プーアール茶.com

刮風古樹青餅2018年・黄印 その2.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 熟成壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の茶杯・鉄瓶・炭火
黄印餅形表
黄印餅形裏
黄印餅形包内側
包み紙
餅面
茶葉

お茶の感想:
このお茶。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印】
ちゃんと炭で湯を沸かす。
鉄瓶
鉄瓶
湯を注ぐ
蒸らす
茶湯の色
泡茶
すべてがピタッと揃わないと。

ひとりごと:
熟成壺入り。
熟成壺
熟成壺
1年以上熟成させてから出品することにした。
長い長い。がまんがまん。

老字号可以興茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山
茶廠 : 可以興茶庄
工程 : 生茶のプーアル茶 (陳年茶葉)
形状 : 磚茶
保存 : 香港ー昆明乾倉 紙包み
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興の茶壺・鉄瓶・炭火
鉄瓶と炭火

お茶の感想:
お客様から「思っていたような良いお茶ではない。」とコメントを頂いたので試してみる。
『老字号可以興茶磚80年代』(卸売部)
老字号可以興茶磚80年代
老字号可以興茶磚80年代
もともと量産できて安く売れることを目指したメーカーのもので、一批か二批だけ本当に良いが出荷されて、それだけは日本円にしたら数十万円から二百万円くらいで取引されるが、その他のはすべて安値のまま売られている。老茶の中でも評価の低いお茶であるが、それが正しい評価だろう。
茶葉は表面だけ新芽・若葉に見えるが、ほとんどがクズ茶葉で、熟成度もバラバラで、いろんな茶葉をかき集めて混ぜ合わせて圧延加工したことが伺える。
茶湯の色
飲んでみると、あんがい良い。
湿気た雲南紅茶みたいな香りもあるし、カビた生茶の苦味もある。しかし、健康的な味。茶湯の色のように味も透き通っている。
甘くもなく苦くもなく。
可もなく不可もなくという絶妙のポジション。ちょっとツウ好みな見方かもしれないけれど、ほとんどのお茶が美味しいか不味いかのどちらかであって退屈なわけだ。その点、このお茶は美味しくもなければ不味くもないチカラの抜けたバランスがなんとも乙なのだ。
なので、美味しいお茶を探している人にはおすすめできない。このお茶は美味しくないのが良いのだから。
そういえば、チェコで勉強会をしたときにこのお茶を飲んで、やっぱりたいして良くないという意見をいただいた。ニセモノじゃないのか?という意見もあったが、なにも考えずにニセモノをつくるとホンモノの品質を超えてしまう可能性があるのだから、そんな可以興の特徴を考えると、あまり意味のない意見だと思った。
茶湯の色
逆に、このお茶に好印象があるお客様は、この味に近いものの体験に好印象があるからだろう。
味が良いとか悪いとかの判断基準は、過去のいろんな飲みものや食べものの記憶に基づく。
ある時代、おそらく1980年代中頃から1990年代中頃までの間に、香港や広東の飲茶のお茶を飲んでいる人、なおかつそれに良い思い出のある人。
現在の飲茶レストランが無料で提供するお茶は、熟茶のプーアール茶(メーカーで微生物発酵されたもの)になっているはずだが、過去には生茶を強制的に後発酵をすすめて老茶のような味にしたものが多かった。この二次加工は、雲南の産地のメーカーの倉庫で散茶のまま何年か放置するとか、香港の茶荘の倉庫で湿気させるとか、いくつかの手法が試されていたが、中にはダメになったのもあって、カビ臭いプーアール茶のイメージはここから来ている。
中には良いのもあって、豊潤な熟成風味や甘い香りやほろ苦味が加わり、飲茶の点心を引き立てたのもある。
熟茶のプーアール茶はメーカーで完成するから衛生的であるが、身体を暖めるので高温多湿な広東や香港では飲みにくい。
生茶は二次加工されても身体に熱がこもることはないので涼しく飲める。なので現地の人の口には生茶の二次加工のほうが合ったのだろう。しかし、1990年代中頃に二次加工の不衛生が指摘されだしてから、この手のお茶は消えてゆく。
葉底
『老字号可以興茶磚80年代」のメーカー「可以興」が消えたのも、おそらくそうした需要の変化が影響しているはずだ。(現在はまた同じ名前のメーカーが営業しているが、昔のままのお茶づくりではない。)
今現在、またこういう味のお茶が大量に流通しだしている。
それは、2000年以降に雲南の産地の茶商が倉庫に大量に保管していたもの。ほとんどが売れ残りのお茶で、茶葉の乾燥に気を使わないから湿気ている。
プーアール茶は2000年以降に大陸のマーケットが開けて、新しい消費者が増えたから昔の良いほうの熟成味を知らない。だからあんがいこういうのでも売れる。
その中から良いものを見つけたことがあった。
+【漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その2.】
そういえばこれ以降に良いのには出会っていない。
ゴミの山の中から宝を探すのは効率悪すぎて仕事にならない。

ひとりごと:
プーアール茶を学ぶにあたって自分にはこの人という先生はいないけれど、それでも深く掘り下げてゆくことができたのは、記憶の中に関連付けられる味のデータベースが豊富にあるからだろう。お茶の味の体験が少なくても、他の味の体験を応用して脳が考えてくれる。直感が働くのはそういうことだろう。
ワインやウィスキーの熟成モノの趣味のある人は比較的近いところに体験があるが、発酵食品や保存食品など古い時代の食べものの経験も近いと思う。
昔の人の暮らし、昔の家屋、昔の栽培、昔の道具、昔の味付け、昔の味覚。
おじいちゃんおばあちゃんの財産はもう消えて、父や母には受け継がれていないけれど、自分の脳の中には記録されている。

漫撒一水紅餅2016年 その3.

製造 : 2016年4月3日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 店長+孟海県の工房
工程 : 晒干紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
炭火
鉄瓶
鉄瓶

お茶の感想:
朝起きて湯を沸かしてお茶を飲む。
仕事柄それが日課で、たいがいひとりで静かに飲むのだが、ひとりで居ても心は騒ぐ。黙ったまま心の中でおしゃべりしていることのほうが多い。静かになりたいのになれない。
ヨガには瞑想の術があるけれど、自分はまだ習得していない。
でも、お茶があるから大丈夫。
心のおしゃべりをピタッと止める陰涼のお茶。
漫撒山の深い森の陰で育った茶樹のお茶。
+【漫撒一水紅餅2016年】
漫撒一水紅餅2016年
お茶の性質には個性があって、例えば同じ森のお茶でも巴達山章朗寨のでは静かになれない。むしろもっとおしゃべりになる。
なにがどうなってこうなるのか理屈はわからないが、心に及ぼす作用に違いがあるのは確かである。
漫撒山の森のお茶は生茶でも紅茶でも同じように心を静める。三杯めには心が黙ってしまう。ということは製法ではなくて原料の問題か・・・。
昔の人はこのことに気がついていたのではないかと考える。
お茶が快楽のクスリとして嗜まれていた時代。心に及ぼす作用が鑑賞され、その良し悪し、美しさ、効能の響き、などの評価に議論が重ねられ、多数の意見が一致したところで六大茶山のひとつとして認められるようになったのではないか。
漫撒一水紅餅2016年
雲南省南部からラオス・ミャンマーにかけての山岳地帯には有名茶山でなくても自生の茶樹が森の中にある。美味しいお茶ならいくらでもある。
味と香りだけでお茶を選ぶとなると、数多くの茶地から六つだけ山を選んだり、その地域を六つの茶山に分けたりというのが難しい。体感や心の作用という観点もあるような気がする。
注ぎ
茶湯
西双版納の茶友らが数人集まって漫撒山の森のお茶を飲むと、みんな黙って静かになって、各自がある方向の一点を見つめたままになって、たぶん傍から見たらお通夜のようで、悲しいことでもあったのかと見えるかもしれないが、そうじゃない。われわれは味わい方を知っているだけだ。
勉強会で上海や日本のお客様といっしょに飲むと、勉強会だからなにかしゃべらないといけないとか、なにか質問したほうがよいかもしれないとか、お互いに気を使って無理やり会話をしてしまうが、そんなにしゃべりたくもないのにしゃべるのだから妙に疲れる。
自然に逆らわずに沈黙の勉強会にしてもよいかもしれない。
葉底

ひとりごと:
昔の人は心と身体とを分けて考えない。
心の作用に注意を向けたら、大量生産される加工食品や化学調味料の危なさにもっと早く気付くと思う。

沈香黄片老茶磚80年代 その4.

製造 : 1980年代
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶(西双版納易武山)
茶廠 : 昆明茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 昆明乾倉 竹皮4枚一組
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
鉄瓶と炭火
沈香黄片老茶磚80年代

お茶の感想:
老葉(大きく成長して硬くなった茶葉)でつくられたお茶にはいろいろある。
茶葉の見た目が似ているので、つい同じような性質のお茶だと解釈してしまうが、そうでもない。老葉は年中収穫できるが、季節によって内容成分が異なる。
新芽・若葉にはわかりやすい尺度がある。
その旬は春と秋にほんの数日間あって、タイミングをハズすと茶気が充実しない。気の抜けた炭酸飲料やアルコール度数の低い酒のようになる。
老葉のお茶はそこが曖昧。
茶気の充実しているのが良いとも限らないから。
チベットの遊牧民のようにお茶に求めるものがはっきりしていたら、どの季節に采茶するべきで、製茶工程はこうあるべきで、お茶の味はこういうのが良いとはっきりするだろうけれど。
義安棗香73特厚磚茶
73特厚磚を飲む機会があった。
【義安棗香73特厚磚茶】
10年ぶりくらいかな。
熟茶の最高峰でありながらもっとも熟茶らしくないお茶。熟茶と定義されているからには水をかけての微生物発酵の工程があったことになるが、それの無い生茶の老茶に近い味。
このお茶の説明に気になる部分がある。
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姚計氏は、プーアール茶を仕入れるときは、5級〜6級の大きめの茶葉で作ったものを選びました。新芽はおいしい緑茶を作れるが、おいしいプーアル茶を作らないと考えていたようです。
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姚計氏が73特厚磚以外にどのお茶を倉庫に寝かしたのか知らないが、香港の倉庫に届いている時点で、その先のルートで届く地域においては、生活のお茶としての役割を期待していないはずだ。遊牧民が飲むものではなく、都市生活者が飲むお茶である。
73特厚磚の味を忘れないうちに今日のこのお茶。
『沈香黄片老茶磚80年代』(卸売部)
沈香黄片老茶磚80年代
注ぎ
沈香黄片老茶磚80年代
あえて言えば73特厚磚ほど甘味はない。水の質がトロッとしていない。
それ以外は茶湯の色も香りも味もそっくり。
特徴あるお香の香り。味はあるようなないような感じ。長い時間(7分くらい)かけて抽出しても湯の色が明るい。同じ年代の新芽・若葉の生茶に比べても色が明るい。赤黒くならない。
そして、共通するのはあんがい旬の季節に采茶されているらしき茶気の充実感があること。新芽・若葉ほどではないが老葉のわりには酔い心地がふんわりしている。
葉の様子から、一般的な新芽・若葉の生茶と同様に殺青の火入れも浅いことが伺える。
体感は温でもない涼でもない。いつでも飲める。
葉底
はじめから都市生活者の普段飲みを意識してつくったのではないだろうか。
見た目重視の新芽・若葉で高級だけれど中身は旬をハズした茶気の充実しない手頃な価格のお茶をつくる現代のメーカーよりも、昔の国営メーカーのこのアイデアのほうが安くて栄養が充実してクスリとしては優れている。
茶気の充実が都市生活者向けのお茶として必要条件であれば、冬の老葉を採取した『刮風寨冬片老葉2016年』よりも春の終わりに育った茶葉を摘んだほうがよいかもしれない。
+【刮風古樹青餅2018年・晩春 その1.】
こういうやつ。
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
刮風古樹青餅2018年・晩春
葉底
見た目は生活のお茶で大衆だけれど中身はその逆。

ひとりごと:
結局自分には高いお茶しかつくれない。
都市生活者向けの中身になるから。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その7.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・炭火
鉄瓶と炭
チェコ土の茶壺と茶杯
金継ぎ

お茶の感想:
2016年の春のお茶は一天一采。
ある一日に采茶した茶葉でひとつのお茶をつくっている。
その経験から采茶のタイミングがいかにお茶の性質を左右するかがわかってきて、手元のお茶を飲むたびに新しい発見があって、今年2018年の春のお茶づくりも采茶のタイミングを重視した。
茶針で崩す
餅面の茶葉
+ 【章朗古樹紅餅2016年・青印】
「采茶のタイミングをどう見ますか?」
と前回の勉強会で質問されたが、そのときはうまく説明できなかった。
茶葉の成長度も見るし、天候も見るし、茶摘みの手の雇用の問題もあるし、農家との利害交渉もあるし。
いちおう理に叶った見方を説明できるけれど、そうじゃない。なにかが違う。
そんなに合理的に判断できるものじゃないのだ。
現場にいて、采茶のこの日!というのが来るときはもっと興奮している。冷静ではいられない。
天の恵みの光が射すとき。
その日のために自分のこれまでの人生があって、すべてがつながって、なにのために生きているのか生かされているのかを一瞬にして悟る。
たぶん目の色が変わっている。
新芽・若葉の生命力が緑の炎を上げているように見える。
鉄瓶と炭
鉄瓶注ぎ
注ぎ
冷静になって経済合理性を考えると、もう数日待って茶葉が大きく成長してから摘むほうがよいこともある。そのほうがたくさんつくれて安く売れて、みんなが幸せになれる。
でも、現場に居てこの日!というのを迎えると、そんな計算できる経済などぜんぜん小さく見えてしまう。想像もできない巨大な運気がやって来て、これを逃したらバチが当たるのではないかと心配になるくらいだ。
ツイているお茶。
そのはずだけれど、これを買って飲む人にその運気は巡っているだろうか?
うちのお茶を飲むようになってから人生が変わったという人は、こっそり教えてほしい。
怪しい人になるから他人には言わない。
茶湯の色

ひとりごと:
うちのお茶を飲むようになってから大金持ちになれた人がいたら、ちょっと分けてほしい。
どうも自分は茶葉に運を使いすぎたっぽい。

章朗古樹紅餅2016年・青印 その6.

製造 : 2016年4月6日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 農家+店長ふじもと
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・炭火
鉄瓶縦長
チェコ土の茶壺
夏の空

お茶の感想:
暑さで内蔵が疲れているせいか、生茶のプーアール茶がちょっと辛い。
熟茶はお腹をいたわるけれど身体の熱がこもってスッキリしない。
なので紅茶。
+ 【章朗古樹紅餅2016年・青印】
みんな同じことを感じているせいか、なぜか今年の夏は紅茶の注文が多い。
章朗古樹紅餅2016年・青印
晒干で仕上げた涼しい体感が夏にピッタリ。
とくに巴達山章朗寨のは苦味がキリッと立つので味もまた涼しい。
生茶に比べるとおっとりしていてお腹への収まりもよい。ミネラルを採って熱中症予防にもなる。
こういう効果は熱いお茶を飲まないと得られない。消化のシステムがそうなっているからだと思う。
ねっとうをかける
飲んでしばらくすると身体のいろんなところにジワジワ快感が現れてくる。
個人によって現れ方が異なるから、各自が自分を観察をして、飲むべき量や飲むべきときを選ばなければならない。
飲んだ後の感じ、食べた後の感じ、それが大事。
味わうポイントは舌先ではなく体感。そうじゃないとわざわざ高価な古茶樹のお茶を求める必要はないだろう。
注ぎ
西双版納の古茶樹にもピン・キリがあるのは、山の気候や土質や周囲の森林の健康や栽培の自然度や采茶のタイミングを追求したことがそのまま体感の質となって現れるからであって、そこを味わえなかったら価値がなくなる。
難しいことを言ってはいない。飲んで気持ち良くなる度合いが高いか低いかだけのことだから。
こういう話はこのブログでも何度もしているけれど、何度も繰り返さなきゃならないのだろな。脳の理解のシステムがそうなっているからだと思う。
舌先や鼻先だけで評価したら、この紅茶は同じ巴達山の生態茶の『巴達生態紅餅2016年』に負ける。約半額の紅茶に負けるわけだ。
茶湯の色
実際、世界中の紅茶のほとんどは背を引く仕立てた灌木の茶樹であるが、経済合理性によって美味しさだけを評価をして、体感の良し悪しを忘れてしまって、古茶樹はリストラされたのかもしれない。
舌先や鼻先だけを喜ばせるものから本当の快感を得られるわけがない。

ひとりごと:
ヨガは快感の運動。
お茶は快感のクスリ。
快感を追求していたら医療費は確実に減らせる。
みんなの好きな経済合理性もあるのに、なぜみんなそうしないのだろな。
チェコ土の茶壺と皿

瑶洞古樹青茶2015年 その1.

製造 : 2015年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山瑶洞古茶樹春茶
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都・陶器の壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 宜興紅泥の茶壺+鉄瓶+炭火

お茶の感想:
このお茶は一般的には刮風寨のお茶として販売される。
+【瑶洞古樹散茶2015年 その1.】
この散茶を餅茶にしたのが今日の『瑶洞古樹青茶2015年』(卸売部)。
瑶洞古樹青茶2015年
つまりニセ刮風寨のお茶である。
これもそう。
+【瑶郷古樹青餅2014年】
刮風寨から山ひとつ超えたラオスに茶地がある。
これらのお茶はニセ刮風寨になったほうがたくさん需要があって、よく売れて、安く買えて、みんなが幸せになれる。美味しさで比べても価格差ほどはない。
今年の春、ホンモノの刮風寨の古茶樹のお茶づくりをした。
ここに来るまで9年。念願の夢がかなったのだが、もっと早くに夢を叶えたらニセ刮風寨を売っていたかもしれない。
ニセとは自分も知らず、お客様も知らず、もっと安くもっと大量に販売して、多くの人に喜ばれた。
瑶洞古樹青茶2015年
ホンモノを追求する仕事に合理的な理由はない。
自己満足はできても他人を幸せにできない。
みんなに喜ばれる仕事をするほうが、喜ばれない仕事をするよりも幸せになれる。
それが商品の限界かもしれない。
あらゆる商品にウソがたくさん混じるのは、ウソを排除するのが目的ではないからだろう。
今年の春に刮風寨の古茶樹のお茶をつくって飲む以前から、実はもう何年も前から、美味しさの差はあまりないことを知っている。
それでもホンモノをつくりたかったのはなぜか自分でもよくわからない。
鉄瓶
たぶん、その過程が面白いから。
地理的な環境や人の行動を勉強するのに9年かかったということは、9年も楽しんだということ。
世界中のいろんな地域のいろんな人々の生き方を見たい。仕事を見たい。誰にもそんな興味はある。
中国は交易の歴史が古いから、貿易で栄えた古い都市にはいろんな言葉や文化や宗教の人が入り混じって生活していて、泥棒が多い。地理的な環境が地域の経済や政治や人々の生活習慣にまで影響をあたえて、なるべくしてそうなっている。
かつては世界中が羨む産品が中国にたくさんあったから、利にさとい商人たちが研究を重ねて偽物や粗悪品は巧妙かつ冷静で、さらに西洋と東洋が混じった大航海時代にイギリス東インド会社が風で動く船を往復させて、ロンドンの港に2年かかって船が戻ってきたときには、積荷のうちの2割以下の茶葉が8割以上の儲けになったというから、茶葉におけるあの手この手はとくに成熟している。
瑶洞古樹青茶2015年
西双版納の現地で行われるあの手この手の情報は外には出ない。山の民族や農家や仲介業者たちとの交流から学ぶしかない。何度か騙されてみるしかない。
こういう勉強を日本人は嫌う傾向にある。
幼い頃から他人を疑うことに後ろめたい感情を持つように教育されているから、他人を疑うのが気分悪い。
「いい人だから」、「長い付き合いだから」。
取引相手が信頼できるので良い茶葉を仕入れることができると主張するケースが多いが、たいがい知らないところでやられている。勤勉を美徳とするのは日本人の勝手で、逆の価値観においては年々仕事の手を抜いてゆくのがあたりまえで、付き合いの長いことが良いとも限らない。
やられていても気が付かないし、バレないから罪にならない。
瑶洞古樹青茶2015年
例えば、この『瑶洞古樹青茶2015年』を「刮風寨のものじゃない!」と鑑定できる人などほとんどいない。自分の知る範囲でもひとりかふたりしかいない。
現地の商人はこのことを利用して、大量にニセ有名茶山モノのお茶をつくって売る。市場価格よりも安く出荷するからたくさん売れて、ホンモノよりも利幅は大きいからたくさん儲かる。
みんなが幸せになれてどこが悪い?
中国の常識では、他人を疑うことに感情は要らない。
騙すよりも騙されるほうが悪いという考え方は、勉強不足を戒めているのであって、堕落ではないと思う。
茶葉はウソをつかないから気持ちよく勉強できるけれど、人はウソを付くから気持ち悪い。
しかし、人の勉強を避けてうまく生きてゆこうなんて都合が良すぎるだろ。そんな消極的な姿勢でいながら世の中が良くなるのを願うなんてわがまますぎる。
と、思うけどな。
葉底
刮風寨と言わないで知名度のないまま出品したこのお茶は、どうなのだろ?
茶葉からしたら有名も無名も知ったこっちゃないから、刮風寨として出品されたほうが飲む人にも喜ばれてよかったのではないか?自分は商人として未熟すぎるのではないか?
自分も他人も幸せにしないで、どこが良いのか?

ひとりごと:
刮風寨の古茶樹のお茶の”黄印”と”緑印”は、一般的な刮風寨の古茶樹のお茶の3倍の価格をつけるつもりでいる。
それでも喜んで買う人がいる。
それは、西双版納の現地の茶商やメーカーのオーナーたち。
彼らの手元にはホンモノがない。
中には真面目な人がいて、ニセモノを扱っているけれどホンモノも知っていることを証明しようとする。自分にもホンモノがつくれることを匂わせたいのだ。
彼らはホンモノの難しさを知っている。
その足元を見ている。
10年ほど寝かせておいて、ホンモノの希少価値がもっと上がってから10倍以上の価格で売ってやってもよい。
高く売りながら顧客満足度を最大化させるのは、商売の姿勢として正しいはずだ。

孟海旧家紅餅2018年 その1.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・銅のヤカン+炭火
銅のヤカン
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
先日紹介した緑茶のような生茶と同じ原料でつくられた紅茶。
+【孟宋新緑散茶2018年 その1.】
生茶は采茶のタイミングが早すぎると評価していたが、紅茶はどうだろ。
当店の紅茶を甘い紅茶と苦い紅茶に分けると、このお茶は苦い紅茶。
早春の苦味といい、ツンと尖った香りといい、涼しさは満点。
生茶のプーアール茶は、7煎でも8煎でもダラダラ続けてじっくり味わいたいファンが多くて、その期待があるので摘み時が早い新芽・若葉はちょっと物足りない。そういう見方で評価されてしまう。
しかし紅茶ならこれはアリと思う。
緑茶のようにパッと気分を変えるつもりのお茶。
1・2煎めの鮮烈な印象が勝負どころ。
もちろん、4煎でも5煎でも続けて飲めるし、だんだん甘くなってくるけれど、このお茶ならではの個性はなくなる。
餅面
農家の若者が当店の紅茶の製法を参考にして自己流で軽発酵させている。
プーアール茶のように圧餅する当店の紅茶は、圧餅工程での変化を計算して、晒干で散茶が仕上がる時点では軽発酵がちょっと足りないくらいに仕上げるが、農家の若者はその加減がわからない。散茶になった段階ですでにしっかり軽発酵がすすんでいるので、茶醤と呼ぶエキスに粘着力が無くなって、圧餅がうまくゆかなかった。
圧餅失敗したのが3枚ほどあるので、崩して出品することにした。
(餅茶の崩し売りを嫌っている当店としては珍しく崩しを出品。)
孟海旧家紅餅2018年
これぞ春の紅茶!という風味で、完成度は高いと思う。
すでに当店の圧餅の紅茶ファンになっている方からしたら、プーアール茶らしさがちっとも無いから満足できないかもしれないが、紅茶の味に正しさを求めるならこっちだろう。
晒干(天日干し)だけで仕上げた紅茶にしては、メイラード反応のチョコレート風味のコクもしっかりしている。
対象的に、甘い紅茶はこれ。
+【刮風生態紅餅2018年】
茶葉が大きくて、茎の部分が長くて、そこから成分を抽出するのに1・2煎では足りない。3煎・4煎と深くなってゆくプーアール茶っぽい紅茶。
気分に合わせてチョイスするために、両方あったほうが良いけれど・・・。
葉底
ところで、『孟海旧家紅餅2018年』の「旧家」は、昔の村の意味。
山奥の村でなにしているのかわからない人たちがいるのは政府としては管理しにくいから、政策で国道に近いところに新しい村をつくって引っ越してもらって、数年前から新しい村で生活している。
茶摘みのときだけ山奥の古い村の近くの茶地に通う。
その古い村のことを「旧家」と彼らは呼んでいる。
また、孟宋山なのに孟海としたのは、西双版納には孟宋という地名のところが3つあって、そのうちの孟海県の孟宋山を表すため。

ひとりごと:
春の終わりに孟海県の孟宋山の村へ行った。
鳥居
鶏
囲炉裏
農家の若者が鶏料理を御馳走してくれた。

孟宋新緑散茶2018年 その1.

製造 : 2018年3月18日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宋山小茶樹
茶廠 : 愛尼族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・ガラス杯・鉄瓶+炭火
孟宋新緑散茶2018年

お茶の感想:
西双版納でよく交流している愛尼族の農家の若者がつくったお茶。
緑茶のような生茶。
強い火でいっきに炒り上げて、軽発酵のスキを与えず、緑の新鮮味が固定されている。
ここまで高温で攻めて焦がさないのはなかなかの腕前で、その腕前を自慢をしたい気持ちが現れた若さがある。
茶樹は樹齢70年くらいの小樹で、2年前までしばらく采茶されていなかった自然栽培だから原料としては申し分ないが、采茶のタイミングが数日早くて、新芽・若葉が細かくて、風味がしっかり乗っていない。
サッパリ爽やかなだけが取り柄のようなお茶。
泡茶
孟宋新緑散茶2018年
いいポジションを取ったと思う。
あと数日待って茶葉が育ってから采茶したら、よくある生茶の原料となっていたし、特別な存在にはなれなかったかもしれない。
全部で8キロ。
できたての晒青毛茶をどうしたら良いか?と、農家の若者が山から持って降りてきた。
計画性なくいつも金がなくて困っている人なので、すぐに現金と交換してやった。たぶんお金を急いでいたから采茶のタイミングが早かったのだと思う。
茶湯の色
さて、どうしようかとひとりで何度か試飲するうちに、あんがい好きになった。
3月18日采茶で、春の訪れを告げるお茶となるから、上海の友人の店に6キロ送った。7月に立ち寄ったときにはすでに売り切れていた。
残りの2キロは自分の手元にある。
圧餅を試そうかと検討してみたが、殺青で火入れしすぎているから軽発酵の効果も期待できず、運搬の利便性以外に利益はなさそう。2キロだから小さめの枕くらいの嵩しかないので、散茶のままにした。
おまけのお茶にしてお客様に分けているうちに減ってきた。夏のうちに配りきって、夏の終わる頃には飲み切るだろう。
葉底
新芽若葉
忘れた頃にまた春が巡ってきて、あいかわらず金に困っている若者がタイミングの早い采茶をして、できたての晒青毛茶を8キロほどを持ってくる。
そういうふうに進歩のないほうがよいかもしれないな。

ひとりごと:
上海
上海に9日間居た。
今回は勉強会をしなかった。
台風が近づいて雲がすごいスピードで流されていて、毎日雨が降って、お茶の味も荒れていた。
夏休みになったところの小学2年生の上海の坊と遊んだ。
雨のときは天山茶城にある友人の店を借りて二人でお茶淹れの稽古をした。
晴れのときは中山公園を走り回ったり、美味しいものを食べ歩いたりした。
上海の坊はまだ幼いから、叔叔が他の大人たちよりも暇人であることに、なにの違和感もない。
暇人じゃないとできない仕事もあるぞ。
我ながらいいポジションを取っていると思う。

刮風生態青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨小茶樹
茶廠 : 店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : タイのミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・チェコ土の杯・ステンレス電気ポット
はじめのトンボ
トンボと空
メコン川とトンボ

お茶の感想:
この春、刮風寨の小茶樹でつくった生茶。
+【刮風生態青餅2018年】
よいお茶だと思う。
泡茶
水滴
若い生命力にあふれている。
味が見えないくらい透き通っている。
香りは朝の空気のように身体を浄化する。
雰囲気があるので、人それぞれに景色を見ると思う。
そんな想像力の空白のあるお茶。
甘いとか苦いとかなにかに香りが似ているとか、具体的な表現でつまらないものにしたくない。誰もが子供の頃には持っていた霊的な感覚が目を覚まして、少し黙って鑑賞したい気持ちになるだろう。
原料となる茶葉の素質はもちろんだけれど、この味には製茶の成果も現れていると思う。
そんなに特別なことはしていない。
黄印や緑印のように気合いを入れたわけでもない。
茶友たちは刮風寨のお茶づくり3年目で、もっとこうしたいああしたいという欲も出てきて、経験と工夫も積み重なって、鮮葉を目の前にしていざ製茶をはじめるときに頭の中にいろいろ考えを巡らせていたと思う。
でも、自分ははじめてだった。
同じ漫撒山の丁家老寨や一扇磨のお茶が近いから、とりあえずその経験をもとに製茶してみるしかない。
泡茶の茶葉
泡茶
はじめの殺青の5鍋分くらいは生焼けだったり焦がしたりして失敗している。
とにかく、刮風寨の鮮葉に自分を合わせるのが精一杯で、自分なりの工夫を凝らす余裕なんてなかった。
無心だったわけだ。たぶんそれが良かった。
自分から意識して無心にはなれない。意識していないから無心なわけだし。
この次に刮風寨の製茶に無心になれるときが来るとしたら、もっともっと経験を積んで、鮮葉を目の前にしたときに考えるより先に身体が動くときだろう。
ということは、それまではスランプになって悩む期間があるのかな?
ま、今からそれが分かっていたらちょっとはましだろう。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)
焦げもあるし軽発酵ムラもあるし、透き通った味が説明できない。
こういうのが好き。

ひとりごと:
今日はトンボの日だった。
トンボの群れ
トンボ拡大
トンボ
斑のトンボ


茶想

試飲の記録です。

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