プーアール茶.com

大益沱茶05年 その1.

製造 : 2005年9月
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド
茶廠 : 孟海茶廠民営化後
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 沱茶100g
保存 : お菓子の缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯・鉄瓶+炭火
お菓子の缶で熟成した茶葉
生産日付
大益沱茶05年プーアル茶

お茶の感想:
前回につづいてお菓子の缶に8年間眠っていたお茶。
+【大益沱茶05年プーアル茶】
生茶のプーアール茶。
ひとことで言うと安モノのお茶だけれど、美味しければよいだろ。
国営の孟海茶廠が民営化されるときに準備されたのが”大益”ブランドで、これまでは開放されていなかった中国大陸の市場に向けて大衆化した製品を供給することになったから、当然それまでの産地では足りないので新興産地の茶葉が使われている。
茶湯の色
正直に言って不味い。
雑味やアク味が邪魔するためにゴクッと強制的に飲み込まないと口から消えない。舌にはシワシワ渋味が残って消えない。
8年間も忘れたまま熟成していて、もうちょっとなんとかなっているかと思ったけれど・・・。
葉底
原料の茶葉の質は悪くない。
製茶が悪い。圧延加工が悪い。
製茶は焦がしているし、圧延の蒸しすぎた煮え味もある。
しかし、2005年ならこれでも標準的な大手メーカーの品質。
製茶はダメでも茶葉の質が良いから煎はつづく。
5煎めくらいから甘味と蜂蜜のような香りが出てくる。焦げの煙たさがスパイスになって、煙草吸う人がこの味を好む傾向がある。
西双版納の南糯山とか布朗山とか巴達山とかそのあたりのお茶に似ている。
ふと思いついてこのお茶。
+【南糯古樹青餅2010年】
原料の茶葉は似ているはず。
南糯山古樹青餅2010年
南糯山古樹青餅2010年
残念ながらこれも不味い。
製法の問題はそれほど見つからない。でも同じような不味さがある。やはり品種特性が生茶に向いていないのだろう。
西双版納の実生(花が咲いて実が成るところから苗が育つ)の古茶樹は、人間の兄弟がそれぞれ異なる外見や性格になるようにバラエティー豊かになって、クローン栽培のような単一化はできないが、茶山を選ぶことでざっくりと同じグループを選べる。
生茶に向いている茶山。向かない茶山。
2013年くらいにそのことに気付いて、軽発酵をすすめた製法を『南糯蜜蘭青餅2013年』で試したけれど、結局それが最後のあがきだった。

ひとりごと:
南糯山が生茶をつくりだしたのは1980年代のこと。それ以前の数十年は緑茶と紅茶。もっと昔は微生物発酵させる黒茶の原料を提供していたはずだ。
大陸での需要に求められて、現在は生茶づくりの歴史がない茶山の茶葉で大量に生茶がつくられているけれど、いずれ淘汰される。はず。
南糯山の茶葉は紅茶や熟茶にしたほうがだんぜん美味しいから。

7592七子餅茶1999年 その1.

製造 : 1999年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド9級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : お菓子の缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興白泥の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
お菓子の缶の熟成茶
お菓子の缶

お茶の感想:
お菓子の缶に入れたまま押入れに仕舞って忘れていたお茶。
上海から西双版納に引っ越すときに売り切れたはずだが、おそらく円盤型が崩れて売ることができないようなアウトレットを手元に残したのだ。ということは、8年間は忘れていたことになる。
4種あるが、このお茶から飲んでみる。
+【7592七子餅茶1999年】
7592七子餅茶
7592七子餅茶
1999年の熟茶で、9級をメインに構成した粗茶葉が使われている。
微生物は粗い茶葉や茎のでんぷん質を好むので、この手の茶葉は散水してからの発酵の立ち上がりが早くて、茶葉が水を含むことで余計な変化の起こる期間が短くて、雑菌が入って腐敗するリスクも少なくて、それがサラッとした味わいになって現れるが、その一方で微生物が活発になりやすく高温になりすぎて、茶葉が焼けるというか煮える。
まさにそういうふうに仕上がっている。
泡茶
喉にイガっとくる刺激があるのは、茶葉の質や製茶や発酵工程の仕事荒さが影響している。
1999年あたりは産地のお茶づくりが荒れていた時期なので、こんなものだろうと思う。刺激はやがてスースーとクールミントに変わるので、悪いこともない。
熟成による変化で気品が備わって、バラの花やお香のような香りがチラチラと薫る。これにはちょっと期待。このまま純化してゆくと上等になるだろう。
体感は穏やかでゆったり。
粗茶葉の栄養で手足の先の指先の毛細血管までもが開いて血が巡って身体のチカラが抜けてゆったりするが、旬の茶葉ではないため茶気が弱く、脳を揺らすような茶酔いの快楽はない。
茶湯の色
いい具合にチカラの抜けたお茶。
普段飲みにして疲れないお茶。
ちなみに、中国のネットショップを検索すると、同じ1999年の7592は一枚1980元(現在レート32500円くらい)で出品されていた。
ま、そんなものか。
お菓子の缶はしっかり密封できるので、茶葉が湿っていないかぎり乾燥気味に保存できる。失敗はまずない。入手しやすいので長期保存の容器としておすすめ。気温の変化の影響を受けやすいので、安定したところに置けばよい。押し入れは良いが、建物によっては陽の当たる側の壁だったり、湿気の溜まりやすい位置だったりすることもあるので、その点は考慮しなければならない。
熟成のコツは、忘れてしまうこと。

ひとりごと:
味を忘れないうちにこの熟茶を飲んだ。
+【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
泡茶
これだけを飲むと熟成を経た透明感が際立つが、『7592七子餅茶』の後に飲むとそれほどでもないと感じる。10年の差がある。
茶葉の素質の良さや茶気の充実ぶりは圧勝かもしれないが、濃いし、辛いし、ピチピチしていて若いというかまだ青いのだな。
枯れの味わいは年月にしか出せないということか。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その3.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
薪ストーブ
お茶淹れ

お茶の感想:
2017年1月のこと。
チェコの冬の薪ストーブで沸かした湯で、マルちゃんとお茶淹れ比べをしたとき、ヤカンの湯がグツグツ沸騰するちょっと手前の湯でお茶を淹れたら締まりのない味になった。
その時のお茶は紅茶の『巴達生態紅餅2016年』。
雲南紅茶
マルちゃんは、グツグツ沸騰してからの湯を使うべきだと主張する。
もしも少しぬるめの湯にしたいならグツグツ沸騰させてから茶海に移すなり、ヤカンのまま冷ますなりしたらよい。
例えば、沸騰していない湯の温度が97度で沸騰したのが98度で、そのほんの1度の温度差がもたらす差ではない。もっと大きな差がお茶の味に現れる。
沸騰した湯にしかない熱の振動があるらしい。
そう解釈している。
その振動があるかないかが問題。
刮風古樹青餅2018年・黄印
茶器と茶葉
2018年の黄印の圧餅の工程の”蒸し”をテストした茶葉。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
蒸して涼干・晒干して、蒸し時間をどのくらいにするのかの参考にした。
餅茶180gサイズなので、1枚分に満たない端数の100gほどが散茶で余って、それを蒸した。
同じ蒸し器の熱量で180gと100gとでは、単純に考えると1.8:1.0の蒸し時間で熱の通りは等しいはず。
3分半蒸して×1.8倍したら6.3分。6分18秒が180gサイズの餅茶の場合に等しい蒸し時間となる。
最終的には6分40秒蒸すことにした。
けっこう近い数値に勘が働いたのは、その前に小樹の茶葉でもっとたくさん蒸しテストをしていたから。餅茶の180gで4分くらいのもあれば9分くらいのもある。
鉄瓶と炭
沸騰する湯
泡茶
葉底
蒸しによる”蒸し味”が目立つのはほんの1ヶ月間ほどで、5ヶ月経った今となってはどのくらい蒸したのかをお茶の味から推測することが難しくなった。さすがに4分と9分には差があるが、5分と6分の差はわからない。
いや、違う。
こういうのは例えば7分13秒で茶葉の温度があるところに達して、そこで急速な変化が起こるというようなものだろうから、5分と6分の差はどうでもよいのかもしれない。
そうすると微調整なんてのはたいした効果を得ない。急速な変化が起こる温度なり時間なりのポイントを知って、そこを超えるか超えないかの判断が大事になる。
もしも急速な変化の起こるのがほんの数秒間のことなら、その中間で止めることはまず無理だろう。
グツグツ沸騰した湯なのかそうでないのかの差と似ている。
ということを最近になって気付いたので、今後の参考のために記事にしておく。

ひとりごと:
殺青の鉄鍋炒りの時間もそうかもしれないな。

倚邦古樹青餅2014年・秋天 その4.

製造 : 2014年10月28日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明倚邦山小葉種古樹
茶廠 : 易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 木製の茶箱
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯・鉄瓶+炭火
倚邦古樹青餅2014年・秋天
倚邦古樹青餅2014年・秋天
倚邦古樹青餅2014年・秋天

お茶の感想:
この茶葉、思っていたよりも良いかもしれない。
できた当初に気になっていた渋味が落ち着いてまろやかになっている。
『倚邦古樹青餅2014年・秋天』(卸売部)
温める
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
透明感があり、後を引く苦味が軽快で心地よい。
シンプルな味で、熟成4年目の安定した今となっては何度飲んでも新しい発見は少ないだろう。あまり膨らんだり開いたりしない味わいに華は無いかもしれないが、飽きが来ない。倚邦の村から離れた国有林の茶樹に品種のバラエティーが少ないことによると推測する。
このお茶の茶地は村から1時間半も歩く森の中にある。
倚邦山のような歴史のある茶山は、村の周辺ほど品種のバラエティーが多い。茶樹を選ばないで混采すると、いろんな個性の茶樹のいろんな味が混ざることになる。
易武山の麻黒や落水洞周辺、漫撒山の丁家老寨や張家湾周辺もそういう傾向がある。
かつて明代から清代にかけての貢茶づくりにおいて、品種の栽培実験が村の周囲で行われたせいかもしれない。
村から離れたところは、原生種が群生しているか、それとも清朝の貢茶の需要があった時代に新しい茶地として開拓され茶果(種)が持ち込まれて栽培されたので、そのとき母樹となった品種が選ばれていたら村の周辺よりも混生状態にはなりにくい。ミツバチが花粉を運んでくるにしても、遠く離れているため他所の血が混ざりにくいわけだ。
茶湯
葉底
昇りもしない沈みもしない、宙に浮く感じの秋の茶葉の体感。
生茶のわりに身体が温まる。
小葉種なりのやや強いアタックがあり、どっと汗が出てきた後に涼しくなって長袖を着たが、早春のお茶ほど寒くはならない。
ところで、このお茶は木の茶箱(内側トタン板貼り)に入れて熟成させることにした。
茶箱熟成
茶箱
生茶の餅茶数種をギッシリ詰めて18キロはある。
茶葉がたくさん集まると、お互いに湿気を調整したりして良い影響を与える。
陶器の壺熟成とはまた違う変化があるかもしれない。

ひとりごと:
苦味が甘味を誘う。
チェコ土の徳利
香取90
酒湯
寺田本家の香取90。9月9日の蔵出しのを入手した。
利き酒のような味の上等は知らない。
体感の良さと素朴な味わいでこの酒を選んでいる。熱燗ならではの大きな波に揺られて眠くなる。

刮風生態青餅2018年 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
茶壺
底敷き
茶針
道具
鉄瓶

お茶の感想:
道具には生命感が大事。
そこにあるというよりか、そこにいるという感じ。
茶葉にも生命感。
+【刮風生態青餅2018年】
茶葉餅面
お茶の味にも生命感。
茶湯
葉底

ひとりごと:
たぶん、生命と生命が交信して命の話をしている。
瑶族のアクセサリー
ラオスのバスケット
タイの布

易昌號大漆樹圓茶04年 その9.

製造 : 2004年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭
易昌號大漆樹圓茶04年

お茶の感想:
お茶の在庫整理していたら3枚出てきた。
+【易昌號大漆樹圓茶04年】
本部で再出品した。
(この記事をアップする前に売り切れ。9月8日)
易昌號大漆樹圓茶04年
2004年頃のお茶は農家も工房もメーカーも仕事が荒れていたから、現在オリジナルのお茶はこのお茶のクオリティーをはるかに超えている。
それを思うと、現在高級茶をつくる仕事はずいぶん改善された。
このお茶を仕入れたのは2008年だったと思うが、その当時の自分の基準では、これで十分なクオリティーだと思っていた。
お茶づくりに関わり始めた2009年から2018年のあいだに、自分も成長した。
嬉しいような寂しいような。
大きめの茶壺
崩した茶葉
昨日につづいて大きめの茶壺。
崩してあったサンプル茶葉が手元にあったのでこれを淹れてみるが、おそらく餅茶のほうが保存状態が良いので、参考まで。
洗茶
洗茶の湯で茶壺も温める。
洗茶はしてもよいし、しなくてもよいし。
現在のお茶はキレイにつくっているので洗茶しなくてよいが、2004年頃のは・・・。
このお茶は一軒の農家の晒青毛茶からつくって、ブレンドをしていないので、素性のはっきりした原料だからそれほど無茶苦茶なことにはなっていないけれど。
自分は洗茶なしで飲む。
1煎めの味は梅子香。これまでになかった香りが宿っている。
茶湯
2煎めはじっくり抽出。
飲んでみて、ま、こんなものかなと思った。
今になってわかるけれど、たぶん2004年の春の星のめぐりはそれほど良くなかった。旬の茶気の炎は上がらない。茶摘のタイミングが遅い。水質のキメ細かさが感じられずザラザラしている。
でも、どこかホッとする味。
茶壺
煎をすすめると蜂蜜のような香りと甘さが出てくる。しっとりした苦味とのバランスも良い。
葉底
手元のオリジナルの生茶の熟成は、このようにはさせない。
もうすでに違う方向を歩みはじめている。だいぶん距離が空いてきている。
いつかまた思い出したように2004年頃の生茶を飲んで、もっと距離が空いたことを知ると思う。
学べることは無いから、「これからはひとりで行け」と言われた感じ。

ひとりごと:
そのつもり。

易武古樹青餅2010年 その37.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・スペイン土の茶碗・鉄瓶+炭火
茶壺
パック熟成

お茶の感想:
大きめの茶壺で3煎くらいで出し切る淹れ方を生茶で試す。
+【易武古樹青餅2010年】
手軽な密封パックで熟成させているこのお茶。
室温の安定した棚にしまっているが、パックに保温力はないので布袋に入れている。ま、気持ち、おまじない。
試作バージョンで1キロサイズの餅にしていたやつ。
餅茶を崩して
茶葉3グラム
3gあるかないか。
10年熟成モノの生茶となると、蓋碗でサッと湯を切る淹れ方では1煎めのパンチ力に欠ける。4煎から伸びない。茶壺を使うのが良いが、普段は小さめの茶壺で煎を繰り返している。8煎くらいはいく。その煎ごとの変化も面白いけれど、今回は3煎で出し切る。
1煎めは茶壺に注ぐ湯の量を半分くらいにしてサッと出す。蒸らし時間20秒くらい。一番だしの感じ。
乾いた茶葉にいきなり熱い湯を浴びせると繊維が壊れて味が濁るから、湯を注いで茶壺を温めて、いったん湯を切ってから茶葉を入れて、蒸気で1分ほど蒸らしておくのが基本。
スペイン土の茶碗
南部鉄瓶と
後ろに見えるのは南部鉄瓶。1.5リットルほど入るのでガス火にかけて湯沸かしに使っている。一煎めはこの南部鉄瓶から直接湯を注いだ。
黒い茶碗はスペイン土の素材でチェコのマルちゃん作。
2煎めの湯は南部鉄瓶から小さな鉄瓶にバトンタッチして、炭火でじっくり熱を伝えた。
1煎めで茶葉がほぐれて、熱にも慣れているので、熱々のを茶壺いっぱいに注いでも大丈夫。
茶壺
注ぎ
蒸らし時間は計っていないが4分くらいだろう。
この2煎めでやっと気付いたのだけれど、スペイン土の茶碗は味の輪郭を奪ってしまう。
たしか以前に試したことがあったのだが、いつもはごはん茶碗として使っているので忘れていた。
ぼんやりした味の良さもあるけれど、このお茶の持ち味はシャキッと感。
白いチェコ土の茶杯
白いチェコ土の茶杯に移して飲んでみたら、香りがキリッとして味が引き締まって層が深くなった。飲んだ後の息に香りが立つ。ぜんぜん違う。
3煎めはもっとじっくり茶葉の成分を抽出する。
炭を消し壺にしまって、わずかな残り火に灰をかけて柔らかい熱にして、網の上で茶壺を保温する。
茶壺を残り火にかける
10分は待ったと思う。
ぜったいにグツグツ沸騰させないこと。湯が騒がない静かな状態の温度。煮えると生命感みたいなものが消えてなくなる。
3煎めの茶湯
これまででいちばん薫り高い『易武古樹青餅2010年』になったのではないかな。
湯の熱の性質。茶壺の土のチカラ。茶杯の土のチカラ。土と土の相性。土と鉄との相性。水の性質など、いろんなことがお茶の味をつくるから、これが!という絶対法則はわからない。
けれど、いろいろ試しているうちになんとなく勘が働くようになる。たぶん無意識が茶葉や土や水や鉄の言葉を聞いている。
葉底

ひとりごと:
生茶と熟茶を淹れる茶壺は分けたほうがよいという考え方がある。
そう思っている人には分けたほうが良い結果が得られるし、そう思わない人には分けなくても良い結果が得られる。そういうものだからどっちでもよいけれど、大事なのは、どっちが良いといったん決めたらその方向へまっすぐすすむこと。その過程に集中すること。
どっちが良いとか気になってネットを検索したり他人と議論する時点で暇すぎる。集中力が切れて、本当に見るべき対象に意識が向いていないから、たいした結果は得られないだろう。
趣味を追求するにしても、集中力のあるかないかは成果に違いが現れると思う。

版納古樹熟餅2010年 その38.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶+炭火
熟成壺
熟成壺
版納古樹熟餅2010年

お茶の感想:
強い台風が去って空気が落ち着かないので熟茶。
こういうときの生茶はどんなに美味しいやつでも美味しくならない。
チェコ土の壺熟成1年目のもの。
入れている熟茶は10年モノ。
+【版納古樹熟餅2010年】
餅茶一枚を崩して壺にいっぱいに入れていたが、ちょくちょく飲むので減った。
新しい一枚を崩して足すかどうするか・・・。基本、器の中の茶葉が多いほど茶葉同士で水分などを調整しやすいはずだから。
台風の残した爪痕のせいで忙しくて手間がかけられないので、今日はサクッと2煎で出し切る。手数が少なくて短い時間で、それでもあんがい美味しくなる淹れ方。
道具がいつもとはちょっと違う。
大きめの茶壺と茶杯
茶壺
背が高くて腹のふくらんだ茶壺300cc。
茶壺の重さはこの大きさで169gとけっこう薄造りで軽い。
コツはたっぷりの湯で茶壺も杯も温めること。
湯で温める
温めるときにいっきに湯を注ぐと割れる可能性があるので、ちょっとずつ湯を注ぐ。
湯を捨てるのはもったいないので鉄瓶に戻して沸かしなおす。茶壺も茶杯もキレイに洗っているからいいだろ。
湯を注いで3分
茶葉を入れて湯を注いで4分。じっとがまん。
注ぐ1
注ぐ2
注ぐ3
最後の一滴まで注ぎ切る。
湯量が多いとなかなか冷めなくて熱くて飲めないので、先に次の煎の湯を注いで蒸らしておく。2煎めの蒸らし時間は7分くらい。
2煎め
この長時間蒸らしのうちに冷めるようではダメだから、湯量が多くて熱量の多い茶壺を使う。湯量の少ない小さな茶壺では7分間も待てば冷めてしまう。手元に大きめの茶壺が無いのならグラスのコーヒーサーバーで十分。
2煎めを蒸らしているうちに1煎めをゆっくり飲む。
注ぎ3
注ぎ4
茶湯の色
2煎め。こんなに黒い色になっても味は淡くて透明。
茶葉の健康と、製茶や微生物発酵を丁寧にした成果と、壺熟成の効果と、ひとつの方向を目指して歩いている感じ。
葉底
出し切った葉底。
指で潰しても色がつかないくらい成分は湯に出尽くしている。

ひとりごと:
この茶壺はバランスが悪いくらい口の位置が高いところにあるように見えたけれど、その設計の効果で注ぎの水を上手に制して静かに注げるから、お茶の味も大人しく丸くまとまる。
茶壺

刮風生態紅餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月7日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・鉄瓶+炭火
鉄瓶
鉄瓶内側

お茶の感想:
この頃よく使っている鉄瓶は古物で、名が入っていなくて素性がはっきりしないが、どうやら量産の型モノではなく一点モノらしい。昔の釜師がつくったものかもしれない。
手に持った瞬間にわかる軽さ。薄いつくりである。鋳造のもので薄いのは技術的に難しいらしい。
軽いだけでなく水の調子も良い。
鉄瓶は新しいのと古いのと鉄の成分が異なるらしいが、現代の一点モノをつくる釜師の職人さんでさえ鉄の違いは謎だと言っている。
水の調子が良いのは鉄の成分だけが原因とは限らない。湯を沸かすことの科学には、形状や厚みの違いだけでなく、鋳物をつくる技術からなるミクロの組織構造も関係しているだろう。ミクロの世界に手の仕事が形状記憶されている。
鉄瓶のような古い時代のものはたいがい、現代の人は知らないことを昔の人は知っている。
お茶もまた古い時代のもので、昔の人のほうが知っているにちがいない。
刮風生態紅餅2018年
今年のオリジナルのお茶は自分ひとりで圧餅するようになった。
これは言わば一点モノのお茶づくり・・・のつもりである。
茶葉を摘むところから圧餅が仕上がるまでの変化を、つじつまの合うように調整する。手や目や耳や鼻の感覚に従う。
自然が偉大すぎてコントロールしきれないのが西双版納のお茶で、ぜったい自分の思うようにはゆかないけれど、調整しようという意思があるかないかの違いは大きい。茶葉のミクロの組織構造にその意思が形状記憶されるはずだから。
鉄瓶の優れたものの良さはすぐに分かるものではない。使い込んでいるうちにジワジワ発見が増えてゆくだろう。今まさにそれをしている。
お茶もそうで、出来てから何年か試飲を重ねて隠れたところを発見してゆく。
刮風生態紅餅2018年
+【刮風生態紅餅2018年】
今年2018年の刮風寨小樹のお茶は生茶も紅茶も辛い。
このことはすでに何人かのお客様も指摘していて、この辛さについての解釈を試みているところ。
痺れるような辛さが漫撒山の森の古茶樹には少なからずあるのだが、今回の辛さは痺れる”麻”というよりはピリピリする唐辛子の”辣”に近い。30分ほど経つうちに”麻”に変化して舌に痺れの余韻が残る。
なぜかわからないが、これが良い具合に現れるときとそうでないときがある。
先日の9月2日の勉強会ではこの”辣”が喉の奥までも刺激して、気持ちよく飲めないくらいだった。
上海の勉強会のために残していたサンプルの一枚を、友人がハンドキャリーで届けてくれて、飛行機で着いて2日後の試飲だったので、荒れていたのだと思う。輸送の振動や気圧の変化や磁場の変化や、いろんなことが茶葉をイライラさせる。
何度もこんなことを経験しているのでぜんぜん慌てないが、勉強会の参加者はドキドキしたかもしれない。
茶壺
茶湯の色
熟成壺で5日間寝かせた今日はいい感じ。
”辣”は舌だけに留まってそれほど喉を刺激しない。
辛さが落ち着くと、お茶の味の透明度に吸い込まれる。
これまでのオリジナルの紅茶との違いは、茶葉一枚一枚の軽発酵度がより均一に仕上げられたこと。
漫撒山の原生の大葉種の血の濃い茶葉は、カタチや大きさの複雑さゆえに軽発酵のムラができやすい。それがかえって魅力を醸し出しているのかもしれないが、もっと均一な軽発酵度に仕上がったのがどんなのかを知りたかった。
今回は製茶時の天候不順も手伝ってくれて、予想を遥かに上回る均一な仕上がり。
自分で圧餅したことでさらに均一になって、これまでの紅茶とは明らかに異なる。
茶湯の色
葉底
紅茶の味はする。それ以外のものはなにも無い。
ひとことで言うと味がない。いや、無い味である。
舌に痺れる辛味が、もっといろんな味が存在していたことを想像させる。

ひとりごと:
宜興の茶壺
茶壺
ちょっと小さめの古い時代の宜興の茶壺。
土は良くて水を甘くするけれど、蓋がユルユルで困った。

醸香老茶頭散茶90年代 その3.

製造 : 1995年頃
茶葉 : 雲南省景谷茶区大葉種潅木晒青茶
茶廠 : 昆明第一茶廠(推定)
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
熟茶の壺熟成
熟茶の壺熟成
チェコ土の壺
宮廷プーアル茶2005年

お茶の感想:
壺熟成をはじめている。
美味しいお茶をつくるのは夢で、それを熟成させるのは夢のまた夢。
壺はどういうのが良いのか、置き場所の環境はどこが良いのか、そんなことを問いだしたら果てしない。
壺が足りない。場所が足りない。時間が足りない。お金が足りない。
一生かかっても満足できないから、愉しみだけは足りている。
写真は熟茶のプーアール茶。
生茶と熟茶の熟成はちょっと違う。
そのコツをカンタンに言うと、生茶は乾燥気味にして熟茶はちょっとしっとりさせる。しっとりさせた分、出荷前にはカラッと乾燥させる必要がある。
トラブルを避けたいならはじめから乾燥気味にしたほうがよい。
茶缶で熟成
乾燥を保つために茶缶に入れておくだけで熟成はすすむ。
少量だったらこれでもよい。日が当たらない室温の安定したところに置くこと。エアコンの風が当たるところはダメ。
熟茶の場合は、甘くまろやかで透明感が増し、カカオ風味が少し加わるのが理想。
通気のある入れ物なら、幸運に恵まれると、金花と呼ぶ麹カビの一種が緩慢に活動して、お香のような甘く上品な香りと、ほろ苦味のスパイスを加えてくれる。
このお茶は金花がもともと着いていた。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
入荷した当時はそれがまだ活動していたせいか、黄色やオレンジ色が鮮やかだったけれど、茶葉が乾燥してゆくにつれ金花カビは休眠するせいか、いつのまにか色が落ち着いている。
これでいいのだ。菌類のつくった酵素がびっしり茶葉の表面についているだけで熟成は十分に面白い。もしも菌類が生きたまま活動を続けたら、茶葉が土になって、お茶の味はなくなるだろう。
良性の菌類を付けて増殖させる”発酵”の過程と、それがつくった酵素成分による緩慢な変化が起こる”熟成”の過程と、区分けするべきなのだ。
鉄瓶と茶壺
チェコ土の茶壺
茶葉は乾燥していても熱するとミクロの繊維が抱えている水が出てくる。
わずかなので菌類が活動したり増殖したりはできないけれど、酵素の働きで茶葉の成分変化が起こるには十分。
雑菌に活動させないためにも、菌類の増殖を期待して湿度を上げるようなことはしないほうがよい。
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
入荷した当時よりも味が薄くなったような気がするが、それで正しい。透明感が増して、もっと繊細なところの風味が鮮やかに見えてくるから充実感がある。飲んだ満足感が満ちてくる。
雑味のあるうちはミルクティーにしても良かったけれど、現在はストレート風味の広がりや奥行きのほうがずっと魅力的に思える。
茶葉の乾燥
茶葉の乾燥
もうちょっと乾かして熟成させたほうが良いと思って、炭火の熱で水を抜いた。

ひとりごと:
「当たり年のワインのポテンシャルはそれはいいだろう。せっかちな俺には早く飲み時を迎えるから、ハズレ年のワインもそう悪いもんではない。」
という言葉があるらしい。


茶想

試飲の記録です。

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