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川を見ている

ラオスとタイの国境をわけるメコン川まできた。
その小さな町でもうすでに4日すごしたけれど、まだあきない。
ものすごい水の量が、川と空とそして緑にもあって、つい茫然とながめてしまう。
まったくなにも考えられない。
ゆるんでほどけてどうにかなってしまうまで、そうしていようと思う。

メコン川

メコン河

メコン河

メコン川

メコン川

メコン川

メコン川

水盆

メコン川

写真:メコン川と水盆と生茶のプーアール茶とワイン


冬瓜豚の森

はじめての西双版納で、
山の民家を訪ねていちばんびっくりするのが「冬瓜豚」。
なぜって、豚がそのへんにいるから。
犬や猫みたいに自由に走り回ったり、道ばたで寝ていたりする。
犬ほどの大きさだけれど、どこか慣れない。夢の中の景色にみえる。

昨年、西双版納で冬瓜豚の放し飼いが禁止になった。

あちこちにウンコするので不潔だからということ。
山の人も文明的な生活をするべしということ。
たしかに臭い。
風のない日は村中にその臭いがただよう。
「えっ、こんなところで食事するのかよ。」と、
慣れないうちは食べ物が喉をとおらない。

今は各農家の囲いの中に入れられている。
もともと屠刹する前の2週間ほどは囲いに入れて有機栽培のトウモロコシをたらふく食べさせるので、その囲いは昔からあるし、農家は文明的なルールをすんなりと受け入れることができた。

ああ、これで冬瓜豚の美味しさもおしまいになるなぁと、思った。

冬瓜豚

冬瓜豚

写真:易武山麻黒村の冬瓜豚(2009年12月撮影)


冬瓜豚はグルメなのだ。
山に入って、自然薯を掘ったり、木の実・山菜・果物・キノコ・沢ガニ・カタツムリ・カエルなどなど、好きなモノを食べて育ってきた。
そんなに自由なのに必ず人家に戻ってくるのは、朝と晩にトウモロコシがもらえるから。

山の農家がこれを絞めるときには声をかけてくれる。
「殺猪するからおいでよ!」
縛りあげられた冬瓜豚は口をふさがれ喉を切られ、一瞬にして窒息死させられる。
冬瓜豚の不幸は、生涯この瞬間だけである。
トウモロコシがもらえた理由をこのときはじめて知るのだ。

冬瓜豚


まずはバーベキュー。
肉に塩をふって焼くだけ。とくに頭の肉はゼラチンと赤味とがいり混じって味わい深い。各自がナイフを手にして削り取りながらほおばる。
つぎに、血や内臓。
血は塩水を用意しておいて血の豆腐をつくる。内臓は丁寧に切り分けて大きな鍋でいったん茹でておく。茹でるのにつかうのは湯ではなく油の場合もある。血も内臓ものちに炒めものやスープに使う。
肉はいろいろ。
たとえばバナナの葉の包み焼き。包丁で叩いて叩いて山菜や木の実を入れてまた叩いて、発酵させた竹の子といっしょにバナナの葉に包んで焼く。肉の包焼もよいが、内臓の包焼はいちだんとよくて、酒飲みにはたまらない肴になる。
冷たい風のある冬には干し肉や腸詰めをつくる。
腸詰めは、血の腸詰め・豆腐をミックスした腸詰め・香辛料たっぷりの腸詰めなどバラエティーがある。塩を強めにしたら保存がきくので3ヵ月間ほどは毎日の一皿になる。春の茶摘みの季節にはこれを弁当のおかずにする。山で炙る腸詰めはやたらとうまい。
もうひとつ珍しいのでは、肉を米と漬けて乳酸発酵させた「酸肉」がある。つまり肉のなれずし。ダイ族の料理で、これはスープにして食べる。

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

冬瓜豚の料理

写真:西双版納易武山と巴達山の冬瓜豚の料理

酸肉

写真:酸肉(肉のなれずし)ダイ族の料理


冬瓜豚が囲いの中で飼育されるようになると、
トウモロコシやバナナの木の茎など、与えられた飼料だけで育つことになる。
旬の山の幸をたらふく食べてくるなんてことは、もうできないのだ。
だからもう昔のような美味しい冬瓜豚ではなくなるだろう。

しかし、それだけではすまない。
もっと大きな問題があることに気付いた人はあるだろうか。
それは「冬瓜豚の森」が消えるということ。

冬瓜豚が山で自由に穴を掘ったりなにかを食べたりウンコしたりしていたことで、
いったいどれだけの植物・微生物・昆虫・小動物がそこに暮らしを立てていたことだろうか。西双版納のすべての山のすべての村で、いったいどれだけの数の冬瓜豚がその生態系から抜けることになったのだろうか。

広大な森が消えるかもしれない。
すぐさま緑がなくなるわけではないし、山が削られるわけではない。
じわじわと年月をかけて様々な生き物が減ってゆく。
目には見えない生命の森がそこにあり、冬瓜豚が人間と森とをとりもっていたことがわかるころには、
こんどは人間がトウモロコシのできる理由を知ることになるかもしれない。

歯につく茶渋

お茶を毎日飲んだら、
茶渋が歯につくから嫌だという人がいるらしいが、
それはかんたん。
歯磨きしてもとれない茶渋は、
綿棒の先に歯磨き粉をちょっとつけて、
キュッキュッとやればすぐ落ちる。
歯医者さんのクリーニングにかからなかったお金は、
もっと良いお茶を買うのにつかってください。

歯につく茶渋は綿棒でとる

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(綿棒は売っていません)

水平鍋

易武山の茶農家の鍋は水平に据えられている。
その理由がわからなかったけれど、今だんだんとわかってきた。

易武古樹青餅2010年プーアル茶

鍋にも流行があって、近年は角度をつけて斜めに鉄鍋を据えたのが増えている。茶葉が鍋を滑って混ぜ返しやすいからだ。一見このほうがうまくゆくと思えた。
水平鍋は鍋の底にあつまる茶葉をひっくりかえすのに力がいるし、そこから勢いよく上がってくる熱い蒸気をまともに顔に受けてしまう。火傷しそうに熱い。

易武古樹青餅2010年プーアル茶

なのになぜ水平鍋が良いのか? その理由を本人たちに聞いてもはっきりしなかったが、何日か見ていたある日にわかった。水平鍋は鍋の中央に蒸気を集められるのだ。そこに茶葉をかざして蒸し焼き状態にできる。 

易武古樹青餅2010年プーアル茶

鍋にどっさり投入される鮮葉は水分をたくさん含んでいて、あっという間に熱い蒸気を発する。 蒸気は鍋に包囲され、中央に集まり、真上に逃げる。
その蒸気に茶葉をからめて蒸し焼きにする。水平鍋だからあの易武山の澄んだ風味をつくれるというわけだ。


茶想

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