなし。飲んでみても味に悪いところほとんどなし。

一煎め
湯をかけた葉底から甘いバニラの香り。
茶湯はビオフェルミンのような整腸剤の香り。
味はお汁粉の小豆風味。とろんと甘くて、舌触りはサラッとしていて消えが早い。清潔感がある。
食品衛生のための成分分析をいずれしなければならないが、その前に、味や香りに違和感がないかどうかを見るのが大事。舌や鼻のセンサーは敏感だし、”美味しいお茶”は舌や鼻が決めるから。
成分分析の結果が安全でも不味いお茶はたくさん流通している。
(毎回の発酵ごとに成分検査して証明証をもらっているはずはないと見ている。)
3煎め
4煎め
3煎め4煎めをじっくり抽出して濃くしてみた。
味や香りに問題はないが、このときの茶湯の色はちょっと黒すぎる。
温習人はこれで良いと言うが、自分はそうは思わない。
湯をはって鉄瓶の上に
蒸し煮
さらにじっくり抽出するために茶壺に湯をはって鉄瓶の上で蒸す。
7煎め
7煎め。茶湯の色が明るくなって、このときの風味にちょっと違和感がある。
自分なりにわかりやすいように名付けると”カラスミ味”。あのボラの卵巣を塩漬けしたやつのタンパク質の風味にある独特なやつ。
この風味が最新の『温州人第六批熟茶2018年』にもっと強く現れたのだ。
原因はわかっているが、別の記事に書くことにする。
カラスミ味のあるのは最初のほうの煎の葉底に”糠味”が同時に現れる。ぬか漬けの臭味に似ている。
6批にはこのカラスミ味と糠味が両方はっきりと現れているが、この4批には糠味はまったくない。バニラのような甘い風味になっている。
糠味は酵母が糖質をアルコールにするときに発生するもので、アルコールは蒸発するから、4批の1年間の保存の間に蒸発したというのが温州人の見解。
どうなのかな。
葉底
葉底
葉底に色のむらを見つけた。
揉捻でよじれた柔らかい茶葉を破らないようにそっと開くと、内側のほうの色が緑っぽくて、発酵がしっかりできていない色が残っている。
微生物発酵の加水や温度や湿度や通気や時間の加減などを調整して、微妙なバランス点を探る試みをしてきたわけだ。
だが、それは考え方として根本的に間違っていた。

ひとりごと:
微生物が特定の成分を目的にした薬品をつくのではなくて、食品をつくるということ。そのすべてを人の身体が取り入れるということ。
発酵食品とはなにか。
やっと入り口に立てたかもしれない。

刮風紫叶青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月28日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 紙包+竹皮包
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮白磁の茶杯・鉄瓶・炭火
手の茶葉
茶壺に茶葉

お茶の感想:
北京人の茶友のお茶。
2018年春の刮風寨の茶王樹の古樹でつくった生茶。
この記事の後半に登場している。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.】
それから半年経っている。
圧餅したての「変な味」と言っていたのは今はもうない。
それを確かめるのではなくて、茶王樹の品種特性を確かめる。
今年の秋につくったオリジナルの紅茶に似ているかもしれないから。
+【刮風秋水紅餅2018年】
茎がひょろっと長いところや、葉が細長くて揉捻で縦にねじれているところや、そしてなんとなく色がヘンなところ。紫っぽいので北京人の茶友に電話して聞いたら、やはり鮮葉のときにそうだったらしい。
茶壺と鉄瓶
一煎め
茶湯の色
このタイプのお茶にはやや酸味があるけれど、このお茶は甘めのグレープフルーツみたいな味。バランス良ければすべてよし。
葉底
茶湯の色2
茶葉の色も茶湯の色も、うっすら紫が入っているような感じ。
濃いめに煮出すとわかりやすい。
このような茎の長いカタチの茶葉は、沸騰させない温度でじっくり抽出することで甘味が増して美味しい。
煮出す
茶湯の色5煎め
葉底
紫っぽい茶葉にもいろいろあって、オレンジっぽいのが混ざるのや、やや紺色っぽく毒々しいやつや、緑と完全に混ざり合って暗い緑色のやつなど。これは緑と混ざったやつかもしれない。
参考の写真ページ
+【易武山 品種のオアシス】
葉底の茎
新芽のは底
葉底の大きな葉
4月28日の采茶なので、刮風寨にしてもちょっと遅めの春だが、葉底は小さな若葉だけでなく大きく開いた茶葉も柔らかくて指でカンタンにすり潰すことができる。旬を保っている。采茶のタイミングがよい。製茶もよい。
今年の春に2キロだけのお茶。

ひとりごと:
このお茶なら仕入れてもよいけれど、2キロしかない宝物に値をつけさせるのだから、すごいことになるな。

蛮磚古樹青餅2018年 その1.

製造 : 2014年04月10日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明山曼庄国有林古樹
茶廠 : 農家+孟海の工房+北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 紫砂の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
餅面表
餅面裏

お茶の感想:
なかなかいい茶葉。
いい茶葉とすぐにわかるのは”蛮磚”(曼庄)という茶山が自分のホームグラウンドにしている漫撒山からそんなに遠くなくて、品種特性が似ているからだろう。見た目が、漫撒山の刮風寨や弯弓に古来からの大葉種と同じ系統のやつ。
蛮磚山は西双版納の旧六大茶山のひとつで、象明という地域に属している。象明は”倚邦山”や”革登山”や”曼松”の香り高い小葉種や中葉種が有名だけれど、地理的には漫撒山からそんなに遠くない。
ものすごく簡略化した地形でこの2つの地域を見ると、象明と漫撒山(易武)には南北縦に山脈があり、その間を川が流れて大きな谷を形成して、2つの山脈を分けている。
餅面裏
(その川。奥の方にダイ族の村の古い瓦屋根が見える。)
漫撒山の高いところから大きな谷を見下ろして、向こうに見えるのが蛮磚山や倚邦山になる。
この記事にスケール感がわかりやすい写真がある。
+【革登単樹秋天散茶2014年 その1.】
北京人の茶友は2015年から蛮磚に腰を下ろしてお茶をつくっている。
といっても、彼は商売人なので自分の手を動かさない。太っているから身体の動きが悪い。農家がつくるのを側で見るだけ。圧餅も工房の職人の作業を見るだけ。オリジナルな印刷の包装紙に包んでオリジナルなお茶が出来上がる。
小さなお店のオリジナルはだいだいそうなのだけれど。
ま、他人の商売には口を出さない。
「ただ、このやり方ではお茶の勉強はできないぜ!農家のつくるのを側で見ていてもその仕事が良いのか悪いのかわからない。」
というのがわかっているから、ここへ持ってきて試飲させるのだよな。
茶葉
一煎め
1煎目から3煎目まで煮え味があった。
お茶をグツグツ煮たような野暮ったい味。
3煎めまで杯の底に黒い粉が残る。鉄鍋で茶葉が焦げた粉。
これは殺青でお茶を煎る鉄鍋を一回ごとに洗わないから出てくる。
北京人に聞いてみたら、3回に一度だけ洗って、洗うときは金タワシで鍋の表面を擦っているらしい。
メンテナンス方法が間違っている。
1回ごとに鉄鍋に軽く水を流して、どこの農家にもある竹箒のブラシで水といっしょに汚れを掃き取るだけでよい。表面の黒鉄の酸化皮膜を削り取らないようにするべき。
3煎め
9煎め
4煎めくらいから製茶の悪いところが流れ去って透明感が出てきた。
美味しいので9煎か10煎までじっくり飲んだ。
刮風寨の古茶樹にも負けない素質を感じるので、聞いてみたら、蛮磚の一般的な古茶樹ではなくて国有林の森の中のやつだった。村から30分車で走ってから山道を歩いて30分というから、刮風寨の森に比べたら規模は小さいが、原生林に囲まれた茶地らしい。
やはり森のお茶だから、新芽・若葉の成長と采茶の人員確保と天気とのタイミングがなかなか合わなくて、1日の采茶でできた晒青毛茶は2キロ。春はこの2キロがすべて。
葉底
葉底
北京人の持ってきたサンプルはこの他に2種ほどあったけれど、このお茶だけじっくり飲んで終わった。
いい茶葉に出会ったらこうなる。
いっぺんにいくつもお茶を飲むのは、どのお茶もそこそこの質ということ。かもしれない。

ひごりごと:
川の向こうに見えていた村。
ダイ族の村
ダイ族の村
ダイ族の村
2014年の秋に散歩した。
その後ここに行っていないけれど、瓦屋根はまだ残っているのかな。
魚とり
この日、その川で魚捕って食べたのだった。
今は少ししか獲れなくなったと聞いている。

版納古樹熟餅2010年 その39.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 通気・密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラス杯・鉄瓶+炭火
竹皮の籠
内側布袋
宮廷プーアル熟散茶03年

お茶の感想:
熟茶は微生物発酵でつくられた大量の酵素による成分変化がすすむから、長期保存の味の変化は生茶よりも大きく現れるはず。
その変化は保存の環境に影響されるから、同じ茶葉でも2箇所の異なる環境に置けば2つの味になる。
もちろん常温保存だから、日本でも上海でも西双版納でも季節や天気の変化の影響は多少なりとも受ける。それぞれの環境でそれぞれの味になれば良いと思うので、そこは気にしない。
それよりも、今回注目するのは保存の入れ物をどうするか、通気をどのくらいに制限するかという問題。
遮光して保温性があって(温度をなるべく安定させて)乾燥を保つのは基本中の基本だが、ある程度の通気があったほうが良いのを経験していて、さらに、熟茶はしっとりした感じの空気が良いという例もいくつか見ている。というか味わっている。
”ある程度”の通気とはどの程度なのか?
曖昧だよな。
曖昧でも大丈夫。むしろ曖昧な解釈をしたほうが面白いというのが今日の話題。
上の写真の竹で編んだ籠に入っているのは、『宮廷プーアル熟散茶03年』(卸売部)の西双版納熟成。
最近密封保存をやめて通気の良いカタチにした。
密封保存は、食品用の大きなプラスチックバッグに7キロの散茶を入れてダンボール箱に入れて封をしていた。年に一度ほど開けて少しだけ茶葉を取って試飲しているので、完全な密封とは言えない。
そもそも、茶葉なんてミクロの繊維の毛細血管に空気も水分も持っているのだから、完全密封なんてできっこない。それを前提に話をする。
例えば、お菓子の缶に保存したのを紹介したことがあるが、年に一度でも開封したときに空気が入れ替わるだけで十分な通気を与えると考えている。酵素反応による茶葉の成分変化にとっては。
竹皮包
紙包+竹皮包+ダンボール箱、あるいは、紙包+麻布袋包+ダンボール箱、これがこのお茶の西双版納熟成。
+【版納古樹熟餅2010年】
茶葉倉庫にしているアパートの一室は窓を締めて遮光して、ドアの隙間を専用のテープで埋めて、湿度50%から65%くらいに保つようにしている。ダンボール箱ごと部屋という入れ物に入っている状態。
中国でプーアール茶を売る店にゆくと、店の棚に紙包みのままの餅茶や磚茶や沱茶が並べてあるけれど、これは通気がありすぎてダメ。外の匂いを吸ってしまうし、温度や湿度の大きな変化に晒される。間接的にも日光や照明が当たって表面を焦がしている。買うときは倉庫のダンボール箱の中にあるのを出してもらうとよいだろう。
真空パック
3日前に倉庫を整理していたら、食品用真空パック機でパックしたのが一枚見つかった。
茶葉の隙間や繊維の管の空気があるので真空とは言えないが、袋の内側の空気が少ないと空輸のときの温度や気圧の変化の影響を受けにくいから良いと考えている。到着してからなるべく早めにパックを開封して通気のある入れ物に移すのだが、この一枚はパックしたまま郵送するのを忘れて放置していた。たぶん1年から1年半ほど。はっきり覚えていない・・・。
版納古樹熟餅2010年
開封して、外の空気を吸わせて今日が3日目。
紙包+麻布袋包+ダンボール箱で通気を許していたのと比べる。
実は、開封した初日に飲み比べたときは味の差がはっきりしていたが、3日目の今日はそれほどでもなくなったので、慌てて記録する。
この違いが、”ある程度”の通気を”どの程度”と考えるかの参考になると思う。
同じ茶葉、同じ水、同じ茶器、同じ保存場所。なので通気の条件の違いが浮き彫りになるはず。茶葉の重量はきっちり計って4.2グラムずつ。餅茶の崩す部分もほぼ同じところ(円盤型の外側や内側で茶葉のコンディションがやや違うから)にした。
一煎め
二煎め
4煎め
6煎め
左: 通気
右: 密封
左: 葉底から立つ香りが強い。
右: 葉底から立つ香りが弱い。
左: ビールのキメ細かい泡のような軽やかな舌触り。
右: 泡のないビールのようなちょっと重たい舌触り。
左: 香りが麹っぽい(ビオフェルミンっぽい)。
右: 香りが花っぽい。後にお香っぽく変化。
カンタンに言えば通気のお茶は甘くてとろんとしていて、密封のお茶は甘くない分やや酸っぱくてサラッとしている。
煎を重ねるほどにこの差がなくなっていって、5煎めにもなるとかなり集中して味見しないとわからなくなった。
密封を解いた茶葉がたった3日間で微生物が増殖するような温度・湿気の高いところに置いていないから、やはりこの2つの差が縮んだのは酵素反応だろうなと思う。
密封を解いた茶葉が外の新しい空気に触れて、なんらかの反応をすすめたのだ。
葉底
左: 通気
右: 密封
葉底に差は無い。
よくある勘違いで、茶葉に微生物が生きていると解釈していて、それなら密封して放置すると窒息して、一方は生きた微生物が茶葉の分解・消化吸収をすすめて、この2つの差は1年の間にもっと大きくなるはずだ。

ひとりごと:
ただ、そうとも言い切れない結果がある。
重量の違い
西双版納の通気を許した熟成の一枚。
2010年に圧餅後1ヶ月ほどして計ったときには396g。
2018年の本日計ったら372.5g。
24gほど減っている。
熟成の変化で繊維質が変わって水分を含むチカラがなくなって軽くなるのだが、24gの差は大きすぎるだろ。
やっぱり喰われているのかな・・・。

刮風秋水紅餅2018年 その2.

製造 : 2018年10月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と店長
工程 : 紅茶
圧餅 : 2018年10月25日
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 紫砂の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
圧餅の蒸し
成形後の蒸し
石型
餅形の厚み
晒干

お茶の感想:
圧餅した後の試飲。
10月25日にしたから、もう2週間経っている。
この数日は朝の11時頃まで曇り空で、それから太陽が雲を蒸発させて昼には快晴。毎日同じ展開。完全に冬の天気になった。
西双版納冬の朝
西双版納冬の昼
あれは雲じゃなくて霧なのだな。地域全体を朝霧が覆っている。
圧餅は12枚のうち2枚失敗。
2枚はゆるゆるでお客様の手元にゆくまで餅形を留めることができそうにないので、崩して40g1袋で出品しようかと思う。10枚はまあなんとか形を留めている。
圧餅
秋茶の繊維の弾力と粘着力のなさと、わかりきっていたことだけど勝てなかった。
春の紅茶に比べて餅形に厚みがあるので、石型の底の窪みのサイズが合わなくて、圧したときのチカラがちゃんと伝わらないのが原因。次回のためにサイズの異なる石型を探しておきたい。
蒸し時間を長くしたらもっとカチッと締まるけれど、茶葉をあまり変化させたくなかったのだ。晒干した後の散茶の仕上がりが思ったよりも熟していたから。
餅面表
餅面裏
鮮葉からこの茶葉はいい予感があった。
2日続けて采茶できて倍の量をつくれたらもっとよかったけれど、摘み時になったタイミングの新芽・若葉がもう無いのだから仕方がない。有ったとしても晒干の最終日は午後から雨になったから、やはりうまくできなかった。
天気が回復した10月末から別の茶山の農家に電話してチャンスを伺ったけれど、すでに新芽・若葉が硬くなっているらしい。柔らかいのを探して選んで摘んでも一日の収穫が5キロに満たないから、製茶がうまくゆかない。
秋のお茶はこれで終わり。
必要以上に魚を獲らないほうが将来の資源が増えるのと同じで、茶葉をむやみに摘まないほうがいい。ま、みんながそうしたら効果があるのだけれど・・・。
鉄瓶と炭火
さて、試飲。
圧餅したてのこの時点では味が出ない。香りも弱い。実力発揮するには少なくとも半年から一年はかかる。
熟成壺に一年間寝かせてから出品することにした。
いや、理想をいうと10年寝かせてから出品するべきなのだ。
熟成してこそ真の味わいが出てくるというのもあるけれど、お茶をちゃんと評価するのには時間がかかるというのもある。一年やそこいらでわかる良し悪しはほんの一部だから。
品評会なんかで高得点のお茶は、その場で評価できるわかりやすい良さを主張するようにつくっているのであって、一年ほど飲み続けてじわじわわかる良さなんて無視されている。評価されないし商品のウリにはならないし経済的じゃない。
ただ、10年となるとお茶の変化よりも人間の変化のほうが大きいよな・・・。
例えば、はじめは良いと思っていたお茶が、しばらく飲み続けていると欠点が見えてきて、またしばらく飲み続けると欠点が欠点ではなくて飲む側の経験不足による誤解だというのがわかってきて・・・という展開が一年のうちにある。そのたびに価格を変えるわけにもゆかないから、一年くらいかけて評価のこなれるのを待つのは妥当だと思う。
一煎め
二煎め
三煎め
茶湯の色
5煎め
ほんわりした感じ。
吸う息・吐く息ごとに薄荷の涼しい風が吹く。
3煎め以降くらいの甘さがなんとも良い。4煎・5煎・6煎・7煎・8煎・9煎・・と甘さが落ちない。ずーーっと飲んでいたい感じ。平日の仕事の終わりに1時間だけお茶するくらいじゃ味わえない。
圧餅前にも話していたけれど、2011年の秋の紅茶そっくり。
+【紫・むらさき秋天紅茶2011年】
古茶樹のお茶は茶山ごとの品種特性がウリだけれど、山の違いを超えてけっこう似ている。製法が同じというのが前提だけれど、雨の多かった年の秋の茶葉の持つ体質が共通しているのだろう。
葉底
これだけ太く長い茎の茶葉を手もみで紅茶に仕上げるなんて、なかなかのものだ。

ひとりごと:
一年のうちに気が変わって、出品しないという展開もありうる。
いや、出品数を減らすという手もある。
やりたい放題だよな。

老撾高幹古樹2018年・秋天 その1.

製造 : 2018年10月(采茶)
茶葉 : ラオス・ポンサーリー県・孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨付近
茶廠 : 瑶族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶+炭火
ラオスの空
森
森の入口

お茶の感想:
刮風寨の山の裏はラオスで、ポンサーリー県になる。
刮風寨から続く山には瑶族が多く住んでいて、あちこちに村がある。
地元の瑶族たちは許可なしに親戚や友達を訪ねて行けるが、中国人といえども茶友たちはそういうわけにはゆかなくて、”辺民証”という許可書を取って国境を超える。
パスポートで超えられる大きな通関は限られていて、かなり遠回りすることになるが、辺民証で超えられる小さな通関はあちこちにあって、仕事で行き来する人たちには便利になっている。
刮風寨の春のお茶づくりが終わる頃に茶友たちがこのあたりを訪ねてきた。
目的は高幹の茶樹を探すこと。
といっても、彼らが森に直接入って探すなんてことはできない。道に迷ったら死ぬ。人づてに瑶族の村を訪ねて、そんな茶樹の群生する森はないか聞いてまわる。
茶樹上
茶樹下
高幹の茶樹はこんな感じ。
この写真のは中国側の刮風寨の茶坪の奥地。
単樹1号・単樹2号よりももっと背が高いが、ただ、あまり美味しくない。
+【刮風寨単樹1号2018年 その1.】
+【刮風寨単樹2号2018年 その1.】
この高幹の茶樹に会いにゆくために森の中のいくつもの尾根を超え谷川を渡ったが、銘茶は美人。地域の気候・山の地形・生態環境・土質、いくら良いとこに生まれ育ったお嬢さんでも、生まれながらの天性の素質のほうを評価される厳しい世界なのだ。
山道
川
鉈で密林を切り開かないと進めないところもある。毒蛇も毒虫も毒のトゲを持つ蔦もみんな密林の緑の召使いたちで、生きものが死んで足元の土になるのを望んでいる。彼らの純粋な殺意にはゾッとするものがある。
「ラオス側の森の中にいくらでも高幹の茶樹がある。」
と聞いているものの、黙っていて向こうからやって来るものではない。高幹の茶樹は収穫が難しくて少量で、商売にならないからだ。
刮風寨に近いラオス側の山でも甘いお茶ができる。なので産地偽装の茶葉の需要が大量にある。ほんの数キロではなくて数百キロの需要が農家にとってはうれしい仕事。なので多くの森が開拓されて小樹の農地になる。
小樹の茶樹
この写真は刮風寨の小樹の茶地。小樹といえど樹高は2メートルほどある。樹齢は20年弱。山の峰から中腹あたりまで原生林の緑で覆われていて、茶樹以外の農作物は無い。まさに理想の生態環境。こんなお茶は美味しいに決まっている。
山頂付近の森はいわば山の心臓であり血液の循環の役割を担っている。原生林が刈られて植林されたりすると心臓が止まる。栄養のめぐりの悪い山となる。
小樹の茶樹
この写真のような理想の環境が残っているのは偶然ではない。国有林を保護する国の活動と、刮風寨のお茶をブランド化して商売する業者と、経済活動に比較的熱心でない瑶族のおっとりした性質と、うまい具合に利害が噛み合ってこうなるわけで、山を超えてラオス側を見てきた茶友たちの話では、そうはうまくゆかないらしい。国の管理も茶商の目も届かないところだから、農家は短期的な利益を追求して原生林を刈りつくして見るも無残な農地が多いらしい。山の心臓が止まっているのだから、茶樹への栄養のめぐりも悪くて、数年でお茶の味は落ちるだろう。お茶の味が落ちるのが先か、流行で膨れ上がった需要が落ちるのが先か、どちらにしても短期的利益を追求するのが得策になるのは、産地偽装のお茶の宿命である。
そのようなわけでラオスの農家に高幹の茶樹から茶葉を採取してもらうことをお願いするには、取引条件の良い提案をするしかない。
瑶族の帽子
茶湯の色
泡茶
葉底
昨年にラオスの森の中で20本ほど群生している高幹の茶樹が見つかって、人の歩ける道をつくって森に入れるようにして、周囲の高い木々を伐採して草を刈って、今年の春から採取がはじまったお茶があった。
茶友がラオスの村を訪ねたときに製茶したての晒青毛茶(天日干し緑茶)が10キロほどあって、すぐに交渉した。2日後に刮風寨に運ばれてくるはずが、運搬途中で深センの茶商に横取りされた。もっと良い価格が提示されたのだろう。
情報が漏れている。
ラオスの農家と親戚関係の刮風寨の農家がスマホを使って微信(WeChat)で紹介してしまったのだ。
高幹の茶樹
(一番手前の白い幹が茶樹。刮風寨茶坪の奥地。)
幹
この秋にも数キロつくられたが、今回もこっちには回ってこなかった。
刮風寨に滞在中に少しだけ分けてくれたサンプルを飲んだ。それが上の写真。
栄養の充実っぷりが見てわかる葉底の緑色の濃さと茎の太さ。
少し家に持って帰ってきたので、なじみの茶器を使ってじっくり飲んでみる。
『老撾高幹古樹2018年・秋天』老撾とはラオスのこと。
ラオスの古樹茶
泡茶
古樹味はある。
古樹味とは、これと形容できる味ではなくて、あえていうと唾液みたいな味。腹ペコでごちそうを想像して出てくるヨダレの味。水よりも口に親和性があって、舌に溶けて、消化酵素がお腹を癒やす。
でも、このお茶はブスだった。不味い。嫌な苦味が舌に残る。
ラオスよりもミャンマー側の山に多いタイプのブス。茶文化のお茶ではなくて生活のお茶レベル。
葉底
高幹は、枝分かれが少なくスラッと上に伸びるように育った証だが、この理由が大事で、森の深いところで人知れずひっそり育ったか、農家が大事にして茶摘みや台刈りを自主規制したか、不味いので誰も見向きもしなかったか。
このお茶は誰も見向きしなかったやつだろう。
深センの老板が買ってくれてよかった。

ひとりごと:
口直しにこのお茶を飲んだ。
+【刮風秋水紅餅2018年 その1.】
秋水紅茶
圧餅後の乾燥4日目で、ほぼ完了。
カタチの崩れた余りモノの茶葉で180gに満たないから自分用にしているやつ。
泡茶
美人の唾液は甘い。
錯覚なんかじゃないだろ。物理的に証明されるときがくると思う。


茶想

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